154: 2017/02/10(金) 21:58:58.59 ID:Ngv5DDoA0
前回:【モバマス】モバP「最先端」

小梅「スクエアって都市伝説……知ってる?」

小梅「『山小屋の1夜』とか、名前もいろいろあるんだけど」

小梅「4人が真っ暗な部屋の隅に立って、1人目が壁沿いに進んだ先にいる人の肩を叩く」

小梅「叩かれた人はまた壁沿いに進んで……そうやってグルグル部屋を回るの」

小梅「えっ? うん、そうだよ……4人目が進む先には誰も立ってないから、回るなんてありえないんだ……」

小梅「だから……いなかった筈の5人目が現れるんだよ……えへへ」


「しかく」
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(3) (電撃コミックスEX)
155: 2017/02/10(金) 22:02:06.05 ID:Ngv5DDoA0
いま、みんなで乃々ちゃんのお部屋に集まってお喋りしてるんだ。
幸子ちゃん、美玲ちゃん、輝子ちゃん、乃々ちゃん。そして私。
いつも賑やかで、楽しくて。こんな時間がずっと続けばいいな。
そう、ずっと……だけど。

「あの、何かおかしくないですか……」

乃々ちゃんのその一言が、始まりで、終わりだった。


そういえば、ここに来るまでの記憶があやふやだってことを、ふと思った。
今日はみんなで集まるって決めて……ここにいてお喋りしてる。
そもそも、そんな約束いつしたんだろう。

みんなが顔を見ると、同じ違和感に気付いたみたい。
私たちみんな……いつの間に集まったんだっけ?

156: 2017/02/10(金) 22:03:17.34 ID:Ngv5DDoA0
ひ、ひとまず外に出よう……あれ?

私は廊下に続くドアを開けようとしたけど、ノブが下がるだけでビクともしない。
押しても。引いても。叩いても。体当たりしてみても。
鍵がかかってるのかと思ったけど、ドアには鍵自体が付いていなかった。

ダメ……開かない……。

「ふぎゃー! 何故ですか!」

「フヒ、つまり閉じ込められた……」

「む、むーりぃー!」

「みんな落ち着け! まずは状況を整理しよう!」

美玲ちゃんが叫んで、部屋がしんと静まり返った。
よくみると、美玲ちゃんの手は服の裾をぎゅっと握りしめて小さく震えてる。
怖いのは、みんな一緒。ひとりじゃない。

157: 2017/02/10(金) 22:04:45.30 ID:Ngv5DDoA0
みんなで話していくうちにわかったことは、
今日はこの5人で集まる予定だったが、いつ決めたかなどは覚えていないこと。
ここに来るまでの記憶が曖昧なこと。
携帯がなくなっていること。
この3つが全員共通のことだった。

「な、なにか思い出せませんか……どうやってここまで来たとか、何でもいいんで……」

乃々ちゃんの言葉に、みんながまた黙り込む。
私も一所懸命に思い出そうとするけど……みんなに会うためにここに来た、それ以外のことが出てこない。
頭にモヤがかかったみたいで、まるで霧の中のよう。


「……スクエア」

「えっ?」

「スクエア、です。なぜかこの言葉が出てきました」

幸子ちゃんの言ったその単語に、ほかのみんなも反応する。

「確かに、何か引っかかるな……」

「もりくぼもです……そ、そのスクエアっていうのが関係してるんですか?」

「そもそもスクエアってなんだ? 四角のこと?」

た、たぶん……都市伝説のことだと、思うよ……。

158: 2017/02/10(金) 22:06:29.20 ID:Ngv5DDoA0
スクエア。
4人が真っ暗な部屋の隅に立ち、1人目が壁沿いに進み先にいる人の肩を叩く。
叩かれた人はまた壁沿いに進み……という具合に部屋をグルグル回る。

「待ってください、順番に回ったら4人目の先には誰もいないじゃないですか」

だから、いつの間にか5人目が増えてるんだよ……一種の降霊術、だね。

「ひぃぃ!! おかるとなんてむりくぼですなんけど……!」

「でも、いまの状況とスクエアに何の関係が?」


そういえば。
スクエアを行う条件は、『外部と連絡不可能な密室であること』だった気がするけど……。
その瞬間、誰かの着信メロディがドアの向こう側から流れた。

「これはボクの着メロです! このドアのすぐ先にあるんですよ!」

幸子ちゃん……でも、そのドアは開かなかったよ……。
そう声を掛けると、幸子ちゃんは一瞬はっとして、

「わ、わかってます……他のみなさんの携帯もまとめてドアの向こうなんでしょうか……」

そう言ってペタリと座り込んだ。

159: 2017/02/10(金) 22:07:32.80 ID:Ngv5DDoA0
「……なぁ、今日はウチら5人で集まる予定だったよな」

「美玲さん、何を言ってるんですか? さっき確認までしたじゃないですか」

「じゃあなんでマグカップが4つしか出てないんだ?」

カップだけじゃないみたい。
よくよく見ると、クッションも4つ。
それは、始めから4人の集まりだったみたいに。

閉じ込められた部屋。携帯は部屋の外。スクエア。
つまり、それって……。



このなかの誰かが、5人目……?

160: 2017/02/10(金) 22:14:34.31 ID:Ngv5DDoA0
スクエアで出てくる5人目は、幽霊とか悪魔だって聞いたことがある。
でも、ここにいるみんなはずっと知ってる事務所のみんな。
知ってるはずの……記憶が間違いじゃなければ。


「記憶に間違いって……ど、どういうことだ、小梅ちゃん?」

つまり、私たちの誰か4人でスクエアをして……5人目の『同じ事務所の友達』を呼び寄せたんだよ。
私たちだけの、私たちしか知らない、架空の友達として。

「なに言ってんだよ……ついこないだも、この5人でステージに立ったじゃないか!」

だから、そう思ってるだけ、なんだよ……本当は、4人しかいないのに。
みんな、同じ嘘の記憶を刷り込まれてるってことだと思う……。


「あの、理解が追い付かないんですけど……つまり、この中のいる5人目が閉じ込めてるんですか……?」

それは……わからない。
なんでスクエアを始めたのかも覚えてないし……でも、その5人目が関係してるのは、たぶん合ってるのかな?


「小梅、その5人目の見分け方は何かあるのか?」

スクエアで降霊されたものは、その空間から出られない……。
つまり、その部屋内でしか使役できない降霊術だったと思う。
でも、みんな部屋から出られないから……見分けがつかないね。


「小梅さん、その、幽霊とかならわかるんじゃないですか?」

ごめん……。幽霊じゃなくて、悪魔かもしれないし……悪魔は会ったことないから……。

161: 2017/02/10(金) 22:16:03.77 ID:Ngv5DDoA0
とにかく何でもやってみようと、お互いに質問したり、念仏を唱えてみたり……。
だけど、状況はなにも変わらない。


「なぁ小梅。スクエアって、どっち回りでやるんだ?」

え? うーんと、時計回りだったと思うよ。

「じゃあさ、試しに左回りでやってみよう。逆のことすれば消えるかもしれないだろ」


突拍子もない提案だったけど、他にできることもないし……。
みんなで、逆回りのスクエアをしてみることにしたんだ。

162: 2017/02/10(金) 22:18:00.94 ID:Ngv5DDoA0
部屋の電気を消すと、近くにいる人影が何とかわかるくらいだった。
そこからみんなが4隅に立って……私は、1人目の美玲ちゃんと一緒の隅にいる。


美玲ちゃんの形をした黒い塊はゆっくりと進んで、すぐに暗闇に溶けて見えなくなった。
私はそのまま同じ場所でじっと待つ。
暗闇の奥から足音だけがわずかに聞こえて、その音のする角度が少しずつ移動してるのがわかった。

そのままじっとしてたら、足音が近くなってきて……肩をポンと、叩かれた。
たしか4人目の位置は輝子ちゃんだと思うけど、やっぱり人の形をした黒い塊としかわからなかった。


私は壁に手をついて、ゆっくりと暗闇を進む。
暗い、暗い、どこまでも真っ暗な、その先へ。


先にいる筈の美玲ちゃんの元へ。

163: 2017/02/10(金) 22:19:57.23 ID:Ngv5DDoA0
もし、美玲ちゃんが5人目だったら……。
そう思うと、怖くて……いますようにって、お祈りしながら進んだ。
5人目をいなくさせようとしてるのに。
誰も消えてほしくないって、思っちゃったんだ。

例え嘘だとしても、いまの私たちには本当の記憶になってて、私たち5人は仲良しの友達だもん。


進んだ先には、黒い塊が震えていた。
美玲ちゃん……なんだよね?



その後も部屋をグルグル回るだけで、消えた様子はないみたい。
何周かしたところで、「もう止めましょう」と暗闇から声が聞こえた。

164: 2017/02/10(金) 22:21:23.46 ID:Ngv5DDoA0
電気をつけたら、みんなのつかれた顔が見れて、すごくほっとした。
誰も消えていないことが、いけないことかもしれないけど、嬉しかった。

幸子ちゃんと乃々ちゃんは涙目になってて、輝子ちゃんとまゆさんがそれをなだめてる。

美玲さんが頭をかきながら話しかけてきた。



「消えなかったな……ほんとにこの6人の中に幽霊だか悪魔がいるのか?」

165: 2017/02/10(金) 22:23:32.51 ID:Ngv5DDoA0
終わりです。誰が5人目かはわかるようになってる……はず。

166: 2017/02/10(金) 23:45:56.68 ID:kE3bTgvP0
やだ……怖い……
乙でした


引用: 世にも奇妙な346プロ