155:◆GWARj2QOL2   2017/05/26(金) 21:22:51.03 ID:okCOm2oLO




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チェイス「雛見沢…」その1

梨花「…」

チェイス「…」

梨花「ふわぁ…」

チェイス「…」

梨花「…ん…」

チェイス「寝るのならば、電気を切るべきだ」

梨花「窓際で座られてたら気になって眠れたもんじゃないわ」

チェイス「…」

梨花「…アンタも寝てみたらどうなの?綿流しまではまだ…」

チェイス「必要ない」

梨花「…あ、そ」

チェイス「…」

梨花「…」

チェイス「…綿流しの練習は、上手くやっているか?」

梨花「娘にコミュニケーション取ろうと頑張ってる父親みたいなのやめて?」

チェイス「…」

梨花「…まあ、33年振りとはいっても身体は覚えてるみたい。すぐ取り戻したわ」

チェイス「…」

梨花「…ただ、あの鍬の重さは慣れないわね。腕がもうパンパン」

チェイス「…身体は、変わっていないからな」

梨花「…」

チェイス「…」

156: 2017/05/26(金) 21:23:35.33 ID:okCOm2oLO
梨花「…綿流しが、何でああいうお祭りなのか、知ってる?」

チェイス「知らない」

梨花「ああそう。…ま、羽入のことだから、それは言わなくて当然よね」

チェイス「?」

梨花「…アンタ、布団を切り裂くっていうところに何か思わない?」

チェイス「処分するのなら、もっと手早い方法があるはずだ」

梨花「雛見沢の人間はゴミに願い込めてんの?」

チェイス「…ならば、何だ?」

梨花「…そうねぇ…あれは、ね」

チェイス「…」

梨花「…布団を、人間に見立ててやってるのよ」

チェイス「!」

157: 2017/05/26(金) 21:24:37.67 ID:okCOm2oLO
梨花「そうなれば、あの綿が何か。分かるでしょ?」

チェイス「…内部か」

梨花「…もっと分かりやすく言えば、臓物。言わば「腹わた」ね」

チェイス「…」

梨花「腹わた。だから布団の綿を使ってるの」

チェイス「…何故、そんな風に…」

梨花「…オヤシロ様。まあ、羽入よ」

チェイス「…」

梨花「…オヤシロ様はね、人間の臓物を好むのよ」

チェイス「!」

梨花「…っていう、ここの村人の考えよ」

チェイス「…」

梨花「あの顔と性格で人間の内臓なんか食べるわけないでしょ。あいつの好きな物は甘い物だけよ」

チェイス「…」

梨花「…その昔、ここではね、鬼が出たって言い伝えがあるのよ」

チェイス「…鬼…か」

梨花「昔はね、雛見沢ではなく、「鬼ヶ淵村」と呼ばれていたの」

チェイス「…」

梨花「地獄を追い出された人食い鬼が村人を襲って、皆は鬼を恐れた」

チェイス「…」

梨花「でもその時、オヤシロ様と呼ばれる神の仲裁で鬼と人間が共棲するようになったという…伝承があるのよ」

チェイス「…」

158: 2017/05/26(金) 21:25:30.01 ID:okCOm2oLO
梨花「羽入も良い迷惑よ。いつも言ってたわ。どうせお供えするならシュークリームにしろって。それで私に食べろって」

チェイス「…味覚は繋がっていると言っていたな」

梨花「ええ。…ホント…」

チェイス「…」

梨花「…ホント…いつもいつも…」

チェイス「…梨花…」

梨花「…ごめん。話、変えて」

チェイス「…竜宮レナの、ことだが」

梨花「…名前のことかしら?」

チェイス「そうだ。あの子は家では礼奈と呼ばれていた」

梨花「…そうね」

チェイス「…それは、何故だ?」

梨花「…あの子はね…」

チェイス「…?待て」

梨花「何?」

チェイス「…」

梨花「…どうしたの?」

チェイス「…微かだが、叫び声が聞こえる」

梨花「…叫び声?…ん…」

『…ゃーん』

梨花「…本当ね」

チェイス「…聞き覚えのある声だ」

梨花「…」

チェイス「行くぞ」

梨花「え?」

チェイス「この声は、只事ではない」

梨花「え!?ちょ…今私、寝間着!!」

チェイス「お前を一人には出来ない」

梨花「え!?ちょ…あ!あーーーーーー!!!!」

159: 2017/05/26(金) 21:26:10.42 ID:okCOm2oLO
…。

レナ「…」

リナ「礼奈ちゃん!!しっかりして!!…あーもう!!さっさと開けてよ!一つしかない診療所の癖に!!」ガンガン

レナ「…」

リナ「こんなとこで、こんなことで氏ぬんじゃないわよ!!…ったく!!早く開けて!!」ガンガン

「…は、はぁい…」

リナ「はぁいじゃない!!開けろ!!とにかく!!」ガン!!

「…ど、どちらさまですか?もう今日は…」ガチャ

リナ「急患!!急患なの!!」

「…!!り、竜宮さん…!?何故…!」

リナ「事情は後で説明するわよ!!今はとにかくこの子の手当てして!!」

「は、はい!すぐに!!」

リナ「礼奈ちゃん?病院着いたからね!?すぐ良くなるからね!?」

「…あ、あの…貴方は…?」

リナ「口動かす前に手ぇ動かせ!!」ゲシッ

「は、はいぃ!!」

リナ「…」

リナ「(…何故…?)」

リナ「(…こっちの台詞よ…!!あのバカガキ…!)」

…。

160: 2017/05/26(金) 21:27:04.72 ID:okCOm2oLO
…。

レナ「…」

リナ「礼奈ちゃん!!しっかりして!!…あーもう!!さっさと開けてよ!一つしかない診療所の癖に!!」ガンガン

レナ「…」

リナ「こんなとこで、こんなことで氏ぬんじゃないわよ!!…ったく!!早く開けて!!」ガンガン

「…は、はぁい…」

リナ「はぁいじゃない!!開けろ!!とにかく!!」ガン!!

「…ど、どちらさまですか?もう今日は…」ガチャ

リナ「急患!!急患なの!!」

「…!!り、竜宮さん…!?何故…!」

リナ「事情は後で説明するわよ!!今はとにかくこの子の手当てして!!」

「は、はい!すぐに!!」

リナ「礼奈ちゃん?病院着いたからね!?すぐ良くなるからね!?」

「…あ、あの…貴方は…?」

リナ「口動かす前に手ぇ動かせ!!」ゲシッ

「は、はいぃ!!」

リナ「…」

リナ「(…何故…?)」

リナ「(…こっちの台詞よ…!!あのバカガキ…!)」

…。

161: 2017/05/26(金) 21:27:47.14 ID:okCOm2oLO
レナ『…』

リナ『礼奈ちゃん!!起きて!!』

『…』

リナ『…!ちょっと!!アンタもボーッとしてないで!!病院に電話しなさいよ!!』

『…』

リナ『…!!ああもうこの役立たず!!』

レナ『…』

リナ『この…!バカで生意気な癖に…!』

『…』

リナ『アタシはこの子を病院に連れてく!!妙な気起こすんじゃないよ!!』

『…』

リナ『…起こす気にもならない…みたいね…!本当のバカだわ…!!』

…。

……。

リナ「…」

「…」

リナ「…」

「…一応、傷は浅いようです。手当もしましたし、いずれ目を覚ますでしょう」

リナ「…」

「…さて」ギシッ

リナ「…」

「…何故、こうなったんですか?」

リナ「…」

「約束した訳ではありませんが、聞かないことにはこちらも納得がいきません」

リナ「…」

「落ちたり転んだりして出来た傷ではありません。もし頭頂部から落ちて尚且つ血が出るほどなら、ダメージを受けるのは頭だけではなかったかもしれませんから」

リナ「…」

「…説明して、頂けませんか?」

リナ「…どこから、どう説明すれば良いのか…」

チェイス「全てを説明すれば良い」

リナ「!」

「!」

162: 2017/05/26(金) 21:28:26.31 ID:okCOm2oLO
「…そうですか。貴方が最近雛見沢分校に赴任したという…」

チェイス「紫 左之助だ」

入江「私はこの診療所で医者をやっている、入江という者です。よろしくお願いします」

梨花「入江は雛見沢ファイターズという野球クラブの監督もやっていますです。ですからボク達には監督と呼ばれているのですよ」

チェイス「…」

入江「…さて」

リナ「…」

入江「…間宮、リナさん」

リナ「…」

入江「私は警察ではありません。貴方を逮捕する権限もありませんから」

リナ「…」

入江「ゆっくりで構いません。…私達も黙って聞いています。ですから」

リナ「…」

入江「…何があったのか、話して頂けませんか?経緯も、レナさんの事も」

リナ「…」

チェイス「…まずは、何故お前があの家にいたのか、だ」

リナ「…」コク

…。

……。

163: 2017/05/26(金) 21:29:14.75 ID:okCOm2oLO
リナ「はぁーい!ご来店ありがとうございまーす!リーナでーす♪」

「…」

リナ「何ー?お客さん暗いよー?何かやな事あった?」

「…ええ」

リナ「…そうなんだー…じゃあさ、飲んで!今だけでも忘れよっか?」

「…頂きます」

リナ「何それー!丁寧過ぎー!」

「あ、す、すいません…慣れていないもので…」

リナ「お客さん何歳?」

「…もう、40を…」

リナ「え!?それでこういうお店初めて!?」

「…え、ええ…」

リナ「真面目だねー…今時珍しー…」

「…妻以外の女性とは、ほとんど会話もしたことがなくて…」

リナ「…もしかしてじゃなくても、別れちゃった?」

「…ええ」

リナ「…そっかー…真面目そーなのに…」

「私と妻は、同じ職業で…ですが稼ぎに大きく差があって…」

リナ「奥さんのが稼いでたの?」

「…ええ」

リナ「ふーん…まあ、無いことはない、よね」

「…私には才能が無いのだと、よく他の仕事をするよう勧められました」

リナ「…」

「…ですが、女々しいことに私は諦めきれず…最後には愛想を尽かされました。あれこれと尽くしてはみましたが…」

リナ「…そうなんだ」

「結局妻は新しい出会いを見つけ、出ていきました。…しかも」

リナ「?」

「一人娘すらも取ろうと、浮気相手に何度も会わせていたんです。懐くように、と」

リナ「…ほー…」

「娘はそれが浮気相手だとは知らず、まるで近所の人に接するように仲良くなっていました」

リナ「うん」

「…ですが、その背景を知らなかった私は、妻の浮気を知った時、娘もきっと分かっていたのだと、つい…当たってしまいました」

リナ「…あちゃー…」

164: 2017/05/26(金) 21:29:59.60 ID:okCOm2oLO
「…娘はそれ以来、母親の話題を一切出すことはなく、私を慰めようと必氏になっていました」

リナ「…」

「…妻も娘の事は諦めたのか、莫大な慰謝料を置いて、一方的に離婚届を渡してきましたよ」

リナ「!」

「…それで、逃げるように雛見沢に戻ってきました。全てを忘れたいと、願って…」

リナ「…」

「…それに、娘は…」

リナ「…ん?」

「…いえ、何でもありません…。申し訳ありません。いきなり変な話を…」

リナ「良いよぉ。そういうとこだもん。ここ」

「…貴方の聞き上手に、つい甘えてしまいました」

リナ「そう?…だったら嬉しいなぁ」

「…」

リナ「アタシで良かったらいくらでも聞くよ!愚痴でも何でも!」

「…はい」

リナ「今はまだヤル気も湧かないかもしれないけどさ、これからこれから!だからまた来てよ!いつでも良いからさ!」

「…はい」

リナ「アタシは間宮リナ!お客さんは?」

「…竜宮です」

リナ「カッコ良い苗字じゃーん!忘れないから!絶対!」

「…はい!」

…。

165: 2017/05/26(金) 21:30:41.73 ID:okCOm2oLO
リナ「…初めはさ、良いカモ見つけた。ってくらいにしか思ってなかった。店の売り上げアップさせて、給料上げてもらおうとかしか…」

入江「…」

チェイス「…」

梨花「…」

リナ「…でもね、向こうは本気だったんだ」

チェイス「知っている。俺もその本気振りは見た」

リナ「…竜宮さんが来たのは、その2日後」

入江「…」

リナ「いきなりさ、プレゼントだって、高いネックレス持ってきて。正直引いたんだけど…お店だから。拒否するわけにもいかなくてね」

梨花「…」

リナ「…でも、それだけじゃなかった」

入江「…」

…。

「り、リナさん!何か、の、飲みたいお酒はありますか?」

リナ「え?…んー…じゃあね、コレかなぁ?」

「わ、分かりました!じゃあそれをボトルで!」

リナ「…え?本気?結構高いよ?」

「だ、大丈夫です!お金なら…」

リナ「あ…あ、そ、そう…」

…。

166: 2017/05/26(金) 21:31:24.28 ID:okCOm2oLO
チェイス「酒と女に、溺れていったか」

梨花「そういうの何処で覚えてきたのですか?」

リナ「…まあ、そんなところ。…試しにさ、アフターって事で高い中華料理店に連れてってもはいどうぞでお金出すし…」

チェイス「…」

リナ「…これは相当持ってるなって、思って」

入江「…」

リナ「…そしたらね、何だかお金に対してどんどんがめつくなっていったのよ。アタシ。…元からだけど」

梨花「…」

リナ「…いつまでこんな無差別に媚びへつらう商売やってなきゃいけないんだ…って」

梨花「…園崎の上納金に手を出しましたですか?」

リナ「…!…うん。そう」

入江「!…そ、それは…」

リナ「ヤバイってのは…分かってるよ。今だって余裕なんか無い」

チェイス「…」

リナ「…でも、ある日ね?店のマスターが金庫開けてたのを見たの。今月の上納金の確認…って」

入江「…」

リナ「…一件だけでも、とんでもないのにさ。それが何十件もあるんだよ?上納金って」

チェイス「お前達が働いて稼いだ金を持っていくのが、気に食わなかったということか」

リナ「…園崎に一泡噴かせてやろうってのは、あったよ。確かに」

梨花「…」

リナ「…でもそれよりも、お金だ。いっぱいある…ってのが大きかった」

入江「…」

167: 2017/05/26(金) 21:32:05.41 ID:okCOm2oLO
リナ「それでね。お店で働き出した時にたまたま目をつけたガラの悪い、金髪のオッさん…鉄平に話をしたの」

チェイス「北条鉄平とは、そこで関係を持ったか」

リナ「…うん。特別な関係、じゃない」

入江「…」

リナ「…ある程度ボディーガードになってくれて、金にがめつくて、それでいていつでも切れる関係」

梨花「鉄平は、どんな感じだったのですか?」

リナ「…少し渋ったけど、了解したよ。…金に困ってそうだったし」

チェイス「…」

梨花「…それで、今は鉄平からも逃げているのですね」

入江「…つまり、貴方は途中で園崎への上納金を独り占めしたわけですね?」

リナ「…」コク

チェイス「…それでいて、敢えて近くにいることで疑いをかけられないようにした」

梨花「その一番丁度良かったのが、竜宮家なのですね」

リナ「…」コク

入江「…」

リナ「でも、そのせいで竜宮さんの無駄遣い癖は悪化した。とんでもないくらいに」

梨花「…」

リナ「…ついでに竜宮家の財産も取ってやろうと思ったけど、やめたわ」

梨花「?」

リナ「このままじゃ無くなるのもそう遠くないなって思って…」

入江「…それは、どういうことですか?」

リナ「…これだけやっておいて、何だけどさ…」

チェイス「…」

リナ「あの人、アタシがあの家に来て一番初めに買ったグラスを凄く大事そうにしてたんだ」

梨花「?」

リナ「それをつい割っちゃってね。…必氏にかき集めながら悲しんでる姿を見て、思ったのよ」

入江「…」

リナ「…哀れだな…って」

168: 2017/05/26(金) 21:32:45.82 ID:okCOm2oLO
リナ「勿論、アタシがこんなこと言う資格が無いのは分かってる。アタシが原因みたいなもんだし…」

チェイス「…別れを切り出したことで、逆上してきたわけか」

リナ「…うん」

入江「…それを、レナさんが庇った。ということですか」

リナ「…どうして、アタシなんか…」

梨花「…」

リナ「本来、煮ても焼いても足りない相手の筈なのに…」

入江「…」

チェイス「…そう思うならせめて、レナが目を覚ました時に連れ添ってやれ」

リナ「…」

チェイス「…だがそれは、お前の為ではない」

リナ「…!」

チェイス「父親を人頃しにはさせないという、レナの強い思いだ」

リナ「…うん」

梨花「…」

チェイス「…お前のもう一つの罪に関しては、後回しだ」

リナ「…うん…」

169: 2017/05/26(金) 21:33:23.93 ID:okCOm2oLO
レナ「…」

リナ「…」

…。

入江「…まさか、あの明るさの裏にこんな事情があったとは…」

チェイス「…悟られまいと、必氏に隠していたんだろう。これは家庭の事情…だと」

梨花「…左之助。レナが何故礼奈と呼ばれているか。ボクからお話しますです」

チェイス「…」

入江「…」

梨花「…レナの家庭事情は、先のリナのお話で大体合っています」

チェイス「…」

梨花「幼い頃の両親の離婚。知らないうちに自分も共犯になっていたことの、罪の意識」

チェイス「…」

梨花「…レナは、それを一気に背負ってしまったのです」

入江「…」

梨花「…その残酷な運命は、やがてレナの心を蝕んでいきました」

チェイス「…」

梨花「そしてレナは、「い」やな事を忘れようとれ「い」なの「い」を取って、「レナ」というもう一人の人格を作り上げたのです」

チェイス「…だが今回は、忘れようとはしなかった」

梨花「…はい。レナは「逃げず」に立ち向かったのです。家庭の問題と」

入江「…そうでしたか」

梨花「立派なのです。レナは」

チェイス「…そうだな」

170: 2017/05/26(金) 21:34:00.87 ID:okCOm2oLO
梨花「…リナは、改心するでしょうか?」

チェイス「分からない」

梨花「…いつもみたいに、言い切らないのですか?」

チェイス「更生するきっかけを与えても、そう素直には戻れない」

梨花「…」

チェイス「…女心というものは、分からない」

梨花「貴方からそんな言葉を聞けるとは思わなかったのですよ」

チェイス「…それよりも。あいつらにはやらなければならないことがある」

入江「…園崎の上納金をくすねた罪は、とても重いものですからね…」

梨花「ここでは園崎が右と言えば右。園崎がリナや鉄平に罰を与えるというなら、ボク達は逆らわないわけにはいかないのです」

チェイス「…何故、そこまで園崎は…」

「…それは、むかしむかー…しに、遡るのよ…」

171: 2017/05/26(金) 21:34:44.75 ID:okCOm2oLO
チェイス「…」

「…うふふ」

入江「…た、鷹野さん?」

鷹野「ごめんなさぁい。たまたま通りがかったら明かりが点いていたものだから…つい」

梨花「こんな時間にお散歩なのですか?」

鷹野「ええ。でもちゃあ…んとボディガードが付いてたから大丈夫よぉ?ねー…?ジロウさん?」

富竹「…あ、あはは…」

チェイス「…」

梨花「左之助。紹介しますです。この女の人は鷹野三四。男の方は富竹ジロウ。鷹野はここの病院でナースのお仕事をしていて、富竹はカメラマンをやってるのですよ」

チェイス「…」

鷹野「最近越してきた変わった服装の青年って…もしかして貴方?」

チェイス「…最近越してきたのは、確かだ」

富竹「た、鷹野さん…いや、申し訳ない。えー…と、左之助さん。かな?」

チェイス「…そうだ」

富竹「僕は本来野鳥専門のカメラマンをやってるんだけどね。ここの綿流しの祭りが好きで、毎年撮りに来てるんだ!」

チェイス「…」

富竹「宜しく!」

チェイス「…」

富竹「…?」

チェイス「…」グッ

富竹「…!?い、痛たたたたたた!!!?」

鷹野「!?」

172: 2017/05/26(金) 21:35:19.81 ID:okCOm2oLO
富竹「あ、あはは…力が強いなぁ。握り潰されるかと…」

チェイス「すまない。それなりに加減はしたが…」

梨花「左之助はこう見えてゴリラのような力を持ってるのです。怒らせると怖い怖い、のですよ?」

鷹野「…良いかしら?お話の続き…」

チェイス「続けろ」

鷹野「…そうねぇ…これは、どれだけ遡るかし……あら?あそこにいるのは…レナちゃん?」

梨花「…レナは今、怪我をして寝てるのですよ」

入江「え、ええ。ですが、軽いもので…明日にも退院出来ますから」

鷹野「…そう。入江先生が仰るなら…うふふ」

チェイス「…」

鷹野「…それでね?何故園崎がここまでになったのか…それのキーワードは…」

チェイス「…」

鷹野「…「人肉缶詰」…」

梨花「…」

173: 2017/05/26(金) 21:35:56.26 ID:okCOm2oLO
チェイス「…それは?」

鷹野「…貴方、この村が昔何て呼ばれてたかは知ってる?」

チェイス「鬼ヶ淵村、だと聞いた」

鷹野「そう…それは知ってるのね」

チェイス「…」

鷹野「なら、本題に入りましょう」

チェイス「…」

鷹野「…終戦後のお話でね。日本中では物資の不足が問題となっていたの」

チェイス「…」

鷹野「勿論、この辺だって例外ではないわ。食料だって、何だって不足してたらしいわ」

チェイス「…」

鷹野「…でもね?そこで活躍した人物が、当時も今も変わらない御三家の一つ、園崎。その一族の一人、園崎宗平なのよ」

チェイス「…宗平…」

鷹野「ええ。彼は食料飢饉だった筈の当時、大量の缶詰を所有していてね…貴重なタンパク源だからって、皆が押し寄せたわ」

チェイス「…」

鷹野「園崎宗平はね、それを闇市で売り捌いて、財を成したの」

チェイス「…」

鷹野「そのお金で雛見沢を近代化させようと、彼は画策したわ。…でもね?」

チェイス「…」

鷹野「…ある日、一人の男性がその缶詰から、ある物を発見したの」

チェイス「…何だ?」

鷹野「…髪の毛。なんだって…人間の…」

チェイス「…」

174: 2017/05/26(金) 21:36:38.63 ID:okCOm2oLO
鷹野「そこからはバッシングの嵐。宗平は人肉を缶詰にして売っていた、だなんて揶揄されたのよ」

チェイス「…」

鷹野「…でもね?彼は一切口を噤んで、その問題には言及しようとしなかったの」

チェイス「…」

鷹野「結局宗平は雛見沢に舞い戻り、その財力で御三家の残り、古手、公由家を手助けしたのよ」

チェイス「…力関係は、その時からか」

鷹野「ええ。…今ではもう、その缶詰が何だったのかは分からないけれど…」

チェイス「…宗平にしか、分からない事だ。深く追求することもない」

鷹野「…でも、気になるじゃない?こういう歴史って…」

チェイス「…」

鷹野「好きなのよねぇ…歴史…」

チェイス「…」

鷹野「…あら?もうこんな時間…」

富竹「…!?あ、ほ、ホントだ…!鷹野さん!明日早番じゃないの!?」

鷹野「大丈夫よぉ。ちょっとくらい…」

入江「…せめて、私のいないところで仰ってくれませんかねぇ…?」

梨花「…どうして富竹が鷹野の予定を知ってるのですか?」

富竹「えっ!?そ、それは…たはは…」

鷹野「…うふふ…お子様には、まだ分からない事よぉ…」

梨花「…むー…」

鷹野「…あらー…可愛らしいわぁ…!」プニプニ

チェイス「…帰るぞ。梨花」

梨花「え?」

チェイス「もうお前は眠らなければならない。家に行くぞ」

梨花「連れて来たのは左之助なのです。それに、レナが…」

チェイス「…少なくとも、今は大丈夫だ」

梨花「…?」

チェイス「…」

鷹野「…」

175: 2017/05/26(金) 21:37:21.48 ID:okCOm2oLO
…。

梨花「…」

チェイス「…」

梨花「…ねえ。私はぬいぐるみじゃないんだけど」

チェイス「お前の護衛も俺の任務だ」

梨花「そうかもしれないけど…レナの事が…」

チェイス「…」

梨花「…こんな急いで出る事もなかったんじゃないの?」

チェイス「…あの、3人は…」

梨花「?」

チェイス「あの3人は、信用するな」

梨花「…え?」

チェイス「あの3人は、嘘をついている」

梨花「…何を…」

チェイス「身のこなしが、素人ではない」

梨花「…?」

チェイス「そして微かだが、鷹野の首筋に硝煙の反応があった。洗い流しきれていなかったようだな」

梨花「…」

チェイス「俺の目は人間とは違う。ある程度なら調べずとも判別出来る」

梨花「…それって…」

チェイス「あの女は、危険だ」

梨花「…!!!だ、だったら!!」

チェイス「今は手出し出来ない。レナは軽い怪我だと言い切った手前、それは考えられない」

梨花「…で、でも…ほら、もしかしたら、花火でもやってたのかも…」

チェイス「…花火と銃の火薬は、違う」

梨花「…」

チェイス「そして、もう一つ。根拠がある」

梨花「…何?」

チェイス「…俺の…」

梨花「…」

チェイス「…勘だ」

176: 2017/05/26(金) 21:38:26.42 ID:okCOm2oLO
リナ「…zzz…」

レナ「…」

リナ「…zzz」

鷹野「…」

入江「…夏とはいえ、夜にその格好では風邪を引いてしまいますよ」パサ

富竹「…きっと、それだけ必氏だったんだろう。肩や服に血が付いていても、気にもしていない」

入江「…根っから悪い人なんて、この世にはいませんよ」

リナ「…ん…zzz…」

鷹野「…ねえ。入江所長」

入江「はい?」

鷹野「この方って、「そういう」人なのよね?」

入江「…え?」

鷹野「園崎系列の末端の店で働いてるような子なんだから、身寄りも無いのでしょう?」

入江「…恐らくは」

鷹野「…そうなの…」

富竹「…鷹野さん…?」

鷹野「…うふふ…」

第7話 終

177: 2017/05/26(金) 21:38:57.27 ID:okCOm2oLO
続きまたそのうち書きます

178: 2017/05/26(金) 22:32:37.76 ID:gNr6znP+o

179: 2017/05/27(土) 02:06:09.71 ID:eixN0c8z0
機械生命体魂…


引用: チェイス「雛見沢…」