2: 2024/01/13(土) 18:36:52.13 ID:lD3JVW3u.net
代行ありがとうございます。
ちょっぴり切ない系です。

3: 2024/01/13(土) 18:38:08.96 ID:lD3JVW3u.net
海未「5分間休憩とします。」


穂乃果「だは〜!疲れたぁ〜!」


夕方とはいえ夏真っ盛り、ハードなダンスは身体にこたえる。


ことり「お疲れ様、穂乃果ちゃん。」


そう言ってことりちゃんは私の方へ水筒を向ける。
私はバネに弾かれたように身体を起こし、それを受け取ると一気に飲み干し、


穂乃果「お疲れ〜。」


と力なく言った。

5: 2024/01/13(土) 18:39:25.93 ID:lD3JVW3u.net
ことり「ライブも近くなってきたから、練習にも熱が入るねぇ。」


穂乃果「そう!特に海未ちゃんなんか…」


合宿で見た鬼メニューを思い起こし身震いをする。


ことり「あはは…あれも私たちの思ってのことだから…」


穂乃果「遠泳10kmだよ!?あれじゃ何部か分からないよ…」


ことり「たしかにあれは…ちょっとね。」アハハ

7: 2024/01/13(土) 18:41:12.12 ID:lD3JVW3u.net
穂乃果「全く海未ちゃんは…」ブツブツ


ことり「…聞こえたら怖いよ?」


困り眉で笑うことりちゃん。


一瞬ヒヤッとしたけど、ついさっきまで絵里ちゃん、希ちゃんと真剣に話していたのを横目で確認していた。


穂乃果「大丈夫だよことりちゃん、いくらなんでもそんなじご…」


海未「誰が地獄耳ですって?」

8: 2024/01/13(土) 18:42:50.14 ID:lD3JVW3u.net
穂乃果「まだ言ってないよ!」


海未「まだとは何ですか!」


海未「だいたい穂乃果は…」ガミガミ


凛「あ〜またはじまったにゃ〜。」


にこ「もうそろそろ休憩も終わるってのに…ほんと元気ね。」

9: 2024/01/13(土) 18:43:45.30 ID:lD3JVW3u.net
ことり「あはは…」


ことりちゃんに横目で合図をする。


ことり「…」フルフル


穂乃果「」


私の助け舟は出航する気配がなかった。

10: 2024/01/13(土) 18:45:59.97 ID:lD3JVW3u.net



あの後みっちりしごかれた以外は何事もなく、無事に練習もおわった。


部室で着替えも済んだのか、各々挨拶をして何人かは帰路についた。


海未「ではみなさん。お疲れ様でした。」


穂乃果「もう帰るの!?さっきのことは謝るから〜!」


海未「いや、そうではなくてですね。弓道部の練習をしようと思ってたんですよ。」

11: 2024/01/13(土) 18:49:59.01 ID:lD3JVW3u.net
穂乃果「え?でもそろそろ生徒は帰らなきゃいけない時間じゃ…」


海未「事前に先生には許可を取ってありますので。」


にこ「さすがに準備がいいわね。」


希「感心感心。」


絵里「無理はしないようにね?」


にこ「前の穂乃果みたいになったら大変だからね。」

12: 2024/01/13(土) 18:51:32.72 ID:lD3JVW3u.net
穂乃果「…」


希「にこっち…」


にこ「あ〜ごめんごめん!冗談よ!!」


穂乃果「あ、いやごめん。ちょっと考え事…」


絵里「穂乃果が?珍しいわね…」


希「ごめん、えりちはボケか本音か分からん!」


穂乃果「みんな酷いよ〜!」


アハハ…

13: 2024/01/13(土) 18:56:58.79 ID:lD3JVW3u.net
定番の流れだ。
最終的にことりちゃんがよしよししてくれるので、悪くない役回りだ。


海未「ご心配ありがとうございます。では穂乃果、ことり、すみませんが。」


ことり「私たちには気にしないで!」


穂乃果「うん、じゃあまた明日ね。」


軽く会釈をして部室を後にする海未ちゃん。


表情を見るに、いつもと変わらなく見える。





でもなぜか、その背中が、妙に小さく思えた。

15: 2024/01/13(土) 19:05:31.82 ID:lD3JVW3u.net
穂乃果「気のせいかな…」


絵里「でもここから弓道の練習もするだなんて、海未もなかなかストイックよね。」


希「さっきの休憩中も今後の練習の計画と、歌詞についてまとめてくれたしなぁ。」


私の独り言は誰にも聞こえなかったみたいだ。


穂乃果「…」


その後は軽く談笑してことりちゃんと校門を出た。

16: 2024/01/13(土) 19:10:11.61 ID:lD3JVW3u.net
その間もあの違和感が忘れられなかった。
上の空がバレてなきゃいいけど…


信号待ちの間ふと振り向いて校舎を見る。
もうすっかり暗くなった校舎。


まるで、巨大な黒い壁のようだった。

17: 2024/01/13(土) 19:10:46.69 ID:lD3JVW3u.net
信号が青になり、横断歩道を行く。


ヒュッ…


海未ちゃんの声を、どこかで覚えながら。



21: 2024/01/13(土) 19:22:38.86 ID:lD3JVW3u.net
ことりちゃんと別れ、1人歩く夜道。


海未ちゃん…
彼女の姿を想像すると、


凛としている。
姿勢、所作は完璧に大和撫子を体現している。


友達としても大好きだし、
とても尊敬できる人だ。


今日の間、変わったことは起きていない。


なら、さっきの違和感の正体は?

26: 2024/01/13(土) 19:35:07.49 ID:lD3JVW3u.net
海未ちゃんは…


少し強がるところがあるというか…
無理して気丈に振る舞うところがある。


そんなことを言ってる私も、
1人で突っ走って迷惑かけたこともしばしば…


そのたびに2人には迷惑を…ってそうじゃない。

27: 2024/01/13(土) 19:36:12.83 ID:lD3JVW3u.net
穂乃果「海未ちゃん…私たちにも迷惑かけていいのにな…」


蚊の鳴くような、漠然とした独り言を拾うものはいなかった。





…あ、そうか。



28: 2024/01/13(土) 19:43:26.72 ID:lD3JVW3u.net
ことり「…」


穂乃果ちゃんと別れた後、少し考え事。



穂乃果『…』



帰り道、穂乃果ちゃんに話しかけたけど、上の空だった。


これは、皆と部室で話している時からだった。
そして、いつもと変わったことといえば…


海未ちゃんか…

29: 2024/01/13(土) 19:48:29.14 ID:lD3JVW3u.net
穂乃果ちゃんのなかで、引っかかるものがあったのだろう。


願わくば、私の時にもそうなってて欲しいけど…
こんど海未ちゃんに聞いてみようかな…


もといもとい…それは置いといて…


海未ちゃんは誰から見ても頑張り屋さんだよね。実際今日も居残り練してたし。
それが彼女の魅力でもある。





それが裏目に出るとしたら?

30: 2024/01/13(土) 19:50:57.92 ID:lD3JVW3u.net
それを穂乃果ちゃんが気づいたとすれば…


誰にでも弱いところはあるし、もちろん私にもある。


だからこそ私たち3人は、お互いを知って、引っ張っては支え…を続けてここまできた。


今回私がするべきことは、

31: 2024/01/13(土) 19:51:55.32 ID:lD3JVW3u.net
ことり「穂乃果ちゃんなら…」


すぐに考えを行動に移すあの子なら__


確信を持って、私は踵を返した。



32: 2024/01/13(土) 20:23:44.31 ID:lD3JVW3u.net
海未「これでよし。」


帰り支度を済ませ、練習場に施錠する。


校舎の方に目をやると、職員室に光があるだけで、全て真っ暗だった。
当たり前だ。生徒は私しか残ってないのだから。


夜の校舎…
数メートル先までしか見えない。

33: 2024/01/13(土) 20:28:29.05 ID:lD3JVW3u.net
明日は朝からランニング、朝練…
あぁ、あの単語も覚えなくては…


帰ってからもやることは山積み、
私はこんなことで怖がってる場合じゃないんです。


海未「さ、帰りましょう。」スタスタ



36: 2024/01/13(土) 23:21:59.07 ID:lD3JVW3u.net
すみません間が空いてしまいました。
レスくれた方ありがとうございます。

書いていきます。

37: 2024/01/13(土) 23:23:21.87 ID:lD3JVW3u.net
私、園田海未は__


日舞の家系に生まれた私は、厳しく育てられました。何事にも美しい所作を__と、努力してきました。



不満が全くない。と言えば嘘になります。



しかし、それは誰にでもあるもの。
それを今更どうこう言うつもりはありません。

38: 2024/01/13(土) 23:27:37.33 ID:lD3JVW3u.net
日頃の努力が、μ'sの活動にもプラスになりましたから。


ですが…
みなさんの期待は、わたしではなく、園田海未に当てられてるんじゃないかと…たまに不安になるのです。


本当のわたしは、どんなことで笑うんでしたっけ…


自分でも何を考えてるのかよく分からなくなってきました。


海未「はは…」

39: 2024/01/13(土) 23:28:37.59 ID:lD3JVW3u.net
少し自嘲的な笑いがこぼれてしまう。


海未「なんで…」


少し足取りが重い。


…それはそうです。
あんなに練習したんだから。


これはきっとそのせいです。

40: 2024/01/13(土) 23:35:53.07 ID:lD3JVW3u.net
μ'sのみんなはわたしをどのように…


穂乃果、ことりは…


海未「うっ…」


ほんの、少しだけ、感情が溢れ出した。

41: 2024/01/13(土) 23:38:10.80 ID:lD3JVW3u.net
いやいや、ダメです。私は園田海未。
昔から言われてきたじゃないですか。
園田の名に相応しくなりなさいと。
それを目指して努力してきたんです。

そのイメージはどうするんですか?
この努力はどうなるんですか?
こんな姿、私に相応しくありません。

せっかくの期待を裏切ることになります。

泣くな、歩け、進め。
皆の期待に応えてなくては。
私はもっと、強く___

42: 2024/01/13(土) 23:38:51.42 ID:lD3JVW3u.net
「「海未ちゃん!」」





私の視界を朝焼けが照らした。

43: 2024/01/14(日) 00:09:02.59 ID:LPnNE8/K.net



穂乃果「お疲れ様、海未ちゃん。」


ことり「えへへ、待ってたよぉ。」


海未「な、なんで…」


穂乃果「とにかくついてきて!」


そう言って力強く手を引っ張る穂乃果。


向かう先は…



44: 2024/01/14(日) 00:09:43.08 ID:LPnNE8/K.net
海未「ここは…」


穂乃果「そう、よく木登りしてたよね、ここ。」


ことり「あの時の夕日は綺麗だったよね。」


海未「そんなこともありましたね…」





穂乃果「海未ちゃん、あの時から変わってないよね。」

45: 2024/01/14(日) 00:13:02.32 ID:LPnNE8/K.net
海未「そう、ですかね。」


穂乃果「うん、意外と臆病で、可愛らしい一面もあるもんね。」


ことり「そう言えば、私たちが初めて会ったときも…」


穂乃果「木の影に隠れて入りたそうにしてたの懐かしいね。」


海未「そうです…2人はそんなわたしを見つけてくれたんです。」

46: 2024/01/14(日) 00:14:59.48 ID:LPnNE8/K.net
海未「カッコ、悪いでしょう。」





穂乃果「どうして?」


海未「ですからそんなの私らしく…ない。」


ことり「やっぱり…」


穂乃果「海未ちゃん、私達はね、」


ことり「そんな海未ちゃんが大好きなんだよ?」

47: 2024/01/14(日) 00:19:31.32 ID:LPnNE8/K.net
穂乃果「いつも凛としてて頑張り屋さんなとことか。」


ことり「それなのに引っ込み思案でかわいいところとか!」


穂乃果「海未ちゃんのありのままが好きなんだ。」


海未「穂乃果…ことり…」

48: 2024/01/14(日) 00:20:11.70 ID:LPnNE8/K.net
穂乃果「海未ちゃん、いつもいつも、迷惑かけてごめんね?」


穂乃果「代わりと言ってはなんだけど、もっと海未ちゃんは迷惑かけてもいいんだよ?」





海未「ぷっ、ははは。」


ことり「海未ちゃん?」


海未「…穂乃果には散々迷惑をかけられましたからね。」

49: 2024/01/14(日) 00:26:09.87 ID:LPnNE8/K.net
穂乃果「もう、なに〜?」


海未「確かにいっぱい返してもらわないと割にあいませんね。」


ことり「海未ちゃん!」


海未「お願いがあります。」


穂乃果「な、何でしょう…」

50: 2024/01/14(日) 00:26:49.16 ID:LPnNE8/K.net
海未「私…わたしは…」





海未「ここで皆と少しお話がしたい…わたしの迷惑、聞いてくれますか?」

51: 2024/01/14(日) 00:27:46.96 ID:LPnNE8/K.net
ことり「もちろんだよ!」


穂乃果「お安い御用だよ!」




こんなありふれた青春の一コマ。


たった数時間の記憶なのに、わたしはずっと忘れないだろう。


明日になれば、またわたしは私として、
やるべきことをやっていく。


ただ…ただ今は、こうしていたい。
なんとなく、今のわたしは自然に笑えてるような気がする。





強がりを捨てるのも…悪くないかも。

52: 2024/01/14(日) 00:28:51.29 ID:LPnNE8/K.net
にこ「これ…完全に出るタイミング逃してない?」


絵里「いやだって…こんなの涙なしでは…」グスン


花陽「いい話だねぇ…」


凛「急に穂乃果ちゃんからラインが来た時にはびっくりしたにゃ。」


真姫「なによ。せっかく来たってのに…私はいくわよ。」


希「待ち!もうちょっと観てたいんや。」ジジジ


にこ「そのビデオカメラ…まさかあんた…」


おわり

53: 2024/01/14(日) 00:44:31.43 ID:LPnNE8/K.net
皆様ありがとうございました。
ことほのうみでしか得られない栄養素がありますね。

穂乃果「夏空の綿雲」

昔書いたやつ載っけておきます。
またよろしくお願いします。

54: 2024/01/14(日) 01:46:56.40 ID:C2hXYwQc.net
おつです
やはり幼なじみ……

55: 2024/01/14(日) 01:51:55.67 ID:gkKOSB9c.net
これは染み渡った
よいSSだった乙

引用: 海未「つよがり」