1: 2024/02/16(金) 22:10:47 ID:phv2GvCc00
──部室

すみれ「かのん、段ボール箱持ってきてたわね」

恋「ふふふ。『これいっぱいになるかな!?』なんて言ってましたね」

すみれ「実際七割くらい埋まってたわよね。びっくりしたわ」

恋「そうですか? 私はあの箱が満杯になってもおかしくないな、と思っていました」

すみれ「……あなたこの二年くらいかのんのどこを見てきたの……?」

恋「え……お顔……? でしょうか……?」

すみれ「顔か……」

4: 2024/02/16(金) 22:17:22 ID:phv2GvCc00
すみれ「恋も去年に続いて結構もらってたわね」

恋「はい。チョコレートもそうですが、去年よりもお手紙を沢山渡されまして」

すみれ「あー。ファンレターね。どんなこと書いてあった? 頑張ってください、とか?」

恋「応援のメッセージが多かったです。印象に残ったのは……使っているシャンプーの種類を教えてください、ですかね」

すみれ「その手紙は破っていいわよ」

恋「え! でもその手紙はメイさんからいただいたものなので……」

すみれ「……」

恋「すみれさん……まるで苦虫を噛み潰したような……」

すみれ「……個人的にメイと少し話しておくわ。絶対教えちゃだめよ?」

恋「もう教えたのですが……?」

8: 2024/02/16(金) 22:23:55 ID:phv2GvCc00
恋「あと皆さんからチョコレート以外にもイチゴを使ったお菓子も頂いて……嬉しい限りです」

すみれ「イチゴ大好きだもんね」

恋「はい。昨日もサヤさんと二人で分けて食べました。とってもおいしかったです!」ニッコリ

すみれ「小学生かな?」

恋「え?」

すみれ「あ、ごめん。忘れて」

恋「? そういえばすみれさんはどうでしたか? かのんさんとツートップで沢山貰っていたように見えましたが」

すみれ「あー……そうね。結構沢山貰っちゃったわね」

9: 2024/02/16(金) 22:30:33 ID:phv2GvCc00
恋「あまり嬉しくなさそうですね……?」

すみれ「んー……。嬉しいのよ? チョコ。沢山貰えるってことはそれだけ私に好意的な人が多いわけだし、ファンの人も多いってわけだし」

恋「ではあまり浮かない表情なのは……?」

すみれ「食べたら肌がね……荒れるのよね……」

恋「チョコレートは甘い牛脂と言われているくらいですから」

すみれ「ぷっ。なにそれ、そんな風に言われてるの?」

恋「えっと……冗談、です」

すみれ「ふふ、恋がそういうこと言うなんて珍しいわね」

10: 2024/02/16(金) 22:36:05 ID:phv2GvCc00
恋「でも糖質や脂質の塊と言っても過言ではないでしょうから、食べ過ぎには注意ですね」

すみれ「そうなのよ。でも貰っちゃった以上は食べないと。妹にも食べさせようかしら?」

恋「でしたら……イチゴ系のチョコがありましたら是非私に声をかけてください」

すみれ「食い意地……」

恋「違います、SDGsです! 貰う責任、食べる責任です!」

すみれ「そんな食欲まみれのSDGs聞いたことないけど……」

恋「イ、イチゴ味以外でもお手伝いしますよ!」

すみれ「論点はそこじゃない」

11: 2024/02/16(金) 22:41:21 ID:phv2GvCc00
すみれ「やれやれ。結女の生徒会長もイチゴの前には形無しね」

恋「……お恥ずかしい限りです……」

すみれ「そういえば四季、今年もメイに本命チョコを渡すって息巻いてたわね」

恋「本命、というとつまるところ、その……そういうことですよね?」

すみれ「『あなたが好きです。ラブ的な意味で』っていう気持ちを込めたチョコレートよね」

恋「まあ……! 四季さん、メイさんの事がお好きなのですね」

すみれ「……この一年四季とメイの何を見てきたの?」

恋「……お顔でしょうか、やっぱり」

すみれ「やっぱり顔か……」

恋「はい……」

12: 2024/02/16(金) 22:46:08 ID:phv2GvCc00
すみれ「どうなるのかしらね、あの二人」

恋「四季さんの想いが届くとよいですね」

すみれ「そうね。メイ、アレっちゃアレだけど良い奴だし」

恋「アレ?」

すみれ「メイからの手紙読んでその反応なの!?」

恋「……ええと?」

すみれ「……ま、いっか。それより恋、ちょっといい?」

13: 2024/02/16(金) 22:50:36 ID:phv2GvCc00
恋「?」

すみれ「私、実はバレンタインの日に忘れ物しちゃったのよ」

恋「まあ。部室にですか?」

すみれ「そうね。ここでみんなでチョコ交換したじゃない。その時に、一つ忘れ物しちゃったの」

恋「あの時にですか? 確かにあの時はみんな一斉に動き回って騒いでいましたから……何を忘れ物されたのですか?」

すみれ「結構大きなものなのよね。しかも大事なものでね」

恋「! 大変じゃないですか! どうして昨日言ってくださらなかったのですか!?」

すみれ「昨日は忘れ物したっていうタイミングじゃなかったのよね。まだみんなチョコの話してたし」

恋「……? チョコ……? どうしてチョコレートの話と忘れ物が……?」

15: 2024/02/16(金) 22:54:22 ID:phv2GvCc00
すみれ「ふふ、みんながチョコレートの話をしなくなったタイミングでしか見つからないの」

恋「え? えっと……話がよく呑み込めないのですが……?」

すみれ「話が呑み込めなくても、チョコは食べてもらうわよ。はい、これ」

恋「……え? チョコレート……? えっと……?」

すみれ「二日遅れだけど、私から──ハッピー、バレンタイン」

恋「え、あ、えっと、ありがとうございます……?」

すみれ「あはは、なによ、なんでそんな変な顔してるのよ?」

恋「いえ、だって……私、二日前に……貰いましたよ、チョコレート」

すみれ「そうね。友チョコ、あげたわね」

17: 2024/02/16(金) 22:58:58 ID:phv2GvCc00
恋「そうです、確かにあの日私はすみれさんから頂きましたし……私もトモチョコをお渡ししました。私からのトモチョコのお返しがこちらだとすると、私は……」

すみれ「これは友チョコじゃないのよね」

恋「……では何チョコになるのですか?」

すみれ「いいからいいから。恋、さっき自分が言ったこと、覚えてる? ヘンなSDGs」

恋「貰う責任、食べる責任……」

すみれ「そ。だから、今ここで食べて」

恋「え、今、ですか? ええと……すみれさんの前で、ですか……?」

すみれ「そう。今ここで、私の前で。友チョコじゃない、私からのチョコレートを食べなさい?」

18: 2024/02/16(金) 23:04:59 ID:phv2GvCc00
恋「ええと、えっと……では。開けますね……」

しゅるしゅる ぱかっ

恋「! これ、友チョコのものと全然違います!」

すみれ「言ったじゃない。これは友チョコじゃないって」

恋「わぁ……綺麗です……お店で売ってるような……これ、本当に頂いてもいいんですか?」

すみれ「そうよ。恋のために作ったんだから。そして、今ここで恋に食べてもらうために」

恋「わ……美味しそうです……じゃあいただきま──」

すみれ「待った。そのチョコレート、まだ完成してないの」

19: 2024/02/16(金) 23:09:59 ID:phv2GvCc00
恋「え!? こんなにきれいで美味しそうなのに……? 完成していないっというのは……どういう意味なのでしょう?」

すみれ「このチョコレートには、まだ足りてないものが一つあるの。なんだと思う?」

恋「足りないもの……? このチョコレートはどうみても完成しているようにしか見えないのですが……ううん……?」

すみれ「わかんない?」

恋「……はい、わかりません……」

すみれ「……」

恋「……えっと……」

すみれ「……」

恋「す、すみません……これは、気付けないといけないことなのでしょうか……?」

すみれあははは! 恋ってばほんと面白いわね!」

恋「!? 面白いって……いったいどういうことなんですかすみれさん!? さっきから私のことをなんだか揶揄っているみたいに……!」

すみれ「ごめんごめん。でも、本当にまだ完成してないんだって。少なくとも、私にとっては」

20: 2024/02/16(金) 23:13:40 ID:phv2GvCc00
恋「すみれさんにとって……?」

すみれ「恋、こっち向いて?」

恋「え、あ、はいっ」

すみれ「……」

恋「……」

すみれ「すー……ふー……」

恋「すみれ、さん?」

すみれ「仕上げ、いくわよ」

恋「……ええと、お願いします……?」

21: 2024/02/16(金) 23:17:28 ID:phv2GvCc00
すみれ「恋。好きよ。貴女の事が好き」



恋「……へっ?」

すみれ「はい、チョコレート完成。さ、どうぞ」

恋「えっ!?」

すみれ「ん?」

恋「ええ!?」

すみれ「ん?」

恋「えええええええええええ!?」

22: 2024/02/16(金) 23:23:35 ID:phv2GvCc00
恋「わた、すみ、すっ!?」

すみれ「何言ってるかわからないけど、そういうことよ」

恋「えっ!? わたっ!? すきっ!?」

すみれ「やっぱり恋、面白い。好きになっちゃうわよ」

恋「ええええええ!?」

すみれ「あ、そうそう。そのチョコレート、食べるってことはつまり、私の想いを貰うってことだからね?」

恋「貰う責任ってそういうことなのですか!?」

すみれ「そうに決まってるじゃない。まさか私のチョコレート……想いを貰うだけ貰って、何もしないわけじゃないわよね?」

恋「えっ、えっ、え! え、じゃあ、このチョコ、え!」

すみれ「恋? どうする? これ、食べる? 食べない?」

恋「え、え、えええと!? わたくし、ええと、その!?」

すみれ「下校時間までまだ時間あるし、ゆっくり考えて?」

24: 2024/02/16(金) 23:27:45 ID:phv2GvCc00
──廊下

──ええと! わたくしも! その、すみれさんのことは! そのっ!

──んー? チョコ、食べるの?


四季「すみれ先輩、圧と湿度がすごい」

メイ「両片思いだな……とは思ってたけど……すげえな、実質いいえとは言わせない告白のやり方だ……」

四季「私もあんな風に本命チョコ、渡せばよかった」

メイ「……勘弁してくれ。昨日ちゃんと答えたじゃねーか」

四季「確かに、満足いく答えは聞かせてもらった」

──えっと、えっと! わたくしも! その! すみれさんのことは!

──んー?

25: 2024/02/16(金) 23:31:37 ID:phv2GvCc00
メイ「じゃあもういいじゃ──」

四季「恋先輩への手紙の内容については、何も聞いてない」

メイ「え。いや、違うぞ?! 他意はないからな!? 良い匂いがするだろ!? 恋先輩って!」

四季「言い訳は、今夜ベッドの上で聞かせてもらうから」

メイ「おい勘弁してくれ!」ダッ

四季「逃がさない」ダッ



──すみれさんっ! わっ、わたくしもお慕いしておりますっ!!

──ふふっ、はい、じゃあチョコレート、どうぞったら、どーぞ♡



すみれ「バレンタインも落ち着いたわね」恋「はい」 了

28: 2024/02/16(金) 23:57:10 ID:B8jwehIkMM

引用: すみれ「バレンタインも落ち着いたわね」恋「はい」