前回:【喫茶『アイドル』】安息の地『怠惰の城』に集結せし偶像の者ども
152: 2014/02/14(金) 17:53:34.35 ID:fkpX4ZTu0
店主「バレンタインデー。少年少女がチョコレート一つに一喜一憂するというイベントね」

店主「起源としては、結婚が禁止されていた兵士の結婚式を執り行ったとして処刑された聖ヴァレンティヌスの命日という説があるわね」

店主「まあ、チョコレートが日本の製菓会社の作戦なのはともかく、恋人の日っていうのは間違いないわ。でも、アイドルに恋人はご法度よ?」

――13th person 『カフェテリア『アイドル』、トゥデイ新装オープン! しません』

店主「…………」

北斗「ふぅ……暖かい」

店主「北斗くん、一つ聞いていい?」

北斗「なんですか?」

店主「貴方、今日誕生日よね?」

北斗「はい」

店主「バースデーライブは?」

北斗「終了次第間髪をいれずここに来ました。ファンのエンジェルちゃんたちでパニックが起きる前にね」

店主「一歩間違えばこの店が大パニックなんだからやめてほしいわ」

北斗「まあまあ、夜になったら冬馬や翔太も来ますし、少し先に来ただけの話ですよ」

店主「黒井社長も大概ね……所属アイドルのバースデーパーティーくらい、もっと豪華な所でやればいいのに」

北斗「このお店がお気に入りなんですよ」

店主「そりゃまあ嬉しいこって。はい、ノワールスペシャル version2」

北斗「何が違うんですか?」

店主「コーヒー豆じゃなくて、たんぽぽから作ってるの。酔っぱらいも目が覚めるお味よ」

北斗「成程☆」

店主「それと、これサービスね」

北斗「ん、これは……オランジェットですか」

店主「バレンタインデーサービス」

北斗「ありがたく受け取らせてもらいます」

カランカラン
ぷちます!(12) (電撃コミックスEX)

153: 2014/02/14(金) 18:13:38.77 ID:fkpX4ZTu0
ロコ「ハロー!」

店主「いらっしゃい、ロコちゃん」

ロコ「今日も雪がロット・ア・ロットですね。メニー コールドです」

店主「今日は自転車出せなかったわ……帰りが憂鬱」

北斗「最近雪が多いですね……まあ、雪の上ではエンジェルちゃんたちがより美しく見えるから好きですけどね」

店主「そういう見方もあるのね……」

ロコ「あ、マスター。カシスジュースをお願いします!」

店主「はい、カシスジュース一つ」

ロコ「……ん?」

北斗「チャオ☆」

ロコ「……誰ですか?」

北斗「えっ」

ロコ「えっ」

店主「えっ? どうしたの?」

北斗「……マスター、俺ってそんなに知名度ないかな」

店主「トップアイドルが何言ってんの?」

ロコ「ソーリー、ロコはあまり男性アイドルグループに関してノット ディテールドゥです」

北斗「うーん……全世界35億のエンジェルちゃんに知られるまでの道はまだ遠いなあ」

店主「ごめん北斗くん、流石にその野望は無謀だと思うわ」

北斗「でも、俺は知ってるよ。765プロのロコちゃん?」

ロコ「! ロコを知ってるんですか?」

北斗「もちろん、全世界35億のエンジェルちゃんに知られるためには、まず自分が相手のことを知らないと」

店主「え、何この男怖い」

ロコ「でも多分ロコはトゥモローにはフォゲットしてますね」

北斗「ひどいなあ」

店主「やーい、北斗くん振られてやんのー」

ロコ「あ、そういえば、マスターに幾つかプレゼントが」

店主「ん?」

154: 2014/02/14(金) 18:26:19.33 ID:fkpX4ZTu0
ロコ「まず、シアターの方からムービーの予告ビデオです」

店主「へえ、また映画やるんだ。特撮にドキュメンタリーに大忙しね」

ロコ「そのムービーは、ビフォーの『眠り姫』のシキュアルです」

店主「続編!?」

北斗「眠り姫って、千早ちゃんの?」

店主「ええ、765プロ製作の映画第一作目ね。二作目がドキュメンタリーの『栄光の舞台裏』だったから、これが三作目」

ロコ「ロコもエントリーしてます!」

店主「あとで見ましょうか」

ロコ「で、こっちもシアターから、ニューアルバムです」

店主「おお、CDがいっぱい」

ロコ「これはリツコからです」

店主「成程。……ふむ、765プロの新人の子たちはこれが初のCDになるのね」

ロコ「ロコもエントリーしてます!」

店主「あとで聴きましょうか」

北斗「『Thank You!』、か。なんでか、冬馬を思い出すな」

店主「さんきゅっ」

北斗「似てますね」

店主「それほどでも」

ロコ「で、で、これがラストのプレゼントです」ズッ

店主「……この、巨大なオブジェクトは一体?」

ロコ「このシルバーペーパーをリムーブして……じゃん! ロコのハンドメイドチョコレート!」

店主「でっか! っていうかこれ最早置物のレベルよ!?」

ロコ「オールライト! 食べられます!」

店主「(材質的に)食べられても(物量的に)食べられないわ」

ロコ「そんな、(芸術的な造形で)キャント イートだなんて」

北斗「なんだか齟齬が発生してる気がするな」

155: 2014/02/14(金) 18:37:26.66 ID:fkpX4ZTu0
ロコ「本当はピクチャーをプレゼントしたかったんですけど、バレンタインなのでチョコレートを」

店主「貰っておいてあれだけど、絵でも良かったのよ?」コレドウヤッテショリシヨウ

ロコ「じゃあ、ここでドローイングします!」

店主「へ?」

ロコ「ペインツは周りをダーティしてしまうので、今回はペンシルオンリーです」サッ

店主(ペインツ……絵の具も今持ってるってこと?)

ロコ「…………」シャッシャッシャッシャッ

北斗「へえ、実物は見たことなかったけど、上手いんだね」

ロコ「…………」シャッシャッシャッシャッ

店主「駄目よ、北斗くん。集中を始めたロコちゃんに話しかけても、右から左へ受け流されるわ」

北斗「成程」

ロコ「……ふむ、やっぱりこっちはこうしたほうがモア グレートです」シャッシャッシャッシャッ

店主「……そうだ、さっき貰った映画の予告ビデオ見ましょうか」

北斗「良いですね。そういえば、『眠り姫』のDVDを冬馬が持ってたから、今度貸してもらおう」

店主「へえ、冬馬くんDVDまで買ってたんだ……」カチカチ

北斗「冬馬も大概、765プロを気に入ってますからね。この間のアリーナライブなんか、春香ちゃんにチケットせびってまで……」

店主「ツンデレ乙。いっつもつんけんしてるくせにねえ」ウィーン

北斗「ですね」

店主「さて、再生、っと」ピッ

テロップ『765Production MOVIE PROJECT』

北斗「おお、それっぽい雰囲気で」

テロップ『これは、ある学園で起きた「桜の下の眠り姫事件」から、一年後の物語である』
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157: 2014/02/14(金) 19:11:56.93 ID:fkpX4ZTu0
千早『貴女、名前は?』

志保『志保……北沢、志保』

テロップ『学園を出て、あてのない旅を繰り返していたかつての「アイドル」如月千早は、旅先で一人の少女と出会う』

千早『ここにも、「アイドル」の養成学校が……』

志保『私は、誰にも負けない「アイドル」になるんです。ならないと、いけないんです……!』

奈緒『アタシは認めない! 「アイドル」になるんは、アタシや!』バチバチバチ

テロップ『いつか見たような光景を前に、ここに「眠り姫」が居ないことを安心した千早……だが、』


ロコ『コンプリート……我がパーフェクトな、アーティフィシャル「アイドル」!』

まつり『……あい、どる?』

ロコ『さあ、行きなさい、実験体19号、いや、「アイドル」……「祀り姫」! 全てのアイドルをデリートするために!』

まつり『……イエス、マイマスター』


~♪(眠り姫)

千早『貴女は……何者なの?』ギリギリ

まつり『「アイドル」如月千早……照合完了。デリート、するのですっ』ズオッ


杏奈『そんな……皆が……氏……ッ!』

美奈子『奈緒! 目を覚まして!』

奈緒『ああ……やっぱアタシじゃ、ダメだったのかなあ……』

テロップ『人造アイドル「祀り姫」により、壊滅の危機に陥る学園。そこに現れたのは、かつての敵』

まつり『データにない……何者なのです?』

美希『あんまり煩くて禍々しい気配だったから、思わず起きちゃったの……さあ、ミキと一緒に、一緒に寝よっか?』

テロップ『二人の「眠り姫」と、衝突する邪悪の「祀り姫」。そして……』

志保『千早さん!』

まつり『案外、「眠り姫」も退屈なのです』グサッ

美希『……あれ? ミキの体、動かない……の……なんか、眠い、の……』バタッ

千早『……そん、な……勝てない……?』ドサッ

テロップ『起こすと怖い、「眠り姫」。その彼女が、眠る』

千早『志、保……あとは、任せたわ……よ』

まつり『……!? この力は、なんなのです……!?』

志保『これが……「眠り姫」、いえ、私は眠り姫じゃない……』

志保『私は、「偽り姫」……ッ!』

テロップ『劇場版『祀り姫~Sleeping Teller~ 覚醒のライアー・ルージュ』近日公開』
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店主「ロコちゃんモロ敵じゃない!?」

北斗「凄く黒幕っぽいポジションでしたね」

店主「ていうか奈緒ちゃんがものすごい噛ませ犬っぽい!」

158: 2014/02/14(金) 19:25:06.45 ID:fkpX4ZTu0
店主「あ、まだ続きあった」

北斗「同時上映のアニメみたいですね」
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ナレーション『今度の冒険は!』

いぬ美『バウッ!』

ナレーション『いぬ美が主役!』

ハム蔵『大変だ! ワニ子に、ネコ吉に……皆さらわれた!』

いぬ美『なんですって?』

ナレーション『あの我那覇響のペットにして、売れっ子わんこのいぬ美が、ついにアニメーションで登場!』

ハム蔵『行くぞ、いぬ美! 皆を助けに行くんだ!』

いぬ美『いくわよ、ハム蔵!』


ブラックハルシオン3世『よく来たな! だが俺に勝てるかな……? 痛い目を見ることになるぜ』

いぬ美『上等よ、皆は氏ぬ気で奪い返してあげる!』

ナレーション『仲間をさらった悪の組織、ブラックハルシオンとの戦い! いぬ美は、ブラックハルシオン3世に勝てるのか!』

ナレーション『劇場版『いぬ美とハム蔵の、対決! ブラックハルシオン』、同時上映!』
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北斗「……今、聞きました?」

店主「ええ、しっかり聞いたわ」

北斗「あのブラックハルシオン3世の声、あれって」

店主「冬馬くんよね」

北斗「しかもあの感じ、結構楽しんでる声でしたよ」

店主「冬馬くんの意外な面がどんどん明らかになってくるわね」

北斗(っていうか、ハム蔵の声も春香ちゃんにそっくりだった気が……オスだよな?)

159: 2014/02/14(金) 19:37:28.83 ID:fkpX4ZTu0
ロコ「出来ました! ふふん、実にワンダフルなワークスがコンプリートです」

店主「あ、完成したの? どれどれ……」

ロコ「どうぞ、プレゼントです」

北斗「これは……現代アート?」

ロコ「テーマは「喫茶『アイドル』」、このカフェテリアに対するロコのイメージをエクスプレスしてみました!」

北斗「成程……道理で、暖かみのある絵だと思ったよ」

ロコ「中々グッドなアイズをしてますね」

店主「へえ……じゃあ折角だから、店内に飾らせてもらおうかな」

ロコ「おっと、忘れてました」シャッシャッ

ロコ「はい、ロコのサインもボーナスです!」

店主「ありがたく飾らせてもらうわ! そういえば、サインを飾る場所も段々窮屈になってきたわね」

北斗「サインも随分増えましたね。俺たちがサインを書くときには、まだ数えるほどだったのに」

店主「765プロ、961プロ、876プロ、東豪寺プロ、CGプロ……そんだけのアイドルに愛される店が持てて、私は幸せものだわ」

ロコ「でも相変わらずゲストはスケアースですね」

店主「お客さんが少ないのはどうしようもないわ……まあ、常連さんは居るし、皆も来てくれるし、大丈夫よ」

北斗「今日だって、俺の誕生日パーティーで一杯注文しますからね」

ロコ「バースデーなんですか? それじゃあ、ホクトにもプレゼントです!」

北斗「え?」

ロコ「んー……フォー ア ホワイル、じっとしててください」ジー

北斗「な、なんか見つめられると照れるな……」

店主「口説き中ずっと女の子見つめてる野郎が何言ってるのよ」

ロコ「んー」シャッシャッシャッシャッ

160: 2014/02/14(金) 19:45:38.88 ID:fkpX4ZTu0
北斗「…………」ピタッ

店主(咄嗟にポーズを決める辺り、プロね)

ロコ「クール。それでいてエレガントに、デリケートなラインでディテールを……」シャッシャッシャッシャッ

北斗「……咄嗟にポーズを決めたは良いものの、」

店主「?」

北斗「これよりも『恋をはじめよう』の決めポーズの方が良かったかも……」

店主「いや、今のヤツのほうがかっこいい」

北斗「そうですか」

ロコ「…………」シャッシャッシャッシャッ

ロコ「よし、コンプリートです!」

北斗「速い!」

店主「超速い!」

ロコ「どうぞ、プレゼント フォー ユー!」

北斗「これは……」

店主「普通に上手いわね……写実的で」

ロコ「ロコはアーティストですから、シチュエーションに応じてリゾースフルなんです」フンス

北斗「ありがとう……大事にするよ」

店主「あの北斗くんがキザなセリフを吐かずに感謝した……これは相当ね」

ロコ「ロコにかかればこの程度イージー ワークです。マスターも、どんどんリクエストしてくださいね」

店主「ロコちゃんの可能性は無限大ね……アイドルの枠にとどまらないわ」

ロコ「今度、765シアターがリモデリングするらしいので、ロコがデザインをレスポンシブルするんです」

ロコ「マスターもこのカフェテリアのリモデリング、ロコにお任せしてください?」

店主「残念だけど、新装開店の予定はないわ」

ロコ「そうですか」

161: 2014/02/14(金) 19:53:08.77 ID:fkpX4ZTu0
店主「ロコちゃんに貰った絵は、皆のサインとは別にカウンターの裏で飾らせてもらったわ」

店主「ちょっとお店がオシャレになった気分。ロコちゃんに感謝しないとね。まあ、何が描いてあるのかは相変わらず分からないんだけど」

店主「『祀り姫』の映画公開の前に、『眠り姫』の漫画が発売するとか。買いに行っちゃおうかなあ、『祀り姫』も見に行きたいし」

店主「そうそう、あの後、北斗くんのバースデーパーティーは盛り上がったわよ?」

店主「まあ、ブラックハルシオンの件で冬馬くんがからかわれたり、バースデーパーティーというよりはただのどんちゃん騒ぎだったけどね」

店主「もしかして皆、いっつも仕事ばかりでたまには騒ぎたかっただけなのです?」

Next→『日曜日の閉鎖時空と永遠のなんたら』

162: 2014/02/14(金) 19:55:50.65 ID:fkpX4ZTu0
判田さん編の皮を被った北斗編でした。正直、祀り姫ネタがやりたかっただけ。
次回は久しぶりに、シアター&CGの二人組です。

余談ですが、北斗のバースデーパーティーの後に、マスターは黒ちゃんにだけちょっと手間かけた立派なチョコを「バレンタインのサービス」と称して渡したとか何とか。

163: 2014/02/14(金) 21:43:47.02 ID:XrisHjwS0
北斗誕生日おめでとう!

タイトルからじゃ誰か想像できないな…百合子はもう出てきてるし
このままの流れでまつり姫か?初期R的な

引用: 「アイドルの集う喫茶『アイドル』」