前回:「喫茶『アイドル』に集うアイドルたち」―case5 秋月律子+α
68: 2014/01/21(火) 00:17:44.58 ID:gpig+aOM0

本日は四条貴音生誕祭ということで、予定を変更して『case5.5 Venus』を書くことになるかと思います。
美希編を期待していた方の期待も酌み、いわゆるフェアリーメンバーでお送りする予定です。

それでは、また今夜。

69: 2014/01/21(火) 19:09:05.80 ID:gpig+aOM0
店主「誕生日が素直に喜べなくなったのはいつ頃か。少なくともこの間の27の誕生日には一人寂しくハッピバースデートゥーミーだったのもあって嬉しさはなかった」

店主「そんな寂しい私の誕生日はどうでも良いとして、どうせなら誕生日は誰かに祝ってもらいたいもの」

店主「誰か自分を祝ってくれる人が居るっていうのは、それは結構幸せなことなのかもしれないね」

――case5.5 Venus

響「はいさーい!」カランカラン

店主「はいたい。いらっしゃい」

美希「らっしゃいなのー」

響「あ、美希先に来てたのかー。自分が一番だと思ってたのになー」

店主「とは言っても十分も差ないけどね」

美希「んー、マスターのキャラメルマキアートは美味しいのー」

店主「カフェラッテにキャラメルシロップ足した程度のものなんだけどね」

美希「じゃあカフェラッテが美味しいの、きっとそうなの」

響「うー、自分もなんか温かいものが欲しいぞ」

店主「ジンジャーティーがおすすめだけど」

響「じゃあそれをもらうぞ」

店主「はい、ジンジャーティー一つ」

響「で、美希は用意してきたのか?」

美希「もちろん買ってきたの。ちゃんとお姉ちゃんに教えてもらってラッピングもしたし」

響「自分は自分で編んだんだぞー。今回は力作さー!」

店主「随分力入れてるのね」

響「なんてったって仲間だからな!」

美希「ミキだってこういう時には本気出すよ?」

店主「んっふっふ、でも私だって珍しく気合入れたからね、負けないわよ」

響「おっ、もう作ったのか?」

店主「連絡貰ってすぐに作り始めたわよ。と言っても、普通のお店並みのクオリティは期待しないでよ」

美希「そこまでは求めてないの。大事なのは空気だって思うな」

店主「ふふ、違いない。さて、じゃあ主役を呼びましょうか」

響「自分、電話してくるぞ!」
ぷちます!(12) (電撃コミックスEX)

70: 2014/01/21(火) 19:22:47.72 ID:gpig+aOM0
貴音「こんにちは」カランカラン

\パンッ/

美希「はっぴーばーすでーなの!」パンッ
響「誕生日おめでとう、貴音!」パンッ

貴音「……なんと」

店主「散らからないクラッカーって偉大だね」

貴音「これは、一体……」

響「今日はマスターに協力してもらって、貴音の誕生日パーティー用に貸し切りだぞ!」

店主「貸し切りと言っても普段からこの時間は誰も来ないし実質普段と同じだけどね」

美希「ほら! 早く座るの」

貴音「は、はい」

響「貴音は誕生日だから真ん中なー」

美希「じゃあ、マスター頼んだの!」

店主「ほいきた、私流バースデーフルコース!」

~一品目~

貴音「これは……」

店主「前菜、タコとアボカドのサラダよ」

美希「予想以上にお洒落で戸惑ってるの」

響「居酒屋みたいなのが出てくると思ってたぞ」

店主「あんたら私の事何だと思ってるの?」

美希「マスター」
響「マスター」

店主「どうして居酒屋になるのよ……」

貴音「ふむ……あぼかどですか。美容にいいと聞きますが、食べたことはありませんでしたね」

店主「通称『森のバター』とも呼ばれる果実の王だからね」

貴音「頂きます」パクッ

貴音「美味しいです……!」テーレッテレー

店主「ッシャァ!」

響「マスターが今まで見たことのないテンションでガッツポーズを!」

店主「さあ、まだまだ行くわよ!」

美希「ちょっとキャラが変わり始めてるの」

店主「自分の料理を褒められて嬉しくない人がいるものですか」

71: 2014/01/21(火) 19:36:31.85 ID:gpig+aOM0
~二品目~

貴音「これは?」

店主「名称不明のスープ。ミニトマトと人参、それとパプリカで作ってみたわ」

美希「見た目クリームスープっぽいの」

店主「でも名称不明。ある意味私の創作料理だし、似たような料理があっても私は知らないし」

貴音「ふむ」パクッ

貴音「……これは、中々良いですね。トマトの味がくどくないので、いくらでも飲めそうです」パクパク

響「貴音の場合比喩に聞こえないぞ」

美希「あるだけ食べちゃいそうなの」

貴音「ふぅ、ご馳走様でした」

店主「さあ、次からはメインゾーンよ!」

~三品目~

店主「魚介メニューは定番のムニエル。今回はサーモンを使ってみたわ」

貴音「香ばしく、食感もサクサクとして良いですね。それに、ハーブの香りが食欲を誘います」サクサク

美希「本当に美味しそうに食べるの」

響「見てるこっちまで幸せになってくるぞ」

貴音「ダンスの仕事の後というのもあるのですが、先程までのサラダとスープで胃が落ち着いているのでどんどん求めてしまいますね」カリサクッ

店主「たまに無性に魚が食べたくなった時は、これ作って食べてるの。楽だし美味しいし、工夫次第で幅は広がるし」

店主「今回は私好みのハーブと、レモンで爽やかな感じにしてみたわ」

貴音「道理で、とまらないわけです」

~四品目~

店主「多分貴音ちゃんには必要ないであろうけど、腹休めのシャーベットよ」

響「! なんかすごい色してるぞ!」

美希「あれ? この色どこかで……」

店主「これはバースデーというか、新ユニット結成記念かな」

店主「新ユニット『Venus』結成おめでとう、美希ちゃん、響ちゃん、貴音ちゃん」

貴音「なんと……、何故知っているのですか?」

店主「うちのお客さんの情報よ」

店主(そのお客さんって、黒井社長のことだけどね……)

72: 2014/01/21(火) 19:51:53.83 ID:gpig+aOM0
店主「まず美希ちゃんのフッレシュグリーンは、グリーンバナナのシャーベットね」

店主「で、貴音ちゃんのカーマインは、和風なイメージで紫芋のシャーベット」

店主「一番苦労したのは響ちゃんだけど、ライムシャーベットに着色してターコイズブルーにしてみたわ」

貴音「ふふ、私達のように肩を寄せあって可愛らしいシャーベットですね」

店主「二人にも、はい」

美希「凄いの! マスターのこと尊敬するの!」

響「頂きます!」

店主「はい、召し上がれ」

美希「ぐっ……これは罠だったの」キーン

響「落ち着いて食べないからだぞ……」

貴音「っ」キーン

響「貴音ぇ……」

~五品目~

貴音「私の記憶が正しければ、シャーベットの次は……!」

店主「よくお分かりで。お待ちかね、肉よ!」ドーン

貴音「これは、ローストビーフですか」

店主「牛もも肉のローストよ」

貴音「ワインが合いそうですね」

店主「貴音ちゃんはまだ一年待ちましょうか」

響「一年後もここに来たらマスターが奢ってくれるってさ、貴音」

店主「ちょっ」

美希「今の内に高いお酒ねだっておくの」

店主「ちょ」

貴音「では、一度ろまね・こんてぃというワインが……」

店主「やめて」

貴音「うふふ、ジョークです」

店主「じゃなかったらどうしようかと」

響「ナイフとフォークでお肉食べてるの見ると、貴音がますますお姫様っぽいぞ」

美希「絵になるってこういうのを言うんだって思うな」

貴音「今度黒井社長に言ってそういった料理店に連れて行ってもらいましょうか」

店主「ていうかさっきから一切音立てずに肉食べてるけどどうやってるの?」

貴音「とっぷしぃくれっとです」

73: 2014/01/21(火) 20:01:01.55 ID:gpig+aOM0
~六品目~

美希「さて!」

響「真打ち登場だぞ!」

店主「私渾身の力作! ズッパイングレーゼ!」

貴音「なんと、ケーキがボウルの中に入っています」

店主「ズッパイングレーゼは水っぽいケーキだから、基本的にこんな感じね」

店主「今回はアルケルメスってリキュールを染み込ませたスポンジとカスタードクリーム、それと生クリームにイチゴで作ってみたわ」

貴音「リキュール……お酒、ですか」

店主「もちろんアルコールは飛ばしてあるけどね。さあ、じゃあ食べましょうか」

美希「美希このイチゴが欲しいな」

響「美希ぃ、貴音が先だぞ」

店主「はいはい順番に切り分けるから」

貴音「マスターはまるで二人のお母さんのようですね」

店主「こんなデカくて手のかかる子ども、この年で欲しかないわ」

美希「ひどいの」

響「デカイって言われたぞ」

美希「響、そうじゃないの」

店主「ええい、貴様らに170センチある女の何が分かる!」

響「うがー!」

美希「今のマスターなんだか社長っぽかったの」

貴音「……面妖な」

74: 2014/01/21(火) 20:08:55.16 ID:gpig+aOM0
響「で」モグモグ

美希「で、なの」モグモグ

貴音「まこと美味しいですね」モグモグ

店主「私まで食べてるわけだけれど。美味し」モグモグ

響「自画自賛?」

店主「自己賞賛」

美希「何が違うの?」

店主「変わんないかな」

貴音「…………」モグモグ

響「ちょ、貴音! ボウルから直はまずいって!」

貴音「これは、やめられなく……」モグモグ

店主「ハハハ、好評で何より……さて、じゃあここらで二人に任せようか」

美希「なの」

響「貴音、こっち向いてー」

貴音「はい」モグモグ

響「とりあえず一旦ボウルを置いて」

貴音「仕方がありませんね、しばしの別れです」スッ

響「そこまで!?」

響「コホン……じゃあ、改めて」

響「貴音、誕生日おめでとう!」
美希「おめでとうなのー!」

貴音「……はい、ありがとうございます」ニコリ

店主(貴音ちゃん……目尻がうっすら光ってるよ)

美希「というわけで、プレゼントなの」

貴音「開けて見ても?」

美希「もちろんなの! 開けて開けて」

貴音「これは……カチューシャとヘアブラシ、ですか?」

美希「いつもカチューシャ付けてるから、美希が選んでみたの。それに、それだけ長いと手入れも大変そうだから、絡みにくいって噂のヘアブラシなの」

貴音「ふふ、ありがとうございます」

響「じゃあじゃあ、次は自分だぞ!」ガサゴソ

75: 2014/01/21(火) 20:19:53.38 ID:gpig+aOM0
響「じゃーん! 定番だけど手袋と、耳あてだぞ! 頑張って作ったんだ」

美希「ぶー! 響の耳あてで美希のカチューシャが隠れちゃうの」

響「いや、流石に耳あては屋外だけだと思うぞ……」

貴音「これは、暖かそうですね。ありがとうございます、響」

響「へっへーん、自分完璧だからん!」

美希「ぷふっ、だからん……」プルプル

響「うがー! なんで自分は大事な所で噛むんだー!」

店主「まあ、それも響ちゃんの良さってことだよ。……プフッ」

響「マスターまで笑うなぁ!」

美希「ん? マスター、その手に持ってるのって……」

店主「ん、これ? もちろん、私からもささやかなプレゼントをね」

貴音「なんと、よろしいのですか?」

店主「よろしいもなにも、ファンからアイドルにプレゼントなんて日常茶飯事でしょう。はい、これ」

貴音「これは……なにやら箱のようですが」

店主「開けてみて」

貴音「……まあ、ネックレスですね」

店主「肌にやさしい木製ネックレス。首に巻く部分はゴムで、アクセサリー部分は私の手作りだからいびつでも許してね」

美希「凄いの、ハート型の輪っかがくっついてるの」

響「マスターってもしかして凄いんじゃないのか……?」

店主「手先が器用なだけが取り柄だから」

貴音「ありがとうございます。大切にさせて頂きます」

店主「そう言ってもらえると作った甲斐があるね」

貴音「ふふ、アイドルになる前は、じいやと妹が私を祝ってくれましたが……今年は新しく妹と姉が出来たような気分です」

店主「姉、か……まあ、悪くないね」

76: 2014/01/21(火) 20:26:36.71 ID:gpig+aOM0
店主「その後、なぜか居場所を嗅ぎつけて飛んできた黒井社長と、無理矢理連れて来られてきたJupiterも加わり、カオスなバースデーパーティー第二幕が始まったとか何とか」

店主「因みにあの場では渡さなかったけど、実は事務所宛にほかにもネックレスを贈っておいたのよ」

店主「それぞれ金星と木星の惑星記号をかたどったのを三つずつね。黒井社長なら使ってくれるでしょう、顔なじみだし」

店主「ところで、ここにもう一種類、誰にも渡してないネックレスが一つ……土星の惑星記号は作るのに苦労したわ」

店主「これが誰のためのものかはご想像にお任せして……まああの人気なら分かっちゃうだろうけど」

店主「そういえばこんな言葉があるわ、『アイドルだって人なんだ、結婚くらいするだろう』」

店主「……人なのにこの年で彼氏の一人も出来たことのない私ってなんだろう。私はもう誕生日が怖いわ」

Next Half Story→「喫茶『アイドル』に集うアイドルたち」―case6 星井美希+α

77: 2014/01/21(火) 20:28:13.55 ID:gpig+aOM0
今日の分はこれで。
お姫ちん誕生日おめでとう! マジおめでとう! らぁめん食べよ! らぁめん!(必氏)

関係ないけど最近、おもちゃのチャチャチャのリズムで「子安めハハハ」ってテラ子安ボイスで脳内再生されて辛いので誰か助けて下さい。

79: 2014/01/21(火) 21:04:54.35 ID:IKUojZaXo
おつおつ

引用: 「喫茶『アイドル』に集うアイドルたち」