843: 2008/01/14(月) 15:22:13.73 ID:px5ziGJ/0
ここから、チャプ26ということでお願いしますんね

シリーズ:岸辺露伴は動かない-雛見沢-

最初から
岸辺露伴は動かない-雛見沢-chapter1

前回:岸辺露伴は動かない-雛見沢-chapter12



844: 2008/01/14(月) 15:22:42.65 ID:px5ziGJ/0
圭一達が玄関で話していると、茜が奥から出てくる。
葛西と数人の男もついてきていた。

茜「鍵は持ってきたよ。私達もついていかせてもらう。
  頭首様になにかされたらたまったもんじゃないからねぇ。」
魅音「それじゃあ、みんな行こう。」

魅音の呼びかけに全員で頷き、地下祭具殿へと向かった。
岸辺露伴は動かない 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)

845: 2008/01/14(月) 15:24:02.57 ID:px5ziGJ/0
地下祭具殿は園崎本家敷地内の奥まった部分にあった。
そこに至るまでにはけもの道のような細い道を抜けなくてはならない。
本当に山の中という言葉がぴったりな場所。周りには斜面があり、入り口はそのくぼみの中にある。
たとえこの敷地に入り山に迷い込んでも、運がよくなければ発見できないような場所にその入り口はあった。

入り口はまるで防空壕のようだ。
急な斜面を掘りすすめたトンネル。
その奥に鉄製の巨大な扉があった。

茜が葛西に鍵を渡し、葛西がその厳重な扉を開ける。
中は真っ暗だったが、圭一が葛西を押しのけ、入り口の中と入った。

圭一「露伴さんッ!どこだー、露伴さーんッ!」
魅音「圭ちゃん、多分露伴さんはもっと奥だよ・・・。」

846: 2008/01/14(月) 15:25:06.50 ID:px5ziGJ/0
魅音が電気のスイッチをつける。
ここから先は木造のトンネルになっており、本当に地下室と呼ぶにふさわしい物だった。
魅音が先頭を歩き、圭一達があとに続く。その後ろに茜達も続いた。

トンネルは入り組んでいたが、魅音は迷いもなく歩いていく。
途中には生活できそうな部屋などもあり、園崎家の隠れ家のようなものに見えた。

しばらく歩くと、今までになかったような大きな扉が現れた。
魅音はその前で立ち止まると、全員に言う。

魅音「みんな、詩音から聞いてると思うけど、この奥が拷問部屋になってる・・・。
   多分、この奥に露伴さんはいると思う。覚悟は・・・いい?」
圭一「へへっ、何の覚悟がいるってんだよ。
   露伴さんに会いに来ただけなんだ、何の覚悟もいらねぇぜ。」
沙都子「そ、そうですわ。露伴さんがいるならさっさと開けてくださいまし。」
レナ「レナも、大丈夫だよ。」
詩音「私は、2度目ですから大丈夫です。」

魅音は全員の返事を聞き終えると、その大きな扉を開けた。

848: 2008/01/14(月) 15:26:19.17 ID:px5ziGJ/0
扉を開けると、中は明かりが灯っていた。
壁も床もタイル張りのその部屋の中は、拷問道具が所狭しと保管されていた。
よく整備されたそれらは、刃を持つものはその光で、棘や針の類はその鋭さで、
部屋に訪れた新しい獲物をニヤニヤと見つめているかのようだ。

そのタイル張りを抜けた奥に、一段高くなった座敷がある。
そこは畳張りで、座布団が置いてあった。まるで見物席か何かのようだ。

そこに、お魎と露伴の姿があった。
お魎は布団を敷き、その中で体を起こしている。
露伴はその側に座布団を敷き、正座していた。

圭一「露伴さんッ!」
沙都子「無事ですのッ!?露伴さんッ!!」
露伴「どうしたんだい?こんなところに。」

850: 2008/01/14(月) 15:27:32.85 ID:px5ziGJ/0
露伴は見た限り無事なようだった。
外傷もなさそうだし、健康そうだ。
圭一達は露伴のほうへと駆け寄る。

圭一「露伴さん、心配したんだぜッ。」
沙都子「露伴さん、助けに来たんですわよ。」
レナ「大丈夫かな?かな?」
詩音「まぁ、簡単に氏ぬようなお人じゃあないと思ってましたけど、
   無事そうでなによりです。」

お魎「しゃあらしいわッ!!こん餓鬼どもなぁん勝手に入ってきよん!!
   誰ぞ、こん餓鬼ども追い出しぃッ!!」

お魎の叫びを聞き、まだ露伴を救うのが終わっていないことを圭一達は思い出す。
露伴の無事な姿を見てつい忘れてしまっていた。

茜がお魎の横へ行きなにやらヒソヒソと話す。
事情を説明しているのだろう。

茜「とりあえず、おあがり。」

851: 2008/01/14(月) 15:28:35.57 ID:px5ziGJ/0
茜に促され、圭一達も座敷へと上がる。
露伴の側に全員が座った。

茜「ほら、黙ってないで挨拶をしなよ。
  園崎家頭首の御前だよ?」

茜に促されると、圭一が口を開いた。

圭一「はじめまして。前原圭一と言います。
   雛見沢には最近越してきました。露伴さんの友人です。」

圭一がそう言い頭を軽く下げた。

お魎「お前が挨拶せんでもお前のことはよーぅ知っとるんね。
   引越しの挨拶もせんで、どの口が雛見沢に越してきたんなんて言うんッ!
   ホンマあっほらしッ!!」

圭一への罵倒の言葉を吐き終えると、お魎はその"鷹の目"をレナに向けた。

852: 2008/01/14(月) 15:29:35.64 ID:px5ziGJ/0
お魎「レナちゃんはえぇ子やと思とったけんど、なぁんね?
   なぁんいつんかこん礼儀知らずと一緒におるようになったんね?」
レナ「おばあちゃん、急に押しかけてすみません。
   レナも露伴さんの友達です。だから会いに来たんです。」

レナが挨拶を終えたので、お魎の目は沙都子へと向かう。
しかし、お魎から沙都子に話しかけることはない。
お魎の視線にたまらず、沙都子が口を開けた。

沙都子「ほ、・・・北条沙都子でございますわ。
    私も露伴さんの友人ですわ。」

お魎の肩がプルプルと震える。
そして目を見開き、沙都子へと罵声を浴びせた。

お魎「だぁって聞いとん、北条の糞餓鬼がどん面ァ下げてわしぃんとこ来よるんねッ!!
   言葉使いもなっとらんわドアホぅッ!!!
   北条が園崎本家の敷居を跨いで生きて帰ぇれると思うとんかぁぁああッ!!」

865: 2008/01/14(月) 15:47:26.22 ID:px5ziGJ/0
お魎の言葉に沙都子はもう口を開けることはできなかった。
その様子に満足したのか、お魎は詩音へと視線を移す。

お魎「おみゃは、レナちゃんのおかげで園崎の末席に加えてもらったんと、
   もう爪ぇ剥ぎたくなったんかぁ?あぁん?詩音ぅ?」
詩音「わ、私も・・・露伴さんの友人です。」

詩音はそれだけ言い返し、お魎を睨み返した。
お魎は詩音の決意の固さを読み取り、最後に残った魅音に視線を移す。

お魎「魅音・・・。なぁんね?
   なぁん園崎以外の姓がこん祭具殿に出入りしとるんね?」

866: 2008/01/14(月) 15:48:19.82 ID:px5ziGJ/0
魅音「婆っちゃ・・・。
   みんなは友人に会いに来ただけです。
   だから、通しました。」
お魎「なぁん勝手な真似をしさらしとん!!
   来た理由なん聞いとらんわぁ!!なぁん祭具殿まで入れたか聞いとんね。
   すったらん許されんことなんはわぁっとるん。」
魅音「私の判断で通しました。
   ケジメをとれと仰るなら、私が取ります。」
お魎「よぅ言うたわ・・・。
   すったらん、魅音だけ残り。糞餓鬼どもはさっさと帰ぇせ。」
魅音「婆っちゃ・・・。」
お魎「友人には会えたんな。なら用は済んだっちゅうもんやね。」

お魎が茜に目配せをし、茜が葛西に目配せをする。
座敷に上がらずに控えていた葛西たちが圭一達を連れ出そうと、動き出した。

905: 2008/01/14(月) 19:33:40.88 ID:px5ziGJ/0
圭一「待ってくれよ!!」
茜「なんだい?圭一くんたちの用は済んだだろう?
  露伴さんには会えたんだ。まだ用があるってのかい?」
圭一「あぁ、そうだ。俺たちにはまだ用がある。
   俺たちは、露伴さんを助けに来たんだッ!!」
茜「ちょいとお待ちよ。
  露伴さんがここにいるのは園崎家と露伴さんの問題なんだよ。
  アンタ達が口を出すことじゃないんじゃあないかい?」
圭一「俺たちは露伴さんの友達だッ!仲間だッ!!
   露伴さんが地下に閉じ込められてるってんなら助けだす!!」
茜「露伴さんがアンタたちに助けを求めたのかい?」
圭一「助けは・・・求められてない。・・・でも、でもわかるッ!
   露伴さんは沙都子に何も言わずにいなくなったりしないッ。
   俺とも約束があるッ。一緒に祭りで出し物をするんだッ!
   綿流しが終わるまで地下にいるなんて、そんなこと絶対ないッ!!」
レナ「レナも・・・圭一くんの言うとおりだと思います。
   露伴さんは私たちとお祭りにいくんです。」
沙都子「そうですわ、私と一緒に露店を回りますのよ。」

茜は飽きれたようなジェスチャーをすると、露伴を向いて言った。

茜「露伴さん、なんとか言ってやっておくれよ。」

露伴「ふふふ。そうだなぁ。
   そろそろ沙都子ちゃんの作るご飯が食べたいかな。」

907: 2008/01/14(月) 19:34:28.41 ID:px5ziGJ/0
茜は露伴は既にお魎に屈服していると思っていた。
だからこの返答は予測できなかった。

お魎が茜を呼ぶ。
茜はお魎の口元に耳を傾けるた。
なにやらまたヒソヒソ話が始まる。

茜が何度か聞き返すと、話は終わったようだった。

茜「頭首は大変機嫌がいい。
  あんたたちの心意気に免じて、露伴さんは解放しよう。」

この言葉に圭一は再びガッツポーズをした。
ほかの皆も互いに顔を見合って喜んだ。
それを遮るように茜が言う。

茜「ただし、あんたたちが祭具殿に押しかけたケジメをつけられたら、だそうだよ。
  それができないなら、この話はなしさね。」
お魎「カカカッキキキ・・・クッククク・・・。」

お魎が楽しそうに笑う。その異常な笑い方に皆は恐怖を覚えた。
誰もが凍りつく。そのケジメの意味に震える。

908: 2008/01/14(月) 19:36:01.85 ID:px5ziGJ/0
その静寂を破ったのは露伴だった。

露伴「ケジメをつければ、この子達は許してもらえるんだな?」
茜「おやおや、露伴さん、せっかく助かったのに怪我したいってぇのかい?」
露伴「おいおい、園崎家っていうのは質問に質問で返すように教えられてるのか?
   質問文に質問文で答えると、テストで0点なんだぜ?知ってたか?」
茜「口の減らないお人だねぇ。ケジメをつければ許さないこともないって言ってるんだよ。」
露伴「うやむやにされちゃあ困るからな。
   ケジメをつければ、園崎家がこの子たちに不利益を与えることはない。
   そう約束しろよ。」
茜「これは取引じゃあないんだよ?ケジメをつければ考えたげるって言ってんのさ。」
露伴「おっとすまない。これは取引じゃないって?
   そうなのかい?」

そう言うと露伴は茜を睨み付ける。
先日の晩のときとは比にならない恐ろしい目だ。
スタンド使いが本気になった目。そう言えばもうわかってもらえると思う。

露伴「僕がその気になれば、ここから出ることもたやすいんだがね。
   そっちの顔を立てて取引してやろうって言ってるんだよ。」

露伴が本気を出せば茜も口を開けることはできなかった。
ヤクザの本職である茜や葛西にはわかった。露伴を敵にしてはいけないことが。

910: 2008/01/14(月) 19:36:58.54 ID:px5ziGJ/0
お魎「ふ、はっはっはぁ!
   茜を黙らすんとは、大した器じゃアアアアアアハハハハハハハハハハーッ!!
   そん器がどーぅケジメつけてくれるんね?あぁん?」

お魎の言葉を受け、露伴が子供たちの人数を数える。

露伴「1,2,3,4,5・・・。」

そして露伴は左手をすっと自分の顔の前にかざした。
左手の甲はお魎に向けられていた。

913: 2008/01/14(月) 19:37:52.19 ID:px5ziGJ/0
露伴「5人ってことは爪5枚でいいんだろ?」

露伴のその言葉にお魎は何も返さない。
それを同意と理解し、茜は葛西に目配せをした。
葛西が部屋の隅にある拷問道具を用意し始める。

それに気づいた圭一達が露伴を止めに入る。
彼らは口々に露伴を説得しようとするが、露伴が聞くはずはない。
ついには茜とお魎一喝され、圭一達は口を閉じるしかなかった。

露伴は何食わぬ顔で座敷から降りる。
そして拷問道具の準備を終えた葛西から道具の説明を受けた。
圭一達は座敷で露伴のケジメを見守るよう、茜に言われた。

露伴「なるほどね、ここが爪の間に入るんだな。
   これがこっちに繋がってテコの原理になってる。
   このハンドルを叩けば、爪が剥げるってわけか。よくできてるなぁ。
   こっちのところはなんだい?」
葛西「そこは足を固定するバンドです。
   手の爪とは限りませんので。」

914: 2008/01/14(月) 19:38:45.30 ID:px5ziGJ/0
露伴はまるで珍しいおもちゃでも見るかのように葛西から説明を受けていた。
その説明も一通り終わる。

露伴「よし、じゃあ始めるか。」
葛西「はい、お手伝いさせていただきます。」

葛西がそう言い、露伴の手を固定する。
皆の注目が露伴に集まる。

露伴「あー、詩音ちゃん。
   沙都子ちゃんには見せないようにしてもらっていいかい?」

露伴がそう言うと、詩音が沙都子の目を手で覆った。
それを確認した露伴は何のためらいもなく、一打目を振りかぶった。



ドンッ!!

916: 2008/01/14(月) 19:39:56.86 ID:px5ziGJ/0
圭一達はつい、目をつぶってそむけてしまった。
その目を開ける。

圭一達の場所からはパっと見はよくわからない。
ただ、露伴の小指に何か違和感があった。それを目の焦点をあわせ見てみる。
爪が剥がれ、まるで露伴の指にしてあったフタがぱっくりと開いているようだった。
誰も言葉を出すことはできなかった。

葛西が道具をいじり、露伴の次の指にセットする。
露伴は今度は一気に振り下ろさず、ゆっくりとハンドルを押していく。
まるでゆっくり爪が剥がれていくのを観察しているかのようだった。
2枚目を剥ぎ終わる。露伴はまったく冷静なままだった。

露伴「なるほど、いい経験になったよ。
   漫画に生かせそうだ。ふふふ。」
茜「く、口の減らないお人だねぇ・・・。」
露伴「ふふふ、もう満足したからあとはさっさと終わらさせてもらうよ。」

あとはただの流れ作業だった。葛西が道具をいじり、露伴がハンドルを叩く。
それだけの単調な作業に見えた。

ドンッ    ドンッ     ドンッ

919: 2008/01/14(月) 19:41:08.72 ID:px5ziGJ/0
露伴が左手の爪をすべて剥がし終える。

露伴「これで満足か?」
茜「・・・。」

茜はお魎に近づき、お魎の指示を受ける。
茜はそれにうなずくだけだった。

茜「婆さまは頭痛がしてきたからもう付き合えないそうだよ。
  このあとのことは私が任された。葛西は露伴さんを病院へ連れてきな。
  子供たちは、上でお茶でも飲んで帰りな。」

葛西が露伴の手の拘束をはずし、そとへ連れて行こうとする。
沙都子はここでやっと目隠しをはずされた。

露伴「おい、さっきの取引は有効なんだろうな?」
茜「ケジメはつけたからね、さっきのあんたの言うとおりにするよ。」
露伴「ふ、ふふふ・・・それはありがたいことで。」
茜「何がおもしろいってんだい?」

露伴の嫌味な笑いに茜が食いついた。

920: 2008/01/14(月) 19:41:48.29 ID:px5ziGJ/0
露伴「"園崎家がこの子たちに不利益を与えることはない"
   つまり、"園崎家が北条沙都子に不利益を与えることもない"。
   それで笑っただけだよ。」
茜「・・・こりゃぁ一杯食わされたねぇ。」
露伴「ふふふ、病院に行かせてもらうよ。
   僕だって痛みがないわけじゃあないからね。」

露伴はそう言うと拷問室を出て行く。
露伴がいなくなった途端、緊張の糸が切れたのか、沙都子がわんわんと泣き始めた。
圭一達も安堵の声を漏らす。お魎はなにやらニヤニヤと笑っていた。

923: 2008/01/14(月) 19:42:50.29 ID:px5ziGJ/0
c26終わりでお願いしたい

4: 2008/01/14(月) 21:27:05.56 ID:px5ziGJ/0
その後、圭一達は本家の部屋に呼び止められた。
そこで茜に今日あったこととは他言しないようにと釘をさされる。
これには誰も反対しなかったため、話はすぐに終わる。
茜はお茶でも飲んでいけと言い部屋から出て行った。

圭一達は露伴が戻ってくるまで待つと言ったが、魅音に止められる。
圭一達が露伴と会っても、謝りつづけて気まづくなるだけだからだ。
結局、明日から何もなかったように接したほうがいいという話になり一同は解散となった。
圭一とレナは家へと帰り、沙都子だけが露伴の帰りを待つことになる。

沙都子は詩音にかまってもらいながら露伴を待っていた。
やがて露伴が病院から戻ると、葛西に送られて沙都子と露伴も帰るのだった。

7: 2008/01/14(月) 21:28:16.04 ID:px5ziGJ/0
家に戻った露伴は久しぶりに沙都子の作る夕食を食べる。
露伴は左手が使えないのが大変そうだったが、それを世話する沙都子は楽しそうだった。
夕食のあと、痛み止めのせいか、露伴は眠いと言ってすぐに布団に入った。
沙都子も今日一日の疲れのため、早めに床に就くことにした。

二人が寝静まったあと、梨花は羽入に話しかける。

梨花「久しぶりね、羽入。
   あんたと1日以上も顔をあわせないなんて、ここ百年で何回だったかしら。
   それで、明日も祟りは起こるのかしら?」
羽入「残念ながら、露伴も今のところは何もできていないのです。」
梨花「急に左手を怪我して帰ってきたけど?」
羽入「あぅあぅ。とっても痛そうだったのです。」
梨花「何があったのか、教えなさいよ。沙都子は知ってるみたいだし。
   私だけ蚊帳の外っていうのは気に食わないわ。」
羽入「わかったのです。木曜の夜はですね・・・」

9: 2008/01/14(月) 21:29:23.55 ID:px5ziGJ/0
羽入は梨花に木曜の出来事から順に説明していく。

ここでは金曜の朝からの話をしよう。

金曜の朝、露伴は園崎家の手伝いに起こされた。
朝食が部屋に運び込まれていて、ご馳走になった。
露伴のいる部屋の周りには何人かの人の気配がしており、
露伴が逃げ出さないよう控えているようだった。

そのうち、茜が部屋を訪れ、お魎がいないことを告げる。
用事で朝からいないため、夕方くらいまでここで待てとのことだった。
露伴は素直に従った。羽入には露伴の真意がわからず、抗議をする。

羽入「露伴、夕方までここにいては入江との約束の時間に間に合わないのです。」
露伴「そんなことはわかってるよ。」
羽入「それじゃあどうするのですか?」
露伴「あきらめるだけだよ。」

11: 2008/01/14(月) 21:30:58.88 ID:px5ziGJ/0
羽入「あぅあぅ。やる気があるのですか?」
露伴「あのなぁー。やる気の問題じゃないんだよ。
   もし無理にここを抜け出したらどうなるか考えてみろよ。」
羽入「抜け出したら・・・ですか?」
露伴「あぁ、約束があるから出してくれと言っても出してくれないだろう。
   僕はオヤシロさまの祟りを知っていると思われてるんだからな。」
羽入「あぅあぅ、よくわからないのです。
   露伴ならここから抜け出せるだけの力はあるのです。」
露伴「たしかに、能力を使わなくても抜け出せるだろう。
   だが、穏便には済まない。本家から出ても自転車すらない僕はどうする。」
羽入「山を逃げて診療所まで行けばいいのですよ。」
露伴「僕が診療所に行くまでに情報が回ってるだろう。
   この村なら園崎家が捕まえろと連絡すれば誰もが協力するからな。」
羽入「入江は、かばってくれると思うのです・・・。」
露伴「もしそうでも、鷹野には接触できないだろうな。
   約束の時間までにお魎を説得できない限り、僕は鷹野には会えないんだよ。」
羽入「あぅあぅ・・・。」
露伴「仮に鷹野に会えるとしても、園崎家を相手に問題を起こせば今後の行動は制限される。
   鷹野に接触しても真相を暴けなかった場合、かなり困ってことになるぞ。」

それ以上反論できなかったので、しかたなく羽入は露伴とお魎を待つ。
そのまま入江との約束の時間は過ぎた。

48: 2008/01/14(月) 22:28:26.74 ID:px5ziGJ/0
やがてお魎が帰ってきたということで、お魎の部屋に通された。
部屋には茜とお魎だけがおり、露伴が入ってくると茜も部屋を出た。

お魎「おまえん言うこと聞いて二人っきりにしたったんよ。
   今日は話してもらうんね。」

部屋に残された露伴にお魎が言い放った。
露伴はお魎のそばに近づき、茜が昨日やっていたようにお魎に話しかける。

露伴「二人っきりとは言うけど、こうしてヒソヒソ声で話さないと、
   そとの怖い人に聞こえちまうじゃあないか。」
お魎「あぁん?なぁんね、誰に向かって口聞いとんと思っとるんッ!!」

お魎は怒りをあらわにする。
しかし、露伴は不敵な笑みをしたまま言い放った。

露伴「僕は"オヤシロさまの使い"だからね。無礼なのはそっちじゃないかい?」

51: 2008/01/14(月) 22:29:47.12 ID:px5ziGJ/0
お魎「なぁん言うとん、だぁれがオヤシロさまの使いなんね?」
露伴「宗平と初めて****は*****だろう。」

露伴のその言葉にお魎は驚きを隠せなかった。

お魎「なぁんとそれを知っとるんね。」

お魎が鋭い目つきで露伴を睨みつける。
露伴はニヤリと笑い、答えた。

露伴「僕が"オヤシロ様の使い"だからだよ。
   他にも、****が******で*****だったことだって知ってるぞ。」
お魎「・・・。」

お魎もこれには黙るしかない。
なぜこの男がそんなに過去のことを、そしてお魎しか知りえないことを知っているのか。
まったく見当もつかなかった。

露伴「もっと詳しい話もしたいんだが、僕はアンタ以外に聞かれたくないんだ。
   ここより人に話を聞かれない場所はないのかい?そこに案内してくれれば何でも話すよ。」
お魎「おう、誰ぞッ!誰ぞおらんね?」

お魎が外の男を呼びつける。
そして茜を呼び出し、地下祭具殿へと移動することとなった。

69: 2008/01/14(月) 22:54:49.49 ID:px5ziGJ/0
露伴が茜に連れられて祭具殿に入ったときには、すでにお魎は中に入っていた。
お魎のための布団も運び込まれ、座敷で待ち構えている。

露伴が座敷に上がると、茜に出て行くようにお魎が命じた。
それを受け、茜は部屋から出て行った。部屋に残ったのは露伴とお魎だけになる。

露伴「あんたも大変だね、いろいろと筋を通さないといけないのがさ。
   二人っきりなんだし気楽にやろうぜ。」
お魎「はっはっはっはぁ!オヤシロ様の使いはなぁんもお見通し言うことかいね。」
露伴「そりゃあ、昨日あれだけしといて、今日はころっと二人であってくれるなんて、
   親族の目を気にしてるとしか思えない。僕の時代だとそういうのも流行ってるんだがね。」
お魎「時代・・・?年寄りにはよぉわからんて説明しとくれぇな。」
露伴「あぁ、すまない。僕はね・・・」

露伴は自分が未来から来たことを明かす。
オヤシロ様に呼ばれて未来から来た存在だと。
また、見えない羽入の存在もお魎に説明する。
先ほどからのお魎の過去の話もすべて羽入が知っていたことだった。

お魎も最初は疑っていたが、途中で信じざるおえなくなる。
さらには露伴が中継して羽入と話をさせた。
お魎は露伴をオヤシロ様の使いと認め、オヤシロ様と会話できることをとても喜んだ。

86: 2008/01/14(月) 23:13:22.96 ID:px5ziGJ/0
羽入「お魎は僕に座布団を敷いてくれて、お茶も入れてくれてとっても優しかったのです。
   こんど梨花に甘いものを食べさせるようにも頼んでおきましたのです。」

羽入のその態度に梨花は飽きれるしかない。
だが、そうなると話はタダでは済まない。
最も気になることを聞いてみる。

梨花「それじゃあ、アンタたち、お魎に全部話したの?」
羽入「それは露伴がうまくやったのです。
   診療所のことと雛見沢症候群のこととかは話してないのですよ。

   うーん・・・あとは、露伴がなにか封筒に入れた手紙を渡していたのです。
   綿流しが終わってから開けるようにって。僕が未来から来たことを証明する手紙だ、とか言っていたのです。」
梨花「ふーん、多分5年目の犠牲者ね。それで?」
羽入「お魎は僕たちのことを信用してくれたのです。
   他の誰にも話さないという約束もしてくれましたです。」
梨花「オヤシロ様の使いと信じさせたなら、他の人には話さないでしょうね。
   それで終わり?なんで今日まで帰ってこなかったのよ。」
羽入「僕にはよくわからないのですが、お魎の立場があるらしいのです。
   露伴のことを親族に話さない以上、ここまで大きくなった騒ぎをどうのこうのって。
   それで、綿流しのお祭りが終わるまでは露伴は地下祭具殿にいることになったのです。
   僕にはいまだに何でなのかよくわからないのですよ。あぅあぅ・・・・。」
梨花「・・・あんた本当にばかね。それで何で今日帰ってきたのよ?」
羽入「あぅあぅ・・・。それはですね・・・」

95: 2008/01/14(月) 23:38:34.28 ID:px5ziGJ/0
露伴は地下祭具殿で夜を過ごした。
お魎は夜は本家に戻ったが、次の日の朝から再び露伴の下へと来ていた。
お魎と露伴、そして羽入を交えた3人で会話をする。

お魎は今は年老いたとはいえ、園崎家をここまで発展させた頭首だ。
その頭首のこれまでの活躍を聞くことは、露伴にとっても興味深いものだった。
もちろん、漫画のネタとして興味深い、ということなのだが。

そのお魎の昔話に、ところどころで羽入が突っ込みを入れる。
羽入は千年以上もの間、梨花以外とは会話をしたことがない。
その羽入にとって、この3人でお喋りをするということはとても楽しいことだった。

その3人の時間も終わりを迎える。
祭具殿の入り口のほうから叫び声が聞こえてきた。

「露伴さんッ!どこだー、露伴さーんッ!」

その声を聞き、3人の中で露伴だけが事態を理解した。

96: 2008/01/14(月) 23:39:58.04 ID:px5ziGJ/0
露伴「来るかもしれないとは思ってたんですがね、お迎えが来たみたいです。」
お魎「どーいうこっちゃね?なぁん起きとるんかさっぱりわからんね。」
露伴「おそらく、魅音ちゃんとその友達が僕を助けに来たんでしょう。
   いまのは圭一くんの声だ。」
お魎「圭一ぃ?あぁん、前原んとこん坊主かいな。
   あの前原っちゅぅ家はあかんね。雛見沢に引っ越して来たんにうちに挨拶のひとつもせん。」
露伴「ははは、今度言っておきますよ。」
お魎「そいじゃ露伴さん、お別れだのぉ。
   子供たちに食ってかかられたいぅんなら、まぁなんとかなるじゃろ。」
露伴「そうですね。子供たちが入ってきたら、うまく立ち回りましょう。」
お魎「オヤシロ様も、お話させてもろて、ほんにありがたやぁ。
   わしにお迎えが来よったら、ぜひ枕元に立っとってくだされぇ。」
露伴「確かに、お迎えのときなら顔を拝めるかもしれない。ははは。」
お魎「ふぇっふぇふぇ。」

既に圭一達が拷問部屋の扉を開ける声が聞こえている。
露伴がしっかりと正座しなおすと同時に、大きな扉が開かれた。

103: 2008/01/14(月) 23:52:42.94 ID:px5ziGJ/0
羽入はその後の説明も続ける。
だが、梨花の興味はもう失せていたが一応聞き続けた。


羽入「それで露伴がケジメをつけるって言って爪を剥がしたのです。」
梨花「あの怪我は爪だったの。」
羽入「そうなのです。園崎家が圭一達に不利益をしないっていう約束をしてたのです。
   それで沙都子がどうとか言ってたのですが。」
梨花「なるほどね。沙都子を村八分から救うためにわざわざ爪を剥がすなんて、手の込んだことをするわ。」
羽入「実は露伴はズルしてたのです。
   すたんどで腕の神経をどうのこうのって言っていたのです。」
梨花「まぁ、そんなのどうでもいいわ。
   とりあえず、明日はいつも通り綿流しってことね。」
羽入「はい・・・いつも通りなのです・・・。」


いつも通り富竹と鷹野が氏ぬ綿流しが来る。
梨花も羽入も、露伴を呼んだことも何の意味もなかったと思った。
こうしての綿流しまでの最後の夜は終わった。

105: 2008/01/14(月) 23:53:46.56 ID:px5ziGJ/0
これでチャプ27を終わりとしたいス



150: 2008/01/15(火) 00:33:41.46 ID:JbuH9nQq0
■TIPS

----深夜・園崎本家----

綿流しの前日には決まって宴会が行われる。
今年もいつもと同じ顔ぶれ、村の役員と村長の公由、
それに園崎家の何人かが集まっていた。
既に宴会は始まり、魅音も詩音も混ざって騒いでいる。

公由「あぁ、そういえばお魎さん。」
お魎「あぁん?なんね?」
公由「漫画家さんが来るって言ってたよね。
   あの人、今日の打ち合わせにも来てないんだけど大丈夫なのかい?」
お魎「あぁん、露伴さんのこっか。
   今日うちに来たんよ。左手を怪我した言うたってなぁ。
   どないしよかっちゅう話をしとったんよ。」
公由「そうだったのかい。じゃあその出し物は中止かねぇ?」
お魎「沙都子ちゃんが露伴さんの左手代わりに紙もってくれるっちゅう話じゃ。
   すったらん、右手で絵は描けるんね。」
公由「沙都子ちゃんって、あの北条の?
   い・・・いいのかい?お魎さん。」
お魎「子供に北条も園崎もあらんね。
   村の子が祭り手伝どぅてくれる言ぅんやったらえぇ話やんね。」
公由「そ、そうだね。それじゃあイベント部の人にもそう伝えておくよ。」

公由はお魎と話し終えると、魅音や茜にも何があったのかを聞いてみる。
しかし皆はぐらかすばかりで何があったかは教えてくれなかった。

結局、何があったのかはわからなかった。しかし雛見沢の情報の伝わるスピードは早い。
翌日の午前中までには村中に、お魎が沙都子を許したという噂だけが流れるのだった。

151: 2008/01/15(火) 00:35:02.75 ID:JbuH9nQq0
今日はこれで終わりたいと思います


to be continued...
岸辺露伴は動かない-雛見沢-chapter14



引用: 岸辺露伴は動かない-雛見沢-