557: 2011/09/16(金) 23:11:50.82 ID:VhRyWjoI0
後日談

一方通行「……」

浜面「一方通行!楽しみだなぁ!!」

一方通行「……」

浜面「早く滝壺の浴衣姿が見たいっ!!」

一歩通行「…あの、ちょっと黙ってくンね?」

浜面「俺は思うんだ一方通行。俺は、この日のために生きてきたんじゃないかと」

一方通行(付き合ってらンねェ)

浜面を見るのが嫌になって時計を見る。

一方通行(5時か。5時半の電車には…かつがつ間に合いそうだな)

浜面「思えば!!俺と滝壺が出会った日っていうのは―ッ!!」

一方通行「マジで黙ってくンね?」
【上条当麻】とある魔術の禁書目録III ねんどろいどぷらす カプセルラバーキーチェーン
558: 2011/09/16(金) 23:15:09.95 ID:VhRyWjoI0
ここは絹旗の家の前。中で彼女たちが着替え終わるのを一方通行たちは待っている。

一方通行(にしても長ェな。まァ、浴衣ってのは着るのに手間取るもんなンだとは思うが…)

麦野「ハァイ!おまたせ♪」

と思っていたら麦野が外に出てきた。

浜面「おお、麦野―」

浜面「!?///」

一方通行「…ほォ」

麦野「あっれー?顔赤くしてどうしたのかにゃ~ん?♪特には・ま・づ・らっ」

浜面「う、うるせえ!赤くなんかしてないやい!!///」

一方通行(…こりゃァ驚いた。第4位も、飾れば様になるじゃねェか)

白・紫の蝶柄が入った黒浴衣を羽織り、それを赤色帯でコーディネートした第4位こと、麦野沈利。
彼女の思惑通り、黒地+赤で可愛さを演出した作戦は…。見事、浜面仕上には効果抜群だった。

麦野「どう?浜面。なんなら、今からでも私に乗り換えてみるー?♪」

滝壺「は、浜面っ!」

559: 2011/09/16(金) 23:20:12.91 ID:VhRyWjoI0
麦野の後ろから飛び出す滝壺。

浜面「ち、違うんだ滝壺ッ!!決して俺は麦野に見とれてなど…って―」

浜面「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!?///」

それはそれは元気な叫び声だった。

一方通行(心の中でならともかく、実際に絶叫するヤツは初めて見た)

浜面「す、凄ぇ良い…ッ!!凄ぇ良いよ滝壺!!めちゃくちゃ可愛いし、その…美人だ///」

赤紫の花柄を添えたピンクの浴衣に、紫色の帯を纏った滝壺。紫を基調とした柄と帯の組み合わせは
ピンクというパステル色特有の可愛さにとどまらず、大人っぽさをも引き出していたと言えた。

一方通行(こいつが“美人”って表現を使ったのも分かるような気がすンな)

滝壺「も、もう!浜面は大げさなんだから…//」

麦野「まぁ分かりきってた結果だけど。いざ目の当たりにすると、結構へこむものね…」ガックシ

滝壺「私は麦野の格好、カッコ可愛くて好きだよ。そういう服が似合うっていうのは…純粋に羨ましいな」ヨシヨシ

麦野「滝壺に頭をなでられたって嬉しくないんだから。グスン」

一方通行(第4位って面白いキャラしてるよなァ)

561: 2011/09/16(金) 23:26:07.93 ID:VhRyWjoI0
一方通行「…ところでよォ。肝心の家主さんがまだみてェなんだが」

麦野「んー?“彼女”のことが気になる?」

一方通行「べ、別にそんなンじゃねェよ…」

滝壺「絹旗なら、もうちょっと時間がかかるって言ってた。
あなたに見てほしいと思ってるから…準備に気合いが入ってるんだと思う」

浜面「ってことは!!滝壺も俺のためを思ってその浴衣を―」

滝壺「そうかもね」

浜面「いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおうッ!!!!!!」

一方通行「なァ。さっきからこいつうるさくね?」

麦野「あまりの喜びで自己をコントロールできなくなってるのよ。可哀相だから、大目に見てあげましょ」

絹旗「み、みなさん!!お待たせしてすみません…っ!」

最後の一人。家主こと、絹旗最愛がこちらへと走ってくる。

一方通行「おォ。遅かっ―」

一方通行「!?」

565: 2011/09/16(金) 23:32:09.29 ID:VhRyWjoI0
浜面「おおお!!?絹旗もこりゃ…すっげぇ可愛いな///」

滝壺「もう。浜面はすぐこれなんだから…。でも、凄く似合ってるよ。絹旗」

赤の金魚柄を乗せた白浴衣に、黄とオレンジが交互に入った横シマ模様の帯。そんな彼女の色彩構成は、
純白・可愛さ・元気といったそれぞれの色がもつ特色を全面に押し出し、見事なまでの調和を描いている。
ただ…“可愛さ”に特化した配色だったのは否めない。そして事件は起こった―

一方通行「……」

彼は頭の中が真っ白になっていた。

絹旗「こ、こんな浴衣ですけど…っ!ど、どうですかね一方通行?///」

一方通行「……」

絹旗「あ、あの…?一方通行?」

一方通行「……」

滝壺「おーい」

一方通行「……」

麦野「第1位?」

一方通行「……」

浜面「ダメだ。目の前で手をふっても気付かねえ」

569: 2011/09/16(金) 23:38:21.96 ID:VhRyWjoI0
一方通行「…っ!」

一方通行(何やってンだ俺は…)

絹旗「一方通行!だ、大丈夫ですか…?!」

一方通行「あ、あァ。ちょっと魔が差しちまってよ」

浜面(魔が差して…気絶…!?)

一方通行「…ンなことよりな、お前のその…そのっ、浴衣が…ッ」

滝壺(頑張れ一方通行!)

麦野(頑張れ第1位!)

一方通行「や、やべェくらいにその…似合ってンだよ…ッ!」

絹旗「ほ…本当ですか!?そう言ってくれて、私超嬉しいです!!///」

ただでさえ可愛い絹旗が…白浴衣効果でますます可愛くなってる。動揺するには十分すぎる理由だった。

絹旗「あ…。もしかして、一方通行の顔が赤いのって私のことを意識してくれてるからですか?///」

一方通行(そして上目づかい!!?うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!?!?)

滝壺「やめてあげてよう絹旗。これ以上の刺激は本当にヤバイかも」

575: 2011/09/16(金) 23:43:02.37 ID:VhRyWjoI0
浜面「よし!じゃあみんなも揃ったということで、駅まで行くとしようぜ」

こうして、『アイテム』+一方通行のメンバーは駅へと向かい始めた。

絹旗「一方通行!お祭り楽しみですね♪」

一方通行「あ…あァ」

一方通行(やべェ…まともに顔も見れねェぞ)

滝壺「なんか、さっきからずっと浜面の視線を感じるのは気のせいかなぁ」

浜面「へへへ…むしろずっと見ていたいくらいだぜ!!」

麦野「浜面あんた正直すぎ」

一方通行「……」

一方通行(ヤツの性格が羨ましくなってきた)

浜面「へっへっへ!//」

一方通行(いや、やっぱ羨ましくねェ)

578: 2011/09/16(金) 23:45:15.37 ID:VhRyWjoI0
一方通行(まァ、いつまでも意識しちゃいられねェからな。徐々に慣らしていくとすっか)

しかし…。本当に可愛いなと、絹旗を見るたびに思う一方通行だった。

一方通行(それにしても…人多いな)

駅に近づくたび、歩く通行人の数はどんどん増えていってる気がする。

浜面「こんだけ人が多いと、さすが祭りって感じがするよなぁ!」

滝壺「浴衣の人もあちこちに見かけるね」

一方通行「……」

今まで“日常”というものに対し、ほとんど触れることがなかった一方通行だが…
なるほど。これが黄泉川の言っていた“日常”か。もっとも、年に1、2回あるかどうかの祭りを
それに当てはめるのもどうかと思ったが…。自分にとって馴染みのない世界であることは間違いない。

絹旗「電車も凄い混みそうですね…はぐれないようにしましょう!」

そんな彼女を横目で見ながら、これからの“日常”に思いを張り巡らす一方通行だった。

579: 2011/09/16(金) 23:49:43.53 ID:VhRyWjoI0
麦野「着いたわね」

電車で駅をまたぐこと数十分。ついに一方通行たちは祭り会場へと着いた。

一方通行(すげェ屋台の数だなァ…)

滝壺「花火が上がるのって、確か8時だよね?」

浜面「あぁ。今は6時だから…それまでの2時間屋台でも回ろうぜ」

絹旗「待ってましたー!」

麦野「そうと決まれば早速行きましょ!」

みんなノリノリだった。

一方通行「……」

絹旗「何ボーッとしてんですか一方通行!行きますよっ!♪」ガシッ

一方通行「お、おう」

彼女に左手をつかまれる一方通行。

一方通行(…そうだな。俺も早くこういう空気に慣れて、こいつと楽しまねェとな)

580: 2011/09/16(金) 23:53:25.39 ID:VhRyWjoI0
浜面「じゃあまず最初は―」

麦野「かき氷!」

浜面「えぇ!?いきなり飲み物から入るのか??」

麦野「だって喉渇いたでしょー?家からここまで来るのに、結構私ら歩いたし」

滝壺「確かにそうかも」

絹旗「どうします一方通行?」

一方通行「まぁ、いいンじゃね」

浜面「よし!じゃあ俺がみんなの分買ってきてやるから、ほしい種類言ってくれ!」

浜面(優しい気配りができる俺!ってことで滝壺に高感度アップ大作戦だZE)

絹旗「マジですか?私たちの分まで全部お金支払ってくれるんですか!?浜面って…良い人だったんですねっ」

浜面「いや、持ってくるだけだからッ!!金は自分で払えよッ!!?」(ただし滝壺は除く)

582: 2011/09/16(金) 23:56:59.38 ID:VhRyWjoI0
みんなはかき氷屋さんの前に行く。

麦野「へー。やっぱ祭りってこともあって種類は豊富にあるのね~」

滝壺「じゃぁ…私はこれにしようかな。絹旗は決めた?」

絹旗「はい!」

一方通行「俺も大体は決めたぜ」

麦野「同じく♪」

浜面「みんなOKだな?じゃあ言ってくれ!!」

滝壺「イチゴ」

麦野「マンゴー」

絹旗「ブルーハワイ!」

一方通行「メロンー」

浜面「よりにもよって全員違うのかよ…覚えにくいだろうが…っ!」(ただし滝壺のイチゴは覚えた)

584: 2011/09/16(金) 23:58:30.84 ID:VhRyWjoI0
なんだかんだでかき氷を買ってくる浜面。

麦野「サンキュー浜面。はい、お金」

一方通行「俺も払っとくぜ」

絹旗「200円、200円と…」

滝壺「ええっと、私も―」

浜面「滝壺は支払わなくていいから!!」

麦野「え~何よそれー。恋人特権ってやつぅ?ブーブー!」

浜面「ブーブー言ってもダメだ!」

絹旗「ガーガー!」

浜面「いや、意味分かんねえから」

滝壺「ベーベー!」

浜面「滝壺なら許す//」

麦野&絹旗「えー」

一方通行(なァにこれ)

587: 2011/09/17(土) 00:03:37.45 ID:MQk6mSLi0
麦野「うっめー!喉渇いてたから尚更。祭り効果ってのもあるかも♪」シャリシャリ

浜面「だな。こういうときの飲食ってのは大体そうだ」

一方通行「……」シャリシャリ

表立って顔には出さなかったものの…。一方通行も同様には感じていた。
ただ、それはお祭り特有のにぎやかさっていうよりは―

絹旗「やっぱ祭りといえばかき氷ですよねっ!」

“彼女”の存在が大きかったのかもしれない。

絹旗「あ、そうだ。超いいこと思いついちゃいました~!」

一方通行「?」

絹旗「一方通行!問題です。ブルーハワイとはズバリ、何味でしょうか?♪」

一方通行「あの、何でいきなりクイズが始まってンだ?」

絹旗「いいからいいから!で、分かりますか?」

一方通行「……」

一方通行(分かんねェ…っ)涙目

588: 2011/09/17(土) 00:07:44.73 ID:MQk6mSLi0
絹旗「正解は“ソーダに近い味”ですっ!」

一方通行「近い…?」

絹旗「厳密に言えば、“ソーダ味”ではないということですよ。
香料はレモンやオレンジが使われてたりするみたいですしね」

一方通行「そうだったのか。ブルーハワイについて勉強になったぜ」

絹旗「ハワイアンブルーとも言うらしいですよ」

一方通行「また一つ勉強になったぜェ…」

絹旗「意外とこれ、知らない人多いんですよ?『分かんない』って顔してた一方通行は超可愛かったですっ♪」

一方通行「なるほどォ。つまり俺はからかわれたってワケか」ガックシ

絹旗「がっかりしてる一方通行も面白いです♪」

一方通行(…俺はどう反応すりゃいいんだァ?)

困惑する一方通行だったが、こういう絹旗との会話を『嫌』とは思わなかった。
楽しそうにはしゃいでる彼女を見るだけで、そんな感情は吹き飛んでいた。

589: 2011/09/17(土) 00:12:40.59 ID:MQk6mSLi0
麦野「さぁて!かき氷の次といえばー?」

滝壺「そろそろ食べ物も欲しくなってきたよね」

絹旗「どれにしましょうか?」

浜面「屋台なんて腐るほどあるからなぁ…。悩んでたら、それだけで日が暮れちまいそうだ」

滝壺「もう日は暮れてるよ?浜面」

浜面「しまった!」

麦野「バカね」

絹旗「バカ面ですね」

一方通行「…はァ」

とりあえず、このままコントをしてても埒が明かない。

一方通行「あのよォ。こういう祭りに定番っていうか、オーソドックスなヤツ頼めばいいンじゃね」

麦野「定番?定番といえば…たこ焼きねッ!!」

浜面「えっ、定番といえば焼きそ―」

絹旗「ですよねー!あっ、たこ焼き屋ならあっちにありますよ!」

滝壺「私もお腹すいてきちゃった。久しぶりのたこ焼き…楽しみだなっ」

593: 2011/09/17(土) 00:17:49.36 ID:MQk6mSLi0
浜面「……」

一方通行「その、何だ。元気出せや」

浜面「いいさ。滝壺も欲しいって言ってんだ。俺が反対する理由なんか…どこにもねえよ。ふっ」

そう言って、麦野たちの後を追いかける浜面。その背中は…ひどく寂しく見えた。

……

たこ焼きを買い終えた一行。

絹旗「…ぁ」

一方通行「?どうした?」

絹旗「なんたる失態…っ!」

一方通行「??」

絹旗「先ほどのかき氷、すっかり一方通行に『あ~ん♪』するの忘れてました…」

一方通行「ま、まさか―」(いや、さすがに衆人環視の中それはねェだろう)

絹旗「はい一方通行!アツアツのたこ焼きですよっ!あ~ん♪//」

一方通行「」

麦野「あちゃー。仲までアツアツときちゃったか~」

596: 2011/09/17(土) 00:23:05.94 ID:MQk6mSLi0
浜面「くぅ~!俺も滝壺に『あ~ん♪』されたい!ってことで滝壺!ここは一つよろしく頼―」

麦野「滝壺ならいないわよ」

浜面「え?何で?どこ行ったの??」

麦野「慌てなさんなー。すぐ戻ってくるから」

滝壺「浜面っ!」

麦野「ね?」

浜面「ホントだ!?滝壺、お前どこ行って―」

滝壺「…これ。焼きそば」

浜面「え…?ど、どうして??」

滝壺「さっき浜面、定番は焼きそばだー!って言いたかったんでしょ?だから…買ってきたの」

浜面「た、滝壺…お前…っ」

滝壺「浜面にも。好きなもの食べてほしいから///」

浜面「やべ、今までが結構ひどい展開だっただけに涙でそう」

601: 2011/09/17(土) 00:29:05.04 ID:MQk6mSLi0
絹旗(滝壺…凄まじいほどの超“気配り上手”ですね。私も見習いたいもんです)

絹旗「というわけで一方通行!あ~ん♪///」

一方通行(こ…これで4個目か…ッ)

うろたえながらも、恋人のそんな愛情表現に…内心は嬉しい一方通行なのであった。

……

一通り食べ終えた後、麦野・絹旗・滝壺の3人はくじ引き屋へと足を運んでいた。
何やら女性陣だけで運試しをしたいらしい。

一方通行(なンというか、解放された感じだな…)

もちろん絹旗と一緒にいることは楽しいし、かけがえのない大切な時間だと思ってる。
ただ、たまには別の空気を入れるのも悪くはないだろう。

浜面「一方通行ー!」

同じく残された悪友、浜面が一方通行へと呼びかける。

浜面「焼きトウモロコシとフランクフルト、どっちがいい?」

一方通行「は?」

606: 2011/09/17(土) 00:35:01.84 ID:MQk6mSLi0
浜面「いや、腹が減ってんじゃねえかと思ってさ」

一方通行「……」

一方通行「何で分かった?」

浜面「そりゃお前、男と女じゃ食べる量が違うからなぁ」

一方通行「…まァ、そうだな」

浜面「女の子の食事ペースだと腹は膨れん。かといって、俺らだけ目の前で追加して食うってのも
なんか感じ悪いしな。だから…こういう合間を縫って食べとくって話さ!で、どっちがいい?」

一方通行「焼き鳥で」

浜面「焼き鳥屋はこの辺ねえから!!っつうか、さっきの二択から選べよッ!!?」

一方通行「冗談だバカタレ」

浜面「俺さ、今日バカバカ言われまくってる気がする」

一方通行「フランクフルトで」

浜面「スルーかよ!!」

609: 2011/09/17(土) 00:40:34.35 ID:MQk6mSLi0
浜面「っつーわけで、買ってきたぜッ」

一方通行「おォ、サンキューな。500円も渡しとく」

浜面「……」

一方通行「ン?どうした。食べねェのか?」

浜面「いや…お前がまさか“礼”を言えるなんて、いつそんな人徳が具わったんだと」

一方通行「ガキですかァ?俺は?」

一方通行(これ、以前も誰かに言われた気がすンぞ…)

浜面「しかも、さっきは俺に“冗談”も言いやがったし。お前…なんか変わったなっ!」

一方通行「それは褒めてンのか?バカにしてンのか?」

浜面「もちろん良い意味に決まってんだろーがよ!アレか?絹旗の影響か?」

一方通行「それに関しちゃ打ち止めの影響のがでけェよ。ただ…」

浜面「…ただ?」

一方通行「俺が“冗談”なんつうもンを言い出したのは、間違いなくテメェら『アイテム』のせいだ」

浜面「?冗談やボケ、ツッコミが飛び交う愉快なアイテム…?」

一方通行「そうだよこの常時ボケ野郎」

614: 2011/09/17(土) 00:45:50.60 ID:MQk6mSLi0
浜面「ま、待ってくれ!別に俺一人がボケってわけじゃない!!麦野だってたまにボケ側にくるッ!!」

一方通行「ンな裏事情どうでもいいわ」モグモグ

浜面「畜生…!お前がそんな態度なら、こっちだってトウモロコシがつがつ食ってやる!!」ガッガッ

そういうわけで、おいしく平らげることができた。

……

そして待つこと数分。

一方通行「…お」

絹旗「一方通行!お待たせしましたーっ!」

麦野「あああぁー!!もうやってらんねぇッ!!」

くじ引きを終えた麦野たちが戻ってくる。

浜面「…?何で麦野は機嫌悪いんだ?」

滝壺「5回やって全部はずれだったから」

浜面「そりゃまた…」

麦野「しかもはずれ賞はポケットティッシュって、なめてんのか?ここはデパートかっつうのッ!!!?」

615: 2011/09/17(土) 00:48:17.36 ID:MQk6mSLi0
浜面「本当にお疲れだったな麦野…。滝壺はどうだったんだ?」

滝壺「2等当たっちゃった」

浜面「え、マジで!?」

滝壺「でも側にいた子供にあげちゃった」

浜面「何で!?」

絹旗「なんか子供たちの間で流行ってるカードゲームだったみたいで。
しかも、超レアなカードが入ってたとか入ってないとか!」

滝壺「私はカードゲームしないから…。子供たちに使われた方が、そのカードだって幸せだもんね」

浜面「滝壺さん天使すぎや」

絹旗「私は3等だったんですけど…の割には、ただのこんなお菓子袋です。というわけで一方通行!」

彼にそのお菓子袋を手渡す絹旗。

一方通行「え…?」

絹旗「打ち止めちゃん…お菓子大好きでしたよね?今日のお土産だと思って、超持って帰っちゃってください!」

一方通行「最愛…。分かった。ありがとな」

確かに打ち止めは喜ぶだろう。番外個体とオヤツを賭け、真剣勝負をしてたくらいだ。

一方通行(…ン?ということは、番外個体もお菓子が好き…てことだよな?ヤツにも分けてやるとすっか)

617: 2011/09/17(土) 00:50:10.70 ID:MQk6mSLi0
せっかくの祭りだ。他にも打ち止めに買って帰れるものはないか…と辺りを見渡していたところ―

一方通行(おォ、あのお面とかいいかもしれねェ)

売り場に近づき、電気ネズミのお面を手に取る一方通行。

一方通行(別にあいつが電気を発するから、これを買う…ってワケではねェが。
子供たちに人気のキャラクターみてェだし、たぶん気に入るンじゃねェかな)

一方通行「これ、何円だァ?」

店主「1000円だよ」

一方通行(え?高くね??)

だが…打ち止めのためにも背に腹はかえられない。これも祭り価格だと思ってあきらめることにした。

一方通行(さァて、みんなは…ぁン?)

先ほどのお菓子袋にお面を入れ、店を出た一方通行だが…4人の姿がない。いや、“彼女”はすぐ見つかった。

絹旗「あ、一方通行!もう…どこ行ってたんですか?みんなあっちに行っちゃってますよ?」

一方通行(しまった。そういやお面を買いに行くって告げてなかったンだっけか…)

己のミスを反省し。絹旗と一緒に、浜面たちが向かった方へと歩き出そうとした―その瞬間―

絹旗「!一方通行ッ!!」

620: 2011/09/17(土) 00:52:43.63 ID:MQk6mSLi0
一方通行「!」

とっさに絹旗の手をつかむ一方通行。

絹旗「あ、危なかったです…っ!思わずはぐれるところでしたっ」

一方通行「何だァ…?この人の多さはよォ??」

人波が凄いことになっていた。祭りだということもあって、元々人が多かったのには違いないが…
一方通行たちが会場に着いた6時代と比較し、人の数はさらにその倍になってるように感じられた。

絹旗「気付かないうちにこんなに人が増えてたんですね…。見てください一方通行」

携帯を突き出す絹旗。その待ち受けには『19:14』と書いてある。

絹旗「花火が上がるのが8時ですから、そう考えたらこの状況も不思議ではないですね」

一方通行「あァ…なるほどな」

祭り最大のイベントとも言える花火を、みんな見に集まってるということだろう。

絹旗「しかし…どうしましょう。麦野たちとはぐれちゃいました」

一方通行「そうだな…」

621: 2011/09/17(土) 00:55:09.31 ID:MQk6mSLi0
この人波だ。見つけ出そうと思って見つけ出せるものではない。ましてや、偶然出会う可能性など
ゼロに等しいだろう。では、メールで何か目印となるような場所に集合するよう促すのはどうか?
しかし…それでもどうしてもこの“人波”がネックとなってくる。もうすぐ花火が上がる時間ということも
あって人は増えていく一方。そんな状況で、“その場所”に到達するまで果たして何分かかるのか。
到達したとしても、その人混みで彼女らを見つけ出せるという保障もあるのか。

一方通行(一番手っ取り早ェのは…)

そもそも目印となるような場所といっても、一方通行も浜面もみんなここの周辺地理に詳しいわけではない。
携帯で周辺情報を探って目星をつける方法もあるが、何より花火が上がるまでに時間がない。メールで
やり取りをしてる間に、あるいは探してる最中に『花火が上がってました』という事態だけは避けたい。
となると―

一方通行(電極のスイッチをONにするしかねェ…よな?)

もちろん、ベクトル操作でもって人波を操作するのはご法度だ。以前、第2位の垣根帝督と戦った際、
同じくこのような街中心部で…誰一人としてケガ人が出ないよう、事態を誘導したという前例はある。
これだけの人数でも、一方通行のそんな高等技術をもってすればできないことはない。ただ…個人的に、
“友人と会うため”という、そんなプライベートな理由で大衆を巻き込みたくはなかった一方通行だった。

一方通行(空中移動でもすっか…)

となれば、もはやこれしかない。高速で宙を移動し、上空から連中を見つけるという…
まさに二重の意味で“ぶっとんでる”としか言いようのない、そんなやり方で。ただ、これにも問題はある。
衆人環視の中、空を飛び回るというのは人としてどうなのだろうか。見てる彼らからすれば、せっかくの
お祭り気分が台無しだろう。ある意味物珍しいかもしれないが…。というか、単純に恥ずかしくてできない。

一方通行(いや、ここは恥を捨ててでもやるしかねェのか…?!)

622: 2011/09/17(土) 00:57:10.59 ID:MQk6mSLi0
そんな葛藤をしている彼に、絹旗がささやいた。

絹旗「…いいですよ一方通行」

一方通行「ァ…?」

“いい”って何がいいのだろうか。そもそも、その“いい”は肯定の意味なのか否定の意味なのか。

絹旗「今、能力を使ってでも麦野たちと会おうって…そう考えてくれてたんですよね?でも、それはダメです」

一方通行「…??」

言ってることがよく分からない。

絹旗「この花火大会って、毎年数十万規模の人が集まるんです。学園都市の総人口的に考えれば…
その凄さが分かりますよね?となれば、当然悪い奴やら暗部の人間もウヨウヨその中に混ざってるわけです。
ある意味で厳戒態勢とも言える状況なんですよ。その証拠に、あちこちに防護服の人が出張ってると
思いません?何か騒ぎが起こったとき、いつでもそれを迅速に解決できるような態勢になってんです」

一方通行(そういや…所々にアンチスキルがいるのな)

絹旗「つまり何が起こるか分からない。そんな状況で、私はあなたに電極のバッテリーを
消耗してほしくはないんです。もちろん…あなたは超強いし大丈夫だとは思ってます。
それでも…っ!私は、あなたの“彼女”として心配なんです!そこは分かってください…っ」

一方通行「最愛…お前…」

623: 2011/09/17(土) 00:59:12.62 ID:MQk6mSLi0
絹旗「だから、麦野たちとは花火が終わった後にでもゆっくり合流するとしましょう!
それまでは…二人でお祭りを楽しみませんか?//」

一方通行「…そこまで心配されちゃ何も言えねェだろが。分かった。しばらくは…二人でいような」

絹旗「はいっ!//」

……

絹旗「あ、向こうにイカ焼き屋があります」

一方通行「イカ焼き好きなのか?」

絹旗「好きではあるんですけど…。さっきたこ焼きを食べたせいですかね?なんか反応しちゃいました」

一方通行「たこ焼きからイカ焼き…?」

絹旗「だって、イカもタコも超似てるじゃないですかっ」

一方通行「確かにそうだな」

絹旗「…!」

一方通行「ン?どォした?」

絹旗「イカとタコって似てるのに、どうしてイカ焼きはたこ焼きほどメジャーになれなかったのかなと…」

一方通行「…そういや何でだァ?」

624: 2011/09/17(土) 01:01:10.47 ID:MQk6mSLi0
絹旗「うーん…」

一方通行「うーむ…」

結局、いくら考えても答えは出なかった。

絹旗「…やめましょう。時間の無駄です」

一方通行「だな」

絹旗「他の店も見てみましょうか!」

一方通行「あれ?イカ焼きは買わねェの?」

絹旗「あ、いえ。話題に出しただけで最初から食べようとは思ってませんでしたから」

一方通行「イカ涙目じゃねェか」

絹旗「私…今は甘いものを食べたい気分なんです」

一方通行「屋台で甘いもンって何があったっけか」

絹旗「っと、ちょうどいいところに!リンゴ飴がありました!!」

一方通行「リンゴ飴…?」

絹旗「あ、あの…?まさかリンゴ飴を知らないんですか?」

628: 2011/09/17(土) 01:07:10.69 ID:MQk6mSLi0
一方通行「知ってる。リンゴ味の飴なンだろ」

絹旗「いや、それは確かにそうなんですが…。じゃあリンゴ味のペロペロキャンディーもリンゴ飴ですか?」

一方通行「そうなンじゃねェのか」

絹旗「全然違いますよ一方通行…。ほら、ちゃんと実物を見てください!」

そう言って店へと近づく二人。

絹旗「生のリンゴに箸が刺してあって、その周りを飴でコーティングしてあるんです」

一方通行「そうだったのか…」

絹旗「本当に知らなかったんですか!?」

一方通行「どうも、俺はこういう“常識”には弱くてよォ。良い社会見学になッたぜ」

絹旗「もう。しっかりしてくださいね!」

一方通行「おう!」

店員「あの…後ろの人が混んでるんで、早くお金のほうをお願いしたいんですが…」

絹旗「すみません」一方通行「すンません」

629: 2011/09/17(土) 01:12:40.75 ID:MQk6mSLi0
そういうわけで、リンゴ飴を買った絹旗。

絹旗「あっまーい♪やっぱお祭りのリンゴ飴は最高ですっ!」ペロペロ

一方通行「良かったなァ」

絹旗「一方通行も買えばよかったのに」

一方通行「あんま、甘いもンは好きじゃなくてな」

絹旗「好き嫌いは超ダメですよ。一方通行も、ほらっ!」

一方通行「お、オイ!?」

口にリンゴ飴を突っ込まれる。

絹旗「どうですか?///」

一方通行「…甘かった。っつうか、これ…っ!」

絹旗「間接キス…ですね//」

一方通行「確信犯かァ!!?」

633: 2011/09/17(土) 01:17:15.01 ID:MQk6mSLi0
絹旗「あらあら、一方通行」

一方通行「何いきなり口調変えてンだテメェは」

絹旗「お口の周りが真っ赤♪」

一方通行「え…?」

絹旗「手鏡もってるんで、これで見てみてください!」

言われた通り見てみる。

一方通行「なンじゃこりゃァ!!?」

お口の周りが真っ赤だった。

一方通行「どういうことなンだこれはよ…」

なんだこの鏡に映ってる自分は。ピ工口か?

絹旗「リンゴ飴って色付けのために食紅が混ぜてあるんで…。
むしゃぶりついたりすると、こんな感じに超赤くなっちゃうんです」

一方通行「マジか…。今度から注意するぜ―とでも言うと思ったか?突っ込ませたのはお前だよな?」

絹旗「だから、責任もってハンカチでふいてあげますっ!顔をこっちに向けてください///」

一方通行(何このプレイ)

636: 2011/09/17(土) 01:20:15.60 ID:MQk6mSLi0
一方通行(でも…悪くなかった)

正直な感想だった。実際、優しく丁寧にふいてくれる絹旗のその仕草は…とても愛くるしいものだった。
彼女にリードを取られてばかりの一方通行だが…。そんな彼女も、同時に魅力的だと感じている自分に気付く。

一方通行(まったく、懐柔されてやがンな俺…)

これからも、このおてんばなお姫様に振り回されンだろうな。つくづくそう思う一方通行だった。

??「なぁ御坂!行きたいところとかあるか?」

??「と…特にない」

??「どこにも行きたくないのか??」

??「そ、そうじゃない…けど!ってか、あああああー!!ちょっと落ち着いて考えさせて!!//」

一方通行(こ、こいつらは…)

どうやらそんな感慨深い時間も終わりそうだった。
目の前にどこぞやで見たツンツン頭と、同じくどこぞやで見た茶髪の少女がいたから。

上条「お!一方通行と絹旗じゃねえか!お前らも祭りに来てたんだなっ!」

そして気付かれた。

絹旗「あっ!御坂さんに上条さんじゃないですか!!」

美琴「き、絹旗さん…!?それと、一方通行!!?」

640: 2011/09/17(土) 01:24:27.51 ID:MQk6mSLi0
上条「一方通行は…その様子だとデートみたいだな。絹旗とは上手くやってるか?」

一方通行「テメェに心配される言われはねェ」

上条「相変わらずの一方通行さんですね…」

一方通行「そういうそっちこそ、デートの最中だったンだろうがよ」

絹旗「ですよねー。御坂さん、結局上条さんをデートに誘うの…成功してんじゃないですかっ♪」

美琴「ちょ、今ここでそれは―!?」

上条「え…!?御坂、お前…俺をデートに誘うつもりだったのか…?」

美琴「そ、それは、だ、だからその…っ!!?//」

一方通行「…超電磁砲がテンパってやがンぞ」

絹旗「?どういうことです?デートじゃないんですか?」

美琴「こ、こいつとは!!本当に偶然!偶然出会ったのよッ!!始めは初春さんたちと来てたの!!」

絹旗「でも、現に今は二人っきりじゃないですか」

上条「そ、それはだな、いろいろ複雑な理由があって…っ!」

時間は今から30分前に遡る。

641: 2011/09/17(土) 01:28:41.90 ID:MQk6mSLi0

……

7時。とある集団が会場へと着いていた。

青ピ「いや~!やっぱ女の子の浴衣姿ってのは最高やな!!//」

土御門「それだけでも来る価値があるってもんだにゃ~!//」

上条「……」

青ピ「どうしたんカミやん?そんな沈んだ顔して」

土御門「この光景を前に何もリアクション無しとは、ちょっと男としてやばいと思うぜい」

上条「…いや、何で上条さんはこんなところにいるんだろうと自問自答してたところなのですよ…」

土御門「オイオイ、カミやんは何にでも理由を求めるタイプかぁ?それは、祭 り だ か ら だッ!」

青ピ「そうそう!理由なんかそれで十分やでー」

上条「いやいやいやいやッ!!お前らが俺連れてきたのは、どう考えても理不尽な理由だろ!??」

青ピ「カミやんがいたら ナ ン パ の成功率が上がる。これがどないしたん?」

上条「だから…その詐欺まがいなキャッチッフレーズは一体どっからやってきたのかと上条さんはですね…」

土御門「上条建設の誇る名声は、今や天界にまで届いてるんだぜい?自信を持てよ!一級フラグ建築士っ!」

上条「それが意味分かんねえって、もうさっきから何回言ったんだろう…」(というか、上条建設って何…?)

643: 2011/09/17(土) 01:33:21.96 ID:MQk6mSLi0
青ピ「というわけでー、おおっ!!早速いい女の子発見したで!!」

土御門「でかした!カミやん、臨戦準備は整ったか?」

上条「って、おい!?もうナンパ始めんのかよ!?目が血走りすぎってレベルじゃねえぞッ!??」

土御門「あのなぁカミやん…。俺は昨日、妹に一緒に祭りに行こうと誘い、そして断られた」

上条「…え?いきなり何を語り出して―」

土御門「舞夏はな、言ったんだ。『友達と行くから』って。この…兄の気持ちが分かるかカミやんッ!!?」

上条「いや、分からねえし!!分かろうとも思わねえからっ!!」

土御門「だから…俺は決めた。この持て余したリビドーをッ!今日のナンパで放出してやろう!ってな!!」

上条「なんかそれ、理由としては最低な気がするのは気のせいでせうか?」

青ピ「カミやん」

上条「な、何だ改まって?」

青ピ「ナンパにな、合理性ってもんを求め出したらオシマイやで?」キリッ

上条「犯罪にだけには走らないようにな…」

646: 2011/09/17(土) 01:36:45.11 ID:MQk6mSLi0
青ピ「あぁ!!気付けばさっきの女の子たちが…もうあんな遠くに!!」

土御門「残念だが、これ以上カミやんを説得してられる時間はないぜよ!!」

青ピ「どうやらこれは…ワイが切り込み隊長で行くしかないって流れやな…?」

土御門「あ、青髪ピアス…お前…っ!」

青ピ「なぁに、安心し。氏にはせんよ。ただ、己の全てをぶつけるだけ…ただそれだけの話や」

土御門「…ふっ」

青ピ「土御門…?」

土御門「お前にだけ良い格好させると思ったか?俺も助太刀するぜ」

青ピ「…いいんか?タダでは戻ってこれんかもしれんのやで?」

土御門「そんなこと、百も承知…っ」

青ピ「!ワイは…良い戦友をもったんかもしれんな…っ」

土御門「さぁ行こうぜ青髪!チャンスの女神は、いつまでも俺たちを待ってはくれないぜい!!」

青ピ「せやな!!ワイらはその瞬間を…ただ光のように全力で生きればいいんや!!」

上条(よくここまで熱くなれるなこの人たち…)

648: 2011/09/17(土) 01:39:53.00 ID:MQk6mSLi0
土御門「ところで、青髪はあの4人の中で誰狙いなんだ?」

青ピ「ワイはあの水色浴衣着てる…黒髪ロングのコやな!」

土御門「俺は…頭に花がついてる女の子かにゃー♪」

青ピ「え?花ってお前何言うて…ってホントについとるし!?何やアレ…?」

土御門「青髪。今は“花”なんてどうでもいいんだ。まぁ、興味がないと言えばウソになるがな…。
今俺たちが知らなきゃいけないのは“花”じゃなく、女の子たちのほうだッ!!違うか!!?」

青ピ「…あぁ。まったくもって正論やな土御門!!」

土御門「じゃあ目標が定まったところで…。準備はいいか青髪…?」

青ピ「ワイなら…いつでもOKやで」

土御門「行くか!!」

青ピ「行きましょか!!」

上条(あれ?あそこにいる4人って…)

もはや嫌な予感しかしなかった。

652: 2011/09/17(土) 01:44:58.13 ID:MQk6mSLi0
土御門「ちょっと、そこの可愛いお嬢さん方!」

美琴「…え?私たちのこと??」

土御門「こんな祭りだ!もしよければ…俺たちに何かおごらせてくれないか?特に、そこの花の女の子!!」

初春「は、花って私のことですかぁ??」

佐天「こ、これは―!!初春、これはナンパだよ!私たち、ナンパされてんだよ!!//」

青ピ「そうやで!黒髪ロングの美人で可愛いお姉さん!!」

佐天「わっ//美人で可愛いだなんて…//」

黒子「佐天さん!おだてに乗せられてはなりませんわよっ!」

青ピ「何でも俺らに頼んでもらってええんやでぇ!例えば向こうにあるチョコバナナとかどうやろ?」

佐天「ちょ、チョコバナナ…」ゴクッ

黒子「佐天さんッ!」

美琴(…なんかこの二人、どっかで見たことあるんだけど…)

655: 2011/09/17(土) 01:46:51.24 ID:MQk6mSLi0
美琴(あ―)

思い出した

美琴(こいつら…!私が海原に絡まれてたとき、上条当麻と一緒に歩いてた…っ!!)

青ピ「チョコバナナがダメなら、あっちのフランクフルトでも―」

美琴「あんたたち…上条当麻の知り合いね?」

土御門「?そうだが、それがどうかしたかにゃぁ?」

青ピ「!もしかしてカミやんのこと知ってんの!?それは話が早い!!カミや~ん!出てくるんや!!」

上条(ば、バカ!!こっちを向くなっ―、って、気付かれたー!!?)

土御門はいざ知らず。青ピは美琴が浴衣姿のため、あのときの常盤台のお嬢様だということに気付いていない。

美琴「やっぱりあんたもいたのね…ッ!」ビリビリビリ

上条「ま、待て!これは誤解だ!俺はこのナンパ劇とは無関係なんだッ!!」

美琴「へー。友達と一緒に祭りにきてて、そのお友達がナンパしてるのに
自分は無関係??随分とまぁ、都合のいいこと言うのね?」ビリリリリリリ

上条「話せばわかるっ!!というわけで土御門に青髪!!こいつらにちゃんと説明を…って、いない…だと?」

蒸発した土御門&青髪ピアス。脈ナシと判断した彼らは、再び新たな出会いに向け旅立っていたのだった。

658: 2011/09/17(土) 01:49:23.75 ID:MQk6mSLi0
上条(結局、いつも不幸なのは上条さんってオチなんですね…)

美琴「さぁ!!話してもらうわよっ!!」

……

上条「―ということです。信じてもらえたでせうか?」

美琴「上条建設とか言われても…あんた会社でも経営してたわけ?」

上条(う…話す箇所を間違えたのかもしれない)

佐天「それにしても御坂さん!この人と仲良いんですねっ!」

御坂「は、はぁ!?別に仲良くなんか…ないわよ!」

初春「でも、御坂さんがこんなに男の人と話してるの、私初めて見ましたよ?」

美琴「そ、そんなんじゃ…ない…んだからっ//」

黒子(これしきのことで赤面とは。お姉さまも、かなりこの殿方に入り浸ってるんですわね…はぁ…)

子供「お母さーん!あの緑のお面買ってー!」

母「もう…しょうがないわね」

美琴(えっ…?!緑のお面ってまさか―)

659: 2011/09/17(土) 01:52:34.18 ID:MQk6mSLi0
美琴(や、やっぱりそうだ!あのお面はまぎれもなくGE☆KO☆TAだわっ!!)

初春「?どうしたんですか御坂さん?」

美琴「うっ…な、何でもないのよ初春さん」

美琴(まずい…このメンツじゃゲコ太のお面なんて買えないわ!?でも買いたい…一体どうすれば―)

上条「ええっと…。俺はもう帰ってもよろしいでせうか?」

美琴(そうだ!こいつをダシにすれば…っ!!)

美琴「さ、佐天さん。ちょっといいかしら…?」小声で

佐天「?」

美琴「ちょっと私、あいつといろいろとトラブっててね…その辺の話をいい加減キッチリしときたいの。
だから佐天さんたちは向こうのほうへ行って…先に遊んでてくれないかな?私は、後で追い付くからさ!」

佐天「っ!了解です!」

佐天(そっかー!やっぱり御坂さんって上条さんって人のことが好きなんだなぁ。二人っきりになりたいなら、
最初からそう言えばいいのにね。じゃあ…邪魔者は退散するとしますか!ファイトですよ御坂さん!)

“結果的に”空気を読んだ佐天さんであった。

661: 2011/09/17(土) 01:55:50.95 ID:MQk6mSLi0
佐天「初春!白井さん!あっちに面白いものがありますよ!行きまshow!!」

ガッ

二人の手を引っ張る佐天さん。

初春「ちょ、ちょっと佐天さん!?急にどうしたんです??」

黒子「面白いものってなんですのー!?」

佐天「よく分かんないけど、とにかく面白いものがあるんですっ!!」

初春「意味分かんないですよ!?」

黒子「ま、待ってくださいですの佐天さん!!お姉さまが置いてけぼりに―!」

佐天「御坂さんもすぐ来るそうですから、私たちは先に行きましょう!」

佐天(ホントは空気読んでもう会わないかもだけどねっ)

黒子「そ、それでも!!私はお姉さまと離れ離れになりたくは…ッ!て、手を離してくださいましー!!」泣

佐天「レッツゴー♪」

彼女に引きずられていく初春と黒子。意外にも佐天さんの腕力は強かった。

664: 2011/09/17(土) 01:57:46.58 ID:MQk6mSLi0
美琴「……」

美琴(佐天さんって、なにげに凄いコなのかもしれないわね…。と、とにかく!後でちゃんと感謝しないと!!)

上条「あ、あの…俺はどうすれば―」

美琴「しばらくあっちを向いてなさいッ!!」

上条「なぜ!?」

美琴「いいから!!」

上条「ってか“あっち”ってどっちだよ!?」

美琴「つ…つまり私のほうを見るなってことよっ!!」

訳が分からない上条だったが…。とりあえず美琴の言うことに従うことにした。

美琴(…よし!今がチャンスね!!)

これでやっと念願のゲコ太が…我が手中に…っ!嬉しさを噛みしめながらお面屋へと突撃する美琴。

そして―!

店主「残念だがお嬢ちゃん。さっきの客でゲコ太仮面は売り切れちゃったんだ」

665: 2011/09/17(土) 02:00:03.54 ID:MQk6mSLi0
美琴「……」

美琴「は?」

店主「他のお面なら余ってるんだけどね…。良いのあるよ?買ってくかい?」

美琴「い、いえ、いいです…お気づかいありがとうございます…」

店を出る美琴

美琴「……」

美琴(ど う し て こ う な っ た)

頭の中が真っ白になる

美琴「く…っ!」

一瞬泣きそうになるが、その涙はこらえる。無いものは無いのだ…どうしようもない。それより―

美琴(佐天さんたちを探さないと…っ!)

頭を切り替え、彼女らの向かったほうへと駆け出した美琴。しかし…いくら探しても3人は見つからなかった。
周辺部も隈なく探した。なぜだ?この短時間でそんな遠くまで行けるわけないのに…と途方に暮れる美琴だった。

上条(あの、いつまで向こうをむいてればいいんでせうか…?)

そして放置された上条だった。

668: 2011/09/17(土) 02:05:30.12 ID:MQk6mSLi0
美琴「……」

美琴「どうして…こんなことになっちゃったのかな…」

ゲコ太も失い、仲間をも失った

美琴(私…全てを失っちゃった)

人の行き交う波の中を ただ茫然と立ちつくす御坂美琴だった

美琴「…っ!」

美琴(そうだ…!あいつなら…まだあの場所に…っ!?)

……

上条「で。やっと戻ってきてくれたんですね御坂さんは」

美琴「…律義にも、あんたはずっとここで待っててくれたのね…っ!」

上条「いや、お前がそう言ったんだろ」

美琴「…え?私は『あっちを向いてて』って言っただけなんだけど…」

上条(!ということは移動は自由だったのか!?しまった!!)

美琴「まだいてくれて…良かった。私、一人になるところだった…//」

上条「御坂…?」

672: 2011/09/17(土) 02:09:40.43 ID:MQk6mSLi0
普段勝気な美琴のその涙目に…思わずドキっとする上条。

…そういえば今日の彼女は綺麗だった。白の花柄を添えた緑の浴衣に、それを結んだ黄色の帯。
緑白に共通する“爽やかさ”と緑黄に共通する“健康さ”…そんなイメージをまとった彼女の服装は、
まさに“超電磁砲の御坂美琴”を元気いっぱいに体現していたと言えた。

上条(そういや今日の御坂は浴衣だったんだよな。よく見てみると…凄い可愛い)

美琴「…?どうしたの?」

上条「っ!!な、何でもねぇ…よ」

可愛いと思ってただなんて言えない。

上条(って、なに動揺しちまってんだ俺は…。ここは、明るく言葉をかけて調子を取り戻すとしようっ!)

上条「なぁ御坂!行きたいところとかあるか?」

美琴「と…特にない」

上条「どこにも行きたくないのか??」

美琴「そ、そうじゃない…けど!ってか、あああああー!!ちょっと落ち着いて考えさせて!!//」

上条(…?もしかして御坂も俺のことを意識して…って、何思い上がってんだ俺!?そんなわけないだろう…)
と、そのとき。前方に見慣れた白髪の男と、同じく見慣れた浴衣の少女を見かける。ある意味ギクシャクと
した場を脱すには…二人の存在は助け舟だったのかもしれない。そう考えた上条は、軽く彼らに話しかけた。

上条「お!一方通行と絹旗じゃねえか!お前らも祭りに来てたんだなっ!」

676: 2011/09/17(土) 02:13:08.95 ID:MQk6mSLi0
そして話は戻る。

美琴「…ということがあったのよ」

上条「あったんです」

絹旗「それはまた壮絶でしたね」

一方通行「面白い人生歩んでンなお前ら」

美琴「あぁ…ゲコ太…」

上条「っていうか、それ言ったら一方通行だって随分面白い人生を―」

一方通行「ァ?」

上条「なんでもないっす!」

絹旗「それにしても、『デートしよう!』って言って示し合わせたわけでもないのに
こうやって二人っきりになれてるって、凄い奇跡ですよね。人もこんな多い祭りだから尚更そう感じます!」

一方通行「ナンパ相手が知り合いだったっつうのもすげェ奇跡だな」

上条「あっ…!そういえば御坂!さっき言ってた『デート』ってどういうことなんだ??お前本当に…?!」

美琴「そ…そんなわけないでしょ!?だ、誰があんたなんかをデートに…デートに…///」

絹旗「ホント、素直じゃないですねえ」

一方通行「見てるこっちが恥ずかしくなるな」

680: 2011/09/17(土) 02:17:03.02 ID:MQk6mSLi0
絹旗「二人は、これから何か予定とかあるんですか?」

上条「さっきもそれ話してたけど全く決まってないんだよなぁ」

絹旗「じゃあ、花火が上がるまで金魚すくいでもどうです?向こうでやってるみたいですよ」

美琴「あ、いいわね!金魚すくいって言えばお祭りの定番だし!」

一方通行(柄に合わねェが…付き合うとすっか)

そういうわけで店の前までやってきた4人。

店主「ん?おお、金魚柄の浴衣着た女の子が来るとは、これも何かの縁かもなぁ」

絹旗「♪」

一方通行「あァ…そういやお前の浴衣って金魚だったか」

絹旗「そうですよ。特に意味はないんですが…この赤模様が超気に入っちゃってっ」

一方通行「そっか。生きた金魚に反応して、その模様が動かねェようにな。仲間だと勘違いするかもしれねェ」

絹旗「この“金魚”って生きてたんですか!?まったく、一方通行も面白いこと言いますね♪//」

美琴「ま、まさか一方通行がこんな冗談を言うなんて…っ!」

上条「今の一方通行なら俺…分かり合える気がする!!というわけで一方通行!今度飲みに行こうぜッ!!」

682: 2011/09/17(土) 02:21:27.07 ID:MQk6mSLi0
一方通行「調子乗ってンじゃねェよ三下」

上条「結局こうなるのね…。せっかく人が勇気を出して提案し―」

一方通行「…機会があったら考えといてやる」

上条「上条さんは今猛烈に感動しています」

美琴「あの…なんか店主さんが困ってるっぽいんだけど…」

絹旗「ですね。そろそろ始めるとしましょう」

順番はジャンケンで決めることになり、1位から上条、美琴、一方通行、絹旗の順となった。

上条「あれ?もしかしてこれ勝った人からすんの?」

美琴「私はそのつもりだったけど」

絹旗「上条さん!頑張ってください!」

上条「よ~し!ここは一つ、本気ってやつを見せてやるぜ!」

……

上条「……」

683: 2011/09/17(土) 02:26:04.74 ID:MQk6mSLi0
上条「金魚たちは…なぜ追っては逃げ、追っては逃げるのか」

一方通行「いや、当たり前ェだろ」

結局、上条は金魚を一匹も捕まえることができなかった。

上条「!そうか…この幻想頃しの右手があるから金魚たちは…っ!」

一方通行「“金魚すくい”って“異能の力”が関係してたンか。初めて知ったぞオイ」

絹旗「というか、誰が発動してる能力なんですかそれ?店主さんですか?」

店主「え?」

一方通行「いや…案外金魚のほうかもしれねェ」

店主「??」

美琴「こーら!あんたたち店主さんを困らせないの。というわけで、私の出番ね!!」

上条「御坂…俺の分まで頑張ってこいよっ!!」

美琴「ええ!任せといて!!」

……

美琴「……」

688: 2011/09/17(土) 02:31:45.31 ID:MQk6mSLi0
美琴「ポイは…なぜすくっては破れ、すくっては破れるのか」

一方通行「単純に要領が悪ィンだろ」

絹旗「すくうのが速すぎな気もするんですけどね…」

美琴「だ、だって!速くすくわないとポイが水に濡れて破けちゃうじゃない!!」

一方通行「だからって、破れる超スピードでポイを魚にぶつけても意味ねェだろが。バカなのかテメェは?」

美琴「ば、バカですって!?そこまで言うからには…っ!もちろん、アンタは上手くできるのよね?」

一方通行「さァて。どうだろォな」

上条「そういや一方通行は金魚すくいやったことあんのか?」

一方通行「ない。これが初めてだァ」

絹旗「だ、大丈夫なんですか一方通行??」

一方通行「俺の推測が正しければ。そうそうミスするこたァねェはずだ」

絹旗「…?」

一方通行「じゃ、始めるとしますかねェ」

……

690: 2011/09/17(土) 02:35:56.79 ID:MQk6mSLi0
上条「なん…だと…」

美琴「なん…ですって…」

一方通行「よォし。13匹目ェ」

店主「お、お客さん!これ以上は勘弁だよッ!!」

店側からストップが入る。

一方通行「ン?この店は捕りすぎ禁止みたいな上限でもあンのか?」

店主「じゅ…10匹までがそうでして…」

一方通行「そォか。じゃ、これで終わりにしといてやる」

店主「あ、ありがとうございます…!」

美琴「店側が客にお礼を言う事態って一体…」

絹旗「す、凄いです一方通行!超凄いですよ!!まさかこんなに捕れるだなんて…っ!!」

一方通行「正直、自分でも驚いてる」

美琴「ア、アンタ!ベクトル操作でも使ってズルしたんじゃないの!?」

一方通行「本当にバカなんですかァ?テメェは。電極のスイッチはずっとOFFだったろうがよ」

上条「じゃ、じゃあ、一体どうやってこんな…」

693: 2011/09/17(土) 02:40:33.02 ID:MQk6mSLi0
一方通行「俺はただ、“理論的にやった”だけだ」

絹旗「理論的…ですか?」

一方通行「あァ。っても、内容はごく単純だがなァ。まず小さめの魚に目をつけた」

美琴「え?…ぁ」

一方通行「小さいほどポイは破れにくいだろうがよ。ガキでも分かる理屈だ」

美琴「そういえば私、大きい魚ばっか目つけてたかも…変にプライドがあったのね」

一方通行「二つ目ェ。水中じゃなく、水面近くを漂ってる魚。なるべくならポイを水に浸したくはねェからなァ。
三つ目ェ、壁際の魚。壁際なら中心より金魚の動きは予測しやすい、且つ逃げ場も減るってワケだァ。
四つ目ェ、尾からじゃなく頭からすくった。ポイへの衝撃が緩和だ。五つ目ェ、なるべく魚が密集してるとこ
を狙った。こりゃ単に確率論的な問題だな。後は…遅すぎず速すぎずでポイを振ってりゃァどうにでもなる」

絹旗「一方通行…カッコいいですっ!///」

上条「こいつ…本物だッ!!?」

美琴「本物のハンターを見た気がするわ…っ」

一方通行「アホどもが。さっきも言ったが、こりゃガキでも分かる理屈だ。
よォく考えてみろ…。俺、当たり前のことしか言ってねェだろ?何か難しいこと言ってっか?」

上条「た、確かに…そうか」

美琴「…けど、これ初めてなのよね?初めてでここまで頭が回るアンタって一体…あっ!そういやこの人!!
学園都市最強のレベル5だったんだわ!!?慣れ親しんでたせいか…すっかり頭から欠落してたわ…」

698: 2011/09/17(土) 02:45:00.71 ID:MQk6mSLi0
絹旗「そういやたまに忘れますけど、あなたって第1位なんですよね」

一方通行「…今のはアレか?俺はバカにされたのか?」

絹旗「ち、違いますよっ!!むしろ逆の意味で言ったんです!!最近のあなたは…とても人間味があったから。
だから、凄く身近に感じてたんです。それくらい…あなたとの距離が超近かったってことなんです」

一方通行「そ、そォか…。そう言ってくれると嬉しいぜ。ありがとな最愛」

上条「なるほど!身近に感じたから、さっき俺は『飲みに行こう!』って衝動に駆られたんだな!!」

一方通行「そりゃァお前が単純なだけだ」

上条「何この扱いの差。どんだけー」

店主「ところであの。金魚のお持ち帰りは―」

一方通行「あン?持ち帰りはしねェ。その代わり、そこの水風船を1個くれねェか」

絹旗「え?金魚はいいんですか?」

一方通行「こンな大量の金魚持って帰ってもな。金魚をすくったってだけで、俺にとっちゃ面白い経験だァ」

絹旗「そうですかっ」

ちなみに。金魚をすくえなかった客には金魚の代わりとして、水風船が1個贈呈される。
上条と美琴がペアルックことペア水風船になっていたのは言うまでもない。

美琴(まぁ…これはこれで良かったかもね//)

700: 2011/09/17(土) 02:47:57.40 ID:MQk6mSLi0
上条「じゃあ次は絹旗だな」

絹旗「はい!と言いたいところですが…もう花火が上がる時間なんですよね」

美琴「あ、本当だわ」

絹旗「それに、私は一方通行の“スーパー金魚すくいタイム”を見られただけで…もう十分満足ですっ!」

一方通行「そのネーミングには同調しかねるがァ…。そういうことなら、コレくれてやる」

そう言って、一方通行はさっき手に入れた青色の水風船を絹旗に差し出す。

絹旗「い、いいんですか?」

一方通行「俺が持っててもな。テメェが持ってた方が様になる」

絹旗「じゃあ…もらいますね!ありがとうございます!」

一方通行「おう」

絹旗「これ超楽しいんですよねーっ!♪」

バインバインバインバインバインバインバインバインバインバインバイン
ゴムを手に引っ掛け、掌でバウンドさせまくる絹旗。

一方通行「ガキかよ」

絹旗「そういう様相も含めて、一方通行は『様になる』って言ってくれたんですよね?」

一方通行「…違いねェ」

702: 2011/09/17(土) 02:51:20.90 ID:MQk6mSLi0
美琴「さぁて。じゃあ、どこ行って花火を見ようかしら?」

一方通行「そうだなァ…」

絹旗(上条さん上条さん…っ)小声で

上条「?どうしたんだ?」

何やら、絹旗が上条に向かって手招きをしている。

上条(何でせうか?)

絹旗(あの…御坂さんの気持ちには気付いてますか?)

上条(…?何のことだ??)

絹旗(ですよね…気付いてないと思ってましたよ)

一息ついて、絹旗はささやく。

絹旗(上条さん!祭りの定番といえば何だと思いますか?)

上条(…定番?)

絹旗(たこ焼き、クレープ、焼きそば、かき氷…何でもいいんです。
どうか、そこに御坂さんも誘ってあげてください。彼女…きっと喜ぶと思いますからっ)

上条(そっか…。分かった!アドバイスありがとな絹旗!)

707: 2011/09/17(土) 02:55:23.23 ID:MQk6mSLi0
美琴「なぁにコソコソ話してんのよアンタらは」

絹旗「あれー。もしかして嫉妬ですか?」

美琴「バッ…!?ちょ、何言ってんのよ!?そんなわけないでしょ!!?///」

絹旗「そんな御坂さんのためにも、今日はここでさよならです!」

美琴「え?」

絹旗「上条さんと二人、仲良くやっちゃってくださいね!♪」

美琴「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

一方通行「二手に別れンだな」

上条「…?あぁ、そっか!そういやお前らデートしてたんだっけ。すっかりお邪魔しちゃったなー」

絹旗「そんなことなかったですよ。ただ、御坂さんが上条さんと一緒のが良いって顔をしてたんで…」

美琴「は、はぁ!?どういう顔よそれ!?//」

上条「よく分かんないけど、とにかくここでお前らとはお別れみたいだな。お疲れ!また会おうぜ!!」

一方通行「ン。またな」

絹旗「また今度遊びましょうね」

美琴「ッ!わ、分かったわよ!!こいつと一緒にいればいいんでしょ!?じゃ、じゃあ…二人ともバイバイっ!」

709: 2011/09/17(土) 02:57:58.34 ID:MQk6mSLi0
上条「行っちゃったな」

美琴「…そうね」

上条「花火もだけどさ、それが終わったら… 一緒にたこ焼きでも食いに行こう」

美琴(ぁ…)

上条「せっかくの祭りだし、楽しまなきゃ損だもんな。お前も!一緒に楽しもうぜ!!」

美琴(…ホント、このバカときたら…)

上条「どうだ?」

美琴「い、行くに決まってるでしょ!!今日は…いろいろ付き合ってもらうんだから…っ//」

……

絹旗(御坂さん…頑張ってくださいね)

絹旗「さて!どうしましょうか?」

一方通行「どうするも何も、花火のよく見える場所に行きゃァいいンだろ?」

絹旗「ですね。どこか良い場所はないでしょうか?」

一方通行「そうだなァ…この辺なら―」

718: 2011/09/17(土) 03:34:14.87 ID:MQk6mSLi0
絹旗「あ!あそことか良いんじゃないですか!?」

一方通行「……」

一方通行「まァ、花火はよく見えそうだな」

絹旗「超穴場っぽいですよね!」

一方通行「いや、そりゃァそうだろ」

絹旗「人も誰もいません!」

一方通行「そりゃそうだろうなァ…」

あそことは。ふと近くにあったデパートに備え付けられた、一般人立ち入り禁止の非常階段だった。

一方通行「…いいのか?入って?」

絹旗「元暗部の人間が何言ってんですか?」

一方通行「そこで暗部を出すかお前は」

そのとき。一方通行にある考えが浮かんだ。

一方通行「お前…。どうせなら、もっとイイとこで見てェだろ?」

絹旗「え?」

719: 2011/09/17(土) 03:37:49.42 ID:MQk6mSLi0
カチッ

電極のスイッチをONにする一方通行。

絹旗「一方通行…何を??」

一方通行「お前、しっかり俺につかまっとけよ」

絹旗「キャ!?//」

絹旗をお姫様抱っこしたかと思うと、ベクトルの方向を上にかけ…そのまま急上昇する一方通行。

絹旗「あ、あの、どこへ行くんです!?//」

一方通行「非常階段より、もっと高ェとこだ…っと、着いたぜ」

絹旗「な…なるほど」

そこは。デパートの屋上だった。

絹旗「確かに…ここなら思う存分花火を見れそうですっ」

加えて、もうすぐ閉店時間ということで屋上には誰もいなかった。

絹旗「ところで一方通行…っ。あの、いつまでこうやってるんですか…?///」

一方通行「…っ!」

お姫様抱っこの解除を忘れていた一方通行だった。

722: 2011/09/17(土) 03:43:51.27 ID:MQk6mSLi0
慌てて彼女を降ろす一方通行。

絹旗「私としては、別にこのままでもよかったんですけど//」

一方通行「ンな状態で花火を見るつもりかテメェは」

絹旗「はいっ」

一方通行「勘弁してくれよ…」

そして―

ドオオオオオオオオオオン

そんな話をしてる間に、一発目の花火が上がった。

絹旗「あっ!もう8時になったんですね!!」

一方通行「みてェだな」

絹旗「うわぁ…綺麗です…っ」

続いて二発目、三発目の花火も上がっていく。

絹旗「光景はもちろんなんですけど、ドンッ!って音もなんか良いですよね。花火だー!って感じがして!」

一方通行「…そォだな。分かる気がする」

普段は意識することすらなかった花火だが。そばにいる“彼女”の存在が…それについて考えさせてくれた。

723: 2011/09/17(土) 03:46:32.94 ID:MQk6mSLi0
続いて四発目、五発目…と、ここまでくるともう何発目か分からなくなる。
それくらいに大量の花火が打ち上げられ、漆黒の夜空を彩っていた。

絹旗「たーまやー!♪」

一方通行「……」

絹旗「たーまーやー!!♪」

一方通行(相変わらず元気だなァこいつは)

嬉しいのか何なのか、定番ともいえる掛け声を連発する絹旗。

絹旗「たーま…」

絹旗「……」

一方通行「ン?どうした?」

絹旗「一方通行は言わないのかなぁと思いまして」

一方通行「……」

一方通行「ま、待て。俺も叫ばなきゃダメ…って流れかァ?」

絹旗「はい!ぜひ叫んじゃってください!!」

一方通行「…ターマヤー!」

724: 2011/09/17(土) 03:49:00.12 ID:MQk6mSLi0
絹旗「…棒読みだった気がするのは気のせいですか?」

一方通行「きっと気のせいだ」

絹旗「まぁ…いいですけど。でも、いつかは本物の叫びも聞かせてくださいねっ」

一方通行「お、おう」

もっとも。別の叫び声なら、今までだって幾度もしたことあるのだが。

『三下ァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!』
『木ィィィ原クゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!』

一方通行(…せっかくの興が台無しだァっ)

くだらないことを思い出すのはヤメにした。

絹旗「…あ、そうだ!」ゴソゴソ

一方通行「どうしたァ?」

絹旗「いえ、記念ってことで花火を携帯に収めておこうと!」

一方通行「あァ…それもそうだな」

同じく携帯を取り出し、夜空で炸裂する花火群を撮影する一方通行。花火が綺麗だから…というよりも、
“絹旗と一緒に花火を見た”という思い出を、こうやって写真という形で残しておきたかった。

725: 2011/09/17(土) 03:53:02.86 ID:MQk6mSLi0
絹旗「ついでにあなたも♪」パシャッ

一方通行「って、オイ!?」

絹旗「あなたも…記念に撮っておきたかったのでっ」

一方通行「はァ…」

まさに不意討ちとはこのこと。

絹旗「というか、花火を背に一緒に映りましょうよ!!ちょうど今が花火の数的にもピークみたいですし!」

そう言って、彼女は一方通行の手を引っ張り…ちょうど花火が自分たちの背となる場所を選ぶ。

一方通行(マジかよ…)

いや、別に彼女と一緒に映るのが嫌なわけではない。ただ…いまだにこういうのは慣れないというか、
突然『写真を撮るぞ!』と言われても、どうも上手く心の切り替えができない。
そんな困惑した、引きつった顔をした一方通行に…絹旗最愛が一言。

絹旗「…プリクラ」

一方通行「ン??」

絹旗「あのとき撮った、4枚目の写真のこと思い出してください」

一方通行「…ぁ」

絹旗「あのときの一方通行…凄く良い顔してましたよね。今から撮る写真だって、それと同じです♪」

727: 2011/09/17(土) 03:56:55.88 ID:MQk6mSLi0
一方通行(あのとき…)

絹旗「ええっと、準備はいいですか?」

一方通行(…あァ。難しく考える必要はねェんだよな。あのときもただ、こいつのことを―)

絹旗「あぁぁぁぁ、花火は待ってくれませんから、いきますよ一方通行っ!」

一方通行(考えてただけだ)

大切な存在―ってな

……

絹旗「…というわけで撮ってみたわけですが」

一方通行「おう」

絹旗「ホント、本番には強いんですね一方通行。撮る直前はあんなにマヌケな顔してたのに…」

一方通行「ほォ。動揺した俺はマヌケ面だったか?そりゃァ、悪かったなァ??!」

絹旗「冗談ですよっ!そんな顔してませんでしたってば。あたふたしてる一方通行可愛い♪と思っただけです」

一方通行「…そっちのが、よっぽどタチ悪い気がするぜェ…」

728: 2011/09/17(土) 03:59:31.18 ID:MQk6mSLi0
絹旗「とにかく…。私、この写真は大切にします。後であなたにも送りますねっ」

一方通行「ン。後は、花火終わるまでゆっくり眺めとくとすっか」

絹旗「ですね♪」

こうして。二人は夜空に舞い散る夏の風物詩を…心行くまで堪能したのだった。

……

絹旗「いやー!絶景でしたね!!」

一方通行「あァ。最後の大型花火の連発は、まさにそれだったな」

絹旗「でかい花火ももちろん見応えはあったんですけど、個人的にはハートや星の花火が超印象的でした!」

一方通行「あれには驚いたなァ…花火ってのはあんな形にも映せンだな」

絹旗「UFOの形なんかはちょっと感動しちゃいました。空にUFOってまんまですもんねっ」

一方通行「ン?ありゃァUFOだったのか。てっきり土星だと思ってたぜ」

絹旗「…そう言われれば土星の気もしてきました。どっちなんでしょうね?」

一方通行「好きなほうでいいンじゃねェの」

絹旗「じゃあUFOで!!」

一方通行「俺は土星派だァ」

730: 2011/09/17(土) 04:04:36.96 ID:MQk6mSLi0
絹旗「あ、そうだ。忘れないうちに、さっきの写真送っときますね」ティロリン

一方通行「おォ、来た来た。サンキューな」

絹旗「さて…。では、これからどうしましょうか?」

一方通行「そうだなァ。祭り自体はまだ続いてンだし、適当にぶらつくとすっか」

絹旗「そうですね。ちょうど行ってみたい屋台もありましたし」

一方通行「…の前に。まずはこっから降りねェとな」

絹旗「屋上には屋台ありませんからねえ。仕方ないです、下の世界に行くとしましょう!」

一方通行「行くっつうか戻るンだけどな。じゃァ…前みたく、またしっかりつかまれよ」

絹旗「あっ!ちょ、ちょっと!いきなりお姫様抱っこするのはやめてください///」

一方通行「ァ…悪ィ、驚かせちまッたな」

絹旗「べ、別に私はいいんですけど…。なんか、このままじゃ癖になっちゃいそうで//」

一方通行「癖って…この体勢が、か?」

絹旗「は、はい//その…一方通行とも超近いですし…//」

そういえば。持ち上げてるから当たり前なのだが、顔が近い。そしてこれも当たり前なのだが、体に触れている。

一方通行(…思考停止するかァ)

731: 2011/09/17(土) 04:09:09.91 ID:MQk6mSLi0
というわけで、何も考えないままに地上へと降りた。いちいち意識してたら…。こんなお姫様抱っこなど
やってられない。特に今日、その彼女は浴衣等で普段の倍可愛く見せてるのだから…尚更だった。

絹旗「また、やってくださいね♪//」

一方通行「…機会があればな」

そう答えるしかなかった。

絹旗「それにしても…?」

一方通行「?どうしたァ?」

絹旗「いえ、なんか周りの人がこっちを見てるような気がして…」

一方通行「いや…そりゃァそうだろ。空からいきなり人が降ってきたンだ。注目もするわ」

絹旗「あぁーなるほど。確かにそうですね」

一方通行「じゃ、歩くとすっか」

絹旗「あ…。ちょ、ちょっと待ってください」

一方通行「まだ何か用か?」

絹旗「その、なにか重要なことを忘れてる気がして…」

一方通行「…あァ、そういや花火終わったらアイツらと合流するンだっけか」

絹旗「そうでした―!!?急いで麦野たちと連絡取らないと…っ!!」

732: 2011/09/17(土) 04:16:22.64 ID:MQk6mSLi0
慌てふためき、絹旗は携帯を開く。

絹旗「あ…あれ」

一方通行「今度はどうしたァ?」

絹旗「麦野たちから…メールが来てるみたいなんです。いや、“来てた”みたいなんです!!」

一方通行「…それはつまり、結構前に来てたのに気付かなかったと…そういうことか?」

絹旗「そういうことです…」ガックシ

一方通行「?でもお前…花火見るとき写真撮ってたよなァ。そンときに分からなかったのか」

絹旗「そういえば何かメールがあった気も―」

一方通行「マジか」

絹旗「花火に浮かれてて、全然メールはそっちのけでした…」

一方通行「…まァ、今からでも遅くねェじゃねェか。花火も終わったばっかだしよ。ひとまず内容見てみようぜ」

絹旗「そ、そうですね。特に麦野…怒ってなければいいんですが」

若干の不安を抱きながらも、彼女はメールを開いた。そこにあった三つのメール…それは―

733: 2011/09/17(土) 04:22:00.12 ID:MQk6mSLi0
麦野沈利『私たちのことは気にしなくていいからさ。せいぜい楽しめψ(*`ー´)ψケケケ』

滝壺理后『くれぐれも、ハメをはずしちゃダメだよ(´・ω・`)』

浜面仕上『二人とも爆発しやがれ!!そして爆発しやがれ!!ヽ(`Д´)ノ』

……

絹旗「……」

一方通行「……」

絹旗「とりあえず、合流する必要はないそうです」

一方通行「…みたいだなァ」

絹旗「麦野も滝壺も私たちに気を使ってくれて…。私は、本当に嬉しいです…!ありがとう二人とも…っ」

一方通行「…良い仲間に恵まれたな」

絹旗「はいっ!」

一方通行「ところで浜面の野郎―」

絹旗「日本語でおkな人なんか知りません」

一方通行「何が言いたかったンだろうなアイツ…」

737: 2011/09/17(土) 04:27:55.41 ID:MQk6mSLi0
絹旗「しかも二回同じこと言ってました」

一方通行「大事なことだから二回言ったのかもな」

絹旗「…ですね。きっとあのメールの真意も、私たちを応援したものだったんですよ」

一方通行「根は良いヤツだからなァ浜面」

絹旗「…はい。あんな超浜面ですが、それでも。私たちの仲間には変わりないですからねっ」

一方通行「良い仲間を持ったな」

絹旗「はい!」

一方通行「よし、じゃァ円満にまとまったところで。さっき行きたい場所があるとか言ってたよな。どこだ?」

絹旗「綿飴屋さんですっ!」

一方通行「あァ…あのフワフワ菓子のことか」

絹旗「また甘いものが食べたくなっちゃって…。というわけで行きましょう!」

一方通行「ン?場所知ってンのか?」

絹旗「はい。屋上からさっき、さりげに調べてたんです。こっちですよ!」

一方通行「まったく…貪欲な奴だなテメェは」

そんな彼女が愛しい一方通行だった。

740: 2011/09/17(土) 04:34:06.54 ID:MQk6mSLi0
店に着き、綿飴を購入する絹旗。

絹旗「あ、そういえば一方通行はいらないんですか?」

一方通行「だからリンゴ飴のときも言ったろうがよォ。俺は甘いもンが苦手だってな」

絹旗「そのリンゴ飴のときも思いましたけど…甘いものが苦手って、絶対人生損してると思いますよ?
好き嫌い言ってないで試しに食べてみるべきだって、私は超そう思いますね。
いや~、それにしてもこの綿飴とってもおいしいです。っていうか超甘いです♪」ハグハグ

一方通行「食うなァ…そンなにその綿菓子はうめェか」

絹旗「だから美味いって言ってるじゃないですかぁ。とはいえ、いくら私が力説したって実際これは食べて
みないと分からないと思いますけど。っていうか、一方通行はこの食べ物…“綿菓子”って言うんですね」

一方通行「?綿菓子だろ?」

絹旗「私はさっき“綿飴”って言ってましたよ」

一方通行「……」

一方通行「え?同じもンなんじゃねェの??」

絹旗「さぁて。どうでしょう?♪」

一方通行(…待て、マジで違うもンなのか?綿菓子の中に綿飴って種類があるとか、そんな話じゃねェのか!?)

まさかの綿菓子(綿飴?)に大苦戦する学園都市最強のレベル5だった。
こ、こんなフワフワしたふざけた形のお菓子が分からない。とても悔しい一方通行だった。

741: 2011/09/17(土) 04:40:33.51 ID:MQk6mSLi0
絹旗「答えを言ってしまうとですね。基本的には両方同じものを指すんですが、状況や場合によって
呼び名が変わるんだそうです。こういうお祭りのときは“綿飴”。そうじゃないときは、例えば普通に
駄菓子屋なんかで買うときは“綿菓子”になるそうです」

一方通行「あの、一つ聞いていいか。何でそんなどうでもいいこと知ってンだ??」

絹旗「うーん…いわゆる雑学ってやつですよ。たまに『アイテム』で集まったとき、こういうバカ話してんです。そのためのネタ集めってとこですね。もっとも、綿飴ネタを使ったのは…あなたが初めてですけどねっ!♪」

一方通行「“初めて”なのに嬉しくないこの不思議…ッ」

絹旗「あー。一方通行がすねちゃいました」

一方通行「そりゃァすねるわ」

絹旗「しょうがない人ですね…。そんなに綿飴が欲しいんですか?」

一方通行「待て。いつから俺が綿飴が欲しいと錯覚していた?」

絹旗「糖分は頭をリフレッシュしてくれます」

一方通行「科学的説明なンぞ求めてねェ!!」

絹旗「じゃあ、純粋に欲しいんですね♪」

一方通行「もうそれでいいわ」

742: 2011/09/17(土) 04:46:07.81 ID:MQk6mSLi0
絹旗「でも…残念。もう遅かったんです」モグモグモグモグ

一方通行「……」

絹旗「超食べちゃいました」

全部なくなってしまった。残ったものは木の箸一本である。

一方通行「お前は一体何がしたかったンだ」

絹旗「やっぱり欲しいですか?」

一方通行「欲しいも何も、その綿飴はもうねェけどな」

絹旗「何でですか?」

一方通行「お前ってヤツは…。そこまでして俺に突っ込みを入れさせてェか…?」

絹旗「ワクワク♪」

一方通行「本性を表しやがったか。じゃァ、ご褒美に突っ込ンでやる。お前が食っちまったンだろうが…ッ!」

絹旗「正解です♪」

一方通行「正解も何も自明だろが」

絹旗「でも…半分不正解です」

743: 2011/09/17(土) 04:51:03.22 ID:MQk6mSLi0
一方通行「…は?それどういう―」

絹旗「ちょっと、こっち来てくださいっ」

一方通行「??ど、どうしたンだァ急に?」

引っ張られるがままに、絹旗に付いていく一方通行。

一方通行(…?屋台のほうから遠ざかっていく…?)

しばらく歩き到達したその先は…人通りの少ない路地裏だった。そこまで中心街から離れているわけではない。
祭りの会場から横道にそれた、通路の狭い小道。誰かが近道で利用する以外は…とても人が歩こうと思うような
道ではない。ゆえに人目にも触れにくい、いわゆる氏角ポイントとなっているような場所だった。

一方通行(…何でこンな場所に、最愛は俺を連れ込んだンだ…?)

思考がハテナ状態の一方通行に、絹旗がようやく口を開く。

絹旗「そ、その…口の周りがベトベトで―」

一方通行「ン??」

絹旗「綿飴にかぶりついちゃって…口の周りがベトベトしちゃってるんです。だからその…」

あぁ、なるほどと一方通行は思った。つまり絹旗は“それ”を取りたいから、こうやって氏角となる
路地裏に入り…人目のないところでハンカチで拭こうと、そういう算段なのか。って、ちょっと待て―

一方通行「お前…人前でハンカチ使うことすら躊躇ったってか??」

745: 2011/09/17(土) 04:55:31.81 ID:MQk6mSLi0
いくらなんでも、それは“シャイ”という言葉で片付けられるレベルではない。
しかも絹旗最愛という女の子が、基本的にはそのカテゴリーには属さない人間なのだから、尚更だった。

一方通行(ぁ…)

自分で言ってて気付いた。そういえば、絹旗のハンカチは俺の口元を拭くために使ったではないか。
リンゴ飴により付着した食紅を取ったのだから、当然そのハンカチは赤くなっているはず。

一方通行「…すまねェ。ハンカチは使えなかったンだよな。となると―」

ここで、少しだが謎が解けた気がした。ハンカチは使えなくとも、毎度お馴染み“一方通行の能力”を
もってすれば…そのベトベトは取れるはず。絹旗の服を乾かすため、中に入った水分や塩分を外へと抽出した
あの方法と原理は全く同じだ。それが“ベトベト”だから、今回はその対象が砂糖になったというだけ。

もしかしたら彼女は、人前で彼が能力を行使することを躊躇ったのかもしれない。だからこんな場所へと
彼を誘い入れた…?もっとも、それだけでは人目に付かない場所に彼女が入り込んだ理由としては弱いが。
先ほどの“ハンカチ”よりは強い理由だろうが、それでも彼女がそんなことを気にする性格には見えない。

747: 2011/09/17(土) 05:00:25.12 ID:MQk6mSLi0
それでも、一応そのことについては聞いてみる。いや、いちいち聞くより実際にやったほうが早いか。

一方通行「顔、近付けろ。俺が能力でなんとかしてやっから」

これで解決…と思っていた一方通行だったが。それに対する彼女の返答は意外なものだった。

絹旗「だ、大丈夫です。あなたの能力を使わなくても…なんとかなりますからっ」

一方通行「??」

ますますもって訳が分からなかった。まさか、浴衣の袖を口に擦りつけ…って、そんなバカな話はない。
仮にも女性がそんな真似、それも彼氏の目の前でやることとは思えない。じゃあ…一体どうするというのか。

748: 2011/09/17(土) 05:09:55.01 ID:MQk6mSLi0
絹旗「…舌を使えば、なんとかなります」

一方通行「そうきたか」

それならできないことはない…?かもしれない。ただ…ちょっと取るのに大変かもしれないが。
とにかく、そういうことならさっき考えてた理由もクリアできる。というか、そりゃそうだろう。
人前でやるにはあまりにハードルが高すぎる。

一方通行「じゃァ、さっさとやれ。俺は後ろ向いとくからよォ」

人前が嫌なら、俺の前でもそれは同様のはず。そう思って背を向けようとする一方通行だったが―

絹旗「あ、ち、違うんです!」

一方通行「あン?」

絹旗「その…“あなたの舌”で取ってもらえればなって…っ//」

一方通行「……」

一方通行「今、なんつった?」

とりあえず、『何が起こった』と思った

751: 2011/09/17(土) 05:15:00.06 ID:MQk6mSLi0
聞き間違いだったのかもしれない。それか、自身の潜在意識下にある願望が引き起こした、
まさかの幻聴か。後者なら自分は病気だろう。

絹旗「あの…してくれないんですか?//」

どうやら聞き間違いでも幻聴でもなかったらしい。

一方通行「お前…何考えてンだ?」

本当に何を考えてるのかと思った。いくら恋人同士とはいえ、さすがにこのシチュエーションはカオスすぎる。
だが…これなら人通りの少ない路地へと招き入れた理由も分かる。最初からこれが狙いだったのか??
そう考えていた一方通行だったが…。次の彼女の言葉で、彼は更なる混乱に陥った。

絹旗「ほ、本気にしないでくださいよっ!冗談ですってば!」

冗…談…??

752: 2011/09/17(土) 05:18:20.54 ID:MQk6mSLi0
絹旗「証拠に、ここにもう一枚ハンカチもあるんですからっ。もう一方通行ったら…。
いくらなんでも、そんなふざけた展開はないですよ。すっかり当惑してましたよね」

一方通行(は…?)

じゃあ、さっきの思わせぶりな態度は何だったのか。
騙してからかうためだけに、こんな人通りの少ない場所へと招待したのか。
こんな手を込んだ工作をしてまで…屋台を楽しむ時間を削ってまでも、俺を勘違いさせようとしたのか??

一方通行(こいつ…ッ)

さすがに、これには怒らずにはいられなかった。イタズラにしても悪質すぎる。
そう思った瞬間か― 気付けば、彼は彼女に手を出していた。

絹旗最愛に 手を出していた

754: 2011/09/17(土) 05:24:34.98 ID:MQk6mSLi0
絹旗「っ!?」

一方通行「テメェ…ちょっと度が過ぎたなァ…?」

右手で絹旗の顔をつかみ、そして傍にあった壁へと叩きつける。
電極のスイッチがONになっていたのは言うまでもない。

絹旗「!!ま、待っ―!!!」

彼もそこは加減していた。元々絹旗は窒素装甲の自動展開により窒素の壁が形成されてるため、
よほど大きな力で壁に叩きつけない限りは、彼女には傷一つ付かない。不意討ちの銃弾ですら
弾くのが彼女の持つ窒素の壁なのだから。その代わり…“一方通行が攻撃した”という
その揺るぎようのない事実は、彼女の精神に与えるダメージとしては十分すぎたかもしれない。。
そして更に追い討ちをかける一方通行。

一方通行「テメェがさっき言ってた…舌でやるってヤツか?なンなら、今ここでやってもいいンだぜ…
身動きのできねェお前を、口から口へと舐めつくしてやろうか?あァ!?」

もはや完全に悪役だった。いや、客観的に見れば悪人そのものだった。

一方通行(ちったァこれに懲りて反省しろ…)

実は。彼にとって、先ほどからの一連の行動はただの狂言にすぎなかった。
絹旗の口を舐め回す気も更々ない。正確に言えば、これは“攻撃”ではなく“叱り”のつもりだった。
辞書通り、言動のよくない点などを指摘して強くとがめる。そんな一方通行のやり方に彼女は―

絹旗「…っ」

悲しんでるわけでもなく泣いてるわけでもなく。ただ…じっと一方通行の目を捕らえているだけだった。

755: 2011/09/17(土) 05:29:13.47 ID:MQk6mSLi0
絹旗「…以前もこんなことありましたよね」

一方通行「…?」

絹旗「ワンピースの裾をヒラヒラさせて、あなたを逆上させたことがあったなって…」

一方通行「あァ…」

浜面に公園に呼び出されて。でもそこにヤツはいなくて…代わりにいたのがこの絹旗で。
気になるとかいう理由で俺の後を付け回し―そして誘惑された。そのときも俺はこいつに迫り…
っつっても“フリ”だったが、途中で風紀委員の奴に見つかってレOプだと勘違いされそうに
なったンだっけか。確かに状況的には似てるかもな、と思った一方通行だった。

一方通行(そういや―)

あのときも絹旗は、そんな状況であっても抵抗らしい抵抗をしなかった。今の絹旗も…こちらを
見つめるだけで抗議の声も唱えないし、ましてや攻撃したり逃げようといった空気も甚だ感じられない。

絹旗「私、あなたが無理やり人をどうこうする人間じゃないって知ってます。あのときはまだ出会って
日も浅かったですから…ほとんど直感だったわけですけど。今は自信をもってそう言えます。
私の口元を舐めつくすっていうのも、ウソなんですよね?私を…ただ叱ってるだけなんですよね」

一方通行(全て見抜いてンのかよ)

だが、ここまで洞察力があるなら俺が激昂するのも予想できたろうに。
なぜヤツはこんな真似を…?と考えていた一方通行に―

絹旗「…すみません。これやったらあなたが怒るだろうなとは思ってたんです。“分かってて”やったんです」

757: 2011/09/17(土) 05:38:07.56 ID:MQk6mSLi0
一方通行「分かってて…やった?」

絹旗「怒ったところを、むしろ私のほうからキスしようと思ってたんです…」

一方通行「…は?」

絹旗「確信犯だったんですよ。落としてから、そして持ち上げる…そんな状況でキスしたら
あなたは驚くだろうし、もしかしたら嬉しいかなって…一種のサプライズのつもりだったんです」

一方通行「お前―」

一方通行(“嘘って言ったこと”が嘘だったのかよ)

それはつまり真だ。

絹旗「お祭りって…考えようによっては非日常じゃないですか。だから、こういうことも許されるかな…
って思ってつい調子に乗っちゃったんです…。お祭りだからこそできる、って考えちゃったんですね…」

一方通行「……」

正直呆れた。だが、その言動の根底に“恋人を楽しませる”という意思があったのなら、
一方通行としては彼女を責めることなどできない。

絹旗「ただ、私は浅はかでした。怒るってことは分かってても、“傷つく”ことまで考えてなかったんですよ…
一方通行だから大丈夫っていう、ある種の開き直りといいますか…。でも、一方通行も人間なんです。
学園都市最強のレベル5とはいえ、中身は他の人と同じ…純粋な人間なはずなんです。そんな当たり前の
ことすら忘れ、祭り気分に浮かれ…弄ぶような真似をしてしまって…!本当に超すみませんでした…っ!」

…電極のスイッチをOFFにする一方通行。

758: 2011/09/17(土) 05:44:51.32 ID:MQk6mSLi0
一方通行「…まだ遅くねェ」

絹旗「え?」

一方通行「こっちこそ、ついカッとなっちまって…悪かった。だから―」

絹旗の顔を引き寄せる。

絹旗「一方通行…?」

一方通行「最愛…っ」

そのまま、一方通行は彼女に唇を重ねる

絹旗「ん…っ!///」

一方通行「……」

軽く触れ…そして一旦離す

一方通行「…甘かった」

絹旗「…だから言ったじゃないですか。“綿飴”は、まだ残ってるって」

一方通行「お前の唇って綿飴の味がすンだな」

絹旗「今日、限定ですから…っ」

759: 2011/09/17(土) 05:50:51.75 ID:MQk6mSLi0
一方通行「…もっと味わってもいいか?」

絹旗「…はいっ」

一方通行「遠慮はしねェからな…」

そう言って、再び口づけを交わす

絹旗「一方通行…///」

一方通行「…次は舐めてやる」

ペロ

絹旗「ひゃ…っ///」

口元に 舌で触れる一方通行

一方通行「…っ」

しだいに、その動きをエスカレートしていく

絹旗「ぁ…っ//」

ペロ、、ペロ、、

絹旗「し、舌の動きが…っ!///や、やらしいですよ一方通行///」

760: 2011/09/17(土) 05:56:08.43 ID:MQk6mSLi0
一方通行「舐めとってほしいンだろ?…我慢しろよ」

絹旗「…前から思ってましたけど、絶対一方通行ってSですよね…?」

一方通行「誘惑するテメェが悪い」

ペロッ

絹旗「ひゃぁ…っ//」

一方通行「…気持ちよさそうな声出してンじゃねェよ」

絹旗「だ、だって…!あなたが超変な舐め方するから…っ///」

一方通行「テメェがそンな声出すから、こっちだって止められねェンだろうが…ッ」

ペロ…ペロ…ッ

絹旗「うぅ…っ//一方通行の、エOチ…///」

一方通行「…お前ほどじゃねェけどな。っと、ベタベタしてたのは大体取れたぞ」

絹旗「ホントに取っちゃうなんて…。一方通行は本当にエOチです…//」

一方通行「取れたし、やめるか?」

絹旗「や…やめないでくださいっ」

一方通行「感じてンのかよテメェ…どうしようもねェな」

762: 2011/09/17(土) 06:06:26.25 ID:MQk6mSLi0
一方通行「まだお前の口の中…ちゃンとやってなかったよなァ」

そう言って自分の舌を…絹旗の口の中へと入れる

絹旗「ぁ…っ!//」

一方通行(…最後の綿飴まで、綺麗にしてやらねェとな)

絹旗「ん…っ!む…ぅ…っ!ぁ…ん///」

ピシャ…ピシャッ…ッ

唾液と舌が絡み合ういやらしい音が響く

絹旗「はっ…ん…っ!う、うぅ…ぁぁ…っ///」

同時に、彼女の官能的な声も響く

一方通行(やべェ、たまンねェ…っ)

意識すればするほど、舌の動きはめちゃくちゃになった

絹旗「っ!?」

絹旗(は、激しすぎますよ…!一方通行…っ!!///)

めちゃくちゃになればなるほど それだけ彼女の性感帯を刺激した

763: 2011/09/17(土) 06:10:34.16 ID:MQk6mSLi0
一方通行(…やべェぞ)

ここで彼に 一つの懸念が生まれた

一方通行(歯止めがきかねェ…っ)

“どこまでならやってもいいのか?”そのボーダーラインがよく分からなくなっていた。
普段の冷静な彼なら有り得ない。それくらいに、頭の中が沸騰していた。

ピチャッ…ピチャッ…

絹旗「ぁ…っん!あ…ぁ…うぅ…ぁっ…///」

それでも舌は止まらない

一方通行(ここは人通りが少ねェ…)

人の目がない。ゆえに、この場所は“背徳的行為を気兼ねなくできる環境”と化してしまってる。
だからこそ…問題があった。そういう行為に適している一方で、その“行為”が激化したとき、
一体誰がそれを止められるのかという深刻な問題が。もちろん当人らの自己判断には期待できない。
こんな密室ともいえる環境下で、理性が感情…性欲に勝てるとはとても思えなかったから。

一方通行(誰もいねェ…のか)

このまま誰も来なければ。自分が絹旗に“それ以上”のことをしてしまいそうで怖い…。
かといって、そんな自分にブレーキをかけることすら今の一方通行には叶わなかった。

一方通行(…ヒーロー…ッ)

叶わなかったせいか。彼は無意識のうちにその単語を呟いていた。

766: 2011/09/17(土) 06:17:32.79 ID:MQk6mSLi0
もっとも…ここでの“ヒーロー”という言葉に意味はない。そもそも何を指してるのかも分からない。
よく人は、窮地に陥ったとき神頼みをすることが多々あるが…。彼の場合は、それが“神”ではなく
“ヒーロー”だったというだけ。自分がダメだからという理由で、居るのかどうかも分からない他者…
そんな超自然的存在に向け、一方通行は心のどこかで期待していたのかもしれない。
…まったくもって無責任な期待には違いなかったが。

一方通行(当の最愛は、この状況をどう考えてンだろうなァ…?)

少なくとも嫌がってはいないみたいだが。だが、この先もキスだけで済ませられるという保障は無い。
さらに先の行為へ進んでしまった場合、彼女はどうするのか。拒むのか、あるいは受け入れてくれるのか…?

絹旗「…?一方通行…?」

いや、そもそも“それ以上”の展開を全く想定してない可能性だってある。彼女はさっき言っていた…
『私、あなたが無理やり人をどうこうする人間じゃないって知ってます』と。彼を…信用してくれている。

一方通行(信用してンのに…変なことしちゃァダメだよな)

……

何か分かったような気がする。相手のこともちゃんと考えてあげれば…。
絹旗最愛という存在に真摯になれば、きっと間違いは起こらない。ここに来て、
ようやく彼はそのことに気付いた。よく考えれば簡単であり…そして当たり前なことでもあった。

767: 2011/09/17(土) 06:23:02.34 ID:MQk6mSLi0
一方通行(どうやら…今回ばかりはヒーローに助けてもらう必要もなかったみてェだ)

自分で気付けたのだから。

一方通行(ただ、最後に…もう一度こいつとキスしてェ)

改めて絹旗の方へと向き直り、そして―自分が彼女に対し思ってることを…素直なままに伝えた。
少々恥ずかしかったが…。自分にとって“最愛”の人である彼女に告げることを、彼は嫌とは思わなかった。

一方通行「最愛…好きだ」

絹旗「ど、どうしたんですか突然?もちろん…超好きに決まってるじゃないですかっ//」

一方通行(最愛…っ)

これからも互いのことを思い合って…そして生きていこう。そう考えながら
今日最後になるであろう口づけを…絹旗と交わそうとした。

“交わそうとした”

??「ッ!?一方通行…!?こ、ここで何を…!!?」

一方通行「……」

一方通行(…何ですかァ?このどっかで聞いたことのあるバカみてェな声はァ…)

この世界の“ヒーロー”とは、どうやら遅れてやってくるものだったらしい。
それも、“かなり空気の読めてない”ヒーローだと言えた。

770: 2011/09/17(土) 06:37:56.37 ID:MQk6mSLi0
上条「って、あぁ…そうか!キスしようとしてたのか!!こ、恋人同士なら当たり前…だよな//」

美琴「そ…そうよ!!恋人同士なら普通にすること…よ//」

一方通行「……」

ヒーロー上条当麻&ヒロイン御坂美琴 IN

絹旗「あっ二人とも!また会いましたね」

美琴「そ、そうね…っ//」

…さっきの二人のやり取りが気になって仕方がない美琴。

一方通行「テメェらよォ…こんなトコで何してる?ってか、何でいンだ??」

絹旗「あぁー、そういえば」

彼の疑問ももっともだった。本来なら上条も美琴もまだ祭りを楽しんでる時間のはず。
それが、どうしてこんな祭りの中心から離れた…屋台もない人気のない場所へと来てしまっているのか。

美琴「そ、そっちこそ何でいんのよ!?」

逆に質問で返された。

一方通行「ァ?そりゃァ…」

絹旗「二人でイチャイチャできるからですよ。人もいないからキスだってし放題ですし…//」

一方通行「正直に言いすぎだテメェ」

771: 2011/09/17(土) 06:43:32.87 ID:MQk6mSLi0
絹旗「だって、そうでもないと…こんな何もないところ来ませんよ。ましてや今日は祭りなんだから尚更です」

一方通行「まァ、そうか」

美琴「そ…そうなんだ」

一方通行「で。そっちの来た理由は?」

美琴「そ、それは…っ!」

上条「な、なぁ絹旗。さっき言ってたことは本当なのか??」

絹旗「さっき?」

上条「こんな人通りのない場所なら…ってやつだよ。キスするとか何とか…//」

絹旗「あぁ、そのことですか。そりゃー、そういう理由でもないと来ませんよね!」

上条「そ、そう…だよな!ってことは御坂…お前まさか…っ」

772: 2011/09/17(土) 06:46:31.64 ID:MQk6mSLi0
美琴「ちょ―!?バカッ!!勘違いしないでよね!!// な、何で私があんたなんかとその…っ!!//」

一方通行(ン?話の流れ見る限り、この場所へと誘ったのは超電磁砲のほうかァ?)

絹旗「あれー。御坂さん、顔が超赤いですよ。本当は…“私たちと同じ理由”だったんじゃないですか?♪」

美琴「ち、違う!!そんなこと…私考えてないッ!!!///」

美琴(い、言えない…っ!あいつに 告 白 し よ う と し て た とか、絶対に言えない…っ!!!)

774: 2011/09/17(土) 06:50:43.89 ID:MQk6mSLi0
上条「御坂!じゃあ、何で俺をこんなところに!?」

美琴「そ、それは―!!」

一方通行「…何なんだァ?」

絹旗「…何なんですか?♪」

美琴「あ…あぁ…ぁぁっ!!」

告白しようと決意しただけでも、すでに美琴の精神状態はあっぷあっぷだった。そんな状態で、
その“告白”についてあれこれ詮索されたら…彼女のような人間は一体どうなるか?言うまでもなく、
彼女の精神は不安や動揺、焦燥感を堰きとめられず崩壊する。結果として、告白相手である上条本人にも
不信感を抱かれてしまったのだから…どうしようもない。というか、もはや告白どころではない。
そんな自己を喪失した彼女がやることはもう決まってる。美琴は“自爆タイマー”のスイッチをONにした。

上条「み、御坂??」

そして爆発した

美琴「うわああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」ダダダダダダダ

上条「御坂―ッ!!?」

御坂美琴は逃走を開始した。

775: 2011/09/17(土) 06:55:42.26 ID:MQk6mSLi0
上条「ちょ!?な、何がどうなってんだッ!??」

絹旗「上条さん!今は彼女を追いかけてあげてください!!」

一方通行「早くしねェと、あいつホントにどっか行っちまうぞ」

上条「そ…そうだな!分かった!!二人とも、またなっ!」

そう言って、上条は急いで美琴の後を追いかけた。

一方通行「…なァ、絹旗」

絹旗「何です?」

一方通行「超電磁砲が取り乱してたのって、ありゃァ間違いなく俺らが原因だよなァ…?」

絹旗「で…ですね…っ」

一方通行「お前が言ってたキスはともかく…。
何か重要なこと言おうとしてアイツをここに誘い込ンだのは違いねェ」

絹旗「告白…といったところでしょうか?」

一方通行「かもなァ」

分かりやすい性格をした美琴なだけに、そんな彼女の心理は二人にはお見通しだった。

776: 2011/09/17(土) 06:59:25.07 ID:MQk6mSLi0
絹旗「でも、それってお互い様ですよね」

一方通行「あン?」

絹旗「私たちだって、上条さんと御坂さんが来たせいでその…中断しちゃったんですから」

一方通行「確かに…そうだったなァ」

絹旗「続き。しますか?//」

一方通行「いや…いい。なンか冷めちまったわ」

絹旗「そーですかぁ」

一方通行「しょんぼりすンな。俺らだったら…いつでもキスできるだろ」

絹旗「え!?いつでもキスしてくれるんですか!?一方通行ったら…いつからそんな超大胆に//」

一方通行「“時と場合による”。ここ、めっちゃ重要だぜェ?衆人環視の中でしろとかゴメンだからなァ?!」

絹旗「分かってますよ。というか、そんなことまでしちゃったら…もはやバカップルじゃないですかっ!」

一方通行「すでにバカップルっぽい気がすンのは気のせいか…?自分で言うのもなンだけどよォ…」

絹旗「あー、バレましたか。そうですね、それは知ってました♪」

一方通行「知ってたンかい」

777: 2011/09/17(土) 07:04:33.23 ID:MQk6mSLi0
絹旗「あ」

一方通行「ン?どうした?」

絹旗「携帯が落ちてます」

一方通行「……」

一方通行「さっきまではこんなもン…落ちてなかったよなァ?」

絹旗「そう…ですね。ということは―」

一方通行「あのバカ二人のどっちかが落としたもンってワケかよ」

絹旗「どちらのか調べてみます?」

一方通行「まァ、誰のか調べるくれェならプライバシーにも触れねェし、大丈夫だろ」

絹旗「じゃあ、ええっと…。あ、上条さんのみたいですね」

一方通行「あのバカのか」

絹旗「…御坂さんだったら何て言ってたんです?」

一方通行「あのバカのか」

絹旗「どっちもバカなんですね」

779: 2011/09/17(土) 07:09:30.32 ID:MQk6mSLi0
一方通行「一応携帯拾っててやるか」

絹旗「というか、まだこの近くにいるかもしれません」

一方通行「今から手渡しで届けろってかァ?」

絹旗「まだ…さっきからそんなに時間も経ってませんし、遠くへは行ってないはずです」

一方通行「そりゃァそうだろうが。ってか、お前そんなに届けてェのか」

絹旗「だって!相手を追いかけるって、鬼ごっこみたいで超楽しくないですか?♪」

一方通行「ガキかテメェは」

絹旗「ガキです!」

一方通行「しまった…テメェにそういう突っ込みがきかねェの、すっかり忘れてた」

絹旗「で、どうするんですか?」

一方通行「どうするも何もお前自身行きたいンだろうがよ」

絹旗「はいっ♪」

一方通行「じゃァ、行くしかねェよな」

782: 2011/09/17(土) 07:14:13.70 ID:MQk6mSLi0
一方通行「そうと決まれば速攻で見つけるかァ」

電極のスイッチをONにする。

絹旗「能力使うんですね」

一方通行「当たり前ェだろ。自力で探してたら、最悪日付け変わっちまうぞ」

絹旗「道がいろいろ入り乱れてるのが、この学園都市ですからねぇ」

一方通行「そういやお前はどうすンだ」

絹旗「うーむ。私じゃ、あなたの高速スピードにはついていけませんしね。私を置いて行きますか?」

一方通行「オイオイ…いくらなんでもお前を置いてあのバカを追いかけるほど、奴に義理はねェよ」

絹旗「じゃあ、どうします?♪」

気のせいか。何かを期待しているような目で…彼を見つめる絹旗。

一方通行(置いていけねェとなると一緒に行くしか。となると…)

一方通行「…おんぶするしかねェのか」

絹旗「私は、おんぶよりお姫様抱っこのほうが超いいです♪」

一方通行「最初からそれが狙いかァ!!?」

783: 2011/09/17(土) 07:18:13.26 ID:MQk6mSLi0
絹旗「ワクワク♪」

一方通行「却下」

絹旗「えー!?どうしてですか!?!」

一方通行「あのな、お姫様抱っこした人間が高速移動してみろ。おかしいってレベルじゃねェから」

絹旗「レベル6ですか?」

一方通行「あァ。レベル5第1位の俺ですら、この羞恥心には勝てそうにねェ」

絹旗「そんなにおかしいですかねえ」

一方通行「少なくとも、通行人が見てたら腹抱えて笑いだすレベルだァ」

絹旗「そうですか…。そこまで力説されると、私からはもう何も言えません」

一方通行「だから、おんぶで我慢してくれな。まァ、正直おんぶで高速移動も
かなりシュールなンだが…こればっかはしょうがねェ。テメェとは離れたくねェしな」

絹旗「っ!わ、分かりました…おんぶで我慢します//」

一方通行「…?」

絹旗(いきなり『離れたくねェ』とか、反則ですよ一方通行…///)

784: 2011/09/17(土) 07:24:29.28 ID:MQk6mSLi0
絹旗「そういえばこの前…。海から帰るときも背負ってくれたんですよね」

一方通行「そうだなァ。ただ、あのときと違って今回は高速で動くワケだから、
振り落とされねェよう…しっかりつかまっとけよ」

絹旗「了解ですっ」

一方通行「あァ、風圧で痛まねェようテメェにも若干ベクトル操作施すからよォ。
移動中…くれぐれも上で変な動きすンじゃねェぞ」

絹旗「なんでです?」

一方通行「単純に気が散る。っつか、そう聞いてきたってことは何かするつもりだったンか」

絹旗「そうですね。顔を擦りつけてみたり、耳に息をふきかけてみたり。あと―」

一方通行「もうええわ…やる気満々じゃねェかお前。いいか?絶対すンなよ?」

絹旗「えー」

一方通行「あのな、お子様にも分かりやすく教えてやる。時速100kや200kのスピードで
壁に衝突でもしたらシャレになんねェから。俺は大丈夫でも、お前の命までは保障できねェから」

絹旗「壁に激突するほど集中力切らすってよっぽどですよ?そんなに…意識しちゃうってことなんですか?//」

一方通行「…悪ィかよ」

絹旗「そんな照れてる一方通行も超可愛いです//」

一方通行「なんかもう、ため息しか出ねェわ」

785: 2011/09/17(土) 07:28:13.81 ID:MQk6mSLi0
一方通行「じゃァ、行くぞ。しっかりつかまっとけよ」

絹旗「ええっと、エンジンキーは…」

一方通行「俺は車か」

絹旗「小回りが利く分、車より性能いいですけどね」

一方通行「車から離れろ」

絹旗「じゃあタクシーで!」

一方通行「余計にタチが悪いわッ!!?」

絹旗「私は褒めてたつもりなんですけど…」

一方通行「お前とコントしてたらマジで日付け変わりそうだから、もう行くわ」

絹旗「出発進行ですねっ!」

一方通行「ホント楽しそうだなお前」

そういうわけで、出発進行した。

786: 2011/09/17(土) 07:33:24.07 ID:MQk6mSLi0
その頃。上条は、いまだに美琴を追いかけていた。

上条「だから!!何で逃げんだよ御坂!!?」

美琴「一人に…、一人にさせてって!!さっきから言ってるでしょう!??」

上条「ダメだ!!ほっとけねえよッ!!!」

美琴「そ、そんなこと言われたって…!!私は今、あんたの顔を見たくない、っていうか見れない!!!」

上条「御坂…!!お前、俺に何か言おうとしてたんじゃねえのかよ!?」

美琴「え…っ」

上条「もし何か悩みがあるんなら言ってくれよ!?俺は…いつだってお前の味方なんだからなっ!!」

美琴「ちょ…っ///な、なにカッコつけたこと言ってんのよ!!///」

上条「いいから止まれってーッ!!いい加減、俺も足が痛ぇんだってっ!!」

上条(ってかアイツ、何で浴衣姿なのにあんな速く走れんだ??)

浴衣なんて障害にもならない。それくらいに全力疾走してたのが御坂美琴だった。
先ほど爆発してしまったため、頭でまともな思考ができないのは言うまでもない。
ほとぼりが冷めるには…もう少し時間がかかりそうだった。

上条(くっ…!一体どうすれば…っ)

そんな上条少年に近づいてくる影が一つ…いや、二つ。

787: 2011/09/17(土) 07:38:25.13 ID:MQk6mSLi0
一方通行「意外に早く見つかったな」

絹旗「…あの、出発してまだ3分も経ってませんよね…?」

一方通行「だな」

絹旗「一方通行のスピードが速いってのもあるんですけど、それ以前の問題なような気がします…。
だって、今走ってる場所って…携帯が落ちてたトコとほとんど離れてないですよね…?」

一方通行「これは俺の推測だが。たぶんアイツら、同じトコをグルグル回ってたンじゃねェのか」

絹旗「えぇ…っ」

一方通行「分かったろ?だからアイツらはバカなンだ」

絹旗「なんというか、面白い人たちですね」

一方通行「愉快な奴らだァ」

絹旗「っと、話してる間にもう上条さんの背中が目の前ですよ。声かけてみたらどうです?」

一方通行「あァ…そうだな」

息を吸い込み、そして叫んだ。

一方通行「三下ァ!!!」

上条「えっ…!?」

一方通行「落とし物だァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!」

788: 2011/09/17(土) 07:44:29.58 ID:MQk6mSLi0
上条「!?What??な、何で一方通行がここに!?というか落とし物って何!!?」

一方通行「落とし物は落とし物だ三下ァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!」

上条「意味分かんないですからッ!!?というか、なんか凄い怖い形相してるのは気のせいでせうか!!?」

一方通行「俺に落とし物なンか届けさせやがって、覚悟はできてンだろうな三下ァァァァァァァァァ!!??」

一方通行(お前のせいで俺は絹旗に車扱いされるわ可愛い言われるわ…散々だったンだぞ!?あァ!!?)

上条「よく分かんないけど!!なんか上条さん…とても理不尽な理由でキレられてる気がするんですよ…!?」

絹旗(ぎゃ、逆切れならぬギャクギレータってやつですか…!でも、これもまた一興です♪)

観客気分の絹旗だった。ちなみに…上条さんはあまりの恐怖ゆえ自分の後ろを
振り返れなくなっている。ゆえに、背負われてる絹旗の存在にも気付いていない。

美琴(…??な、何かあったの…?)

そして、さすがの美琴も後ろの喧騒に気付いたらしく…思わず後ろを振り向いた。すると―

上条「俺はまだ氏にたくないぞおおおおおおおおおおおおおおおっ!!?!」

美琴「きゃああああああああああああああああああっ!!??!」

鬼の形相をした上条が眼前に迫っていた(ただしくは必氏な顔だが、美琴にはそう見えた)。

790: 2011/09/17(土) 07:49:45.67 ID:MQk6mSLi0
一方通行「だから、落とし物って言ってンだろうがあああッ!!!!」

上条「落とし物…!?落とし物…ッ!?」

上条(う、上から何かを落として攻撃してくんのか!?)

もはや上条当麻は、“落とし物”を辞書通りの意味で受け取るには不可能な状態となっていた。

上条(だ、だが!俺のこの右手があれば…多少なら上からの落下物も防ぎきれるはず…ッ!!)

そう考え、彼は何かあったときのことを想定し…右手を軽く挙げた状態で走り続けた。

美琴(手…??手なんて挙げて何!?あれは、何かの合図…?!)

そこで、美琴もあらぬことを考え始めた。

美琴(いつもいつも、アイツには私の電撃は通用しなかった。でも…よく考えればそれは全く
効かなかったわけじゃなく、アイツは“手”で打ち消してたような気もする。え?じゃあ何?今アイツが
手を挙げてる意味って…私に電撃を撃ってこいと、そういうことなの??挑発してるってこと!?あれ?
でも今逃げてるのは私のほうよね…?追う側の人間が追われる側の人間に攻撃しろってどういうこと!??
そ、そうか!もしかしてアレはアイツなりの“御坂美琴と勝負しようぜ”の合図なのか!なら納得かも。
私だって、アイツにしょっちゅう勝負をふっかけてるもんね。あ、いや、やっぱりおかしいッ!!
だって、今日はお祭りなのよ!?特別な日なのよ?!アイツとはさっき屋台も回ったし、花火だって見た!!
なんでそんな状況で私に勝負なんて挑んでくんのよ…??こっちは…アンタに一体どうやって告白しようか
って凄く悩んでたっていうのに…っ!!な、何よ!?悩んでた私がバカみたいじゃないの!!?
ええ…分かったわ。アンタがその気なら、私は絶対にアンタには追い付かれないわ!!逃げ切るわ!!
超電磁砲のプライドにかけても、私は…絶対にアンタから逃げ切ってみせる…ッ!!!)

爆発の影響は甚だ残ったままだった。どうやら、ほとぼりが冷めるには今日一日はかかるかもしれない。

793: 2011/09/17(土) 08:00:14.61 ID:MQk6mSLi0
絹旗「……」

絹旗「一方通行…?」

一方通行「な、何だァ!?今追いかけるのに忙しいンだ!!」

絹旗「いやぁ…なんか楽しそうだなって思って♪」

一方通行「……」

一方通行「どうしてそう思った?」

絹旗「だって、さっきと比べると明らかにスピード落ちてるじゃないですか」

一方通行「まァな」

絹旗「というか、普通なら上条さんの背中が見えた時点で…すでに追いついてないとおかしいんですよ。
向こうは生身で走ってるのに対し、こっちは体にベクトル操作超かけてんですからね」

一方通行「あァ」

絹旗「二つ目。何でさっきから落とし物落とし物言ってんです?
『携帯を落とした!』って言えばそれで済む話、にもかかわらずですよ」

一方通行「そうだなァ」

絹旗「結論。上条さんと適度な距離を保つことで、一方通行はこの状況を楽しんでるんですよね?♪」

一方通行「かもしれねェ」

794: 2011/09/17(土) 08:02:27.14 ID:MQk6mSLi0
絹旗「一体どうしちゃったんですか?」

一方通行「テメェの影響かもな」

絹旗「??これは予想外の返答が来ましたね。私の…影響?」

一方通行「あァ。こういうバカ騒ぎが楽しいと思うようになっちまった」

絹旗「その言い方だと、私がバカっぽいんですけど…」

一方通行「綿飴を口から取ってくれだの。俺を挑発してきたヤツが何言ってやがる」

絹旗「そ、それは…!その、なんというか、祭り特有のそういう雰囲気で…気分が高揚しちゃったんです」

一方通行「だから。俺も同じなンだよ」

絹旗「え…」

一方通行「その祭りってやつで、俺も気分がハイになってンだよ」

絹旗「っ!だからこんな…“鬼ごっこ”をやってんですか?」

一方通行「やってることは凄ェくだらねェけどな…なンか楽しいンだよこういうのがよォ」

絹旗「あらら。すっかり自分に素直になっちゃったんですね」

一方通行「もっと早く気付けばよかったって、今じゃそォ思ってる」

絹旗「…これからつくっていきましょうよ。そういう思い出を!」

796: 2011/09/17(土) 08:08:10.01 ID:MQk6mSLi0
一方通行「そうだな。ただ…アイツらにとっちゃ、今この瞬間は忘れてェ思い出かもなァ」

アイツらとはもちろん、目の前を涙目で全力疾走する上条当麻と、頭が絶賛沸騰中の御坂美琴のことである。

絹旗「そんなこともないんじゃないですか?なんだかんだで、二人とも楽しんでると思いますよっ」

上条「だからッ!!何でついてくんだよ一方通行――――――!!!?」

美琴「絶対逃げてやるんだからねっ!!!!!」

一方通行「まァ、充実はしてるっぽいな」

絹旗「全力で青春を謳歌してますよね」

一方通行「っつうか、単に必氏なだけだろ」

絹旗「必氏にさせてるのはどこの誰ですか?♪」

一方通行「俺だァ」

絹旗「ですよねー。いつまで楽しむつもりなんですか?」

一方通行「あのバカが俺の不自然さに気付きゃァ終わりだよ」

絹旗「不自然さ?」

一方通行「能力使ってるくせにスピードがめっちゃ遅ェってのもあるが…。そもそも絹旗背負って
追いかけてる時点で 異 常 事 態 だろうがよ。普通のヤツなら立ち止まって状況把握に努める」

絹旗「一向に気付く気配がないのが目の前の上条さんなんですけど」

797: 2011/09/17(土) 08:12:40.22 ID:MQk6mSLi0
一方通行「それならそれで、いつまでも追い回すだけだァ!!」

絹旗「あちゃー。日付け変わっちゃうかもしれませんね」

一方通行「ま、冗談だがなァ。俺の電池のことだってあるしよォ」

絹旗「……」

一方通行「?何だァ?」

絹旗「いや、まさか花火大会が“こんな展開”になるなんて…予想もしてなかったので!」

一方通行「誰にも予想できねェよこんなワケ分かんねェ展開」

絹旗「第1位ですら演算できなかったんですか?」

一方通行「演算とかそういう問題じゃねェだろ」

絹旗「ですね。今の一方通行は鬼ごっこを楽しむ…ただの一般人です♪」

一方通行「もっとも、鬼の交代はなさそうだぜェ。とんだ“一方通行”な鬼ごっこもあったもンだ」

絹旗「一方通行なだけに…ですか?」

一方通行「『こっから先は一方通行だァ!!』ってやつだな」

絹旗「あぁー!!その名言、私… 一回聞いてみたかったんですよっ!!
うわっ、本当に聞いちゃった。超嬉しいです//」

一方通行「そんな立派な言葉だったンかこれ」

799: 2011/09/17(土) 08:17:23.12 ID:MQk6mSLi0
上条「って、あれ…?一方通行の奴、絹旗を背負って何やってんだ…??」

上条が足を止める。

美琴「あ、あれ…?何であいつ、追っかけてこなくなったのよ…っ!」

美琴が足を止める。

一方通行「どうやらゲーム終了のようだぜェ」

絹旗「あれ。終わっちゃったんですか。もう少し長引くと思ってたんですが…」

一方通行「…また、アイツらと遊びてェか?」

絹旗「はいっ!そういう一方通行もですよね?♪」

一方通行「そうかもなァ」

絹旗「そうだ!この際だから、二人と遊ぶ約束取り付けちゃいましょう!!」

一方通行「慌てンな。まずは…あのバカに携帯渡すとこからだァ」

絹旗「ぁ…そういえば、元々はそのために追いかけてたんでしたっけ?!すっかり携帯のこと忘れてました…」

一方通行「心配すンな。俺もさっきまで忘れてた」

800: 2011/09/17(土) 08:22:38.09 ID:MQk6mSLi0
絹旗「…一方通行」

一方通行「ン?」

絹旗「今日は。楽しかったですか?」

一方通行「見て分からねェか?楽しかったに決まってンだろ」

絹旗「それを聞くと…。あなたを花火大会に誘って良かったって、そう思いますっ!」

一方通行「来年も来てェよな」

絹旗「はい。一緒に来ましょうね」

とある学園都市の一方通行
とある学園都市の絹旗最愛

一方通行「…俺からも。今度誘っていいか?」

絹旗「あなたからの誘いを断るわけないじゃないですか。だって―」


そんな― とある二人の物語


「私は、一方通行のことが超好きなんですからっ!///」

Fin

801: 2011/09/17(土) 08:24:13.63 ID:MQk6mSLi0
終わりです!支援、保守、見てくれた人、ありがとうございました!

802: 2011/09/17(土) 08:24:40.65 ID:Rm5ESd8j0
面白かった!乙

803: 2011/09/17(土) 08:26:09.85 ID:4nBc85ob0
楽しかったー!乙

引用: 浜面「一方通行×絹旗とかどうだろう?」