1: 2008/01/20(日) 16:16:53.05 ID:SkilSIER0
【警告】
ひぐらしをプレイする予定のある者は、
ここから先を読んではいけない。

シリーズ:岸辺露伴は動かない-雛見沢-

最初から
岸辺露伴は動かない-雛見沢-chapter1

前回:岸辺露伴は動かない-雛見沢-chapter13




2: 2008/01/20(日) 16:19:28.72 ID:SkilSIER0
  1983年(昭和58年)
       6月19日(日)

露伴が雛見沢に来てからちょうど1週間が過ぎた。
運命の日がやってくる。綿流しの祭りの日。
つまり、5年目のオヤシロ様の祟り、富竹と鷹野の氏。

だが、その特別な日も1日の始まりは至って普通だった。
いや、世の中こういうものなのかもしれない。
例え自分が氏ぬ日の始まりだって、不吉を感じられる人間がどれだけいるのだろうか。
誰もが昨日と同じ今日があると思っている。今日と同じ明日があると思っている。
そして唐突に氏ぬ。

だから露伴はこの日の始まりにも何も感じなかった。
2日ぶりに沙都子に起こされたのがちょっと嬉しかったくらいだ。

さぁ、始めよう、5年目のオヤシロ様の祟りを。
岸辺露伴は動かない 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)

4: 2008/01/20(日) 16:20:49.82 ID:SkilSIER0
露伴達は朝食を終えると、すぐに入江診療所へと向かう。
沙都子の雛見沢症候群の定期健診のためだ。
沙都子本人が栄養剤の研究のためだと思っているため、露伴もそう口を合わせる。
露伴が医学の発展に貢献していると褒めると、沙都子は嬉しそうだった。

露伴は、これが最後の鷹野三四との接触の機会だと考えていた。
鷹野と富竹が祭りへと出かけるのは2007年の大石から聞いている。
祭りの会場では天国への扉(ヘブンズ・ドアー)を使うことはできない。
そして祭りの終わりはオヤシロ様の祟り、つまり鷹野の氏を意味する。
露伴に残された最後のチャンスが、今日この瞬間なのだ。

だが、露伴には逆の予感もあった。
おそらく鷹野三四との接触は不可能であるという予感。
そしてその予感は的中する。

6: 2008/01/20(日) 16:22:59.84 ID:SkilSIER0
入江「それじゃあ沙都子ちゃんはいつも通り検査をお願いします。」

入江がそう言い沙都子を診察室から送り出す。
露伴と梨花は診察室へと残された。

露伴「入江先生、先日は申し訳ない。鷹野さんは今日はいらっしゃいますか?」
入江「えぇ、鷹野さんは既に沙都子ちゃんの検査の準備をしてくださってます。
   私からも謝っておきましたが、直接挨拶したほうがいいかと思います。
   なにかあったんですか?」
露伴「そうですね、あとで紹介していただけるようお願いします。
   実は見ての通り怪我をしてしまいましてね。それでちょっと来れなかったんですよ。」
入江「さっきから気になっていたんですが、どうしたんです?
   今日の出し物は大丈夫なんですか?」
露伴「いやぁ、理由はお恥ずかしいので伏せさせてもらいたいかな。
   出し物は、沙都子ちゃんが僕の左手になってくれるそうですよ。」
入江「そうですか。お怪我ならうちに来てくださればよかったのに。」
露伴「興宮に行っている間でしてね。あちらの病院にお世話になりました。」

8: 2008/01/20(日) 16:24:04.04 ID:SkilSIER0
入江は露伴との社交辞令的な会話を終えると、露伴と梨花を所長室へ通した。
そして自分も検査の手伝いがあると部屋を去っていく。
残された露伴と梨花は検査が終わるまでの時間を所長室で過ごすのだった。

露伴と梨花は無言のまま検査を終えるまでの時間を過ごす。
梨花は特になにもせず、何か考え事でもしているようだ。
羽入は度々、沙都子のいる部屋とこちらを行き来してはくだらないことを報告している。
露伴は部屋にあった医学書に手をつけた。

気づけば時間は12時近くになっていた。
入江と沙都子が検査を終えて所長室へと戻って来る。
鷹野も沙都子を見送りに来たのか一緒だった。

9: 2008/01/20(日) 16:25:13.86 ID:SkilSIER0
露伴「お疲れ様、沙都子ちゃん。
   えっと、そちらの方は・・・。」
鷹野「はじめお会いするわね。鷹野三四よ。
   話は沙都子ちゃんからたくさん聞いてるわよ、露伴さん。」
露伴「あなたが鷹野さんですか。はじめまして。
   先日は申し訳ない。ちょっと怪我をしてしまいまして・・・。」
鷹野「それはお気の毒ね。お大事にどうぞ。」

鷹野は先日の件を根に持っているのか、
敵意のある目つきでくすくすと笑った。

露伴「えっと、今日はご都合は悪いですか?」
鷹野「あらあら、勝手に約束をすっぽかしておいて、自分勝手な人ね。」
露伴「申し訳ないと思ってますよ。ただ、祭りが終わったら取材を終えて帰ろうとも考えていまして。
   できれば今日お話を伺いたいな、と。」
鷹野「今日はだめですわ。これから沙都子ちゃんの検査結果の整理があるんです。
   あなたに話をしていたら、オヤシロ様の祟りにあっちゃうわ。くすくす。」

10: 2008/01/20(日) 16:26:09.47 ID:SkilSIER0
露伴「そ、それは・・・どういう・・・?」
鷹野「あらぁ、取材なさってるのにそんなことも知らないのかしら。
   オヤシロ様の祟りはね、オヤシロ様を崇めない不信心者に起こるのよぉ?
   綿流しのお祭りにちゃんと行かないと、今年の祟りの犠牲者になっちゃうわ。くすくす。」
露伴「なるほど、鷹野さんはお仕事がお忙しいということですね。」
鷹野「そういうこと。物分りがいいと話が早いわねぇ。ふふふ。」
露伴「それでは、また機会があればぜひお願いします。」
鷹野「そうね、"また"会えればお話しますわ。くすくす。」

鷹野は終始露伴を馬鹿にしたような態度をとっていた。
露伴は確信した。この女は知っている。間違いない。
この女は自分が今夜オヤシロ様の祟りにあうことを知っているのだ。
そして、自分が氏なないということも。

11: 2008/01/20(日) 16:27:18.46 ID:SkilSIER0
沙都子の検査が終わったので、帰宅することになる。
露伴は入江に去り際に一通の封筒を預ける。
絶対に次に会うときまで開けないように念を押していた。

家につくころには神社は祭りの準備で賑やかだった。それを横目に家へと戻る。
このあとは軽めの食事を取り、再び神社へと向かう予定だ。

露伴は料理をする沙都子を眺めていた。

露伴「沙都子ちゃん、髪型変えたかい・・・?」

沙都子の微細な変化に気づいた露伴がそれを口に出した。

沙都子「き、気づくのが遅いですわよ!!いつ切ったと思ってますの。
    まったく露伴さんは鈍感なんですから。」
露伴「ははは、ごめんよ。」

沙都子は嬉しそうな顔で怒っていた。
羽入がそれをおもしろがり、頬を突くような仕草をする。
羽入の指が沙都子の頬に触れることはないのだが、それでも羽入は楽しそうだった。

12: 2008/01/20(日) 16:28:35.88 ID:SkilSIER0
昼食を終えると、神社へと向かう。
梨花は奉納演舞のための準備へと向かった。
露伴と沙都子は出し物のために実行委員会のテントへと向かう。

村人はタイムスケジュールの説明や打ち合わせがしたかったようだが、
司会をやるはずの圭一がまだ来ていないようなので待つことになる。
何人かの村人と世間話をする。始めはそっぽを向いていた沙都子だが、
村の大人たちから話しかけられ少しづつ沙都子も会話に加わるようになっていた。

圭一「こんちわーッス。露伴さんいますかー?」

圭一が間抜けな挨拶をしながらテントへと入ってきた。

13: 2008/01/20(日) 16:29:26.99 ID:SkilSIER0
露伴「だいぶ重役出勤だな、圭一君。僕らはだいぶ前から来てるんだが。」
圭一「あ、露伴さん、こんちわッス。いや、すんません。
   もしかして打ち合わせとか終わっちゃいました?」
露伴「君が来るのを待ってたんだよ。まったく、そんなので司会が務まるのかい?」

圭一は露伴以外にも村の人たちに軽く謝っていた。
そしてイベント部の責任者からタイムスケジュールの説明を受ける。
露伴たちの出し物は奉納演舞の少し前にあるそうだ。
これから祭りを十分楽しんだ後に出し物の会場へと向かえば間に合いそうだった。

圭一「よっしゃ、それじゃあ行きましょうよ露伴さん。
   魅音とレナと詩音も来てますから。」
沙都子「そうですわね。出し物までに沢山遊びますわよー。」

説明が終わると二人がテントを飛び出していったので露伴もそれに続いた。

14: 2008/01/20(日) 16:30:34.49 ID:SkilSIER0
露伴たちが魅音たちに合流したとき、すでに梨花も準備を終えて合流していた。
これで全員が揃ったことになる。

魅音「よっしゃぁー、始めるよっ。
   えっと、1,2,3,4,5,6、・・・綿流祭七凶爆闘ッ!!」
一同「おぉぉぉーーーーッ!!」

魅音の掛け声とともに、皆で大騒ぎしながら露店を練り歩く。
食べ物の早食い、露店に嫌がらせの味評価、園崎家の池を賑わせる為の金魚すくい、他にも沢山の露店を巡る。
沙都子が何かあるたびに怪我人の露伴の世話をしてくれた。
露伴は馬鹿騒ぎするのは嫌いだったが、この子達となら心から楽しむことができた。

子供たちと露店を巡っていると、富竹と出会う。
子供たちが富竹も仲間にいれようと提案したので、露伴も同意した。
富竹に不審な様子がないか観察してみるが、それは特にない。
とくに変わったこともなく過ごすうちに露伴の出し物の時間が近づいてきた。

16: 2008/01/20(日) 16:31:19.64 ID:SkilSIER0
沙都子「露伴さん、まだ時間は大丈夫ですの?」
露伴「ん、そろそろ行ったほうがいいかもしれないな。」
圭一「じゃあみんなで会場に行こうぜ。」
富竹「会場ってなんのことだい?」
レナ「露伴さんが絵を描いてくれるんだよ。だよ。」
魅音「漫画家が村に来てるって言ったら、そういう出し物をお願いしようってなったんだよ。」
詩音「私は見たことないんですけど、富竹のおじ様の写真と違って評価が高いみたいですね。」
富竹「そ、そりゃあ厳しいなぁ。それじゃあ僕も見に行こうかな。」
梨花「来年は富竹の写真展を開いてあげますですよ。」
魅音「あはは、そりゃー無い無い。わっはっはっは。」
富竹「みんな、僕に冷たくないかい・・・?」

こうして皆で会場へと向かう。
会場は実行委員会のテントの横にある、催し物の為のスペースだった。
不用品のオークション等も行っているようでなかなか広い場所だった。

17: 2008/01/20(日) 16:32:30.25 ID:SkilSIER0
会場に着くと魅音とレナと詩音が圭一を連れて裏方へと消えていく。
なにやら司会の準備があるそうだ。富竹は観客席の方へと向かっていった。。

露伴の出番のギリギリまで圭一の準備は続いた。
そして、露伴や沙都子の元へと戻ってくる。
その格好は、猫耳ブルマにセーラー服。
化粧も完璧だし、マニキュアも塗られ、足の毛もきっちり剃られていた。

露伴「圭一くん・・・まさかそれでやるつもりかい?」
圭一「いやぁ、露伴さんがいないときの部活の罰ゲームで・・・。」
沙都子「おーっほっほっほ。似合ってますわよ、圭一さん。
    村の方々にその姿を見てもらえるなんていい機会ではありませんこと?」
圭一「う、うるせーッ!」

そうしてふざけあってる間に露伴の出番が来た。
圭一が司会としてまずは出て行くと、観客の悲鳴が聞こえてきた。
露伴は頭を押さえ、呆れる。すると露伴を紹介するナレーションが聞こえたので表へと出る。

18: 2008/01/20(日) 16:33:33.51 ID:SkilSIER0
ふむ、こんな田舎の村にしては人が集まったもんだ。
露伴はそう思った。漫画家という職業が珍しいのか、年配の人もかなりの人数がいた。
もちろん、子供連れがもっとも多いのは言うまでも無い。

圭一が露伴の紹介をいろいろしたあと、露伴が客の希望のものを書くと説明をする。
うーん、こんなんじゃあおもしろくないよなぁ。

露伴「ちょっと待てよ、圭一君。
   どうせなんだからもうちょっと面白いこともしようじゃないか。」

露伴はそう言うと、真っ白な色紙を沙都子に持たせ、観客に見せるように言う。
沙都子が観客に見えるように色紙を裏表に裏返すが、色紙は両面とも真っ白だ。

露伴「それじゃあ沙都子ちゃん、ちょっと僕から離れてくれるかい?
   そうだな、2メートルちょっと離れてくれ。」

沙都子が言われたとおりにする。
観客は何が起こるのかまったくわからない。
圭一も打ち合わせなどしなかったものだから、何がなんだかわからなかった。

19: 2008/01/20(日) 16:34:32.73 ID:SkilSIER0
圭一「ろ、露伴さん、一体何をするんだ?」
露伴「圭一くん、ちょっと手伝ってくれ。」

露伴は左手が使えないため、圭一にインクとペンの用意をさせる。
もちろん、露伴のカバンの中に入れてあった私物のペンだ。

露伴「それじゃあ、沙都子ちゃん、動かないでくれよ?」

露伴はそう言うと、インクをつけたペンを何回か沙都子のほうへと振った。
その瞬間圭一だけが露伴が何をしたのか理解する。
角度の関係で圭一にしか色紙がどうなったのか見えなかったからだ。

露伴「沙都子ちゃん、色紙をみなさんに見えるようにしてくれ。」

沙都子が従い色紙を観客のほうへと向ける。
すると、いっせいに観客から歓声や拍手が聞こえてきた。
沙都子も気になって色紙の表を覗き込んでみると、そこには見事な絵が書かれていた。
書かれていたイラストは沙都子の似顔絵、誰がみても色紙を持っている沙都子の似顔絵だとわかる絵だった。

20: 2008/01/20(日) 16:35:26.85 ID:SkilSIER0
このパフォーマンスが受けたのか、村人たちが早く絵を描いてくれと騒ぎ出した。
圭一がタイミングを逃さず、描いてほしい人はどんどん並ぶようにと言うと、村人たちは列をつくる。
レナや魅音も列の整理を手伝っているようだった。

露伴の絵を描くスピードはすさまじい。沙都子が色紙を押さえるとすぐに書き込んでいく。
1枚書き上げるのに10秒程度だろうか。だが、絵は繊細で書き込まれている。
とても10秒で描かれたとはおもえない、いや何時間も費やしたかのような繊細さだ。

露伴の描くペースが速すぎるため、列はどんどん減っていくかに思えた。
しかし、途中から露伴の絵を噂に聞いた人々が集まり出し物の終了時間まで列が途絶えることは無かった。

途中で入江も現れ、「沙都子のメイド姿」を依頼してきたので、「圭一のメイド姿」を描いてやった。
部活メンバーも途中で列に混ざり、それぞれ似顔絵などを描いてもらっていた。
ちなみに富竹は自分の似顔絵を依頼したら、眼鏡とカメラだけを描かれた。

22: 2008/01/20(日) 16:36:29.76 ID:SkilSIER0
大盛況のうちに露伴の出し物は終わる。
裏方に戻ると、圭一も沙都子も満足げだった。

沙都子「おーっほっほっほ。やっぱり露伴さんは素晴らしいですわ。
    今日の催し物の中で一番盛り上がったんではありませんこと?」
圭一「おまえが威張ることじゃねーだろーが。沙都子ぉ。
   それより、露伴さん、俺にもなんか描いてくれよー。」
露伴「うーん、別にいいよ、紙を持ってくれよ。」
圭一「やったぜ、それじゃあ何を頼もうかなぁ。」
露伴「そうだな、オヤシロ様なんてどうだい?」
圭一「お、なんかお祭りの記念になっていいっスねぇ。」

圭一が賛成したため、露伴は羽入を描いてやる。

圭一「うぉぉおおお、あ・・・ありのまま今起こったことを話すぜ。
   俺はオヤシロ様の絵を頼んだと思ったら、萌え系神様の色紙を渡された。
   な、何を言ってるのか、わからねーと思うg(ry」
沙都子「圭一さんはどうかしたんですの?」
露伴「僕の絵がよっぽどうれしかったんじゃないのか?」

23: 2008/01/20(日) 16:37:57.18 ID:SkilSIER0
そうして戯れていると魅音たちが駆けて来る。

魅音「ちょっと圭ちゃん達ー。なーにくつろいでんのー?」
レナ「はやく行かないと場所がなくなっちゃうかな。かな。」
沙都子「そ、そうでしたわ。梨花の演舞があるんでしたわ。さぁ、露伴さん行きますわよ。」

露伴は子供達につれられ、神社の社へと向かう。
なんとか詩音が確保していてくれた最前列へと加わった。

露伴たちが到着するとちょうどよく梨花の演舞が始まる。
皆が静かに見守る中、梨花は演舞を演じ終える。
梨花が祭壇を降りると、盛大な拍手が送られるのだった。

24: 2008/01/20(日) 16:38:54.16 ID:SkilSIER0
そのまま人ごみは沢へと移動していく。
露伴も子供たちに連れられ、沢へ向かう。
みんなで配られている綿を受け取る。

沙都子「露伴さんは綿流ししたことありませんわよね?
    私が説明しますわ、まずはこうして右手に綿を持つんですわよ。」

露伴は言われたとおりに右手に綿を持つ。

沙都子「そうしたら、こう左手を切りまして、額、胸、おへそ、両膝を左手で叩くんですわ。
    これを3回繰り返してくださいませ。」

沙都子「それができましたら、『オヤシロさまありがとう。』と唱えます。」

露伴はキョロキョロとあたりを見渡す。羽入がいないことを確認した。

露伴「・・・オヤシロ様ありがとう。」
沙都子「そしたら、この悪いものが吸い取られた綿を流すんですわ。」

沙都子の説明が終わったときには皆の準備は終わっていた。
全員で沢に近づき綿をそっと流した。月夜の沢に流れる白い塊は少し幻想的だった。

25: 2008/01/20(日) 16:40:04.82 ID:SkilSIER0
沙都子「これで終わりですわ。さぁ、梨花を探しに行きますわよ。」
レナ「そうだね、梨花ちゃんと合流しようか。」
詩音「露伴さん、このあとはテントで一杯どうですか?」
露伴「あぁ、出し物のお礼がもらえてないからね。今日は飲ませてもらおうかな。」
レナ「圭一くん、置いてくよー?」
圭一「あ、あぁ、ごめんごめん。」

こうして綿流しの祭りは終わる。
露伴は実行委員会のテントへ行き、5年目の祟りの発生に備えることにする。
子供たちもついてきたため、テントは賑やかになった。

テントで過ごすまま、時は過ぎ去っていく。
ついに祭りの終わりの時間がやってきた。実行委員達は片付けに行く。
露伴は眠そうにしている沙都子と梨花を家へと送ることにした。

家に送り、二人に布団を敷かせる。
そして再び祭りの会場へと向かおうとする。

26: 2008/01/20(日) 16:41:43.25 ID:SkilSIER0
沙都子「あら、露伴さんはまだ寝ませんの?」
露伴「あぁ、ちょっとお酒のお誘いがね。だからまた園崎家に泊まってくるかもしれない。」
沙都子「今度は、ちゃんと帰ってきてくださるんですわよね?」
露伴「あぁ、次の日の朝には帰ってくるよ。」

祭りの会場に戻ると、片付けはだいぶ進んでいた。
片付けの指示を出している魅音を見つける。

露伴「魅音ちゃん、沙都子ちゃんと梨花ちゃんは寝かせてきたんだけど、
   手伝うことはあるかい?」
魅音「いいっていいって、怪我人なんだから大人しくしてなよー。
   もうちょっとしたらうちで二次会があるからさ、それまで待っててよ。」

露伴は魅音に従い待つことにした。
必ず起きることとはいえ、露伴は富竹が氏んだことを確認したかった。
そのため、園崎家での村の役員たちの飲み会についていくのが最善だと考えたのだ。

片付けも終わり、村人と共に園崎家へと向かった。
そして飲み会。村人たちも露伴に興味を持ったのか喋りかけてくる。
気づけば皆が帰る時間になっていた。露伴はそのまま園崎家へと泊めてもらう。
付き合いとは言え、だいぶ飲んだ露伴はすぐに眠りへと落ちていった。

28: 2008/01/20(日) 16:42:53.24 ID:SkilSIER0
露伴は目を覚ます。まだ部屋は暗い。
酔いも醒めていないのでたいした時間は過ぎていないのだろう。
なぜ自分は起きたのだろうか。

とうおるるるる、とうおるるるる

電話の音だった。そしてその瞬間酔いも吹き飛ぶ。
露伴は布団から出てしのび足で電話へと向かう。
勝手に電話に出るわけにはいかない。電話の近くの角に身を隠す。
やがて、魅音が電話に気づき起きてきた。

魅音「ふぁい・・・、もしもし、園崎ですけれど。」

魅音「ッ!!
   ・・・はい、・・・と、富竹さんが・・・?
   はい、わかりました。はい・・・。」

魅音はその後少し返答をしたあと、受話器を置き部屋へと戻っていく。
お魎にでも報告しにいったのだろう。

当初の目的を終えた露伴は誰にも気づかれないよう部屋へと戻り再び眠ることにした。
5年目の祟りは起きた。ここから黒幕にたどり着けるだろうか。
撒いた種の目を生やさなくてはいけない。まずは入江か・・・。
これからのことを考えているうちに露伴の意識はなくなった。

30: 2008/01/20(日) 16:45:39.82 ID:SkilSIER0
■TIPS
----5年目の祟り----

警官「お疲れさまです。大石さんッ!!」
警官「お疲れさまでーす。」
大石「いやぁ、遅くなっちゃってすみません。皆さんお疲れさまです。」

警官たちに通され、大石と熊谷は遺体へと近づいていく。
その遺体は筋肉質の大柄な男性、・・・富竹だ。

熊谷「こ、これは・・・喉が・・・。
   はじめて見ますね、こんな状態・・・。」
大石「うーん、ちょっと失礼しますよぉ。」

大石はそう言い富竹の手に懐中電灯を当てる。
ドラマなんかで刑事がよくやるように、ハンカチを使って直接遺体に手を触れないようにする。
手を少しだけ動かしよく見ているようだ。

大石「うぅーん。こいつぁ奇妙ですねぇ。
   爪にこびりついた肉片を見る限り、自分で喉を掻き毟っちゃってます。
   どういうことですかねぇ・・・。」
熊谷「自分で喉を・・・ですか?」

31: 2008/01/20(日) 16:46:43.56 ID:SkilSIER0
そう大石の見立ては正しかった、富竹の遺体は喉が掻き毟られたかのように肉が抉られている。
周りには大量の血の跡。喉からの出血と見て間違いない。
それに加え、喉の近くに横たえた富竹の手は血まみれだ。爪の間には肉片がいくつも食いついている。
こんな状態の爪で掻き毟っても血糊と肉片でここまで喉を抉ることはできないのではないかというほどだ。

大石「入江の先生は呼んだんですかぁ?」
警官「はい、既に連絡を終え、向かって頂いています。」
熊谷「他には何か見つかっているか?」
警官「角材がひとつ、ホトケの近くにころがっていました。
   それ以外は現在捜査中です。」
大石「うーん、熊ちゃん、これ、見てください。外傷を加えられてるようですねぇ・・・。」
熊谷「これは、確かに自傷とは思えない位置ですね・・・。
   この角材で殴られたんでしょうか?」
大石「それは鑑識が来てからになりますねぇ。
   外傷を与えてきた加害者に抵抗するための角材だったのかもしれません。」

32: 2008/01/20(日) 16:47:35.11 ID:SkilSIER0
大石はそれっきり黙ってしまう。
熊谷も辺りを見回してみるが他に手がかりになりそうなものはなかった。

熊谷「これが5年目の祟り・・・ということになるんですかね。」
大石「富竹さんでしたか、今日のお祭りにも来ていらっしゃったと思いますが。
   ただのカメラマンのこの人がなんで祟りに会うんでしょうねぇ?
   んっふっふっふ。今年のオヤシロ様はいつになく訳がわかりませんなぁ。」
熊谷「はぁ・・・、ただ氏に方は・・・今までで一番祟りらしいですかね。」
大石「あーっはっはっは、熊ちゃんもジョークが言えるようになって来ましたねぇ。
   でも、祟りで終わりにしませんよぉ。絶対に犯人を捕まえてやります。」
熊谷「そうですね・・・。」

33: 2008/01/20(日) 16:47:46.81 ID:SkilSIER0
TIPSも終わりス

142: 2008/01/20(日) 23:20:02.19 ID:SkilSIER0
  1983年(昭和58年)
       6月20日(月)

露伴は早朝に魅音に起こされた。魅音は昨日頼んだ時間にきっちりと起こしてくれた。
沙都子や梨花が学校に行く前に家に戻り、着替えや風呂を済ませたかったからだ。

露伴「それじゃあ、お邪魔したね。お魎さんにもよろしく言っておいてくれよ。」
魅音「うん。それじゃあまたね。」
露伴「あぁ、またね。」

露伴はそう言い、門から出ようとした。

魅音「露伴さんッ・・・ちょっと待って。」
露伴「うん?なんだい?」
魅音「また、会えるんだよね?
   綿流しも終わっちゃったけど、すぐ帰っちゃったりしないよね?」
露伴「あぁ、もう少しはいるよ。それに、お別れの時にはちゃんと挨拶に来るから心配するなよ。」
魅音「う、うん・・・。」

露伴はそれだけ答え、門から出て行った。

144: 2008/01/20(日) 23:21:05.33 ID:SkilSIER0
家へと戻ると、沙都子は既に起きて朝食の準備をしていた。

露伴「ただいま。」
沙都子「あら、お帰りなさいませ。
    ちょうどご飯ができるところですわよ。」
露伴「あぁ、そのまえにちょっとシャワーを浴びてもいいかい?」
沙都子「そのくらいの時間ならありますわ。
    それじゃあ露伴さんが出たら朝食にしましょうかしら。」

露伴は風呂場を借りることにする。
この時代のシャワーは温度が安定しないんだよな。
そんな愚痴を考えていると、扉からにゅっと人が入ってくる。

露伴「う、うわ、な、なんだぁッ!?」

145: 2008/01/20(日) 23:22:13.78 ID:SkilSIER0
流石の露伴もこれには慌てて前を隠す。
入ってきたのは羽入だった。

沙都子「露伴さーん、どうかしましたのー?」
露伴「い、いや、なんでもないよ、すまない。」

つい声を出してしまったので沙都子に返事をしておく。
それからはスタンドで聞こえないように会話した。

露伴「なんだよ、覗きのつもりか?」
羽入「僕は露伴の体になんて興味ないのですよ。」
露伴「ふん、僕だっていきなりでびっくりしただけさ。」

露伴はそういうと、羽入にかまわずシャワーを浴び続ける。
羽入は興味がないといいながら頬を赤らめていた。

146: 2008/01/20(日) 23:24:00.99 ID:SkilSIER0
露伴「で、何の用だよ?」
羽入「富竹と鷹野は・・・どうなったのですか?」
露伴「鷹野は何も知らないが、昨日園崎家に富竹がどうのこうのって電話がかかってきていた。
   おそらく、祟りで氏んだんだろう。」
羽入「やはりですか・・・。」
露伴「用はそれだけか?」
羽入「露伴でも祟りを食い止めるのは無理なのですね。」
露伴「・・・。」
羽入「用はそれだけなのです。ボクももう露伴にくっついているのはやめますです。
   もし、真相がわかったなら教えてほしいのです。」
露伴「それは、この岸辺露伴が真相を暴けないと、そう言いたいのか?」
羽入「露伴がこの世界に来て一週間が経ちました。
   もっとも手がかりになりそうな鷹野ももういないのです。
   梨花が氏ぬまであと数日しかないのですよ。」
露伴「ようは期待はしてないってことか。わかったよ。ほら、出てけよ。
   人に見られながらシャワー浴びるのは気持ち悪いからな。」

露伴はそうして羽入を追い出す。
あと数日か・・・入江が真相を知らなければ・・・鷹野に会うしかないのか。
既に氏んでいるはずの鷹野三四に。

149: 2008/01/20(日) 23:25:02.40 ID:SkilSIER0
シャワーを出ると、既に梨花も起きており食卓の準備は終わっていた。
沙都子にせかされながら朝食を食べる。学校へ向かう時間が迫っているそうだ。
遅刻させるのは悪いので急いで朝食をとり、沙都子達を学校へと送り出した。
羽入も梨花の後ろについて学校へと向かっていく。
露伴は一人境内に残された。

露伴「いつもうるさいやつがいないと静かでいいな。」

露伴がそんな嫌味を言っても、誰も答えてくれなかった。
やっと露伴も自分が一人であることを実感する。
ここ一週間、常についてきていた羽入がいなくなったのには不思議な感覚がした。

いつまでもここにいてもしょうがない。
露伴は入江診療所へと向かうことにした。

150: 2008/01/20(日) 23:26:15.67 ID:SkilSIER0
幸い、今の露伴には診療所へと向かう理由がある。
左手の消毒をしてほしいとでも言えば大丈夫だろう。
保険証はないが、金はいくらでもある。昨日の屋台で2007年の一万円札を使い込んだからだ。
もちろん、ホログラムの部分などは入念に削り取っておいた。
保険証は自分の家に忘れてきたとでも言えばいいだろう。

露伴は診察時間までかるく時間をつぶしてから診療所へと向かった。

診療所へ着くと、診察時間ちょうどにもかかわらず沢山の年寄り達がいた。
まぁ田舎の病院なんてこんなものだろう。
受付に名前と保険証がない旨を伝えて待つことにした。

自分の番が来るまでは新聞でも見てみる。
富竹の氏は書いていない。そういえばこの新聞。
2007年の図書館でも見たな。

152: 2008/01/20(日) 23:26:52.38 ID:SkilSIER0
看護士「岸辺さーん。こちらへどうぞー。」

かなり長い時間を待つと、露伴の番がやってきた。
看護士に通され、診察室へと向かう。

入江「こんにちわ、露伴さん。変わったお名前なのですぐにわかりましたよ。」
露伴「こんにちわ、ちょっと左手を見てもらおうと思いましてね。
   よろしくお願いします。」

露伴が椅子に座ると、入江は看護士になにやら命じた。

入江「保険証がないということですが、よろしいんですか?
   一応ですね、保険証をあとからコピーして郵送していただくこともできますが。」
露伴「いえいえ、ご迷惑になると思いますので、大丈夫ですよ。」

看護士が露伴の左手を置く台を持ってくる。
入江はその上に左手を乗せ、包帯をとっていった。

155: 2008/01/20(日) 23:30:22.13 ID:SkilSIER0
入江「これは・・・爪が・・・。いったいどうしたんです?」
露伴「それは伏せさせてほしいと前に言ったと思いますが。
   化膿したりしないように、消毒してもらおうと思いましてね。」
入江「露伴さん、私は医師として事件性のありそうな怪我に関しては警察に報告する義務があります。」
露伴「医師法ではそこまで定められていなかったと思いますが・・・」
入江「私個人が医師として報告すべきであるという考えを持っているんです。」
露伴「まぁ、別にそこまで隠すほどのことではないんですが・・・。
   んー、医師の入江先生にではなく、友人として話したい内容ですね。
   よかったら、今日のお昼ご一緒しませんか?」
入江「お昼ですか・・・。えぇと、ちょっと今日は忙しいんですが。」
露伴「そうですか。とりあえず、治療をお願いしてもいいですか?」
入江「えぇ、わかりました。」

話す約束をしたため事件の疑いはあまりないと思ったのだろうか。入江は露伴の爪に処置をする。
といっても化膿していたりするわけではないので簡単な処置で済んだ。
大して時間はかからずに新しい包帯が巻きつけられた。

156: 2008/01/20(日) 23:32:40.10 ID:SkilSIER0
入江「これで大丈夫だと思います。
   すでにかなり治ってきていますので、様子を見て包帯をとっても結構ですよ。」
露伴「ありがとうございました。
   それでは今日は失礼しますね。」
入江「えぇ、お大事に。」

露伴が立ち上がったので診察室から出て行くと思った入江は目を逸らした。
しかし、なぜか露伴の体が入江の真横まで近づいてきていたことに気づく。
露伴は入江以外には聞こえないように小さな声で話しかける。

露伴「この前お渡しした封筒、誰にも見つからないように開けてくださって結構ですよ。
   内容も誰にも見られないようにしてくださいね。」

露伴はそう言うと、入江から離れ、本当に診察室から出て行こうとした。
そして扉から出るところでもう一言口を開いた。

露伴「僕は今からお昼ごろまでは神社にいます。
   気が変わったら、来てくれると嬉しいですね。ふふふ。」

露伴はそれだけ告げて診察室から出て行った。
入江は露伴から渡された封筒を思い出すが、所長室に置いてあるためすぐに開けることはできなかった。

226: 2008/01/21(月) 00:58:13.49 ID:zkfK4uZq0
診察を終えた露伴は入江に伝えたとおり神社で待つことにした。
診療所から神社へと戻る。戻る途中に偶然すれ違った村人が露伴に声をかけてきたりもした。
昨日の祭りで顔が売れたんだろうか。ちょっと気分がいい。

神社に戻り、入江が来るのを待つ。
診察終了の時間も過ぎたが一向に入江が来ない。
露伴が自分の予想が間違っていたかと思い情報を整理していると、やっと入江が現れる。

露伴「おっと、入江先生。遅かったですね。」
入江「・・・。」

入江は厳しい顔をしている。それを見て露伴は手紙を読んだことを察した。

露伴「手紙にも書きましたが、僕はあなたの敵じゃあない。
   とりあえず、お昼でも食べに行きませんか?おなか減ってるんですよね。」
入江「えぇ、そうしましょうか。」

入江に案内され、入江の車へと乗る。
露伴は終始無言だった。入江の出方を探っているのだろう
入江もそれは同じで露伴の出方を探っているようだ。
我慢できずに動いたのは入江だった。

227: 2008/01/21(月) 00:59:24.94 ID:zkfK4uZq0
入江「なぜ、知っているんですか?」
露伴「質問に質問で返すようで悪いけど、何に関してです?
   心当たりがたくさんありすぎてね。くっくっく。」
入江「・・・梨花ちゃんから聞いたのですか?」
露伴「まぁ、それもありますね。
   
   次に、アンタはなぜ二人を助けてくれなかったのか、と言う。」
入江「なぜ二人のことを警察に・・・ハッ!!」
露伴「ふふふ、入江先生。僕の言うこと、なんでも信じてくれますか?」
入江「内容に・・・よります。」
露伴「話すと長くなるんですが、どうしますかね。」
入江「午後は空けてきました。遅くなったのは職員に午後を任せるためです。」
露伴「それはありがたい。時間があるのであれば、食事の間は友人として仲良くできそうですね。」
入江「友人として、ですか・・・。」

入江の車は雛見沢にある蕎麦屋へと入っていった。
診療所でもよく出前を取るお薦めの店だと言う。

229: 2008/01/21(月) 01:00:20.05 ID:zkfK4uZq0
時間が遅いせいか、客は露伴達だけだった。
だが、店員に話を聞かれる可能性もあるため祟りに関する話はしたくない。
露伴は食事の間は友人として話すことがあるといい、爪の件について話した。

入江「それで、お祭りの日は大人たちが沙都子ちゃんに普通に接してくれていたんですか。」
露伴「まぁ、そんなところです。
   どうやってお魎さんが沙都子ちゃんを許したのが広まったのかは僕は知らないですがね。」
入江「・・・先ほどは、あなたに失礼な態度をとって申し訳ない。」
露伴「なんのことです?」
入江「あなたにこうしてお礼を言うのは2度目ですね。
   沙都子ちゃんと救ってくれてありがとうございます。
   私はあなたが沙都子ちゃんを救ってくれた恩人だということを忘れていました。
   あの手紙の内容だけであなたを疑ってしまった・・・。」
露伴「ふふふ。まぁ、話を聞いてもらえそうでよかったですよ。」

露伴に対する不信感が和らいだのか、入江は少しリラックスしたようだった。
二人は蕎麦をすすりながら、沙都子について話すのだった。

230: 2008/01/21(月) 01:01:21.78 ID:zkfK4uZq0
やがて食事を終えて二人は店を出る。

入江「どこでお話しますか?」
露伴「人に聞かれない場所ならどこでもいいんですが、入江先生に任せますよ。」
入江「私の家に行きましょうか・・・。」
露伴「お任せします。」

こうして露伴は入江の家へと案内された。
入江の家は興宮にある平凡なアパートだった。
男の一人暮らしならこの程度だろう。いや、医師にしては質素な家だろうか?
入江に案内されるままに露伴は家へと入った。

入江「コーヒーかお茶くらいでしたら用意できますけど、どうしますか?
   紅茶もありますよ。」
露伴「紅茶でお願いしようかな。」

入江は台所へと向かい、露伴の紅茶と自分のコーヒーを用意してきた。

232: 2008/01/21(月) 01:02:23.15 ID:zkfK4uZq0
入江「それでは、お話を聞かせてもらえますか?」
露伴「実は、僕、未来から来たんですよ。
   って言ったら、信じますか?」
入江「ははは、流石にそれは無理がありますよ。
   タイムマシーンでも見せてもらえれば信じなくもないですが。」
露伴「やっぱりそうですよねぇ。
   それじゃあ、僕の言うことが嘘ではないと証明するのと、
   僕の知っていることをすべてお話しするの、どっちが先がいいですか?」
入江「それは、証明を先にしてもらえれば何でも信じますが、本当に未来から来たと言うんですか?」

入江は自分が馬鹿にされていると思ったのか、少しいやな顔をした。
露伴はかまわずに説明をする。

露伴「入江先生、僕は"スタンド"という超能力を持っています。
   これからその超能力をあなたにお見せします。それで信じてもらえませんか?」
入江「超能力が未来から来たことの証明になるのでしょうか?」
露伴「あの手紙が未来から来た証明のつもりだったんですがね。
   超能力と手紙では信じてもらえませんか?」
入江「それは・・・詳しい話を聞かないとわかりません。」
露伴「そうですね、それではまずは"スタンド"を体験してもらいましょうか。」
入江「は、はぁ・・・。」

234: 2008/01/21(月) 01:03:45.40 ID:zkfK4uZq0
入江は多少は真面目に返答をしたものの露伴の言うことをあまり信じられなかった。
いくら沙都子の恩人だろうとも、未来から来たと言い出したならそれは異常者にしか見えない。
当然である。

露伴「疑ってくださって結構です。僕の"スタンド"の能力は、
   『他人の体に残された記憶を読む。』です。
   本人が忘れてしまった記憶だろうと、覚えている記憶だろうと、
   体験したことなら全てを読み知ることができます。これから、あなたの体の記憶を読んでみます。
   そして、あなたしか知りえない僕が知るはずのないことを調べてみましょう。」
入江「はぁ・・・たしかに僕しか知りえないことがわかるのなら、超能力を認めざる終えませんが・・・。」
露伴「そう、疑ってくれてていいんです。僕がこれから証明するんですから。」
入江「それでは、どうぞ記憶を読めるというなら読んでください。」
露伴「わかりました。記憶を読んでいる間はあなたは意識を失います。
   危害は加えませんのでご安心を。それでは・・・。」

────天国への扉(ヘブンズ・ドアー)ッ!!

249: 2008/01/21(月) 01:22:20.68 ID:zkfK4uZq0
■TIPS
----露伴からの手紙----

入江京介様へ

これを開いているころにはもう綿流しは終わっているはず。
いまは6月20日か、それよりもっと後かな?まぁ、どうでもいいか。

まず、先に言っておく、多分僕はあんたの敵じゃあない。
あんたが鷹野と富竹を頃したのでなければね。

もし、鷹野と富竹を頃したのがあんたなら、それはそれでおもしろい。
僕も頃しに来てくれよ、ふふふ。まぁ、僕の推理ではその可能性は低いんだけどね。
だから、一応あんたが犯人じゃないという仮定で話させてもらうよ。

鷹野と富竹の件については、山狗またはそれ以上の組織が関わっている可能性が高い。
なのでこの手紙に関しては山狗や診療所の職員には知らせないでほしい。
詳しくは二人きりで話そうじゃないか。なぜ山狗が関わっている可能性が高いのか話すよ。

いや、なぜ山狗のことや、富竹と鷹野が殺されることを知っているかの説明のほうが先になるかな?
とりあえず、人に話を聞かれない場所で二人で話がしたい。
二人で話をしたあとに、僕が信用できないなら山狗に言うなりなんなりしてくれてかまわない。
だから、僕から話を聞く前に山狗に言うのは勘弁してくれよ?

君が僕の願いを聞いてくれることを祈っている。

                  1985年6月18日 岸辺露伴

251: 2008/01/21(月) 01:24:07.94 ID:zkfK4uZq0
----露伴からの手紙2----

園崎お魎さまへ

綿流しの次の日にこの手紙を開いていてくれているでしょうか?
今年のオヤシロさまの祟りは富竹ジロウと鷹野三四の二人が氏にます。

これが僕がオヤシロ様の使いとして未来から来たことの証明です。
二人の氏を阻止されるのは困るのでこういった形で伝えさせてもらうことになりました。
来年以降はオヤシロ様の祟りは起こりませんのでご安心ください。

                  1985年6月17日 岸辺露伴

253: 2008/01/21(月) 01:25:25.59 ID:zkfK4uZq0
これで今日の投下は終了にしたいと思います


ちなみにまとめの人はいらっしゃるかしら

254: 2008/01/21(月) 01:25:44.37 ID:eCOwYeVZO
乙ッッッ!!


to be continued...
岸辺露伴は動かない-雛見沢-chapter15

引用: 岸辺露伴は動かない-雛見沢-