677: ◆3QM4YFmpGw 2015/01/28(水) 01:27:20.68 ID:WqG/vVM70


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ



  みんな、待たせたなっ!(白目)
いよいよ将軍襲撃事件が終結するぜっ!(うつろな目)

678: 2015/01/28(水) 01:28:36.90 ID:WqG/vVM70

爆音。

不夜城戦艦ブラムの横腹に手榴弾で穴を開け、拓海、ライラ、奈緒、爛が内部へ突入した。

拓海「…………あん?」

少しして、拓海が違和感に気付く。

奈緒「…………おかしいな、すぐに兵が飛んで来ると思ったけど」

突入した直後に大量の兵士と遭遇する、そう覚悟していたのだが……。

爛「そもそも、近くに気配がねえな」

ライラ「逃げてしまいましたでしょうか?」

実際は、ブラムの自動化が進んでいる為に、艦橋に数人しか乗組員がいないだけである。

奈緒「ま、邪魔が入らないならそれでいいか。早いトコ将軍探そうぜ」

拓海「まだ上の鎧の中にいるか、それとも艦の方まで降りてきてるか……」

ライラ「んー、お外に出てしまったかも知れません」

爛「そんときゃ相葉先輩とオトハがどうにかすんだろ。俺たちは手分けして中を探そうぜ」

爛の提案に、三人はコクリと頷いた。

拓海「よし、アタシは艦の右舷側を見てくる! ライラは左舷側だ!」

ライラ「了解でございます」

二人がそれぞれの方向へと駆けて行く。
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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



679: 2015/01/28(水) 01:29:29.50 ID:WqG/vVM70
奈緒「じゃ、アタシ達が鎧か」

爛「……いや、獣牙は艦橋を目指してくんねーか?」

奈緒の提案を、爛が断る。

奈緒「艦橋?」

爛「艦内にトラップが仕掛けられてる可能性は排除できねえ。そんでそのトラップを解除出来る場所があるとすりゃ艦橋だろ」

奈緒「なるほどな……よし分かった。アンタも気をつけろよ!」

奈緒も艦橋を探しつつ艦内の奥へと進んでいく。

爛「…………」

一人残された爛は、静かに口元を歪めた。

爛「へっ、思ったより簡単にいったな」

先程奈緒に言った爛の言葉は、実は全て適当。

一人になる為の口実に過ぎないのだ。

爛は軽く周囲を見渡す。

爛「…………来たか」

爛が一言漏らすと同時に、艦内へ赤い球体が侵入してきた。

ピンポン球ほどの大きさの、人の眼球のような形の赤い球体。

フワフワと宙を漂うそれは、爛の眼前で静止し、声を発した。

『待たせたね』

その声は、現在教室で待機中のはずのクールPのものだった。

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680: 2015/01/28(水) 01:30:11.98 ID:WqG/vVM70
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美世「クールPさんお待たせっ。薬箱と包帯と借りて……」

薬箱を抱えて教室に戻ってきた美世は、言葉をそこで切る。

クールP「…………すぅ」

クールPは、机に顔を伏せてか細い寝息を立てていた。

美世(寝ちゃってる……)

近くの席に腰掛け、机の上に薬箱を置く美世。

美世(屋上で戦ってたらしいし、お疲れなのかな?)

普段の生真面目なクールPからは想像もつかない姿に、美世は少し口元を緩めてしまう。

美世(起こすのも悪いし、そっとしとこうかな)

美世「……じゃ、あたしもっ」

美世もクールPと同じ姿勢を取り、眠る態勢に入った。

クールP「…………」

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681: 2015/01/28(水) 01:31:03.90 ID:WqG/vVM70
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吸血鬼。

彼らはその瞳に、魔眼と呼ばれる不可思議な力を宿す。

紅月の超☆騎士団長キヨミの『石化の魔眼』や、サクライのエージェントチナミの『魅惑の魔眼』がいい例である。

勿論、それはクールPも例外ではない。

彼が持つ魔眼は『看破の魔眼』の名を持つ。

クールP本人の体に流れる力を一部カットする事で、眼球のような赤い球体『朱眼』へ意識の半分を移行する。

そして、本体が侵入出来ないような場所へ入り込み、全てを見渡し、見透かす。

この朱眼の前には、分厚い鋼鉄の壁も最新鋭の赤外線レーダーも魔力による障壁も意味を成さない。

これが看破の名を持つ所以である。

朱眼『既に艦内はスキャン済みだ、鎧の内部まで最短コースを案内するよ』

爛「ハッ、頼もしいこって」

朱眼『急ごう、他の三人に先を越される前に。まずはそこからまっすぐ、三番目の十字路を左だ』

爛「おうよ!」

朱眼の案内を受け、爛はまっすぐ走り出した。

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682: 2015/01/28(水) 01:31:58.68 ID:WqG/vVM70
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奈緒「ハァッ……ハァッ……ここが艦橋か!」

迷路のように入り組んだ艦内を抜け、奈緒はようやくブラムの艦橋に到着した。

奈緒「…………誰もいない?」

辺りを見渡すが、艦橋はもぬけの殻だ。

人が隠れられるような物陰も無い。

奈緒「……ああ」

艦橋の窓から外を覗いて、奈緒はそのワケを理解した。

窓の外で家畜派の吸血鬼と見られる男が数人、地面に倒れている。

大方、墜落した際に敗北を察し、党首である将軍を見捨てて逃げ出したのであろう。

よほど慌てていたのか、この雨への対策も忘れていたようである。

奈緒「…………ま、あれなら後でGDF辺りに捕まえてもらえばいいか。それよりトラップは……」

艦橋内をあちこち探しまわるが、トラップの解除装置らしきものは見当たらない。

奈緒「……まあ、艦内何処そこ走り回ったけどトラップなんか見つからなかったもんな」

再び窓から外を見る、と。

奈緒「ん?」

奈緒達が外壁に開けた穴へ、飛び込んで行く人影が三つ。

先頭にいたのは少女のようだったが、紅の鎧に黒い傘というミスマッチな出で立ちだ。

奈緒「なんだ……まさか将軍の仲間か!? こうしちゃいられない!」

奈緒は艦橋の端まで飛び退き、二つ残る手榴弾の内一つを正面の窓へと投げ付けた。

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683: 2015/01/28(水) 01:32:47.07 ID:WqG/vVM70
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鎧内部。

将軍「……っく、うぅ……」

梨沙の攻撃による衝撃で気を失っていた将軍が目を覚ます。

将軍「……な、何が起こった……! こ、これは……信じられん、この不夜城戦艦ブラムが……墜ちたというのか……!?」

信じがたい事実に驚くも、将軍は落ち着いて立ち上がる。

将軍「…………ブラムが墜ちたとなれば、恐らく人間共は直接乗り込んで来るだろう……」

傍に備え付けてあった鎧を着込み、盾を手に持つ。

将軍「ブラムを墜とすとは天晴れなり人間共。だが……」

そして、剣を強く握る。

将軍「この将軍の首、容易く取れると思うでないぞ!!」

雄叫びをあげた将軍はそのままゆっくりと振り返った。

将軍「いや、人間ではないか……貴様、もとい……貴様『ら』はな……」

684: 2015/01/28(水) 01:33:20.39 ID:WqG/vVM70
その言葉の直後、戸が開いて爛が姿を現した。

爛「んだよ、奇襲するつもりがバレバレじゃねえか」

朱眼『そうだね、少しだけ彼を侮っていたみたいだ』

将軍「ククク……流石は利用派吸血鬼。このような時にも己が手は汚さぬか」

将軍は含み笑いしながら剣を構える。

爛「ハンッ、勘違いすんなよ脳筋ジジイ」

それを見た爛が嘲笑して手榴弾を取り出す。

将軍「何だと?」

爛「如何にも『俺がコイツに利用されてる』みてえな言い方だけどよぉ……そいつぁお互い様なんだわ!」

叫んで手榴弾を天井へと投げつける。

将軍「なにっ!?」

爆音と共に天井に大穴が開き、癒しの雨が鎧の内部へと降り注ぐ。

将軍「ぐっ……しまった……!?」

685: 2015/01/28(水) 01:34:04.70 ID:WqG/vVM70
爛「俺もコイツを利用してる、相互利用ってヤツさ」

大雨という流水の中に突然身を晒されて弱る将軍を、爛は嘲って足蹴にする。

将軍「ぐぅぅっ……卑怯な……!」

爛「はぁ? 卑怯ってお前、スポーツでもやってるつもりだったのか?」

爛の脚に力が込もり、将軍の腕がミシミシと音をあげ始めた。

将軍「ぐぁぁっ……!!」

朱眼『爛、その辺でいいよ。あとは鎧と剣を剥ぎ取ってしまえば彼に戦う力は残っていない』

爛の傍らに浮く朱眼が、その暴行を止めた。

朱眼『後はアラクネの糸で縛り上げてしまえば…………っ、下がれ爛!!』

爛「っチ!?」

朱眼の言葉に反応して、反射的に飛び退く爛。

爛「……何者だ、テメェ?」

振るった剣を鞘に収め、乱入者は爛の方へ向き直る。

686: 2015/01/28(水) 01:34:44.57 ID:WqG/vVM70
キヨミ「私はキヨミ、家畜派吸血鬼所属、紅月の騎士団の超☆騎士団長です!」

騎士A「将軍、ご無事ですか!?」

騎士B「将軍!」

キヨミに続いて、二人の騎士も姿を現した。

朱眼『参ったね……将軍のご令嬢か』

爛「はっ、なんてこったねぇな。まとめて片付け……って、オイッ!」

拳をパキパキと鳴らした爛は、思わず大声をあげた。

騎士達は爛に構う事もなく、将軍を救出し始めたのだ。

将軍「な、何故来たのだキヨミ! 貴様は先の無様な戦いで勘当した筈だ!」

キヨミ「それでも…………」

将軍「……?」

キヨミ「私にとって、あなたは大事な…………たった一人の、大切なお父様なんです!!」

目にいっぱいの涙をたたえて、キヨミは将軍の手を引く。

将軍「…………キヨミ…………」

爛「オイッ! 人無視して月9ドラマみてえな事してんじゃねえぞっ!」

怒った爛が二人に飛びかかる。しかし、

騎士A「させぬっ!」

騎士B「はぁっ!」

爛「んぐっ……!?」

騎士二人の連携に、あっさりと弾き返された。

687: 2015/01/28(水) 01:35:57.66 ID:WqG/vVM70
キヨミ「お父様、しっかり掴まっていて下さい!」

将軍「あ、ああ!」

キヨミの目の前の壁が開き、外の景色が露わになる。

野望の鎧の、乗り込み口だ。

そこからキヨミと将軍、そして騎士二人が一斉に飛び降りた。

爛「野郎ッ……!」

朱眼『僕らが個人で捕まえられないのはともかく……アイドルヒーローとして捕まえられないのはまずいね』

爛「わぁってる! お前は下がってろ、俺がやる!」

朱眼『分かった、気をつけて』

そう言い、朱眼は紅い霧をその場に残して姿を消した。

数秒の後に、朱眼に移行していたクールPの意識が戻る事となる。

爛「っし、待ちやが……」

奈緒「どぉっ、退け退け退けぇえっ!?」

爛「のわぁっ!?」

キヨミ達を追おうとした爛の目の前に、奈緒がザッと着地した。

爛「……っぶねぇだろ獣牙! 何いきなり降ってきてんだ!」

奈緒「ああ、悪い悪い! 艦橋にいたんだけど、ガラスが思ったより頑丈でさ……無理矢理蹴破って来たんだ!」

爛「そーかい。……って、言ってる場合じゃねぇぞ! 将軍が逃げた! 奴の娘が手引きしやがったんだ!」

奈緒「な、何だって!?」

爛「追うぞ、急げ!」

奈緒「あ、ああ!」

爛と奈緒は乗り込み口から飛び降り、キヨミ達を追った。

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688: 2015/01/28(水) 01:37:03.16 ID:WqG/vVM70
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裏山跡地付近の森林。

パップ「…………」

パップは一人、その森の中を歩いていた。

パップ(ともかく、オトハさんとやらとは一度キチンと話をしておかないとな……)

オトハ。

協力者でこそあるものの、不透明な部分が多すぎる。

それを見極めるには、直接会話するのが一番早い。

そう判断したパップは、ここでオトハを探しているのだ。

パップ(しかし何処にいるんだ? このままじゃ迷っ……!)

不意に、近くの草むらから何かが飛び出し、パップは反射的に足を止めた。

パップ「止まれっ!」

キヨミ「っ!?」

将軍「ば、バカなっ!? 既に逃走経路が知れていたというのか!?」

パップ「なっ……き、吸血鬼の将軍だと!?」

予期せぬ遭遇に、パップも、キヨミも、将軍も、当然騎士達も面食らう。

パップ「っ……仕方ない。ハングリータイガー!!」

先に動いたのは、パップ。

筋骨隆々と言う他ない彼の腕が鈍い銀色に染まり、虎のような鉤爪に変わる。

彼の体内に埋め込まれたCO……カースド・オズ、ハングリータイガーの力だ。

689: 2015/01/28(水) 01:37:46.66 ID:WqG/vVM70
将軍「き、貴様……何者だ!?」

パップ「……おたくが喧嘩売ってきたアイドルヒーロー同盟のモンだ。悪いが拘束する」

パップが爪を振り上げてジリジリと詰め寄る。

キヨミ「くっ……!」

騎士A「……超☆騎士団長! ここは我々に任せ、お逃げ下さい!」

騎士B「将軍と共に逃げ延び、何卒家畜派の再興を!」

騎士二人が剣を抜き、パップの前に立ちはだかる。

キヨミ「なっ……!?」

将軍「た、戯けっ! 貴様達も共に……!」

騎士A「いえ、我々では足手まといとなります!」

騎士B「将軍さえご無事ならば、また家畜派は立て直せます! なので、お早く!」

キヨミ「…………っ、お父様! ここは……」

将軍「ええい、分かっておる!」

キヨミと将軍が踵を返し、パップから逃げ出そうとした、その時。

690: 2015/01/28(水) 01:38:24.73 ID:WqG/vVM70
??「待て、悪者」

物陰から少女が姿を現した。

小柄で、兎のような仮面をつけていて素顔は伺えない。

ライト『ほら、本当に悪者が来たろ、光』

光「……うん」

手に持った白い剣と言葉を交わしながら、光はジリジリとキヨミ達に詰め寄っていく。

ライト『アイツはとんでもない悪党だ。学園にいる人達を皆頃しにしようとしたんだから。……許せるかい?』

光「……許せない」

ライト『そう、許せないよね。なら、どうする?』

光「……やっつけるっ!!」

そう叫んだ光は、剣を振りかざして将軍へ突進していく。

キヨミ「っ、お父様!」

光「ぅあっ……!」

しかし、それをキヨミが盾で弾いた。

騎士A「な、なんだあれは……」

騎士B「おい! あいつもアイドルヒーロー同盟なのか!?」

パップ「……いや、彼女は違う……何者なんだ……?」

騎士二人とパップは突然の事に斬り合いを止め、事態を傍観している。

691: 2015/01/28(水) 01:39:09.24 ID:WqG/vVM70
騎士A「……っ、と、ともかく! 奴は将軍を狙っている!」

騎士B「そ、そうだ! お護りせねば!」

騎士達は慌てて将軍の加勢に入った。

騎士A「アイドルヒーロー同盟よ、貴様の相手は後だ!」

騎士B「覚悟せよ不届き者!」

光「……悪者を守るんなら……お前達も、悪者だっ!!」

光が叫ぶと、彼女の剣がウネウネと姿を変える。

彼女の背丈をゆうに越える柄を持つ戦斧……ハルバートだ。

光「でえぇぇいっ!!」

光が力任せにハルバートを振るい、騎士達に叩きつけた。

騎士A「ぐぁぁっ!?」

騎士B「つ、強い……!?」

692: 2015/01/28(水) 01:39:46.79 ID:WqG/vVM70
吹き飛ばした騎士達に目もくれず、光は将軍へと突進していく。

光「うおおおお!!」

キヨミ「やらせませんっ!!」

キヨミが盾を構えて立ちはだかると、光のハルバートが再び姿を変えた。

今度は棘の生えた鉄球を先端につけた棒……モーニングスターだ。

光「邪魔するなぁっ!!」

光がモーニングスターをキヨミへ振り下ろす。

キヨミ「きゃああっ!?」

あろうことに、キヨミの盾はモーニングスターの一撃で無残に打ち砕けてしまった。

将軍「馬鹿な! 紅月の騎士団の装備がことごとく……!?」

光「後はお前一人だぁっ!」

モーニングスターを剣へと戻し、光は将軍に飛びかかる。

将軍「ぬぅっ!」

弱った体で辛うじて盾を持つ将軍は、己の最期を悟って目を閉じた。

693: 2015/01/28(水) 01:40:51.97 ID:WqG/vVM70
直後、目の前でギン、と鈍い音が鳴る。

将軍「ぬ……? なっ……おぬし、何故……!?」

パップ「氏なれちゃ困る。アンタにはちゃんと罪を背負ってもらわなきゃならないからな!」

二人の間に割って入ったパップが、銀の腕で光の剣を受け止めたのだ。

光「……アイドルヒーロー同盟の名物プロデューサー、パップ……」

パップ「お、知ってたか。いやあ、俺も有名になったなあ」

光「それが……なんで悪者を守るんだよっ!!」

パップ「……悪者なら容赦無く頃してもいいってぇのか?」

激昂する光を、静かに見据えるパップ。

光「アタシはヒーローなんだ! ヒーローは悪者をやっつけなきゃ……」

パップ「ハーッ……。あんまし言いたか無いがお前さん……そいつぁ丸っきりお子様の発想だぜ」

光「!! うるさいッ!!」

光が叫ぶと、光の剣が片手剣から巨大な両手剣に姿を変えた。

光「本物のヒーローが悪者を守るわけない! お前は偽物だッ!!」

両手剣を振りかぶり、パップへ向けて振り下ろす。

パップ「んぐっ……存外重たいな……!」

光の小さな体からは想像もつかないほど重い一撃に、パップは両手で受け止めつつも膝をつく。

パップ「ぐっうぅぅ……!」

程なく押し切られ、パップの体は縦に両断されてしまうだろう。

694: 2015/01/28(水) 01:41:26.64 ID:WqG/vVM70
しかし、その時。

爛「オラァッ!」

奈緒「ハァッ!」

光「ぅぁあっ!?」

将軍を追って駆け付けた爛が光の足を払って転倒させ、その隙に奈緒が剣を蹴り飛ばした。

奈緒「ッ!?」

爛「あ? どうした獣牙!」

奈緒「い、いや、何でもない……!」

奈緒(何だ……今の悪寒……!?)

剣に触れた瞬間、言いようの無い悪寒が奈緒の背筋を駆け抜けた。

が、その正体は今の奈緒には知る由も無かった。

695: 2015/01/28(水) 01:42:09.01 ID:WqG/vVM70
パップ「二人とも、助かった! 素性は分からんが、あの嬢ちゃんは将軍を頃すつもりだ!」

奈緒「なんだって!?」

爛「チッ、こっちが苦労して殺さずとっ捕まえようとしてんのによ!」

爛と奈緒がパップの両脇に立つ。

光「うう……!」

ライト『まずいね、光。多勢に無勢すぎるよ』

声のする方を向けば、白い片手剣がくるくると回りながら光に向けて飛んできた。

光「くっ……数の暴力なんて、やっぱり悪者のする事じゃないか!」

光が肩を震わせてパップ達を睨む。

剣は光に近づくと大きな翼へと姿を変え、光の背中に張り付いた。

光「覚えてろ、悪者ども!!」

光はそう吐き捨てると翼を広げ、空へと消えていった。

696: 2015/01/28(水) 01:43:32.62 ID:WqG/vVM70
パップ「……やれやれ、一時はどうなる事かと思ったぜ」

腕を元に戻しながら、パップはため息をつく。

将軍「……パップ殿、と申されたな……」

パップ「ん?」

将軍「我を捕らえる為とはいえ、娘や部下共々命を救っていただいた事……感謝いたす」

将軍はそう言って片膝をつき、パップへ感謝の念を示した。

パップ「……なあに、気にしなさんな。それより、改めて拘束させてもらうが、構わないかね」

将軍「不要。最早逃げるつもりは毛頭無い」

騎士A「将軍!?」

騎士B「何を馬鹿な事を!?」

将軍の言葉に、騎士達が驚いて身を乗り出す。

キヨミ「……お父様……」

697: 2015/01/28(水) 01:44:30.37 ID:WqG/vVM70
将軍「ただ……彼女らは勘弁していただけぬだろうか? 彼女らは今回の件には一切関係しておらん」

キヨミ「!?」

パップ「ふうむ……まあ、いいだろう。ただし、取り調べでそれが嘘と解りゃ、親娘共々重い罰を受けてもらうぜ?」

将軍「構わぬ。……キヨミ」

パップの言葉に頷いた将軍がキヨミに向き直る。

キヨミ「は、はいっ!」

将軍「これより、お前は真に自由の身だ。親や己の生まれを気にすることなく、好きに生きていくがよい。……そなたらもな」

キヨミ「…………!」

騎士A「……了解しました、将軍!」

騎士B「これまでの御恩、一生涯忘れませぬ!」

キヨミを挟んで、騎士二人が涙ながらに敬礼を決めた。

キヨミ「……ありがとうございます、お父様!」

少し遅れて、キヨミも涙をいっぱいにたたえて敬礼し、踵を返してその場を後にした。

将軍「ん……」

698: 2015/01/28(水) 01:45:34.29 ID:WqG/vVM70
パップ「……ああっ、そうだ。なあ二人とも、さっきの俺の腕なんだが……」

パップにとってハングリータイガーは重要機密、それを二人に見られてしまった。

しかも、片方は外部の人間。どうにか口封じをしなければ……。

爛「……あ、あー……いーよ。黙っとく」

パップ「へっ?」

奈緒「だ、誰にだって、あるもんな。知られたくない事……」

二人はそっと視線を逸らし、そう言った。

まるで、自分自身に言い聞かせているかのようだ。

パップ「……ありがとうな。さて、将軍を連行する前に、オトハさんとやらにご挨拶を……」

奈緒「いっ!? いや……それはやめといた方が……」

パップ「何でだ?」

爛「馬鹿か!? 今オトハん所には相葉先輩もいるんだぞ!? そこに裏山一つ消し飛ばした将軍連れてってみろ!」

パップ「…………三秒と待たずに串刺しだな、竹槍で」

将軍「ひぃっ!?」

パップの言葉に、将軍が思わずすくみあがる。

奈緒「あー……アタシが将軍を連れてくよ、近くにGDFの護送車が停まってんだよな?」

爛「じゃ、俺がオトハん所まで案内か」

パップ「ああ、頼んだ」

爛(将軍の捕獲は失敗か……ま、しゃあねえか)

爛は軽く頭を掻き、オトハと夕美の元へパップを案内していく。

奈緒「じゃ、アタシらも行くか」

将軍「うむ」

奈緒も将軍を連れ、GDFの護送車を目指して歩き出した。

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699: 2015/01/28(水) 01:47:01.03 ID:WqG/vVM70
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その頃、ブラム内部。

将軍を探す拓海とライラが一旦合流していた。

拓海「コッチにもいねえか……どこ行きやがった?」

ライラ「……タクミさん」

拓海「ん? どしたライラ?」

ライラ「よく分かりませんが、なんだかライラさん達……ものすごいおいてけぼりを食らってる気がしますです」

拓海「…………だな。一回、出るか……」

ライラ「……はいです」

なんとなく自分達が蚊帳の外でないかと感じた二人は、一度ブラムの外に出る事にした。

……秋炎絢爛祭。

その二日目を襲った『将軍事件』は、氏者ゼロかつ首謀者の無事な逮捕という、最も理想的な形で終結を迎えた。

続く

700: 2015/01/28(水) 01:47:46.45 ID:WqG/vVM70
・看破の魔眼
クールPが持つ魔眼。
自らの意識を流し込んだ結晶体「朱眼」を操り、離れた場所や隔離された場所の様子を探る事が出来る。
高度な迷彩魔術が施されており、あらゆる物質をすり抜ける他、魔法の障壁も物ともせず、熾天使クラスの相手の目を欺くことも可能。
万能に見えるが、朱眼を出している間のクールP本体が完全に無防備になる事が唯一にして最大の弱点である。


・イベント追加情報
将軍、確保! 付近に停めてあるGDFの護送車まで奈緒が連れて行っています

家畜派が実質崩壊、キヨミと騎士ABはどこかへ去って行きました

奈緒と爛がパップのCOの存在を知りました、が、自分たちも大概後ろめたい事があるので黙っているようです

奈緒がライトと一瞬接触しましたが、奈緒が悪寒を覚える程度の影響しか無かったようです

パップは爛と共にオトハに会いに行きました

拓海とライラが一旦ブラムの外に出ます

以上です
ごめんねほんとに遅くなりまして
世界樹やグラブルが楽しすぎるのが悪いんだよ(責任転嫁)
あと何度も言うけど僕は相葉ちゃんに恨みがあったりはしません(断言)
拓海、奈緒、美世、将軍、キヨミ、騎士AB、パップ、光、ライト、以下名前だけチナミ、オトハ、夕美お借りしました

701: 2015/01/28(水) 02:20:50.33 ID:9wPTttIN0
乙ですー
やったぜ2日目の大イベント突破!!親子の思いが最後に通じあってよかったよかった
そして進む精神汚染、ライトもいきいきしてる気がしますぜ!

夕美ちゃんは植物の恋人だからね、仕方ないね……(遠い目)



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part11