310:◆GWARj2QOL2   2017/06/10(土) 00:14:37.19 ID:uQrDoXrNO




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チェイス「雛見沢…」その1

鉄平『…』ボッ

『うおっ…よく燃えんなぁ…』

鉄平『…』ポイッ

『…おまっ…そんな簡単に…!』

鉄平『ボサボサしとれんのじゃ。躊躇っとったら氏ぬぞ』

『…!』

『うわっ!?煙だ!!火が出てるぞ!!』

『かなり燃えてるぞ!!何が起きた!?』

『水だ!水持ってこい!!』

鉄平『…よし!今じゃ!』ダッ

『…あー!!もうどうにでもなれ!!』ダッ

小此木『ゴホッ!!ゴホッ…!か、火事だ!!火事だ!!!』

鉄平『…!』

小此木『誰か!水だ!水持ってこい!このままじゃ全員お陀仏だぞ!!』

『…おい!リナだ!居たぞ!』

鉄平『!』

リナ『…』

鉄平『…貴様…よくもこのワシを…!』

リナ『…鉄平…』

『怒るのは後にしろ!運ぶぞ!』

鉄平『…ッチィ!』

リナ『ま、待って!』

『待てるか!!』

リナ『向こうの部屋!向こうの部屋にもう一人捕まってる!!』

『ぁあ!?』

リナ『助けてあげて!!あっちも殺されそうなの!!』

鉄平『…ああクソ!!』ダッ

『早くしろよ!!』

…。

鷹野『小此木!!ジロウさんを捕まえて!!』

小此木『!?…テメェ…!』ガチャッ

鉄平『…』コソッ

富竹『…!』

鉄平『…フンッ!』ブンッ

小此木『…逃がッ!?』ドカッ

鉄平『…』

富竹『…え?』

小此木『がっ…!痛ぇ…!!』

…。

311: 2017/06/10(土) 00:15:16.36 ID:uQrDoXrNO
リナ「?え゛え゛…」

「…な、何だァ?こいつ…」ブオオオオン

鉄平「知るか。またいつもの嘘泣きに…」

富竹「違う」

鉄平「?」

富竹「彼女は、本当に命を諦めかけていたんだ」

鉄平「…まあどうでもええわ。…いやどうでも良くないのう」

富竹「…」

鉄平「…ありゃあ何じゃ?拳銃まで持っとったぞ」

富竹「…あれは…」

リナ「…あいつら、この村の住人全員頃すつもりだって」

鉄平「…!?」

「…な、何だそりゃ。どういうことだ?」

リナ「…あいつら言ってたわ。保管庫にある毒ガスで住人を全員頃して、雛見沢症候群に見せかけるって…」

「…んな突拍子もねぇ話…」

富竹「…本当だよ」

鉄平「…何?」

富竹「あそこにいた拳銃を持っていた女性は鷹野三四。…山狗という小隊の長だ」

鉄平「…あいつがか?」

富竹「最も彼女は軍の訓練を受けていないから、銃は撃てても当てられる程の技術は無い。受け身の取り方も分からない」

「…そんな奴が、どうして…」

富竹「実質、隊の指揮を取っているのは、貴方が殴り倒した小此木という男だ」

鉄平「…」

富竹「あの場は冷静さを失っていた上、不意打ちで何とかなったけど…本来の彼は山狗の中でも選りすぐりの隊員だ。もし彼と面と向かっていたら、きっと二人とも命は無かった」

「…そんなやべぇ奴なのか…顔見られてねぇよな?」

鉄平「こっちはこのアマさえ捕まえられりゃ何でもええんじゃ。戦おうだなんて思っちょらん」

リナ「…アタシ、本当は燃やされる予定だったんだって」

鉄平「…あ?」

312: 2017/06/10(土) 00:15:57.08 ID:uQrDoXrNO
リナ「鷹野って女は、この村のナースの振りして、本当はあの部隊の隊長だった。小此木って奴が…何だっけ?さん…さ?」

富竹「鷹野三佐。彼女の軍での階級だよ」

「…」

富竹「東京大学を首席で卒業。エリートとして色んな人脈を作り、山狗という部隊を立ち上げた…」

鉄平「…ワシが一番嫌うタイプのアマじゃのう」

富竹「三佐の階級と山狗の地域に浸透した諜報網、そして必要とあれば県警から日本政府に至るまでを動かすことができる絶大な権力を彼女は所有している」

鉄平「…あー…」

「悪ぃ。もうちょっと分かりやすく説明してくれ」

富竹「偉いって事さ」

鉄平「極端にも程があるわ」

富竹「…というより、出来ればこの拘束を解いて欲しいんだ。流石に腰が痛くなってきてね…」

鉄平「お?…おお」

リナ「…良いよ。アタシがやるから、続けて」

富竹「ありがとう。…しかし、それはつい最近までだったんだよ」

鉄平「…?」

富竹「…その昔、高野一二三という、雛見沢症候群の研究をしていた男がいてね…」

「…さっきも言ってたけどよ。その雛見沢症候群ってなぁ…何だ?」

富竹「この村特有の寄生虫による病気さ。これに感染するとその人間は凶暴化し、全てを信用出来なくなる」

鉄平「き、寄生虫…?」

富竹「この村にいる以上、感染率は100%だ」

リナ「え…?」

富竹「君達も、僕も感染している」

「…身体ン中に虫が入ってるたぁ…気持ちの悪い話だなぁ」

リナ「そういう問題…?」

313: 2017/06/10(土) 00:16:40.13 ID:uQrDoXrNO
鉄平「…で、それはいつ発症するんじゃ」

富竹「具体的には決まっていない。けど、少しでも不安を感じたら、それは始まる」

リナ「不安…?」

富竹「例えば、誰かを信用出来なくなったり…そんなことはなかったかい?」

鉄平「そんなことしかないわ」

リナ「…」

富竹「…えっ…?」

鉄平「ワシはこのアマに儲け話持ち掛けられて、全部掻っ攫われたんじゃ」

富竹「…それで、発症していないのかい?」

鉄平「その話がデタラメなだけと違うんか?」

富竹「そ、そんなはずはない!既に前例が…」

鉄平「…」

「守りたいモンが出来た。からじゃねぇのか?」

鉄平「あ?」

富竹「え?」

「…その鉄平って奴ァな、自分の為じゃなく、人の為に命を捨てたんだ」

富竹「…」

「細けぇことは分からねぇけどよ。つまり…自分の命の為に人を攻撃するってことだろ?その病気ってのは」

富竹「…そう、だね。宿主が氏ねば寄生虫も氏ぬ。寄生虫は生きる為に宿主を利用する…」

「だが、こいつはその寄生虫には従わなかった」

鉄平「…」ポリポリ

「つまり、勝ったってことだな」

富竹「…そんな…」

鉄平「…」ポリポリ

リナ「…鉄平…」

314: 2017/06/10(土) 00:17:17.34 ID:uQrDoXrNO
鉄平「…確かに、前までのワシならその寄生虫にかからずとも人なんぞ誰も信用しとらんかったわ」

富竹「…」

鉄平「…ま、それも大金の前じゃ何てことないモンじゃったがのう…」

リナ「…」

鉄平「…お前に持ち逃げされて、無一文で逃げるように雛見沢におる沙都子っちゅう、一応家族の家に転がり込んだ」

リナ「!…そんな近くに…」

鉄平「……昔は、よう虐めとったわ。ドン臭くてのう…」

「…」

鉄平「…そこは変わっとらんかったが…」

富竹「…」

鉄平「唯一頼りにしとった兄もおらん、親もおらん。家族なんざだーれもおらん状態でのう…」

リナ「…」

鉄平「それでも、必氏で生きているあいつの顔が…とんでもなく眩しく見えたんじゃ」

「…」

鉄平「…それに比べワシは、何をしとるんか…そう思ってな」

富竹「…守りたいものが、出来た…」

鉄平「…お前もその内分かるわ」

リナ「…アタシも、ね」

富竹「?」

鉄平「…」

315: 2017/06/10(土) 00:17:56.95 ID:uQrDoXrNO
リナ「アタシも、雛見沢に隠れてたんだ。そっちのが見つからないかなって思ってて」

鉄平「…分かっとるわ。さっきの反応で」

リナ「たまたまお店に来てた上客がね、前の奥さんから貰った慰謝料が沢山あるからって…」

鉄平「…がめついお前の事じゃ。それも掻っ攫おうと思ったんじゃろ」

リナ「その時はね、そう思ってた」

「…その時は?」

リナ「…色々あってね。やっぱり恨み買っちゃうんだ」

鉄平「…」

リナ「丼でぶん殴られそうになったんだけど、その人の娘に助けられてね」

富竹「…レナちゃんだね」

リナ「うん。アンタは知ってると思うけどさ…」

富竹「…君も、彼女を助けたい一心で、寄生虫の魔の手から逃れたんだね」

リナ「今知ったんだけどね。それ」

鉄平「…」

リナ「…今更だけど、上納金なら竜宮さんの家にある庭の下に埋めたよ」

「あ!!?」

鉄平「・・・」

リナ「一銭も使ってない。…それどころじゃなかったし」

「…そうか」

リナ「…ごめんなさい」

「俺に謝られても困るんだよな…」

リナ「…鉄平も、ごめん」

鉄平「…その竜宮ってのに謝るのが先じゃろ」

リナ「…ん」

316: 2017/06/10(土) 00:18:40.45 ID:uQrDoXrNO
「…さて、と」キッ

富竹「?…どうして車を…」

「…まあどうせもう待ち合わせには間に合わねえんだ。だから聞けるだけ聞いとくが…」

富竹「…」

「話を戻すが、さっきおめぇは鷹野って奴が偉かったのはつい最近だって言ってたな?」

富竹「…ああ」

「そりゃ何だ?何か失敗でもしたのか?」

富竹「…雛見沢症候群の第一人者、高野一二三。理由は割愛するけど、鷹野さんの命の恩人さ」

「…」

富竹「…彼はある日突然研究費を打ち切られてね。研究の中断を余儀無くされたんだ」

リナ「…その時、鷹野は?」

富竹「僕もさっき聞かされた話だから信憑性までは分からないけど、彼と折り合いがつかない学会側が無理矢理失脚させたらしいんだ」

リナ「…」

富竹「結局、一二三はそのまま病気で亡くなったらしい」

鉄平「…それで、その無念を目の前で見たっちゅうわけか」

富竹「命の恩人が、良いように利用され、消された。彼女にとってはたまらなく嫌なことだっただろうね」

「…だろうな」

富竹「…そこから彼女の人生は、高野一二三に捧げられた。彼の為に、彼の研究を本物にする為に」

鉄平「…」

富竹「先の頭脳と……どうやって作ったかは想像に任せるしかない人脈。それで再び雛見沢症候群の研究機関を作ったんだ」

リナ「…」

富竹「…しかしね、前例がある、といってもこの寄生虫は宿主が氏ぬと同時に消滅する。正直なところ、証明しようが無いんだ」

鉄平「同じ轍を踏んだ…ちゅうことかい」

富竹「ああ。初めはカットされる程度だったけど、どんどん下がっていってね。最後には打ち切りの話が出たんだ」

リナ「それをさせない為に鷹野は毒ガスを使って…」

富竹「ああ。だがそれはあくまで最後の手段に過ぎない」

「…どういうこった?」

317: 2017/06/10(土) 00:19:20.30 ID:uQrDoXrNO
富竹「…雛見沢症候群が発症する条件として、まず疑心暗鬼になること」

「…ああ」

富竹「それと、女王の氏」

鉄平「…女王…だァ?」

富竹「そう。この雛見沢症候群に感染していても影響を一切受けない。それどころか薬を拒絶する程身体が病気に慣れてしまっている」

リナ「…何それ」

富竹「…古手家の人間だ」

「…今古手家の生き残りって言ったら…梨花ちゃまか!?」

富竹「そう。鷹野さんがこの実験で最も重要視しているもの。それが梨花ちゃんだ」

鉄平「…待て。梨花っちゅうと…沙都子の友達か!?」

富竹「…ああ。彼女の氏を目撃することによって信仰心の強い雛見沢村の人達は皆連鎖的に発症する。という鷹野さんの考察だ」

鉄平「仮にその考察が正しいとしても、そんなもん…!」

富竹「認められる訳がない。しかし鷹野さんは止まらない」

「…つまりあれか。梨花ちゃまが氏んで、村人達が氏ねば、ほら病気はあったでしょってか…?」

鉄平「氏ぬ理由なんざどうでもええ。結果論っちゅうことか…」

リナ「…それで、混乱の最中に毒ガスを…」

富竹「…そういうことだ。彼女は警察とも繋がりがある上、医学の道ではトップクラスの知識を誇る。その彼女が雛見沢症候群だと言えば、警察もそれに準ずるだろう…」

リナ「…そんな凄い奴だったなんて…」

「…ここに来て雛見沢の鎖国状態が皮肉にも役に立っちまったってことか…」

鉄平「…なんちゅう厄介な奴じゃ…」

「…そりゃあ、俄かには信じ難いが…確かに辻褄は合うな。さっきのを見りゃあ…」

富竹「…お願いだ。このままでは雛見沢村の人達が危ない。何とかして止めて欲しい」

「…てめぇの知り合いのケツ拭けってことかよ…」

富竹「…」

「…あああああ!!!こうなったらヤケだ!!行くぞ!!」ブオオオオオオン

318: 2017/06/10(土) 00:20:04.27 ID:uQrDoXrNO
…。

チェイス「…」

悟史『…』

梨花「…」

チェイス「…この子が叔母を頃したことは、皆知っているのか?」

梨花「…確信は無いけど、状況的にそう思うのが普通よ」

チェイス「…」

梨花「棒のようなもので撲殺。消えた悟史。血の付着した悟史の名前入りの金属バット。事件が起きる前、性格がガラッと変わった彼…」

チェイス「…沙都子も、知っているのか?」

梨花「あの子には…重過ぎるわ」

チェイス「…」

梨花「…」

チェイス「人をここまで変えてしまう病気、か」

梨花「恐ろしいでしょ?」

チェイス「確かに、この病気は無くさなければならない」

梨花「…うん。そうね」

チェイス「…」

梨花「…ねぇ。もしも、よ」

チェイス「…」

梨花「もし、私が発症したらどうする?」

チェイス「…お前は、発症しない筈では…」

梨花「もしもよ。もしも」

チェイス「…」

梨花「アンタのことも信用しなくなって、攻撃的になって」

チェイス「…」

梨花「怒り狂って、誰かを殺そうとしたら」

チェイス「止めるだけだ」

梨花「…簡単に言うのね」

チェイス「相手がロイミュードでないなら、止めることは造作も無い」

梨花「…そうだったわね。アンタの力なら今すぐにでも鷹野達を…」

チェイス「…」

梨花「…そう簡単にいかなかったわね」

チェイス「相手が無差別に人間を殺せる武器を持っていて、いつでも殺せる状態にあるというのならば、俺もそう簡単には動けない」

319: 2017/06/10(土) 00:20:48.58 ID:uQrDoXrNO
梨花「…時間を止めて、そのまま相手のいる所突き止めてボコボコにするとかは?」

チェイス「俺にそこまでの力は無い。それに止められるわけではない」

梨花「どうして?だって…」

チェイス「数十分にコンマ数ミリ程度だが、人間でも身体は動かせる」

梨花「…スローになるってだけ?」

チェイス「それが俺の限界だ。それに永遠に続けられる訳ではない」

梨花「…そっか」

チェイス「下手に動いて奴らを刺激すれば、取り返しのつかないことになる」

梨花「…ごめん。無理言ったわね」

チェイス「…俺もまた、神ではない」

梨花「…」

チェイス「お前達より少し未来に生きているだけのロボットだ」

梨花「…33年でそんなに進歩してるってのが驚きだけどね」

チェイス「…抜きん出た者が二人居ただけだ」

梨花「…チェイス」

チェイス「どうした」

梨花「…これで、私達が助かったら、さ」

チェイス「…」

梨花「アンタはどうするの?」

チェイス「…」

梨花「少なくとも、その剛っていう親友と会えるまで33年間、必要なのよ?」

チェイス「…」

梨花「…長いわよ。結構」

チェイス「…」

梨花「…その期間くらい、ここに居れば?」

チェイス「俺は、生きているのか氏んでいるのかも分からない存在だ」

梨花「…でも、触れるわよ?」

チェイス「…それは、使命によって生かされているだけかもしれない」

梨花「…使命を終えたら、氏ぬってこと?」

チェイス「不明だ」

梨花「そんな、使い捨てみたいなマネ…させないわよ」

チェイス「…」

梨花「…」

?「悟史くぅぅぅぅぅうううううん!!!!!」ダダダダダダダ

梨花「!?」

チェイス「!」

320: 2017/06/10(土) 00:21:23.70 ID:uQrDoXrNO
詩音「悟史君!!悟史君!!?」バンバン

チェイス「…」

梨花「詩ぃ!落ち着くのです!」

詩音「落ち着ける訳ないでしょ!!!」

チェイス「お前は、あの時の…」

詩音「どうしてここに悟史君がいるんですか!?説明して下さい!!」

梨花「その前に、どうしてここに?」

沙都子「私が、連絡しましたの」

梨花「え?」

詩音「沙都子から連絡を受けて、半信半疑だったけど、藁にもすがる想いで…」

梨花「…詩ぃ…」

詩音「…夢だと思ってた。夢だと思って、諦めかけてたのに…」

チェイス「悟史とはどういう関係だ?」

詩音「…そんなの、察して下さいよ」

梨花「詩ぃ。どうせ左之助に女心は理解出来ないのですよ」

沙都子「とんでもない殿方ですわね」

詩音「コホン。…友達以上、恋人未満…です!!」

チェイス「それは分かっている」

詩音「何なんですかこの人!!!」

321: 2017/06/10(土) 00:21:58.91 ID:uQrDoXrNO
詩音「…まあ、初めに関係を持ったのはお姉なんですよ。それでお姉が興味を持つっていうのはどんな人なんだろうって私も関わり出して…」

チェイス「…そこから、悟史を愛するようになったのか」

詩音「ン゛ブッフゥ」

沙都子「んま」

梨花「こういう男なのです。放っておくのですよ

詩音「…もうそれで良いです。良いですよ。間違ってませんから」

チェイス「…」

梨花「詩ぃは魅ぃと違って素直なのですよ」

チェイス「…あの子は、いつ目覚めるか分からないぞ」

詩音「構いません。…こうして無事なのが確認出来た。今はそれだけで…」

チェイス「…そうか」

詩音「…良かった。無事で…てっきり鬼隠しにあったのかと…」

チェイス「鬼隠し…」

詩音「…この村では毎年一人ずつ、行方不明になる都市伝説があるんです。…それが悟史君だったんじゃないかって…」

チェイス「…」

詩音「…本当に、良かったです…」

チェイス「…そうか…」

梨花「…」

322: 2017/06/10(土) 00:22:38.70 ID:uQrDoXrNO
レナ「…」

圭一「レナ…大丈夫か?」

レナ「うん。もう…大丈夫だよ」

圭一「…ケガだけじゃないだろ」

レナ「…」

圭一「色んな事。あったんだろ」

レナ「…」

圭一「…それを全部、レナは背負っていたんだろ」

レナ「…」

圭一「背負って。隠して。必氏に明るく振る舞って。俺に対してだって気を遣ってくれて…」

レナ「そんなこと、ないよ」

圭一「ある!!」

レナ「ッ!」

圭一「…あ、ご、ごめん…でも…」

レナ「…圭一君…」

圭一「そんな、無理してるレナの顔、見たくないんだ」

レナ「…」

圭一「いつも疲れた顔してて、でももしかしたら俺の思い過ごしなのかなって思ってた」

レナ「…」

圭一「でも、本当は違ったんだ」

レナ「…」

圭一「レナは、ずっと疲れてた。休めなかったんだ」

レナ「…」

圭一「本当のレナを出せずに、いつも明るく振る舞って。…そんなことしてたらいつか疲れちまうだろ」

レナ「…」

323: 2017/06/10(土) 00:23:17.93 ID:uQrDoXrNO
レナ「圭一君」

圭一「ん?」

レナ「…あのね?レナはね…」

圭一「…」

レナ「…ホントは、すっごいワガママなんだよ」

圭一「…」

レナ「圭一君と、ホントはずっと一緒にこうしていたい」

圭一「えっ…」

レナ「でも、魅ぃちゃんともずっと仲良くしたい」

圭一「…別に、それは…」

レナ「ううん。きっと圭一君がレナと仲良くなり過ぎると、魅ぃちゃんとレナの関係は変わっちゃうと思う」

圭一「何で…俺とレナが仲良くするとそうなるんだ?」

レナ「…察して欲しい…かな」

圭一「…」

レナ「圭一君も、魅ぃちゃんも。沙都子ちゃんも、梨花ちゃんも。詩ぃちゃんも悟史君も。みんな一緒が良い。ずっと仲良くしていたい」

圭一「…レナ…」

レナ「…でも、圭一君との仲良しは、みんなとの仲良しとは違うの」

圭一「…。……!!」

レナ「…レナは、圭一君とずっとこうしていたい。一緒に居たい」

圭一「…レナ…」

レナ「…でも、みんな大事」

圭一「…」

レナ「…ワガママだよね」

324: 2017/06/10(土) 00:24:01.60 ID:uQrDoXrNO
圭一「…なあ、レナ」

レナ「…」

圭一「…それ、ワガママって言わないんだよ」

レナ「…」

圭一「俺だって、みんなと仲良くしていたい。大事な仲間だから」

レナ「…」

圭一「…そんなの、当然だ」

レナ「…圭一君…」

圭一「…それに、本当は、俺は…こんな幸せな日常、味わっちゃいけないんだ」

レナ「…?」

圭一「…」

レナ「…何か、あったのかな…かな?」

圭一「…」

レナ「…レナは、黙って聞いてるよ。だから、教えて?」

圭一「…俺は…」

レナ「…言いづらい?」

圭一「…」

レナ「…良いよ。話せる時に話して?」

圭一「…」

レナ「…レナも、きっと圭一君と同じくらい大きな秘密を抱えてるから」

圭一「…!」

レナ「…」

圭一「…」

レナ「…もしかして、知ってる?」

圭一「…」

レナ「…レナの事、知ってた?」

圭一「…ごめん。本当は…」

レナ「…ううん。良いよ。いつかはきっと、知ることになるから」

圭一「…」

レナ「…レナはね、凄く後悔してる」

圭一「…」

レナ「いっぱい、いっぱい謝っても、許されないことをしたって思ってる」

圭一「…」

レナ「…本当はレナも、こんな幸せな日常、過ごしちゃいけないんだよ」

圭一「違う!!」

レナ「!」

325: 2017/06/10(土) 00:24:44.55 ID:uQrDoXrNO
圭一「…」

レナ「…圭一君…」

圭一「…俺は…俺なんか…!」

レナ「…?」

圭一「本当は、クズ野郎なんだ!!」

レナ「…」

圭一「…俺が、何で雛見沢に来たと思う?」

レナ「…お父さんの都合じゃないの?」

圭一「…違うんだ。全然」

レナ「…」

圭一「…少し前、だ。つい半年前くらい」

レナ「うん」

圭一「都会で過ごしてた時は、いつも勉強、勉強で、こんな風に誰かと話すことなんか無かった」

レナ「…うん」

圭一「…正直、色んな奴を見下してた」

レナ「…」

圭一「必氏に走るサラリーマンとか、学校帰りに遊びに行く奴らとか、工事現場で働く人達とか、全員見下してた」

レナ「…」

圭一「俺は、こんな風にはならないって。偉くなって、みんなを馬鹿にするんだなんて思ってた。だから常に勉強して1位を目指し続けた」

レナ「…」

圭一「…そんな風に過ごしてて、俺はいつの日か何をしても許される奴だって勘違いし始めた」

レナ「…」

圭一「好奇心で、買ったエアガンを、初めは段ボール。次は空き缶。…そして最後には…」

レナ「…」

圭一「…自分よりも弱い、幼い女の子を狙った…!!」

レナ「…!」

326: 2017/06/10(土) 00:25:25.65 ID:uQrDoXrNO
圭一「…毎日、毎日。夜になると家を出て、一人でいる子供を狙った」

レナ「…」

圭一「撃った。当てた。…今だに、その感触は消えない」

レナ「…圭一君…」

圭一「…ある日、いつものようにエアガンを向けて、子供を襲った時」

レナ「…」

圭一「その子の目に、当たったんだ」

レナ「…」

圭一「血を出して泣きじゃくるその子を見て、駆け寄ろうとしたけど、集まってくる人達を見て恐ろしくなって、逃げた」

レナ「…」

圭一「…次の日から、警察が周りをうろつくのを見て、震え出した。ようやく自分のしたことがどれだけクズなのかって理解出来た」

レナ「…」

圭一「…事件が起きて数日。やっと自白した」

レナ「…」

圭一「…親父は何も言わずに俺を殴りまくって、被害者の家に連れて行った」

レナ「…」

圭一「許してくれるわけがなかった。色んなものを投げつけられて。額から血が出ても、親父は土下座し続けた」

レナ「…」

圭一「莫大な慰謝料と、治療費を払って、それでも親父は毎日謝りにその人達の家に行った」

レナ「…」

圭一「…親父は自分を責めてた。自分が構ってやれなかったからだって…!!」

レナ「…」

圭一「そんな事ない…!!そんな事ないんだ!!!!」ダンッ

レナ「圭一君…」

圭一「…それで、ここなら過ごしやすいって、親父が連れて来てくれたんだ」

レナ「…」

圭一「…これが、俺なんだ。クズで、大馬鹿野郎なんだ…!」

「前原君」

レナ「!」

圭一「…えっ?」

「…!」グイッ

圭一「!」

「…ッッ!!!」バッチィン!!

圭一「!?」

327: 2017/06/10(土) 00:26:11.62 ID:uQrDoXrNO
知恵「…」

圭一「…!」

知恵「…前原君」

レナ「…ち…」

圭一「…知恵…先生…」

知恵「痛いですか?」

圭一「…」

知恵「痛いですか!?」

圭一「…はい」

知恵「…先生も、手が痛いですよ」

圭一「…」

知恵「それだけ力を入れて叩きましたから。痛いに決まってるじゃありませんか」

レナ「…」

知恵「痛いのなんか、先生だって嫌です」

圭一「…」

知恵「痛みを感じない、一方的なやり方なんて、ただの暴力です。犯罪です」

圭一「…」

知恵「貴方を本当に叱ってくれるのは、きっと親御さんだけだったんでしょう」

圭一「…はい」

知恵「だから、私が叱ります。私も叱ります。まだ貴方は分かってないようですから」

圭一「…」

知恵「貴方を殴った親御さんの手が、心が、どれだけ痛かったのか!!」

圭一「…はい…!」

知恵「…これからは、人の上に立つ、のではなく…」

圭一「…」

知恵「…人の役に立つ人に、なって下さい」

圭一「…ごめん…なさい…!」

知恵「…」フーッ

圭一「…ごめんなさい…」

レナ「…圭一君…」

圭一「ごめんなさい…」

レナ「…」ギュッ

…。

328: 2017/06/10(土) 00:26:47.20 ID:uQrDoXrNO
大石「…おんやぁ。こりゃ私達が出る幕じゃありませんねぇ」

熊谷「…」

校長「…彼女がどうして、ここに来たと思いますか?」

大石「そりゃまたどうしてでしょうなぁ…」

校長「この学校が、取り壊しになる事が決定になった時、彼女一人が大反対したんです」

大石「ほぉ…」

校長「子供達の学び舎は、そんな簡単に壊して良いものではない、と」

大石「…」

校長「一人でデモなんてのもやらかしたらしいですよ」

熊谷「それデモじゃないですよね」

校長「色んな都市伝説が蔓延るこの雛見沢村は、教員が来たがらないもので…参っていたんですがね」

大石「…ええ。私もよー…く知っていますよぉ」

校長「彼女が、立候補したんですよ。色んな学校からお呼びがかかる程の方だったのに」

大石「えぇえぇ。教鞭の執り方…というより………ええ」

校長「…」

大石「何より、男性職員が放っておかないでしょうなぁ」

校長「…ウォッホン!!」

大石「ああこれは失礼しました…ええ。本当に…」

熊谷「…」

校長「…彼女がいれば、どんな生徒でも大丈夫でしょう」

大石「このご時世、ああいう生徒と真っ直ぐ向き合う先生なんてドラマの中だけだと思ってましたよぉ」

校長「…」

329: 2017/06/10(土) 00:27:26.91 ID:uQrDoXrNO
…。

「…!」

茜「…」

「…!!」

茜「…上納金回収、そして間宮リナの捕獲…」

鉄平「…」

リナ「…」

「…へい…!」

茜「良くやったねぇ。良くやった」

「…へい…」

茜「…電話が鳴ってたよ」

「へい。…へいっ!?」

茜「待てど暮らせど、北条鉄平とお前が来ないってねぇ…」

「おうっ…!」

茜「何してんだと思ったら二人とも埃まみれで、オマケが二人に北条鉄平は上半身裸」

富竹「…」

茜「何処だかの組織とドンパチやって、人助け。ああ立派なもんじゃないか」

「…!」パァァ…

茜「それとこれとは話が別だけどねぇ!」スパァン

「ですよねッッッ!!」

茜「…何だい何だい。そんなジェームズ・ボンドみたいな話引っさげて…ええ?」

「…そ、それが、どうやら本当の話らしいんです!本当の!!」

茜「そのカメラ小僧の何をどうやって信じろってんだい」

「本当なんですよ!!俺ら銃で撃たれそうになったんですよ!?なぁ!?」

鉄平「お、おう!ホンマじゃ!ホンマなんじゃ!!」

茜「…まあ、嘘ならもっとマシな嘘つくだろうからねぇ…」

鉄平「…わ、分かっとる!ワシは今すぐにでも罪滅ぼしに向かう!いくらでも働く!」

茜「…何なんだいこりゃ…何がどうなってるんだい…」

「で、ですから説明した通りで…!」

茜「…葛西!!」

330: 2017/06/10(土) 00:28:05.97 ID:uQrDoXrNO
葛西「…」ヌッ

「ヒイッ!?か、葛西…さん…!!」

葛西「…」

茜「こいつらが本当に嘘ついていないか、見てやんな」

葛西「…」ギロッ

「ヒイッ!?」

鉄平「!?」

リナ「ヒッ…」

富竹「…」

葛西「…」

富竹「…」

茜「…あら。カメラ小僧にしちゃあ度胸あるじゃないか。葛西と目ェ合わせてもビクともしないのかい」

富竹「…何度も氏にかけたんだ。ただの脅しなら慣れたものだよ」

「バッ…!お前!」

葛西「…」

富竹「真実を見抜いてくれると言うなら、真っ正面から向かい合うのがこっちの筋だ!!」

茜「…ほーう…」

葛西「…」

茜「…良い事言うじゃないか。ええ?」

富竹「…」

茜「…」

葛西「どうやら、嘘は言っていないようです」

茜「…そうかい」

331: 2017/06/10(土) 00:28:53.16 ID:uQrDoXrNO
茜「はー…嘘はついてない…か…」

「へ、へい!」

茜「…まあ、それでその二人の罪がどうのこうのって訳じゃないけどね」

鉄平「…」

リナ「…」

茜「…ま、チンピラもアバズレも、堂々と詫び入れに来たのは褒めてやるよ」

リナ「…」

茜「…だが、罰は与えるよ。示しがつかないからね」

リナ「…はい」

茜「…さー…て…」

…。

チェイス『…魔進チェイサー。今はそれで良い』

茜『…何でも良いさね。…随分荒らしてくれたじゃないかい…!』

チェイス『命を守る為だ』

茜『へェ…?…そりゃ、「どっちの」だい?』

チェイス『全てだ。北条鉄平。沙都子。魅音…』

茜『…』

チェイス『…お前達もだ』

…。

茜「…はー…」

葛西「…」

茜「…どうやら、繋がったねぇ…」

鉄平「…?」

茜「否が応でも関わることになっちまったよ」

葛西「…例の…」

茜「ああ。全く…」

富竹「…じゃあ…」

茜「ウチらのシマで勝手な事はやらせないよ」

富竹「!」

茜「全部聞いてんだろ!!魅音!!」

富竹「!魅音ちゃん…!」

魅音「…」

332: 2017/06/10(土) 00:29:37.54 ID:uQrDoXrNO
茜「アタシには決定権は無い。決めるのはアンタだよ。魅音」

魅音「…」

葛西「…」

茜「どうすんだい?このままじゃこいつらの言う通り鷹野とかいう奴にみんな殺されちまうらしいよ」

鉄平「…」

茜「アンタのお友達もだ。…んで大好きな子もだ」

魅音「ン゛ブッフゥ」

リナ「・・・」

茜「…というより、これで何もしなけりゃアタシが許さないし、現当主もお怒り心頭間違い無しだよ」

魅音「…決まってるよ」

茜「…」

富竹「…!」

魅音「…一人でダメなら、二人」

茜「二人でダメなら、四人…」

魅音「…それでもダメなら、百人」

茜「いーや、二百人だ」

魅音「…」

富竹「…」

魅音「…これは園崎のメンツをかけた大一番の勝負だよ」

茜「ああ、そうさ」

魅音「…決まってるでしょ…」

鉄平「…」

リナ「…」

魅音「…全面戦争だよ!!!」

333: 2017/06/10(土) 00:30:23.74 ID:uQrDoXrNO
…。

……。

鷹野「…」

小此木「…あーあ。どうするんです?根城がやられちまいましたぜ?」

鷹野「…怪我人は?」

小此木「ま、奇跡的に俺一人ですかね。頭ぶん殴られちまった」

鷹野「…そう」

小此木「そうじゃなくて。このままじゃ必ず園崎の耳に入ると思いますがね」

鷹野「…止まれないのよ。私達は」

小此木「…まあこっちも金貰っちまった以上、任務は遂行しますよ」

鷹野「なら、分かってるでしょう?」

小此木「…あー…はいはい。おい。聴こえてるか?こちら小此木。どうぞ」

『小此木隊長。どうされましたか?』

小此木「アジトがやられた。もう構うことはない」

『…』

小此木「氏因なら後で考える。ちょいと予定が早まったが、決行だ」

『了解』

小此木「…」

鷹野「たかが村単位のヤクザがプロの精鋭部隊とやり合うだなんて、言ってくれたものよねぇ」

小此木「あんまアテにせんで下さいよ。あっちだって丸腰じゃねえんですから」

鷹野「数なら負けてるかもしれないけど、貴方達なら一人で五人くらいの戦力にはなるでしょう?」

小此木「こりゃまた買い被っちゃって…」

鷹野「…狙いは、古手梨花。それ以外は頃しなさい。全て」

小此木「はいはい。…女子供もいるんじゃないですか?」

鷹野「構わないわ。全員頃しなさい。元々そういう予定なんだから」

小此木「そうでしたっけねぇ…では、「アレ」は?」

鷹野「準備しておいて。万が一にも生存者は出してはいけない」

小此木「はいよ。…まるでゴキブリ扱いですねぇ…」

鷹野「…うるさいわよ」

小此木「おお怖い怖い。じゃ、俺らの本業と行きますかねぇ…!」ポキポキ

鷹野「…お爺ちゃん…」

小此木「…」

鷹野「見ていて下さい…」

小此木「…」

鷹野「私が、神になるその瞬間を…!!」

第12話 終

334: 2017/06/10(土) 00:31:16.62 ID:uQrDoXrNO
続きまた出来たら書きます

335: 2017/06/10(土) 00:39:52.61 ID:/3o2uYaVo


圭一ってこんな過去があったのか…
ドクズやん。女の子達と遊んでる場合じゃねえだろ…

336: 2017/06/10(土) 03:24:48.78 ID:AtIXpwXfO

確か澪尽し編でその目に当てた女の子のところに謝罪しに行ったって言ってたような

337: 2017/06/10(土) 16:02:02.92 ID:0eTDvjVWo
ひぐらしは大まかな設定しか知らなかったから作者が丁寧に書いてくれて助かる
鷹野の過去も知らなかったし富竹と入江は本当に良い人だったんだな。好きになった

338: 2017/06/12(月) 21:13:54.11 ID:Z9d2epbiO
…。

りぃぃぃかぁぁぁあああ!!

『はにゅー!やっと戻ってきたのです!』

何処に…何処に行ってたのですかぁ!!心配したのですよ!!

『ごめんなさいなのです。でも、とっても不思議な体験をしたのですよ。にぱー』

不思議な体験…?

『はいなのです。そこは、はにゅーに触れる世界なのでした』

…触れる事が不思議というのもなんですが…それは一体?

『それと、ボクとそっくりだけど、ボクよりも大きい、名前も一緒の梨花という人に出会ったのです!』

…?

『そこには、色んな仲間がいて。いっぱい遊んでもらったのです!』

…は、はあ…。

『これで絵日記は決まりなのですよ!』

…いや、後30日分どうするのですか!!それで全部乗り切るつもりですか!!

『にぱー☆』

あああ…梨花の学校でのキャラがどんどん固定されていくのですぅ…。

339: 2017/06/12(月) 21:14:40.20 ID:Z9d2epbiO
…。

羽入『…』

羽入『…あ』

羽入『…ああ…』

羽入『…そういえば、もう…』

羽入『…誰も、いないのですね…』

羽入『…』

羽入『…梨花…』

羽入『…貴方が幸せなら、ボクはそれで良いのですよ…』

羽入『…貴方には、沢山の仲間と、強い味方達がいるのですから…』

羽入『…ボクとの時間は、もう終わりなのです…』

羽入『…』

羽入『…よろしくお願いします…』

羽入『…チェイス…』

『ちょっと待った』

羽入『びゃっ!?』

340: 2017/06/12(月) 21:15:57.57 ID:Z9d2epbiO
?『すまない。驚かせるつもりではなかったが…聞き捨てならない単語があってな…』

羽入『え…えっ?』

?『お前は今、チェイス。と言ったか?』

羽入『…は、はいなので…うひゃあ!!火の玉なのです!!幽霊なのですうううう!!』ブンブン

?『待て!!消そうとするな!!何をする!!』

羽入『だって!!だって!!怖いのです!!!』

?『俺は敵ではない!!お前を攻撃したりしない!!』

羽入『うぐ…あうう…』

?『…チェイスの事で、詳しく話を聞きたい』

羽入『…?』

?『あいつが生きているなら、一目くらいは会っておきたい』

羽入『…貴方は?』

?『あいつの…古き、友だ』

羽入『…?』

341: 2017/06/12(月) 21:16:44.07 ID:Z9d2epbiO
?『俺とあいつは、元々仲間…いや、仲間だったかどうかは怪しいな』

羽入『…』

?『…洗脳して仲間にするなど、本当はダメなんだ』

羽入『…!もしや…貴方は…』

?『…そうだ』

羽入『…でも…その姿…』

?『…人間との決着をつけようとしたが、ダメだった』

羽入『…?』

?『共通の敵を倒し、最後の戦いに臨んだが…既に俺の体は限界だったようだ』

羽入『…人間というのは…あの、方ですか』

?『そうだ。俺の…人間の友達だ』

羽入『…』

?『…そして生き返ったんだがな』

羽入『は?』

342: 2017/06/12(月) 21:17:44.06 ID:Z9d2epbiO
?『俺にも分からない。何故か再び現世に呼び出され、そして復活した』

羽入『…?』

?『どうやらお呼びではなかったようだが…そこで俺は人間と組むことになった』

羽入『…』

?『かつての俺の仲間…それの模造品。いわば亡霊と戦ったんだ』

羽入『亡霊…』

?『しかし復活したとは言ってもその肉体は俺の力を発揮するには十分ではなく、一度は負けてしまった』

羽入『…』

?『そこで俺は、人間の力を借りる事にした』

羽入『…』

?『皮肉なものだと思ったよ。人間を超える筈が、人間に助けられてしまった』

羽入『…そんなこと…』

?『いや、それで良いんだ。そうじゃないとダメだった』

羽入『?』

?『俺は人間を超える。超えられるとばかり思っていたんだが、足りないものがあったんだ』

羽入『足りない…もの?』

?『そうだ。分かるか?』

羽入『…』

?『…「分かる」ことだ』

羽入『…??』

343: 2017/06/12(月) 21:19:05.05 ID:Z9d2epbiO
?『相手を倒したい。超えたい。そればかり思っていては、何も始まらない。人間を知り、分かる事が必要だったんだ』

羽入『…』

?『俺達は個人主義者の集まりとばかり考えていたが…それは違った』

羽入『…』

?『人間の悪意を植え付けられ、その恨みだけで動いていたに過ぎなかったんだ』

羽入『…』

?『だが、奴らは違った』

羽入『…』

?『俺達を理解し、向き合い、分かり合おうとしてくれたんだ』

羽入『…』

?『…今思えば、それが簡単に出来る人間に、俺達が勝てる訳もなかったな…』

羽入『…』

?『…』

羽入『…人間でありたいと、思ったのですか?』

?『…』

羽入『…』

?『…それは、無いな』

羽入『…』

?『確かに俺達は作られた存在だ。ただのロボットだ』

羽入『…』

?『だが、確かに仲間は居た。全ての感情を共に分かち合える仲間が居た』

羽入『…』

?『例え作られた存在であっても、寂しくはなかった』

羽入『…』

?『後悔は、していない』

羽入『…』

?『それに、今も一人ではない』

羽入『…?』

?『…お前は、一人なのか?』

羽入『…今は、一人なのです』

?『…何故だ?』

羽入『…話すと、長くなりますですよ』

?『構わない。俺で良ければ話せ』

羽入『…』

…。

……。

344: 2017/06/12(月) 21:20:02.32 ID:Z9d2epbiO
?『…そうか。そうだったのか…』

羽入『…ボクの力では、二人を戻すことが限界だったのです』

?『…確かにチェイスならば、何の迷いも無くそちらを選ぶだろう』

羽入『…ボクのせいで、チェイスはもう元の世界には戻れなくなりました』

?『いや』

羽入『…』

?『例えお前が拒んでも、チェイスは行っただろうさ』

羽入『…』

?『そういう、男だからな』

羽入『…チェイスは、今でも敵だと思いますか?』

?『…』

羽入『…』

?『今も昔も、俺にとっては友だ』

羽入『…戦っていたのに、友なのですか?』

?『今では、ということだ』

羽入『…』

?『全てが終わった今、もう争う理由はない』

羽入『…』

?『そして、今』

羽入『…?』

?『俺が奴にしてやれることは、これくらいだ』

羽入『…?』

?『受け取れ。そしてこれをチェイスに届けてくれ』

羽入『…!これは…』

?『チェイスなら、きっと使いこなせる筈だ』

羽入『…でも、もうボクには力が…』

?『…出来るさ。俺達の力を使えば』

羽入『…え?』

?『…全く、貴方という人は…』

羽入『え!?こ、今度は緑の火の玉なのですぅ!!!』

?『ああもう!!耳元で大きな声を出さない!!』

羽入『ひぃっ!?』

?『女の子に食ってかかるなんて…相変わらず粗相の無い男ですわね』

羽入『ひいい!!白!!白いぃ!!』

?『あら…ごめんあそばせ』

345: 2017/06/12(月) 21:20:44.67 ID:Z9d2epbiO
…。

羽入『…そ、そうだったのですね。貴方達が…』

?『ええ。…ま、本来何の関係も無い貴方に手を貸すのは不服ですが…』

羽入『…』

?『俺達は氏んだとばかり思っていたが、コア・ドライビアのエネルギーがまだ微量に残っていたらしい』

?『こうして話す事くらいは出来ますのよ』

羽入『…そのせいで、一度は復活したのですね』

?『もうこの世界には未練などありませんので、残りのエネルギーを全て使い切って、一刻も早く立ち去りたいんですよ』

羽入『…でも、ボクの力と貴方達の力は、別では…』

?『貴方、私達のエネルギーを電池か何かと勘違いしてませんか?』

羽入『…てっきりゼンマイかと思ってたのです…』

?『・・・』

346: 2017/06/12(月) 21:21:26.83 ID:Z9d2epbiO
?『…まあ、良いですよ。構造を説明したところで貴方の空っぽの頭では理解出来そうにありませんから』

?『コア・ドライビアの力を使えば、人の怪我を治す事も可能なんですのよ』

羽入『そ、そんなに科学は進歩してるのですか…!』

?『…タイムスリップなんてものこそ、どうかしてますけど…』

羽入『…試して、頂けるのですか?』

?『ああ。だが恐らくお前を送り込むのは無理かもしれない』

羽入『…では、どうやって…?』

?『出来ることは、「穴」を開けることくらいだ』

羽入『…!』

?『それであいつに、贈り物をしてくれ』

羽入『…』

?『紛い物の姿ではなく、本当の姿にしてやってくれ』

羽入『…』

?『それがあれば、きっと奴はその雛見沢村とやらを救える筈だ』

羽入『…分かりました』

?『契約成立。ですわね』

?『私はそんなつもりは毛頭!!ありませんけど…ンね!』

?『でしたらずっとここで一人朽ち果てていけば良いと思いますわ』

?『やる!!やります!!やらないとは言ってないでしょう!?』

羽入『…』

?『ははは。お前達は変わらないな…』

羽入『…』

?『…こうして、共に逝けるのなら、氏ぬのは怖くない』

羽入『…』

?『だから、気にするな』

羽入『…』

347: 2017/06/12(月) 21:22:17.97 ID:Z9d2epbiO
羽入『…では』

?『…』

羽入『…お願いします。ハート』

ハート『ああ。行くぞ。…ブレン』

ブレン『はい。今度は一緒ですね。ハート』

ハート『…メディック』

メディック『はいですわ。ブレンは置いといて私と共に…』

ブレン『私!!私こそ!!ハートに相応しい!!!』

メディック『眼鏡の無いブレンなんて屋根の無い家と同じですわ』

ブレン『な、何ですって!!この眼鏡が見えないんですか!!』

メディック『何も見えませんわ。あの眼鏡かけ機は何処に行ったのでございましょう?』

ブレン『キー!!!』

羽入『・・・あの』

ハート『…個人主義者の集まりだからな。いつもこんな感じさ』

羽入『…』

ハート『…頼んだぞ。羽入』

羽入『…はい』

ハート『お前の友と、俺達の友の為に』

羽入『…はい!』

12.5話 終

348: 2017/06/12(月) 21:22:56.86 ID:Z9d2epbiO
続きまた出来たら書きます

引用: チェイス「雛見沢…」