325:◆TDuorh6/aM 2017/10/04(水) 22:43:21.19 ID:MPbYTksVO



卯月「もう一人の私がやっておいてくれたらいいのに」

卯月「皆さんは、そういう事を考えた事はありませんか?」

卯月「夏休みの宿題、もう一人の私がやっておいてくれれば気兼ねなく遊べるのに」

卯月「テスト前の勉強、もう一人の私がやっておいてくれれば徹夜せず寝られるのに」

卯月「体力測定のマラソン、もう一人の私がやっておいてくれれば疲れずに済むのに」

卯月「なんでも言う事を聞いてくれるもう一人の私がいたら、とっても楽に毎日を過ごせると思うんです!」

卯月「でも、もし本当にそうなったんだとしたら」

卯月「……少し、不安になりませんか?」

『another our』
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(3) (電撃コミックスEX)
326: 2017/10/04(水) 22:44:09.73 ID:MPbYTksVO




 こんにちは、島村卯月です!

 最近は少しずつ暑さが薄れてきて、過ごしやすい日々が続いてますね。
 夏休みはもう終わっちゃいましたけど、もうすぐまた連休がきます。
 何しようかな。
 せっかくの三連休なんですから、楽しまないと勿体無いです!

 ……なんて、言ってる場合じゃないんです。

 目の前に積み上げられた問題集が、机と私の心に強い圧力を掛けます。
 明日から中間テストなんですよね。
 こんなことなら夏休みももっとちゃんと勉強しておけばよかったのに……
 なんて、後の祭りすぎますよね。

 もっと言うと、この宿題は一週間前に出されたんだから少しずつやっておけば良かったんですが。
 テスト前の宿題っていっぱいありますし……
 でもお仕事忙しかったし、夜はお友達と電話したいもん……

「終わらない……ママー!」

 呼んでも助けなんて来ません。
 当たり前ですよね、もう深夜2時になっちゃってるもん……
 眠いけど、早く終わらせなきゃ……
 でも、そろそろ寝ないと明日起きられない……

「うーん、もう一人の私がやっておいてくれればいいのに」

 疲れてるんでしょうか。
 でも、こういう状況になると多分みなさんも考えた事があると思うんです。
 私が寝てる間に、もう一人の私がやっておいてくれたらいいのになーって。

 ……うん!明日早く起きてやる事にします!

 目覚ましのアラームを五時半にセットして、私は布団に潜り込みます。
 目も身体も疲れていたからか、直ぐに私の意識は薄れていきました。


327: 2017/10/04(水) 22:44:47.65 ID:MPbYTksVO




 ーーピピピッ!ピピピッ!

 うーん……あと五分……はっ!

 急いでスマホをつけると、表示された時刻は七時ジャスト。
 五時半から五分ごとに鳴り続けてたアラームの十九回目にしてようやく起きることが出来た私は、飛び起きて机に駆け寄りました。
 まずいです!宿題終わってないし今日のテスト範囲まだ復習し切れてません!

 どうしましょう!
 今からやって間に合うかな!
 それともいますぐ学校に行って友達に少し手伝って貰って……
 とにかく、早く着替えなきゃです!

 それにしても、なんだかすっごく身体が重いです……
 寝るの、いつもより遅かったからでしょうか……

 ……あれ?

 机の上に広げられた問題集。
 その解答欄全てに、答えが書き込まれていました。
 ペラペラとページを捲ると、それは最後のページまで同じで。
 要するに、私の宿題は終えられていて……

 ……私、寝る前に解き終えましたっけ?
 それともママがやってくれたんでしょうか?
 不思議です、どうしてでしょう?
 うーん……

 と、問題集を捲っていて気付いたんですけど、なんとなく全部の問題に見覚えがあるような気がします。
 こう、一回解いたことがある問題、みたいな感じで。
 って事はつまり……
 ……どういう事なんでしょう?

 あ、悩んでる暇はありませんでしたね!
 急いで支度して朝ごはんを食べて、私は学校へ向かいました。



328: 2017/10/04(水) 22:45:31.02 ID:MPbYTksVO


 一限目は数学Bのテストです。
 開始のチャイムと共に問題用紙を捲れば、確率や数列の問題がズラリ。
 どうしよう、どの公式を使えばいいんだっけ……
 うーん……そもそも、公式がどんな式だったか覚えてないよ……

 ……あれ?

 公式を思い出せず、行き当たりばったりで解き進めていたんですが。
 何故か、解けました。
 なんででしょう?
 理解出来てなかった筈なのに、すらすらとはいかずもそこまでつっかからず答えまで辿り着けたんです。

 その後の問題も、何故かこうすれば解ける気がする、やなんとなくこんな感じかな……で解けて。
 最終的に、解答用紙のほとんどが埋まりました。

 授業で一度習っていたから、頭のどこかできちんと記憶されていたんでしょうか?
 それにしても、テスト問題に似た問題をつい最近解いた気もします。
 えっと……そうです、昨晩睨めっこしていた問題集ですね。
 でも、私は最後までは終わらせられなかったのに……


329: 2017/10/04(水) 22:46:15.20 ID:MPbYTksVO



 私の疑問なんて知らないと言うかのように、テスト終了のチャイムは鳴りました。
 そして疑問だらけなのに解けてしまったテストの解答用紙が回収されてゆきます。
 そしてその後に、宿題だった問題集も回収されました。

「ねぇ卯月ちゃん、どーだった?」

「え、私ですか?!えっと……多分、埋める事は出来たかな」

「結構難しかったけど、宿題と殆ど同じ感じの問題だったよね」

「俺ノー勉だけど8割いったわ」

 テスト後の休憩時間中、クラスのお友達との言い訳合戦タイムです。
 でも、私の頭の中はそれどころではありませんでした。

 終わらせてない筈な問題集が終わってて。
 暗記した覚えのない公式を覚えてて。
 解いた覚えのない問題を、解いたことがある気がして。
 これって……

 ……睡眠学習?
 なんだか意味が違う気がします。
 えっと、つまり。
 これって……

 寝てる間に、もう一人の私がやっておいてくれた……?

 そうとしか思えません。
 でも、本当にそんな事なんてあるんでしょうか?
 確かに、朝起きたとき全然寝れてなかった感じはしましたけど……
 それは、本当に全然寝れてなかったから……?

 考えは全くまとまりませんでしたけど。
 その後のテストも、何故か大体解くことができました。


330: 2017/10/04(水) 22:47:00.09 ID:MPbYTksVO



 テスト期間なので、レッスンはお休みです。
 家に帰ってお風呂に入った後、私は昨日と今日あったことを思い返しました。

 もし本当にもう一人の私がやっておいてくれたんだとしたら、それってとっても凄い事じゃありませんか?!
 だって、勉強しなくてもテストが解ける様になるんです!
 それに、宿題だって気にせず遊ぶこともできますし。
 あと、自分は徹夜しなくてもよくなって……

 さて、そんな事を考える私の前には。
 英語の教科書とノートと単語帳が広がっています。
 明日の最難関科目は英語ですから。
 少しでも沢山、英単語を覚えなきゃです。

 それに、英語のノートも提出しなきゃいけないんです。
 授業中に教科書の英文を和訳したところを、ノートに記入する。
 それ自体は別段大変な事じゃないんです。
 きちんと毎回授業に出てれば、ですけど。

 ……ノート、空白多いなぁ。

 お仕事で出席できなかった回の部分は、和訳をノートに書いていません。
 だから今から、教科書の英文を訳さなきゃいけなくって。
 運が悪い事に、英語の授業がある日は高頻度でお仕事がはいっていて。
 今から全部訳していたら、徹夜でもしない限り他の科目に手が回りません。

 うーん、取り敢えず少しずつ進めましょう。

 

331: 2017/10/04(水) 22:47:31.48 ID:MPbYTksVO



「うぅ、終わらないよ……」

 時計の短い針が真上を差す頃。
 和訳作業は、大体六割くらいしか終わっていませんでした。
 まだ地理と国語もあるのに……
 あと英単語覚えて、古文単語覚えて……

 でも、そろそろ眠くなってきました。
 このまま続けても、きちんと頭に入る気がしません。
 今回こそ、明日早く起きてやりましょうか……

 ……あ、そうでした。
 もう一人の私がやっておいてくれれば、私は寝ても問題ないんじゃないでしょうか?

 そう考えた私は、さっそく布団に潜り込みました。
 もしダメだった時の場合に備えて、アラームは昨日と同じく五時半にセットします。

 お願いします!頑張って下さい、もう一人の私!

 自分自身に願いを託すと、私の意識は直ぐに薄れてゆきました。
 

332: 2017/10/04(水) 22:48:04.93 ID:MPbYTksVO



 ピピピッ、ピピピッ。

 アラームの音で眼が覚めると、時刻は六時半でした。
 急いで英語のノートを開くと……やりました!
 全部和訳して記入されています!
 古文単語と英単語帳をペラペラ捲ると、何故だか大体覚えています!

 やっぱり、もう一人の私がやっておいてくれたんですね!
 その代わり、とっても眼と身体が重いですけど……
 五時半にアラームをセットしてあるのに私が今起きたって事は、ついさっきまで私は勉強していたのかもしれません。
 それでも、辛い過程を飛ばして結果だけで済むのはとてもありがたいです。

 意気揚々と学校へ向かい、テストに臨みます。
 解答欄は大方埋まりました。


333: 2017/10/04(水) 22:48:40.51 ID:MPbYTksVO



 ……眠いです……

 ある日、事務所でレッスンが午前中も午後も入っている日の事です。
 昨晩かなり遅い時間までクラスの友達と通話しててとっても身体が重い日に、ニュージェネレーション三人でお喋りしながらレッスンルームへ向かっている時。
 凛ちゃんと未央ちゃんの声が時折遠く聞こえるくらい、私はかなり疲れていました。
 正直に言えば一時間くらい寝たいです。

 言い訳をさせて貰えるなら、昨日は学校でマラソンもあったんです。
 本当は、帰って直ぐ寝ようとしたんですけど……
 友達と少しおしゃべりしたくなっちゃって……
 遅くまで通話していた昨晩に後悔しつつ、私は歩きました。
 
「大丈夫?卯月」

「え?あ、はい!頑張ります!!」

 二人に迷惑かけちゃいけませんよね。
 でも、今のコンディションでレッスンして最後まで体力保つかな……コンディション管理はアイドルの必須要項なのに……
 反省して、今日はいつも以上に頑張らなきないけません。
 私たち三人のライブも近付いてきてますし。

 ……うぅ、どうせなら。
 このレッスンも、もう一人の自分が受けてくれればいいのに。


334: 2017/10/04(水) 22:49:39.67 ID:MPbYTksVO



「お疲れ様、卯月」

「お疲れーしまむー!」

 ……え?

「あ、あれ?レッスンは……きゃっ!」

 気が付けば、私はレッスンルームの鏡の前に立っていて。
 突然襲いかかってきた疲労に、思わずその場で座り込んでしまいました。

「おっとっと、大丈夫?」

「さっきまで、あんなに頑張ってたからね。少しストレッチしよっか」

「え、えっと……レッスンは……」

「何言ってるのさしまむー、今丁度終わったところでしょ?」

 え?
 つ、つまり……

 また、もう一人の私がやっておいてくれたんでしょうか?

「それにしても凄かったね。卯月、いつもより動きがキビキビしてたって言うか……」

「うんうん!なんだか頑張り過ぎって感じもしたけどね。今になって疲労がきたのかな?」

「あ……え、そ、そうですね!もうすぐライブですから。島村卯月、頑張りました!」

 よくやく頭の整理が追いついてきました。
 やった記憶はありませんが、私たちの曲のダンスを完璧に覚えています。
 今ならバッチリ踊れそうです。
 その分、今になって一気に疲れが襲ってきましたけど。

「部屋に戻って、少し休んでから帰る?」

「そうですね……結構疲れちゃいました」


335: 2017/10/04(水) 22:50:24.30 ID:MPbYTksVO



「三人ともお疲れ様。特に卯月、トレーナーさんが褒めてたぞ」

「お疲れ様、プロデューサー!」

「お疲れ様です、プロデューサーさん!」

 私たちの部屋に戻ると、プロデューサーさんが迎えてくれました。
 ライブが近付いてて私たちよりもハードな量の仕事をこなしている筈なのに、笑顔でこっちに手を振ってくれて。
 それだけで、私の心はあったかくなります。

「ね!ほんと凄かったんだよ、今日のしまむー!」

「あ、何か飲むか?今ちひろさんいないけど、俺でよければお茶淹れるぞ」

「あ、大丈夫です!私が……あれ?」

 自分が思っている以上に、私の身体は疲れているみたいです。
 座ったソファから立ち上がれませんでした。

「座ってなって、疲れてるだろ。時間あるなら少し寝てったらどうだ?」

「そうですね。すみません、少しだけ休ませて貰います」

 プロデューサーさんが淹れてくれたお茶を飲んで。
 凛ちゃんと未央ちゃんとお話ししてるうちに、気づけば私は夢の世界へ落ちていました。


336: 2017/10/04(水) 22:52:32.44 ID:MPbYTksVO



 それから、私は事あるごとにもう一人の自分に押し付けてきました。

 模試前日の勉強や数学の予習。
 長距離走やシャトルラン。
 疲れた日のレッスンや苦手な俳優さんとの収録。
 そしてその全てを、もう一人の私は完璧な形でこなしてくれました。

 私は完全に依存しきっていました。
 都合の良い、全てを押し付けられる私自身に。

 なんて、楽な人生なんでしょう。
 なんて、苦のない人生なんでしょう。
 嫌なこと、辛いことを全て押し付けて。
 私はその結果だけを受け取ればいい、なんて。

 でも、やっぱり。
 私は不安でした。

 本当にこのまま、いつまでももう一人の私が存在してくれるんでしょうか?
 本当にこのまま、ズルし続ける人生でいいんでしょうか?
 ほかのみんなが頑張っているのに、私だけそれをしないでいいなんて。
 みんなが苦労しているからこその喜びを共有してる中、私だけそれを実感出来ないなんて。


337: 2017/10/04(水) 22:53:11.56 ID:MPbYTksVO




 そして、ライブを二日後に控えた私は。
 今までで一番の悩みを抱えていました。

 それは、プロデューサーさんの事です。
 今まで一緒に進んできてくれたプロデューサーさんに、全てを打ち明けるかどうか。
 信じてもらえないかもしれないけど、怒られるかもしれないけど。
 これからは迷うことはあっても、きちんと自分自身の力で乗り越えます、と。

 たとえ何を言われても、どんな結果になっても。
 私は受け入れようと思っています。
 でも、その為には。
 私はきちんと、自分の言葉で打ち明けなきゃいけなくて……

 もう一人の自分が、私の代わりに打ち明けてくれれば……

 ……その考えを、やめなきゃいけないんですよね。
 でも、もうずっと頼りっきりで。
 今更自分を信じる事ができなくて。
 依存してる事は分かってても、抜け出すのは怖くて。

「どうしよう……私……」

 悩んで、考えて、決意は固まらなくて。
 眠りに落ちたのは、かなり遅い時間でした。


338: 2017/10/04(水) 22:53:50.69 ID:MPbYTksVO



 朝、太陽の陽で私は目を覚ましました。
 アラームが鳴るまで、まだ三十分もあるくらいの時間です。
 遅くまで寝れなくて、目が重い筈なのに。
 いつもだったら、二度寝しようかな、なんて考える筈なのに。

 ……よし、頑張ります!

 心はどこか晴れ晴れとしていて、射し込む光は心地よいです。
 決意は固く、今にでも飛び出したいくらい。

 私は決めたんです!

 きちんと全てを伝えて、今後はちゃんと自分の力で乗り越える、って。
 今まででお世話になってきたもう一人の自分とはお別れして、自分を信じよう、って。
 ズルなんてせず、頑張って、今まで以上に頑張って。
 私は、島村卯月は、堂々とステージの上に立ちたい、って。

「行ってきます!」

 かなり早いですが、私はすぐ支度を終えて家を飛び出しました。
 いつも通っている道も、時間と気持ちが違えば全く別の風景です。
 その全てが心地よくて、なんだか楽しくなって。

 私は笑顔で、道を歩きました。



339: 2017/10/04(水) 22:54:28.19 ID:MPbYTksVO



「おはよございます!島村卯月です!」

「お、おはよう卯月。早いじゃないか」

 事務所へ着くと、プロデューサーさんは既にパソコンとにらめっこしていました。
 こんなに早い時間から、プロデューサーさんは頑張ってたんですね。
 改めて、感謝の気持ちでいっぱいです。

「プロデューサーさん!少しだけ、お話ししてもいいですか?」

「ん、いいぞ」

 迷いはありません。
 心は変わりません。

 私は一切合切包み隠さず、今までの出来事を語りました。



340: 2017/10/04(水) 22:55:13.76 ID:MPbYTksVO



「……なるほどな。俄かには信じがたいけど……でも、卯月はそれを俺に話してくれたんだな」

「はい!私、決めたんです。自力で乗り越えなきゃ、意味がありませんから!」

 自分と、プロデューサーさんと約束しました。
 きちんと自分で努力して、これからももっと輝きたいから。

 全てを伝えて、本当によかったです。
 悩んでクヨクヨしながら続けてても、きっと良い結果にはならなかったでしょうし。
 今は、とても心が軽いですから。
 
「ありがとう、卯月。俺は卯月のそう言うところが大好きだぞ」

「……えっ、あ、あの、それって……」

 ぷ、プロデューサーさんの事だから深い意味はないのかもしれませんが。
 もしかしたら、もしかしたりして……

「つまり、あの……!」

 プロデューサーさんは、私のことを……!

 と。

 そう、尋ねようとした時でした。
 


341: 2017/10/04(水) 22:55:59.65 ID:MPbYTksVO


「……あ、あれ?私、なんで事務所に……?」

 私の口が、勝手に動きました。

「どうしたんだ?卯月。何かあったか?」

「……いえ!大丈夫です!」

 ……え?ど、どう言うことですか?!

 急いで頭をまわそうにも、別の思考に邪魔されました。
 唐突に、全く違う言葉と思いが頭に流れ込んできたんです。

『結局、頼っちゃったんですね。でも、これからは本当に自分の力で頑張りますから!』と。

 ……嘘、ですよね?
 私、自分で決意したつもりだったのに……
 自分で覚悟を決めて、自分の言葉で伝えたつもりだったのに……
 私は、押し付けられた側の……!

『それに、本当に今回は自分で決めた事ですから!もしかしたら、もう一人の私が力を貸してくれたんでしょうか?なら、もう大丈夫です!』

 ねぇ!
 私の頑張りは、全部作られたものだったんですか?!
 私の決意は、全部押し付けられたものだったんですか?!
 私は……!

『そろそろ、凛ちゃんと未央ちゃんも来ますよね。明日はライブですから!いつも以上に気をつけて通しのレッスンをしなきゃいけません!島村卯月、頑張ります!』

 届いてよ……!
 ねぇ、私!
 私が少しでも『もう一人の自分がやってくれたら』なんて考えたら。
 それだけで……!

 少しずつ、自分の意識が薄れてきました。
 体も、自分の意思では動きません。
 プロデューサーさんとお話しをする私は。
 とても、幸せそうで。



342: 2017/10/04(水) 22:56:45.79 ID:MPbYTksVO


 ……い、嫌です!
 私、消えたくない……!

 もしかしたら、今まで押し付けてきた私もこうだったんでしょうか?
 願った私が、自分の意思だと思い込んで頑張って。
 新しい私が作られて、結果だけを受け取って。
 こんなのって……!

 そんなの嫌です!
 消えたくない!
 これからも沢山の私が消えていくなんて!
 そんなの……!

 やだ……!やだよ!
 誰か助けてよ!私を止めてよ!
 消えたくないよ……!怖いよ!

 私はーー!


343: 2017/10/04(水) 22:57:24.00 ID:MPbYTksVO





「さ、頑張ってこい!」

「はい!島村卯月、頑張ります!」

 私たちのライブが始まります!
 さっきまで、緊張して足がすくんじゃって。
 もう一人の自分が、なんて考えちゃってましたけど。
 私は自分の力で乗り越えるって決めたんですから!

「最高のステージにしますから!プロデューサーさん、見ていて下さい!」



344: 2017/10/04(水) 22:58:46.75 ID:MPbYTksVO

以上です
お付き合い、ありがとうございました

そろそろHTML化依頼を出してこようと思います
投稿して下さった方々、読んで下さった方々
本当に、ありがとうございました

引用: 【モバマスSS】世にも奇妙なシンデレラ