232:◆VYL8pkeawZa. 2014/10/08(水) 16:45:28.71 ID:16bZeEEDo


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ



 大罪VS大罪のイベント発生させてみた
まずは前編から

233: 2014/10/08(水) 16:46:53.06 ID:16bZeEEDo
――――――
―――――
――――

しとしとと降り続く冷たい雨。
こんな夜に傘も差さずに一人で歩いていると心が壊れてしまいそう。

だから壊れないように。
欲望で心を塗り固めた。

「―――こんな酷い夜」

「ふふっ、まるであの時と同じよね」

罪を司る悪魔といえど、最初から悪魔だったわけではない。
天使が罪を犯して、神に背いた。
神に仕える存在が神を裏切る行為をして許されるわけがない。
だから、堕天をして悪魔となる。

けど、悪魔になったことに後悔は無い。
むしろ欲望のままに生きていられる自分自身。
そして欲望に塗れてた甘い世界を見ていられる自分自身が愛おしい。

「―――後悔があるとすれば」

「なんて、もう遅いわね」

金色の瞳の記憶に宿るのは、諦めか、それとも何かを渇望しているのか。

「答えなんて―――」

「――まぁ、あたしにはわかるけどね」

「――!」
----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



234: 2014/10/08(水) 16:48:08.68 ID:16bZeEEDo
「結構過去のイベントに執着するタイプなんだね」

「って、言ったらネタバレになっちゃうか」

少女は携帯ゲーム機の画面に視線を落としながら次のコマンドを入力する。
ゲーム機は防水加工だ。
雨に濡れたところで本体に支障は無い。

「とりあえず、あたしのミッションなんだけど…」

「―――面倒だから、とりあえず一緒についてきてくれない?」

「…貴女は人間の肉体と精神を乗っ取ったって聞いていたのだけどね」

「―――ベルフェゴール」

速水奏こと、色欲を司る悪魔アスモデウスが目の前の少女の名を口にする。

「選択肢はNO一択かぁ。まぁ、そうだよねー」

本来の姿をしたベルフェゴールは、あくまで面倒くさそうアスモデウスの心の声を読み取り、肩を竦めてみせる。

235: 2014/10/08(水) 16:49:28.69 ID:16bZeEEDo
「貴女についていく、ついていかないにしろ…」

「こうして貴女から私にコンタクトを取りにくるなんて珍しいこともあるものね」

「だから今日は雨なのかしら?」

実際ベルフェゴールから、他の者に接触することはほぼ皆無ともいえる。
コミュニケーションが面倒なのももちろんだが、そもそも「怠惰」という属性故に、欲望や野心を持って行動する他の大罪悪魔とは反りが合わないのが一番の理由だ。

「あたしだって別に好きに会いに来てるわけじゃないよ」

「けど、今のあたしの所有者が悪魔使いが荒くてさー」

「とか言って、逆らおうもんなら何されるかわかったもんじゃないし―――」

「―――平行線な会話は望まないわ」

アスモデウスが言葉を遮る。

「簡潔に答えてもらいたいのだけど…」

「――――大罪の悪魔が、大罪の悪魔を狩りに来たってことでいいの?」

「――――説得でどうにかなる相手とも思ってなかったしね」

アスモデウスは不敵に笑い、ベルフェゴールはため息をつく。

236: 2014/10/08(水) 16:50:46.15 ID:16bZeEEDo
そもそも、死神の過去映像再生なんて始めたのが間違いの始まりだった。
死神と白兎の戦闘の様子を映像化して再生するまでは良かったが、その映像の中にまさかアスモデウスが映っていたなんて思いもよらなかった。

過去の映像とはいえ、ベルフェゴールは「見た」ものの情報をそのまま取り入れる能力を持っている。
その際に過去映像の中に映っていたアスモデウスの情報も、不測の事態だったために誤って自動再生してしまいキヨラに見られるはめになってしまった。

しかも映し出された情報の内容が「弱っている氏神の心に付け込み誘惑する」なんて出た日には…

『ユズちゃんに振りかかる火の粉は徹底的に振り払う』

本来の肉体と能力の状態に戻してもらったとはいえ、戦闘イベントになるのはわかりきっているのだから自分では無く、好戦的なルシファーをぶつけてもらいたい。
けれど、キヨラ曰く『ルシファーに単独行動はさせられない』とのこと。
信用ないなぁ。

かといって、キヨラ自身が出向くにしても『ユズを1人に出来ない』『大罪悪魔とユズだけにしておくわけにもいかない』と。
まぁ、ぬいぐるみとはいえ、完全に能力が消えているわけじゃないし、復讐イベントの発生を考えるのもわかるけれども。

「あたしだって逃げだせるなら、逃げだしたいんだけどなぁ」

本音が思わず口に出てしまう。
とはいっても、こうして素直にアスモデウスとコンタクトを取っている自分はやっぱり少し性質が変わってしまったのかもしれない。

「ええ。望み通り自由にしてあげるわ」

「私の瞳で―――永遠にね」

「―――かと言って、あなたにあたしのルートを決められるのも癪なんだよね」

二匹の悪魔が互いの魔力を解放する。

237: 2014/10/08(水) 16:52:07.54 ID:16bZeEEDo
「…私から瞳を逸らしたらダメよ?」

アスモデウスがパチリとウインクすると同時に、その妖艶な姿を5体へと増やす。

「ふふっ。本当の私、貴女ならすぐにわかるかしら?」

「…まずはイージーモードからってことね」

幻惑魔法。
対象を「誘惑」するアスモデウスの十八番とも言ってもいい魔法だ。

パッと見ただけじゃ、どれが本物なのかなんて見分けもつかないし、幻も含めて5体それぞれが均等の魔力を持っている。

(数打てば当たるゴリ押し戦法?)

(確かに考える必要も無いし、常にゲージMAXのあたしにはベストな戦法かもしれないけど…)

(めんどくさいね)

「さぁ、いくわよ?」

5体のアスモデウスがそれぞれ呪文を詠唱し、激しい雷を呼び起こす。
そして、一斉に呼び起こした雷をベルフェゴールに向けて発射する。
自身の自己再生に優れているベルフェゴールといえど、一撃で肉体と魂の両方を持っていかれたらそれまでだ。

(5体の座標をそれぞれ、A、B、C、D、Eに分けたとして…)

(そしてあたしの座標をFとする…)

(―――本体は)

けれど、情報獲得能力による本物と幻の位置の把握。

「このフラグさえ立てちゃえば、最速クリアだよっ!」

「座標DとFの移動っ!!」

「…!?」

238: 2014/10/08(水) 16:53:26.69 ID:16bZeEEDo
「あ、ぐぅっ…!」

ベルフェゴールに放たれた無数の雷。
しかし、実際に放たれた雷を浴びていたのは他でもないアスモデウス自身だった。

「結構激しいエフェクトだったけど、結構ピンピンしてるね」

「実際はゲージ1ってとこだったのかな?」

そして、何事も無かったかのようにゲーム機を操作しているベルフェゴール。

「―――座標交換、か。初めて受けたけど、早いのね」

座標交換。
対象と自身の位置を入れ替える移送の魔術。
自己再生を筆頭に、防御に特化しているのが怠惰の魔法の特徴である。

「まぁ、今どき瞬間移動ぐらいのスキルは持ってないとね」

「そう…怠惰なんて自己を磨き上げることも出来ない存在なんて見下していたけど…」

「楽しませてくれそうね。ちょっと見直したかも。ふふっ」

「そりゃ、どーも」

(見直したなんて、よく言うよ)

気の無い返事をしつつ心の中でため息をつく。
そしてゲーム機でアスモデウスの心の声を読み取りながら、次の攻撃に備えてコマンド入力に移る。
すぐに第二破が来る。

239: 2014/10/08(水) 16:54:54.41 ID:16bZeEEDo
「私が次にどんな攻撃を仕掛けようとするのかも、貴女には見透かされているのよね…」

「でも…」

アスモデウスが再び、その姿を5体へと増やし呪文の詠唱に入る。
それと同時、上空に激しい稲光を放つ無数の雷雲が姿を現す。

「今度は落雷ね。だけど、これも―――」

「……うげっ」

「―――結果までは予測出来ないでしょう?」

呪文を詠唱したアスモデウスの心の声を読み取って表示された画面。

『どこに落ちるかなんて私にもわからない』

「ランダム攻撃かぁ…!」

無数の雷が一斉に地上へと襲いかかる。
ベルフェゴールに直接狙いをつけた術なら、また座標交換で入れ替われば良い。
けれど、落雷の位置がランダムとなると自身の反射神経だけで対応するしかない。
情報獲得能力は「雷がどこに落ちる」といった「結果」の情報までは読み取れない。

激しい轟音と、光が次々と襲い掛かる。
地面を抉り、木を焼き切る、その光景は天変地異ともいえるだろう。

「(人気の無い場所だから良いものの、はた迷惑な全体攻撃だね…)」

ベルフェゴールは表情こそ面倒そのものな態度を取っているが、あくまで冷静に落雷のポイントを自身の判断だけで予測し回避する。
しかし落雷の数があまりにも多すぎたせいか、ついに一つの落雷の側撃を浴びてしまった。

240: 2014/10/08(水) 16:56:18.76 ID:16bZeEEDo
「どう?雨の中、雷に撃たれるのって刺激的でしょう?」

並の相手なら致命傷ともいえる一撃だろう。
絶命してもおかしくは無い。

しかし相手は自己再生に優れた悪魔。
アスモデウスは安否も確認せず問いかける。

「…ゲージMAX、体力MAXでも当たると痛いのは痛いんだからね」

アスモデウスの問いかけに非難の声で応えるベルフェゴール。
その肉体には傷、火傷一つ、ついていない。

だが、雷を受ける前とは受けた今では明らかに現状は変わっていた。
いつ何時も手放すことの無い携帯ゲーム機が、その手元から無くなっている。
側撃雷の威力に耐え切れず、消滅してしまったのだ。

「ゲーム機、弁償してよねっ」

「ふふっ、たまには現実世界だけを見つめるのも悪くないと思うけどな?」

「誘惑、幻惑の使い手がよく言うよ」

いつの間にか、雷雲は消え、アスモデウスの幻も消滅していた。
先ほどの落雷に巻き込まれたのだろうか。

「まっ、そんなことはどうでもいいんだけどね…」

「濁りはあるけどイイ眼をしているわ…素敵な夜にしましょう」

241: 2014/10/08(水) 16:57:46.61 ID:16bZeEEDo
夜の舞台。
この場にいるのは二匹の大罪悪魔だけ。

怠惰と色欲。
この不可思議な戦いを雨音が奏でる。

「言っておくけどゲーム機が無くなったからって、あたしが形勢不利になったわけじゃないよ?」

本来、情報獲得能力は「見た」情報を自身の脳に取り込み再生する能力である。
ただベルフェゴールの場合は面倒だからとゲーム機に情報を移し替えていただけで、決して自身の持つ能力と情報量を失ったわけでは無い。

「けど、オモチャが無くなった以上、もう私から目を背けることは出来ないんじゃない?」

「目を合わさなけば良いだけだから難易度は変わらないよ」

色欲を司るアスモデウス。
彼女の能力の本質はその金色の瞳にある。
その瞳に吸い込まれてしまうと、魅了状態にされてしまい、もう彼女から目を逸らせなくなってしまう。

(早い話がコマンド入力が出来なくなっちゃうんだよね。そうなったらあたしはゲームオーバー)」

(けど、幻を作り出した時は、本体と区別する為に、どうしても全体を「見なくちゃ」いけないんだよね…)」

「ふふっ、ずっと視線を逸らしたままでいられるのかしら?」

アスモデウスが三度その姿と同じ幻を作り出す。
魔力の出し惜しみはない。
5体、6体、7体と、その妖艶な姿を増やしていった。

(8、9、10…か)

目を合わせぬように一瞥し、本体と幻を見極める。
その区別が付けば、あとは本体と目を合わせないように対処すればいい。

―――しかし

(えっ?全部、幻?)

「―――目の前よ」

「―――!?」

242: 2014/10/08(水) 16:59:13.95 ID:16bZeEEDo
『幻を出した直後に思いついた奇襲攻撃、上手くいったみたいね♪』

直後アスモデウスの心の声が脳内に送り込まれてくる。
油断した。
アスモデウスの本体と幻を見極める、心の声を読み取っていない、その刹那。

「くすっ。瞬間移動は必須スキルなんでしょう?」

「…幻に紛れて移動してただけでしょ」

「けど、貴女の対処には間に合ったわ」

「こういう戦略は技を出す前に思いついてよねっ」

「ふふっ。機転が利くオンナノコって素敵でしょう?」

「自分で言うの?」

(…とはいえ、まいったなぁ)

情報獲得能力の使い手としたことが、幻に紛れる本体の情報を取りこぼすとは。
手入れた情報をずっとゲーム機で表示していたツケだろうか。

「あいにくと、オンナノコ同士なのが残念よね…」

「そう思ってるなら解放してくれたら嬉しいな?」

「ふふっ、だぁめ♪」

「ですよねー…」

243: 2014/10/08(水) 17:00:40.89 ID:16bZeEEDo
緊張感の無い会話をしているが非常にマズイ。
完全にアスモデウスと目が合ってしまい、その術中にハマってしまった。
自己再生はあくまで魔力と肉体の回復であり、魅了や洗脳といった精神異常の回復には対応していない。

(さて、ここで問題だ!)

(魅了状態にかかってしまい、身動きがとれなくなってしまったあたしがどうやってこの詰みポイントを回避するのか?)


3択 ひとつだけ選びなさい

答え1.かわいいベルフェゴールは突如反撃のアイディアがひらめく

答え2.キヨラさんが助けにきてくれる

答え3.あきらめる。現実は非常である。


(……)

(…面倒だし、もうあきらめる?答え3でゲームオーバー?)

244: 2014/10/08(水) 17:01:30.09 ID:16bZeEEDo
(まぁ、あたしのユニットとしての参加はこれでオシマイってことで、それでもいいかもね)

(あとはキヨラさんと氏神さんと他の悪魔たちで好きにプレイしててよと)

(……)

(…なんか)

(なんかあたしだけ、またすぐに退場ってムカつくなぁ…)

「…アスモデウスさん、聞きたいことがあるんだけど」

「あら?なにかしら?」

「貴女の心を欲望で満たすにはまだ時間がかかりそうだし、意外と楽しませてもらえたからね」

「ご褒美で少しだけなら、良いわよ?」

「案外話せる人で、うれしいよ」

答え4.時間を稼ぎつつ、次のフラグを待とう。

245: 2014/10/08(水) 17:03:11.03 ID:16bZeEEDo
情報

・アスモデウスが心の弱っているユズを狙っています

・ベルフェゴールが肉体と魔力を回復してもらいソロプレイ状態になりました

・学園から少し離れた人気の無い場所でベルフェゴールとアスモデウスが交戦中。ベルフェゴールは時間稼ぎに入ります。キヨラ達は保健室で待機中

・アスモデウスは過去に何かあって堕天した模様。ベルフェゴールは知っているようです

・ベルフェゴールのゲーム機が雷に焼かれました。かわいそうに

246: 2014/10/08(水) 17:04:30.55 ID:16bZeEEDo
・座標交換

コマンドを唱えることで指定した相手と自分の位置を瞬時に入れ替える怠惰の魔術。
自身に向けられた攻撃を回避しつつ、相手にダメージを与えるというのが一般的な使い方。
けど、ベルフェゴールは普段この魔術を移動の為だけに使っている。
位置交換された相手は良い迷惑である。


・別魅

自身の幻を生み出す幻術。
使用者の魔力が高いと幻に魔力を与えて攻撃をさせることなどが出来る。


・落雷連射

雷雲を発生し強烈な雷を地上に向けて発射する。
どこに落ちるかわからないうえに連射可能。
大迷惑である。

247: 2014/10/08(水) 17:06:28.16 ID:16bZeEEDo
唐突に戦闘を書きたくなって無理矢理書いた
前編って書いたけど後編はまだどうなるかわからない…
でもベルフェゴールも戦えるとこを書いてあげたくて…

奏さんをお借りしました

248: 2014/10/08(水) 21:13:27.22 ID:4kPhb3yn0
乙ですー
アスモデウスに狙われるとかユズ超やべぇの
やっぱりアスモデウスさん強いですなー…



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part11