1:◆qbWu2o7Q.Y 2014/06/01(日) 08:00:27.87 ID:Reom33WK0

2: 2014/06/01(日) 08:05:08.01 ID:Reom33WK0
???(その日 僕たちは思い知る)




パリーン




???(“それ”はいつだって…)

???(突然やってくるということを)

3: 2014/06/01(日) 08:10:12.80 ID:Reom33WK0
???「ア……ァ……」

???「おい! どうしたんだよ!!」




???(そして歯車は回り出す)

???(誰も予想できなかった、誰も望むことのなかった…)

4: 2014/06/01(日) 08:15:07.08 ID:Reom33WK0








???(絶望的な結末へと)








5: 2014/06/01(日) 08:20:11.84 ID:Reom33WK0








CHAPTER 02

君は希望という名の絶望に微笑む

(非)日常編








6: 2014/06/01(日) 08:25:11.87 ID:Reom33WK0
アルミン(まずはオーソドックスに自己紹介から始めたいと思う。
     僕の名前はアルミン・アルレルトだ)

アルミン(外見は、ご覧の通り、どうしようもないほど平均的な普通の男子…)

アルミン(中身の方も同じ…いや、普通の子よりも弱虫で、
     いつも親友に助けられてばかりいる)

アルミン(そんな弱虫の僕は、今…)

アルミン(兵団の訓練所という似つかわしくない場所に立っている訳だけど…
     これには理由があるんだ)

7: 2014/06/01(日) 08:30:11.55 ID:Reom33WK0
アルミン(今から2年前、超大型巨人と鎧の巨人の出現によって、
     僕たちは故郷を失った)

アルミン(親友の母親は巨人に食われ…
     僕の家族も、壁内の口減らしのために殺された)




???『駆逐してやる!!』

???『この世から…一匹残らず!!』




アルミン(かつて親友がそう誓ったように…)

アルミン(僕も強い意志を持って、訓練兵団への入団を決めた)

アルミン(そして…)

8: 2014/06/01(日) 08:35:11.30 ID:Reom33WK0
???「ただいまより、第104期訓練兵団の入団式を行う!」




アルミン(そう…今日この日こそ、待ち望んでいた兵士への第一歩なのだ)

アルミン(正直不安はある。軟弱な僕が、
     生き地獄とよばれる過酷な訓練に耐えられるのかどうか…)




???「私が運悪く貴様らを監督することになった…」




アルミン(でも、もう決めたんだ。自分の心で決めたんだ)

アルミン(僕は親友の…)

9: 2014/06/01(日) 08:40:10.74 ID:Reom33WK0








アルミン(親友…の…)








10: 2014/06/01(日) 08:45:09.94 ID:Reom33WK0
CHAPTER 02 

DAY 05




アルミン「………………」




アルミン(…またこの夢だ)




アルミン「………………」




アルミン(身体が重い)

アルミン(頭がうまく働かない)

11: 2014/06/01(日) 08:50:50.89 ID:Reom33WK0




モノクマ『オマエラが“気を失った”のだってそうだよ。
     入団式の最中に体験したという例のめまい…』

モノクマ『要はね、あそこは“記憶の結合点”だったんだ』

モノクマ『オマエラはあそこからの記憶がすっぽり抜け落ち、
     そして今に至るという訳なのです』




アルミン(…もし、あの話が本当だとしたら)

アルミン(さっきまで見ていた夢がまさに、
     “記憶の結合点”という事になる)

アルミン(僕たちは気を失った訳ではなくて、
     “本物の入団式”からの記憶を無くして…)

アルミン(数年間…無くして…)

12: 2014/06/01(日) 08:55:12.61 ID:Reom33WK0




ユミル『見ろよ、あれ』




ミーナ『なんでこんな残酷な事させるのよ!!』ポロポロ




モノクマ『クズだよ“オマエ”は!!』




ミーナ『みんな…信じてよ!』

ミーナ『私は人類の為に!!みんなの代わりに!!』




モノクマ『まぁいいや、じゃあまた作ってあげるよ!
     ちょうど“新鮮な食材”もできたばかりだし…』




モノクマ『“カロライナさんが話した内容自体”はホンモノなの!!』




13: 2014/06/01(日) 09:00:26.29 ID:Reom33WK0








アルミン「うわああああああああああああああああああああああ!!」








16: 2014/06/01(日) 14:00:10.53 ID:Reom33WK0
― 食堂 ―




クリスタ「本当にいいのかな? 訓練をサボっちゃって…」




11 訓練兵達は50日間の訓練を行います。
  訓練への参加は強制ではありません。




ユミル「訓練は自由参加だったはずだ。
    サボったからってペナルティはねえよ」

クリスタ「で、でも…全員はさすがに…」

ユミル「全員でサボるからこそ意味があるんだよ。
    これなら【裏切り者】に出し抜かれる心配もないしな」

17: 2014/06/01(日) 14:55:12.63 ID:Reom33WK0
サシャ「どういう意味ですか?【裏切り者】に出し抜かれるって」

ライナー「…おいおい、忘れたのか?」




12 訓練の総合成績が一番優秀だった者には、
  “ファイナルデッドルーム”への挑戦権が与えられます。




ライナー「“ファイナルデッドルーム”での命がけのゲームに勝てば、
     どんな願いでも叶えられる…モノクマがそう言ってただろ?」

サシャ「言ってましたっけ?」

ベルトルト「…言ってたよ」

18: 2014/06/01(日) 15:00:11.88 ID:Reom33WK0




モノクマ『成績1位の人に与えられるのはそのゲームへの挑戦権だよ。
     それに勝つことができたら、【願いを一つだけ叶えられる】の』




サシャ「…あー、確かにそんな事言ってましたね。それで?」

ジャン「“それで?”じゃねーよ。そこまで言えばわかるだろ」

サシャ「?」

ジャン「…だーっ!! つまりだな!」

19: 2014/06/01(日) 15:05:17.29 ID:Reom33WK0




モノクマ『サボるのは別に構わないよ?でもさ、オマエラに
     訓練を任された人が【裏切り者】だったらどうすんの?』




モノクマ『そして仮にその【裏切り者】が1位を勝ち取った場合…』

モノクマ『【自分だけここから出たい】とか【自分以外を処刑してほしい】とか、
     そんな事言うかもしれないよねー!』




ジャン「オレたちの中に【裏切り者】がいるとすれば、
    モノクマが言っていた事も起こりかねない」

ジャン「だが、こうやって全員で休んじまえば、
    成績で差をつけられる心配も無くなる…そういう事だよ!」

サシャ「あ、あー…なるほどー」

サシャ「そういう事ですかー…」チラッ

20: 2014/06/01(日) 15:10:15.73 ID:Reom33WK0




コニー「………………」




サシャ「で、でも、信じられませんよねー」

サシャ「調査兵団が全滅したとか、私たちが記憶喪失とか…」

サシャ「私たち全員の記憶を奪うなんて、
    モノクマさんも大それた事しますよねー、ははは」

21: 2014/06/01(日) 15:15:19.82 ID:Reom33WK0




コニー「………………」




サシャ「そ、そうだ!きっとモノクマは魔法使いなんですよ!」

サシャ「それなら記憶を消すのも簡単ですし、
    この施設に巨人が寄り付かないのだって説明がつきます!」

サシャ「それにほら!初日に私の芋が串刺しにされましたよね?
    あれこそ魔法と言わずに何と呼べば…」

22: 2014/06/01(日) 15:20:12.34 ID:Reom33WK0




コニー「………………」




サシャ「ちょ、ちょっとコニー!一体どうしちゃったんですか!」

サシャ「こういうオトボケ担当はコニーだったじゃないですか!
    私の仕事増やさないでくださいよ!」

コニー「……母ちゃん」

サシャ「…!!」

コニー「何だよこれ…ふざけんなよ…」

コニー「なんで俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ…
    俺の村は…家族はどうなったんだよ…」

23: 2014/06/01(日) 15:25:19.44 ID:Reom33WK0
コニー「帰らせてくれよ…会わせてくれよ…」

コニー「父ちゃん…母ちゃん…サニー…マーティン…」




モノクマ『調査兵団が全滅したこと』

モノクマ『人類の大半が氏滅したこと』

モノクマ『全ての壁が破られたこと』

モノクマ『そして、オマエラが数年間の記憶を失っていること』








モノクマ『それらは全部、本当のことでーす!!』








コニー「あんな話ウソだって…確かめさせてくれよ…!」

27: 2014/06/02(月) 21:15:12.46 ID:dvSJPlc+0
ペシッ




コニー「ッ…!?」

アニ「いい加減にしな」

コニー「ア、アニ…」

アニ「不安なのはあんただけじゃない」

アニ「苦しいのはあんただけじゃない」




アニ「家族がいるのは…あんただけじゃない」

28: 2014/06/02(月) 21:20:04.13 ID:dvSJPlc+0
コニー「…!」




ミカサ『家族がいるのはあなただけじゃない…!』




ライナー「…そういえば、ミカサはどうした?」

クリスタ「それが…部屋に行っても返事が無くて」

ベルトルト「ミカサだけじゃないよ。アルミンも来てない」

ジャン「…無理もねえだろ。今はそっとしといてやろうぜ」

29: 2014/06/02(月) 21:25:04.17 ID:dvSJPlc+0
ユミル「ダメだ」

ジャン「あ?」

ユミル「全員集まらなきゃ意味がない。
    1人でも欠ければそいつが訓練に参加するかもしれないからな」

クリスタ「ユミル!」

ジャン「て、てめぇ…あいつらはエレンの幼馴染で…」

ユミル「だから何だ。【裏切り者】かどうかはまた別の話だろ」

ジャン「あいつらは今人前に出られるような状態じゃねえ!
    てめぇには情ってもんがないのかよ!」

ユミル「情…?“誰よりも現実を見てる”ヤツが何言ってんだ。
    幼馴染って理由だけで特別扱いされてたまるかよ」

30: 2014/06/02(月) 21:30:14.26 ID:dvSJPlc+0
ライナー「もうよせ」

ジャン「…!」

ライナー「ここで仲間割れしても状況が悪化するだけだ。
     怒る気持ちはわからんでもないが、少し頭を冷やせ」

ジャン「…っ」

ユミル「………………」

31: 2014/06/02(月) 21:35:38.71 ID:dvSJPlc+0
サシャ「…で、どうするんです?」

ライナー「ジャンには悪いが、俺はユミルの考えに賛成だ」

ジャン「…! おいライナー!」

ライナー「確かにあの2人はエレンの幼馴染だ。
     昨日の兵団裁判後の状態から察するに、きっと誰よりも苦しんでるだろう」

ライナー「だが、苦しい状況に置かれているのはあいつらだけじゃない。
     さっきアニも言ったが…ここにいる全員が同じ目に遭っているんだ」

32: 2014/06/02(月) 21:40:08.42 ID:dvSJPlc+0
コニ―「………………」

ライナー「それに…こんな異常事態だからこそ、1人にさせておくのはまずい。
     よからぬ考えを起こす可能性もあるからな」

クリスタ「よ、よからぬ考えって…」

ライナー「そうならない為にも、今ここで全員が集まっておく必要があるんだ。
     あの2人には悪いが…引っ張ってでも連れてくるべきだろう」

33: 2014/06/02(月) 21:45:03.53 ID:dvSJPlc+0
アニ「…引っ張ってでも?」

ライナー「?」

アニ「アルミンはともかく…もう1人の方は勝算があるの?
   あんたですら軽々と投げ飛ばされたのに」




ライナー『ミカサ!落ち着け!』




ドゴッ




ライナー『オゥ…ッ!?』

ベルトルト『ライナー!』




34: 2014/06/02(月) 21:50:41.81 ID:dvSJPlc+0
ライナー「………………」

アニ「あんな役目、私はもうごめんだよ」

ベルトルト「アニ、まだ痛むの?」

アニ「…まあね」




アルミン『…アニ? それは…』

アニ『ミカサにやられた』

アルミン『…!』

アニ『まったく、とんでもないバケモノだよ…あいつは。
   私とミーナの二人がかりでやっと縛り付けたんだから』




35: 2014/06/02(月) 21:55:10.90 ID:dvSJPlc+0
サシャ「じゃ、じゃあ、どうするんですか…?
    ミカサを連れてこられないんだったら、逆にミカサの部屋に集まります?」

クリスタ「あの個室に10人は狭すぎるよ。そもそも鍵がかかって返事も無いんだし」

サシャ「ならドアをぶち破りましょう!そして全員で取り押さえるんです!」

ベルトルト「全員で…確かにそれならいけるかもしれないけど…」

ユミル「…下手すりゃ皆頃しにされるな」

36: 2014/06/02(月) 22:00:06.27 ID:dvSJPlc+0








モノクマ「その心配はありませーん!」








37: 2014/06/02(月) 22:05:15.57 ID:dvSJPlc+0
サシャ「ひいいいいぃぃぃぃいい!?」

モノクマ「なぜなら、それは兵団規則に反するからです!
     “同一のクロが殺せるのは2人まで”だからです!」

ジャン「あ、相変わらず何の前触れもなく…」

ライナー「…ちょっと待て、初耳だぞ。そんな規則はなかったはずだ」

モノクマ「当たり前じゃん。だって今初めて言ったんだから」

アニ「………………」

モノクマ「という訳で、例のごとく各自メモを取るよーに!」

38: 2014/06/02(月) 22:10:07.84 ID:dvSJPlc+0
■ 兵団規則 ■


1 訓練兵達はこの施設内だけで共同生活を行いましょう。
  共同生活の期限はありません。

2 夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。
  夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。

3 就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。
  他の部屋での故意の就寝は居眠りと見なし罰します。

4 この施設について調べるのは自由です。
  特に行動に制限は課せられません。

5 監督教官ことモノクマへの暴力を禁じます。
 
6 “物体X”の破壊を禁じます。

7 仲間の誰かを頃したクロは“卒業”となりますが、
  自分がクロだと他の訓練兵に知られてはいけません。

8 訓練兵内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、
  訓練兵全員参加が義務付けられる兵団裁判が行われます。

9 兵団裁判で正しいクロを指摘した場合は、
  クロだけが処刑されます。

10 兵団裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、
  クロだけが卒業となり、残りの訓練兵は全員処刑です。

11 訓練兵達は50日間の訓練を行います。
  訓練への参加は強制ではありません。

12 訓練の総合成績が一番優秀だった者には、
  “ファイナルデッドルーム”への挑戦権が与えられます。

13 倉庫から物品を持ち出す際は、
  管理表に必要事項を記入しましょう。返却時も同様です。

14 コロシアイ兵団生活で同一のクロが殺せるのは2人までとします。

15 なお、兵団規則は順次増えていく場合があります。

41: 2014/06/03(火) 22:15:12.10 ID:gU20EJVK0
ベルトルト「…どうしてそんなルールを?」

モノクマ「だって、1人でたくさん頃しちゃうと、
     楽しい兵団生活がすぐに終わっちゃうでしょ?」

クリスタ「…だったら、なぜ1人までじゃないの?」

モノクマ「だってミステリー的には、
     “連続殺人事件勃発”って響きも捨てがたいでしょ?」

モノクマ「にょほほほ~! 1人じゃ連続にならないしね!」

42: 2014/06/03(火) 22:20:12.31 ID:gU20EJVK0
ユミル「…ますますわからねえな」

モノクマ「へ?」

ユミル「お前の目的は何なんだ。
    訓練をさせたいのか? 頃し合いをさせたいのか?」
    
ユミル「もし単に頃し合わせたいのなら、人数制限なんて必要ないだろ」

モノクマ「必要あるよ。だってコロシアイは手段であって目的ではないから」

ユミル「は…?」

43: 2014/06/03(火) 22:25:10.39 ID:gU20EJVK0
アニ「随分と意味深なことを言うんだね」

モノクマ「うぷぷ…」

アニ「…まあ何にせよ、そんな人間がいるとは思えないけど」

モノクマ「はい?」

アニ「頃す人数が増えればそれだけ手がかりも多く残る…」

アニ「卒業できる条件が同じなら1人殺せば間に合うはず。
   わざわざリスクを冒して2人も殺そうとは思わないよ」

44: 2014/06/03(火) 22:30:17.95 ID:gU20EJVK0
ライナー「…それ以前に、俺たちはもう頃し合いなんてしない」

モノクマ「は?」

ライナー「昨日の一件で全員が痛感したはずだ。
     それがどんなに悲惨な結果を生むか…」








ミーナ『イヤだぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!』








45: 2014/06/03(火) 22:35:17.91 ID:gU20EJVK0
ジャン「そうだ…その通りだっ…!」

ジャン「オレたちは二度とあんな真似はしねえ!
    いつまでもテメェの思い通りにさせてたまるかよ!」

サシャ「そ、そうですよ!
    私たちは絶対に全員でここを出るんです!」

サシャ「ねっ、コニー!」

コニー「………………」

サシャ「ほ、ほら!コニーだってそう言ってますよ!だから…」

46: 2014/06/03(火) 22:40:07.68 ID:gU20EJVK0








モノクマ「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」








47: 2014/06/03(火) 22:45:11.09 ID:gU20EJVK0
サシャ「…!!」

モノクマ「あーもう、朝っぱらから笑わせないでよ…ぶひょひょ」

モノクマ「全員でここを出る?
     外に出たら氏ぬだけだって、あんなに言って聞かされたのに?」

モノクマ「ボクはオススメしないけど…もしそれが望みなら、
     頑張って1位を目指さないとねえ、ブラウスさん」

サシャ「…っ!?」

48: 2014/06/03(火) 22:50:08.61 ID:gU20EJVK0
モノクマ「ブラウンくん」

ライナー「…な、何だ」




ライナー『昨日の一件で全員が痛感したはずだ。
     それがどんなに悲惨な結果を生むか…』




モノクマ「キミはさっきこう言ったけど、そうじゃないでしょ?
     オマエラが本当に痛感したのは…」

49: 2014/06/03(火) 22:55:12.75 ID:gU20EJVK0








モノクマ「“こんなにも簡単にコロシアイが起きる”…そういう事でしょ?」








52: 2014/06/05(木) 16:10:20.50 ID:3zhSbJKq0
ライナー「…!!」

モノクマ「オマエラだって見たよね?
     あのカロライナさんの豹変っぷりを」




ミーナ『クズだよあんたらは!!』




ミーナ『認める訳ねーだろ!真っ白なんだよ私は!』




ミーナ『いい加減にしろよこのもやしが!!』




53: 2014/06/05(木) 16:15:17.95 ID:3zhSbJKq0
モノクマ「いやぁ、アレにはさすがのボクも驚きましたよ」

モノクマ「【巨人に関する重大なヒミツ】…
     これをエサにすれば、オマエラは絶対に喰いつくと思ったんだけど…」

モノクマ「まさかあんな子が、たったの3日足らずで、壮大な作り話をしてまで、
     他のみんなを出し抜こうとするなんて…」

モノクマ「思いのほか引きがよかったね!竿ごと持っていかれるかと思ったよ!」

54: 2014/06/05(木) 16:20:18.01 ID:3zhSbJKq0
ジャン「何が作り話だ!てめぇがミーナに殺人を唆したんだろうが!」

モノクマ「もう! だから何度言えばわかるのさ!
     ボクはあの夜、カロライナさんに会ってすらいないってば!」

ユミル「…あくまでしらを切り通すのかよ」

モノクマ「はぁ…やっぱり信じてくれないんだね。
     でもまあ、オマエラがボクを疑いたくなる気持ちもわかるよ」

モノクマ「まさか、カロライナさんがでっち上げた話と
     ボクの知っている真実が“たまたま”同じだったなんて…」

モノクマ「そりゃ疑いたくもなるよね…うん…」

55: 2014/06/05(木) 16:25:13.22 ID:3zhSbJKq0
アニ「…これ以上は問い詰めても無駄みたいだね」

モノクマ「うん、無駄だね。どこにも証拠なんて無いし…」

モノクマ「第一、ボク本当にやってないもん」

ジャン「…っ!」

モノクマ「ていうか、何の話してたんだっけ? えーっと…」

モノクマ「あっ、そうそう!
     『アッカ―マンさんに皆頃しにされる心配はない』って話だったね!」

56: 2014/06/05(木) 16:30:14.73 ID:3zhSbJKq0
モノクマ「でもさ、本当に心配ないと思うよ?」

クリスタ「…?」

モノクマ「だって今の彼女…」




モノクマ「とてもそんな事できる状態じゃないから」

57: 2014/06/05(木) 16:35:08.58 ID:3zhSbJKq0
ベルトルト「…え?」

モノクマ「………………」

サシャ「そ、それってどういう…」

モノクマ「………………」




モノクマ「………うぷぷ」

58: 2014/06/05(木) 16:40:20.97 ID:3zhSbJKq0
ジャン「!!」




ガタッ




ライナー「おいジャン!どこに行く気だ!」

ジャン「決まってんだろ!ミカサのところだ!」

ライナー「落ち着け!まだそうと決まったわけじゃない!」

ジャン「だからじっとしてろってのか!? 
    こんな状態でミカサにまで何かあったら…!」

59: 2014/06/05(木) 16:45:08.99 ID:3zhSbJKq0
アルミン「…ジャン?」




ジャン「…!」

サシャ「ア、アルミン!? アルミンじゃないですか!」

アルミン「ごめん、遅くなって…」

ジャン「そんな事よりミカサは!?」

アルミン「えっ…」

ジャン「ミカサはどうしたんだ!一緒じゃないのか!?」

60: 2014/06/05(木) 16:50:22.78 ID:3zhSbJKq0
アルミン「ミ、ミカサならここに…」




バッ




ジャン「ミカサ!?」

ジャン「よかった!無事だったん…」

61: 2014/06/05(木) 16:55:15.27 ID:3zhSbJKq0








ミカサ「………………………………」








62: 2014/06/05(木) 17:20:35.79 ID:3zhSbJKq0
ジャン「…!?」

モノクマ「おやおや、ようやく現れたようですね」

モノクマ「ほら、ちゃんと謝らないと。みんなすごく心配してたんだよ?」

ミカサ「…………どこ」

モノクマ「へ?」




ミカサ「エレンを……どこにやったの……」




67: 2014/06/07(土) 14:00:15.54 ID:mCvhUdxW0
モノクマ「エレン…?」




アルミン(本当に忘れたと言わんばかりに首を傾げた後…)

アルミン(何を合点したのか、モノクマはポンと手を打った)




モノクマ「…ああ、あの“ジャマな氏体”のこと?」

68: 2014/06/07(土) 16:05:26.28 ID:mCvhUdxW0
アルミン「…っ!!」

モノクマ「もちろんキレイに掃除しといたよ」

モノクマ「だって、腐っちゃったりしたら目も当てられないし、
     健全な生活にも支障をきたすでしょ?」

アルミン「…っ! ……ッ!!」

モノクマ「ああ、いいのいいの…お礼はいいの…
     ボクはオマエラの喜ぶ顔が見たいだけだから!!」

69: 2014/06/07(土) 16:10:13.46 ID:mCvhUdxW0
アルミン(僕は必氏に拳を抑えていた)

アルミン(だけどミカサは…)




ミカサ「…………そう」

ミカサ「エレンは……もう……」




アルミン(何かに納得したように、そう呟くと…)

アルミン(そのまま再び…)

70: 2014/06/07(土) 16:15:36.22 ID:mCvhUdxW0








ミカサ「………………………………」








71: 2014/06/07(土) 16:20:27.92 ID:mCvhUdxW0
アルミン(ミカサだって人間だ)

アルミン(あらゆる物事を完璧にこなす。
     女の子なのに、笑うこともなければ泣くこともない…)

アルミン(『何を考えているのかわからない』『からくり人形みたい』
     そう言った人たちもいたけれど…)

アルミン(幼馴染の僕にはわかる。ミカサにだって、たくさんの表情があるんだ)

72: 2014/06/07(土) 16:25:16.16 ID:mCvhUdxW0
アルミン(だけど、今のミカサからは表情が読み取れない)

アルミン(色彩を欠いた真っ黒な瞳。
     まるで、感情という感情を全て削ぎ落としたような…)

アルミン(“からくり人形”? そんなんじゃない)

アルミン(これはまるで…)

73: 2014/06/07(土) 16:30:12.38 ID:mCvhUdxW0








アルミン(“抜け殻”…)








74: 2014/06/07(土) 16:35:14.11 ID:mCvhUdxW0
モノクマ「…オマエラはさ、大切な人を亡くしたことはある?」

クリスタ「え…?」

モノクマ「もしないなら想像してごらん」

モノクマ「大切な人が誰かのせいで氏んだり、殺された時のことを」

75: 2014/06/07(土) 16:40:37.12 ID:mCvhUdxW0
モノクマ「最初はね、何が起こったのか理解できないんだ」

モノクマ「それまで当然のように隣にいた人がいなくなる。
     この世界のどこに行っても、もうその人には会えない」

モノクマ「頭ではわかってるんだけど、それでも“理解”できない。
     まるで他人事のような、夢の中の話のような…」

モノクマ「これがいわゆる“レベル1”」

76: 2014/06/07(土) 16:45:27.39 ID:mCvhUdxW0
モノクマ「しばらくすると“レベル2”になる」

モノクマ「現実をある程度受け入れた状態。
     その人に会えなくて、どうしようもないほど悲しい状態…」

モノクマ「でも、そんな状態はそれほど続かない。
     次第にある感情が心を埋め尽くして…」

モノクマ「長い長い“レベル3”に突入する」

77: 2014/06/07(土) 16:50:38.36 ID:mCvhUdxW0
モノクマ「体中の臓物がうねり出す。強烈な吐き気を覚える。
     目が血走る。何を食べても鉛の味がする」

モノクマ「大切な人よりも、氏に追いやった人間を思うことの方が多くなる」

ライナー「………………」

モノクマ「ここからは本当に人それぞれだよ」

モノクマ「憎しみを抱えたまま一生を終える人もいれば、
     復讐を誓ってそれを成し遂げたり、失敗する人もいる」

モノクマ「でもね…その人たちのほとんどが気付いていないんだ」




モノクマ「“レベル4”があることに」

78: 2014/06/07(土) 16:55:24.83 ID:mCvhUdxW0
モノクマ「仇討ちを果たすとね、そこには意外と何もないんだよ」

モノクマ「あんなに毎日思い描いていたのに。
     これで心に空いた穴が塞がると思ったのに」

モノクマ「あるいは賢い人なら、
     復讐なんて考える前に気付いちゃうのかもしれないね」

モノクマ「そいつを頃したとしても、大切な人は戻ってこないって」

79: 2014/06/07(土) 17:00:17.31 ID:mCvhUdxW0
モノクマ「すると一気に空しくなる」

モノクマ「心の穴が塞がるどころか、穴だらけになって…」

モノクマ「やがて心が穴そのものになる」

サシャ「…!?」

モノクマ「何を言っているのかわからないって?」

モノクマ「でもそれは…今のアッカ―マンさんを見れば一目瞭然でしょ?」

80: 2014/06/07(土) 17:05:13.87 ID:mCvhUdxW0








ミカサ「………………………………」








81: 2014/06/07(土) 17:10:17.55 ID:mCvhUdxW0
モノクマ「ユミルさんはさっきこう聞いたよね?」




ユミル『お前の目的は何なんだ。
    訓練をさせたいのか? 頃し合いをさせたいのか?』




モノクマ「あの質問に一言で答えるとすれば…」

モノクマ「ずばり、“レベル4”だよ」

ユミル「は…?」

モノクマ「“レベル1”から“レベル3”なんてどうでもいい。
     手段はそこまで重要じゃないんだ」

モノクマ「ボクがオマエラにさせたいのはね…」

82: 2014/06/07(土) 17:15:10.38 ID:mCvhUdxW0








モノクマ「絶望…それだけだよ……」








83: 2014/06/07(土) 17:20:20.58 ID:mCvhUdxW0
モノクマ「うぷぷ…それにしても、見れば見るほどいい顔してるよね」

モノクマ「ボクって自分以外の顔はあんまり見惚れないんだけど、
     ここまで絶望しきった表情を見るとボクの真っ白な絹綿が」

アルミン「…黙れ」

モノクマ「はにゃ?」

アルミン「絶望だか何だか知らないけど…これ以上好きにはさせない…」

アルミン「エレンの仇は僕が必ず…!」

84: 2014/06/07(土) 17:25:19.89 ID:mCvhUdxW0
モノクマ「あーはいはい。“レベル3”が何か言ってるよ」

モノクマ「仇討ちをしても良い事無いって、今教えたばっかりなのにねー」




アルミン(僕はそのままモノクマを睨み付けていたけど…)

アルミン(ふとそこで、ある人の視線に気付いた)

85: 2014/06/07(土) 17:30:12.96 ID:mCvhUdxW0
アニ「………………」




アルミン(アニはこちらを見ながら、クイクイと首を動かしている)

アルミン(相変わらずの鉄仮面。
     それでも、その表情は読み取ることができた)

アルミン(『早く座って』…きっとそう言いたいんだろう)

86: 2014/06/07(土) 17:35:18.46 ID:mCvhUdxW0
アルミン「…行こう、ミカサ」




アルミン(僕が背中を促すと、ミカサは何の抵抗もせずに従った)

アルミン(みんなの視線を一身に浴びながら、アニに示された席へと向かう)




アニ「全員揃ったみたいだね」

アニ「…じゃあ、始めようか」

90: 2014/06/15(日) 09:45:14.13 ID:VAyayiX/0
アルミン(僕とミカサが席に着くのを見届けると、ライナーは咳ばらいをした)




ライナー「…コホン」




アルミン(静まり返る食堂)

アルミン(ライナーは一人一人の顔を見た後、言葉を選ぶように話し始める)




ライナー「今日集まってもらったのは他でもない。俺たちの今後を話し合う為だ」

91: 2014/06/15(日) 09:50:16.27 ID:VAyayiX/0
アルミン(年長者ということもあって、
     いつの間にかライナーが僕らのまとめ役になっていた)

アルミン(もっとも僕は…それに若干の抵抗を感じていたんだけど)




ライナー「知っての通り、今の俺たちがいるのは異常空間だ」

ライナー「屋外をそのまま鉄板で囲ったような巨大な施設。
     衣食住が完璧なまでに行き届いた環境…」

ライナー「だが、異常なのはそれだけじゃない。
     俺たちはそこで訓練をさせられ、頃し合いを強いられ…」

ライナー「そして実際に… 俺たちの間で殺人が起きた」

92: 2014/06/15(日) 09:55:14.55 ID:VAyayiX/0








アルミン『エレン!!!!』








ミーナ『イヤだぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!』








ライナー「エレンはミーナに殺され…」

ライナー「ミーナは俺たちの前で処刑された」

93: 2014/06/15(日) 10:10:15.53 ID:VAyayiX/0
ライナー「ミーナがやった事は決して許されない」

ライナー「だが俺は…ミーナだけを責めようとは思わない」

ミカサ「………………」

ライナー「今の俺たちに必要なのは“団結力”だ」

ライナー「全員が団結して、不確かな情報に惑わされることなく、
     かかる脅威に立ち向かわなければならない」

ライナー「全ての元凶である黒幕に…立ち向かわなければならない」

94: 2014/06/15(日) 10:15:20.42 ID:VAyayiX/0
ライナー「だから今日はみんなに訓練を休んでもらった」

ライナー「【裏切り者】の存在ももちろんあるが…
     何より今はそんな事ができる状態じゃないだろう?」

コニ―「………………」

ライナー「黒幕に立ち向かう為には戦略や方向性が必要なんだ。
     でも、今の俺たちには知らない事が多すぎる」

ライナー「今日は一日話し合おう。
     疑問点を明らかにして、これからの行動について意見を…」

95: 2014/06/15(日) 10:20:28.16 ID:VAyayiX/0
ユミル「…待てよ」

ライナー「?」

ユミル「その前に…お前らには説明すべき事があるだろう」

ライナー「何の話だ」

ユミル「とぼけるなよ。忘れたとは言わせないぞ」

96: 2014/06/15(日) 10:30:37.62 ID:VAyayiX/0




アルミン『え…?』

ライナー『俺とベルトルトには、
     この施設に連れて来られるまでの記憶が一切なかった』

ライナー『自分の出身はもちろん、家族の名前や
     小さい頃の思い出なんかが全部…抜け落ちてしまっているんだ』

アルミン『き、記憶が…ない?』

ベルトルト『唯一覚えていたのは自分の名前と、
      日常生活や壁の中についての知識…』

ベルトルト『それと、“自分は兵士にならなきゃいけない”っていう…
      異様な使命感だけなんだよ』




97: 2014/06/15(日) 10:35:16.60 ID:VAyayiX/0
ベルトルト「…!!」

ユミル「それにミカサの話だと…
    アルミンに口止めまでしてたらしいじゃねえか」




アルミン『そうなんだ…僕はてっきり、
     二人は古くからの友人だと思っていたんだけど』

ライナー『…信じられねえのはわかる。
     だから俺たちも言い出せなかった』

ライナー『特に【裏切り者】の存在が示唆された今…
     真っ先に怪しまれるのは俺たちだろうからな』




ベルトルト『…ねえアルミン、
      虫のいい頼みだっていうのは承知してる。だけど…』

アルミン『…わかってる。この件は誰にも言わないよ』

ライナー『…すまねえな』




98: 2014/06/15(日) 10:45:10.12 ID:VAyayiX/0
ライナー「………………」

ユミル「別にお前らが【裏切り者】だって決め打ってるわけじゃない」

ユミル「まして、今お前が言った事に異論があるわけでもない。
    こういう話し合いの場は必要だと私も思ってたからな」

ユミル「ただな、私たちを仕切る以上は
    そこら辺をハッキリさせてもらわねえと…わかるだろ?」

ライナー「…ああ、もっともな意見だ」

99: 2014/06/15(日) 10:55:17.12 ID:VAyayiX/0
ベルトルト「ラ、ライナー…」

ライナー「………………」




アルミン(ベルトルトがライナーを見る)

アルミン(ライナーはそれを目線で返した後、一つ呼吸をして話し始めた)

102: 2014/06/22(日) 09:00:15.99 ID:U7+Pm8Wb0
ライナー「改めて説明させてもらうと、こういう事だ」

ライナー「みんなには入団式直前までの記憶があるようだが、
     俺たち2人に限ってはそうじゃなかった」

ライナー「自分の名前と必要最低限の知識…それしか残されていなかった」

ライナー「話を聞いてるうちに思い出してきた部分もあるが、
     それでもぼんやりとしかわからない」

ライナー「ミーナは家族の為に殺人を犯したと言っていた。
     だが俺たちは…家族の名前すら思い出せない」

103: 2014/06/22(日) 09:05:13.12 ID:U7+Pm8Wb0
アルミン(全員が黙って聞いていた)

アルミン(静まり返った食堂に、ライナーの声だけが響き渡る)




ライナー「本当にそれだけなんだ」

ライナー「アルミンに口止めをした理由も、あの時に言った通り…
     あの状況では俺たちが真っ先に疑われると思ったからだ」

ライナー「…まあ、そのせいで逆に疑われるとは思わなかったけどな」

ベルトルト「………………」

104: 2014/06/22(日) 09:10:17.66 ID:U7+Pm8Wb0
アルミン(ライナーが頭を下げる)




ライナー「信じてくれとは言わん。だが、これが俺の嘘偽りない答えだ」

ライナー「疑われるような事をしてしまって…すまなかった」




アルミン(ベルトルトも立ち上がって、僕たちに向かって頭を下げた)

アルミン(巨漢2人が礼をし、椅子に座った男女がそれを見つめ続ける
     なんともシュールな光景…)

アルミン(食堂に満ちた静寂は、みんなの息をする音が聞こえるほどだ)

105: 2014/06/22(日) 09:20:11.44 ID:U7+Pm8Wb0
アルミン(時が止まったような空間)

アルミン(その重苦しい空気に割って入ったのは…ユミルだった)




ユミル「…妙な話だな」

ライナー「………………」

ユミル「ざっと見て100人以上いた訓練兵のうち12人だけが閉じ込められ、
    どっかのキチOイに頃し合うよう言われ…」

ユミル「おまけに私たちの中に【裏切り者】がいて、
    12人のうち2人の人間が“たまたま”記憶喪失だったなんて…」

ユミル「なんとも奇妙な話だよな」

ベルトルト「………………」

106: 2014/06/22(日) 09:26:01.79 ID:U7+Pm8Wb0
アルミン(ライナーとベルトルトはバツが悪そうに黙り込む)

アルミン(そんな2人をじっと見つめていたユミルだったが…)




ユミル「………………」




アルミン(やがて大きなため息を吐いた後、独り言のように呟いた)




ユミル「…って思っただろうな。昨日までの私なら」

107: 2014/06/22(日) 09:29:09.55 ID:U7+Pm8Wb0
ベルトルト「…………え?」

ユミル「言っただろ」




ユミル『別にお前らが【裏切り者】だって決め打ってるわけじゃない』




ライナー「…!」

ユミル「つーか、誰も疑ってねえよ。ここにいる全員が思ってるはずだ」




ユミル「“記憶が無いのはあの2人だけじゃない”…ってな」




108: 2014/06/22(日) 09:30:47.38 ID:U7+Pm8Wb0
アルミン(ギクリとした)




ミーナ『じゃあ聞くけど!あんたには心当たりがないの!?』

ミーナ『“自分の記憶が抜け落ちているかもしれない”…
    そう思える心当たりが、あんたにはないっていうの!?』




ミーナ『私にはあった!』

ミーナ『自分の身長が伸びてる、見覚えのないホクロがある、
    気を失う前よりも身体がガッシリしてる…』

ミーナ『絶対におかしいと思った!でも考えないようにしてた!
    考えるのが怖かったから!』

ミーナ『私はずっと…見て見ないフリをしてたんだよ!!』




109: 2014/06/22(日) 09:35:17.53 ID:U7+Pm8Wb0
ユミル「お前だってそうなんだろ、芋女」

サシャ「…確かに私も、ライナーとベルトルトを疑ってる訳じゃありません」

サシャ「でも、それはつまり…」




モノクマ『調査兵団が全滅したこと』

モノクマ『人類の大半が氏滅したこと』

モノクマ『全ての壁が破られたこと』

モノクマ『そして、オマエラが数年間の記憶を失っていること』








モノクマ『それらは全部、本当のことでーす!!』








サシャ「あのモノクマの言葉を…信じるってことでして…」

110: 2014/06/22(日) 09:40:09.43 ID:U7+Pm8Wb0
アニ「私は信じるよ」

サシャ「…!?」

アニ「調査兵団や壁の件はともかく…
   私たちが記憶喪失だっていうのは本当だと思う」

コニ―「…!!」

クリスタ「ほ、本気なの、アニ…?」

アニ「………………」

111: 2014/06/22(日) 09:45:49.42 ID:U7+Pm8Wb0
ユミル「…そういえば、兵団裁判の時にも言ってたな」




アニ『やっぱりみんな気付いてないんだね』




ユミル「お前はあの時点で気付いてたんだろ?その可能性に」

アニ「…まあね」

112: 2014/06/22(日) 09:50:10.70 ID:U7+Pm8Wb0
ジャン「おいおい… だったら、なんでその時に言わなかったんだよ」

アニ「言ったところで混乱するだけでしょ。
   それに、あの時はエレンの裁判中だったし」




アルミン(僕たちは数年間の記憶を失っている…)

アルミン(なんとも現実味のない話だ。
     12人の訓練兵が揃って記憶喪失だなんて…)

アルミン(でも… その現実味のない話がリアルになりつつある。
     全員の中で確信に変わりつつある)

アルミン(その事が…とてつもなく恐ろしかった)

113: 2014/06/22(日) 09:55:16.67 ID:U7+Pm8Wb0
サシャ「それにしても…ユミルも人が悪いですよね」

ユミル「あ?」

サシャ「だ、だってそうじゃないですか!」

サシャ「最初から疑う気がないのに、
    まるでライナーとベルトルトを責めるような…」

ユミル「だから責めてないって言ってんだろ。
    私はただ、本人の口からハッキリと聞きたかっただけだ」

サシャ「そ、それにしたって…」

114: 2014/06/22(日) 10:00:09.69 ID:U7+Pm8Wb0
ユミル「それにな、私が気になってるのはそんなところじゃない」

クリスタ「え?」

ユミル「というかお前ら…変だとは思わないのかよ」








ユミル「なんであの2人だけ、ほとんどの記憶がないんだ?」








115: 2014/06/22(日) 10:05:38.71 ID:U7+Pm8Wb0
アニ「………………」

サシャ「…えっ?」

ユミル「だってそうだろ」




ライナー『みんなには入団式直前までの記憶があるようだが、
     俺たち2人に限ってはそうじゃなかった』

ライナー『自分の名前と必要最低限の知識…それしか残されていなかった』




ユミル「私たちが失っているのは【入団式直後からの記憶】だ。
    でも、あの2人には【ほぼ全ての記憶】がない」

ユミル「どうして私たちとあいつらで…“失った記憶に差がある”んだ?」

119: 2014/07/06(日) 09:00:19.55 ID:cRTy69dC0
アルミン(再び時間が止まる)

アルミン(モノクマの言う事を信じたときに生じる、一つの疑問)

アルミン(おそらく本当に気が付かなかったのだろう。
     ライナーとベルトルトはハッとしたように顔を見合わせていた)




ベルトルト「…そうだ…確かにその通りだ…」

ベルトルト「もしモノクマの言う通り…
      僕ら全員が記憶喪失なら、説明がつく事もたくさんある」

ベルトルト「でも、それならどうして…僕とライナーだけ…」

120: 2014/07/06(日) 09:05:22.89 ID:cRTy69dC0
アルミン(ライナーが食堂の端にいた“そいつ”を睨み付ける)




ライナー「…おい、どういうことだモノクマ。
     どうして俺とベルトルトの記憶だけ多く奪ったんだ?」

モノクマ「………………」

サシャ「ていうかモノクマいたんですか!?」

ジャン「今更かよ!」

サシャ「だ、だって… 黒幕に対抗するための話し合いをしてるのに、
    本人がいたら意味ないじゃないですか!」

アニ「…関係ないよ。どうせ私たちの行動は筒抜けなんだろうし」

121: 2014/07/06(日) 09:25:09.76 ID:cRTy69dC0
アルミン(モノクマは微動だにしない)

アルミン(それでもライナーは追及の手を緩めず、なおも言葉を浴びせかけた)




ライナー「俺とベルトルトには入団式までの記憶すら無い」

ライナー「これは偶然か? そうじゃないだろ」

ライナー「お前が奪ったんだ。この施設に監禁する際に俺たち全員の記憶を奪った」

モノクマ「………………」

122: 2014/07/06(日) 10:10:11.75 ID:cRTy69dC0
ライナー「だがその理由は何だ? なぜ奪われた量に差がある?
     なぜ俺とベルトルトだけが多くを奪われなければならなかった?」

ライナー「もしかして俺たち2人の記憶には何か…
     【お前にとって不都合なもの】があったんじゃないのか?」

モノクマ「………………」

ライナー「どうなんだモノクマ。黙ってないで何とか言え」

123: 2014/07/06(日) 10:15:05.98 ID:cRTy69dC0
アルミン(ライナーの言葉は静かだった)

アルミン(静かでありながら…有無を言わせぬ迫力があった)

アルミン(聞いている者すべてがゴクリと息を呑むほどに)




モノクマ「………………」




アルミン(だけど、モノクマは怯まなかった)

アルミン(怯むどころか…)

124: 2014/07/06(日) 10:20:08.59 ID:cRTy69dC0
モノクマ「…………はぁ」

クリスタ「…?」

モノクマ「オマエラってさ…」




モノクマ「カロライナさんとそんなに変わらないよね」

125: 2014/07/06(日) 10:25:09.38 ID:cRTy69dC0
ジャン「…は?」

モノクマ「裁判であんなに責め立ててたけどさ、
     あんまり人の事言えないんじゃないの?」

モノクマ「オマエラだって同類だよ」

ユミル「…どういう意味だよ」

126: 2014/07/06(日) 10:30:13.49 ID:cRTy69dC0
モノクマ「さっきの質問…」




ライナー『だがその理由は何だ? なぜ奪われた量に差がある?
     なぜ俺とベルトルトだけが多くを奪われなければならなかった?』




モノクマ「答えるのは別に構わないよ?
     どうせいつかは言わなきゃいけないと思ってたし」

モノクマ「でもその前に…ちょっと探検してきたら?」

127: 2014/07/06(日) 10:35:10.48 ID:cRTy69dC0
クリスタ「探検…?」




アルミン(クリスタが怪訝そうな顔をする)

アルミン(するとモノクマは、蔑むようなトーンから一転して
     明るい調子で話し始めた)




モノクマ「えー、コホン…」

モノクマ「この施設では、兵団裁判を一つ乗り越えるたびに
     新しい世界が広がるようになっております!」

ベルトルト「新しい世界だって…?」

モノクマ「ほら、この施設に何ヶ所か、鍵のかかった場所があったでしょ?」

128: 2014/07/06(日) 10:40:11.02 ID:cRTy69dC0




ライナー『他には何かあったか?』

アニ『鍵がかかっていて開かない場所がいくつか。それと…』




ジャン「…あれのことか。1日目に調査したときアニが言ってた…」

モノクマ「そうそう。全部じゃないけど、そこの鍵をいくつか開けておいたの」

サシャ「な、なんでわざわざそんな事を…?
    もしかしてまた何か企んでるんじゃ…」

モノクマ「むむっ、失礼なサルだね。これは監督教官としての粋な計らいだよ」

モノクマ「こうやって刺激を与えてやらないと、
     オマエラみたいなシラケ世代はすぐにブーたれるでしょ?」

129: 2014/07/06(日) 10:45:15.13 ID:cRTy69dC0
アニ「…とにかく、鍵のかかった場所に入れるようになったんだね?」

モノクマ「うん。全部じゃないけど」

アニ「ふーん… じゃあ行ってみようか」

サシャ「え!? 今からですか!?」

アニ「気分転換にもなるし良いんじゃない?
   話し合いはそれからでも遅くないでしょ」

130: 2014/07/06(日) 10:50:20.13 ID:cRTy69dC0
ライナー「ちょっと待て、危険すぎる。罠だったらどうするんだ」

アニ「罠?」

ライナー「モノクマのことだ…
     俺たちを誘い出して、監禁や始末なんてこともあり得るだろ」

アニ「…それはないと思うよ」




4 この施設について調べるのは自由です。
  特に行動に制限は課せられません。




アニ「兵団規則にはこう記されているし…」

131: 2014/07/06(日) 10:55:08.58 ID:cRTy69dC0




モノクマ『規則違反をされない限りは、
     ボクは自ら手を下したりしません』

モノクマ『この訓練兵生活の趣旨に反するような事は
     決してしませんッ!』




アニ「モノクマだってああ言ってたじゃない」

ライナー「………………」

アニ「あいつのやる事はいろいろと理不尽だけど、
   ルールだけは遵守してる」

アニ「…その点においては、信頼してもいいと思うけど?」

モノクマ「うんうん、よくわかってるじゃん」

モノクマ「ボクって、クマ1倍ルールにはうるさいって
     サファリパークでも有名だったんだから」

132: 2014/07/06(日) 11:00:25.19 ID:cRTy69dC0
アニ「それに…」




ライナー『だがその理由は何だ? なぜ奪われた量に差がある?
     なぜ俺とベルトルトだけが多くを奪われなければならなかった?』




アニ「“探検”したら答えてくれるんでしょ? さっきの質問に」

モノクマ「もちろん。クマに二言はありません」

アニ「それなら尚更… 行かない手はないと思わない?」

ライナー「………………」

133: 2014/07/06(日) 11:05:20.10 ID:cRTy69dC0
ユミル「…じゃあ、さっさと行くか」

クリスタ「ユ、ユミル…」

ユミル「これからこの施設で過ごすのに変わりはないんだ。
    生活空間が拡がったっていうなら、見ておいた方がいいだろ」

サシャ「そうですね…もしかしたら新しい食料」

ジャン「………………」

サシャ「…じゃなかった。脱出につながる手がかりもあるかもしれませんしね」

134: 2014/07/06(日) 11:10:16.37 ID:cRTy69dC0
ライナー「…決まりだな。なら話し合いは一旦中断だ」

コニ―「………………」

ライナー「1日目と同じように何人かに別れよう。
     全員で固まって行くよりも効率的だろ?」

ベルトルト「そうだね。鍵のかかった場所って結構あったし、
      どこの鍵が開いたのかもわからないからね」

ライナー「鍵のかかった場所についてはアニがまとめてくれてる。
     今から人数を分けるから、自分たちの担当区域を調べてきてくれ」

136: 2014/07/06(日) 19:00:14.67 ID:cRTy69dC0
― 林 ―




ユミル「待たせたな」

クリスタ「ごめんね、遅くなって」

ライナー「おい遅刻だぞ…と思ったら天使だったか、許す」

アニ「面白くないよライナー」

ライナー「とにかく、これで全員集まったみたいだな。
     じゃあ早速報告していってくれ」

137: 2014/07/06(日) 19:05:12.14 ID:cRTy69dC0
サシャ「みなさん落ち着いて聞いてください!牛!牛!」

ジャン「お前が落ち着けよ」

サシャ「だから牛がいたんですよ!飼育小屋に!」

ベルトルト「飼育小屋…?」

サシャ「コニーと行ってみたんですけど、
    食肉用や生乳用の牛が何頭か飼育されていたんです!」

サシャ「ねっ、コニー!」

コニー「………………」

138: 2014/07/06(日) 19:10:15.64 ID:cRTy69dC0
クリスタ「飼育って…誰が? その小屋って施錠されてたんじゃ…」

ユミル「何わかり切った事聞いてんだよ。モノクマに決まってんだろ」

モノクマ「なんと斬新な解釈!クマが牛を育てるとなっ!?」

モノクマ「…いや、案外ウケるかも?」

サシャ「それだけじゃありませんよ!
    豚や羊やニワトリ、さらには乗馬用の馬なんかも…」

サシャ「とにかくいろんな家畜が所狭しと飼われていたんですよ!!」

ジャン「わかったから鼻息を整えろ」

139: 2014/07/06(日) 19:15:08.55 ID:cRTy69dC0
クリスタ「じゃあ次は私たちから。ライナーに言われた通り、
     ユミルと2人で担当のエリアを調べたんだけど…」

ユミル「ああ、なかなか面白い場所が解放されてたぜ。ライブハウスってやつだ」

ライナー「ライブ…なんだって?」

クリスタ「ライブハウスだよ。
     演奏用のステージがある宴会向けの建物ってところかな」

ユミル「楽器からパーティ用の小道具まで色んな物が揃ってたが、
    中でも一番目を引いたのが…」

ジャン「…何だよ、ニヤニヤしやがって」

ユミル「…まあ、これは自分で確かめてみた方がいいんじゃないか?
    少なくとも悪い物ではなさそうだからよ」

140: 2014/07/06(日) 19:35:06.82 ID:cRTy69dC0
ライナー「アニとジャンはどうだった?」

アニ「こっちも1つ解放されてたよ。
   本棚がたくさんあって、色んな書物がズラリと並んでた」

サシャ「それってもしかして…」

ジャン「ああ、書庫ってところだろうな」

ジャン「それと、その中にもう1つ扉があったんだが、
    そっちは閉鎖されてたぜ」

141: 2014/07/06(日) 19:40:10.34 ID:cRTy69dC0
アルミン「僕とミカサの方は…何も無かったかな。
     施錠されたままだったよ」

ミカサ「………………」

ライナー「…そうか。なら、これで一通りの報告は出揃ったようだな」

ベルトルト「そうだね。じゃあ、前回までの情報と合わせてまとめてみようか」

142: 2014/07/06(日) 19:45:12.52 ID:cRTy69dC0
  施設の特徴


・ 地下3メートルに巨大な鉄板?

・ 屋外をそのまま建物で囲った構造




  施設内の場所


・ 訓練所
 
・ 食堂・調理場(食糧が充実)

・ 寄宿舎(大浴場、各々の個室がある)

・ 倉庫(訓練道具、生活用品、薬品類などが充実)

・ 飼育小屋(牛、豚、羊、ニワトリ、馬などを飼育)

・ ライブハウス(演奏用のステージがある)

・ 書庫(鍵のかかった扉がある)

・ 林

・ 赤い扉(裁判場に続く昇降機への入り口)

・ 裁判場

・ その他、鍵のかかっている箇所

143: 2014/07/06(日) 19:50:09.25 ID:cRTy69dC0
ユミル「相変わらず見やすいな、ベルトルさん」

ベルトルト「あはは、ありがとね」

サシャ「うーん。これを見る限りだと、新しく発見されたのは…」

クリスタ「飼育小屋、ライブハウス、書庫…この3つかな」

144: 2014/07/06(日) 19:55:07.02 ID:cRTy69dC0
アルミン「いや、4つじゃない?」

クリスタ「えっ…」

アルミン「ライナーとベルトルトはこの林周辺を調べてたんだよね?
     そして調査の終わった僕たちを、わざわざここに集合させたのは…」

アルミン「僕たちに見せたい何かが見つかったから…違うかな」

ライナー「さすがだなアルミン。話が早くて助かる」

145: 2014/07/06(日) 20:00:18.10 ID:cRTy69dC0
ジャン「何だよ。オレたちに見せたい何かって」

ライナー「もう少し奥にある。ついてきてくれ」

ユミル「…ていうか、普通に報告すりゃあいいじゃねえか。
    何をそんなにもったいぶってんだよ」

ライナー「すまんな、こればっかりは見てもらった方が早いんだ」

ライナー「なにせ…俺たちの記憶に関わる事かもしれないからな」

サシャ「えっ…?」

アニ「………………」

149: 2014/07/13(日) 10:00:14.90 ID:5qOY+/JE0
― 林(深部) ―




ジャン「…なあ、まだ着かないのかよ」

ライナー「もう少しだ」

ジャン「お前の言う“もう少し”はどれくらいなんだよ…」
    
ジャン「もう結構歩いたぞ…」

ベルトルト「………………」

150: 2014/07/13(日) 10:05:12.33 ID:5qOY+/JE0
アニ「情けないね。ちょっとはサシャを見習ったらどうなの」

サシャ「そうですよ!こんなので音を上げてたら狩猟生活なんて務まりませんよ!」

サシャ「ねっ、コニー!」

コニー「………………」

ジャン「別に狩猟生活なんてやんねーっつーの…」

ジャン「なあ、コニー」

コニー「………………」

151: 2014/07/13(日) 10:30:18.71 ID:5qOY+/JE0
クリスタ「それにしても… 本当に広いよね、ここ」

ユミル「ああ… バカでかい天井と壁がなかったら、
    ここが屋内だってことを忘れちまいそうだ」




アルミン(ユミルはそう言って頭上を振り仰ぐ)

アルミン(そこには緑の葉が青々と生い茂り、
     ゆらゆらと揺れる隙間からは光が差し込んでいた)

152: 2014/07/13(日) 10:35:13.95 ID:5qOY+/JE0
アルミン(この施設にも昼と夜がある)

アルミン(数十メートル上にある天井の照明で光量を調整し、
     外の時間帯をリアルに再現する…)

アルミン(…というのがモノクマの説明だった)




コニー『よくわかんねーけど… そんなめんどくせー事するくらいなら、
    天井なんて取っ払っちまえばいいんじゃねーか?』

モノクマ『そんな事したらオマエラ、立体機動で逃げちゃうじゃん!』

ジャン『…まだ誰も立体機動なんてできないけどな』

ミーナ『っていうか…ここって林あるんだよね?
    天井があったら雨降らないじゃん。木が枯れちゃうんじゃないの?』

モノクマ『キミねえ、木の生命力を舐めちゃいかんよ?』

モノクマ『あいつらってさ、ギャンブルで無一文になっても、
     自分の腎臓を売ってまたギャンブルするほどしぶといんだから』

アニ『何の話をしてるの…』




153: 2014/07/13(日) 10:40:15.32 ID:5qOY+/JE0
アルミン(あの頃はまだ良かった)

アルミン(2、3日前の僕らはまだ正常だった。
     不自然なものを不自然と言える感覚があった)

アルミン(でも今は…)




ユミル「…なんだよ、芋女」

サシャ「いや、何と言いますか…
    この施設の天井と壁を見てて思うんですけど…」

154: 2014/07/13(日) 10:45:12.31 ID:5qOY+/JE0








サシャ「ウォール・シーナ全体にフタを被せれば、こんな感じになりません?」








156: 2014/07/13(日) 10:50:13.27 ID:5qOY+/JE0
アニ「………………」

ユミル「…お前、ウォール・シーナの面積どれくらいあると思ってんだよ。
    いくらこの施設がでかいからって、さすがにそこまで広くはないぞ」

サシャ「も、ものの例えですよ…
    でもほら、トロスト区やカラネス区くらいの壁に囲まれた都市なら…」

ユミル「あのなぁ… 仮にそうだとしても、
    照明付きの巨大なフタなんてどうやって用意して被せるんだ?」

サシャ「そ、それは…」

157: 2014/07/13(日) 10:55:11.35 ID:5qOY+/JE0
ライナー「…着いたぞ」

サシャ「えっ…」

ライナー「あれだ」








アルミン「…………!!」








158: 2014/07/13(日) 11:00:12.94 ID:5qOY+/JE0


――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

            栄誉ある戦士 ここに眠る                

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――――――――――――――――――――――――――――――――――――


           席次5位 エレン・イェーガー


           席次不明 ミーナ・カロライナ

















159: 2014/07/13(日) 11:05:14.61 ID:5qOY+/JE0
アルミン(それは石碑だった)

アルミン(今は亡き仲間の名が刻まれた…巨大な石碑だった)




クリスタ「…っ!?」

ユミル「これは…」

ジャン「な…なんだこりゃ…!?」

アニ「………………」

164: 2014/07/21(月) 13:00:27.53 ID:jCGShStL0
ライナー「墓…だろうな、おそらく」




アルミン(ライナーが石碑を見上げながら呟いた)




クリスタ「おそらくっていうか…
     どう見てもお墓だよね、これ…」




アルミン(大理石だろうか)

アルミン(なめらかに光る表面は唐草模様で縁どられ、
     見る者にどこか神秘的な印象を与えている)

165: 2014/07/21(月) 13:05:15.43 ID:jCGShStL0
ジャン「は、墓って…こんなにでかい墓見たことねえぞ!?」

クリスタ「でも、これはどう見たってお墓だよ。
     『栄誉ある戦士 ここに眠る』なんてよくある文句だし…」

クリスタ「それに…あの2人の名前が記されてる」




アルミン(クリスタが石碑の上方にある文字を指す)

アルミン(石碑の文字は上部4分の1程度の区画に刻まれており、
     4分の3の下部には光沢のある面が広がっているだけだった)

166: 2014/07/21(月) 13:10:28.06 ID:jCGShStL0
ユミル「…1日目にここを探索したのはアニだったよな?」

アニ「そうだけど」

ユミル「その時にはあったのか?この石碑は」

アニ「…さあね。この林広いし、隅々まで調べたわけじゃないから」

ユミル「………………」

167: 2014/07/21(月) 13:15:13.93 ID:jCGShStL0
アルミン「…多分、アニが調べた時にはまだ無かったんじゃないかな」

ユミル「…なんでそう思うんだ?」

アルミン「だって、綺麗すぎるよ。
     こんなに木が生い茂ってるのに、埃や葉っぱの一つも被ってない」

アルミン「それに、1日目にエレンとミーナはまだ生きていたから…
     その時点でこの石碑があったっていうのはおかしいでしょ?」

ユミル「………………」

168: 2014/07/21(月) 13:20:15.84 ID:jCGShStL0
ジャン「…じゃあ何か? この石碑はあの2人が氏んだ後…
    つまり【昨日の夜から今にかけての時間】に建てられたものだと?」

アルミン「うん、そうなるんじゃないかな」

ジャン「…こんなにでかくて重いものを、
    わざわざ林のど真ん中に持ってきたのか?」

アルミン「目的は僕にもわからないけど…
     でも、モノクマならそのくらいやりそうじゃない?」

169: 2014/07/21(月) 13:30:19.01 ID:jCGShStL0
アルミン(僕はモノクマに目をやった)




モノクマ「………………」




アルミン(モノクマは一言も発さずに、少し離れたところから僕らを見ていた)

アルミン(一体何を考えているのか…
     両手を口に当ててくねくねと身をよじらせている)

170: 2014/07/21(月) 13:40:30.30 ID:jCGShStL0
コニー「………………」

ミカサ「………………」




アルミン(あの2人も相変わらず喋らない)

アルミン(コニーはともかく…
     ミカサの方は、エレンの名前を見て何か反応を示すかと思ったんだけど…)




ミカサ「………………」

171: 2014/07/21(月) 13:45:17.92 ID:jCGShStL0
サシャ「あ、あのぅ…」

ユミル「…今度は何だよ」

サシャ「いや、その…」

サシャ「あれって…どういう意味なんでしょうか?」

172: 2014/07/21(月) 13:50:16.58 ID:jCGShStL0


――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

            栄誉ある戦士 ここに眠る                

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――――――――――――――――――――――――――――――――――――


           席次5位 エレン・イェーガー


           席次不明 ミーナ・カロライナ

















173: 2014/07/21(月) 14:00:16.86 ID:jCGShStL0
ライナー「…やっぱり気になるか?
     エレンとミーナの名前の前に刻まれた表記…」

ライナー「“席次5位”と“席次不明”…」




アルミン(改めて石碑の文字を見る)

アルミン(するとそこには確かに、名前よりも小さな文字で
     そのような言葉が記されていた)

178: 2014/07/27(日) 08:30:44.13 ID:PDrgi8Bt0
ジャン「席次…? 何のことだ?」

クリスタ「普通に考えれば“成績の順位”って意味だろうけど…」

ジャン「成績って…何の成績だよ」

クリスタ「うーん…やっぱり訓練の成績じゃないかな。
     それくらいしか思いつかないし…」

ユミル「…だとしたら妙だな」

179: 2014/07/27(日) 08:35:36.07 ID:PDrgi8Bt0
名前          PT

ミカサ・アッカーマン  10
ミーナ・カロライナ   10
アニ・レオンハート   09
ライナー・ブラウン   09
ベルトルト・フーバー  09
ユミル         09
ジャン・キルシュタイン 08
コニー・スプリンガー  08
サシャ・ブラウス    07
クリスタ・レンズ    07
アルミン・アルレルト  06
エレン・イェーガー   00

180: 2014/07/27(日) 08:40:41.22 ID:PDrgi8Bt0
ユミル「昨日の裁判で見た訓練成績表によると、エレンの順位は…」

ライナー「ああ、ダントツの最下位だった。得点すら入ってない」

ライナー「なのに、この石碑には
     “席次5位 エレン・イェーガー”…確かにこうある」

アニ「………………」

181: 2014/07/27(日) 08:46:04.77 ID:PDrgi8Bt0
サシャ「同着5位って意味じゃないですか?
    同じ得点の人って結構いましたし…」

ユミル「アホか。その考えだと1位がミカサとミーナ、
    2位がライナー、ベルトルト、アニ、私…」

ユミル「3位がジャンとコニ―、4位がサシャとクリスタ…
    5位がアルミンで、エレンは席次6位になるはずだろ」

サシャ「あ…そっか」

182: 2014/07/27(日) 08:50:38.97 ID:PDrgi8Bt0
ユミル「それに、ミーナの“席次不明”ってのもよくわからない。
    あいつの成績はミカサと一緒でトップだったはずだが…」

アルミン「………………」

クリスタ「…? どうかしたの、アルミン」

アルミン「いや…その“席次不明”についてなんだけどさ。
     僕らは一度目にしてるよね」

クリスタ「えっ…」

183: 2014/07/27(日) 09:00:20.97 ID:PDrgi8Bt0








ま  る  か  じ  り




席次不明

ミーナ・カロライナ 処刑執行








184: 2014/07/27(日) 09:05:13.66 ID:PDrgi8Bt0
ユミル「…まさか、あれのことか?」

アルミン「うん、ミーナの処刑の時のね」

サシャ「よ、よくそんなの憶えてますね…」

アルミン「今もそうだけど、あの時は50日間の訓練の途中で、
     最終的な順位が決まる前…」

アルミン「つまり、順位が決まる前に氏亡って意味で
     “席次不明”なのかと思ったんだ」

アルミン「でもそれだと…エレンの“席次5位”の説明がつかない」

185: 2014/07/27(日) 09:15:16.37 ID:PDrgi8Bt0
ライナー「…俺は思うんだがな」

サシャ「…?」

ライナー「その“席次5位”っていう順位…」








ライナー「俺たちが記憶を失う前の成績なんじゃないか?」








186: 2014/07/27(日) 09:20:13.60 ID:PDrgi8Bt0
サシャ「…!?」

アニ「………………」

ユミル「記憶を失う前…? どういう意味だよ」

ライナー「モノクマの話によると、俺たちは数年間の記憶を失っている」

ライナー「その“数年間”がどれくらいのものかはわからないが…」

ライナー「もし3年以上経っているなら、
     俺たちは訓練兵団を卒業していることになるよな」

187: 2014/07/27(日) 09:25:37.58 ID:PDrgi8Bt0
クリスタ「…つまり、ここじゃなくて
     “本物の訓練兵団での成績”ってこと?」

ライナー「ああ。エレンはそこを5位で卒業した…
     そう考えれば辻褄も合ってくるだろ」

サシャ「5位って…本物の訓練兵団なら100人以上いるんですよね?
    12人の中でさえ最下位だったのに…」

ジャン「…あいつが最下位だったのは金具の不備のせいだ。
    本当はそれくらいの実力があった…のかもしれないだろ」

188: 2014/07/27(日) 09:35:23.43 ID:PDrgi8Bt0
アルミン「ちょっと待って。
     それなら、ミーナの“席次不明”はどう説明するの?」

ライナー「…それはわからん。
     単にモノクマがミーナの順位を把握していなかったのかもしれない」

ライナー「そもそも、これはあくまで俺の想像だからな」

アニ「………………」

ライナー「だが、もしこの想像が本当だとしたら…」

ライナー「俺たちが記憶喪失だということ…
     つまりモノクマが俺たちの記憶を奪ったということが現実味を帯びてくる」

189: 2014/07/27(日) 09:40:19.61 ID:PDrgi8Bt0
アルミン(ライナーがモノクマに向き直る)




ライナー「…これで“探検”は終わりだ。約束通り答えてもらおうか」




ライナー『だがその理由は何だ? なぜ奪われた量に差がある?
     なぜ俺とベルトルトだけが多くを奪われなければならなかった?』




ライナー「あの質問に…答えてもらおうか」

190: 2014/07/27(日) 09:45:16.10 ID:PDrgi8Bt0
アルミン(いつの間にか、モノクマはくねくねとした動きを止め、
     ポツンと立ったままこちらを見ていた)




モノクマ「………………」




アルミン(相変わらず何を考えているのかわからない)

アルミン(ミカサやコニーとはまた違う、気味の悪い沈黙)

191: 2014/07/27(日) 09:50:21.61 ID:PDrgi8Bt0
モノクマ「…ハァ」

サシャ「…?」

モノクマ「オマエラって本当にカロライナさんと変わらないね」

モノクマ「都合がいい時だけ全部ボクのせいにして…
     自分たちのやった事を省みることもしないでさ」

モノクマ「なんというか…実に滑稽だよね」

192: 2014/07/27(日) 09:55:14.56 ID:PDrgi8Bt0
ライナー「…おい、話を逸らすな。さっさとあの質問に答えろ」

モノクマ「答えられないよ」

ライナー「…は?」

モノクマ「いや、だってさ…」








モノクマ「オマエラの記憶を奪ったのはボクじゃないもん」








193: 2014/07/27(日) 10:00:22.19 ID:PDrgi8Bt0
ライナー「………………」

サシャ「…えーっと、今なんて?」

モノクマ「『記憶を奪ったのはボクじゃありません。
      なので、質問にも答えられません』」

モノクマ「それがブラウンくんの質問に対する答えだよ」

クリスタ「…え?」

194: 2014/07/27(日) 10:05:27.21 ID:PDrgi8Bt0
モノクマ「大体さぁ… ボクがいつ、どこで、
     オマエラの記憶を“奪った”なんて言ったの?」

モノクマ「カッチカチの脳みそが生み出した固定観念だって、
     誰一人思わなかったわけ?」

ジャン「な…何言ってんだ…?」

モノクマ「いいかい? 何度でも言うけどね、
     ボクはオマエラの記憶を奪ってないんだ」

モノクマ「それどころか…」

195: 2014/07/27(日) 10:10:29.44 ID:PDrgi8Bt0








モノクマ「ボクはオマエラの記憶を戻してあげたんだよ?」








198: 2014/08/03(日) 00:00:29.11 ID:9cQ0Jbk30
アルミン(一瞬、何を言っているのかわからなかった)




サシャ「…えーっと、すみません」

モノクマ「はい?」

サシャ「意味がわからないんですが」

モノクマ「え、なんで?」

サシャ「だって… あなたの話では、今の私たちって記憶が無いんですよね?」

モノクマ「そうだけど」

サシャ「だ、だったらおかしいじゃないですか!
    私たちは記憶喪失なのに、私たちの記憶を戻したなんて…」

199: 2014/08/03(日) 00:05:31.06 ID:9cQ0Jbk30
モノクマ「いやいや、何もおかしくないでしょ」

サシャ「は、はい…?」

モノクマ「オマエラは元々、全ての記憶が無い状態だったんだよ?」

モノクマ「それを心優しいボクが保護して、
     なんとか訓練兵団入団直前の記憶まで戻してあげたってわけ」

モノクマ「つまり、オマエラの記憶を奪ったのは【別の誰か】で、
     ボクはそんなオマエラを助けてあげたの。アンダスタン?」

ユミル「…は?」

200: 2014/08/03(日) 00:10:15.09 ID:9cQ0Jbk30
ジャン「…なあ、コニーじゃねえけどよ…俺はバカなのか?
    お前の言ってることが全く理解できないんだが」

モノクマ「じゃあバカなんじゃない?これ以上説明のしようがないもの」




アルミン(全員が押し黙った)

アルミン(まったく予想していなかったモノクマの回答。
     考えるのを止めたくなるほどの混乱)

アルミン(まるで心の乱れを感じ取ったように、
     周りの木々がざわざわと音を立てる)

201: 2014/08/03(日) 00:20:17.66 ID:9cQ0Jbk30
ベルトルト「…えっと…じゃあ、つまり…」

ベルトルト「僕とライナーの記憶だけが欠落してるのは、
      僕とライナーの記憶だけを奪ったんじゃなくて…」

モノクマ「うん。オマエラの記憶だけ戻さなかったの」

ライナー「…ちょ、ちょっと待て。
     それならなぜ、俺たち2人の記憶だけ戻さなかったんだ?」

モノクマ「えっ、だってそこまでやっちゃったら…」

モノクマ「おっと危ない危ない!これ以上は言わない約束だったね!」

202: 2014/08/03(日) 00:40:16.48 ID:Iid1MSyv0
モノクマ「あ、でもね、全く戻さなかった訳じゃないよ」

モノクマ「なにしろ発見当時のオマエラは、
     記憶どころか人格すら無い存在だったんだから」

モノクマ「それを普通の人間に戻してあげたんだから、
     ボクにちゃんと感謝したまえよ?」




アルミン(理解が追い付かない)

アルミン(意味を咀嚼して飲み込もうとしても、体が拒絶して吐き出してしまう)




モノクマ「見て見て、その時のオマエラの真似」

モノクマ「あー…うあー…」




アルミン(だらしなく涎を垂らしてぐったりとするモノクマ)

アルミン(僕らはその光景を…ただ唖然として見ていた)

203: 2014/08/03(日) 00:45:16.13 ID:Iid1MSyv0
ジャン「ウソだろ…!?」

モノクマ「ボクはウソつきじゃない!その自信がボクにはある!」

モノクマ「というかねえ…ボクは今まで、
     【一度もオマエラにウソは言ってない】よ?」

ジャン「それがすでにウソなんだろうが!」

モノクマ「あーうんうん、わかるよわかる。
     認めたくないんでしょ?信じたくないんでしょ?」

モノクマ「でもね、うだうだ言ったって真実は変わらないんだよ?
     駄々をこねて変わると思ってるのは世間知らずのガキだけだよ?」

204: 2014/08/03(日) 00:50:19.78 ID:Iid1MSyv0
アルミン(…モノクマはいつだっていきなりだ)

アルミン(何も今に始まったことじゃない。
     いきなりとんでもない事を言って、僕らの心をかき乱す)

アルミン(それがこいつのやり方なんだ。だけど…)




クリスタ「……!!」

ジャン「……ッ!!」




アルミン(誰も…何も言い返せない)

205: 2014/08/03(日) 00:55:15.40 ID:Iid1MSyv0
モノクマ「うぷぷ…それにしてもさぁ、ボクって我ながらいいクマじゃない?」

モノクマ「廃人同然だったオマエラを匿って、奪われた記憶を戻してあげて…」

モノクマ「巨人の脅威から遠ざけた上に、衣食住まで完備してあげるなんて…」

モノクマ「ボクってかなりのお人よしじゃなぁ~い?」

206: 2014/08/03(日) 01:00:17.23 ID:Iid1MSyv0
アルミン「何がお人よしだっ!!」

モノクマ「はにゃ…?」

アルミン「本当にお人よしなら…僕らに殺人を強要する訳ないだろっ!」

アルミン「助けた人間を氏に追いやるような真似をする訳ないだろッ!」

モノクマ「そりゃあ旦那、ギブ&テイクってやつでさぁ」

モノクマ「オマエラをここまで助けてやったんだから、
     少しくらいボクのわがままを聞いてくれたっていいでしょ?」

モノクマ「ボクの道楽に付き合ってくれたっていいでしょ?」

207: 2014/08/03(日) 01:05:16.10 ID:Iid1MSyv0
アルミン「道楽ッ…!?」




アルミン(モノクマに掴みかかろうとする自分自身を必氏に抑え込む)

アルミン(だけど、どんなに抑え込んでも…)




アルミン「…………ッ!!」




アルミン(エレンの無残な氏に様が… 脳裏に浮かんできて…)

208: 2014/08/03(日) 01:10:20.74 ID:Iid1MSyv0








アニ「アルミン」








アルミン(気が付くと、アニが僕の手を握っていた)




アルミン「…!」

アニ「………………」




アルミン(彼女の静かな瞳が僕を見つめる)

アルミン(まっすぐと、僕に語りかけるように…)

209: 2014/08/03(日) 01:15:16.37 ID:Iid1MSyv0
ユミル「…なあ、一つだけ教えろ」

モノクマ「うん?」

ユミル「もし今言ったことが本当なら…」








ユミル「私たちの記憶を奪ったのは…誰なんだ?」








210: 2014/08/03(日) 01:20:19.85 ID:Iid1MSyv0
モノクマ「良い質問だね」

モノクマ「だけど残念ながら、その質問には答えられないんだ」

ジャン「都合が悪くなったらすぐそれかよ…!」

モノクマ「いやいや、これはあくまで
     オマエラのためを思っての事だよ」

モノクマ「だって、もしその質問に答えちゃったら、
     オマエラはますますパンクするだろうからね…」

211: 2014/08/03(日) 01:25:17.72 ID:Iid1MSyv0
アニ「…いちいち言い方が回りくどいね」

モノクマ「うぷぷ、ごめんね。ボクの悪い癖でさ」

モノクマ「でも本当だよ。その質問の答えを聞くのは
     色んな意味でやめた方がいいよ」

アニ「………………」

モノクマ「さてと、そんな訳だから、ボクはもう行くね。
     あとはオマエラで好きにやっちゃって」

212: 2014/08/03(日) 01:30:24.04 ID:Iid1MSyv0
ライナー「待て!お前にはまだ聞きたいことが…」

モノクマ「ダメダメ。“一つだけ”って約束だったでしょ?」

ライナー「どうして俺とベルトルトの記憶だけ戻さなかったんだ!?
     どうして他のやつらの記憶は戻したんだ!?」

ライナー「どうして俺たちが廃人だったんだ!?
     どうしてお前は俺たちを保護したんだ!?」

ライナー「ここは一体どこなんだ!?
     ミーナの処刑の時にいたエレンとアルミンは何だ!?」

モノクマ「あーあー聞こえなーい。それじゃーねー」




ポヨヨーン

215: 2014/08/10(日) 08:30:33.05 ID:sJrfnOMJ0
ライナー「おい、待て!」




アルミン(ライナーの呼び止める声も空しく、モノクマは忽然と姿を消した)




ライナー「くそっ!」




アルミン(吐き捨てるように言いながら、ライナーが目を逸らす)

アルミン(後ろ姿だけでも、ギリリと奥歯を噛みしめる様子が伝わってくる)

216: 2014/08/10(日) 08:35:19.57 ID:sJrfnOMJ0
クリスタ「…ねえ」

ユミル「あ?」

クリスタ「今の話って…どういう事なのかな…」




アルミン(誰に問うでもなく、クリスタが独り言のように漏らした)




ライナー「…ッ」




アルミン(それはこの場の全員が抱いていた疑問であり…)

アルミン(どうしようもないほど大きな不安だった)

217: 2014/08/10(日) 08:40:45.50 ID:sJrfnOMJ0
ユミル「…どうもこうもねえだろ」

コニー「………………」

ユミル「今の私たちには、訓練兵団に入ってからの数年間の記憶が無い」
    
ユミル「だがそれはモノクマの仕業じゃなくて、【別の誰か】ってのが
    私たちの記憶を人格が無くなるほど奪ったから」

ユミル「それを見つけたモノクマが私たちを保護し、少しだけ記憶を戻した」

ユミル「それが今の私たち…っていうのがモノクマの説明だ」

クリスタ「そんな…」

218: 2014/08/10(日) 08:45:21.09 ID:sJrfnOMJ0
サシャ「【別の誰か】って…誰なんですかね…?」

ユミル「…知るかよ。今見ただろ。
    私が聞こうとしてもはぐらかされちまった」

ミカサ「………………」

ユミル「クソッ…何が“探検”だ」

ユミル「結局、訳のわからない事が増えただけじゃねえか…!」

219: 2014/08/10(日) 08:50:27.97 ID:sJrfnOMJ0
アルミン(再び全員が黙り込む)

アルミン(【記憶】、【廃人】、【別の誰か】…
     それらの単語が頭の中でグルグルととぐろを巻く)

アルミン(いくら考えても答えは出ない。
     むしろ考えれば考えるほど混乱の渦に呑み込まれる)

アルミン(まるで呪いのように…僕らの脳を絡め取る)

220: 2014/08/10(日) 08:55:24.55 ID:sJrfnOMJ0
ジャン「…っ」

ミカサ「………………」




アルミン(ある人は表情を張りつめ、己の思考と戦っているようだった)

アルミン(ある人は感情を失った目で虚空を見つめていた)

アルミン(そしてある人は…)

221: 2014/08/10(日) 09:00:21.20 ID:sJrfnOMJ0
アニ「…ねえ」

ユミル「あ?」

アニ「まさかとは思うけど…」




アニ「今の話、本気で信じるつもり?」

222: 2014/08/10(日) 09:05:27.88 ID:sJrfnOMJ0
ユミル「…なに?」

アニ「今の話を本気で信じるのかって…そう聞いたんだよ」




アルミン(そしてある人は…)

アルミン(全く動じることなく、目の前の状況と向き合っていた)

225: 2014/08/10(日) 16:35:22.32 ID:8wsm0/dL0
ユミル「…何言ってんだ」




アニ『私は信じるよ』

サシャ『…!?』

アニ『調査兵団や壁の件はともかく…
   私たちが記憶喪失だっていうのは本当だと思う』




ユミル「お前は自分で言ってたじゃねえか。
    私たちが記憶喪失なのは本当だって…」

アニ「ああそうさ。自分の体の違和感を考えれば、
   私たちに記憶が無いのは本当だと思うよ」

アニ「でもだからって…私たちが廃人だったとか、
   モノクマの他に記憶を奪ったやつがいるとか…」

アニ「それらを信じるのはどうなんだろうね」

226: 2014/08/10(日) 16:40:19.07 ID:8wsm0/dL0
ユミル「お前は信じないっていうのかよ」

アニ「少なくとも鵜呑みにはしないね」

アニ「記憶喪失の件に関しては、
   “体の違和感”っていう根拠があるから信じられるけど…」

アニ「モノクマが記憶を戻したとか、調査兵団が全滅したとか、
   人類の大半が氏滅したとか、壁が全部破られたとか…」

アニ「それらは何の証拠も無い、モノクマから与えられた情報なんだよ」

ユミル「………………」

227: 2014/08/10(日) 16:45:27.66 ID:8wsm0/dL0
アルミン(ユミルは何かを言いかけたが、すぐに口を閉ざした)

アルミン(アニは淡々とした様子で続ける)




アニ「結局、私たちは箱の中の猫なのさ」

アニ「猫が生きているのか氏んでいるのか…
   それは箱を開けてみなければわからない」

アニ「逆に猫にとっては、箱を出なければ外の世界を知ることはできない」

ユミル「………………」

アニ「事実と根拠を1つだけ見せつけ、他のウソごと信じ込ませる」

アニ「それがあいつのやり方なんだよ」

アニ「現にミーナは…その方法でまんまと騙されてたじゃないか」

228: 2014/08/10(日) 16:50:21.93 ID:8wsm0/dL0
アルミン(その時だった)




ビリッ…




アルミン(ミーナの名前が出た瞬間…)

アルミン(僕らの中に何かが走った)




ジャン「………………」

コニー「………………」




アルミン(みんなの表情がわずかに動いたのも、僕は見逃さなかった)

229: 2014/08/10(日) 16:55:36.08 ID:8wsm0/dL0
ライナー「…もういいだろ」

アニ「?」

ライナー「今日はいろんな事がありすぎた…
     ここらで解散にしよう」

アニ「…話し合いはどうするの?」

ライナー「また今度だ。この状態でやっても良い考えは出ない」

アニ「………………」

ライナー「ともかく今日は解散だ。
     各自食事と入浴を済ませて、部屋でゆっくり休んでくれ」

ライナー「いいか…くれぐれも変な考えは起こすなよ」

233: 2014/08/17(日) 08:16:12.97 ID:BzzgDJf20
アルミン(こうしてまた一日が終わった)

アルミン(すっかり疲れ切った僕らは、食事や入浴もそこそこに…)

アルミン(それぞれの個室へ入っていった)




アルミン「………………」




アルミン(ベッドに体を預けながら目を閉じる)

アルミン(まるで鉛がこびり付いたように、頭の中が重かった)

234: 2014/08/17(日) 09:00:19.66 ID:BzzgDJf20
アルミン(先の見えない不安、黒幕への怒り…)

アルミン(でも、それだけじゃない気がする)

アルミン(僕らの中には確実に、“新たな感情”が芽生えていた)




アルミン「………………」




アルミン(それは一体どんな感情なのか)

アルミン(重みを増した僕の脳は、そんな疑問から逃れるように…)

アルミン(深い眠りへと落ちていった)

235: 2014/08/17(日) 09:10:20.35 ID:BzzgDJf20
◆ モノクマげきじょう ◆




モノクマ「夢は記憶整理の副産物なんだって」

モノクマ「普段の生活で起こった出来事を整理するときに、
     既存の記憶が呼び起こされて…」

モノクマ「それがぐちゃぐちゃに混ざり合っちゃうらしいんだ。
     まさに記憶のスクランブルエッグだね」

モノクマ「ここだけの話、朝食でスクランブルエッグを食べるという習慣も、
     これに由来しているみたいだよ。どうりで美味しいわけだね」

モノクマ「…え? ボク?」


モノクマ「ボクは夢なんて見ないよ。だってクマだもの」

236: 2014/08/17(日) 09:15:18.22 ID:BzzgDJf20




アルミン『エレン! ここにいたんだ!!』

エレン『どうしたよアルミン』

アルミン『これ…じいちゃんが隠し持っていたんだ!
     外の世界が書かれてる本だよ!』

エレン『外の世界の本だって!? それっていけない物なんだろ!?
    憲兵団に捕まっちまうぞ!?』

アルミン『そんなこと言ってる場合じゃないんだ!!』

アルミン『この本によると、この世界の大半は
     「海」っていう水で覆われているんだって!!』




237: 2014/08/17(日) 09:25:20.24 ID:BzzgDJf20




アルミン『しかも「海」は全部塩水なんだって!!』

エレン『…!! 塩だって!?』

エレン『うっ…嘘つけ!! 塩なんて宝の山じゃねぇか!
    きっと商人がすぐに取り尽くしちまうよ!!』

アルミン『いいや! 取り尽くせないほど「海」は広いんだ!』

エレン『……んなわけ…』

アルミン『………………』キラキラ

エレン『…!!』

アルミン『塩が山ほどあるだけじゃない!!』

アルミン『炎の水!』

アルミン『氷の大地!』

アルミン『砂の雪原!』

アルミン『きっと外の世界はこの壁の中の何倍も広いんだ!』




238: 2014/08/17(日) 09:30:21.81 ID:BzzgDJf20




エレン『外の世界…』

アルミン『エレン!』








アルミン『いつか…外の世界を』

アルミン『探検できるといいね…』








239: 2014/08/17(日) 09:35:17.06 ID:BzzgDJf20








「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『オマエラ、おはようございます!
     朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノクマ『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』








240: 2014/08/17(日) 09:40:17.33 ID:BzzgDJf20
CHAPTER 02 

DAY 06




アルミン「………………」




アルミン(不思議と気分は爽やかだった)

アルミン(なんだかすごく…懐かしい夢を見た気がする)




アルミン「………………」




アルミン(……本か…)

244: 2014/08/24(日) 05:00:50.55 ID:mpQWIdzp0
― 書庫 ―




アルミン「ア、アニ!?」

アニ「…何をそんなに驚いてるの」

アルミン「い、いや…」

アニ「…私が本を読んでるのがそんなに意外?」

アルミン「そ、そうじゃなくて…
     てっきり誰もいないと思ってたから…」

245: 2014/08/24(日) 05:05:26.24 ID:mpQWIdzp0
アルミン(お目当ての場所には先客がいた)

アルミン(アニが薄暗い空間にひっそりと佇み、本を読みふけっていたのだ)




アニ「そういうあんたはどうしてここに?」

アルミン「えっ…」




アルミン(昔の思い出を夢に見て…なんて言えないよな)

アルミン(僕が答えに窮していると、アニがそのまま続けた)




アニ「…ま、正直来るんじゃないかと思ったけどね」

アニ「あんたってこういうの好きそうだし」

246: 2014/08/24(日) 05:30:20.15 ID:mpQWIdzp0
アニ「私の事は気にしなくていいから、何冊か持ってったら?」

アルミン「えっ…」

アニ「午後からは昨日の話し合いの続きがあるし、
   ゆっくり読むなら今のうちだよ」

アルミン「あっ…うん」




アルミン(アニに促されるように、慌てて本棚に目を走らせる)

アルミン(あの時の本がここにあるとは思わなかったが、
     他に面白そうなものがあれば持って行こうと思っていた)

247: 2014/08/24(日) 05:35:19.24 ID:mpQWIdzp0
アルミン(…それにしても、すごい数だ)

アルミン(医療、兵法、科学、法律、言語…
     それらの専門書がジャンル毎に分けられ、所狭しと並んでいる)

アルミン(専門書の他にも、大衆小説や
     子ども向けのおとぎ話まで揃えてあるようだ)




アルミン「でも、汚いな…」




アルミン(それらの本は例外無く、びっしりと埃を被っていた)

アルミン(ちゃんと手入れをしていなかったんだろうか)

248: 2014/08/24(日) 05:40:19.35 ID:mpQWIdzp0
アニ「…アルミン」

アルミン「………………」

アニ「…アルミンってば」

アルミン「えっ、呼んだ?」

アニ「…何をボーッとしてるの」

アルミン「ご、ごめん…本を探すのに夢中でさ…」

249: 2014/08/24(日) 05:45:16.43 ID:mpQWIdzp0
アルミン(慌ててアニに視線を戻す)

アルミン(すると、僕はそこで初めて、
     彼女の手に何かが握られているのに気付いた)




アルミン「アニ、それは…?」

アニ「ん? ああ、ペンだけど」

アルミン「まさか本に書き込んでるのっ!?」

アニ「…そうだけど。悪い?」

アルミン「悪いに決まってるって!
     そんなの…本に対する冒涜だよ!」

アニ「…………別にいいじゃない。こんなの誰も読まないだろうし」

250: 2014/08/24(日) 05:50:18.91 ID:mpQWIdzp0
アニ「そんな事より…」

アルミン「そんな事!?」

アニ「……そんな事より、ちょっと気になってる事があるんだけど」




アルミン(僕の剣幕にやや引き気味のアニだったが…)

アルミン(気を取り直すように咳払いをすると、
     色を落としたトーンでこう続けた)

251: 2014/08/24(日) 05:55:17.96 ID:mpQWIdzp0








アニ「どうしてこの施設には、出口が無いんだろうね?」








252: 2014/08/24(日) 06:00:14.90 ID:mpQWIdzp0
アルミン「……えっ?」

アニ「モノクマの話だと、私たちは
   この施設に保護されたって事になってるよね?」

アルミン「保護っていうか…監禁だよね」

アニ「どちらにしても、モノクマは私たちを
   外部からこの施設内に運び入れる必要があったはずだよ」

アニ「それなのに、この施設には…
   私たちを運び入れたと思われる【入口】すら存在しない」

253: 2014/08/24(日) 06:05:19.93 ID:mpQWIdzp0
アルミン(アニの言いたい事がわかってきた)




ライナー『どこを掘っても同じだった。おそらく、
     地下3メートル付近に【巨大な鉄板】か何かが敷かれているんだろうな』




アニ『そう…それがこの施設の特徴なんだよ。
   言ってみれば、【屋外をそのまま建物で囲った構造】をしているんだ』




アルミン(この施設は、言ってみれば“フタの無い箱”だ)

アルミン(四方八方を囲われ、扉らしきものも付いていない)

アルミン(唯一、出口と思われた赤い扉も、
     結局は裁判場へと続く昇降機の入口だった)

254: 2014/08/24(日) 06:10:17.07 ID:mpQWIdzp0
アルミン(つまり、この施設には外部へと繋がるルートが無い)

アルミン(すると、『黒幕はどこから僕たちをここに閉じ込めたのか』
     という問題が生じてくる)




アルミン「でも逆に言えば、そのルートさえ判明すれば
     ここから出られるかもしれない」

アルミン「アニが言いたいのはそういう事だよね?」

アニ「………………」

アルミン「やっぱり見落としてるんじゃないかな?
     地面だって全部掘ったわけじゃないし、隠し扉がある可能性もあるよ」

アニ「……そうかな」

255: 2014/08/24(日) 06:15:23.08 ID:mpQWIdzp0
アルミン「何にせよ、脱出する手段があるのは確実だと思うよ」

アルミン「“卒業”っていうルールがある以上、
     モノクマはクロを外に出さなきゃいけないはずだから」

アニ「………………」

アルミン「それにアニも言ってたけど、
     モノクマの話が全部本当だって決まったわけじゃない」

アルミン「外の世界が壊滅したなんて…
     僕たちに頃し合いを促すためのでっち上げに決まってるよ」

アニ「………………」

アルミン「外の世界がどうなってるのか確かめる為にも…
     みんなで協力して脱出する手段を探すんだ」

アルミン「そうすればきっと…」

256: 2014/08/24(日) 06:20:19.18 ID:mpQWIdzp0
アニ「…………本当に」

アルミン「?」

アニ「本当にそれで見つかるかな」

アルミン「えっ…」

アニ「私、思うんだけどさ…」




アニ「出口はもう…とっくに見つかってたりして」

257: 2014/08/24(日) 06:25:21.76 ID:mpQWIdzp0
アルミン「…………えっ」

アニ「………………」

アルミン「それって…」

アニ「………………」

アルミン「それってどういう…」

258: 2014/08/24(日) 06:30:18.93 ID:mpQWIdzp0
バンッ




サシャ「アルミン!アニ!」

サシャ「ここにいたんですか!!」

アルミン「…! サ、サシャ…?」

サシャ「大変なんです!大変なんです!」

アニ「…落ち着きなよ。一体どうしたの」

サシャ「ク…クリ…クリクリ…」








サシャ「クリスタが氏んじゃいます!!」








262: 2014/08/31(日) 12:03:41.88 ID:XNLjjqS10
― ライブハウス 前 ―




アルミン(サシャに連れてこられたのはライブハウスだった)




サシャ「●△※◎◆○▽~!!」




アルミン(目前の建物を指さしながら、サシャが何かを叫んでいる)

アルミン(相当パニックに陥っているのか、もはや言語を成していない)

263: 2014/08/31(日) 12:05:32.71 ID:XNLjjqS10
アルミン「ここに…クリスタがいるんだね!?」




アルミン(僕の問いかけに、頭が千切れんばかりに頷くサシャ)

アルミン(どうやら間違いないようだ)




アルミン「急ごう! 早く中に!」

アニ「………………」

264: 2014/08/31(日) 12:10:22.81 ID:XNLjjqS10
― ライブハウス ―




クリスタ「ごぶっ…!? ごぼぼ…ごはっ…!」

ユミル「あんだよクリスタぁ~、遠慮すんなってぇ~」

クリスタ「うっ…げほっ、げほっ、げほっ!!」

ユミル「ん~? それとも何かぁ~」

ユミル「私の酒はぁ… 呑めねえってのかぁ~!?」

クリスタ「んんっ! んんん~っ!!」

265: 2014/08/31(日) 12:15:26.49 ID:XNLjjqS10
アルミン(僕がそこで見たのは…)

アルミン(地獄絵図だった)




ジャン「んあ…? おー、アッルミーン!」

ジャン「おいこらベルトルトぉ! アルミン様がお見えだぁ!」

ベルトルト「………………」ダラー

ジャン「もしもーし? ベルトルトさぁん?
    アルミンだぜアルミン、サシャとアニもいるぞぉ」

ベルトルト「………………」ダラー

ジャン「んー? あれー? エレンとミーナもいるぞぉ!?」

ジャン「お前ら氏んだんじゃなかったのかよー、ぎゃははははは!!」

266: 2014/08/31(日) 12:31:03.59 ID:XNLjjqS10
アニ「…サシャ、これはどういう事?」

サシャ「え、えーっとですね…
    話せば長くなるんですが…」




クリスタ『ライブハウスだよ。
     演奏用のステージがある宴会向けの建物ってところかな』

ユミル『楽器からパーティ用の小道具まで色んな物が揃ってたが、
    中でも一番目を引いたのが…』

ジャン『…何だよ、ニヤニヤしやがって』

ユミル『…まあ、これは自分で確かめてみた方がいいんじゃないか?
    少なくとも悪い物ではなさそうだからよ』




サシャ「私、昨日のユミルの言葉が気になって…
    それでユミルにしつこく聞いてみたんです」

サシャ「最初は鬱陶しそうにしてたんですけど、
    だんだんと諦めたようになってきて…」

サシャ「それで、『じゃあ見せてやる』って言われて…
    クリスタと一緒に連れてきてもらって…」

267: 2014/08/31(日) 12:32:38.22 ID:XNLjjqS10
アルミン(このライブハウスにはバーが併設されている)

アルミン(内装はかなり洒落ていて、お酒を嗜みながら
     ステージを鑑賞できるようになっているらしい)

アルミン(ユミルの言っていた“一番目を引いたもの”とは、
     まさにそれだったのだ)




サシャ「それで…ユミルがそのままお酒を飲み始めて…」

サシャ「わ、私は止めたんですよ!? こういうのは大人が飲むものだし、
    午後からは話し合いの続きもあるからって!」




アルミン(クリスタもユミルを止めようとしたが、
     ユミルに強引にお酒を飲まされ…)

アルミン(そのうち、騒ぎを聞きつけた他の連中もやってきたが、
     そのほとんどがミイラ取りがミイラ状態…)

アルミン(サシャの話をまとめると、こういう事だった)

270: 2014/09/07(日) 10:00:38.08 ID:TNoxzqpq0
サシャ「と、とにかくみんなを止めてください!
    私一人じゃどうにもならないんです!」

アルミン「止めてって言われても…」




アルミン(僕は改めて目の前の光景を見る)

アルミン(クリスタにお酒を流し込むユミル、
     必氏にそれを拒絶するクリスタ…)

アルミン(高笑いを続けるジャン、
     バーカウンターに突っ伏すベルトルト…)

アルミン(一人豪快に酒瓶をあおるライナー…)




ライナー「んごッ!?」

アニ「………………」




アルミン(…を無言で締め上げるアニ)

271: 2014/09/07(日) 10:05:18.94 ID:TNoxzqpq0
アルミン(そ、そうだ… 困惑してる場合じゃない)




ユミル「色っぽいぞ~!クリスタぁ~!」

クリスタ「んぐっ…んんん~っ!!」




アルミン(あのままでは本当にクリスタが氏んでしまう)

アルミン(せめて…ユミルだけでも止めないと!)

272: 2014/09/07(日) 10:10:30.53 ID:TNoxzqpq0
アルミン「ユミル!」




アルミン(僕がユミルに駆け寄ろうとした時だった)




パリーン




アルミン(“それ”は…)

アルミン(突如として始まった)

273: 2014/09/07(日) 10:15:22.89 ID:TNoxzqpq0
ジャン「…ッ!?」




アルミン(騒然としていたハウス内は一瞬にして静まり返った)

アルミン(一体何が起こったのか…
     それを理解するまで、全員が数秒を要した)

274: 2014/09/07(日) 10:20:42.65 ID:TNoxzqpq0
アルミン(そしてそれを理解したとき…)

アルミン(誰もが目を疑った)




コニー「………………」




アルミン(コニーが酒瓶で…)

アルミン(ジャンに殴りかかったのだ)

278: 2014/09/14(日) 17:15:45.67 ID:ckxjLb7k0
ポタッ




コニー「なん…で…だよ…」

コニー「なんで…酒なんて飲んでいられるんだよ…」




ポタポタ




コニー「なんで…この状況で…」

コニー「笑っていられるんだよッ…!」

279: 2014/09/14(日) 17:20:23.06 ID:ckxjLb7k0
アルミン(溜りに溜まった鬱憤を吐き出すように、
     どす黒い何かをぶちまけるように…)

アルミン(ずっと無言だったコニーの口から、
     一気に言葉が溢れ出した)




コニー「お前ら今の状況わかってんのかよ!?」

コニー「わけわかんねー場所に閉じ込められてんだぞ!?
    その中で頃し合いをさせられてるんだぞ!?」

コニー「調査兵団が全滅したとか、人類が氏滅したとか、
    そんな話聞かされて…」

コニー「つい一昨日も…仲間が2人氏んだんだぞ!!」

280: 2014/09/14(日) 17:35:22.34 ID:PJODlQnx0
コニー「午後から話し合いやるんじゃねーのかよ!?
    黒幕に立ち向かうんじゃねーのかよ!?」

コニー「『今の俺たちに必要なのは“団結力”』だって!?
    そんな状態で…」

ジャン「…あー」

コニ―「!」

ジャン「オレ殴られたのか…?
    んー、でもあんま痛くねーな」

ジャン「逆になんかいい気分だわ…ぶははははは!!」

281: 2014/09/14(日) 17:45:29.12 ID:PJODlQnx0
コニー「な、何がいい気分だ… 能天気なこと言いやがって…」

ジャン「お前には言われたくねーよ」

コニー「あ…?」

ジャン「モノクマの話を聞いただけで落ち込んでよ」

ジャン「エレンを亡くしたミカサはともかく…
    お前は他の奴らと同じ状況にあるのによぉ」

ジャン「一人で勝手に塞ぎ込んで、ろくに発言も探索もせずに
    周りの足を引っ張り続ける」

ジャン「能天気なのは果たしてどっちなんだろうな」

282: 2014/09/14(日) 17:50:30.30 ID:PJODlQnx0
アルミン(ジャンはもう笑っていなかった)

アルミン(頭部から流れ出した血が顔面を垂れ、
     その表情を真紅に染め上げる)

アルミン(その様子はまるで…エレンのようだった)




ジャン「久しぶりに口を開いたと思ったら、
    わかり切った事ばっかり言いやがって…」

ジャン「ギャーギャー喚く暇があったら現状を打開する努力をしろよ」

ジャン「酒の力に頼りたくなるくらい、現実と向き合ってみろよ」

ジャン「何が母ちゃんだ… 情けねー。
    まだ乳離れできてねーのか」

283: 2014/09/14(日) 18:00:27.49 ID:PJODlQnx0
プチン




アルミン(何かが切れる音がした)




コニー「…お前…今…なんつった」

ジャン「んー? 聞こえなかったのか?」

ジャン「コニーとかいうマルコメくんは
    どうしようもねーマザコン野郎だって言ったんだよ」

ジャン「いや待てよ…親父や兄弟の事も恋しがってたから、
    単なるマザコンじゃねーな」

ジャン「ファミリーコンプレックスだからファミコンか?
    ぎゃはははははははは!!」

284: 2014/09/14(日) 18:05:17.72 ID:PJODlQnx0
アニ「やめときな」

ジャン「あん? 何だよアニ、止めるんじゃ…」

アニ「あんただよコニー」

ジャン「あ…?」

アニ「そんなので斬りつけたら…
   いくらなんでもジャンが氏ぬよ」

285: 2014/09/14(日) 18:10:20.11 ID:PJODlQnx0
アルミン(僕はコニーを見た)

アルミン(その目は飛び出しそうなほど見開かれ、
     まっすぐにジャンを捉えていた)

アルミン(額には血管が浮かび、歯はギチギチと噛み合され…)

アルミン(わなわなと震える手元には、割れた酒瓶が握られている)

288: 2014/09/17(水) 18:00:36.00 ID:y/XRwyp80
アニ「…どいつもこいつも情けないね」




アルミン(アニが表情を変えずに言う)




アニ「コニー、昨日言った事をもう忘れたの?」

アニ「不安なのも苦しいのもあんただけじゃない。
   家族に会えないのはみんなも同じ」

アニ「塞ぎ込む気持ちはわからなくもないけど…
   みんな必氏に耐えてるんだよ」

コニー「…ッッ!!」

289: 2014/09/17(水) 18:05:22.64 ID:y/XRwyp80
アニ「ジャン、あんたも言い過ぎだよ」

アニ「いくら現実と向き合っても酒に頼ったら無意味さ。
   逃げ以外の何でもない」

アニ「それで結果が良くなるどころか…
   あんたは最悪の結末を引き起こそうとしてる」

ジャン「………………」

アニ「他の奴らも同じだよ。揃いも揃って…」

290: 2014/09/17(水) 18:15:17.31 ID:y/XRwyp80
ユミル「…何なんだよ」

アニ「?」

ユミル「前から気に入らなかったんだ…
    一人だけ澄ました顔しやがって」

アニ「…私の事?」

ユミル「そうだよ。この際だから言ってやろうか」

291: 2014/09/17(水) 18:20:20.50 ID:y/XRwyp80








ユミル「【裏切り者】ってのは… お前なんじゃないのか?」








292: 2014/09/17(水) 18:25:26.90 ID:y/XRwyp80
アルミン「…!?」

ユミル「思わせぶりな言動、一人だけ先を行ってるような態度…」

ユミル「記憶喪失の件だってそうだ。
    こいつはモノクマの話を聞く前から、誰よりも早く気付いてた」

アニ「………………」

ユミル「なあ、アニさんよ… 本当はどうなんだ?」

ユミル「お前は“気付いた”んじゃなくて…
    “最初から知ってた”んじゃないのか?」

293: 2014/09/17(水) 18:30:20.23 ID:y/XRwyp80
アルミン「ユミル、何言って…!?」




アルミン(僕は思わずアニを見た)




アニ「………………」




アルミン(アニは全く表情を変えない)

アルミン(ユミルの言葉を肯定するわけでもなく、
     かといって否定するわけでもなく…)

アルミン(ただまっすぐに、ユミルの目を見つめ返している)

294: 2014/09/17(水) 18:35:21.43 ID:y/XRwyp80
アルミン(その時、僕は気付いた)

アルミン(僕を含めた全員の視線が、
     いつの間にかアニに向けられていたことに)




アニ「………………」




アルミン(そして同時に… 僕は理解してしまった)

アルミン(僕らの中に芽生えた“新たな感情”を…)

295: 2014/09/17(水) 18:40:23.28 ID:y/XRwyp80
アルミン(そうだ…)

アルミン(僕たちは怖いんだ…)




モノクマ『…あのねえ、アルレルトくん。
     何度も同じ事言わせないでくれる?』

モノクマ『仮にそうだとしても、
     イェーガーくんを頃したのはカロライナさんでしょ?』

モノクマ『ボクに唆されたからって、
     踏みとどまらずに実行しちゃったのはあの女でしょ?』




296: 2014/09/17(水) 19:00:17.29 ID:y/XRwyp80
アルミン(殺人なんて起きるわけないと思っていた)

アルミン(同じ志を持った訓練兵として、
     同じ境遇に陥った仲間として…)




モノクマ『互いの素性を何も知らないクセに』




アルミン(先の見えない生活でも、僕らは協力し合えると…
     何とかなるはずだと思い込んでいた)

297: 2014/09/17(水) 19:05:18.24 ID:y/XRwyp80
アルミン(でも、現実は甘くなかった)




ミーナ『みんな…信じてよ!』

ミーナ『私は人類の為に!!みんなの代わりに!!』




アルミン(僕らを出し抜いて…
     1人だけ助かろうとした人間がいた)




モノクマ『なぜならオマエラはそういう生き物であり…
     これからボクが提示する“あるモノ”に、必ず喰いつくはずだから!』




298: 2014/09/17(水) 19:10:18.54 ID:y/XRwyp80
アルミン(そうだ…)

アルミン(僕らはあの時…思い知ったんだ…)




モノクマ『キミはさっきこう言ったけど、そうじゃないでしょ?
     オマエラが本当に痛感したのは…』




アルミン(仲間を亡くした悲しみじゃない。黒幕に対する怒りでもない)

アルミン(僕らが本当に痛感したのは…)

299: 2014/09/17(水) 19:15:19.39 ID:y/XRwyp80








モノクマ『“こんなにも簡単にコロシアイが起きる”…そういう事でしょ?』








303: 2014/09/24(水) 19:00:38.90 ID:wtLeCC8v0
アルミン(“恐怖”…それが正解だった)

アルミン(僕たち全員を支配していた感情は、氏への怯えだった)




ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!




アルミン(ミーナが泣きながら石を振り下ろす)

アルミン(自分の行為を理解できないまま、何度も何度も振り下ろす)

304: 2014/09/24(水) 19:05:17.39 ID:wtLeCC8v0
アルミン(すると、悲痛な叫びは変わっていく)

アルミン(狂気の笑い声に変わっていく)

アルミン(ゲラゲラと笑いながら… 僕の親友を肉塊にしていく)




モノクマ『そう、それでいいんだよ』

モノクマ『言ったでしょ。オマエラはそういう生き物だって』




アルミン(次は自分の番かもしれない)

アルミン(隣のヤツが自分を狙っているかもしれない)

アルミン(仲間とか言っておきながら、本当は自分が助かりたいだけ)

アルミン(何を考えているかわかったもんじゃない)

305: 2014/09/24(水) 19:25:16.90 ID:wtLeCC8v0
アルミン(負のイメージが駆け巡る)

アルミン(いくら頭を振っても…ミーナは笑うのを止めてくれない)




『我慢なんてしなくていいよ』

『みんなも一緒にどう?』

『私と一緒に楽になろうよ』




306: 2014/09/24(水) 19:30:21.75 ID:wtLeCC8v0
アルミン(コニーの右手にはまだ酒瓶が握られていた)

アルミン(ナイフのように尖った先端からは、赤い液体が滴り落ちている)

アルミン(果実酒とジャンの血が混ざりあったドロドロの水溜り…)




ジャン「………………」




アルミン(真っ赤な顔面にジャンの目が光る)

アルミン(それは狂気の寸前の…ひどく怯えた眼差しだった)

307: 2014/09/24(水) 19:35:17.23 ID:wtLeCC8v0
アルミン(そして気が付くと…)

アルミン(みんなが同じ目をしていた)




コニー「………………」

ユミル「………………」

ライナー「………………」

クリスタ「………………」




アルミン(張り詰めた空気)

アルミン(誰も何も話さない)

308: 2014/09/24(水) 19:40:26.30 ID:wtLeCC8v0
アルミン(僕は悟った)

アルミン(これからここで…取り返しのつかない事が起きる)

アルミン(膨れ上がった恐怖が、この場所で惨劇を生む)




『怖がらなくていいんだよ』

『きっと良い気持ちになれるから』




309: 2014/09/24(水) 19:45:18.55 ID:wtLeCC8v0
アルミン(もう後戻りはできない)

アルミン(誰かが少しでも動けば、そこで狂気が爆発する)




アニ「………………」




アルミン(そして唐突に…)

アルミン(“それ”は始まった)

310: 2014/09/24(水) 19:50:36.90 ID:wtLeCC8v0








サシャ「パーティーを開きましょう!!」








313: 2014/10/02(木) 16:40:36.35 ID:w3SDqlxS0
CHAPTER 02 

DAY 08




ジャン「よう」

アルミン「ジャン! 寝てなくていいの!?」

ジャン「あー、正直ちょっとズキズキするけどよ。
    だいぶ良くなったぜ」

ジャン「看病してくれたクリスタに感謝しねえとな」

314: 2014/10/02(木) 16:45:18.75 ID:w3SDqlxS0
アルミン(ジャンの頭には包帯が何重にも巻かれていた)

アルミン(ここ2日だけでも、だいぶ痩せたように見える)




アルミン「やっぱりまだ安静にしてた方が…」

ジャン「バカ野郎。みんな準備してんのに1人だけサボれっかよ」

ジャン「明日なんだろ? 例のパーティーは」

アルミン「うん…」

315: 2014/10/02(木) 16:50:17.35 ID:w3SDqlxS0
CHAPTER 02 

DAY 06




ジャン『………………』

ジャン『…は?』

サシャ『パーティーです! パーティーを開きましょう!』

コニー『…パーティー?』

サシャ『そうです! 美味しい料理をたくさん並べて、
    みんなでパーッとやりましょう!』




316: 2014/10/02(木) 16:55:16.11 ID:w3SDqlxS0




ユミル『…何言ってんだ。こんな時に…』

サシャ『こんな時だからこそですよ!』

サシャ『ズバリ! 最近のみんなの気持ちがブルーなのは、
    楽しいイベントが無かったせいです!』

サシャ『訓練やサバイバルなんてもうこりごり!
    さあ、こんな真っ暗な生活なんて抜け出しましょう!』

アルミン『サ、サシャ…?』




317: 2014/10/02(木) 17:00:16.73 ID:w3SDqlxS0




サシャ『うーん、どうせやるなら早い方がいいですよね。
    でも準備とかもあるでしょうし…』
    
サシャ『じゃあ3日後!3日後にしましょう!場所はここで!』

ライナー『お、おい、何勝手に…』

サシャ『準備する物については私が独断でまとめました!
    今から人数を分けますから、自分たちの担当をこなしてきてください!』




320: 2014/10/05(日) 22:35:16.82 ID:tBDGyQMy0
ジャン「サシャの奴、急におかしな事言いやがって…」




アルミン(ジャンはそう毒づきながら、僕のところへ近付いてくる)




ジャン「【会場設営係】でいいんだよな。オレたちは」

アルミン「うん…」

321: 2014/10/05(日) 22:40:34.39 ID:tBDGyQMy0
アルミン(ジャンは箒を手に取ると、僕と正反対の方向から床を掃き始めた)




ジャン「………………」




アルミン(箒で掃いた床を雑巾で拭き、客席やバーカウンターもきれいにする)

アルミン(掃除が一段落すると、今度は
     あらかじめ作っておいた装飾品を天井や壁に貼り付けていく)




アルミン「………………」




アルミン(慣れない作業だったけど、淡々とこなしていった)

アルミン(ただ黙々と…ライブハウス内を飾り付けていった)

322: 2014/10/05(日) 22:45:25.67 ID:tBDGyQMy0
ジャン「…全然パーティーなんて雰囲気じゃねえよな」

アルミン「え?」

ジャン「パーティーってのは普通、何かを祝うときにするもんだろ?」

ジャン「誕生祝いとか、卒業祝いとか、
    出世祝いとか、結婚祝いとか…」

ジャン「…この状況で一体何を祝えっていうんだよ」

323: 2014/10/05(日) 22:50:27.15 ID:tBDGyQMy0
アルミン「…仲直り祝い、とか」

ジャン「あ?」

アルミン「仲直り祝いとかどう?
     ジャンとコニー…ううん、僕たち全員のさ」

ジャン「………………」

アルミン「サシャも多分…
     その為にパーティーなんて考えたんじゃないかな」

324: 2014/10/05(日) 23:00:29.85 ID:tBDGyQMy0
アルミン「みんなだってきっと、仲直りしたいって思ってるはずだよ」

アルミン「だってさ… サシャのパーティーに反対した人、
     結局一人もいなかったでしょ?」

アルミン「きっとコニーだって…」

ジャン「やめろよ」

アルミン「え?」

ジャン「オレはまだ…あいつを許した訳じゃねえぞ」

327: 2014/10/11(土) 13:50:22.10 ID:brXJ4DIk0
アルミン(ジャンがギリリと歯を噛んだ)

アルミン(頭部の痛みか、コニーへの恨みか…
     その表情はとても歪んでいる)




ジャン「なあアルミン…お前だって見ただろ?」

ジャン「俺は酒を飲んでただけなんだぜ?」

ジャン「そんな状況で…急に殴りかかるヤツがあるかよ」

328: 2014/10/11(土) 13:55:21.70 ID:brXJ4DIk0
アルミン「…僕だって、あれはさすがにやり過ぎだと思う」

アルミン「でも、コニーだけが悪い訳でもないよ。
     ジャンにだって非はあるでしょ?」

ジャン「………………」

アルミン「家族をあんな風に言われたら…誰だって怒るよ」

329: 2014/10/11(土) 14:00:17.07 ID:brXJ4DIk0
アルミン(ジャンの表情は歪んだままだ)




アルミン「…やっぱり僕らはどうかしてるんだ」

アルミン「ミーナの裁判からみんなおかしくなってる。
     仲間が2人殺されて、変な事を色々言われて…」

アルミン「みんな…すごく怯えてるんだよ」

ジャン「………………」

330: 2014/10/11(土) 18:15:34.56 ID:zu6VPdLc0
アルミン「でも、それもこれも…悪いのは全部黒幕なんだ」

アルミン「きっとあいつは狙ってたんだ。
     僕たちが疑心暗鬼になって、互いを貶め合っていくのを…」

アルミン「そして… 次のコロシアイが起こるのを」

ジャン「………………」

アルミン「だからさ、ジャン…」

331: 2014/10/11(土) 18:20:18.13 ID:zu6VPdLc0








「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『えー、施設内放送でーす』

モノクマ『えまーじぇんしー、えまーじぇんしー!』

モノクマ『オマエラ訓練兵諸君は、至急、
     訓練所にお集まりくださーい!』

モノクマ『ほら、急げっ! いち早く来た訓練兵には、
     特製スープを振舞っちゃうよ!』

モノクマ『やれ急げっ!』








333: 2014/10/13(月) 16:45:22.36 ID:+EQlf1UB0
― 訓練所 ―




アルミン(訓練所には、すでにみんなが集まっていた)




ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ユミル「………………」

クリスタ「………………」




アルミン(どことなくぎこちない空気…)

アルミン(やっぱりみんな…引きずってるんだ…)

334: 2014/10/13(月) 16:50:22.18 ID:+EQlf1UB0
サシャ「ひゃっほう!私が一番でしたよ!スープは私のものですからね!」




アルミン(…いつも通りの人もいるけど)




アニ「…ねえ、いつまで待たせるつもり?こっちも暇じゃないんだけど」

ジャン「モノクマ、いるんだろ!さっさと出てきやがれ!」

335: 2014/10/13(月) 16:55:24.31 ID:+EQlf1UB0
~♪
~♪


~~♪
~~♪


~~~~♪
~~~~♪




ポヨヨーン




モノクマ「はいはーい、お待たせしました!ミラクルお待たせしました!」




336: 2014/10/13(月) 17:00:16.71 ID:+EQlf1UB0
サシャ「モノクマ!一番乗りは私でしたよ!つまり、スープの所有権は私にあります!」

モノクマ「慌てない、慌てない。モノクマ特製のモノクマスープなら、
     明日のパーティーにちゃんと振舞うからさ」

ベルトルト「モノクマスープ…?」

モノクマ「正体不明の肉と萎れた野菜と謎のブイヨンベースで作った、
     超デリシャスなスープ!」

ライナー「その素材からデリシャスって言葉を全く感じないんだが…」

337: 2014/10/13(月) 17:05:18.67 ID:+EQlf1UB0
クリスタ「ていうか…パーティーのこと知ってたの?」

モノクマ「もちろん!オマエラのことなら何でもお見通しやで!」

モノクマ「オマエラがこぞって訓練をボイコットしていることも…」

モノクマ「浮気が発覚した熟年夫婦ばりの冷戦状態にあることも…」

モノクマ「監督教官のボクを差し置いて、
     酒地肉林の乱交パーティーを開こうとしていることも…」

モノクマ「なんとうらやまけしからん!」

338: 2014/10/13(月) 17:10:19.13 ID:+EQlf1UB0
アニ「用件は何?」

モノクマ「あ、なんか怒ってる。
     もしかして下ネタ耐性ゼロだった?乱交って言葉に…」

アニ「用件は何?」

モノクマ「……あーもうわかったよ。言えばいいんでしょ言えば」

モノクマ「でも何だかショックだなあ…
     軽いジョークにも付き合ってもらえないなんて…」

モノクマ「せっかく、とっておきのプレゼントを用意したのに…」

339: 2014/10/13(月) 17:15:24.44 ID:+EQlf1UB0
アルミン「…プレゼント?」

モノクマ「おっ、食いついてくれましたね? お腹を空かせた赤ん坊が
     お乳にむしゃぶりつくように、案の定食いついてくれましたね?」

モノクマ「そーなんです!クマ一倍心の優しいボクは、
     可愛い教え子であるオマエラの為に…」

モノクマ「とっておきのプレゼントをご用意したのです!」

340: 2014/10/13(月) 17:20:14.86 ID:+EQlf1UB0
サシャ「…なんか、イヤな予感しかしないんですけど…」

ジャン「…プレゼントとか言って、どうせまたロクでもない物だろ」

モノクマ「失敬な!せっかくの楽しいパーティーをぶち壊すような物を
     このボクが送るとでも!?」

クリスタ「むしろ他にどんな可能性が…」

モノクマ「違うよ!だってこれは、オマエラがずっと欲しがっていた物だもん!」

341: 2014/10/13(月) 17:25:15.66 ID:+EQlf1UB0
アルミン(…僕らがずっと欲しがっていた物?)



ユミル「…で、そのプレゼントってのは何なんだよ」

ライナー「見たところ、お前は何も持っていないようだが…」

モノクマ「あーうん、それなんだけどさ」

モノクマ「実はもうあげちゃったんだよね」

クリスタ「…え?」

342: 2014/10/13(月) 17:30:14.96 ID:+EQlf1UB0








モノクマ「オマエラの残りの記憶」








346: 2014/10/15(水) 19:30:59.09 ID:t/n+5/QS0
アルミン「………………」

アルミン「…は?」

モノクマ「ほら、この前に言ったじゃない」




モノクマ『オマエラは元々、全ての記憶が無い状態だったんだよ?』

モノクマ『それを心優しいボクが保護して、
     なんとか訓練兵団入団直前の記憶まで戻してあげたってわけ』




モノクマ「オマエラは言わば、“記憶を途中まで取り戻した状態”だった訳だけど…」

モノクマ「暗黒魔道士の異名を持つボクが全魔翌力を開放した結果…」

モノクマ「なんと!全ての記憶を戻すことに成功したのです!」

347: 2014/10/15(水) 19:35:20.18 ID:t/n+5/QS0
コニー「…!?」

モノクマ「うぷぷ…どう? 完全体になった感想は?」

モノクマ「青空のマントを広げて大草原を歩くような気分でしょう?
     生き別れの母親と再会したような満ち足りた気持ちでしょう?」

モノクマ「やっぱりパーティーといえばサプライズだもんね!
     これ以上ない最高の贈り物だったでしょ?」

348: 2014/10/15(水) 19:40:22.27 ID:t/n+5/QS0
アニ「全ての記憶を…戻した…?」




アルミン(意味がわからなかった)

アルミン(僕らの“ほとんど”がこの状況を呑み込めていなかった)

アルミン(だって…)




アルミン「ちょ、ちょっと待てよ!」

モノクマ「はい?」

アルミン「お前の言ってる事はおかしい! だって…」

アルミン「だって僕は… 記憶が戻ってない!」

349: 2014/10/15(水) 19:45:25.59 ID:t/n+5/QS0
アルミン(当然の反論だった)

アルミン(僕は記憶を戻された憶えもないし、何も思い出していない)

アルミン(いや…“何も変わっていない”が正解だろうか)




モノクマ「うぷぷ…何それ? 演技?」

アルミン「は…?」

モノクマ「演技上手いねえ、アルレルトくん。俳優目指したら?」

モノクマ「でもそれくらいやんなきゃダメかー。
     記憶を戻されたのが自分だってバレたら色々とまずいもんね」

350: 2014/10/15(水) 19:55:19.70 ID:t/n+5/QS0
アルミン「な、何言ってるんだよ…? 僕は演技なんて…」

サシャ「て、ていうか…さっきから全然話が見えないんですけど…」

モノクマ「んもう!本当にニブチンだなあ!」

モノクマ「いーい?要するにね…」








モノクマ「“オマエラの中の1人”の記憶を全部戻したの!」








352: 2014/10/17(金) 19:00:24.18 ID:Hc5o+2T50
アニ「…!!」

モノクマ「つまり、オマエラの中の1人はもう全て思い出してるんだよ」

モノクマ「“本当の訓練生活”で学んだ立体機動のやり方も、
     そこで過ごした青春の日々も…」

モノクマ「失われた数年間の出来事も、そこで起こった
     “人類史上最大最悪の絶望的事件”のことも…」

モノクマ「そして、その人はちゃんと理解してるはずだよ」

モノクマ「ボクが言ってた事はウソじゃなかったって」

353: 2014/10/17(金) 19:05:24.06 ID:Hc5o+2T50




モノクマ『調査兵団が全滅したこと』

モノクマ『人類の大半が氏滅したこと』

モノクマ『全ての壁が破られたこと』

モノクマ『そして、オマエラが数年間の記憶を失っていること』








モノクマ『それらは全部、本当のことでーす!!』








サシャ「う、ウソです!そんなのウソに決まってますっ!」

モノクマ「ボクはウソつきじゃない!その自信がボクにはある!」
     
サシャ「だ、大体おかしいじゃないですか!
    記憶を消すだの戻すだの、簡単に言いますけど…」

サシャ「そんな事…一体どうやって実行したっていうんですか!?」

354: 2014/10/17(金) 19:10:16.42 ID:Hc5o+2T50
モノクマ「どうやって…?」

モノクマ「いやいやいや!
     そんな事はどうだっていいんだよ!」

モノクマ「催眠術って言えばリアリティーがあるの!?
     開頭手術で脳をいじったって言えば納得するの?」

モノクマ「そうじゃないでしょ!?
     問題は“そこ”じゃないはずだよ!!」

355: 2014/10/17(金) 19:30:14.89 ID:Hc5o+2T50
ユミル「問題は…私たちのどんな記憶を、どんな理由で戻したかってことか」

モノクマ「うんうん。どんな記憶かはさておき…」

モノクマ「どんな理由かは…もう察しがついてるんじゃない?」

クリスタ「…まさか」

モノクマ「うぷぷ、その通り」








モノクマ「それこそが… 次なるコロシアイの動機だからでーす!!」








356: 2014/10/17(金) 19:55:20.04 ID:Hc5o+2T50
コニー「な、何だよ…それ…」

コニー「なんで…記憶を戻したことが殺人の動機になるんだよ…」

モノクマ「スプリンガーくんも良い演技するねえ。
     そんな事は本人が一番よくわかってるクセに」

コニー「なっ…!?」

モノクマ「もちろん、みんなを欺いたクロには
     【巨人に関する重大なヒミツ】だってプレゼントするよ!」

モノクマ「記憶を取り戻した上に【重大なヒミツ】まで得られるなんて…
     お得感満載だよね~!」

357: 2014/10/17(金) 20:00:20.28 ID:Hc5o+2T50
アルミン(前回の殺人のきっかけは【重大なヒミツ】だった)

アルミン(ミーナは家族を助ける為に、
     【重大なヒミツ】を携えてこの施設から出ていこうとした)

アルミン(今回はそれに加えて…)

アルミン(記憶を取り戻したことが…動機に…?)




モノクマ「あれれ? そういえば…
     今気付いたけど、アッカ―マンさんが来てないね」

モノクマ「彼女はまだ塞ぎ込んでいるのかなあ。それとも…」

モノクマ「記憶を取り戻してコロシアイの準備をしているのかなあ!?」

358: 2014/10/17(金) 20:05:15.47 ID:Hc5o+2T50
アルミン「な、何言って…!?」

モノクマ「という訳で! ボクからのお話は以上です」

モノクマ「記憶が戻って良かったねえ。
     ウッキウキな気持ちで明日を迎えられるよね」

モノクマ「ん? ああ、心配しなくていいよ。
     ボクはパーティーに参加しないし、邪魔するようなこともしないから」

モノクマ「せいぜい楽しんできてね…
     パーティーの成功を祈ってるよ」

モノクマ「うぷぷぷぷ…」

モノクマ「アーッハッハッハッハッハ!!」




ポヨヨーン

361: 2014/10/21(火) 17:00:18.93 ID:DhPJ17zi0
アルミン(そうしてモノクマは姿を消した)

アルミン(困惑する僕らと、不気味な高笑いを残して…)




ジャン「…ッ」

ユミル「………………」




アルミン(…さっきよりも空気の重みが増した気がした)

アルミン(2日前のライブハウスのような重苦しさ…)

362: 2014/10/21(火) 17:05:19.22 ID:DhPJ17zi0
サシャ「…あのう」

ユミル「あ?」

サシャ「もしかしてこれって…チャンスなんじゃないですか?」




アルミン(そんな空気に割って入ったのは、またしてもサシャだった)




クリスタ「…チャンス?」

サシャ「もし、モノクマの言っていた事が本当ならですよ?」

サシャ「もし本当に、私たちの1人が記憶を完全に取り戻していたら…」

サシャ「それってつまり…
    私たちの知り得なかった情報を手に入れたってことですよね?」

363: 2014/10/21(火) 17:10:19.39 ID:DhPJ17zi0




モノクマ『調査兵団が全滅したこと』

モノクマ『人類の大半が氏滅したこと』

モノクマ『全ての壁が破られたこと』

モノクマ『そして、オマエラが数年間の記憶を失っていること』








モノクマ『それらは全部、本当のことでーす!!』








サシャ「本当に調査兵団が全滅したのか」

サシャ「本当に人類が氏滅したのか」

サシャ「本当に壁が破られたのか」

サシャ「私たちが記憶を失っている間に何があったのか…
    それが全部わかるってことですよね!?」

364: 2014/10/21(火) 17:15:18.49 ID:DhPJ17zi0
コニー「…そうだ…」

コニー「確かに…その通りだ…」

アニ「………………」

コニー「サシャの言うとおりだ!
    俺たちは記憶を取り戻したヤツに聞けばいいんだ!」

コニー「モノクマが言ってた事だけじゃない!
    俺たちが誘拐された理由やその犯人…」

コニー「記憶を完全に取り戻したのなら、全部知ってるはずだよな!?」

365: 2014/10/21(火) 17:20:19.18 ID:DhPJ17zi0
コニー「ははは…モノクマもよくわかんねー事するよな」

コニー「わざわざ自分が不利になるような情報を与えるなんてよ… すげーバカだよな」

ベルトルト「………………」

コニー「さあ、誰なんだ!? 教えてくれよ!」

コニー「どうして俺たちはこんな事に巻き込まれてんだ!?
    このだだっ広い施設は何なんだ!?」

コニー「モノクマの言ってた事は本当なのか!? もし本当だとしたら…」

コニー「俺の村は…俺の家族は無事なのか!?」

366: 2014/10/21(火) 17:25:23.20 ID:DhPJ17zi0
アルミン(僕らは待った)

アルミン(誰かが名乗り出てくれるのを待った)




コニー「だ、誰なんだ!? 早くしてくれよ!」





アルミン(だけど…)

367: 2014/10/21(火) 17:35:19.65 ID:DhPJ17zi0
アルミン(しばらく待っても…)

アルミン(どんなに待っても…)

アルミン(“記憶を取り戻した人間”が現れることはなかった)




コニー「な…」

コニー「なん…で…だよ…」

コニー「なんで…誰も何も言わねーんだよ!!」

370: 2014/10/24(金) 18:00:43.95 ID:YBseAuii0
ユミル「…それも演技か?」

コニー「は…!?」

ユミル「さっきモノクマが言ってただろ」




モノクマ『でもそれくらいやんなきゃダメかー。
     記憶を戻されたのが自分だってバレたら色々とまずいもんね』




ユミル「あの言い草…」

ユミル「“記憶が戻った人間はその事を言う訳がない”
    …そう確信しているようだった」

ユミル「演技をしてでも隠し通す必要があると…」

371: 2014/10/24(金) 18:10:26.76 ID:YBseAuii0
コニー「な…何言ってんだ! 俺は演技なんてしてねーぞ!」

ユミル「だったら証明できるか?」

コニー「しょ、証明…!?」

ユミル「できないだろ? できる訳ないよな?」

ユミル「お前だけじゃない。私を含めたここにいる全員が、
    自分の記憶が戻っていないことを証明できない」

ユミル「そしてさっき誰も名乗り出なかったのを見ると…わかるだろ?」

コニー「…っ!」

ユミル「不毛なんだよ。そういう議論自体がな」

372: 2014/10/24(金) 18:20:23.70 ID:YBseAuii0
サシャ「え、えっと…」

サシャ「つまりこれって… 
    誰かの記憶は戻ったけど、本人はそれを隠してるってことですよね?」

ユミル「そうだよ。それを確かめる術がないから不毛だって言ってるんだ」

ライナー「…いや、そうとも限らんぞ」

ユミル「あ?」

ライナー「まだ1人いるだろ。この場にいない人間が…」

373: 2014/10/24(金) 19:00:14.88 ID:YBseAuii0




モノクマ『彼女はまだ塞ぎ込んでいるのかなあ。それとも…』

モノクマ『記憶を取り戻してコロシアイの準備をしているのかなあ!?』




ジャン「…!! まさかミカサを疑ってんのか!?」

ライナー「落ち着けジャン。あくまで可能性の話だ」

ジャン「て、てめえ…!」

ベルトルト「…だけど、いずれにしてもユミルの言うとおりだね」

ユミル「………………」

ベルトルト「もしかすると、こうやって疑い合わせること自体が
      モノクマの目的なのかもしれないよ」

ベルトルト「本当は記憶を取り戻した人間なんていなかった…
      そういうオチだってあり得るんだし」

374: 2014/10/24(金) 19:05:17.67 ID:YBseAuii0
アニ「…ねえ、サシャ」

サシャ「はい?」

アニ「明日のパーティー止めにしない?」

サシャ「え!?」

アニ「…どうにも嫌な予感がするんだよ」




モノクマ『記憶が戻って良かったねえ。
     ウッキウキな気持ちで明日を迎えられるよね」

モノクマ『ん? ああ、心配しなくていいよ。
     ボクはパーティーに参加しないし、邪魔するようなこともしないから』

モノクマ『せいぜい楽しんできてね…
     パーティーの成功を祈ってるよ』




375: 2014/10/24(金) 19:15:16.13 ID:YBseAuii0
サシャ「か、考え過ぎですよ! いくらなんでも…」

アニ「何かが起こってからじゃ遅いんだ。
   不吉の芽は早いうちから摘み取った方がいい」

サシャ「だって…あんなに一生懸命準備したのに…」

アニ「パーティーならまたいつでもできるさ。
   今の状態でやったって良い結果は出ないよ」

アニ「それよりも今は…」

376: 2014/10/24(金) 19:25:21.09 ID:YBseAuii0




サシャ「ほ…本当にそれでいいんですかっ!」




アニ「えっ…」

サシャ「いつからアニはあのヌイグルミに屈したんですか!」

サシャ「モノクマの言う事ばかりに振り回されて…
    楽しい行事の1つもできなくて…」

サシャ「それで本当に…人生を楽しんでるって言えるんですか!?」

377: 2014/10/24(金) 19:30:16.32 ID:YBseAuii0
ライナー「じ、人生…!?」

サシャ「他のみんなだってそうですよ!」




エレン『なぁ…諦めて良いことあるのか?』

エレン『あえて希望を捨ててまで現実逃避する方が良いのか?』




サシャ「エレンだって言ってたじゃないですか!」

サシャ「私たちは今の状況から逃げてるだけですよ!
    何もできないと思い込んで現実逃避してるだけです!」

サシャ「互いが互いを疑って…」

サシャ「仲間を仲間と思えなくなって…
    そうやって人の道から外れるくらいなら…」








サシャ「それくらいなら…壁の中で巨人に怯えてる方がマシですよっ!!」








378: 2014/10/24(金) 19:35:16.97 ID:YBseAuii0
サシャ「とにかく!パーティーは断固として開催しますから!
    たとえみんなが来なくても1人でやりますから!」

ジャン「…1人でどうやってパーティーするんだよ」

サシャ「あー、でも残念ですねー!
    モノクマスープもみんなに分けてあげようと思ってたんですけどねー!」

サシャ「どうしても来ないって言うなら仕方ありませんねー!
    私が独り占めしちゃいましょうかねー!」

クリスタ「サシャ…」

サシャ「あっ、ていうかそろそろ夕食の時間じゃないですか!」

サシャ「もうお腹ペコペコですよ! 私は一足先に行ってますからね!」




タッタッタッタッ

381: 2014/10/27(月) 21:25:35.27 ID:vsJQEQEg0
アルミン(サシャは一方的にまくし立てると、逃げるように去って行った)




ジャン「何だよあいつ… 急に大声出しやがって」

コニー「………………」

ジャン「あ? 何だよコニー、文句でもあんのか?」

コニー「…何でもねーよ」

ジャン「ならそんな目で睨むんじゃねーよ。
    こっちだってな、お前の顔を見るだけで腸が煮えくり返るんだ」

382: 2014/10/27(月) 21:30:23.05 ID:vsJQEQEg0
ライナー「よせ、2人とも」

コニー「………………」

ジャン「………………」

ライナー「…とりあえず、今日はここで解散にするか」

ライナー「各自思うところはあるだろうが…
     決してモノクマの言う事に惑わされるなよ」

アニ「………………」

ライナー「あいつは俺たちの“敵”なんだ。
     早まった行動はあいつの思うツボ…その事を忘れるな」

383: 2014/10/27(月) 21:35:18.39 ID:vsJQEQEg0
アルミン(その後、僕たちは夕食と入浴を済ませ…)

アルミン(ほとんど会話も無いまま、それぞれの部屋へと戻っていった)




アルミン「………………」




アルミン(ベッドに倒れ込んで天井を見上げる)

アルミン(目を閉じると、あの時のサシャの言葉が脳裏に浮かんできた)

384: 2014/10/27(月) 22:00:32.52 ID:vsJQEQEg0




サシャ『互いが互いを疑って…』

サシャ『仲間を仲間と思えなくなって…
    そうやって人の道から外れるくらいなら…』








サシャ『それくらいなら…壁の中で巨人に怯えてる方がマシですよっ!!』








アルミン(何かの本で読んだことがある)

アルミン(巨人が現れる前… 僕たちの祖先は、
     人種や理念の違う者同士で果てしない頃し合いをしていたらしい)

アルミン(その時に誰かが言ったという。
     “もし人類以外の強大な敵が現れたら人類は争いをやめるだろう”と)

385: 2014/10/27(月) 22:05:20.04 ID:vsJQEQEg0
アルミン(あの話…)

アルミン(エレンが聞いたら何て言うかな)

アルミン(“呑気な話であくびが出る”…そんな風に言うんじゃないかな)




アルミン「………………」




アルミン(今の僕らを見たら…)

アルミン(エレンは…どんな顔をするのかな)

386: 2014/10/27(月) 22:25:22.90 ID:vsJQEQEg0
◆ モノクマげきじょう ◆




モノクマ「苦手な食べ物は、ずばりカニだね」

モノクマ「次に苦手なのは、
     エビとかリンゴとかトマトとかめんたいこかな」

モノクマ「赤い食べ物は苦手だね」

モノクマ「赤い食べ物って、
     カニの成分が含まれてるから赤いんだ」

モノクマ「つまり、ボクにカニを克服させようとしている、
     カニ業界の陰謀なんだよ!」

モノクマ「その手には乗るかって!
     ボクは断固として赤い食べ物は食べないぞ!」

モノクマ「というように、ボクらの社会には、
     身近なところにも様々な陰謀が潜んでいるんだ」


モノクマ「みんなもせいぜい気を付けてくれたまえよ」

387: 2014/10/27(月) 22:30:19.26 ID:vsJQEQEg0








「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『オマエラ、おはようございます!
     朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノクマ『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』








388: 2014/10/27(月) 22:35:19.17 ID:vsJQEQEg0
CHAPTER 02 

DAY 09




アルミン(朝か…)

アルミン(パーティー当日の朝…)




アルミン「………………」




アルミン(ジャンも言ってたけど、正直パーティーなんて気分じゃない)

アルミン(だけど…)

389: 2014/10/27(月) 22:40:18.03 ID:vsJQEQEg0




サシャ『とにかく!パーティーは断固として開催しますから!
    たとえみんなが来なくても1人でやりますから!』




アルミン(サシャ…)

アルミン(本当に1人でやる気なのかな)




アルミン「………………」




アルミン(…とりあえず行ってみよう)

393: 2014/11/09(日) 09:25:25.35 ID:MsMW3I5y0
― 食堂 ―




アルミン(僕はまず、食堂にやって来た)

アルミン(パーティーの開催時刻は正午…
     今は7時半前だから、様子を見に行くにしても早すぎる)

アルミン(いつもなら、食事のトレイを持ったみんなが、
     思い思いの朝食をとっているはずなのだが…)




アルミン「………………」

394: 2014/11/09(日) 09:45:22.09 ID:MsMW3I5y0
サシャ「おはようございます…」

アルミン「おはよう、サシャ。アニも」

アニ「ん…」




アルミン(今朝の食堂はひどく閑散としていた)

アルミン(いつになく少量の食事を手にしたサシャと、
     いつになく眠そうなアニ…)

アルミン(広々とした空間には、僕らの他に誰もいなかった)

395: 2014/11/09(日) 09:50:29.18 ID:MsMW3I5y0
アルミン「他のみんなは?」

サシャ「まだ来てないみたいです…」

アルミン「…珍しいね。普段ならもう揃ってるのに」

アニ「………………」




アルミン(他愛のない会話をしながら、トレイに食器を載せて調理場へと向かう)

アルミン(パンとバターとサラダとベーコン…
     いつものメニューを盛りつけると、すぐに食堂へと戻った)

396: 2014/11/09(日) 10:15:14.17 ID:MsMW3I5y0
アルミン「…ねえ、サシャ」

サシャ「?」

アルミン「パーティー… 本当に1人でやるつもりなの?」

サシャ「………………」

アルミン「あんまりこんな事言いたくないけどさ…」

アルミン「今日はきっと誰も…」

397: 2014/11/09(日) 10:30:15.11 ID:MsMW3I5y0
サシャ「はぁぁぁぁ~っ…」

アルミン「…?」

サシャ「私…」

サシャ「どうしてあんな事言っちゃったんでしょうか…」

アルミン「えっ…」

398: 2014/11/09(日) 10:40:13.76 ID:MsMW3I5y0




サシャ『互いが互いを疑って…』

サシャ『仲間を仲間と思えなくなって…
    そうやって人の道から外れるくらいなら…』








サシャ『それくらいなら…壁の中で巨人に怯えてる方がマシですよっ!!』








サシャ「自分でも不思議だったんです。
    なんであんなに熱くなっちゃったのか…」

サシャ「あんなの私のキャラじゃないのに…
    私はどっちかっていうと流されるタイプなのに…」

399: 2014/11/09(日) 10:45:24.81 ID:MsMW3I5y0
ガバッ




サシャ「ど、どうしましょう! 私とんでもない事しちゃいました!」

サシャ「1人でパーティーとか言ってはしゃいで…
    去り際にあんな捨てゼリフ吐いて…」

サシャ「かえって空気悪化させちゃいましたよぉぉぉぉ!!」ガシガシガシ

アルミン「ちょっ…落ち着いてよサシャ!」

サシャ「は…恥ずかしいっ…!自分で自分が恥ずかしいっ!!」ガシガシガシ

アルミン「だ、だから離しっ… ああっ!僕のベーコンが!!」

400: 2014/11/09(日) 14:10:15.76 ID:MsMW3I5y0
アニ「…何も恥ずかしくないよ」

サシャ「…?」

アニ「あんたは何も間違ってない」

アニ「キャラじゃないとか、流されるタイプとか…
   そんなのは関係ない」

アニ「みんなだってちゃんとわかってるはず」

アニ「…わかってるはずなんだ」

401: 2014/11/09(日) 18:00:25.36 ID:R1pWllX60
アルミン(トレイに目を落としたままアニが呟く)

アルミン(その様子はまるで… 自分に言い聞かせているようだった)




アニ「でもね、サシャ… 1つだけ言っておくけど」

アニ「私は… “あいつ”には屈しないから」

サシャ「えっ…」

アニ「たとえこの身が滅びたとしても…」

アニ「“あいつ”にだけは…絶対に屈しない」

402: 2014/11/09(日) 18:05:19.97 ID:R1pWllX60
アルミン(“あいつ”って…)




アニ「それにしても遅いね」

サシャ「?」

アニ「いい加減、そろそろ来てもいい頃だと思うけど」




アルミン(アニは食堂の出入り口に目をやった)

アルミン(薄い暗闇の中に佇む扉は、絵に描いたようにピクリともしない)

403: 2014/11/09(日) 18:10:33.94 ID:R1pWllX60
アルミン「本当にどうしたんだろう…? そろそろ8時なのに」

サシャ「き、きっとみんな寝坊してるんですよ!連日の疲れで…」

アニ「…だといいけど」

サシャ「え…?」

アニ「ねえ…」




アニ「もしかして…何かあったんじゃない?」

404: 2014/11/09(日) 18:15:23.39 ID:R1pWllX60
アルミン「…!!」

サシャ「な…何かって…」




アルミン(アニはそれ以上何も言わなかった)

アルミン(何も言わなくても…僕たちはその意味を理解していた)




アニ「…行くよ、2人とも」

406: 2014/11/12(水) 21:25:57.71 ID:/OfbnVsU0
― 訓練所 ―




アルミン「どうだった?」

サシャ「だ、ダメです…! どこにもいません!」ハアハア

アニ「こっちもだよ。部屋に行っても誰も出ないし、
   大浴場にもいなかった」

アルミン「この訓練所も探したけど、隠れられるような場所も少ないし…」

サシャ「それなら一体…」

407: 2014/11/12(水) 21:30:13.55 ID:/OfbnVsU0
アニ「見てない場所はまだある」




アルミン(彼女はそう言うと、懐から1枚の紙を取り出した)

アルミン(この施設の地図だ。おそらくアニの手作りだろう)




アニ「倉庫、飼育小屋、ライブハウス、書庫、林…」

サシャ「こうして見るとたくさんありますね…
    もう一度手分けして探しましょうか?」

アルミン「いや、やっぱり単独行動は控えよう。
     何が起こるかわからないから」

アニ「…そうだね。このまま3人で虱潰しに当たっていこう」

408: 2014/11/12(水) 21:35:16.26 ID:/OfbnVsU0
アルミン(僕らは地図を手に走り出した)

アルミン(地道な作業だけど… それでもやるしかない)




アルミン「………………」ハアハア




アルミン(ゴーストタウンのように静まり返った施設内…)

アルミン(聞こえるのは、慌ただしい足音と切れ切れの吐息だけだ)

409: 2014/11/12(水) 21:40:15.26 ID:/OfbnVsU0
ダッダッダッダッ

ハァ ハァ




アルミン(嫌な予感ばかりが募る)




ハァ ハァ








アルミン『エレン!!!!』








アルミン(最悪のイメージ)

アルミン(こみ上げてきた吐き気を押し戻すと、地を蹴る足に力を込めた)

412: 2014/11/15(土) 12:15:19.52 ID:qzuEzw3j0








アルミン(そして“彼女”を見つけるまで…)

アルミン(それほど時間はかからなかった)








413: 2014/11/15(土) 12:45:20.31 ID:qzuEzw3j0
― 飼育小屋 前 ―




アルミン「ユミル!?」

ユミル「よう」

サシャ「ど、どこ行ってたんですか! 散々探したんですよ!?」

ユミル「それはこっちのセリフだよ。ヒヤヒヤさせやがって…」

414: 2014/11/15(土) 12:50:53.10 ID:qzuEzw3j0
アルミン(ユミルを見つけたのは飼育小屋の前だった)

アルミン(腕組みをして扉にもたれかかるユミルに、
     僕らは一斉に駆け寄ったのだ)




アニ「どういう事? ここで何してるの?」

ユミル「私もお前らを探してたんだよ。
    食堂に行ってもいないから、かなり焦ったんだぞ」




アルミン(どうやら、僕らとユミルは
     どこかで入れ違いになっていたらしい)

アルミン(ユミルは平静を装っていたが、
     よく見ると肩が小さく上下していた)

415: 2014/11/15(土) 12:55:22.64 ID:qzuEzw3j0
サシャ「あれ…? ていうかユミル、1人ですか?」

ユミル「ああ」

アルミン「他のみんなは?」

ユミル「ここにはいない。“お使い”として来たのは私だけだからな」




アルミン(“お使い”…?)




ユミル「ついて来いよ、3人とも」

417: 2014/11/15(土) 21:10:16.12 ID:rsFDr2bu0
― 施設内 某所 ―




サシャ「あのう… どこまで行くんですか?」

ユミル「何回目だよその質問。来ればわかるって言ってんだろ」

サシャ「ちょ、ちょっと休憩しましょうよ。
    私たちはさっき走ってきたばかりで…」

ユミル「『こんなので音を上げてたら狩猟生活なんて務まらない』
    そう言ってたのはどこの誰だった?」

サシャ「………………」

418: 2014/11/15(土) 21:15:26.29 ID:rsFDr2bu0
アルミン「…ねえ、ユミル」

ユミル「あん?」

アルミン「何か怒ってる?」

ユミル「…は?」

アルミン「い、いや、気のせいならいいんだ。
     なんとなくそんな感じがしたから…」

ユミル「………………」

419: 2014/11/15(土) 21:30:22.20 ID:rsFDr2bu0
ユミル「…怒ってねえよ」

アルミン「え?」

ユミル「私は怒ってない。むしろ…」




アルミン(ユミルはそこで歩を止める)

アルミン(そして首だけを少しこちらに向けると、
     ボソリとした声でこう言った)




ユミル「…悪かったな、アニ」

420: 2014/11/15(土) 21:35:21.34 ID:rsFDr2bu0
アニ「…え?」

ユミル「この間は… ずいぶん酷い事言っちまった」








ユミル『【裏切り者】ってのは… お前なんじゃないのか?』








アニ「…ああ、別にいいよ。気にしてないから」

ユミル「…そうか」

421: 2014/11/15(土) 21:45:14.01 ID:rsFDr2bu0
アルミン(ユミルは再び歩き出した)

アルミン(後ろ姿からは、その表情を読み取ることができない)




アルミン「………………」

アニ「………………」

サシャ「………………」




アルミン(僕らはひたすらユミルを追った)

アルミン(ただ黙々と…)

422: 2014/11/15(土) 21:50:14.70 ID:rsFDr2bu0
ユミル「ウソも100回言えば本当になる」




アルミン「…え?」

ユミル「大きなウソを繰り返されると、人はそれを信じてしまう」

ユミル「…人間ってのは実にテキトーに出来てるよな」

サシャ「…?」

ユミル「無理矢理にでも声に出して笑えば、最後には本当の笑いになる」

ユミル「たとえ絶望のどん底にいたとしても…」

423: 2014/11/15(土) 21:55:18.48 ID:rsFDr2bu0
ユミル「今の私たちに足りないのは信じる心だ」

ユミル「疑うことすら忘れるほどに、バカみたいに信じ抜くこと…
    そうは思わないか?」

アニ「…何の話をしてるの?」




アルミン(ユミルは何も答えなかった)

アルミン(淡々と歩を進める彼女に、僕らは黙って従うしかない)

424: 2014/11/15(土) 22:10:27.86 ID:rsFDr2bu0
― ライブハウス 前 ―




アルミン(そうして僕たちが辿り着いたのは…)




アニ「…ライブハウス?」

ユミル「ここが目的地だ」

サシャ「…? ここに何かあるんですか?」

ユミル「まあな」

425: 2014/11/15(土) 22:15:14.86 ID:rsFDr2bu0
アルミン(ユミルはそう言うと、ライブハウスの扉に近付いていった)




コン コン コン




アルミン(3回のノック)

アルミン(すると、それに応えるように…)




コン コン コン コン




アルミン(中から4回のノックが返ってきた)

426: 2014/11/15(土) 22:25:17.75 ID:rsFDr2bu0
ユミル「開けてみろよ、サシャ」

サシャ「えっ…」




アルミン(言われるがままに、ドアの取っ手に手をかけるサシャ)

アルミン(力を入れ、ゆっくりと木製の扉を開いていく)

アルミン(すると…)

427: 2014/11/15(土) 22:35:17.76 ID:rsFDr2bu0
パーン!

パパン! パンパーン!








「ハッピーバースデー! サシャ!」








430: 2014/11/16(日) 21:45:34.97 ID:WGh0RMq40
― ライブハウス ―




アルミン(僕らの目に飛び込んできたのは…)

アルミン(華やかな装飾が施されたパーティー会場だった)




アニ「…!?」




アルミン(そしてそこには…)

アルミン(パーティー帽を被り、
     クラッカーをこちらに向けたみんなの姿があった)

431: 2014/11/16(日) 22:00:13.46 ID:WGh0RMq40
サシャ「…え、えーっと…」

サシャ「…何ですかこれは」

ユミル「パーティーに決まってんだろ」

サシャ「パ… パーティー…?」

ユミル「おいおい… なに呆けた顔してんだ。
    パーティー開くって言ったのはお前だろうが」

432: 2014/11/16(日) 22:05:15.93 ID:WGh0RMq40
アルミン(サシャが唖然とするのも無理はない)

アルミン(実際僕も… 夢でも見てるんじゃないかと思ったほどだ)




ユミル「ま、どうせ開くんなら口実があった方がいいと思ってよ」

ユミル「今日はお前の誕生日会ってことにしたんだ」

サシャ「あの… 誕生日どころか…」

サシャ「今日が何日かすらわからないんですけど…」

ユミル「細けぇ事はいいんだよ。何日か経てばいつかは誕生日だろ」

サシャ「そんなザックリとした誕生日会聞いたことありませんよ!?」

433: 2014/11/16(日) 22:25:16.58 ID:WGh0RMq40
ユミル「あーもう、うるせえ!主賓は大人しく向こう行ってろ!」




アルミン(ユミルはうんざりしたように怒鳴りつけると、
     サシャを奥へと押し込めた)

アルミン(みんなが待つ会場の奥へと…)




ライナー「よく来たな、サシャ」

ライナー「それと… アニとアルミンも」

アルミン「…!」

ライナー「さあ… 楽しいパーティーの始まりだ」

437: 2014/11/24(月) 17:35:16.83 ID:LhW/LKXF0
アルミン(こうしてパーティーが始まった)

アルミン(唖然とする間もないまま、僕とアニもみんなの元へ導かれていく)




アルミン「…!!」




アルミン(僕は目を見張った)

アルミン(彩り鮮やかなサラダに、バカみたいに大きな骨付き肉…)

アルミン(山のように盛られたバターロールに、
     巨大なケーキやフルーツポンチ…)

アルミン(普段の食事とは比べ物にならないごちそうが、
     ずらりとテーブルに並べられている)

438: 2014/11/24(月) 17:40:15.70 ID:LhW/LKXF0
アルミン「こ…これ…どうしたの!?」

ライナー「へへっ、圧巻だろ? 【調理係】である
     ユミルとクリスタが作ってくれたんだぜ?」

ユミル「くっくっ… クリスタって意外と不器用なのな。
    砂糖と塩を間違えてケーキの生地にドバーッと入れてやんの」

クリスタ「なっ…! あ、あれはユミルが変な事言うから…」

ユミル「でもまあ、サシャじゃなかっただけマシか。
    もしあいつが【調理係】だったら…」

439: 2014/11/24(月) 17:45:14.25 ID:LhW/LKXF0
ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ…




サシャ「…!!」

ユミル「…あんな風につまみ食いされそうだからな」




アルミン(つまみ食いってレベルじゃない…)




ジャン「おいサシャ! お前1人で全部食うなよ!?」

サシャ「………………」

ジャン「オ、オイッ! 人の話を…」

440: 2014/11/24(月) 17:50:15.77 ID:LhW/LKXF0
ポロッ…




サシャ「うぅ…」

サシャ「うわぁぁん…」ポロポロ

ジャン「!?」

サシャ「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁ…」ポロポロ

ジャン「な…なんだ!? なんで急に泣き出した!?
    オレ何か悪い事したか!?」

441: 2014/11/24(月) 17:55:14.61 ID:LhW/LKXF0
サシャ「ちっ…違うんです…」

サシャ「私…」

サシャ「嬉しくて…」

ジャン「は…!?」

サシャ「た、誕生日もっ…そうですけど…」

サシャ「みんなが仲直りしてくれてるのが…嬉しくて…」

442: 2014/11/24(月) 18:00:15.96 ID:LhW/LKXF0
アルミン(辺りがしんと静まり返る)

アルミン(でもそれは… いつもの押し潰されそうな沈黙ではなかった)




ジャン「………………」




アルミン(決まりが悪そうに頬を掻くジャン)

アルミン(彼がチラリと目を上げた先には、
     同じように頬を掻くコニーの姿があった)

444: 2014/11/26(水) 19:05:13.50 ID:m55c7lSE0
ジャン「…正直言って、オレはまだ割り切れてねえよ」

ジャン「コニーを憎む気持ちは消えてねえし、
    ここの生活のストレスだって残ったままだ」

ジャン「それはきっと…あいつだって同じはずだぜ」

コニー「………………」

ジャン「でもよ、昨日サシャに言われて…
    考えちまったんだよな」

445: 2014/11/26(水) 19:10:14.71 ID:m55c7lSE0




サシャ『互いが互いを疑って…』

サシャ『仲間を仲間と思えなくなって…
    そうやって人の道から外れるくらいなら…』








サシャ『それくらいなら…壁の中で巨人に怯えてる方がマシですよっ!!』








ジャン「あの言葉がずっと引っかかっててよ」

ジャン「体はクタクタなのに、頭は妙に冴えていて…
    昨日の晩はなかなか寝付けなかった」

ジャン「それでオレは、気晴らしに散歩でもしようと
    外に出てみたら…」

ジャン「…部屋の前にこいつらが集まってたんだ」

446: 2014/11/26(水) 19:30:14.15 ID:m55c7lSE0
アルミン(ジャンはそう言ってみんなの方に目を向ける)

アルミン(ライナー、ベルトルト、ユミル、クリスタ、
     そしてコニー…)




ジャン「どうやら寝付けなかったのはオレだけじゃなかったらしい」

ジャン「みんながサシャに言われた事を考えていて…
    色々と迷ってるみたいだった」

ジャン「自然とオレたちは口を開いて、それぞれの気持ちを吐露していって…」

ジャン「…サシャの為にサプライズパーティーを開こうって誰かが言ったのも、
    その時だったっけな」

447: 2014/11/26(水) 19:35:14.52 ID:m55c7lSE0
アルミン(辺りがしんと静まり返る)




ライナー「…腑に落ちないって顔だな、アニ」

アニ「………………」

ライナー「まあ無理もないか。昨日までいがみ合ってた俺たちが、
     急に仲良くパーティーやってるんだもんな」

ライナー「そりゃ不自然に思って当然だ」

アニ「………………」

448: 2014/11/26(水) 19:40:14.04 ID:m55c7lSE0
ライナー「…実のところ、それは俺たちだって同じなんだ」

ライナー「仲間が2人もいなくなって、
     訳のわからない事を散々言われて…」

ライナー「そんな状況で気持ちに整理をつけられる人間なんて…
     この中には1人もいない」

ベルトルト「………………」

449: 2014/11/26(水) 19:45:13.73 ID:m55c7lSE0
ライナー「だからまあ…なんだ」

ライナー「いくら考えても無駄だっていうなら、
     いっそそのまま突っ走ろうと思ってな」

ライナー「気持ちに折り合いをつけないままで…
     それでもいいって思ったんだ」

ライナー「要はやけくそだな」

クリスタ「………………」

ライナー「それで俺たちは…」

450: 2014/11/26(水) 19:50:24.21 ID:m55c7lSE0
アニ「…別に」

ライナー「?」

アニ「不自然だなんて思ってないよ」

アニ「ただちょっと…驚いただけ」




アルミン(アニはそう言って髪をかき上げた)

アルミン(ちらりと見えた耳が赤みがかっていたのは、気のせいだろうか)

452: 2014/11/28(金) 20:25:18.35 ID:CXorhOlt0
アニ「…やっぱり正解だったかな」

ライナー「…? 何の話だ?」

アニ「何でもないよ。それより…」




アルミン(アニが山盛りの料理が載せられたテーブルを指す)




アニ「あれ全部食べていいの?」

ライナー「は…!?」

アニ「空腹なんだよ。朝ご飯もあんまり食べられなかったから」

453: 2014/11/28(金) 20:30:14.27 ID:CXorhOlt0
サシャ「だ、ダメですよアニ!これは全部私のものです!」

ジャン「いつからお前のものになったんだよ」

サシャ「主賓ですから!!」

ジャン「………………」

アニ「じゃあ勝負でもする?どっちが多く食べられるか」

サシャ「いいですとも!負けませんよ!」

454: 2014/11/28(金) 20:35:27.80 ID:CXorhOlt0
ユミル「おっと待ちな」

サシャ「?」

ユミル「勝負するのは構わないが、あのケーキだけは食べるなよ?」

ユミル「あれはクリスタ特製の塩まみれケーキだからな。卒倒するぞ」

クリスタ「うぅ…」

コニー「つ、つーか、本当に全部食うなよ?
    こっちだって早朝から準備してて腹ペコなんだからよ…」

アニ「わかってるって。じゃあ始めるよ」

455: 2014/11/28(金) 20:40:20.27 ID:CXorhOlt0
アルミン(それからしばらくの間…)

アルミン(サシャとアニの壮絶な早食いバトルが繰り広げられた)




サシャ「………………」ガツガツガツガツ

アニ「………………」ガツガツガツガツ

コニー「お、おい!こいつら本気で全部食う気だぞ!
    俺たちの分がなくなっちまう!」




アルミン(いつの間にか2人を観戦していたギャラリーも参加し…)

アルミン(気が付くと、パーティー会場は
     散乱した料理と笑い声で溢れかえっていた)

456: 2014/11/28(金) 21:00:17.92 ID:CXorhOlt0
アルミン(アニ… 一体どうしたんだろう?)

アルミン(朝食はそれなりに取っていたはずなんだけど…)




アニ「…ふふっ」




アルミン(また笑った…)




アニ『…いいね』

アニ『それでこそアルミンだ』




アルミン(あの時の笑顔)

アルミン(アニってあんなに笑う人だったっけ?)

アルミン(そもそも早食い競争だなんて…
     サシャならまだしも、アニはそんな事するタイプじゃ…)

457: 2014/11/28(金) 21:10:20.12 ID:CXorhOlt0
アルミン(…タイプ?)




アニ『キャラじゃないとか、流されるタイプとか…
   そんなのは関係ない』

アニ『みんなだってちゃんとわかってるはず』

アニ『…わかってるはずなんだ』




アルミン(もしかしてアニは… 変わろうとしてるのかな)

アルミン(以前の自分から…)

458: 2014/11/28(金) 21:15:18.08 ID:CXorhOlt0
アルミン「………………」




アルミン(…“以前の自分”?)

アルミン(何だよ“以前の自分”って)

アルミン(一体どうして…そんな考えが浮かぶんだ?)

459: 2014/11/28(金) 21:25:33.89 ID:CXorhOlt0
ライナー「あ~、それでは! パーティーも盛り上がってきたところで!」

ライナー「【出し物係】である俺とベルトルトが用意した、
     とっておきのレクリエーションをやろうと思う!」




ヒュー ヒュー

パチパチパチパチ




ライナー「じゃあベルトルト、みんなに例の物を」

460: 2014/11/28(金) 21:30:18.43 ID:CXorhOlt0
アルミン(ライナーの指示を受けて、ベルトルトが何かを配っていく)

アルミン(受け取ってみると… それは白い皮袋のようだった)




コニー「なんだこれ?」

ライナー「絞り袋だ。クリームなんかを入れてデコレーションする道具さ」

ジャン「…? そんな物どうするんだよ」

ライナー「まあ見てろって。よしベルトルト、アレを頼む」

461: 2014/11/28(金) 21:40:17.24 ID:CXorhOlt0
アルミン(絞り袋を配り終えたベルトルトは、バーカウンターの裏側に回った)

アルミン(ごそごそと取り出したそれは…)




サシャ「…!! す、すごい! 何ですかその美味しそうな物体!?」

ライナー「いい匂いだろ? 女神(クリスタ)特製の肉のパイ包みだ」

ユミル「へえ、私の事か? 女神とは嬉しいね」

ライナー「さて、今からみんなには、
     このパイ包みのデコレーションをやってもらう」

ライナー「詳しいルールを説明するから、よーく聞くんだぞ?」

462: 2014/11/28(金) 21:50:14.42 ID:CXorhOlt0
アルミン(ライナーの説明によると、どうやらこの絞り袋には
     クリーム状のソースが入っているらしい)

アルミン(パイはすでに10等分に切り分けられており、
     1人が1つを好きなようにデコレーションする…というものだった)




ライナー「いいか、使うのはあくまで自分の絞り袋だけだ。
     他人のを借りるのは無しだぞ」

ライナー「他人のパイ切れをデコレーションするのも禁止。
     それと、全員が作業を終えるまで食べるのもダメだからな」

コニー「なんだかよくわかんねーけど、面白そうだな」

463: 2014/11/28(金) 22:00:12.97 ID:CXorhOlt0
今日はここまで

464: 2014/11/29(土) 20:00:17.36 ID:BSoK4LoE0
アルミン(僕らは言われた通りに、
     各々のパイ切れをデコレーションしていった)




ベルトルト「…コニー、そのスペル間違ってるよ」

コニー「え?」

ユミル「お前は文字も書けないのかよ…
    それとサシャ、そのぐちゃぐちゃのモンスターは何だ」

サシャ「ケニーです」

ユミル「ケニー?」

サシャ「飼育小屋で見つけた『私の』肉牛です!」

ユミル「………………」

465: 2014/11/29(土) 20:05:23.65 ID:BSoK4LoE0
アルミン(可愛らしい絵を描く人、メッセージを書く人…)

アルミン(それぞれが思い思いに、個性的な飾り付けを施していった)




ライナー「…よし、みんなデコレーションは終わったようだな」

サシャ「食べていいですか!? 食べていいですよね!?」

ライナー「ああ、いいぞ。ただし…」

サシャ「?」

ライナー「気をつけろよ。その中の1つには【当たり】があるからな」

466: 2014/11/29(土) 20:10:21.90 ID:BSoK4LoE0
ジャン「は? 何だよ【当たり】って」

ライナー「それは食べてからのお楽しみだ」

ジャン「またそのパターンかよ。もったいぶりやがって…」

クリスタ「…まさか、毒とかじゃないよね?」

ライナー「安心しろ。氏ぬような代物じゃない」

コニー「な、なんか言い回しがすっげー不安なんだが…」

467: 2014/11/29(土) 20:20:22.78 ID:BSoK4LoE0
サシャ「大丈夫です!きっと1つだけベラボーに美味しいんですよ!
    だから心配いりませんって!」

ユミル「…お前早く食べたいだけだろ」

ライナー「じゃあみんな、自分以外のパイ切れを1つ取ってくれ。
     自分がデコレーションしたもの以外だぞ」




アルミン(ライナーに言われ、
     僕らはパイ切れを1つ選んで手に取った)

アルミン(僕が選んだパイには文字が書かれていたが、
     潰れているせいで判読できない)

468: 2014/11/29(土) 20:25:19.74 ID:BSoK4LoE0
ユミル「なあ、ライナー」

ライナー「なんだ?」

ユミル「どうせやるならよ、食べさせ合わないか?
    その方が盛り上がるだろ」

ライナー「ん? …なるほど、それもそうだな」

ユミル「じゃあベルトルさん、あーん」

ベルトルト「えっ… あ、あーん」

469: 2014/11/29(土) 20:30:21.18 ID:BSoK4LoE0
アニ「アルミン」

アルミン「え?」

アニ「あーん」

アルミン「!?」

アニ「…どうしたの。早く」

アルミン「あっ… う、うん!」

470: 2014/11/29(土) 20:40:21.03 ID:BSoK4LoE0
ライナー「じゃあいくぞ… せーのっ」




パリッ




アルミン(ライナーの合図と同時に、
     僕らは一斉にパイにかぶり付いた)

471: 2014/11/29(土) 20:45:24.70 ID:BSoK4LoE0
アルミン「…!」




アルミン(その瞬間に香りが広がる)

アルミン(パリパリの皮。やわらかい肉から溢れ出る濃厚な肉汁。
     それらがデコレーションしたソースと絶妙に絡み合う)




アニ「………………」モグモグ




アルミン(…そして恥ずかしさも相まって、
     僕は何とも言えない高揚感に…)

472: 2014/11/29(土) 20:50:20.57 ID:BSoK4LoE0
ジャン「ガハッ…!?」




ドサッ




アルミン「…え?」

ジャン「~~っ! ~~~~っ!!」

クリスタ「ジャ、ジャン?」

ジャン「~~~~ッ!!」

コニー「お、おい! 大丈夫かよ!?」

473: 2014/11/29(土) 20:55:15.47 ID:BSoK4LoE0
ジャン「辛ーーーーーーーーッ!!」




サシャ「!?」

ジャン「な、なんだこりゃ!?
    メチャクチャ辛… げほっ、ごほっ!!」

ライナー「おっと、【当たり】はジャンだったみたいだな」

ジャン「げほっ…!?」

ライナー「実は絞り袋の1つに激辛スパイスが混ざってたんだ。
     災難だったな、ジャン」

ジャン「て…てんめ… がはっ!!」




だははははははは

474: 2014/11/29(土) 21:00:24.04 ID:BSoK4LoE0
アルミン(顔を真っ赤にして悶え苦しむジャン)

アルミン(その様子が可笑しくてたまらないというように、
     みんなが腹を抱えて笑っている)




アルミン「………………」




アルミン(その時だった)

アルミン(僕の脳裏に突然… 一筋の光が走った)

475: 2014/11/29(土) 21:05:16.15 ID:BSoK4LoE0








アルミン(そうだ…)

アルミン(僕はこの光景を… 見たことがある)








476: 2014/11/29(土) 21:10:16.50 ID:BSoK4LoE0




バキ




???『うおおぉぉ!』

???『また始まったぜ!!』




ドオ




ジャン『オラ! エレン!どうした!
    人間に手間取ってるようじゃ…』

ジャン『巨人の相手なんか務まんねぇぞ!!』




477: 2014/11/29(土) 21:15:15.37 ID:BSoK4LoE0




エレン『あたりめーだッ!!』

ジャン『!!』




ドス




ジャン『ぐ…っ!!』

エレン『フッ!!』




ドコッ




ジャン『グッ……!! ……!!』




478: 2014/11/29(土) 21:20:14.01 ID:BSoK4LoE0




???『オエッ…』

ライナー『オーイ! その辺にしとけ!』

ライナー『忘れたのかジャン!?
     エレンの対人格闘成績は…』




ライナー『今期のトップだぞ!』




ドオッ




479: 2014/11/29(土) 21:25:13.96 ID:BSoK4LoE0




ドン


ヒュ




エレン『!!?』




ヒョイ




エレン『……!? ミカサ!!』

ライナー『いや… ミカサに次いでだったっけ?』

エレン『お… 降ろせよ!!』




だははははははは




480: 2014/11/29(土) 21:30:13.73 ID:BSoK4LoE0




???『ジャン これ以上騒いだら教官が来ちゃうよ!』

ジャン『オイ… フランツ…!!』

ジャン『これは送別会の出し物だろ? 止めんなよ!!』

フランツ『イ…イヤぁ… もう十分堪能したよ』

???『やめてよ! 人同士で争うのは…』




エレン『オイ!』

エレン『降ろせよミカサ…!』




だははは




481: 2014/11/29(土) 21:35:15.35 ID:BSoK4LoE0
アルミン(唐突なフラッシュバック)

アルミン(我に返ると、一切れだけ残されたパイ包みが目に留まった)




アルミン「………………」




アルミン(…そうだ、ミカサは?)

アルミン(ミカサは今どこに?)




だははははははは




アルミン(…いや、ミカサだけじゃない)

アルミン(“みんな”は?)

482: 2014/11/29(土) 21:40:16.06 ID:BSoK4LoE0




ユミル『わからないのか?今来た2人を含めてもたったの12人なんだぞ?
    他の連中はどこに行ったんだよ』

ベルトルト『…確かに。入団式には,ざっと見ても100人以上いたはずだよね』




アルミン(ここでの生活が始まった時に感じていた疑問)

アルミン(考えることを早々に放棄していた疑問)

アルミン(その疑問が今になって、心の中にムクムクと現れる)




だははははははは




アルミン(他のみんなは?)

アルミン(どうして僕たちしかいないんだ?)

483: 2014/11/29(土) 21:45:13.78 ID:BSoK4LoE0
モノクマ「“どうして”?」

アルミン「…!!?」

モノクマ「当たり前じゃない。だって…」








モノクマ「だってここは… 異常空間なんだよ?」








484: 2014/11/29(土) 21:50:13.72 ID:BSoK4LoE0








アルミン(僕らはすっかり忘れていた)

アルミン(ここが常識の通じない異常空間であることに)

アルミン(そして僕らは気付けなかった)

アルミン(“あの人”の底なしの悪意に…)








485: 2014/11/29(土) 21:55:13.56 ID:BSoK4LoE0
アルミン(その日 僕たちは思い知る)




パリーン




アルミン(“それ”はいつだって…)

アルミン(突然やってくるということを)

486: 2014/11/29(土) 22:00:14.67 ID:BSoK4LoE0
ユミル「うぐっ…!?」




ドサッ




サシャ「?」

ベルトルト「…え?」




ユミル「…! …ッ!!」




クリスタ「ユミル…?」

487: 2014/11/29(土) 22:05:14.20 ID:BSoK4LoE0
ユミル「……ウ……ァ……」




クリスタ「ユミル!?」




ユミル「グッ……アァ……」




アニ「…!!」

ライナー「な…なんだ!?」

488: 2014/11/29(土) 22:10:13.83 ID:BSoK4LoE0
ユミル「ア……ァ……」

ジャン「おい! どうしたんだよ!!」




アルミン(そして歯車は回り出す)

アルミン(誰も予想できなかった、誰も望むことのなかった…)

489: 2014/11/29(土) 22:20:15.46 ID:BSoK4LoE0








アルミン(絶望的な結末へと)








490: 2014/11/29(土) 22:25:16.20 ID:BSoK4LoE0








ユミル「ヒ……スト……リ……」








ユミル「ァ……」








491: 2014/11/29(土) 22:30:13.51 ID:BSoK4LoE0








CHAPTER 02

君は希望という名の絶望に微笑む

非日常編








492: 2014/11/29(土) 22:35:15.58 ID:BSoK4LoE0








「ピンポンパンポーン…!」




モノクマ『氏体が発見されました!』

モノクマ『一定の自由時間の後、『兵団裁判』を開きまーす!』








493: 2014/11/29(土) 22:40:14.79 ID:BSoK4LoE0
今日はここまで

494: 2014/11/29(土) 23:22:27.92 ID:QN1UwZ9Wo

495: 2014/11/30(日) 14:38:56.97 ID:lMvUNEHj0

引用: シンゲキロンパ CHAPTER 02