166: 2015/05/06(水) 12:39:08 ID:zE1YSfZo


前作
【モンハン】狩人「目指すは伝説級ハンター!」【其の1】


―――――――――――


数日後の朝

ふもと村 集会所


流れハンター「……え? ソロが帰ってきているのか?」

色黒ハンター「ああ」

色黒ハンター「何日か前、長期遠征から戻ったらしい」

流れハンター「ソロ……どんなクエも常に一人で片付けるプロフェッショナル……」

色黒ハンター「大剣使いは多いが……」

色黒ハンター「あいつほど使える奴は数えるくらいしか居ないだろう、という話だ」

流れハンター「!」

流れハンター「おい……噂をすれば」

色黒ハンター「ああ……」
映画 モンスターハンター(吹替版)
167: 2015/05/06(水) 12:39:50 ID:zE1YSfZo

     ソロダ……   アイツガ……

     ザワ…… ザワ……

ソロ「…………」

ソロ「このイャンクックのクエを頼む」

受付嬢「はい。 かしこまりました」


流れハンター「……イャンクックか」

色黒ハンター「たぶん、軽い調整なんだろうよ」

流れハンター「ああ、たぶんな」

流れハンター「噂じゃシェンガオレンを初見で倒した、ってのがあるし」

色黒ハンター「マジかよ!? 俺、あれを初めて見たときは足がすくんだぜ……」

168: 2015/05/06(水) 12:40:30 ID:zE1YSfZo


―――――――――――


雪山


狩人「……はああああああっ!!」

     ブウウウンッ!! ザクゥッ!

     ギエエエエエエエエッ……

狩人「よし、ここで……タメ3!」

狩人「……はあっ!!」

     ドガァッ!!

     アオオオッ…

狩人「…………」

狩人「……もう足を引きずり出した」

狩人「…………」

169: 2015/05/06(水) 12:41:10 ID:zE1YSfZo

狩人(……俺が初めてフルフルを倒してから半月が過ぎた)

狩人(それから俺は、3度目になるフルフル討伐を行っている)

狩人(フルフルは繁殖力が強く、一度出現すると、度々出る様になるらしい)

狩人(こうなると、出なくなるまでかなり時間が掛かるそうなのだが)

狩人(フルフル素材目当てのハンターや商人が集まり、ふもと村は活気が溢れている)

狩人(女は、フルフルバブル到来と言っていた)

狩人(…………)

狩人(……何となく釈然としないが)

狩人(俺としても武器や防具の素材が欲しいわけで、今現在、絶賛討伐中なのである)

狩人(…………)

170: 2015/05/06(水) 12:42:08 ID:zE1YSfZo

狩人(そして)

狩人(俺の方も意識改革を始めた)

狩人(最初は、扱いづらかった大剣だったが……)

狩人(ロートルさんにコツを教えてもらってからは、いい感じである)

狩人(大剣は出したら仕舞う、出したら仕舞う、の繰り返し……)

狩人(出しっぱなしの時に感じていた移動の遅さは、これでだいぶ解消できた)

狩人(…………)

狩人(……これから先、モンスター素材で作れる武器や防具は)

狩人(どうあがいても出現する時期や数で制限される)

狩人(上を目指すのなら、様々な武器を使いこなせた方が都合がいい)

狩人(…………)

狩人(……グウの根も出ないほど正論だ)

狩人(この前のことも……)

狩人(…………)

171: 2015/05/06(水) 12:43:12 ID:zE1YSfZo


―――――――――――


その日の昼頃

ふもと村 村長宅前


村長「もうフルフルを討伐したのかい!?」

狩人「ええ」

狩人「試しにロートルさんの言う通りにしてみたら」

狩人「あっさり狩れました」

村長「ほう……」

村長「でも、嬉しそうじゃないね?」

狩人「…………」

172: 2015/05/06(水) 12:44:07 ID:zE1YSfZo

狩人「……何ていうか」

狩人「意地張って片手剣で頑張ってやり遂げたのに」

狩人「同じ相手が、別の方法でこんなにあっさり狩れる様になると……」

狩人「あの時の苦労は何だったんだ?という気持ちになってしまって……」

村長「ふむ……」

狩人「ああ、すみません、村長さん」

狩人「愚痴ってしまって……」

村長「いや……そんな事はないよ」

村長「でもね、狩人」

狩人「はい?」

村長「私はハンターじゃないから、違うかもしれないけど……」

村長「間違いも経験の内だと思うんだ」

173: 2015/05/06(水) 12:44:52 ID:zE1YSfZo

狩人「間違いも経験の内……」

村長「うん」

村長「言いたくはないけどね……私だっていろんな間違いをやったものだよ」

村長「そのせいで、いろんな人たちに迷惑をかけたものだ」

狩人「村長さんが?」

村長「ああ……」

村長「だけど、その経験があるおかげで」

村長「今の私があり、村長としてやっても行けていると思う」

狩人「…………」

村長「あの時の間違い経験が、思わぬ形で役に立ったりするしな」

村長「無駄かどうかなんて、最後までわからないよ」

狩人「村長さん……」

174: 2015/05/06(水) 12:45:39 ID:zE1YSfZo

村長「ははは……ちょっとらしくない話をしてしまったね」

村長「ともかく、フルフル討伐ご苦労様」

村長「旨いものでも食べて、ゆっくり休むといい」

狩人「はい。 そうします」


―――――――――――


少女の家


少女「じゃ、今日からお願いね」

コックアイルー「ガッテン承知だニャ!」

コックアイルー「ご主人様の身の回りのお世話を精一杯させてもらうニャ!」

少女「頼りにしてるわ」

175: 2015/05/06(水) 12:46:13 ID:zE1YSfZo

少女「ふう……」

少女(ようやく、キッチンアイルーを雇える様になった)

少女(これで家の事は安心ね)

少女(…………)

―――――――――――

   ギャオオオオオッ!!

       オトウサンッ
            オカアサンッ

  早ク逃ゲルンダッ   船ヲ出セッ

      ギャアアアア……

―――――――――――

少女(っ!) ビクンッ!

176: 2015/05/06(水) 12:46:56 ID:zE1YSfZo

少女(…………)

少女(……もう逃げない)

少女(私は立ち向かう)

少女(その為にハンターになったのだから)

少女(…………)

少女「……ふう」

少女(…………)

少女「気分転換でもするか……」

少女「う~ん……」

少女「…………」

少女「……集会所でご飯でも食べよう」

177: 2015/05/06(水) 12:47:34 ID:zE1YSfZo

広場


少女「……あ」

狩人「……おっ、少女」

少女「…………」

狩人「…………」

少女「……武器」

少女「変えたんだ」

狩人「え? あ、ああ」

狩人「慣れるまでちょっとかかったけどね」

少女(……ちょっと、か)

少女「そう」

178: 2015/05/06(水) 12:48:24 ID:zE1YSfZo

少女「フルフル、だいぶ狩れるようになったんだね」

狩人「お陰様でね」

狩人「防具の方も何とかなりそうだよ」

少女「そう」

少女「私、これから集会所でご飯食べようと思ってるんだけど……」

少女「良かったら一緒に行く?」

狩人「……いや、自分の家で食べるつもりだから」

少女「そう……じゃ、また」

狩人「ああ、まt」

ロートル「……いかんな、狩人」

狩人「!?」

少女「ロートルさん」

179: 2015/05/06(水) 12:49:09 ID:zE1YSfZo

ロートル「レディからのせっかくのお誘いだ。 受けておけ」

狩人「い、いや、でも……」

ロートル「何だ? お前、女の子と付き合った事が無いのか?」

狩人「べ、別に、そういう訳ではっ」///

ロートル「なら、問題ないだろう?」

ロートル「メシってのは、大勢で囲んでワイワイ言って食うから、美味いんだ」

ロートル「おまけに可愛い女の子を見ながらだ」

ロートル「格別だろうぜ!」

少女「……味は変わらないと思いますけど」

ロートル「いいじゃないか、気分だよ、気分!」

ロートル「ふもと村、村付きハンターの交流会も兼ねて、昼飯と行こう!」

180: 2015/05/06(水) 12:49:45 ID:zE1YSfZo

集会所


     ガヤ ガヤ…

ロートル「本当はソロの奴も呼びたかったんだけどな」

ロートル「あいつ、今日に限ってクック狩りなんぞに行きやがった」

狩人「……はあ」

少女「今の時期に?」

少女「森丘はシーズンが終わってるから……密林あたりですか?」

ロートル「おう、正解だ」

ロートル「繁殖期が済んで、はぐれたのが毎年何頭か密林に現れるんだが」

ロートル「今年は多いと聞いている」

少女「…………」

狩人「詳しいんだな、少女」

181: 2015/05/06(水) 12:50:48 ID:zE1YSfZo

少女「このくらいの事、ハンターなら常識よ」

少女「狩人も講義を受けたでしょ?」

狩人「……あーいうの苦手なんだよ」

ロートル「という事は、寝てた口か?」

狩人「……黙秘します」

ロートル「ははは! 気にするな」

ロートル「ハンターは、そういう奴も多い」

狩人「そうですか……」

少女「それよりもレイアとレウスの方が気になります」

少女「そろそろのはずですが、観測所ではまだ確認されていなと……」

ロートル「……ふむ」

182: 2015/05/06(水) 12:51:48 ID:zE1YSfZo

ロートル「ところで……興味本位で聞くが」

ロートル「お前さん達は、どうしてハンターになった?」

少女「!」

狩人「俺は……以前からハンターに憧れてまして」

狩人「ラオシャンロンを倒したハンター達の凱旋を見て」

狩人「あんな風になれたらなぁ……と」///

ロートル「ほう……」

狩人「現実は厳しいですけどね……」 ハア…

ロートル「ははは。 いや……笑うのは失礼だな」

ロートル「頑張って夢を叶えればいい」

狩人「ははは……」///

ロートル「で? 少女は?」

少女「…………」

183: 2015/05/06(水) 12:52:46 ID:zE1YSfZo

少女「……別に話すほどの事では無いです」

少女「ハンターになれば、いい稼ぎになりますし」

ロートル「そうか……俺と同じだな」

狩人「同じ?」

ロートル「俗に言う『でもしかハンター』なんだよ、俺は」

少女「…………」

狩人「でもしかハンター?」

ロートル「ハンター『しか』できない。ハンターに『でも』なるか」

ロートル「そんな最後の選択として、ハンターになった人間なんだよ、俺は」

狩人「え……」

ロートル「大した学もない。才能もない」

ロートル「大きな声じゃ言えないが、ハンター試験だってギリギリで受かった」

184: 2015/05/06(水) 12:53:44 ID:zE1YSfZo

狩人「そ、そうなんですか?」

ロートル「ああ、そうだとも」

ロートル「俺は大剣とか重量武器が苦手でな」

ロートル「当時、ハンターが不足していた事もあって、お情けで合格させてもらったんだよ」

少女「…………」

狩人「へぇ……なんか意外ですね」

ロートル「そうか? まあ俺みたいな食いつめでハンターになる奴は結構いる」

ロートル「逆に、俺と同じ境遇でハンターになれない奴も大勢見てきた……」

ロートル「そういう連中は、モンスターと命懸けで戦う俺たちの苦労を知らないが」

ロートル「羨ましい、とか思ってるのかね……」

狩人「…………」

少女「…………」

185: 2015/05/06(水) 12:54:46 ID:zE1YSfZo

ロートル「おっと、つまらん話になったな」

ロートル「年を取ると、どうも説教臭くなっていかん」

狩人「いえ……」

ロートル「じゃあ、話を変えるが」

ロートル「お前さん達、浮いた話をまったく聞かないけど」

ロートル「いい相手の一人や2人、居ないのか?」

少女「……流れ者のハンターとか言い寄って来て困っています」

ロートル「ははは! まあ、少女は可愛いからな」

ロートル「狩人、お前はどうなんだ?」

ロートル「ストアの女ちゃんと仲がいいって聞いてるぞ?」

狩人「……時々差し入れをしてくれるだけですよ」

狩人「何となくですけど、向こうは出来の悪い弟か何かだと思ってるんじゃないかなぁ……」

186: 2015/05/06(水) 12:56:09 ID:zE1YSfZo

ロートル「おいおい、二人共あっさりしてるなぁ」

ロートル「たまには一夜の花でも咲かせて、憂さ晴らしした方がいいと思うぞ?」

少女「何焚きつけてるんですか?」

少女「うかつな事をしてハンター業引退とか、シャレにならないですよ」

狩人「…………」

狩人(一夜の花を咲かせるって、どういう意味??)

ロートル「別に引退まで考える事は無いだろう?」

ロートル「結婚して家族を持ったハンターも大勢いる」

少女「女性は出産で、体の耐久力が著しく衰え」

少女「復帰するまでに相当な時間を必要とします」

少女「そのまま引退の道を選択する女性ハンターが、大勢を占めていますが?」

ロートル「う……」

187: 2015/05/06(水) 12:56:42 ID:zE1YSfZo

狩人(すげぇ……ロートルさんが言いくるめられている)

ロートル「ははは……こりゃまいったね」

ロートル「どうやら少女は、ハンターにただならぬ思い入れがあるみたいだな」

少女「一般論を言っただけです」

狩人「そ、そういえば」

狩人「さっき話に出た、レイアとレウスってモンスター」

狩人「ロートルさんは、どんな風に狩っているんですか?」

ロートル「お! それを聞いてくるか」

ロートル「もちろん話してやるぞ」

ロートル「俺が最初に奴らと出会ったのは……」

188: 2015/05/06(水) 12:57:24 ID:zE1YSfZo


―――――――――――


広場


少女「それじゃ、ここで……」

ロートル「ああ、楽しかったぞ」

狩人「ありがとう」

     スタ スタ スタ…

ロートル「…………」

狩人「…………」

狩人「じゃ、俺もここで……」

ロートル「狩人」

狩人「はい?」

ロートル「これで、多少は集会所に行きやすくなったか?」

狩人「!」

189: 2015/05/06(水) 12:58:26 ID:zE1YSfZo

狩人「…………」

狩人「……ええ、まあ多少は」

ロートル「そうか」

ロートル「採取クエは、集会所の方が割がいい」

ロートル「支給品も4人分手に入るしな。 いい小遣い稼ぎになる」

狩人「……え?」

狩人「あれって持って帰ってもいいんですか?」

ロートル「応急薬とか、支給専用の物はダメだが」

ロートル「それ以外は自由だ」

ロートル「新米の内はホットドリンクとか作り辛いし、ギルドのささやかな贈り物だろう」

狩人「知らなかった……俺、余ったものはあの箱に戻していましたよ」

ロートル「……今時珍しいくらい律儀な奴だな」

     ハハハ…

190: 2015/05/06(水) 12:59:09 ID:zE1YSfZo


―――――――――――


狩人の家


狩人「ふう……」

狩人「集会所の採取クエか……」

狩人「…………」

狩人(よし)

狩人(雪山にもだいぶ慣れたし、そろそろ他の地域にも行ってみたい)

狩人(採取クエは、下見も兼ねられるから、お得でもある)

狩人(……ひとりで行くのなら、受領するとき我慢すればいいだけ)

狩人(フルフル防具ができたら、さっそく行ってみよう)

191: 2015/05/06(水) 13:02:08 ID:zE1YSfZo


―――――――――――


数日後の朝

ふもと村 集会所


少女「……あ」

少女「狩人……」

狩人「おはよう、少女」

少女「おはよう」

少女「フルフル防具、もう完成したんだ」

狩人「思ったより早く出来たよ」

少女(……羨ましい)

192: 2015/05/06(水) 13:02:45 ID:zE1YSfZo

少女「何を狩りに行くの?」

狩人「いや……密林ってところのキノコ集めに行くつもり」

少女「そう」

狩人「少女は?」

少女「解禁になったリオレイアを狩りに行くわ」

狩人「そっか。 俺が言うのもなんだけど……」

狩人「頑張ってくれ」

少女「大丈夫よ」

少女「何人かでやるから」

狩人「なら……心配ないか」

少女「ええ」

狩人「…………」

193: 2015/05/06(水) 13:03:54 ID:zE1YSfZo

狩人「なあ、少女」

少女「何?」

狩人「いつか……モンスターは何でもいいけど」

狩人「一緒に狩猟クエ、行かないか?」

少女「…………」

少女「そうね……いつか、ね」

狩人「ああ……いつか、でいい。 でも約束だ」

狩人「迷惑かけないよう、それまでに腕を上げておく」

狩人「じゃ!」

     タッ タッ タッ…

少女「…………」

194: 2015/05/06(水) 13:07:05 ID:zE1YSfZo




     その日……

     周りの視線やヒソヒソ話が、多少気になったけど



     俺は、堂々と胸を張って、集会所の採取クエを受注した。





197: 2015/05/09(土) 15:33:12 ID:ii.3hCRY


―――――――――――


数日後の夕方

ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

狩人「え? 雪山が入山規制?」

受付嬢「はい」

受付嬢「現在、雪山には非常に強いフルフルの個体が確認され」

受付嬢「ギルド観測所はこの個体を『G級』と認定」

受付嬢「このG級個体を討伐するまで、入山を規制しております」

狩人「G級かぁ……」

198: 2015/05/09(土) 15:34:06 ID:ii.3hCRY

狩人「…………」

狩人(G級……)

狩人(通常は古龍とか呼ばれる、来ただけで村や町が崩壊する様な)

狩人(天災に近いダメージをもたらすモンスターの事を指すが)

狩人(モンスターも経験を積み、非常に厄介な存在になる事がある)

狩人(そういうモンスターは異様に大きかったり)

狩人(通常のものより動きが素早かったり、未知の行動を取るものが多い)

狩人(そいうものが現れた場合、俺みたいなHRの低いハンターは戦うこともできない)

狩人(そういった犠牲を減らすため、時たまこういう規制が行われるのだ)

狩人「……そうですか」

狩人「解除には、どのくらいかかりそうですか?」

受付嬢「早ければ一週間、という所でしょうか……」

199: 2015/05/09(土) 15:34:43 ID:ii.3hCRY

狩人「分かりました」

受付嬢「はい」

ロートル「お、狩人」

ロートル「帰ってきてたのか」

狩人「ロートルさん」

ロートル「G級規制の事は聞いたか?」

狩人「G級規制?」

ロートル「G級個体出現による進入規制の略称だよ」

狩人「ああ……はい、たった今聞きました」

ロートル「今回のフルフルを生み出してるのはおそらくそいつだろうな」

狩人「という事は、ツガイで居るんですか?」

200: 2015/05/09(土) 15:36:21 ID:ii.3hCRY

ロートル「フルフルは雌雄同体と言われてる」

ロートル「詳しくは知らんが、一匹で増える事ができるそうだ」

狩人「そうなんですか……」

ロートル「それくらいは不勉強な俺でも知っている事だが……まあいい」

ロートル「晩飯は済ませたか?」

狩人「まだです」

ロートル「なら、俺と食わないか?」

狩人「ええ、いいですよ」

ロートル「よし、決まりだ」

ソロ「…………」

狩人「……こちらのハンターは?」

ロートル「俺たちと同じ、このふもと村の村つきハンターのソロだよ」

201: 2015/05/09(土) 15:37:19 ID:ii.3hCRY

ソロ「……よろしく」

狩人「ああ、はい。 よろしくお願いします」

ロートル「ま、堅苦しい挨拶はその辺りでいい」

ロートル「俺の家に行くぞ」

狩人「え? ここで食べないんですか?」

ロートル「不服か?」

狩人「い、いえ……」

ロートル「ははは! 安心しろ!」

ロートル「俺が料理を作るわけじゃないから」

ロートル「さ、行くぞ」

202: 2015/05/09(土) 15:39:26 ID:ii.3hCRY

ロートルの家


台所アイルー「お待たせしましたニャ、旦那さん」

ロートル「おう」

     ゴトッ

狩人「」

ソロ「…………」

ロートル「ほら、どんどん食え。 遠慮はいらんぞ?」

ソロ「……いただきます」

狩人「す、すごい量ですね……」

狩人「あ……いただきます」

ロートル「ははは!」

     ムシャ ムシャ

ロートル「うん、美味いな! 上出来だ!」

203: 2015/05/09(土) 15:40:33 ID:ii.3hCRY

ロートル「どうだ? お気に召したか?」

ソロ「……ああ、美味い」

狩人「ええ、とっても美味しいです」

狩人「……ところで」

ロートル「ん?」

狩人「あのアイルー、雇っているんですか?」

ロートル「ああ、そうだが?」

ロートル「村長から話を聞いていないのか?」

狩人「話?」

ロートル「……そうか」

ロートル(村長の奴……狩人がアイルーを雇えるほど稼ぐとは、思っていないという事か)

204: 2015/05/09(土) 15:41:53 ID:ii.3hCRY

ロートル「まあ、いずれ話してくれると思うが」

ロートル「アイルーにもギルドがあってな」

狩人「はい」

ロートル「さっきの台所アイルーみたいなのを仲介してくれる」

ロートル「通称ネコ婆さんってのを紹介してくれるんだ」

狩人「そうなんですか」

ロートル「毎月の給金はいるが、かなり役に立ってくれるぞ」

ロートル「掃除、洗濯、炊事、薪割りから風呂焚きまで」

ロートル「ありとあらゆる雑用をしてくれる」

狩人「それはいいですね……羨ましい」

ロートル「ははは! まあな」

ロートル「それと……おーい、ゴゴマル!」

205: 2015/05/09(土) 15:42:52 ID:ii.3hCRY

     ヒョコ

ゴゴマル「何ですかニャ? 旦那?」

ロートル「すまんが、ちょっとこっちに来てくれ」

ゴゴマル「はいニャ!」

     トテテテテ

ロートル「こいつはオトモアイルーといって」

ロートル「クエストに付いて来てくれるアイルーだ」

狩人「ええー!?」

ロートル「村で扱ってるクエは単独行動だから、こいつの存在はでかいぞ?」

ロートル「頼りになる相棒だ!」

ゴゴマル「ニャハハ……テレますニャ、旦那!」///

ロートル「ははは!」

206: 2015/05/09(土) 15:43:30 ID:ii.3hCRY

ロートル「ゴゴマル、もう行っていいぞ」

ゴゴマル「はいニャ!」

     トテテテテ…

狩人「…………」

ロートル「……ま、ここだけの話」

ロートル「使える様になるまでが、大変なんだけどな……」

狩人「は、はは……」

ソロ「…………」

ロートル「おい、ソロ」

ロートル「お前も何か話せよ」

ソロ「……いや、俺は……別に」

ロートル「狩人に親近感湧いてんだろ? ソロ!」 クヒヒ!

207: 2015/05/09(土) 15:44:47 ID:ii.3hCRY

ソロ「ロ、ロートル!!」///

狩人「へ?」

ロートル「どうした、ソロ?」 ニヤニヤ

ソロ「その話はするなと言っただろう!?」

ソロ「わざわざ恥をかきに来た訳じゃないんだぞ、俺は!!」

狩人(……意外と喋る人なんだな)

ロートル「まあまあ、落ち着け、ソロ」

ロートル「そう言うと思ったから、俺の家にしたんだよ」

ロートル「お前だって同じ村付きのハンターとは、仲良くしたいだろう?」

ソロ「……別に……俺は……」

208: 2015/05/09(土) 15:45:42 ID:ii.3hCRY

ロートル「一人でクエに出るの辛くて、オトモアイルーの方を先に選んだくらい」

ロートル「寂しがり屋なんだから、狩人くらいには素直にな」

ソロ「ロ―――トルッッッ!!!」///

ロートル「ははは!」

狩人「…………」 唖然…

ロートル「おっと。 完全に置いてけぼりだよな」

ロートル「まあ……簡単に言うと、だ」

狩人「はあ……」

ロートル「ソロもお前と同じく……最初は失敗ばかりで」

ロートル「ハズレだのダメハンターだの言われていたんだよ」

狩人「え」

狩人「ええー!?」

ソロ「…………」///

209: 2015/05/09(土) 15:46:35 ID:ii.3hCRY

ロートル「今でこそ『大剣のソロ』とか『孤高のスレイヤー』とか」

ロートル「ご大層な二つ名で呼ばれたりしているが」

ロートル「真相はいろいろ言われるのが嫌で」

ロートル「集会所でも常に一人でクエをこなしていたら」

ロートル「いつの間にかそう呼ばれる様になったってだけなんだよ!」

狩人「そ、そうなんですか……」

ソロ「…………」///

ロートル「……ま」

ロートル「さすがにそれを見かねて、俺もある日」

ロートル「ソロに声をかけ、何とか集会所クエに同行したんだが」

ロートル「まあ……酷かったな」

ソロ「…………」

210: 2015/05/09(土) 15:47:29 ID:ii.3hCRY

狩人「酷い?」

ロートル「常に遠慮して、おどおどしてて……」

ロートル「モンスターじゃなく、俺にビビっていた」

ソロ「…………」

ロートル「そんな態度に俺も最初、辟易していたが」

ロートル「モンスターと対峙する当時のソロの動きは、今の俺から見ても」

ロートル「一流の動きだと思う」

狩人「そうなんですか……」

ソロ「…………」

ロートル「…………」

ロートル「俺は、な」

ロートル「嫉妬したよ」

211: 2015/05/09(土) 15:48:40 ID:ii.3hCRY

狩人「……え?」

ロートル「確かに俺は長い間、この仕事を続けてきたが」

ロートル「ハンターとしては二流だ」

ロートル「いや、本当はもっと下かもしれん」

ソロ「……そんな事はない」

狩人「……ロートルさんが二流以下なら、俺はどうなるんですか」

ロートル「ははは!」

ロートル「……話がそれたが」

ロートル「要は、今の噂をそんなに気にするなって事と」

ロートル「いつか、ソロの奴と一緒にクエに出てやってくれって」

ロートル「言いたいだけなのさ」

212: 2015/05/09(土) 15:49:33 ID:ii.3hCRY

狩人「お、俺が……ですか?」

ソロ「…………」

ロートル「まあHRとか腕の差は、今はいかんともしがたいだろう」

ロートル「けど、将来ずっと単独行動するのは……命がいくつあっても足りなくなる」

ソロ「…………」

狩人「…………」

ロートル「お前たちは、出だしでつまづいた同士」

ロートル「そういう意味では気後れすることは少ないし、気兼ねもしないで済む」

ロートル「今すぐ、とは言わないが……」

ロートル「できれば最低限二人でクエに挑む様になって欲しい」

ロートル「長年……この仕事を続けてきた経験者の答えとして、な」

ソロ「ロートル……」

狩人「ロートルさん……」

213: 2015/05/09(土) 15:50:34 ID:ii.3hCRY

ロートル「ま、最初の一歩として今日の飯を計画したわけだが」

ロートル「どうだ? お互いの第一印象は?」

ソロ「……言えるか」

狩人「……気後れするなってのが、そもそも無理ですよ」

ロートル「だろうな! ははは!」

ソロ(……だんだん腹が立ってきた)

狩人(……人生楽しそうだな)

ロートル「んじゃ、交流第二弾として」

ロートル「女の子の話でもするか!」

ソロ「……帰る」

狩人「気持ちは分かりますけど! 俺一人にしないでください!」

ロートル「ははは!」

214: 2015/05/09(土) 15:51:27 ID:ii.3hCRY



     この後もロートルさんのペースで食事会は進み

     終始、ソロさんは怒鳴っていた。



     ……でも

     ソロさんには悪いけど

     俺はちょっと嬉しかった。

     自分みたいな奴が他にも居るんだと

     そんな人も凄腕ハンターになれるんだと、わかって……

     ただ、嬉しかった。




215: 2015/05/09(土) 15:52:18 ID:ii.3hCRY


―――――――――――


半月後の午前中

ふもと村 集会所


狩人「…………」

狩人(さて、ドスランポスやドスゲネポス、ドスガレオスも)

狩人(三乙を何度かしてしまったが、問題なく倒せる様にはなった)

狩人(……依頼主さんの突き刺さる様な視線は痛かったけど)

狩人(…………)

狩人(やはり、誰かとクエに出た方が失敗は少ないんだろうな)

狩人(…………)

狩人(とは言っても、俺と組んでくれるハンターが居るだろうか……)

216: 2015/05/09(土) 15:53:25 ID:ii.3hCRY

狩人(……ん?)


DQNハンター「へー! 少女って名前なんだ!」

DQNハンター「いい名前だな!」

少女「どうも」

アフロ「レイア狩りのコツなら、俺たちが教えてやるぜ?」

少女「いりません」

アフロ「硬いこと言うなよ、少女ちゃん」


狩人(…………)

狩人(……なんか、変なのに絡まれてるみたいだな)

狩人(助け舟……出したほうがいいか?)

217: 2015/05/09(土) 15:54:12 ID:ii.3hCRY

少女「!」

狩人(あ……こっちに気がついた?)

少女「狩人!」

狩人「え? あ、ああ、少女、お待たせ」

少女「ごめんなさい、私、狩人とクエに行く約束してたんで!」

DQNハンター「はああ!?」

DQNハンター「そりゃねーんじゃねーの? 少女ちゃん!」

アフロ「そうだぜ!」

アフロ「それにそいつ……確かふもと村のハズレハンターだろ!?」

アフロ「そんな奴と一緒に行ってもつまんねーって!」

狩人「…………」

少女「あいにくと」

218: 2015/05/09(土) 15:55:09 ID:ii.3hCRY

少女「私は狩りをつまるか、つまらないかで、やっているわけじゃないわ」

少女「他を当たって」

DQNハンター「はああああああ!??」

DQNハンター「何それ。 ちょっとカチンと来るんですけどぉ~!?」

アフロ「まあまあ……落ち着けよDQNハンター」

アフロ「いいから、とりあえずあいつ込みで、クエに参加しようぜ?」

アフロ「少女ちゃんもあいつのヘタレっぷりを見たら、俺たちの魅力にメロメロさ♪」

DQNハンター「……ま、俺らの実力なら行けるか」

DQNハンター「ど-よ? ヘタレハンター」

DQNハンター「俺らついて行っても問題ねーだろ?」

少女「……断って、狩人」

狩人「…………」

219: 2015/05/09(土) 15:55:53 ID:ii.3hCRY

DQNハンター「何黙ってんだよ?」

DQNハンター「あー、あれか」

DQNハンター「やっぱクエの約束とか、ウソだったわけ?」

アフロ「少女ちゃん、それは俺ら傷つくわ~」

少女「くっ……」

狩人「……えと」

狩人「受付嬢さん、このクエ、お願いします」

受付嬢「はい、分かりました」

DQNハンター「…………」

アフロ「…………」

少女「ちょ、ちょっと……!」

220: 2015/05/09(土) 15:56:43 ID:ii.3hCRY



     闇間のイャンクック?

     場所:密林

     時間:昼

     内容

     はぐれたイャンクックが、また出やがった!

     今年はやけに多いぜ!

     暗がりだったけど、ちょいと大きい奴だった。

     ハンターさん、ちゃっちゃっとやっつけてくれ!




221: 2015/05/09(土) 15:57:31 ID:ii.3hCRY

DQNハンター「んだぁ? クックかよ」

アフロ「うわっ! ショボ!」

狩人「ははは、俺、まだイャンクック狩ったことがないので」

狩人「少女にいろいろ教えてもらう、という約束をしてたんです」

DQNハンター「素人かよ……」

狩人「ヘタレなんで」

狩人「こんなクエですが、来てくれますか?」

DQNハンター「…………」

アフロ「…………」

少女(……なるほど、考えたわね)

222: 2015/05/09(土) 15:58:27 ID:ii.3hCRY

少女(ここから密林まで約往復一週間)

少女(ただのナンパで、しかもクック狩りなんていう低ランクの標的に付き合うのは)

少女(割に合わないわ)

少女(これならさすがに断る……)

DQNハンター「……ああ、いいぜ」

アフロ「なっ!? マジかよ!?」

狩人「」

少女「」

アフロ(正気かよ、DQNハンター!)

アフロ(確かに少女ちゃん可愛いけど、割に合わねーって!)

DQNハンター(うっせ! ここまでコケにされて引き下がれるか!)

DQNハンター(意地でもあの女の子、モノにする!!)

アフロ(マジかよ……)

223: 2015/05/09(土) 15:59:11 ID:ii.3hCRY

少女「…………」

狩人「…………」

少女(……いいの?)

狩人(……もうここまで来たら、乗りかかった船だ)

狩人(クック狩っていないのも事実だし、いい勉強になると思ってやるよ)

少女(そう……)

少女(……ごめんなさい、巻き込んでしまって)

狩人(ははは……いいって)

少女(…………)


狩人(……どうやら俺は)

狩人(最初につまづく運命にあるみたいだな……はあ……)

224: 2015/05/09(土) 16:00:06 ID:ii.3hCRY




     ……まあ、ともあれ

     一応誰かとクエに行くことになったんだ。

     それなりに喜ぼう。 うん。



     はあ……





225: 2015/05/09(土) 16:00:49 ID:ii.3hCRY


※注 それぞれの装備

DQNハンター(HR 3)

武器:双剣
防具:レウス装備一式

アフロ(HR 3)

武器:ハンマー
防具:レウス装備一式

狩人(HR 2)

武器:大剣
防具:フルフル装備一式

少女(HR 3)

武器:片手剣
防具:ザザミ装備一式



226: 2015/05/09(土) 16:01:53 ID:ii.3hCRY


―――――――――――


数日後の午前中

密林のBC(ベースキャンプ)


     ザアアアア……

狩人「うへぇ……土砂降りだな……」

DQNハンター「このくらいの雨で何言ってんだ?」

アフロ「ヘタレハンターの噂は、伊達じゃねーって事だろ」

     アッハッハッ……

少女「……私たちは」

少女「誰が上でも下でもない、クエのモンスターを狩るという」

少女「共通の目的を持っているハンター同士よ」

少女「今からそんな風に和を乱すのは、良くないと思うわ」

227: 2015/05/09(土) 16:02:42 ID:ii.3hCRY

DQNハンター「……へいへい」

アフロ「か、軽いジョークさ」

少女「軽い、ね……」

狩人「いいさ、少女。 俺は気にしてない」

狩人「俺にとっては初めてのモンスターだから緊張もしている」

狩人「ヘタレってのもあながち間違いじゃない」

少女「…………」

少女「そう」

DQNハンター「んじゃ、さっさと片付けに行こうぜ」

アフロ「ヘタレの出番は、無いと思うな!」

228: 2015/05/09(土) 16:03:17 ID:ii.3hCRY


―――――――――――


     ザアアアア……

少女「……雨、弱くならないわね」

狩人「え? 何か言ったか?」

少女「雨が弱くならないって、言ったの」

狩人「ああ、確かにな」

狩人「おまけに木々が邪魔で、あたりの様子も見えにくいし……」

DQNハンター「これだから素人は困るんだ」

DQNハンター「いいか? 教えといてやるが」

DQNハンター「クックみたいに火を吹く奴らの火炎攻撃は、結構きついが」

DQNハンター「こういう雨の中じゃ威力が半減するんだ」

229: 2015/05/09(土) 16:04:16 ID:ii.3hCRY

アフロ「そうそう」

アフロ「だからむしろ、こういう天候は大歓迎なんだよ!」

狩人「な、なるほど……」

少女(…………)

少女(……確かにそれは合っているわ)

少女(でも、こんな見通しのきかない場所で、さらに雨雲のせいで暗く、見えにくくなるのは)

少女(やっぱり歓迎できない)

少女(……何事もなければいいけど)

狩人(…………)

DQNハンター「ちっ……にしても見つからねーなぁ」

DQNハンター「どこに居んだよ……」

アフロ「早く狩って帰って、美味い飯、食いてーな……」

230: 2015/05/09(土) 16:05:08 ID:ii.3hCRY

DQNハンター「ああ、そうだな」

DQNハンター「モスのバラ肉煮込みにビールでかっこみたい!」

アフロ「いいねぇ」

アフロ「俺はカニだな!」

アフロ「ザザミソの熱々スープにフラヒヤ麦飯!」

DQNハンター「美味そうだな!」

     ギャハハ……

少女「…………」

狩人「……おい、まだ狩りの最中なんだぞ?」

狩人「そんな話をしてる場合じゃ無いだろ?」

231: 2015/05/09(土) 16:05:46 ID:ii.3hCRY

DQNハンター「ああん? 軽い常識も知らねード新人が何指図してんだぁ?」

アフロ「飯の話くらい、別にかまわねーだろ」

狩人「…………」

少女「…………」


     『狩りの最中に飯の話をするな』


狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……少女」

少女「……うん」

狩人「大丈夫……だよな?」

少女「たぶん……クックだし」

狩人「…………」

232: 2015/05/09(土) 16:06:31 ID:ii.3hCRY


―――――――――――


     ザアアアア……

DQNハンター「おっ?」

DQNハンター「あれじゃね?」

     ドスッ… ドスッ… ドスッ…

アフロ「のんきに歩いてやがるな……」

アフロ「でも確かにちょっと大きい感じだ」

狩人「少女?」

少女「ええ、シルエットからイャンクックに思える」

少女「けど……」

狩人「けど?」

233: 2015/05/09(土) 16:07:24 ID:ii.3hCRY

少女「…………」

少女「……ごめん、うまく言えない」

少女「何か、違和感があるんだけど……何かしら?」

狩人「…………」

狩人「よし、ともかくペイントボールを……」 ゴソゴソ…

DQNハンター「必要ねぇよ」

DQNハンター「クックくらい、俺の双剣でナマス切りにしてやらァ!」

     ダッ!

少女「あ……!」

アフロ「やれやれ……しょうがねぇな!」

アフロ「俺のハンマーの分も残しとけよ!」

     ダッ!

234: 2015/05/09(土) 16:08:03 ID:ii.3hCRY

狩人「二人して勝手だなぁ……」

狩人「まあいい、ともかくペイン」

     ガキィンッ!!

DQNハンター「っ!?」

アフロ「おらぁっ!!」

     ガギィィンッ!!

アフロ「んなぁ!?」

DQNハンター「な、何だ? こいつ……硬ぇ!?」

アフロ「バカ! 止まるな!」

235: 2015/05/09(土) 16:08:59 ID:ii.3hCRY



     コ……コ、コ、コ……!



救助アイルー「っ!?」

救助アイルー「こ、これは……まさか!?」




     クワアアアアアア―――――――――――ッ!!




DQNハンター「っ!!」

アフロ「がっ!?」

狩人「……!?」

少女「……っ!!」

236: 2015/05/09(土) 16:09:44 ID:ii.3hCRY

狩人「こ……これって……」

狩人「咆哮か!?」

少女「まさか!」

少女「イャンクックがバインドヴォイスを仕掛けるなんて、聞いた事もない!」


救助アイルー「お前ら! 逃げるニャ!」


狩人「!」

少女「!」


     バスッ! ビスッ! グチャッ!


DQNハンター「」 ドサッ…

アフロ「え……」

237: 2015/05/09(土) 16:10:43 ID:ii.3hCRY


     ズガッ! ギュルルルッ……ドズッ!!


アフロ「あ……がああああああああああああああああああああああああああああっ!!?」

アフロ「ひっ……ひぎいいいいいっ!!」


狩人「な……何なんだ!? あれ!?」

狩人「あんな巨体で、めちゃくちゃ早いぞ!?」


救助アイルー「いいから早く逃げるニャ!!」

救助アイルー「お前らじゃ相手にならないニャ!!」


     グルルル……


救助アイルー「あいつは……あいつは……!」

238: 2015/05/09(土) 16:11:40 ID:ii.3hCRY









救助アイルー「G級個体のイャンガルルガだニャ!!」









243: 2015/05/13(水) 19:58:59 ID:giUw.DW6

狩人「イャン……ええっ!? G級個体!?」

少女「で、でも! まだ他のハンターが!」

救助アイルー「俺たちは救出のプロだニャ!」

救助アイルー「あいつらの事は、任せておけ!」

救助アイルー「お前らが居ると邪魔ニャ!!」

狩人「……っ」

少女「……行こう、狩人」

狩人「……分かった!」

     ダッ!

救助アイルー「行くぞ、野郎ども!」

救助アイルー「G級モンスでも、やる事はいつも通りニャ!」

     ニャ… ニャー!!

救助アイルー(……とはいえ)

救助アイルー(クックのつもりで準備していたから、キツい仕事だニャ……!)

244: 2015/05/13(水) 19:59:48 ID:giUw.DW6


―――――――――――


密林 洞窟の一区画


     タッ タッ タッ…

狩人「はあっ……はあっ……」

少女「はあっ……はあっ……」

狩人「だ、大丈夫か……少女?」

少女「ええ……何とか……」

     クエエエエエエエエエエエエ……

狩人「……あいつら、大丈夫かな」

少女「……わからないわ」

245: 2015/05/13(水) 20:00:27 ID:giUw.DW6

狩人「…………」

少女「…………」


     ザアアアア……


少女「雨の音……ここまで聞こえるのね」

狩人「ここは、まだ入口に近い方だからな」

少女「……そうなの?」

狩人「鉱石掘りによく来てるから、知ってる」

少女「…………」

狩人「……ともかく、これからどうすればいい?」

狩人「目的のモンスターはクックじゃなかったし……」

少女「……リタイヤするしかないわ」

少女「救助アイルーの言う通り、あのモンスターがG級なら」

少女「下位装備の私たちじゃ歯が立たない」

246: 2015/05/13(水) 20:01:06 ID:giUw.DW6

狩人「そうなのか……」

狩人「雨だし、暗くてよく見えなかったけど」

狩人「あのハンター達、あっさりやられていた感じだったしなぁ」

少女「…………」

少女「とりあえずBC(ベースキャンプ)に戻りましょう」

少女「救助アイルーも助けたハンターを運ぶには、あそこに行くしかない」

狩人「そうか」

狩人「じゃ、行くとするか」

少女「でも、ちょっと待って」

少女「今来た道を戻るのは、危ないと思う」

少女「あのモンスターが居るかもしれない」

247: 2015/05/13(水) 20:02:13 ID:giUw.DW6

狩人「ああ、それは大丈夫だ」

少女「え?」

狩人「この奥に出口があるんだよ」

狩人「BC(ベースキャンプ)に近い湖岸側に出ている」

少女「そうなの?」

狩人「狭いから、あのモンスターは入って来られないだろうし」

狩人「ドスランポスの通り道みたいになってて、出くわすかもしれないが」

狩人「それでもあのイャン……なんちゃらよりはマシだ」

少女「…………」

狩人「さ、行こうぜ」

少女「う、うん」

248: 2015/05/13(水) 20:03:10 ID:giUw.DW6


―――――――――――


     ザアアアア……


狩人「くそっ……土砂崩れか」

狩人「通れなくなってやがる……」

少女「…………」

狩人「すまん、少女……」

少女「……これは仕方無いわよ」

少女「狩人のせいじゃない」

狩人「…………」

狩人「さて、どうするかな……」

249: 2015/05/13(水) 20:04:07 ID:giUw.DW6

少女「他に出入り口は無いの?」

狩人「あるにはあるが……」

狩人「どれもあのG級モンスターに出くわした場所に近い所なんだ」

狩人「おまけに飛竜とかが、巣にした形跡まである所も……」

少女「……居るかもしれないわね」

狩人「くそ……ペイントしておけば」

狩人「大まかな居場所が分かるのに……」

少女「この雨じゃ、それも難しいかも知れないわ」

狩人「…………」

狩人「となると……後はどうすればいい?」

少女「しばらく様子を見るしかないと思う」

少女「せめて、雨が止むか、弱くなるのを待った方がいい」

250: 2015/05/13(水) 20:04:46 ID:giUw.DW6

狩人「そうなれば、モドリ玉を使えそうだな」

少女「ええ」

少女「きっと、救助アイルーが見つけてくれると思う」

狩人「なら……しばらく休もう」

少女「そうね」

少女「…………」


―――――――――――


     ザアアアア……


狩人(……いつまで降り続くんだよ、この雨)

少女「…………」

251: 2015/05/13(水) 20:09:05 ID:giUw.DW6

狩人「……腹減ってきたな」

少女「……そうね」

狩人「…………」

     ゴソゴソ…

狩人「ほい。 こんがり肉」

狩人「食うか?」

少女「うん」

     ムシャ ムシャ

少女「美味しい」

狩人「良かった」

少女「用意がいいわね」

少女「私はかさ張るから、持って行かないわ」

252: 2015/05/13(水) 20:09:45 ID:giUw.DW6

狩人「携帯食料は味気なくてな……」

狩人「食ってもすぐ腹が減るし」

少女「まあ……確かにそうね」

狩人「……っと」

狩人「狩りの最中に飯の話はダメだった」

少女「……あれは別の意味が込められていると思う」

狩人「別の意味?」

少女「推測だけど……油断するなって意味だと思うわ」

狩人「!」

狩人「……油断、か」

狩人「なるほど」

253: 2015/05/13(水) 20:10:45 ID:giUw.DW6

少女「…………」

少女「ねえ、狩人」

狩人「ん?」

少女「あなたって、南部か中央の出身でしょ?」

狩人「え……よくわかったな」

狩人「その通りだよ」

少女「やっぱりね……」

狩人「…………」

狩人「……気のせいか、トゲのある言い方だな」

少女「…………」

少女「この際だから、洗いざらいぶちまけるわ」

少女「ええ。 あなたの事、馬鹿にしたの」

狩人「!?」

254: 2015/05/13(水) 20:11:21 ID:giUw.DW6

少女「そもそも、ハンターになった理由が『憧れ』である時点で」

少女「安全な中央地区か、南部地方の出身だと思ったわ」

狩人「…………」

少女「モンスターなんて、絵本か、物語の中でしか知らない存在で」

少女「ハンターという職業を『かっこいい』とか思っているあたり」

少女「現実を知らない、安全なところで育ったお坊ちゃんの発想よ」

狩人「…………」

少女「それに……ヘタレとか、ハズレとか言われても怒らないなんて」

少女「プライドも何もなく、ハンターとしての気概さえ持っていなかった」

狩人「…………」

255: 2015/05/13(水) 20:12:14 ID:giUw.DW6

狩人「……まあ」

狩人「確かにそれは否定できないな」

少女「…………」

狩人「でも」

狩人「俺に戻る場所はもうない」

少女「……え?」

少女「まさか……私と同じようにモンスターが?」

狩人「いいや」

少女「……どういう意味よ?」

狩人「俺……孤児院出身なんだ」

少女「!」

狩人「…………」

少女「……その割に言葉遣いは綺麗ね」

256: 2015/05/13(水) 20:13:23 ID:giUw.DW6

狩人「少女が孤児院をどう見ているのか知らないが」

狩人「俺たち孤児が最も力を入れて教えられるのは」

狩人「『お行儀よくする事』なんだよ」

少女「……どういう意味?」

狩人「例えば言葉使い」

狩人「孤児院にお金を出してくれる人への挨拶は特に大事だ」

狩人「これで行儀が悪かったら、お金を出して貰えなくなるかもしれないからな」

少女「…………」

狩人「……俺たち孤児に自由はない」

狩人「きちんと挨拶ができなかったり、逆らったりした奴は」

狩人「厳しい罰を受けたって聞いた」

少女「…………」

257: 2015/05/13(水) 20:14:25 ID:giUw.DW6

少女「逃げようって、思わなかったの?」

狩人「俺は……よく言えば素直」

狩人「悪く言えば、何も考えずに言う通りにしていたからな」

狩人「自分の待遇に何の疑問も持たず生活をしていた」

狩人「そうすれば食べ物も出てくるし、たまに美味しいお菓子にもありつけたから」

狩人「むしろ、逆らう奴の方がおかしいって思ってたくらいだ」

少女「…………」

狩人「…………」

狩人「……でも、ある日」

狩人「俺の大好きだった人が、突然連れて行かれた」

少女「…………」

少女「どういう人だったの?」

258: 2015/05/13(水) 20:15:02 ID:giUw.DW6

狩人「……優しい人でね」

狩人「俺たち孤児にとって先輩にあたる、太陽みたいなお姉さんで……」

狩人「気さくな人だった」

少女「…………」

狩人「いつも俺には『素直すぎ』だって注意してたけど」

狩人「もちろんその時の俺に、意味はわかってなかった」

少女「…………」

狩人「その人がある日」

狩人「孤児院にお金を出している人のお屋敷に 住み込みで働く事になった」

狩人「唐突な事で、孤児のみんなは俺も含めてすごくショックだった」

少女「…………」

259: 2015/05/13(水) 20:15:42 ID:giUw.DW6

狩人「俺は……いや、俺たちは連れて行かないで、と、お願いした」

少女「…………」

狩人「その時に返って来た言葉は……」


     お前らは食わせてもらってるだけありがたいと思え!逆らうな!


狩人「……だった」

少女「…………」

少女「……そのお姉さんはどうなったの?」

狩人「さあ……」

少女「さあ……って」

狩人「連れて行かれた場所を知らないし」

狩人「探そうとしたら、お金を出していた人は偽名を使ってたみたいで」

狩人「すぐに行き詰まったから……」

少女「…………」

260: 2015/05/13(水) 20:16:34 ID:giUw.DW6

狩人「こういうの、どう言うんだろうな?」

狩人「悔しいけど何もできなくて、ムカムカするっていう感じ」

少女「……絶望……かしら」

狩人「絶望……ね」

狩人「じゃ、その絶望してた俺だったけど」

狩人「そんな時にラオシャンロンを倒して凱旋するハンター達を見たんだ」

少女「…………」

狩人「少女の言う通り、俺は憧れたよ」

狩人「あんなに大きなモンスターにも勝ってしまう強さ」

狩人「自由で、誰の命令にも従わずに行動できる奔放な勇敢さ」

少女「…………」

261: 2015/05/13(水) 20:17:10 ID:giUw.DW6

狩人「俺もあんな風になりたい」

狩人「自分の生き方を自由に決められる様になりたい」

狩人「あそこに立てる様な、強さを持ったハンターになりたいって」

狩人「心の底から思ったんだ」

少女「…………」

狩人「…………」

狩人「……話が長くなったけど」

狩人「少女から見たら、物足りない部分はあるかもしれない」

狩人「だけど、決してふざけた気持ちでハンターになった訳じゃな……」

少女「もういい」

少女「もう……わかったから」

狩人「…………」

少女「…………」

262: 2015/05/13(水) 20:17:41 ID:giUw.DW6


     ザアアアア……


少女「…………」

少女「……私は、ね」

狩人「う、うん」

少女「狩人に……」

少女「ただ……嫉妬しているの」

狩人「…………」

狩人「え……嫉妬?」

少女「…………」

263: 2015/05/13(水) 20:18:18 ID:giUw.DW6

少女「私は……ね」

少女「大剣とか重すぎて、使えないのよ」

狩人「…………」

狩人「は?」

少女「なのにあなたは、武器を自由に変えられる」

少女「いつの間にか、単独でフルフルを狩ってこられる様にもなっていた」

少女「羨ましかった……」

狩人「ちょっと待てよ」

狩人「使えないって、どういう事だ?」

狩人「それじゃあ、ハンター試験で落ちてしまうだろ?」

少女「…………」

少女「ロートルさんが言ってたでしょ?」

少女「お情けで合格したって」

狩人「少女もそうだったのか……」

264: 2015/05/13(水) 20:18:56 ID:giUw.DW6

少女「いいえ」

狩人「……は?」

少女「私はロートルさんより酷いわ」

少女「試験官の人にお金を掴ませて、合格にしてもらったのだから」

狩人「!!」

少女「…………」

狩人「…………」

狩人「……何でそこまでしてハンターになろうと思ったんだ?」

少女「…………」

少女「ごめん……言いたくない」

狩人「……そっか」

265: 2015/05/13(水) 20:19:59 ID:giUw.DW6

狩人「…………」

少女「…………」


     ザアアアア……


狩人「……どうして、そんなこと俺に話したんだ?」

狩人「バラすつもりはないけど、バレたらまずい事だろ?」

少女「さあ……何でかな」

少女「自分でもよくわからない」

狩人「…………」

少女「…………」

少女「ただ……」

少女「誰かに聞いて欲しかったから……かもしれないわ」

狩人「少女……」

266: 2015/05/13(水) 20:20:29 ID:giUw.DW6



救助アイルー「……ここに居たのかニャ」



狩人「どわぁっ!?」

少女「きゃっ!?」

救助アイルー「なんかいい雰囲気っぽかったけど」

救助アイルー「あんまり余裕もないんで邪魔するニャ!」

狩人「じゃ、邪魔って……」

少女「……今の話、聞いてた?」

救助アイルー「何の事だニャ?」

救助アイルー「俺の仕事はハンターの救助であって」

救助アイルー「探偵じゃないニャ!」

267: 2015/05/13(水) 20:21:18 ID:giUw.DW6

狩人「聞いてたのは否定しないのか?」

救助アイルー「そういう野暮なツッコミ入れるあたり」

救助アイルー「お前は女の子にモテない奴みたいだニャ」

狩人「……いつも世話になってるけど」

狩人「余計なお世話だ」

少女「…………」 クスッ

救助アイルー「さ、あのG級イャンガルルガの位置は把握しているニャ」

救助アイルー「今なら安全にBC(ベースキャンプ)に戻れるニャ」

狩人「わかった」

少女「道案内、よろしくね」

268: 2015/05/13(水) 20:21:57 ID:giUw.DW6


―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


     ニャァ…… ニャァ……

狩人「…………」

少女「…………」

救助アイルー「……酷い惨状に思えるかもしれないけど」

救助アイルー「俺たちに氏んだ奴は居ないニャ」

救助アイルー「G級モンスター相手でこれなら、御の字ニャ」

DQNハンター「」

狩人「……じゃあ、こっちの布をかけられているのって」

救助アイルー「布を剥がすのはおすすめ出来ないニャ」

救助アイルー「頭の中身がこんにちは✩してて、ひどい状態だニャ」

269: 2015/05/13(水) 20:22:43 ID:giUw.DW6

DQNハンター「」

狩人「…………」

少女「…………」

アフロ「…………」 ガタガタガタガタ…

救助アイルー「…………」

救助アイルー(……こっちのハンターは幸いにも怪我で済んだけど)

救助アイルー(別の意味で引退かもしれないニャ……)

救助アイルー「…………」 フウ…

救助アイルー「もう少しで出発の準備が整うニャ」

狩人「あ……何か手伝おうか?」

救助アイルー「これは俺たちの『仕事』だニャ」

救助アイルー「ハンターは、ハンターの『仕事』に集中すればいいのニャ」

270: 2015/05/13(水) 20:23:19 ID:giUw.DW6

狩人「…………」

少女「…………」

アフロ「…………」 ガタガタガタガタ…


―――――――――――


数日後の午後

ふもと村 集会所


ロートル「狩人! 少女!」

ソロ「……無事だったか」

狩人「ロートルさん……それに」

少女「ソロさん……」

271: 2015/05/13(水) 20:24:00 ID:giUw.DW6

ロートル「G級モンスターに出くわして、ハンターに犠牲者が出たと聞いてたから」

ロートル「心配していた」

狩人「俺と少女は直接、戦っていないので……」

少女「あの二人を助けに行こうとしたら、救助アイルーに止められたんです」

ソロ「……それで正解だ」

狩人「! ……ソロさん」

ソロ「犠牲になったハンターは気の毒だが」

ソロ「下位装備なんて、G級モンスターの前では紙切れも同然……」

ソロ「お前たちの判断は間違っていない」

少女「…………」

272: 2015/05/13(水) 20:24:37 ID:giUw.DW6

ロートル「……まあ詳しい話は、また今度聞こう」

ロートル「しばらくゆっくり休むといい」

狩人「……そうします」

少女「同じく……」


―――――――――――


ロートルの家


ソロ「……実は、ギルドから注意を受けていてな」

ロートル「何?」

ソロ「例の場所から逃げ出したG級モンスターが一匹居る」

ソロ「イャンガルルガは、シルエットがクックに似ているから」

ソロ「不確定な目撃情報や怪しい、と思える依頼はそれとなく見ておいてくれと……」

ロートル「……最近、時々クック狩りに行ってたのは、それか」

273: 2015/05/13(水) 20:25:07 ID:giUw.DW6

ソロ「ギルド観測所のモンスター鑑定員も不足気味」

ソロ「こういう事態を防ぎたかったのだろうが……」

ロートル「起こってしまった……か」

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ロートル「……あの2人」

ロートル「どうするのだろうな」

ソロ「……ハンターをやっていれば、いずれ出くわす問題だ」

ソロ「遅かれ早かれ、な」

ロートル「…………」

ロートル「……身勝手な事を言うが」

ロートル「あの2人には乗り越えて欲しいよ」

ソロ「…………」

ソロ「……そうだな」

274: 2015/05/13(水) 20:26:09 ID:giUw.DW6


―――――――――――


狩人の家


狩人「…………」


少女「そもそも、ハンターになった理由が『憧れ』である時点で」

少女「安全な中央地区か、南部地方の出身だと思ったわ」


狩人「…………」


少女「ハンターという職業を『かっこいい』とか思っているあたり」

少女「現実を知らない、安全なところで育ったお坊ちゃんの発想よ」


狩人「…………」

275: 2015/05/13(水) 20:26:46 ID:giUw.DW6


少女「なのにあなたは、武器を自由に変えられる」

少女「羨ましかった……」


狩人「…………」


少女「私は……ね」

少女「大剣とか重すぎて、使えないのよ」

少女「試験官の人にお金を掴ませて、合格にしてもらったのだから」


狩人「…………」

276: 2015/05/13(水) 20:27:20 ID:giUw.DW6


少女「自分でもよくわからない」

少女「誰かに聞いて欲しかったから……かもしれないわ」


狩人「…………」

狩人(……いろいろあるんだろうな)


少女「まさか……私と同じようにモンスターが?」


狩人(…………)

狩人(聞いちゃいけない事……なんだろうな)

狩人(…………)

277: 2015/05/13(水) 20:28:04 ID:giUw.DW6


―――――――――――


少女の家


少女「…………」


狩人「俺に戻る場所はもうない」

狩人「俺……孤児院出身なんだ」


少女「…………」


狩人「……俺たち孤児に自由はない」

狩人「きちんと挨拶ができなかったり、逆らったりした奴は」

狩人「厳しい罰を受けたって聞いた」


少女「…………」

278: 2015/05/13(水) 20:28:36 ID:giUw.DW6


狩人「少女の言う通り、俺は憧れたよ」

狩人「あんなに大きなモンスターにも勝ってしまう強さ」

狩人「自由で、誰の命令にも従わずに行動できる奔放な勇敢さ」


少女「…………」


狩人「俺もあんな風になりたい」

狩人「自分の生き方を自由に決められる様になりたい」

狩人「あそこに立てる様な、強さを持ったハンターになりたいって」

狩人「心の底から思ったんだ」


少女「…………」

少女(……同じじゃない)

少女(私と……)

279: 2015/05/13(水) 20:29:13 ID:giUw.DW6


狩人「……どうして、そんなこと俺に話したんだ?」

狩人「バラすつもりはないけど、バレたらまずい事だろ?」


少女「…………」

少女(……本当にその通りよね)

少女(私……バカみたい)

少女(…………)

少女(…………)

少女(ううん……違う)

少女(たぶん、バカなんだわ)

280: 2015/05/13(水) 20:29:45 ID:giUw.DW6


―――――――――――


翌日の朝

狩人の家の前


狩人「ふああああああああ……」

狩人「ムニャムニャ……」

狩人「…………」

狩人「井戸……顔を洗わないと」

―――――――――――

     バシャ バシャ

狩人「……ふう」

281: 2015/05/13(水) 20:30:19 ID:giUw.DW6

少女「おはよう、狩人」

狩人「……ん?」

狩人「ああ、少女。 おはよう」

狩人(少女……こんな所まで顔を洗いに来た?)

狩人(……な訳ないよな)

狩人「…………」

少女「…………」

少女「……少し、歩かない?」

狩人「わかった。 付き合うよ」

282: 2015/05/13(水) 20:30:58 ID:giUw.DW6

     テク テク テク…

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……静かだな」

少女「そうね」

狩人「そういえば、こんな時間に出歩くの初めてかも」

少女「私も」

狩人「…………」

少女「…………」

283: 2015/05/13(水) 20:31:37 ID:giUw.DW6

     テク テク テク…

少女「……ねえ、狩人」

狩人「ん?」

少女「例の……怪我ですんで、生き残ったあのハンター」

少女「引退するって聞いたわ」

狩人「……そうか」

少女「…………」

狩人「…………」

少女「私は続けるつもり」

狩人「!」

少女「一応、目的あるから」

狩人「そっか……」

少女「狩人は?」

284: 2015/05/13(水) 20:32:12 ID:giUw.DW6

狩人「もちろん続けるよ」

狩人「憧れている、あの時のハンターになる為に」

少女「そう」 クスッ

狩人「ははは」

少女「…………」

狩人「…………」

少女「で、さ……」

狩人「うん」

少女「今度、ライトボウガンを練習しようと思うの」

狩人「!」

狩人「ガンナーに?」

少女「もちろん片手剣を捨てるつもりはないわ」

285: 2015/05/13(水) 20:33:08 ID:giUw.DW6

少女「でも、これから先、何が起こるかわからないって事を」

少女「身にしみてよくわかった」

少女「だから……選択肢をできるだけ多くしたいって思ってる」

狩人「…………」

少女「けど……ひとりは不安だから」

少女「狩人に手伝って欲しい」///

狩人「まあ、俺でいいのなら」

少女「…………」

少女「……このニブチン」 ボソッ

狩人「ん?」

少女「何でもない」

286: 2015/05/13(水) 20:33:38 ID:giUw.DW6


     ナニオコッテンダ? オコッテナイ

     オコッテルジャナイカ  オコッテナイ!


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ロートル「……どうやら、いらぬ心配だった様だな」 クスッ

ソロ「ああ……その様だ」

ロートル「それにしても」

ロートル「青春だねぇ」

ソロ「……モゲロ」

ロートル「同感だ!」

     ハハハ…

287: 2015/05/13(水) 20:34:29 ID:giUw.DW6






     爽やかな朝もやの中

     俺と少女は、次の狩りを一緒に行く約束をしたのだった。







293: 2015/05/19(火) 19:02:06 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


数日後の午後

ふもと村 広場


女「ふう……あー今回の仕入れは疲れたぁ」

女「ボッケ村の温泉にでも行ってこようかしら……」

女「…………」

女「狩人はどうしてるかな?」

女「また3乙とか、繰り返して悩んでたりして」 クスッ

女「うふふ♪」

294: 2015/05/19(火) 19:02:45 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


狩人の家


女「狩人ー? 居るー?」

女「……ん?」

     コンナ雑ナ手入レシテ!

     テ、テキトウデイイダロ!?

女「…………」

女「はい?」

女「…………」

女「狩人、入るよー?」

295: 2015/05/19(火) 19:03:46 ID:uA9ELKXw

狩人「だから、そこは使っていないから……ん?」

少女「そんな調子だからいつまでも……え?」

女「……少女ちゃん?」

少女「……女さん?」

狩人「女、仕入れから帰ってきてたのか」

少女「!」

少女(呼び捨て!?)

女「そう。 で、狩人、どうしてるかなーと様子を……と思ったんだけど」

女「邪魔だった?」

狩人「いやいや、全然邪魔じゃないよ」

少女「…………」

296: 2015/05/19(火) 19:04:45 ID:uA9ELKXw

女「ところで何してたの?」

狩人「あー……その」

少女「……ちょっとお世話になったので」

少女「部屋の掃除でもしてあげようとしたら、いちいち文句を言うんです」

狩人「それは少女の方だろ……」

女(……ん?)

少女「どうしてよ?」

少女「こんな雑然とモノが散乱して、きったない部屋!」

少女「徹底して整理整頓しないとダメでしょ?」

狩人「俺は、この状態のままで何の支障もなく暮らしてるんだから」

狩人「このまま掃除すればいいんだよ」

女(…………)

297: 2015/05/19(火) 19:05:30 ID:uA9ELKXw

女「……えと」

女「何か、二人とも急に仲良くなったわね?」

少女「……!」///

狩人「……そうですか?」

女(……ほうほう)

女(そういう事ですか)

女「まあ、取り込み中みたいだから」

女「私はこれで。 じゃあね、狩人!」

狩人「え? ……あ、ああ」

     スタ スタ スタ…

少女「…………」

狩人「…………」

298: 2015/05/19(火) 19:06:19 ID:uA9ELKXw

少女「……私も帰る」

狩人「へ?」

     スタ スタ スタ…

狩人「…………」

狩人「何なんだよ……ったく」

狩人「…………」

狩人「…………」

狩人「俺もアイルー雇おうかな……」

狩人「はあ……」

299: 2015/05/19(火) 19:07:02 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


数日後の午前

雪山


     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

少女「くっ……!」

     ギュアッ! ギュアッ!

狩人「よっと!」(防御姿勢) ガキッ!

狩人「大丈夫か?」

少女「ええ、ありがとう」

狩人「はあっ!」 ズバッ!

300: 2015/05/19(火) 19:08:23 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


少女「ふう……」

狩人「…………」

狩人(ドスギアノスでも結構時間がかかるな)

狩人(こりゃ……単独で狩りをするのには向いてないかも)

少女「……思ったより時間がかかるわね」

狩人「……そうだな」

狩人「でも、結構使えてる方じゃないか?」

少女「一応、練習はしたから……」

狩人「俺も一度、真似してやってみたけど」

狩人「リロードをついうっかり忘れてしまうんだよなぁ」

301: 2015/05/19(火) 19:09:33 ID:uA9ELKXw

少女「私も出来るだけ気をつけているんだけど……」

少女「困った事にボウガンごとで打てる弾丸の種類や装弾数が違ったりするの」

狩人「うひゃあ……」

少女「目的や自分に合うボウガンを選別して、慣れていくしかないわ」

少女「でも、そこに目をつぶれば十分メリットがある武器よ」

狩人「俺はダメだなぁ……そういうの」

狩人「絶対管理できない自信がある」

少女「まあ、その辺りは人それぞれだと思うわ」 クスッ

少女「今後しばらくボウガンでやってみる」

狩人「そうか」

少女「狩人はガンナー武器、使わないつもりなの?」

狩人「う~ん……そう言われると、何か覚えた方がいい様に思えるなぁ」

302: 2015/05/19(火) 19:10:54 ID:uA9ELKXw

少女「狩人は弓が向いてると思う」

少女「大剣と同じく溜め攻撃できるし」

狩人「そうなの?」

少女「どういう仕組みかわからないけど」

少女「弓矢は無限に出てくるのも勧める理由の一つ」

狩人「なにそれこわい」

少女「竜人族の秘法だとか何とか……」

狩人「……何か怪しげな雰囲気プンプンするなぁ」

少女「でもリロードの手間はないし、扱いやすさはダントツだと思う」

狩人「なら少女は、どうして使わないんだ?」

少女「……非力で弦を引けないのよ」

狩人「あ……ご、ごめん」

303: 2015/05/19(火) 19:11:51 ID:uA9ELKXw

少女「ううん。 あやまらなくていい」

少女「それよりもこれでだいたいの感じは掴めたわ」

少女「ありがとう、狩人」

狩人「いや、別に礼を言われるほどの事じゃ……」

少女「ふふふ」

少女「さて、それじゃそろそろ戻りましょうか」

狩人「そうだな」


狩人(……ガンナー武器か)

狩人(やっぱり何かひとつくらい使えた方がいいんだろうな)

304: 2015/05/19(火) 19:12:57 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


夕方

ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ

狩人「……ん?」

少女「何か……騒がしいわね?」

女「あ、狩人に少女ちゃん。 お帰り」

狩人「ただいま」

少女「女さん、何か騒がしいみたいですけど……」

女「ああそうか、二人は初めてだっけ」

女「明日、村総出で避難訓練するの。 その準備だよ」

狩人「避難訓練?」

少女「……モンスター対策ですか」

305: 2015/05/19(火) 19:13:34 ID:uA9ELKXw

女「うん、正解」

女「5年くらい前かな?」

女「この村、ティガレックスに襲われたの」

狩人「!」

少女「…………」

女「それ以前も訓練はしてたんだけど……長いあいだ平和だったからいい加減でね」

女「ハンターが仕留めてくれたけど、村の住人に犠牲者が出てしまったわ」

女「で、それ以降、ちゃんとしようって事になって」

女「準備も念入りになったの」

狩人「……そうだったんですか」

少女「私たちはどうすれば?」

306: 2015/05/19(火) 19:15:04 ID:uA9ELKXw

女「あなたたち村付きのハンターは」

女「基本、襲ってきたモンスターを倒すか、撃退するって事になる」

狩人「ですよね……」

女「でも、ケース・バイ・ケースという気もするわ」

少女「え……」

女「敵わない相手……例えばG級モンスターとかが襲ってきたら」

女「HRの低いハンターじゃ相手にならないし……」

女「ギルドの方でも最近じゃ規定を変えて、村付きハンターにも」

女「一定の撤退権を認め始めているって聞くしね」

少女「何を言ってるんですか!?」

女「!?」

狩人「!?」

307: 2015/05/19(火) 19:16:15 ID:uA9ELKXw

少女「私はこの村の住人の為に最後まで戦います!」

少女「たとえ、G級モンスターが相手でも!」

女「そ、そう。 そう言ってくれると、この村の一員として嬉しいわ」

少女「村付きハンターが村を見捨てて逃げるなんて……あってはいけない事ですよ!」

少女「絶対に!」

狩人「…………」

女「……うん。 たぶんそれは正しいし、村付きハンターの契約条項にも書いてあるね」

女「だからこそ、住処だって村が用意しなくちゃならないし」

女「これまでずっと、ギルドが逃げたハンターに制裁を加えていた」

狩人「…………」

女「でもね。 世の中、気合や根性だけで何とかできる訳じゃない」

少女「…………」

308: 2015/05/19(火) 19:17:26 ID:uA9ELKXw

女「契約でそうなってるからって、氏ぬとわかっている相手に向かって行けなんて」

女「私は言いたくない」

狩人「女……」

少女「…………」

女「もちろん助けて欲しいとは思うし、私たちを見捨てて逃げて欲しくないけど」

女「ハンターが敵わない相手なら、最初からみんなで逃げた方がいいわ」

狩人「…………」

狩人「……俺も」

狩人「できれば戦いたいし、敵わない相手に向かって行って氏にたくないです。 でも……」

狩人「この村が無くなるのも嫌だ」

女「……うん。 私はそれでいいと思う」

少女「…………」

309: 2015/05/19(火) 19:18:04 ID:uA9ELKXw

女「でね、一応最悪の事を考えて対策は講じてあるの」

狩人「というと?」

女「まずはお金ね」

女「ふもと村は割と交通の要になっていて、経済的には潤ってる方なの」

少女「……村つきハンターが4人も居ますしね」

女「ふふふ、そうね」

女「で、村のみんなで毎年少しずつお金を出し合って、蓄えをしているわ」

女「いざという時は、復興にこのお金を使う予定」

女「管理はギルドに任せて預けているわ」

狩人「なるほど、いい考えですね」

310: 2015/05/19(火) 19:18:43 ID:uA9ELKXw

女「それから避難経路の複数化」

女「住人が一斉に同じ方向へ逃げたんじゃ、混乱するし」

女「モンスターが追いかけてきた時、一網打尽にされる危険性がある」

女「5年前は、このせいで犠牲者が出てしまった」

少女「…………」

女「ふもと村では、住んでいる地区ごとに逃げる方向を決めていて」

女「どれか一つ、モンスターに襲われても……」

女「住人全部が犠牲にならない様にしているわ」

狩人「……ひとりも犠牲者が出ない様に頑張ります」

少女「…………」

女「うん、期待してる」 クスッ

女「それから近隣の村同士の連携も呼びかけていて」

女「モンスターだけでなく、自然災害などで被害が出ても」

女「お互いがお互いを助け合うよう協定を結んでいるわ」

311: 2015/05/19(火) 19:19:47 ID:uA9ELKXw

狩人「すごい……完璧ですね!」

女「まあ、私が考えたんじゃないんだけどね……」

少女「…………」

女「それじゃ、私、そろそろ行くね?」

狩人「ああ、ありがとう!」

狩人「明日の訓練、俺も頑張るから!」

女「うん!」

     スタ スタ スタ…

狩人「いやぁ~……それにしてもいろいろ考えているんだなぁ」

狩人「世の中には頭のいい人が居るもんだ……」

少女「…………」

312: 2015/05/19(火) 19:20:25 ID:uA9ELKXw

狩人「少女?」

少女「……え?」

少女「ごめん……聞いてなかった。 何?」

狩人「い、いや、何か様子が変だなって思って……」

少女「そう……」

少女「じゃ、私も帰るわ」

少女「今日はありがとう、狩人」

狩人「あ、ああ……お安い御用さ」

少女「またお願いね」

     スタ スタ スタ…

狩人「…………」

狩人(……なんか、元気が無かったな?)

313: 2015/05/19(火) 19:21:15 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


少女の家


     ドサッ…

少女「……ふう」

コックアイルー「あ、おかえりなさい、ご主人様」

コックアイルー「夕飯は何にしますかニャ?」

少女「そうね……」

少女「…………」

少女「お任せにするわ」

コックアイルー「わかりましたニャ!」

     タッ タッ タッ…

314: 2015/05/19(火) 19:22:07 ID:uA9ELKXw

少女「…………」

少女(……そんな対策)

少女(私の村だって、やってたわよ……!)

少女(…………)

少女(みんな……いざという時はわがままで、身勝手で……)

少女(誰ひとりとして、訓練通りに動かなかった……近隣の村も手のひらを返した)

少女(…………)

少女(信頼していたハンターは真っ先に逃げ、それが引き金になった)

少女(ギルドに制裁を加えられた事が……唯一いい出来事)

少女(…………)

少女(……ギルドが制裁を止めたら、もっと犠牲が増えるだけよ)

315: 2015/05/19(火) 19:22:50 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


ロートルの家


ロートル「ほう? 女ちゃんが説明してくれたのか」

狩人「はい」

ロートル「俺の仕事が無くなったな」 クスッ

狩人「いや、そんな事はないですよ」

狩人「実は聞きたい事があって……」

ロートル「ほう?」

狩人「明日の訓練の俺の役割と……」

狩人「村付きハンターの契約についてです」

316: 2015/05/19(火) 19:23:51 ID:uA9ELKXw

ロートル「訓練については、そんなにやる事はない」

ロートル「俺たちの役割は、住民が逃げる時間を稼ぐって事の再確認という感じだ」

ロートル「で、村付きハンターの契約って?」

狩人「女に聞いたんですけど……」

狩人「逃げたハンターに制裁を加えなくなりつつあるとか」

ロートル「ああ、それならとっくに制裁条項は改変されているぞ」

狩人「そうなんですか?」

ロートル「以前は問答無用で逃げた村付きハンターをギルドが粛清していたが」

ロートル「そうする事で困った出来事が起こったんだ」

狩人「というと?」

317: 2015/05/19(火) 19:24:51 ID:uA9ELKXw

ロートル「例えばだ」

ロートル「このふもと村はまだ比較的襲われにくい村だが」

ロートル「中には襲われやすい村や、危険地帯に近いところに村があった場合」

ロートル「危険性は格段にアップする」

狩人「はい」

ロートル「そういうところに送られるハンターは、優秀な奴が多いが」

ロートル「それでも限界があるし、誰もが命を投げ打って戦ってくれるわけじゃない」

狩人「そうですよね……」

ロートル「そこでギルドは粛清を思いつくわけだが」

ロートル「そうなると引退を宣言するハンターが続出した」

狩人「!」

318: 2015/05/19(火) 19:26:26 ID:uA9ELKXw

ロートル「最初は村の移転を望んだのだが、そんな事いちいち聞いてられるほど」

ロートル「優秀なハンターが居る訳じゃない」

ロートル「当然、却下していたが、命を大事にしたいハンターは」

ロートル「やむを得ず、引退を選ぶようになった、というわけだ」

狩人「…………」

ロートル「こうなるとハンターの居ない危険地帯の村々は どんどんと人が住まなくなり」

ロートル「ギルドとしても、探索の拠点や中継点を次々失うという事態に陥った」

ロートル「加えて、いままで安全だった土地にまでモンスターが現れる様になり」

ロートル「人間の活動領域まで狭くなるという事に繋がりかねなくなった」

狩人「…………」

ロートル「そして、ギルドは粛清を止め、一定の条件下で撤退を認め」

ロートル「粛清ではなく、罰則金、という形を取る事にしたんだ」

狩人「そうだったんですか……」

319: 2015/05/19(火) 19:28:00 ID:uA9ELKXw

ロートル「規定では古龍及びG級個体は、HRに関わらずどんなハンターでも逃げてもよし」

ロートル「上位及び下位モンスターの場合はHRによって罰則金の支払い」

ロートル「と、大まかに定められている」

狩人「……G級は逃げてもよし、ですか」

ロートル「……酷なようだがな」

ロートル「G級モンスターってのは、本当に化物だ」

ロートル「ギルドが認めているG級ハンターですら」

ロートル「戦う相手が『何か』わかっていて、下準備をしていないと」

ロートル「まともに戦う事すら出来ない怪物なんだよ」

狩人「…………」

ロートル「……とまあ、こんな感じだ」

狩人「あ……はい」

狩人「ありがとうございます、よく分かりました」

320: 2015/05/19(火) 19:28:44 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


数日後の朝

狩人の家


狩人「ふああああ……」

狩人「…………」 ムニャ ムニャ…

狩人「…………」

狩人「……さて、起きるか」

狩人「井戸……顔を洗いに行かないと……」

狩人「ふあぁぁ……」

321: 2015/05/19(火) 19:29:25 ID:uA9ELKXw

     バシャ バシャ

狩人「ふう……」 フキフキ

狩人「…………」

狩人(避難訓練は滞りなく終了した)

狩人(ロートルさんの言う通り、俺たちハンターの出番はそれ程なく)

狩人(村の住人総出で訓練を行っていた)

狩人(…………)

狩人(モンスターが村に出現と同時に特殊な半鐘が鳴らされ)

狩人(それぞれの地区の住人が、それぞれの避難道へと逃げ混んでいく)

狩人(G級かどうかは関係なく、モンスターが現れたら、即、逃げる)

狩人(それが基本姿勢の様だった)

狩人(…………)

322: 2015/05/19(火) 19:30:10 ID:uA9ELKXw

狩人(……それもそうか)

狩人(ハンターでもない、一般の人にとって)

狩人(G級個体だろうが、ドスギアノスだろうが)

狩人(危険度は変わらないわけだしな……)

狩人(…………)

狩人(……俺は、どこか)

狩人(ハンターという仕事を軽く考えていたのかもしれない……)

狩人(…………)

323: 2015/05/19(火) 19:32:18 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


集会所


     ガヤ ガヤ

狩人「…………」

狩人(……ダメか)

狩人(掲示板に依頼貼ったけど、誰も来てくれない)

狩人(今日は少女も居ないし)

狩人(かと言ってロートルさんやソロさんに頼むには内容が低いし)

狩人(…………)

狩人(しょうがない……ひとりで行くか) ハア…

    パァ~フォ~

324: 2015/05/19(火) 19:33:51 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


密林 BC(ベースキャンプ)


狩人「さて、着いた」

狩人「依頼内容は……ゲリョス……と」

狩人「初めて戦う奴だから、誰かと来たかったが……しょうがない」

狩人「おろしたてのフルミナントソード(大剣)もあるし、気をつけて戦おう。 うん」

狩人「さて、出発するか」

―――――――――――

     ザッ ザッ ザッ…

狩人「!」

狩人(居た! 多分あいつだ!)

325: 2015/05/19(火) 19:34:52 ID:uA9ELKXw

狩人(紫色の外皮に変わった感じのトサカ……硬そうだな、あれ)

狩人(それに尻尾……なんかフルフルみたいに多少は伸び縮みするのかもしれない)

狩人(テールアタックには気を付けないと……)

     ドスッ… ドスッ… ドスッ…

狩人(大きさはフルフルと同じか、ちょい小さいくらいか)

狩人(尻尾に気をつけて間合いを考えよう)

狩人(よし……ペイントボールを当てて) グッ

     ブンッ! ヒュ―――…… ベチャッ!

狩人(うし、ペイント成功!)

狩人(戦闘開始だ!)

     ギュワアアアアアア――!

326: 2015/05/19(火) 19:35:57 ID:uA9ELKXw

     ペッ!

狩人「!?」

狩人(何か吐き出した!!)

狩人「くっ……!」 回避!

     ドベチャッ!

狩人「うへぇ……何だこれ? 気持ち悪い紫の液体 吐き出したぞ……」

狩人「何か分からないけど、絶対当たらない方がいいな」

狩人「……ん?」

     ガンッ! ガンッ! ガンッ!!

狩人「何だ? トサカを火打石みた――」

327: 2015/05/19(火) 19:36:56 ID:uA9ELKXw


     ビ  カ  ァ  ッ !!


狩人「うわああああああああっ!?」

狩人「目、目が……目がああああっ!!」

     ドスッ ドスッ ドスッ!

狩人「っ!」

狩人(この音! 近づいてきてる! ヤバイッ!!)

狩人「く、くそっ!」

     コケッ

狩人「ぎゃふんっ!」

     ベチャッ!

狩人「うわあああっ!? こ、これ、さっきの紫のやつか!?」

     バゴォッ!!

狩人「ぶべらっ!」

328: 2015/05/19(火) 19:38:16 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


ふもと村 集会所


狩人「」

救助アイルー「毎度どうもニャ」

受付嬢「ご苦労様」


流れハンター「……またあいつか」

流れハンター「今度は何にやられたんだ?」

ハンター(女)「確か……ゲリョスって聞いたけど」

ハンター(女)「この前はドスゲネポスに3乙してたよ」

色黒ハンター「これだけ3乙してて生き残ってるのも ある意味すごいな」

色黒ハンター「組みたいとは、これっぽっちも思わないけどな……」

329: 2015/05/19(火) 19:39:15 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


狩人の家


     ドサッ…

狩人「…………」

狩人「……疲れた」

狩人「…………」

狩人(あのトサカの閃光……真面目に厄介だ)

狩人(二回目は大剣で防ぐ様にしたけど)

狩人(今度はテールアタック……しかも何だよ、あの伸び縮みは)

狩人(最後はあの液体……救助アイルーが毒だって言ってたな……)

330: 2015/05/19(火) 19:40:06 ID:uA9ELKXw

狩人(いずれにしてもコテンパン……)

狩人(そしてまた契約料稼ぎしないと、依頼が受けられない)

狩人「はあ……」

狩人「…………」

狩人(……やっぱり、少女に聞いてから挑むべきだったかなぁ)

狩人(…………)

狩人(……何か、割のいい採取クエ)

狩人(ないかなぁ……)

狩人(はあ……)

331: 2015/05/19(火) 19:41:40 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


ロートルの家


ロートル「割のいい採取クエ?」

狩人「はい……虫がいいのはわかっていますけど」

狩人「もうキノコや鉱石じゃ追いつかなくて……」

狩人「何かありませんか?」

ロートル「ふむ……割のいい、ね……」

狩人「…………」

ロートル「…………」

ロートル「……狩人は、忍耐力のある方か?」

狩人「え? 忍耐力?」

ロートル「まあ一度やってみて、合わなければ止めればいいか」

ロートル「森丘に行った事はあるか?」

332: 2015/05/19(火) 19:42:44 ID:uA9ELKXw

狩人「ええ、ドスランポス狩りに行きましたから……」

ロートル「あそこのBC(ベースキャンプ)設置場所近くに」

ロートル「黄金魚が釣れる池があるんだ」

狩人「黄金魚? それに釣り?」

ロートル「釣りをやった事は?」

狩人「……無いです」

ロートル「まあ、経験は無くてもエサで何とかなるが……」

ロートル「釣れるまで我慢しないといけないからな」

狩人「で? 黄金魚って売れるんですか?」

ロートル「一匹500z(ゼニー)になる」

狩人「」

333: 2015/05/19(火) 19:43:52 ID:uA9ELKXw

狩人「ちょ!? 一匹500z(ゼニー)!?」

狩人「キノコの採取クエ一回分程度の報酬を一匹で貰えるんですか!?」

ロートル「ああ」

狩人「いい事を聞きました!」

狩人「さっそく明日にでも……」

ロートル「あー待ってくれ、狩人」

狩人「はい?」

ロートル「さっきも言ったけどな、釣るまで忍耐力がいる」

ロートル「高い魚だけになかなか釣れないんだ」

狩人「……そうですか」

ロートル「そこでエサなんだが……『黄金ダンゴ』というものを使えば」

ロートル「結構食いついてくれるぞ」

狩人「どうやって手に入れるんですか?」

334: 2015/05/19(火) 19:44:59 ID:uA9ELKXw

ロートル「ツチハチノコと釣りフィーバエか、釣りホタルを混ぜるとできる」

狩人「なるほど、ツチハチノコと釣りフィーバエ……ん?」

狩人「ツチハチノコって、聞いた事ないんですけど?」

ロートル「あれは蜂の巣箱とか、ハチミツ採取でたまに取れるんだよ」

狩人「え……そうだったんですか」

狩人(蜂の巣なんて無視してたな……)

ロートル「もし、持ってないのならストアの女ちゃんに聞いてみるといい」

ロートル「少々高いが、買う事もできるぞ」

狩人「分かりました!」

狩人「黄金ダンゴ……ツチハチノコと釣りフィーバエか、釣りホタルですね」

狩人「とにかくやってみます!」

ロートル「ああ、頑張ってみてくれ」

335: 2015/05/19(火) 19:46:11 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


翌日の午前中

ふもと村 広場 ストア前


狩人「女!」

女「ひえっ!?」

女「か、狩人?」

女「どうしたの? 薮から棒に……」

狩人「ツチハチノコ! ツチハチノコを売ってくれ!」

女「……あ~、黄金魚か」

狩人「そう!」

女「ちょっと待ってね……」 ゴソ ゴソ…

336: 2015/05/19(火) 19:47:16 ID:uA9ELKXw

女「はい」

狩人「おお……これがツチハチノコか」

狩人「一匹いくら?」

女「150z(ゼニー)」

狩人「高ぇ!?」

女「そりゃあ黄金魚の買取価格が一匹500z(ゼニー)だもの」

女「必然的に高くなるわよ」

狩人「これは予想外だった……」

女「どうする? またにする?」

狩人「…………」

狩人「2匹、くれ」

女「毎度♪」

337: 2015/05/19(火) 19:47:53 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


森丘 BC(ベースキャンプ)


狩人「……くそっ」

狩人「調合に一回失敗した……」

狩人「…………」

狩人「なぁに! それでも黄金魚一匹釣れば200z(ゼニー)儲けだ!」

狩人(フツーに採取すれば良かったって思うな、俺!) ←若干涙目

狩人「さあっ! 釣るぞー!!」

     ポチャン

狩人「♪~」

狩人「♪♪~」

338: 2015/05/19(火) 19:48:44 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

     (浮き)プカ プカ

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(……まあ、なかなか 釣れないって聞いてるし)

339: 2015/05/19(火) 19:49:26 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

     (浮き)プカ プカ

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

狩人(…………)

     (浮き)プカ プカ

狩人(…………)

340: 2015/05/19(火) 19:49:59 ID:uA9ELKXw


―――――――――――


狩人(…………) イライラ

狩人(…………) イライラ

狩人(…………) イライラ イライラ

     (浮き)プカ プカ

狩人(…………) イライラ イライラ

狩人(…………) イライラ イライラ

狩人(…………) イライラ イライラ イライラ イライラ

     (浮き)プカ プカ

狩人「だ―――――――――――!!」

狩人「やってられっか―――――――――――!!」

341: 2015/05/19(火) 19:51:01 ID:uA9ELKXw

狩人「もう夕方じゃねーかよ……」

狩人「何で釣れないんだよぉ……」

狩人「普通に採取クエやってれば良かった……」


―――――――――――


集会所


ロートル「おお、狩人」

ロートル「黄金魚は釣れたか?」

狩人「一日粘ったけど、ダメでした……」

ロートル「そうか……釣れる時は釣れるんだけどな」

狩人「はあ……」

342: 2015/05/19(火) 19:52:02 ID:uA9ELKXw

ソロ「黄金魚だって?」

狩人「あ、ソロさん」

狩人「頑張ったんですけど……釣れませんでした」

ソロ「そうか……洗いは試したか?」

ロートル「ん? 洗い?」

狩人「洗いって何ですか?」

ソロ「普通に魚を釣って、黄金魚が出てくるのを待つ方法だ」

ソロ「黄金魚は臆病な魚でな。 他の魚がたくさんいると出てこないが」

ソロ「普通の魚を釣って減らすと出てくる事があるんだよ」

狩人「」

ロートル「そ、そんな方法があったのか!」

ソロ「ああ」

343: 2015/05/19(火) 19:53:07 ID:uA9ELKXw

ソロ「それから黄金ダンゴは、黄金魚を見かけてから使わないと意味がない」

ソロ「他の魚は食いつかないし、黄金魚がいない時に使っても徒労に終わる」

狩人「」

ロートル「な、なんだって!?」

ソロ「知らなかったのか? ロートル」

ロートル「……ああ、今初めて知ったよ」

狩人「…………」

ロートル「何て言うか……すまん、狩人……」

狩人「……イエ。 マタアシタガンバリマス。 ハハハ」

     トボ トボ トボ…

ソロ「……どうやら やらかしたみたいだな。 ロートル」

ロートル「……今度、飯でもおごって お詫びしておくさ」

344: 2015/05/19(火) 19:54:21 ID:uA9ELKXw



     俺が何したって言うんだ……畜生

     あ……晩飯食うの忘れた。



     何か……ホントにダメダメな一日だったな

     もう寝よう……



     腹がぐうぐう鳴ってたけど

     何かする気力はもう無く……

     俺はそのまま眠りについたのだった……




345: 2015/05/19(火) 19:55:36 ID:uA9ELKXw

※補足説明

ツチハチノコですが、P2Gでは、村施設の蜂の巣箱のみで採取できます。
フィールドにある蜂の巣では取れません。それから行商婆さんからしか買えません。
あと調合は釣りホタルのみです。

今回のお話で『 洗い 』なるテクニックが出てきましたが
これは>>1が勝手に名付けた技名で、公式でも何でもありません。

3以降は、黄金ダンゴを投げ入れると黄金魚だらけになりますが
P2Gでは、マジに黄金魚を確認してから使わないと意味が無く
>>1も狩人と同じく無為に時間を過ごし……ゲフンゲフン。

最後にP2Gで黄金魚はz(ゼニー)ではなく『ポッケポイント』という
今で言う『旅団ポイント』みたいな扱いの架空貨幣のみに交換されます。

蛇足ですが、>>1の周りで『ポッケポイント』稼ぎ方法No.1は
訓練所クエをヤリまくる事でしたが……>>1は黄金魚釣りが大好きで
マカルパ装備買って、釣りまくりました。
何で4や4Gもそうしてくれなかったのかなぁ……『旅団ポイント』稼ぐの地味に辛い。

以上です。

348: 2015/05/23(土) 08:43:13 ID:Fub5eUOs


―――――――――――


半月後の午前中

集会所


     ガヤ ガヤ

少女「…………」 ムスッ…


ソロ「……何だか機嫌が悪そうだな、あの娘」

ロートル「ここに居るという事は、あの日じゃないだろうし」

ロートル「狩人と同じく、狩りが上手く行っていないのかもしれん」

ソロ「そういえばガンナー武器を使い始めた、とか聞いたな」

ロートル「ああ」

ロートル「たぶんそういう事なのだろう」

349: 2015/05/23(土) 08:43:58 ID:Fub5eUOs

少女「…………」 ムスッ

少女(……まったく、狩人ったら)

少女(一体何を一生懸命になっているのよ)

少女(…………)

少女(私との狩りより大事なことなの……?)

少女(…………)

少女(それとも……誰か私以外のハンターと仲良くなって)

少女(そのハンターと一緒に……?)

少女(…………)

少女(ま、まさか……ね)

少女(…………)

350: 2015/05/23(土) 08:44:31 ID:Fub5eUOs


―――――――――――


森丘 BC(ベースキャンプ)


     バシャバシャバシャ!

     ザバーンッ!

狩人「っしゃあー!」

狩人「大食いマグロキター!!」

狩人「これでマカルパ装備まで後一歩だぜ!!」


狩人(黄金魚のことを職人さんに話したら)

狩人(釣りが格段に上手くなるという装備の情報を聞けてラッキーだった!)

 ※注 マカルパ装備一式揃えると『釣り名人』というスキルが発動します

351: 2015/05/23(土) 08:45:18 ID:Fub5eUOs

狩人「さぁーて、次々……お?」

狩人「…………」

狩人「キター!!」

狩人「黄金魚キター!!」

狩人「黄金ダンゴを付けて……と」

狩人「ウヒヒ♪」

狩人(あー……ここは雑魚モンスターも来ないし)

狩人(コツを覚えたら釣りってメチャクチャ楽しいわー♪)

狩人(行ける……!)

狩人(この分なら、キッチンアイルーだって、オトモアイルーだって雇える様になる!)

     ボチャン!!

狩人「はいキター!!」

352: 2015/05/23(土) 08:45:55 ID:Fub5eUOs


―――――――――――


昼頃

ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ

女「あら、少女ちゃん」

少女「女さん」

女「どうしたの? 今日は狩りに行かなかったの?」

少女「ええ……欲しい素材のモンスター討伐依頼がなかったので」

女「そう」

少女「じゃ……」

女「…………」

353: 2015/05/23(土) 08:46:51 ID:Fub5eUOs

女「あ、ちょっと待って、少女ちゃん」

少女「はい?」

女「お昼はもう済ませた?」

少女「済ませました」

女「そう……んーそれじゃあ」

女「食後のお茶でもどうかな?」

少女「お茶……ですか?」

女「まあぶっちゃけると、それは口実」 クスッ

女「たまには女の子同士、お話でもしない?と思って」

女「どうかな?」

少女「…………」

354: 2015/05/23(土) 08:47:53 ID:Fub5eUOs


―――――――――――


ストア裏 女の家


女「どうぞー」

少女「お邪魔します」

女「ちょっと待っててね。 お茶を持ってくるから」

少女「はい」

     カチャ カチャ…

少女(…………)

少女(あ……あの服。 とっても可愛い)

少女(…………)

少女(……ハンターの私には必要のない物ね)

355: 2015/05/23(土) 08:48:27 ID:Fub5eUOs

女「お待たせ~」

     コト…

少女「ありがとうございます」

女「んー硬いなぁ」

少女「え?」

女「そりゃ歳は、ちょ――っとだけ、離れてるけど」

少女「はは……」

女「できれば、もっと気さくに話してくれると嬉しいな♪」

少女「と、言われても……」

女「まあ急には無理よね」 クスッ

     ズズッ…

356: 2015/05/23(土) 08:49:13 ID:Fub5eUOs

女「でさ、すっぱりズバッと聞くけど」

少女「はい?」

女「少女ちゃんて、狩人のコト好きなの?」

少女「んなっ!?」///

少女「ななな、何を言っ」///

女「わかりやすいなぁ~」

少女「~~~っ!」///

女「別に恥ずかしがる事じゃないよ、少女ちゃん」

女「狩人って、ダメなところたくさんあるけど……」

女「きっと少女ちゃんのコト、大事にしてくれると思うな」

少女「…………」

357: 2015/05/23(土) 08:49:53 ID:Fub5eUOs

少女「女さんはどう思ってるんですか?」

女「私? んー……そうねぇ」

女「手のかかる弟、って感じかな」

少女「そうなんですか?」

女「だってダメだのハズレだのっていう噂を聞いて」

女「最初の出会いが3乙仕立ての姿で、まー子鹿みたいな泣きそうな顔してたし」

女「男としての魅力、これっぽっちも感じなかったんだもの」

少女「あはは……」








狩人「……っえくしっ!!」

358: 2015/05/23(土) 08:50:30 ID:Fub5eUOs

女「けどね」

女「あいつ、前向きでさ」

女「どこか憎めなくて、応援したくなるのよ」

少女「…………」

女「そういうトコに少女ちゃんもやられたのかな?」

女「何て言うか、母性本能くすぐられた?みたいな?」

少女「私は……」

少女「……正直、よく分かりません」

女「分からない?」

少女「いい人だとは思います。 けど……」

少女「何て言うか……具体的に『どこ』に惹かれたのか」

少女「よく分からないんです」

359: 2015/05/23(土) 08:51:46 ID:Fub5eUOs

女(んー♪ 初々しいなぁ♪)

女「そっか……」

女「よく分からないけど、好きなんだ?」

少女「そ、それは……そのっ……はい」///

女「あはは♪」

女「まあ好きになる人なんて、理由なんか無くても出来るものよ」

女「狩人は物件として、イマイチかもしんないけど」

少女「……そうですか?」

女「ごめん、悪気があるわけじゃないのよ?」

女「ただ、あいつ、人を信用しすぎて将来騙されそうな気がするのよねー」

少女(……分かる気がする)

少女(本人も言われた事を疑わずに……とか言ってたしなぁ)

360: 2015/05/23(土) 08:52:28 ID:Fub5eUOs

少女「女さんはどうなんですか?」

少女「好きな人、居ないんですか?」

女「私かぁ……職業柄、いろんなモノ見ちゃったからねぇ」

女「少女ちゃんみたいに純粋な『好き』って気持ちになれないのよー」

少女「……もったいないですよ」

少女「女さん、とっても美人なのに」

女「うふふ、ありがと♪」

少女「ソロさんとか、かっこいいし」

少女「ハンターとしても一人前じゃないですか?」

女「んー……ソロさんねぇ」

361: 2015/05/23(土) 08:53:10 ID:Fub5eUOs

女「あの人、なんかビビリだし」

女「私と一緒にいたら、ソロさんの方がまいっちゃうんじゃ無いかな?」

少女「ビビリって……」

女「あれ? 気が付いてない?」

女「あの人、誰かと話す時、目を合わせないか伏し目がちで話すの」

女「たぶん人嫌いじゃなく、人に怯えていると思う」

少女「そうなんですか?」

女「もちろん根拠も何もないけど」

少女「…………」

女「でもま、私だって結婚をあきらめてるとかじゃないんだよ?」

女「いい人がいればな、とは思ってるんだけどね……」 ハハハ…

少女「どういう人が好みなんですか?」

女「それがねー……いまいちよく分からないのよー」

362: 2015/05/23(土) 08:54:19 ID:Fub5eUOs

女「そりゃね? お金持ってる人とか、経済的に潤っている人なら将来安心だけど」

女「それってなんか違うって思うし」

女「かといって、いくらかっこいい人でもその辺りがズボラなのは嫌だし」

女「だいたい若い人にそんな奴いるか!って話になるじゃない?」

少女「はあ……」

女「今のはちょっとした理想を言っただけだけど……」

女「自問自答しても答えが出てこないのよね」

少女「…………」

女「だから……さ」

女「私、少女ちゃんが羨ましいのかも」

少女「え?」

363: 2015/05/23(土) 08:55:29 ID:Fub5eUOs

女「私もさ、少女ちゃんみたいに誰かを純粋に好きなって」

女「その気持ちに正直になって行動できたら……きっと幸せだろうなって」

女「考えちゃうの」

少女「…………」

少女「幸せ……ですか?」

女「うん! だって今の少女ちゃん、以前よりさらに可愛くなったんだもん」

少女「……そうですか?」

女「そうよ? いつもハンターの格好だけど」

女「たまにはさ……」

     ファサ…

女「こういう服を来て、狩人の奴をメロメロにしてみたらいいと思うな!」

少女「あ……」

少女「…………」

364: 2015/05/23(土) 08:56:19 ID:Fub5eUOs

女「どうしたの? こういう服は嫌い?」

少女「いえ! 嫌いだなんて!」

少女「むしろ好きですよ!」

女「ふふ、でしょでしょ?」

少女「……でも」

女「ん?」

少女「…………」

少女「ハンター生活に必要のないものですから」

女「…………」

女「少女ちゃん」

少女「はい?」

365: 2015/05/23(土) 08:57:44 ID:Fub5eUOs

女「何を言ってるの!?」

少女「はひっ!?」

女「こういうものはね、無駄とかじゃないの!」

女「女の子が女の子である為の必需品! 心の潤いを保つ為の清涼剤なのよ!」

少女「は、はあ。 心の……潤い?」

女「自分を可愛いなー♪とか思えるって、とっても大事なんだから!」

女「そうだ! そんなこと言うからにはお化粧とかも知らないでしょ!?」

少女「し、知らないです……」

女「あーもう! 気が付いて良かった!」

女「こうなったら、私が徹底的に女の子の嗜(たしな)みを教えてあげる!」

女「いいえ! 女子力をアップさせてあげるわ!」

少女「…………」

少女(どうしよう……断れそうにない)

366: 2015/05/23(土) 08:58:24 ID:Fub5eUOs


―――――――――――


森丘 BC(ベースキャンプ)


狩人「っしゃー! これで黄金魚9匹目!」

狩人「一日で4500z(ゼニー)もの大金を稼げたぜ!」

狩人「…………」

狩人「……ここまで来たら、魚籠(びく:魚を一時保留するカゴの事)をいっぱいにしたいな」

狩人「次、釣れたら帰るとするかな!」

狩人「♪~」

     ザッ ザッ ザッ…

?????「……おや? 先客が居たのか」

狩人「え?」

367: 2015/05/23(土) 08:59:14 ID:Fub5eUOs

?????「ほほう……随分とお若いの」

?????「隣、いいかな?」

狩人「え? ええ、どうぞ」

?????「ふふ、よっこらせっと……」

     ポチャン…

?????「ふう……」

狩人「…………」

狩人(……ここに来た、という事は)

狩人(このお爺さんもハンターって事か……)

?????「…………」

狩人「…………」

368: 2015/05/23(土) 08:59:56 ID:Fub5eUOs

     ボチャッ! バシャバシャ…

?????「ほっ……もう来たか。 よっと」

     スルッ…

狩人「!」

狩人(う、上手い! それもあんなにあっさりと黄金魚を……)

?????「……お前さん、名前は何と言うのかの?」

狩人「え? ……狩人って言います」

?????「ほほう。 お前さんか、最近うわさの3乙ハンターとは」

狩人「……否定はしませんけど」

?????「ほっほっほ」

     ポチャン…

369: 2015/05/23(土) 09:00:52 ID:Fub5eUOs

狩人「…………」

?????「…………」

狩人「あの……」

?????「何かな?」

狩人「あなたはハンターなんですか?」

     ボチャッ! バシャバシャ…

     スルッ…

?????「……ああ、いかにも」

狩人「なんていうお名前なんですか?」

?????「そうさな……老ハンターとでも呼んでくれ」

狩人「老ハンター……ですか」

老ハンター「ああ……さて、帰るとするかの」

370: 2015/05/23(土) 09:02:20 ID:Fub5eUOs

狩人「え? 今来たばかりじゃないですか?」

老ハンター「ええんじゃ」

老ハンター「ワシのような老いぼれハンターはの」

老ハンター「日々を生き抜く糧があれば、それで十分じゃよ」

老ハンター「もうクックはおろか、ドスランポスすら狩れぬからの」

狩人「それなら……たくさん取って売れば、後が楽になるんじゃないですか?」

老ハンター「確かにな」

老ハンター「じゃが……毎回それができるかどうか分からぬし」

老ハンター「若い連中の邪魔はしたくないからの」

狩人「邪魔だなんて……」

371: 2015/05/23(土) 09:03:50 ID:Fub5eUOs

老ハンター「お前さん……狩人と言ったか」

老ハンター「3乙ハンターなどと噂されるからには」

老ハンター「普通のクエで失敗ばかりしておるのだろう?」

狩人「…………」

老ハンター「ええんじゃ。 失敗は若い時にたくさんしておけばええ」

老ハンター「次の成功に繋げるために黄金魚をどんどん釣ればいい」

老ハンター「ワシはの……その邪魔をしたくないんじゃよ」

狩人「老ハンターさん……」

老ハンター「ふふ……無駄話をしてしまったな」

老ハンター「じゃが、無理はするでないぞ?」

老ハンター「3乙ができるのも運が良かっただけかもしれぬ」

老ハンター「再挑戦出来るうちは、1乙で撤退も考えておくとよかろうて」

狩人「……そうですね」

372: 2015/05/23(土) 09:04:25 ID:Fub5eUOs

老ハンター「では、機会があれば また会おう。 狩人」

     テク テク テク…

狩人「…………」

狩人(……そうだ。 俺は元々契約料が欲しくて黄金魚を釣りに来ていた)

狩人(でも……いつの間にか)

狩人(お金を稼ぐって目的に変わってしまっていたんだ)

狩人(…………)

     ヒュッ… (糸)パシッ

狩人「…………」

狩人「終わりにしよう」

狩人「もう目的は達成しているんだから……」

373: 2015/05/23(土) 09:05:26 ID:Fub5eUOs


―――――――――――


夕方

ふもと村 広場付近


狩人(とりあえず、当分は安心だ)

狩人(……その前に3乙しないように頑張らないとな)

狩人(…………)

女「狩人!」

狩人「え?」

狩人「女? 何か用?」

女「今あんたの家に……ってそこはどうでもいいわ」

女「とにかく、付いてきて!」

374: 2015/05/23(土) 09:06:09 ID:Fub5eUOs

狩人「どこに行くんです?」

女「私の家よ」

狩人「はあ?」

女「いいから!」


―――――――――――


ストア裏 女の家


女「じゃ、ちょっと待ってて!」

狩人「はあ……」

狩人(いったい何なんだ?)

375: 2015/05/23(土) 09:07:07 ID:Fub5eUOs

     ホラホラ ショウジョチャン!

     ヤ、ヤッパリ……ダメデスヨッ!

狩人(……ん? 少女も居るのか?)

狩人(何なのだろう?)

     バッ!

少女「ひゃ……」///

狩人「」

女「んふふ~」

女「どう? 狩人?」

少女「…………」///

狩人「…………」

376: 2015/05/23(土) 09:07:51 ID:Fub5eUOs



     そこに居たのは、いつもの少女じゃ無かった。

     綺麗に下ろされた黒髪。

     赤を基調とした可愛らしいデザインの長袖服。

     普段ズボンだからか、やけに新鮮に見えてしまうスカート姿。

     そして……化粧?とかいうやつだろうか?

     顔まで違って見える。

     それも『可愛い』じゃなく、大人の雰囲気を漂わせている感じで

     何故かドキリとさせられてしまう……




377: 2015/05/23(土) 09:09:09 ID:Fub5eUOs

狩人「えっと……」///

少女「う、うん……」///

狩人「とても……綺麗だな、少女」///

少女「!」///

女「うんうん♪」

狩人「というか、どうしたんだ? いきなり?」

少女「説明すると長くなるんだけど……」

少女「まあ……気分的なモノだと思って」///

狩人「そっか……女の子だもんな」

狩人「とっても似合ってるよ。 びっくりした」

少女「そ、そう……ありがとう」///

女「…………」

狩人「それでさ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」

少女「え?」

378: 2015/05/23(土) 09:09:50 ID:Fub5eUOs

狩人「ゲリョスっていうモンスターに手こずっていて……」

少女「ああ、それなら毒対策は必須よ」

狩人「それは身にしみてよくわかったよ……」

狩人「閃光はどう対処すればいいんだ?」

少女「いくつか方法はあるけど……例えば」

狩人「ふむふむ」

女「…………」

少女「って感じかな」

狩人「なるほど、罠を使うのか」

少女「でも気をつけて」

少女「ゲリョスにシビレ罠は通じないから」

狩人「あぶねぇ……思いっきり用意しようと考えてしまった」

少女「もう……」 クスッ

379: 2015/05/23(土) 09:10:35 ID:Fub5eUOs

女「…………」

女(……んーこれは)

女(何て言うか、腹が立ってきたかも)

女(…………)

     ……デ、テールアタックハ

     アレキツインダヨナ……

女(…………)

女(……ふふ、でも)

女(少女ちゃん、楽しそうだし)

女(ま、いっか!)

380: 2015/05/23(土) 09:11:07 ID:Fub5eUOs


―――――――――――


狩人の家


狩人「は~……疲れた」

狩人「でも少女の説明はわかりやすいし、ありがたい」

狩人「本当に参考になるなぁ」

狩人「…………」

狩人(……少女)

狩人(綺麗だったなぁ……)///

狩人(どうしてあんな格好してたんだろう?)

狩人(ああしていると、やっぱり女の子なんだなって思う)

狩人(普段もけっこう誰彼かまわず声かけられているしな)

狩人(あの格好で出歩いたら、男どもが放っておかないだろうなぁ……)

狩人(…………)

381: 2015/05/23(土) 09:12:04 ID:Fub5eUOs


―――――――――――


少女の家


少女「…………」

少女(……狩人、綺麗だって言ってくれた)///

少女(うふふ)///

少女(…………)///

少女(……けど、結局いつもモンスターの話になる)

少女(…………)

少女(まあ……狩人らしいよね) クスッ

少女(…………)

少女(心の潤い……か)

少女(…………)

少女(少しくらいなら……いいかも)///

382: 2015/05/23(土) 09:12:40 ID:Fub5eUOs


―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 広場付近


女「あら、狩人」

狩人「女? こんな時間に仕入れに行くの?」

女「うん。 今回はすぐ近くの草原村だからね」

女「上手く行けば、日帰りで済ませられると思って」

狩人(草原村……森丘に近い場所にある村だ)

狩人(森丘は俺たち村付きハンターも日帰りができて、非常にありがたい)

狩人「そっか」

383: 2015/05/23(土) 09:14:03 ID:Fub5eUOs

女「狩人は? また密林?」

狩人「ゲリョスにリベンジしたいけど……」

狩人「依頼が無かったら雪山のクエにしようと思ってる」

女「そう。 やっぱり少女ちゃんと行くの?」

狩人「少女には世話になってるけど、いつも一緒ってわけじゃないよ」

狩人「できれば他のハンターと組んで、色々と慣れていきたいし……」

女「そういうのも少女ちゃん込みでやればいいんじゃない?」

狩人「それが……少女の奴」

狩人「他のハンターを待とうとすると、早く行こうって急かすんですよ」

狩人「どうせ待ってても誰も来ないって、グサリと突き刺す事も言うし……」

女(……少女ちゃん。 意外と独占欲が強いのね……)

女「ふ、ふぅん。 そうなんだ」

384: 2015/05/23(土) 09:14:39 ID:Fub5eUOs

女「まあ、そういう事なら狩人の自由にすればいいかな」

女「怪我をしないようにね」

狩人「ああ、頑張るよ」

狩人「女も気をつけてな」

女「うん!」

女「それじゃ、またね!」

385: 2015/05/23(土) 09:15:30 ID:Fub5eUOs


―――――――――――


雪山


狩人「ふう……」

狩人(……ゲリョスは依頼されてなかった)

狩人(ドスファンゴ討伐依頼を受けて、雪山にいる)

狩人(今なら難なく倒せるだろうけど油断は禁物)

狩人(心して取り掛かろう)

狩人(…………)

狩人(とか言いつつ、ツチハチノコ(ハチミツ)や鉱石採取しておこうとか思ってるし)

狩人(まあとにかく、油断はしないで取り組もう。 うん)

386: 2015/05/23(土) 09:16:17 ID:Fub5eUOs


―――――――――――


夕方

ふもと村 集会所


狩人(ふう、無事に終わって返って来た)

狩人(採取でちょいと時間を食ったが……)

     ガヤ ガヤ

狩人(……ん?)

狩人(妙にざわついているな?)

狩人(何かあったのか?)

387: 2015/05/23(土) 09:17:09 ID:Fub5eUOs

狩人「あのー」

受付嬢「はい?」

狩人「妙な雰囲気ですけど……何かあったんですか?」

受付嬢「それがですね……」

受付嬢「このふもと村に近い草原村がティガレックスに襲われたそうなんです」

狩人「え!?」

受付嬢「現在、詳しい情報を集めているところでして」

受付嬢「ギルド観測所に問合わせているのですが、詳細はわかっていません」

狩人「…………」

狩人「なんて……事だ……」

388: 2015/05/23(土) 09:17:55 ID:Fub5eUOs



     普段、人の住む集落にモンスターは襲いかかったりしない。

     だが、縄張りを追われたり、ものすごい飢餓状態に晒されたりすると

     猟区外へ来てしまったりする……


     ティガレックスは、特にそれが顕著なモンスターで

     厄介な事に『轟竜』と呼ばれるほど強く

     気が荒い事でよく知られている飛竜だ。


     たまに小さく、下位モンスターと認定される時もあるが

     大抵は上位扱いの大型肉食モンスターに分類される。

     女……どうか、無事でいてくれ……!




389: 2015/05/23(土) 09:19:15 ID:Fub5eUOs
という所で今日はここまでです。

390: 2015/05/23(土) 09:19:54 ID:5XVc9vwo

391: 2015/05/23(土) 18:41:40 ID:iqr1cyCA

引用: 狩人「目指すは伝説級ハンター!」