266: 2017/03/07(火) 15:39:11.68 ID:PbcgpHwu0
前回:【モバマス】モバP「正直者」

茄子「人生における運の量は決まってると言われています」

茄子「運には大きく分けて2つ、幸運と不運があります」

茄子「この2つの運はちゃんと釣り合いが取れるようになっているんです」

茄子「例えば」

茄子「宝くじが当選したと思ったら、その宝くじを無くしてしまったり」

茄子「道端で転んだおかげで、交通事故を回避したり」

茄子「皆さんも似たような経験があるのではないですか?」

茄子「……運は有限ですから」

茄子「使いすぎには気を付けて下さいね♪」


『運の絶対量』
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(3) (電撃コミックスEX)
267: 2017/03/07(火) 15:42:34.35 ID:PbcgpHwu0
私は生まれつき運がいい子供でした。

幸運体質と言うべきなんでしょうか。
トランプ、花札、双六………
運要素の強いゲームに関しては一位以外になったことがないぐらい私は運がいいんです。


ある日のことです。
朝、学校に行く準備をしている時に祖父にこんなことを言われました。

「あまり、使いすぎてはいけないよ」

なんのことを言ってるのかさっぱりわかりませんでした。
私は祖父の「使いすぎてはいけない」という言葉から、お小遣いのことについて言ったのだと推測して学校に向かいました。

268: 2017/03/07(火) 15:45:27.98 ID:PbcgpHwu0
その数日後でしょうか。
突然、誰も私と遊んでくれなくなってしまいました。
理由は簡単、私の運が良すぎたせいです。

………そうですよね。
いつも一位になる私は楽しくても、周りの子達は面白くないですもんね。

でも、当時の私はわからなかったんです。
どうして誰も遊びに入れてくれないのか、昨日まで仲間に入れてくれてたのに、とーーーーー

夜になり、時計の二つの針が上を向いた頃、祖父が私の部屋を訪ねてきた。

「茄子ちゃん」

祖父は静かに語り始めました。

「鷹富士家の人間には不思議な力があってね」

「幸運を前借りすることができるんだ」

「でもね、運にも限度ってものがあるから」

「使いすぎるともちろん無くなってしまう」

「運には幸運と同じだけの不運があるから、後には不運しか残らなくなってしまう」

「それだけは絶対に避けなくてはいけないんだ」

「少し難しかったかな?」

そう言って祖父は私の頭を撫でて、私の部屋を後にしました。

私はうつらうつらしながら聞いていたので、大半の話は覚えていませんでしたが、運を使いすぎてはいけないということだけはわかりました。

269: 2017/03/07(火) 15:48:27.79 ID:PbcgpHwu0
次の日から私は運を使わないように努めました。

運要素のあるトランプ、花札、双六、じゃんけんでさえも避けるようになりました。

唯一、運を使っているのは正月におみくじを引くことぐらいでしょうか。

これぐらいなら許してくれますよね?

270: 2017/03/07(火) 15:50:18.07 ID:PbcgpHwu0
それから10年。

私は今、アイドルをやっています。

アイドルは楽しいですね♪

何かを頑張ることがこんなにも楽しいことだったなんて、私知りませんでした。

初めての体験ばかりです。

歌って、踊って、ファンの方達に応援してもらって、お友達も出来て、そしてーーーーー

好きな人も出来ました。



その人は私をこの道に誘ってくれた方で、私を含めて150人以上のアイドルをプロデュースしているすごい人なんです。

それなのに気取ってなくて、何事にも一生懸命に取り組んで、たまにお茶目な所を見せてくれたりーーーー

自然と惹かれていったんです。

271: 2017/03/07(火) 15:51:52.54 ID:PbcgpHwu0
今日は珍しくプロデューサーが車で迎えに来てくれました。
ついでにと言って杏ちゃんやきらりちゃんも拾おうとしたらしいんですけど、撮影が押しているそうなので私だけ事務所まで送ってもらうことになりました。

車の中でプロデューサーと二人きりの時間。
何気無い話でも私にとっては特別な時間。
このまま事務所に着かなければいいのに。
そんなことを思ってしまうんです。



幸せな時間というのは過ぎるのが早いですね。
もう事務所の駐車場に着いてしまいました………

次に会えるのはいつになるのか、そんなことを考えているとーーーー

「あの、か、茄子さんっ!」

「は、はいっ!」

緊張した面持ちでプロデューサーが話しかけてきました。

「こんな所で言うようなことではないと思ったんですけど、今じゃないと二人きりで中々会えないと思ったので」

そう前置きをして、何かを決意したように真っ直ぐ私を見つめる。

「結婚を前提に、僕とお付き合いしてくれませんか」

272: 2017/03/07(火) 15:53:28.19 ID:PbcgpHwu0
夢なのではないかと思いました。
まさかプロデューサーと両想いだったなんて………!!

事務所のアイドル、ほぼ全員に慕われているプロデューサー。

私なんかより魅力的な子はたくさんいて、きっとこの恋は実らないのだろう、そう思っていました。

でも、プロデューサーは私を選んでくれた。


なんて幸運なんでしょうか。



これ以上の幸運なんてない。

これ以上の幸せなんてない。

怖いくらいに嬉しいんです。

まるで一生分の幸運を使い果たしたようなーーーーーー

ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーー
ーー

273: 2017/03/07(火) 15:56:10.59 ID:PbcgpHwu0
「あれ?」

さっきまで私はプロデューサーの車の中にいたはずなのに………

今は………事務所の、中?

「どうかしましたか?」

ちひろさんが不思議そうな顔で私を見る。

「あ、えっと、私なんでここに……?」

自分の声に違和感があった。

「覚えてないんですか?」

「は、はい……」

「まぁ、無理もないですね。今日のレッスンはマストレさんが担当でしたから」

どうしよう……レッスンした記憶もない。

「確か、レッスン帰りにここに寄ってプロデューサーさんを待ってたんですよ」

プロデューサーを待っていた……?
と言うことはプロデューサーから告白されたのは、夢………?

「……プロデューサーは今どこに?」

何故かわからないが私の心は不安でいっぱいでした。
何かが私の中から無くなってしまったような、そんな気持ちでいっぱいだったんです。
この不安な気持ちはプロデューサーに会えば無くなるのだろうか。

早くプロデューサーに会いたい……!!

「プロデューサーさんですか?」

「予定ではもう少しで帰ってくるはずですけど………」


ガチャッ


「あ、帰ってきましたね」


「ただいま戻りました~」


「プロデューサー!」

プロデューサー、私の好きな人。

早く会いたい。会って私を安心させて欲しい。

私はプロデューサーに駆け寄ろうとした


が、隣に立っている女性を見て動きが止まる。


「な、なんで………!?」

Pさんとその女性は不思議そうな顔で私を見る。

なんで………

274: 2017/03/07(火) 15:57:29.40 ID:PbcgpHwu0

なんで私が目の前にいるんですか!?


275: 2017/03/07(火) 16:00:19.21 ID:PbcgpHwu0
「どうしたほたる?」


………ほたる?

プロデューサーは私に向かってほたると言った?

なんで?どうして?

私は混乱した。目の前の出来事が本当に現実のものなのかわからなくなってしまった。


テーブルの上に小さい鏡が置いてあるのに気がついた。
それを手に取り、自分の顔を覗き込むと、いつも見ている自分の顔ではなく、事務所のアイドル仲間である白菊ほたるの顔がそこにはあった。


276: 2017/03/07(火) 16:02:00.79 ID:PbcgpHwu0
「茄子さん、ですよね?」

私は今、事務所の屋上にいる。
あの後、取り乱した私をほたるちゃんが連れ出したのだ。

屋上は柵が古くなっているらしくて、直すまでは立ち入り禁止になってはいますが、今の状況ならむしろ好都合、誰にも聞かれずに話すことができる。


目の前には私の身体になっているほたるちゃんがいる。

「ほたるちゃん、よね?」

「………はい」

どうやら、私とほたるちゃんは入れ替わってしまったみたいです。

「どうやったら元に戻るのかしら」

「………私はこのままでもいいです」

「え?」

信じられない言葉が聞こえた。

「このままでもいいって………」

「だって、プロデューサーさんの恋人になれたんですよ?なら、このままの方が私はいいです」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「プロデューサーと恋人になってるのは私の身体、鷹富士茄子なんですよ!?」

「そんなのほたるちゃんだってーーー」

「それでもっ!!」

「っ!?」

「それでも、私はプロデューサーさんと一緒になりたいんです」

「茄子さん、本当にありがとうございます」

「今まで不幸なことばかりでしたけど、私、やっと幸せになれるんです!」

そう言ってほたるちゃんは屋上から出て行った。

「待って!」

ガチャガチャッ!!

「なんで!?」

不幸なことに、屋上の出入口のドアが開きません。どうやら鍵が壊れているみたい。

この事務所は7階建て、屋上から助けを呼べば誰か来てくれるはず………!

そう思って屋上の柵に少し体重をかけて下を見たその時ーーーー

バキッ!!


「え?」

突然の浮遊感、とっさに逃げることも出来ず屋上から下に落ちていく。

277: 2017/03/07(火) 16:03:59.53 ID:PbcgpHwu0
ーーあぁ、あの時に使い切ってしまったんでしょう。

ーーーー無意識のうちに、一生分の幸運を前借りしてプロデューサーに選んでもらった。

ーーーーーーー幸運が無くなれば後に残るのは一生分の不運だけ。

ーーーーーーーーーーーでも、無意識だとしても使っちゃいますよね。

ーーーーーーーーーーーーーーーだって

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー好きなんですもん。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーグシャアッッ!!!!!

278: 2017/03/07(火) 16:05:16.98 ID:PbcgpHwu0
終わりです。ありがとうございました。

279: 2017/03/07(火) 18:27:04.23 ID:trRpFR1yo
乙 13年分の不幸の反転は凄いですね…

280: 2017/03/07(火) 19:09:50.52 ID:vlUdgHKPo
辛い

281: 2017/03/08(水) 18:45:48.15 ID:zJcxC+Oo0
こんな内容でも某映画風にアレンジしたら…
ほたる「もしかして…」
茄子「私たち、身体が…」
2人 「入れ替わってる〜!?」


引用: 世にも奇妙な346プロ