195: ◆R/5y8AboOk 2014/09/14(日) 15:14:37.53 ID:tehdn47j0

196: 2014/09/14(日) 15:15:32.80 ID:tehdn47j0
 京華学院教習棟入り口。

 その内側に柑奈は居た。
 その頭の上には───紆余曲折あって漸く柑奈を無害だと認識した──ぷちユズがふんぞり返っていた。

「ご主人様まで後少しですよ!みーちゃん!」
「…み?」
「あ、みーみー鳴くから、みーちゃんです!」

 自信満々に言い放ち、鼻息をふんと吹かして、伺う視線を頭上へ向ける。共にそこへ「気に入りませんか?」という問いが投げかけられると、ぷちユズは意味ありげに腕を組み、思案に耽るような素振りで返した。

「みみぃ…」

「…………」

 沈黙の重圧が頭上からのしかかり、思わず息を飲み下す。

 安直が過ぎたか、悪くないとは思ったが。
 湧き上がった不安が胸を突き上げて───。

「…み!」

 数秒の間を置いた後、気楽な鳴き声を発したぷちユズは、柑奈の額をぺちぺちと叩いて前進を促した。

 よくわからないが、取り敢えず気は損ねていないか?胸をなで下ろして良いものかわからない───そもそも、意志の疎通ができているかも怪しいが。
 すっきりしないものが腹の底に貯まるのを自覚しつつ、考えを問い詰めることができないことのなんと歯がゆい事か。
 そこで癇癪や憤りを発するのは彼女の性分ではない。が、かと言って不満がゼロになるほどの聖人でもない。
 なまじ意志らしい意志が感じられるから尚更のこと。有象無象が跳梁跋扈するこのご時世、その手の翻訳装置でも開発してはくれないものか、と胸中にひとりごちると、有り得ない話ではない、とも思いついた。

「み?」

 頭上のぷちユズが下を向いてこちらを伺うのを認識すると、ぼんやりとした思考が音を立てて弾け、意識の全てが現実に落とされる。

 考えるのは後でもいい。そう唱えて思案を蹴散らして、ぷちユズに促されるままの一歩を踏み出す。────
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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



197: 2014/09/14(日) 15:16:40.70 ID:tehdn47j0
 ─────いやあぁあああぁぁあああっ!!

 ───と、前触れなく頭上から響いた悲鳴と、ダン、ダンと無数に連続した爆裂音が彼女の足を掬い上げた。
 たまらずその場でたたらを踏んで、轟音に身を竦ませたぷちユズが柑奈の頭から転げ落ちる。
 視界の端に、重力に引かれる丸っこいシルエットを認識した柑奈は、耳にキンキンと響く残響を噛み頃しながら慌てて両手を差し出した。と、間違いなく落下軌道上にあてがわれていたはずの両手は、しかしぷちユズを掴むことができず。

 落としてしまったか。瞬間的に脳裏に浮かび上がった思考が顔を青ざめさせて───。

 ───それを打ち消したのは、他でもないぷちユズだった。

 咄嗟に顔を足元に向けようとした柑奈の視界に、ひらりと丸っこいシルエットが躍り出る。足場もなく、それでも空中に体を固定するそれが、ぷちユズであると間を置いて理解した柑奈は、「飛べんの!?」と我知らずの内に叫んでいた。

「みぃ…!」

 柑奈の声を事も無げに受け流したぷちユズは、眉間に皺を寄せて天井を睨み上げ、柑奈もそれに続く。

198: 2014/09/14(日) 15:18:00.29 ID:tehdn47j0
 続く音や悲鳴はない。無音の中で爆裂音を思い返した柑奈は、迷うまでもなく銃器の発砲音を連想していた。それほど強力な物ではないらしい。数十発の発砲音からして、かなり連射の利く────サブマシンガンなどがそれにあたるか。
 流石に細かい特定は不可能だ。が、リコイルを考慮していないかのような連射から考えて、おそらく扱っている者は素人に違いない。

 ──さて、入り口を守る能力者の話によればこの銃声、敵の物ではないだろうと言う話だが、近場で悲鳴と銃声などと、一般人は気が気ではないだろう。

 会ったら注意ぐらいはしておくべきか。戦いの方法を知る一個人として頭の片隅に留めてから、視線をぷちユズに移ろわせる。
 鎌を握りしめ、何やら憤っているらしい彼女を軽く諫めると、無造作に頭に乗せながら「行きますよ」と短く言う。

「みぃ……」

 ぷちユズが体を柑奈に預けながら、不満げに呻き声を漏らすが、柑奈は当たり障り無く苦笑する以外、それに応じる術を知らなかった。



 ※



「…まだかかりそう?」

 ぽつりと呟き、キヨラが視線を移ろわせた先には、ぬいぐるみの体で過去の映像再生への準備を進めるベルフェゴールの姿があった。

「あなたも大概……あいや、そこまで待つものでもない、です」

 言いかけた口を紡ぎ、無造作に応答したベルフェゴールのそれには、どことなく不満が見え隠れしているように思えた。

 何を言おうとしたのか。多少気になるところではあったが、問い詰めた所で意地悪にしかならないだろうか。思い、「そう…」とだけ曖昧に呟いたキヨラは、机に立てた右腕で頬を支えながら、所在のない瞳を窓の外に向ける。

 一瞬だけ、学校の備品でくつろぐのもどうかという考えが頭をよぎるが、心労にも似た何かがキヨラの腰を椅子に沈ませ、それを有耶無耶にした。

199: 2014/09/14(日) 15:19:49.15 ID:tehdn47j0
 しとしとと降り続く雨は一向に止みそうにない。
 ふと、寝息を立てるユズを横目に伺い、これからの事を頭に浮かべると、この雨は少し縁起が悪いような気がしてならなかった。

「…鬼が出るか蛇が出るか…」

 雨音に消え入ってしまいそうな声で、ぽつり。

 ―――認識されていない存在、存在しないはずの存在、存在しないはずのモノに生み出された存在。
 まるで禅問答だな、と苦笑する。

 「あの日」以来というもの、この世にはあまりに多くの存在が現れ過ぎている。自分達悪魔にしたって、間違いなくその一つだ。そんな世の中、解析の効かない相手と言うのも、もしかすれば、そう不思議な存在ではないのかも知れない。

 が、それにしても妙だ。
 カース───或いは、七つの大罪。人と隣り合わせに存在してきたそれは、少なくとも悪魔の領分だった筈だ。操り、囁き、煽り、喰らう。───尤も、それを成せるのは極一部ではあるが───そうしてきた筈だ。
 しかし、八つ目の属性などと。七つの大罪を利用することはできても、混ぜるでもなく、組み合わせるでもなく、新たな概念を生み出すことができるだろうか。
 恐らく無理だ。悪魔の最上たる魔王でさえ、憤怒という一つの概念に甘んじているのだから。

 どこかから突然として現れたというのなら、まだ解析ができないことも納得ができよう。しかし、そこに大罪が関わっているのならば話は別だ。既存の法則に現れたイレギュラー。或いは、外なる何者かがこちらに介在してきたとでも言うような。
 どちらにせよ、無関心を決め込むにはあまりに危険だ。少しでも情報を集め、然るべき対処を取らねばなるまい。その上でベルフェゴールの能力があてにならないのは痛手だが――――。

200: 2014/09/14(日) 15:21:08.69 ID:tehdn47j0
 そこまで考え、ベルフェゴールの能力に頼りすぎか。とも思いつく。
 一目見るだけで全てを知り尽くし、プライバシーなどと鼻で笑ってしまうような彼女の能力は、もしかすると便利すぎるのかも知れない。偶には自分の脳味噌を使え、とでも言われているような気分だ。

 この未知との遭遇は、さしずめ『怠惰』の上に胡座をかいてきたツケか。

 腹から鼻息を吐き出しながら、窓の外の虚空へとふっと笑いかける。ルシファーがこちらを怪訝そうに伺うのをにべもなく受け流すと、不意に笑顔を打ち消した。

 ──なんにせよ。

 手持ち無沙汰の左手に一本のメスを呼び出す。

 ───可愛い後輩の姿を真似て襲うなどと、随分と味なマネをしてくれたものだ。

 銀色に光るメスの表面を覗き込めば、すっと細められた自分の瞳がそこに映る。その奥には、冷淡な怒りの焔が揺らめいているのが自分でも解った。
 鋭い眼光と暫し見つめ合い、視覚から己の怒りを確かめると、内に秘めた静かな激情が色を強め、確かな形が浮き彫りにされていくようだった。

「―――次会った時は……」

 メスの冷たさを塗り替えるように、強く握りしめる。

 意識の外で呟いた言葉に続きは無かった。
 無粋だったと言うべきかもしれない。

 ―――その続きを決めるのは、それこそ「その時」でも遅くはないのだろう。

 指を脱力させたそのままで、さながらペン回しのようにメスを振り回す。刃の空を切る音は、普段よりも鋭かった。



 がらがらごとん。と、対カースの仕掛けが施された扉が開かれたのは、一回転したメスが元の位置に収まろうとした、その直前だった。

 はっとして、取り落としそうになったメスを消滅させてから、回転椅子をきぃ、と回す。

201: 2014/09/14(日) 15:22:44.09 ID:tehdn47j0
「失礼します!」

 甲高さをも覚える大きな声は、静寂に慣れた耳には少し痛い。耳の奥をちくりと刺され、思考に沈んだ思考が現実に引き戻されるような錯覚を憶えるほどだ。
ホケンシツ
 ここがどこだと思っているんだ、と思い、眉に皺が寄りそうになるのを必氏で堪え、「何の用かしら?」と後方に投げかけた声はそれでも怒気を孕んでいた。

 視界に映った少女は、十代半ばほどだろうか。
 キヨラの視線が突き刺さると、気の楽そうな笑みを硬直させて、暫し静止した。

「っ…ゴメンナサイ…」

 察しの悪い人間ではないようだ。
 きっちりと頭を下げ、だいぶ控えめになったと分かる声音を聞くと、事を荒げることもないか、と思い、顔の筋肉を脱力させる。柔らかな笑みを顔に浮かべ、ベルフェゴールとルシファーに軽く目配せをしてから、無言で続きを促した。

「あー…人に用事がありまして…」

 腰が引けているような態度で、下手に出るような態度を見ていると、そんなに怖がらなくてもいいじゃないかと思わないこともない。
 そこまで怖い顔をしていたのだろうか。そういう反応をされると、こちらも気になってしまうというものだ。

「この子の……飼い主?を探してるんです」
「みっ!」

 言うが早いか、少女の片口から顔を覗かせた大きな瞳が、その体を潜ませながら回りを見渡し、数秒とも無くキヨラの視線とぶつかる。

 その姿、見覚えがあるなどという話ではなかった。目を丸くして、「あら、」と呟くと、キヨラが何と言うよりも先に、「みぃ!みぃ!」と繰り返し鳴いたぷちユズがその体を浮かばせる。不可視の力で身を翻し、キヨラの胸元へと飛び込んだ。

「み!み!」
「はいはい、こっちよ」

 焦ったように鳴くぷちユズに対し、軽く指を指して主の姿を示してやる。その指を追従した視線で主の姿を捉えたぷちユズは、何がどうなっていると理解するまでもなく、ユズの横たわるベッドへと滑り込んでいく。

202: 2014/09/14(日) 15:23:42.31 ID:tehdn47j0
「あれ、お知り合いですか?」
「知り合い…?…そうね、知り合い…」

 その表現は使い魔にも適用していいのか。なんだか妙な感覚を覚えたキヨラは、思わず確かめるように反芻していた。
 少女の顔をちらりと伺い、また、ベッドの方へと視線を戻す。見定める瞳に映るぷちユズは、主の容態を知るやいなや鳴き散らすのを止め、静かに、その顔を心配げに覗き込んでいるらしかった。

 ぷちユズが祈るように目を閉じると、白い鎌が俄かに発光し、回復の力を湛えた魔力がユズの体を包み込む。───無論、全身の傷は既にキヨラが治療済みだ。なれば、当然無駄な行為であり、使い魔にとって命にも等しい魔力をただ大気に還元した以上の意味を持つことは無い───。

 が、しかし、嗚呼その行為の、なんと健気で微笑ましい事か。成る程あのように意志の籠もった仕草を見せられてしまえば、「知り合い」と表現したくなるのかも知れない。

「…そうね、そんなところよ」
「…それにしても、です」

 温かい物を感じながらつぶやくと、少女が横で声を低くし、物憂げに口を開く。
 何事か。脈絡が読み取れず、きょとんとした顔で尋ねる視線を少女に向けると、静かに嘆息を吐き出した彼女は、ユズを気遣うような足取りでその近くへ歩み寄る。
 一瞬、反射で引き留めようとしてこちらの手が伸びかけた。が、何をされるわけでもないだろう、と内心に呼びかけると、己を諌めるように手を戻し、少女の横顔を注視することに努めた。

「聞きました、…気絶してて、運ばれたって」

「……………」

203: 2014/09/14(日) 15:24:56.37 ID:tehdn47j0
「私ですね、荒事……と言っては何ですが、そういう事ができる力があるんです」
「というのも、それが仕事みたいなモノでして…」

 少女は、視線を自らの掌に落とし、拳を握り締めながら、さながら懺悔を思わせる口調で言葉を紡ぐ。揺れる瞳には、なにやら、後悔のようなものが秘められているように思えた。

「……誰かに頼るとか、或いは駆けつけられたらとか、できなかったんでしょうか」
「…私、何というか……」


「……悔しい、です」

 沈痛な面持ちで、多くを含んだ一言を絞り出すと、それっきり目を伏せ、言葉に詰まったように押し黙る。

 悔しい。
 何が。己の無力感か。害敵を見逃した事か。頼られなかったという感覚か。『仕事』とやらを為せなかった事か。裏に秘めた物を予測する言葉が脳裏に去来する。
 が、その後悔を修飾する言葉は無かった。

 故に、憶測は憶測の域を出ず。もしかすれば、彼女自身上手く表現できていないのかも知れない。

「…そうね…」

 例えば、助けを呼ぶであるとか。
 この学園に居るヒーローに頼るなどはしなかったのだろうか。自分が駆けつけるのが遅れていれば、などと考えるとぞっとしない。

 私が助けてやるのもそうだが、もう少し他人に頼ることも教えておいた方が良いか。

 『ヒーロー』が一般化した今日この日、呆れるほどのお人好しなど、そう珍しい物ではなくなっているのだから。

「一人で戦うことに、慣れちゃったのかしらね…」

「……え?」
「少し、ね…」

 曖昧に返答すると、何がなんだか。とでも言うように少女が小首を傾げるのが見えたが、視線を窓の外に逸らして、その答えを保留にする。
 煙に巻かれたような顔をしつつも、追求の言葉は無かった。それっきり、二人が口を紡ぐと、話し声に形を潜めていた雨音が、途端にその存在感を示し始める。

204: 2014/09/14(日) 15:26:22.73 ID:tehdn47j0
 何を考えるでもなく、ただばたばたと窓を突く音に聞き入っていた折、ふと思い付き、「名前、教えてくれるかしら?」と、小石でも投げるように言う。

「名前ですか?」

「その子連れてきてくれたでしょう?…恩人の名前くらい、ね」

 ぱちりと目配せを寄越し、若作りしたウインクを投げかけると、「そういう事なら!」と言い少女は、自慢げに胸を張ってはっきりと声を発した。

「有浦柑奈です!」

 気の良さそうな笑みの下、右胸に張り付いたエンブレムのような物が栄える。不思議と目を引くその輝きを目蓋の裏に記憶すると、「アリウラカンナ、ね…」と響きを確かめるように口中で呟く。

「…わかったわ、ありがとうね」

「…それじゃあ、私はこれで」

 少女は短く言うと、何時の間にか布団に滑り込んでいたぷちユズへ小さく手を振り、最後にキヨラと視線を交わしてから扉へと向かう。
 その背中は余韻に浸るまでもなく、ばたんと閉じた扉に遮られ、微かに聞こえる足音も、一歩の度に遠のいて行くのが分かる。


 その足音が消え行き、ぱったり聞こえなくなるのを待ってから、キヨラは回転椅子をきぃ、と回してベルフェゴールとルシファーに正対した。

205: 2014/09/14(日) 15:27:31.58 ID:tehdn47j0
「…喋っても良かったのに」

「…えー…変に絡まれても面倒ですし…」
「右に同じです♪…怠惰が移っちゃったかしらぁ?」
「しーらなーい…」
「ふふ…混ざったら黄緑ね」

 沈黙を保ち、ぬいぐるみその物となっていた二人の悪魔が、固まった体を解すように動き出す。スレトレッチをするぬいぐるみという、なんとも微笑ましい光景を眺めると、自然と吹き出してしまいそうになる。

 頬がひきつるのを何とかこらえ、胸からこみ上げて、喉にでかかったものを飲み込むと、「一つ、聞いても良いかしら?」と、悪魔二人へ投げかける。

 「なんですか?」とベルフェゴール。
 嫌な予感を隠そうともせずに返答したので、「そんな大した事じゃない」と前置きをしてから、続きを言った。

「……正直に言ってほしいのだけれど」





206: 2014/09/14(日) 15:28:54.13 ID:tehdn47j0







「……ウインクはちょっと若すぎたかしら?」







「「……………」」

 瞬間、場が凍り付くのをしっかりと認識することができた。ぬいぐるみ故に表情の変化を読みとる事はできなかったが、それでも隠しきれない微妙な空気が、無言の内から発せられていた。

「な、何、その……」

「いや…その……」
「それ聞くのぉ、ズルいと思うんですけど…」

 まるで、知り合いの情事を目撃してしまったかのような気まずさがあった。予想以上に深刻な反応を五感で認識したキヨラは、思わず、ずいと体を乗り出し、「ちょっとどういうこと?」と焦り半分で問いただしていた。

「お、怒りません?」

「それは……」

 確信が持てず、口ごもると、ルシファーはベルフェゴールに近寄り、「ちょっとベルちゃん…」と怯えるように耳打ちをする。

「ええと、考えてることは同じだから……あとベルちゃんは色々駄目だから」
「…言わなきゃ駄目、ですかぁ?」

 なぜそこまで嫌がる。
 こうなれば最早意地だ。

「…言ってよ…私も覚悟を決めるわ」

 腕を組み、どっしりと構え、ぬいぐるみ二つを真っ直ぐ見据える。

「じ、じゃあ言いますよ…?」
「怒らないで下さいねぇ…?」

 口々に言った言葉に、思い頷き一つで返答して、視線でその続きを催促する。
 気付けば張りつめていた、妙な緊張感の中、悪魔達は何度も躊躇った後、深呼吸のような素振りを見せ、腰を据えてじっくりと見つめ返してきた。

 何故だか気圧されそうになるのを堪え、また、重く頷くと、もう戻れないとでも言うようなため息を吐き出し、運命を共にするように手を繋いでから、揃って重い口を開いた。

207: 2014/09/14(日) 15:31:01.42 ID:tehdn47j0






「「…目蓋が痙攣したのかと思いました…」」






「…………」

「……………」



 沈黙を冷やかすように、雨音がばたばたと窓を叩く。

 やってはいけないことをやってしまった時さながらの悲壮感が、三人の微妙な佇まいから発せられていた。




 実時間の何倍にも感じられた静寂の中、その内二人は意気消沈した顔を見合わせてると、誰に言われるまでもなく、頭を下げていた。






──────────………………

─────…………


※ぷちユズ(白)がユズの下に返還されました。

※有浦柑奈の情報をベルフェゴールが入手しました。

208: 2014/09/14(日) 15:33:13.50 ID:tehdn47j0
…しょーもないオチを付けてしまい、キヨラ殿には、誠に申し訳なく…

お わ り (ジャンピング土下座する音)

209: 2014/09/14(日) 22:50:52.17 ID:Hl+ho+GP0
乙ですー
なんというオチだ…ww

ユズはヒーロートラウマ的な感じになってるからね…キヨラさんがなんとかせねば



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part11