前回:【喫茶『アイドル』】スモール・ア・リトル バード
139: 2014/02/13(木) 18:16:32.91 ID:71EylaKu0
店長「誰しも一度は通る道、中二病。私とて例外じゃないわ。まあ、中々楽しいロックンロールな日々だったけど」

店長「で、中二病っていうのは大きく分けて二種類あってね、多くは元祖中二病、リアリスト型と、派生中二病、ファンタジー型ね」

店長「……え? 私? 私は……あー、リアリスト型だったかなー……思い出したくない」

――12th person 『安息の地『怠惰の城』に集結せし偶像の者ども』
※本日の喫茶『アイドル』は、副音声通訳でお送りします。

蘭子「煩わしい太陽ね(おはようございます!)」

店主「来たか、招かれざる客よ(いらっしゃい、蘭子ちゃん)」

蘭子「魔界の甘美なる雫を……(オレンジジュースをお願いします)」

店主「御意に(はい、オレンジジュース一つ)」

蘭子「我が心身の安息を委ねる大木、すなわち『怠惰の城』(『アイドル』はいつ来ても落ち着きますねえ)」

店主「此処は安息の地、喩え如何なる客人であれど此の場において我が術に逃れるる者はない(私の持てるだけのもてなしの心で、この喫茶店は手入れしてるからね)」

蘭子「闇に飲まれよ(お疲れ様です)」

店主「微々たるもの(ありがとう、それほどじゃないけどね)」

蘭子「時に(ところで)」

店主「?(?)」

蘭子「なにゆえ城主までも魔の力を?(なんでマスターもその口調なんですか?)」

店主「愉悦!(面白そうだったから!)」

蘭子「真に(そうですか)」

店主「でも疲れたからやめるわ」

蘭子「我が肉体にも限界はある、それが真実(正直私もこの口調で日常会話を連続するのはキツイです)」

店主「ほかにお客さん居ないし、素に戻っても大丈夫じゃない?」

蘭子「そうですかね」

店主「うん」
ぷちます!(12) (電撃コミックスEX)

141: 2014/02/13(木) 18:28:42.54 ID:71EylaKu0
蘭子「正直、事務所よりくつろげる場所なんて自宅とこの店くらいです」

店主「それはそれは」

蘭子「プロデューサーにも殆ど見せたことのない素が、自然と出てしまうこの空間……中々不思議ですね」

店主「別に変な幽霊が居るとかじゃないから大丈夫よ」

蘭子「邪なる者!?(おばけ!?)」

店主「居ないってば、多分」

蘭子「そう、なんですか? しかし、最近なにかと小梅ちゃんがこちらに来ているのはまさか……」

店主「だから居ないってば! この間までは居たけど……あっ」

蘭子「……え?」

店主「うん、居ないから。今は絶対居ないから。居ないことを確認してもらうために小梅ちゃんに見てもらってるんだから」

蘭子「……凍てつく(鳥肌が……)」

店主「はいはい、オレンジジュース飲んで落ち着いて」

蘭子「あ、ありがとうございます」

店主(なんか、蘭子ちゃんはタイプは違えど響ちゃんと同じものを感じるのよねえ)

蘭子「美味也(美味しいです)」

店主「熊本産の甘夏みかんを使ってるわよ」

蘭子「やはり魔界の雫に偽りなしッ!(熊本バンザイ!)」

店主「郷土愛?」

蘭子「故郷を想う、それは生誕の地を離れる者の当然の本能よ(たまにホームシックになったりする人も事務所には居ますよ)」

店主「東京生まれ東京育ちの私には分からないなあ、曾祖父さん曾祖母さんまで遡れば新潟に辿り着くけど」

蘭子「鉱物の森に生まれ落ちた転生の城主か(生粋の東京人なんですね?)」

店主「そんな大層なものじゃないけどね」

142: 2014/02/13(木) 18:45:44.88 ID:71EylaKu0
蘭子「ん? 魔界の果実を用いし甘美なる芸術?(ん? 甘夏みかんスイーツ?)」

店主「ああ、試しにみかんを使ったスイーツを幾つか考えてみたのよ。そうだ、新作に地元民代表の意見をもらってもいいかしら」

店主「試作品だから、お代はいらないわ。どう?」

蘭子「我が舌根は生半可な品では満足せぬぞ?(良いんですか!? 頂きます!)」

店主(これ、熊本弁もとい中二言語分からなかったら、殆ど真逆の意味よね)

蘭子「愉悦!(楽しみです!)」

店主「じゃあ、ちょっと待ってねー」

やよい「お邪魔しまーすっ!」カランカラン

店主「あ、やよいちゃんいらっしゃい」

蘭子「む、古に巡りあいし嘗ての我が輝かしき戦友よ(あ、この間共演したやよいさんじゃないですか)」

やよい「あ、蘭子さん! お久しぶりですー!」

店主「知り合いだったの?」

蘭子「六十万五千の時を遡り、魂の赴きし歌声の戦場にて(先週、歌番組でご一緒したんです)」

やよい「楽しかったですー! ツインテールの人ばっかりで合唱したんですよー!」

蘭子「よもや、古代の魔王の一柱にかの土地で巡り会おうとは(まさか、魔王エンジェルのりんさんと共演できるなんて思ってませんでした!)」

やよい「凄かったですね、りんさん! 凄く可愛かったですー!」

店主「あれで17か18そこらだって言うんだから、反則よね」

蘭子「時早く地に生まれ落ちたとは露知らず、現世での対面(初めて会った時には、年上とは思いませんでした)」

やよい「私は、美希さんと千早さんと一緒にアイドルマスターGPに出た時に初めて会いました」

店主「ああ、765プロと魔王エンジェルの因縁はアイドルマスターGPからか」

やよい「でも、その後に一緒に仕事した時はその時以上に凄かったです!」

店主(卑怯な手を使うのを止めたのが、アイドルとしての自信を取り戻したのかな)

蘭子「対峙する難敵は、日々その力を高めているということか(ライバルは常に強くなってるんですね……私も頑張らないと)」

144: 2014/02/13(木) 19:20:17.37 ID:71EylaKu0
やよい「あ、マスター。トマトジュースお願いします!」

店主「はい、トマトジュース一つ。そうだ、やよいちゃんもみかんのスイーツ試食していかない? タダよ」

やよい「! 良いんですか?」

蘭子「それは良き案ね(良いですね)」

店主「感想くれれば良いわ」

やよい「じゃあ、頂きます」

店主「はい、トマトジュース。さて、じゃあちょっと待ってね」タタタ

やよい「んっ」コクコク

蘭子(夢中でトマトジュース飲んでる……可愛い)

やよい「ぷはっ」

蘭子「輝かしき偶像の天使の光には我が肉体とて耐え切れぬ!(やよいさんは可愛いなあ!)」

やよい「えっ」

蘭子「えっ、あ、いや」

やよい「あ、ありがとうございますー! でも、蘭子さんも可愛いですよー?」

蘭子(馬鹿な、これが、天使か(天使が目の前に居る!))

店主「お待たせー」

蘭子「既に鼻孔を刺激するこの香り……(良い匂いですね)」

店主「甘夏みかんの、クッキー、ゼリー、パウンドケーキよ」

やよい「どれも美味しそうです!」

蘭子「では、まずはこの柔和なる甘味の芸術を(じゃあ、最初はゼリーから)」

やよい「せーの、」

二人「「頂きます!」」

蘭子「」モキュモキュ

やよい「」モキュモキュ

店主「どう?」

蘭子「侮る無かれ魔界の果実!(熊本のみかんに感謝!)」

やよい「柔らかくて美味しいです! でも、みかんってゼラチンだと固まりづらいですよね?」

店主「それ、ゼラチンじゃなくてアガーを使ってるのよ?」

蘭子「あがー?」

店主「ゼラチンは牛や豚由来のコラーゲンから作るけど、アガーは海藻とかマメ科の植物から作るのよ」

やよい「今度探して使ってみます!」

店主「ゼラチンとアガーと寒天があればもう怖いものはないわ」

145: 2014/02/13(木) 19:30:44.82 ID:71EylaKu0
やよい「次は、クッキーを頂きます」

蘭子「」シャクシャク

やよい「」シャクシャク

蘭子「……これは!」

やよい「みかんのほろ苦さが癖になって、手がとまりませんーっ」

蘭子「サクサクという食感が心地いい!」シャクシャク

やよい「ああ! とまりませんー!」シャクシャク

店主「これはまた大成功かな?」シャクシャク

シャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャク……

店主「無くなったわね」

蘭子「……まさか、自らの腕を止める術が見つからないなど(美味しすぎていつの間にか無くなってましたね)」

やよい「でも、一枚一枚が軽いから全然お腹が苦しくありませんね」

店主「じゃあ、ラストにパウンドケーキ」

蘭子「これは、また立派な見た目の……」

やよい「フォークをケーキの弾力が跳ね返しますよ!」

蘭子「しかし、強く押し付ければしっとりとした生地にフォークが沈んでいく……」

やよい「頂きます!」パクッ

蘭子「」パクッ

店主「……どう?」

蘭子「! こ、これ! これ! 凄く、あの、爽やかで! あの、おい、はい、美味しいですっ! 美味しい! 熊本バンザイ!」

やよい「……清涼な一縷の風が、私の心に吹き抜ける。そう、まさにそれは楽園《アルカディア》のよう(後味がすっきりしてて、凄く美味しいです!)」

店主「!?」

蘭子「こ、これ! 事務所に持って行きたいんですけど、持ち帰り用に買ったり出来ますか?」

やよい「魔界《ヘルヘイム》の果実……しかしそれは、時として楽園《アルカディア》を象徴する奇跡を起こしうる禁断の果実……嗚呼、なんという罪深き果実(みかんってこんなに美味しくできるんですね!)」

店主「や、やよいちゃんはどうしてそうなっちゃったの?」

146: 2014/02/13(木) 19:39:22.40 ID:71EylaKu0
店主「帰る頃には元に戻ってたけど、あのときのやよいちゃんの変貌は一体何だったのかな……中学二年生の本能が呼び覚まされたのかしら」

店主「そういえば、蘭子ちゃんが買っていった甘夏みかんケーキ、事務所での評判はどうだったのか気になるわ。今度聞いてみないとね」

店主「ところで……蘭子ちゃんはやっぱり素が可愛いと思わない? まあ、中二全開のあの感じも私は好きだけどね」

店主「さて、そんな蘭子ちゃんがお店に忘れていったノートがここに……悪いけど、誰のか確かめるために中をちょっと見せてもらったわ」

店主「……まあ、なんというか、色んな絵の中にこの店の絵があって、少しほっこりしたわ」

店主「そういえば、蘭子ちゃんも言ってたけど、スイーツに限らず、料理も絵と同じで芸術なのよね」

店主「芸術は爆発だ、なんて言った人がいたけど、成程彼女はまさにそのとおりかもね」

Next→『カフェテリア『アイドル』、トゥデイ新装オープン! しません』

147: 2014/02/13(木) 19:42:02.78 ID:71EylaKu0
本日の分終わり。
火曜日の祝日に、バレンタインに合わせてオランジェットを作ってたら、
「みかん→甘夏みかん→熊本→熊本弁→やみのま!」
という風に思いついたので流れで書きました。
やよいは純真無垢だけど、だからこそ中二病にかかってもおかしくないかなーって。

ネクスト、どんなアイドルがエントリーするのかは、トゥモローをウェイト!

148: 2014/02/13(木) 20:07:15.57 ID:kahlbN4so
乙乙、フルネームで呼んであげたくなるよね

引用: 「アイドルの集う喫茶『アイドル』」