1: 2024/01/10(水) 17:18:21 ID:v1XM9BEA00
こずめぐです

2: 2024/01/10(水) 17:19:02 ID:v1XM9BEA00
練習後。
みんなが帰った後も部室に一人残り、他校のスクールアイドルたちの動画を見ていた。
今回のラブライブ大会決勝、もう少しのところで敗れてしまった悔しさを次こそ晴らすべく、日々のライバルの動向チェックは欠かせないからね。

ガラガラ

「慈、まだ残っていたの?」

声をかけてきたのは私の戦友であり、親友である乙宗梢。

「うん、ちょっと、ね。梢はどうしたの?」

梢の問いかけにそう答え、逆に質問を返す。

3: 2024/01/10(水) 17:19:53 ID:v1XM9BEA00
梢「ちょっと忘れ物を取りに来ただけよ。あなた、また、動画を見ていたのね。研究熱心なのは素晴らしいことなのだけれど、帰ってゆっくり体を休めるのも大事なことよ」

慈「それは分かってるんだけどさあ。やっぱりどうしても悔しいじゃん。まだ夢を見るんだよ。あの時のことを」

梢「それは私もそうね。」

慈「梢も?」

梢「ええ、やっぱり簡単には忘れることが出来ないもの。いえ、忘れてはならないわね、絶対に... 」

梢はそう言うと後ろから私のタブレットの画面を覗き込んでくる。

梢「誰の動画を見ているの?」

慈「これはこの間優勝したスクールアイドルの動画。その前は北陸大会で戦った相手の動画。それから~」

4: 2024/01/10(水) 17:20:36 ID:v1XM9BEA00
梢「随分と色々な動画を見ているのね」

慈「そりゃあ、リベンジを果たすためには色んなグループのことを知らなくちゃいけないからねっ」

そう答える。

梢「ねえ、私も一緒に動画を見てもいいかしら?」

梢がそんなことを言ってきた。
勿論、断る理由はどこにもない。

慈「もちろん、いいよっ。一緒に見よっ☆」

そう答えたものの、

慈「でも梢、さっきはさっさと帰れって言ってたけど、どうしたの?」

一つの疑問を梢にぶつける。

5: 2024/01/10(水) 17:21:11 ID:v1XM9BEA00
梢「さっき言ったように私だって悔しいし、絶対優勝したいもの。それに」

慈「それに??」

梢「いえ、何でもないわ」

慈「何だよ~気になるじゃん」メグメグ

梢の思っていることはだいたい想像つく。
だって、私だって梢とこうして二人きりでおしゃべりする時間は大好きで、すっごく幸せな
んだからねっ。
梢には絶対言わないけどっ。

6: 2024/01/10(水) 17:22:19 ID:v1XM9BEA00
梢「いいから早く動画の続き、見ましょう?」

慈「そんなに急かさなくても分かってるって~。」

それから1時間以上は梢と動画を見ながらあーだこーだおしゃべりしていたと思う。
気が付けば窓の外は真っ暗。
夜になってしまっていた。

梢「もうこんな時間ね」

慈「そうだね~梢とおしゃべりすると時間はあっという間だねっ☆」

少しだけ本音を曝け出してみる。

7: 2024/01/10(水) 17:25:05 ID:v1XM9BEA00
梢「もう。慈ったら//」

あらあら。予想に反して梢が照れた。
梢のことだからてっきり変な理屈をつけて否定してくるものだっと思っていたけど。
この様子だとどうやらさっきの私の予想は当たっているみたいだ。

慈「こ~ずえっ」

わざと甘い声を出してみる。

梢「な、何かしら//」

慈「もしかして、照れてる?」

梢「そんなわけないでしょう」プイッ

ありゃりゃ。拗ねてしまった。
梢弄りは楽しすぎるから時々ついつい弄り過ぎてしまう。

8: 2024/01/10(水) 17:36:22 ID:v1XM9BEA00
慈「ごめんって。謝るからほら、機嫌直してよっ☆」

梢「何なのよもう」

そう言いつつも顔をこちらに向けてくれる。

うん。
よく観察すると梢って本当に色んな表情をみせてくれる。
私が梢を揶揄う理由の一つにこのコロコロ変わる表情や仕草を見たいからってのがある。
ホンっと梢って可愛いやつだよ。
ただまあ、これ以上揶揄うと構ってくれなくなりそうだからこのくらいにしておくか。

9: 2024/01/10(水) 17:49:18 ID:v1XM9BEA00
慈「梢さ。」

真面目な話題に変えよう。

梢「何?」

慈「ありがとね。」

梢「いきなり何かしら?私は何もしていないのだけれど?」

怪訝な顔でこちらを見つめてくる梢。
自覚なしか。
まあそれも仕方がない。私がちゃんと言葉にして伝えていなかったから。
いい機会だから伝えてしまおうと思う。

慈「私ね、梢に何回も救われているんだよ?」

梢「そうかしら。何かをしたという覚えはないのだけれど」

10: 2024/01/10(水) 17:56:12 ID:v1XM9BEA00
慈「まずね。私が1年間のブランクからスクールアイドルクラブに復帰出来たのは、勿論るりちゃんが引っ張ってくれたからというのもあるけど、そもそも復帰できる場所を1年間梢が守ってくれてたからだよね。」

梢「・・・」

慈「綴理とすれ違いが起きたり、沙知先輩が引退したりと色々ありながらもスクールアイドルクラブを守ってくれてたよね。私、休部期間中もちゃんと見ていたんだよ。あんたと綴理のこと・・・」

22: 2024/01/11(木) 13:56:43 ID:/VhNGlg200
梢「それはっ」

慈「休部期間中、何もかもが嫌になっちゃってた時も梢と綴理の姿を見て何とか耐えて来れた。梢がいたから、私は頑張れたんだよ。」

慈「この間だって!ラブライブ決勝で負けて正直何にも考えることが出来なかったんだよ。
るりちゃんのことすらも!梢がるりちゃんと花帆ちゃんを連れて私のところに来てくれていなかったら、今も立ち直れていなかったと思う。だから、ありがとう、梢」

梢「私は部長として部員の心配をしただけよ。あくまで、部長としてね。先日のあなたはあまりにも見るに堪えなかったから」

慈「もう、本当に素直じゃないやつめっ。せっかくこのめぐちゃんが感謝しているんだから素直になれってのっ」

23: 2024/01/11(木) 13:59:12 ID:/VhNGlg200
梢「・・・」

慈「あと、るりちゃんのこともありがとね。本当なら私がるりちゃんのフォローをしなければいけないのに」

梢「随分弱気ね、慈。全部自分だけで背負おうとする必要ないのよ?瑠璃乃さんのこともそうだし、決勝で負けた時だって悔しい気持ちはみんな同じなの。だから、一人で引きこもってたりしないでちゃんとみんなと悔しさを分かち合うことだって、必要なのじゃないかしら」

梢こそ、それこそ何もかも全部一人で背負うところがある癖に。
でも、こんな気遣いが出来るところも、梢の良さであり好きなんだけどね。

24: 2024/01/11(木) 14:06:34 ID:/VhNGlg200
慈「梢が部長でよかった」

梢「ふふっ。ありがとう。なんだか照れるわね。」

慈「やっと素直になったか」

梢「そうね。慈のおかげかもしれないわね」

こずめぐ「ふふっ」

2人で笑いあう。
この時間がもっと続けばいいのにと思うけど、無情にも時間は淡々と経過していく。

25: 2024/01/11(木) 14:16:37 ID:/VhNGlg200
梢「そろそろ寮に戻りましょうか。」

しばらくしたら梢の方から声をかけてきた。
名残惜しいけど、この幸せな時間はおしまいに近づいてきているらしい。

慈「そうだね。さすがにちょっとしゃべり過ぎちゃったかな」

梢「まあ、たまにはこういうのも悪くないわね」

慈「じゃあさ、またやろうよ。動画試聴会っ」

梢「スクールアイドルの研究でしょう?」

慈「そうだけどさ。まあどっちでもいいじゃん。」

梢「そういうものなのかしら」

慈「そういうものなの!」

ワイワイ

26: 2024/01/11(木) 14:31:16 ID:/VhNGlg200
梢と二人で寮の方へ帰りながら、その道中にふと思う。
何気ないこの日常の会話もあと1年でもしかしたら出来なくなってしまうかもしれない。
そう、私たちは今年の春から3年生になる。
つまり1年ちょっと後には卒業を迎えることになる。その後は、バラバラになってしまうかもしれない。
そう思うと、今このひと時ひと時がとても愛おしくなる。
同時に寂しさもこみ上げてきて・・・

あれ、知らない間に目から・・・

27: 2024/01/11(木) 16:00:43 ID:/VhNGlg200
梢「慈?どうしたの?」

私の異変に気が付いた梢が声をかけてくる。

慈「ん。何でもない。」

慌てて平常を装うも流石に隠し切れないか。

梢「何でもなくないわよ。急に何があったのか言ってみなさいな」

慈「梢とこうしておしゃべりできるのも、あと1年か~と思うとね。寂しくなっちゃって」

梢「まだ1年もあるじゃないの」

慈「もう1年しかないんだよ...」

28: 2024/01/11(木) 16:02:14 ID:/VhNGlg200
梢「慈」

慈「何?」

梢「いずれ必ずやってくる未来のことを考えて寂しくなってしまうのも、気持ちは分かるのだけれど。でもね、そのことばかり考えて今、この瞬間を楽しめなくなるのは勿体ないわ。あなたには私がいる。スクールアイドルクラブのみんながいるわ。先日せっかくみんなで気持ちを新たにラブライブ優勝を目指そうという決意表明をしたのだから、ね?そう思わない?」

くそぅ。梢のやつに正論を言われてしまった。
ぐうの音も出ない・・・

慈「そうだね・・・」

梢「とにかく今は精一杯この恵まれた環境を楽しめばいいのよ。もし来年その時がやってきて寂しくなってしまったらその時は私も一緒に泣いてあげるわ。だから、ね」

また梢に救われてしまった。

29: 2024/01/11(木) 16:12:19 ID:/VhNGlg200
そう、梢の言う通り、今は今。未来はどうなるかわからないけれど、その時がやってきたらその時に考えればいいのだ。
うだうだクヨクヨするのなんて、めぐちゃんらしくないからねっ☆

慈「ありがとっ、梢っ」ダキッ

梢「わっ。ちょっと慈、危ないわよ」

慈「いいじゃんいいじゃん~」

梢「慈、重いからそろそろ離れてちょうだい」

慈「なんだと~。絶対に離れてやらないぞ」

梢「何なのよもうっ」

ワイワイキャッキャッ

30: 2024/01/11(木) 16:19:55 ID:/VhNGlg200
こんな風に笑いあえるひと時に感謝しつつ、私は明日からスクールアイドル活動を目いっ
ぱい頑張って蓮ノ空が最強だってこと、世間に見せつけてあげるんだから。

勿論、蓮ノ空の中でもみらくらぱーくが最強だけどね。
梢、負けるつもりはないから覚悟しててよね。
1年後、一緒に笑っていようね。

大好きだよ、梢。


おしまい

31: 2024/01/11(木) 16:21:25 ID:/VhNGlg200

33: 2024/01/11(木) 17:13:11 ID:ZQJzov6QSp

素晴らしいこずめぐ

引用: SS 慈 「大好きだよ、梢」