前回:【喫茶『アイドル』】大人のレディ(自称)と可愛いレディ(自称)
107: 2014/02/11(火) 10:54:01.25 ID:mfRtq8RQ0
店主「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花、なんて言葉のある通り、幽霊なんてものは気のせいだと済まされることが殆どね」

店主「そうは言われても、自分ではっきりと正体が確かめられないものっていうのは怖いものだわ」

店主「もしそういうものが普段から見えるなら、むしろ怖がらずに済むのかもしれないけどね。それはまあ、人によるか」

――10th person 『古都生まれのTさん』

ナレーション『お分かり頂けただろうか……写真中央に映るMさんの足元にご注目頂きたい』

店主「あー、なんとなく分かったかもしれない」

小梅「こ、これは……多分、ごう、合成……だと……思い、ます」

店主「うん、そんな気がする。ちょっと写真全体から浮いてるし」

小梅「心霊、映像なら……合成、でも、やらせでも……面白い、けど……写真は、ちょっと」

店主「心霊映像はやらせでも迫力あったりするしねえ、下手なB級ホラーより怖かったりするし」

小梅「う、うん」

店主「それにしても、アレね。プロジェクター使ってスクリーンで見ると、ちゃちな心霊写真でも怖く見えるわね」

小梅「が、画面が大きいと、迫力が……違う……」

店主「私こういう番組好きだから、小梅ちゃんがDVD持ってきてくれて良かったわ」

小梅「じ、事務所だと……皆、怖がる……から」

店主「その歳でしっかり周りに気配りできるなら将来有望ね……小梅ちゃんは」

小梅「そ、そうだ、あの、こっちの……呪いの、ビデオが、見たいって……あの子が……」

店主「あの子? ああ、あの子ね。どこにいるのか分からないけど」

小梅「」クイックイッ

店主「ん?」

小梅「ま、マスターの、う、後ろ……」

店主「なにそれこわい」

小梅「大丈夫、迷惑は、かけない……はず、だから」

店主「さっきから肩重いんだけど、まさかねえ……」ウィーン

店主「さて、『呪いのビデオ』ってことは心霊映像特集かな」

小梅「う、うん……特に、幸子ちゃんが、気絶……するような、やつ」

店主「楽しみだわ」ピッ

スクリーン『恐怖 心霊映像100連発!』

店主「おかしい、タイトルが全然怖そうじゃない」

カランカラン
ぷちます!(12) (電撃コミックスEX)

108: 2014/02/11(火) 11:07:42.27 ID:mfRtq8RQ0
貴音「お邪魔しま――」

ナレーション『お分かり頂けただろうか。それでは、もう一度ご覧頂こう』

男『おい! どこ行った! どこ行っ――あぁあああああああ!!!』

ナレーション『映像は、ここで途切れた』

貴音「…………」

店主「あ、貴音ちゃんいらっしゃい」

小梅「お、お客さん……」ワタワタ

店主「えーっと、DVD止めて……っと」ピッ

小梅「? あ、あの……大丈夫……です、か……?」

貴音「…………」

貴音「きゅうっ」パタリコ

小梅「! ま、ま、マスター、お、お客さん、倒れた……」

店主「えぇ!? た、貴音ちゃん!?」

貴音「仏説摩訶般若波羅蜜多心経観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄……」ブツブツ

店主「般若心経やめて! 怖い!」

小梅「あ、あの子が、怖がってるから……」

店主「え、効くの? 幽霊って般若心経効くの?」

小梅「ど、どっちかと、言うと……この人が、そういう、力……持ってるのかも……」

貴音「是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌身意無色声香味触法……」

店主「とりあえず落ち着いて貴音ちゃん! 本当に怖いから!」

小梅「と、とりあえず、電気……付けないと」パチッ

店主「なんで誰も触ってないのに電気点いたの!?」

小梅「あ、あの子が、手伝ってくれ、た、から」

店主「便利ねあの子!」

貴音「以無所得故菩提薩埵依般若波羅蜜多故心無罣礙無罣礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢想究竟涅槃……」

店主「収集がつかない!」

109: 2014/02/11(火) 11:21:16.45 ID:mfRtq8RQ0
店主「落ち着いた?」

貴音「はい、なんとか……」

小梅「な、なんか……ごめん、なさい……」

貴音「いえ、気にすることはありません。ただ……」

店主「ただ?」

貴音「あの、マスター……その、背中におぶさっているものは……」

店主「何にも背負ってなんかいないんだけれど」

小梅「あ、あの子が見えるん、です……か?」

貴音「ええ、はっきりと……」

小梅「」パアッ

店主(満面の笑みを浮かべるのは良いけど、私にだけ見えないのに私にもたれかかってる子をどうにかして)

小梅「わ、わた、私以外に、あの子……見える、人……初めて、会った……!」

貴音「そうなのですか……」

小梅「あ、あの、オススメの、心霊スポット、あるの。今度、一緒にい、行きません……?」

貴音「ひぃ! そ、何故わざわざそのような場所へ行かなければならないのですか!」

小梅「あ、そ、そう、ですか……」

店主「あの、それよりさっきから胸のあたりが苦しいんだけど」

貴音「後ろから抱きつかれているようですね……腕が胸のあたりを巻いています」

店主「この子が男で生きた人間だったら投げ飛ばしてるところね」

小梅「ま、マスターの周りは、居心地が……良い、って、言ってるから……」

店主「嬉しいのやら嬉しくないのやら」

貴音「……その様子だと、アレは悪しきモノではないようですね」

小梅「う、うん……私の、トモダチ……」

貴音「……それならば怖くありませ……ひぃ!」

店主「あ、肩軽くなった」

貴音「あ、あわ、あわわわ……」

小梅「だ、ダメだよ……そんなに、くっついたら……」

貴音「は、離れてくださいましぃぃぃぃぃ……!」

店主「ああ、そっちに憑いていったのね」

小梅「こ、こっち、こっち」

貴音「……ふぅ、生きた心地がしませんでした」

小梅「あんまり、他の人、怖がらせたら……ダメ」

店主「あの子が見えないからどうなってるのか全くわからないわ」

110: 2014/02/11(火) 11:32:07.90 ID:mfRtq8RQ0
貴音「……そういえば、自己紹介がまだでしたね」

小梅「あ、そ、そういえば」

貴音「私、四条貴音と申します。961プロダクションでアイドルユニットVenusの一人として活動しております」

小梅「わ、私は、し、白坂小梅……です。CGプロダクション、で、一応……アイドルやって、ます」

貴音「なんと。では、いつか仕事を共にすることがあるやもしれませんね」

小梅「そ、そうなったら、嬉しい、かも……」

店主(小梅ちゃんと一緒の仕事……ねえ)

小梅「……あれ? し、四条、貴音? さん?」

貴音「はい?」

小梅「こ、この間、プロデューサーさんが、取ってきた、仕事……共演者の、名前に……貴音さんの、名前、あった気がする……」

貴音「なんと。すぐに黒井社長に問い合わせなければ。私が知らないということは、黒井社長が取ってきてくれた仕事に違いありません」

小梅「た、楽しみ……」

小梅「貴音さんと、廃病院探索……」

貴音「……今、なんと?」

小梅「廃病院探索、って……」

店主「もしかして、毎年何回か特番でやってるやつ?」

小梅「そ、そう……。あ、ああいう番組のロケ、って……怖がりの、人が、一人居ると、面白い……から、かも」

貴音「黒井社長に電話してきます」ガタッ

店主「はい、いってら」

小梅「廃病院は、それなりに、面白い……危ないところは、入る前から分かるから、大丈夫……」

店主「心霊スポットに関して小梅ちゃん以上のアイドルは居ないと思うわ」

111: 2014/02/11(火) 11:34:47.95 ID:mfRtq8RQ0
おっと、急用で出かけるから一時中断

114: 2014/02/11(火) 13:29:37.56 ID:mfRtq8RQ0
貴音「…………」カランカラン

店主「おかえり」

貴音「」ズシャァッ

小梅「き、綺麗に……膝から、崩れ落ちた」

貴音「あの方はいけずです……私が幽霊や妖怪の類を苦手としていると知っていて……!」

店主(知っているからこそなんだろうなあ)

小梅「だ、大丈夫……私が、危なそうなところは、避ける……から」

店主「っていうか、幽霊が見えるならむしろ怖くないんじゃないの? 小梅ちゃんみたいに」

貴音「それは、見えない者の言い分です!」

店主「そうなの?」

貴音「考えても見て下さい、家の中に全く知らない誰かが居たりするのですよ!」

店主「怖い」

貴音「廃病院など、廃病院など行った日には……きっとこの世のものとは思えない光景が……っ!」

小梅「ほ、本当に、こ……この世の光景じゃ、ない、かも……」

店主「見えたら見えたでやっぱり怖いのね。でも、見えないのにそこにいるっていうのも私は怖いなあ」

店主「現に今、あの子がどこに居るのか私には分からない」

貴音「…………」キョロキョロ

小梅「……あ」

店主「あ?」

小梅「ち、厨房……の、覗いてる」

店主「珍しいのかな? 案外可愛いわね、あの子」

貴音「私には可愛らしくは見えないのですが……」

小梅「そういえば、こ、ここの厨房、き、喫茶店っていうより……り、料理店っぽい、気が……する」

店主「うん、元々蕎麦屋が入ってたところそのまま使ってるから、厨房は無駄に広いわよ。お陰で掃除が大変だけど」

小梅「……? ま、マスター、あの子が、き、気になるところがあるって」

店主「うん?」

115: 2014/02/11(火) 13:46:53.94 ID:mfRtq8RQ0
小梅「あ、あの厨房……お、奥の、方……誰か、居る、って……。入って、見ても、良い……ですか?」

店主「え、なにそれ過去最大レベルで怖いんだけど」

小梅「私も、見ないと、どうなってるかは……分から、ない」

店主「うん、分かった、入って」

小梅「お、お、お邪魔、します……」

店主「私には何も見えないんだけど……」

小梅「……あ、い、居た……かも。あれ、かな」

店主「え、マジで居るの?」

小梅「……もしかしたら、割と、危ない……系統の、子かも」

店主「えっ」

小梅「あ、あの子も、言ってた通り、マスターの周りは、居心地が良いのかも……」

店主「やっぱり嬉しくないわそんなの!」

小梅「ど、どうにか、したいけど、わ、私が、話したところで……どうにか出来るかは、ほ、保証……出来ない」

店主「どうしよう……霊媒師とか呼んだ方が良いの?」

小梅「と、とりあえず……話してくる……」

店主「うん、お願いするわ」

小梅「―――」

小梅「―――」

小梅「――……!」

店主「……!? な、なんか急に寒く……」

小梅「ま、マスターに、憑かれた……! ど、どうにかしないと……」

店主「え? 嘘でしょ? ……嘘でしょ?」

小梅「…………」

店主「嘘でしょ!? 私が何したと!?」

小梅「う……あ、あの子でも、引き剥がせない……みたい」

店主「え、どうすんの!? どうすんの!? 私どうなるの!?」

貴音「騒がしいようですが……まだ終わらな……ひぃ!」

店主「た、貴音ちゃん! 私どうなってんの!? 今なにがどうなってんの!?」

貴音「ま、マスター! その、体にまとわりついてるものは……」

店主「まとわりついてんの!?」

小梅「い、居心地が良いから、い、依存されてるの、かも……このまま、憑かれてたら、マスターが、体を壊して、倒れる……かも」

店主「嫌よそんなの!」

小梅「ど、どうすれば……」ワタワタ

貴音「…………」

116: 2014/02/11(火) 14:04:05.90 ID:mfRtq8RQ0
貴音「отходить зло результат злой дух……」ブツブツ

小梅「えっ……?」

店主「え、なにそれ」ブルブル

貴音「Отвали, чувак сожалеть возвращаться Для почвы……」ブツブツ

貴音「在るべき場所へ戻るのですッ!」バッ

『ゥヴォッ』

店主「……あ、なんか楽になった」

小梅「す、凄い……ふ、吹き飛ばした……と、いうか、あれは、土へ……還した?」

貴音「幽霊は恐ろしいですが、私の知人に危害を加えるとあらば話は別です!」バァーン

小梅「あ、あの子でも、どうにも……出来なかった、のに、す、凄い……」

店主「……ところでさ」

小梅「?」

店主「「居心地が良いから依存されてる」って、もしかして、結構前から厨房に居座ってたんじゃあ……」

小梅「もしかする、と……そう、かも」

店主「……小梅ちゃん、お金なら払うから定期的に様子を見てもらっても……」

小梅「し、塩とか、何か予防もしておくと、良いかも……」

貴音「私が御札を作りましょう。悪霊の一匹たりとも触れただけで消滅するようなものを」

店主「貴音ちゃんが本当に頼もしい」

小梅「た、貴音さん、なら……つ、作れるかも、そんな強さでも……」

貴音「この店は私を含め皆の安息の地なのです……そこを守るためになら意地でも作ってみせます」

小梅「で、出来れば、あの子は入れるように……してほしい」

貴音「……善処いたします」

小梅「お願い、し、します……」

店主「……ああ、寒気がしてきたわ。私そんな奴が居る所で仕事してたのね」

小梅「ひ、人にも……幽霊にも、好かれる……って、ある意味、才能……だから」

店主「嫌だなあ……悪霊に憑かれるほど好かれるのは」

118: 2014/02/11(火) 14:18:58.39 ID:mfRtq8RQ0
店主「あの日以来、小梅ちゃんがうちの店に来る頻度が高くなった。定期点検、って感じで来てくれるから、飲み物はサービスしてるわ」

店主「貴音ちゃんと共演した廃病院探訪は、普段クールな貴音ちゃんの怖がる様子が大注目されてたらしいわ。黒井社長的には狙い通りでしょうけど、貴音ちゃんとしてはどうなのかな」

店主「そうそう、貴音ちゃんが持ってきてくれた御札、小梅ちゃん曰く「凄く強力だけど、悪霊しか弾かない。凄い」らしいわ。本当に貴音ちゃんは何者なの」

店主「私にも見えたら違うんでしょうけどね。見えない私にはファンタジーの域よ」

店主「ファンタジーは夢見るから面白いんであって、自分がその渦中に入るのは懲り懲りだわ」

Next→『スモール・ア・リトル バード』

119: 2014/02/11(火) 14:21:40.49 ID:mfRtq8RQ0
途中、近所のBigBoyへ親戚とステーキ食いに行ってきました。ドリンクバーでノワールスペシャル作って飲んでました。くっそ甘かったです。
小梅ちゃんはデレマスで一二を争うくらいに好きなキャラかもしれないなあ、とWiki見ながら思いました。

次回のキャラがタイトルで予想できたら相当なものです。では、次回。

120: 2014/02/11(火) 14:52:32.48 ID:PGl/CqJEo

小鳥さんの子供かな(適当)

121: 2014/02/11(火) 23:13:09.52 ID:oPdaIJP90
ノワールスペシャルなんだっけ・・・

引用: 「アイドルの集う喫茶『アイドル』」