前回:「喫茶『アイドル』に集うアイドルたち」―case6 星井美希+α
96: 2014/01/23(木) 19:16:21.94 ID:m78LaP+G0
店主「私の家は店から自転車で二十分程の所にあって、毎朝開店準備に間に合うくらいの時間には家を出るようにしている」

店主「家と言ってもどこにでもあるようなアパートだし、建ってる場所だってなにも特別なところじゃないけどね」

店主「だから、まあ、こんなことがあるなんて全く思いもしなかったわけで」

――case7 三浦あずさ

店主「…………」

あずさ「あら~? 確かあの角を曲がったら……」

店主「待って、あずさちゃん待って」

あずさ「あ、あら! マスターさん、奇遇ですねこんな所で」

店主「うん本当に。奇遇ってレベルじゃないけど」

あずさ「今日はオフなので、お店にお邪魔しようと思って少し早く出たんですけど……ここはどこでしょうか?」

店主「私の家よ」

あずさ「あ、そうだったんですか?」

店主「まさか朝6時に家を出た途端にアイドルの顔を見ることになるとは思わなかったわ」

あずさ「いつも迷っちゃうから少し早めに出れば開店までに間に合うかと……」

店主「その見立ては正しかったようでなによりよ」

店主「んー、別に急ぐ必要もないし、今日は自転車じゃなくて歩きで行こうかな。あずさちゃんと行くならそれが良いわ」

あずさ「すみません、私のせいで」

店主「まあまあ気にしないで」

あずさ「じゃあ、行きましょうか」

店主「あずさちゃん、そっち商店街と中学校しかないから」

あずさ「あ、あら~?」

店主「もう、私に付いてきて」

あずさ「すみません~」

店主「りっちゃんって凄い、改めてそう思った」
ぷちます!(12) (電撃コミックスEX)

97: 2014/01/23(木) 19:27:47.69 ID:m78LaP+G0
あずさ「そういえば」テクテク

店主「ん?」

あずさ「マスターって私のことちゃん付けで呼ぶんですね」

店主「あずさちゃんも私のことマスターって呼ぶのね」

あずさ「あれ、駄目でしたか?」

店主「いや、もう慣れたけど……。あずさちゃんこそ、ちゃん付け嫌だった?」

あずさ「あ、いえ、そういうワケじゃないんですけど……私実年齢より上に見られることが多くて、そうでなくても事務所では一番お姉さんですし」

あずさ「年上の人にもさん付けで呼ばれることが多くて、ちょっと新鮮なんです」

店主「まあ、私はあずさちゃんより5つは上なんでね」

あずさ「ふふ、お姉さんが出来た気分です」

店主「前にも誰かにそんなこと言われたなあ。妹が増える一方だわ」

あずさ「嫌なんですか?」

店主「いんや、まんざらでも? 妹がアイドルなんて楽しいだろうし」

あずさ「そういえば、うちの事務所にも兄弟がいる人って結構居るんですよね~。美希ちゃんもお姉さんが居たはず」

店主「貴音ちゃんも妹が居るって言ってたし、響ちゃんはお兄ちゃん。Venusの子は皆兄弟が居るのね」

あずさ「マスターは兄弟は居ないんですか?」

店主「私は居ないなあ」

あずさ「私と同じですね」

店主「あずさちゃん妹にならない?」

あずさ「考えておきます~」

店主「それやんわり否定してるニュアンスじゃない……」

あずさ「でもお姉さんっぽいとは思ってますよ?」

店主「さっきの否定の後に喜んでいいのかどうか……っと、着いた着いた」カランカラン

あずさ「お邪魔します~」

98: 2014/01/23(木) 19:38:03.14 ID:m78LaP+G0
店主「開店時間前だけどめんどうくさいからもう開いちゃう」<OPEN

あずさ「じゃあ、このグレープティーっていうのを頼もうかしら」

店主「メロンティー、スイカティーと並ぶイロモノを躊躇なく頼むその姿勢は、流石あずさちゃんね」

あずさ「前からちょっと気になってたんです」

店主「まあ、味は悪くないけど……グレープティー一つ」

あずさ「あ、本棚見ても良いですか?」

店主「ご自由にどうぞー。雑誌は、私が読む奴は最新号が、読まない奴は適当に突っ込んであるから」

あずさ「あ、CDラックも見て良いですか~?」

店主「どうぞー。リクエストがあったら流すから言ってね」

――5分後――

店主「はい、グレープティー……ん?」

店主「…………」

店主「あずさちゃんどこ!?」

<アラー?

店主「ちょっ、なんで本棚とCDラックの間を動いてるだけで厨房に……なんで厨房に居るの!?」

あずさ「どのCDを流してもらおうか迷っていたらいつの間にか……」

店主「恐るべし三浦あずさ……私は今、あずさちゃんがテレポーターである可能性を否定できそうにないわ」

あずさ「あ、グレープティー。綺麗な紫色なんですね~」

店主「ああ、それは皮ごとティーバッグに……って、マイペース!」

あずさ「はあ~、ブドウのいい香りがしますね」

店主「ああ、うん、今伊織ちゃんの気持ちがわかった気がする」

あずさ「そうだ、チェスしません?」

店主「どこから出したの!?」

99: 2014/01/23(木) 19:52:25.48 ID:m78LaP+G0
あずさ「特殊ルールはどうしますか?」

店主「んー、キャッスリングとプロモーションはアリ、アンパッサンはナシで」

あずさ「じゃあ、私白で良いですか?」

店主「お好きな様に。言っておくけど、私は負けないからね」

あずさ「強気ですね」

店主「強いもん」

あずさ「あ、今のちょっと可愛かったですね~」カツン

店主「この歳になって可愛いって言われてもなんだかなー」カツン

あずさ「女の子はいくつになっても女の子ですよ?」カツン

店主「私はもう女の子を名乗ることすらおこがましいから」カツン

あずさ「そうですか? プロデューサーさんがこの場に居たら勧誘されるくらいですけど」

店主「事務員に?」

あずさ「アイドルですって」

店主「無理があるでしょう」

あずさ「私がこの間共演した方は28歳の方でしたけどアイドルでしたよ?」カツン

店主「尊敬するわ」カツン

あずさ「やってみません? アイドル」

店主「やりません。それよりも事務所の美人事務員さんが居るでしょうに」

あずさ「誘ってるんですけどねぇ~、いっつもフラれちゃいます」

店主「それが当たり前の反応なのよ」カツン

あずさ「一緒にステージに立てたらきっと楽しいと思うんですけどねぇ」カツン

店主「まあそれは……おっとキャッスリング!」カツンカツン

あずさ「あっ、ナイトで狙ってたのにぃ~。惜しいわぁ」ムキー

店主「あ、今のあずさちゃん可愛かった」

あずさ「そうですか? ありがとうございます~」

100: 2014/01/23(木) 20:04:59.42 ID:m78LaP+G0
あずさ「…………」

店主「…………」

あずさ「……引き分けましたね」

店主「あそこでサクリファイスしておけば……! まさかポーンしか残らないなんて」

あずさ「どうします?」

店主「オセロならあるけど」

あずさ「じゃあオセロをしましょう」

店主「盤面真っ黒に染めてやるわ」

あずさ「あら~、どうしましょう」

店主「そういえば、竜宮小町の活動の方はどうなの? りっちゃん曰く超順調らしいけど」パチン

あずさ「それはもう、超順調ですよ~。全日オフなんていつぶりか分からないくらいです」パチン

店主「うひゃー、私なら耐えられそうにないなあ」パチン

あずさ「でも、アイドル活動は楽しいですから」パチン

店主「ほう?」パチン

あずさ「なんて言うんですかね、私の姿を誰かが見て応援してくれてるって考えると……アイドルやってて良かったなって思うんです」

あずさ「その点では律子さんに感謝ですね。ソロ時代にくすぶってた私がここまで有名になれたのは、律子さんが竜宮小町に誘ってくれたお陰ですから」パチン

店主「成程。そういう話なら私も分かるかも」パチン

あずさ「?」パチン

店主「この店やってたお陰で皆と会えたわけだからね」パチン

あずさ「……ふふ、そうですね」パチン

店主「あ、もらい」パチン

あずさ「あ」

店主「嗚呼、オセロ盤というステージが私一色に染まっていく感じ……良いわ」

あずさ「ま、マスターが今までにないほど恍惚の表情を……」

店主「オセロ盤でバツ印作る奴なんかよりはよっぽど強い自信があるもん」

あずさ「どなたのことでしょう……?」

店主「知り合い」

102: 2014/01/23(木) 20:18:23.56 ID:m78LaP+G0
あずさ「負けました」

店主「勝ちました」

あずさ「どうしましょう。サンドウィッチ下さい」

店主「流れるように注文入れるのね」

あずさ「そういえば朝ごはん食べてませんでしたからお腹すいて……」

店主「そういえば私も、いつも開店準備の時に食べてたから忘れてた。私もサンドウィッチ食べよ」

あずさ「良いですよね、サンドウィッチ。移動中に簡単に食べられるから良くコンビニで買っちゃいます」

店主「コンビニのサンドイッチに慣れたあずさちゃんの舌、私のお手製サンドウィッチの虜にしてくれるわ!」

あずさ「楽しみです。あ、そういえば」

店主「?」

あずさ「マスターは女の子の髪の毛、長い方と短い方どっちが好きですか?」

店主「これまた唐突な。んー、どっちかというと長い方が好きかなー。かく言う私もロングだし」

あずさ「むむ、これで5対4です。あら~? 困ったわ~、全然決まらないわ」

店主「6対5?」

あずさ「事務所で、同じ質問を皆にしたんです。そうしたら、綺麗に分かれちゃって……。髪の毛伸ばそうか悩んでて、皆に聞いてみようかと思ったんですけどねぇ」

店主「成程ね。私は長い方が好きかなあ、短いのも悪くないけど」

あずさ「ありがとうございます。うーん、どうしようかしら……」

店主「10人ってことは……プロデューサーさんにも聞いたのね?」

あずさ「はい。プロデューサーさんは長い方が好きらしいです」

店主「りっちゃんは?」

あずさ「長い方が」

店主「もう伸ばしていいんじゃない?」

あずさ「そうですか?」

店主「ていうかもしかしなくても、アイドルの皆、自分の髪を基準に答えてるんじゃあ……」

あずさ「あ」

店主「…………」

103: 2014/01/23(木) 20:31:22.59 ID:m78LaP+G0
あずさ「髪、伸ばしてみますね」

店主「うん、そうすれば良いよ」

あずさ「皆が言ってたとおりだわ~」

店主「何が?」

あずさ「ここに来れば悩みがなくなるっていつも皆言ってたから、私もと思って」

店主「別に私はなにもしてないけどなあ」

あずさ「真ちゃんはマスターのお陰でやりたい仕事が出来るようになったって喜んでましたよ?」

あずさ「雪歩ちゃんも緊張に強くなったって言ってましたし、千早ちゃんもコーヒーを淹れるのが上手になってましたし」

あずさ「それに、私も今悩みを解決してもらいました。ふふ、ありがとうございます、マスター」

店主「うー、面と向かって言われると恥ずかしいなあ……」

あずさ「あら、可愛い」

店主「可愛いって言わないで」

あずさ「かーわいい♪」

店主「やーめーてーよー!」

あずさ「ふふ、マスターが高校とか短大で二個上くらいの先輩だったら面白かったかもしれませんね」

店主「高校ねぇ……私の先輩は皆個性的だったからなあ。路上ライブやった軽音楽部の先輩とか」

あずさ「それは……凄いですね」

店主「歌は滅茶苦茶上手かったけど。私のギターが飲み込まれるくらいに」

あずさ「あら、マスター、ギター弾けるんですか?」

店主「うん。この間もリクエストがあって二曲ほど弾いたよ」

あずさ「良かったら聴かせてくれませんか?」

店主「どうせならあずさちゃんも歌わない?」

あずさ「良いですね。じゃあ、曲は……『キラメキラリ』にしましょう」

店主「まさかの!?」

あずさ「ギターソロカモーン♪ って、一度言ってみたかったんです」

店主「まあ、弾けるけどね。じゃあ、よっと」

あずさ「せーの、JPY!」

店主「なにそれ!?」

104: 2014/01/23(木) 20:43:42.97 ID:m78LaP+G0
店主「結局、『キラメキラリ』に収まらず、ギターにも関わらずこの後『9:02pm』『Mythmaker』『津軽海峡・冬景色』、その他色々弾く羽目になったわ」

店主「あー、指痛い。でも、あずさちゃんの生歌が聴けたんだから安いものね。ファンに怒られそうなくらい安いわ」

店主「……ところで、あずさちゃんが帰る時に言った「ジューシー・ポーリー・バーイ」ってどういう意味かしら」

店主「あ、そうそう。そこで画面を見ている君。そう、君だよ君。ちょっとこっちに……は来れないわね。そこでいいわ」

店主「リーダーとボスの違い、って分かる? どちらも組織の重要な立場ではあるんだけど」

店主「そう、私がまだ語ってないあの子はまさに……うん。リーダーですよっ! リーダーっっ!!」

Next→「喫茶『アイドル』に集うアイドルたち」―case7.5 Jupiter

105: 2014/01/23(木) 20:48:13.20 ID:m78LaP+G0
今日の分はこれで。
なんか短くなった上にうっすいですね。あずさPの方々すいません。

次回に関して、少しレスを募集したいと思います。
天海春香編は、今までどおりのほのぼのと、シリアスの二種類の構想があります。
そのどちらが見たいか、レスが多かった方を書こうと思います。

あと、天海春香編の前にHalf Storyを一つはさみます。一日レスお待ちしております。



引用: 「喫茶『アイドル』に集うアイドルたち」