143: 2015/06/11(木) 14:40:12.98 ID:pYjhuj8U0



最初から:【艦これ】提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」

前回:【艦これ】提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」第九話

執務室

ろー「秘書艦の仕事、頑張りますって! 負けません! がるるー!」

提督「はははっ元気だなぁ」

ろー「はい! 元気ですって!!」

提督「日本語も上手になったな・・・」

提督(・・・少し変だけど)

ろー「鎮守府の皆が沢山教えてくれたデース!」

提督(・・・金剛か)

ろー「他にも困った時はクマーとかタマーって叫ぶんだって!」

提督(球磨と多摩か・・・)

ろー「でっちも色々教えてくれるの!」

提督「・・・丁稚?」

ろー「ううん、でっち」

提督「でっち・・・?」

ろー「ゴーヤです」

提督「ん? ああ、でちって言う時があるからか」

ろー「うん。だからでっち」

提督「潜水艦の子達と仲良くやってるみたいでよかった」

ろー「すっごい仲良し!」

提督「仕事の方は大丈夫か? 書類とか日本語だけど・・・」

ろー「少し難しいかもです。大体分かるけど、漢字がまだちょっと・・・」

提督「同じ読みでも意味が違かったりするからな・・・外国の子には難しいか」

ろー「だから・・・教えて欲しいです? だめですか?」

提督「いいよ。どれが分からないんだい?」

ろー「提督の近くに座ってもいいですか?」

提督(確かにその方が確認しやすいか・・・)

提督「ああ、構わないぞ」
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録 (カドカワデジタルコミックス)
144: 2015/06/11(木) 14:40:48.02 ID:pYjhuj8U0
ろーは秘書艦が座る机から提督の方へ移動する。

ろー「はいっ!!」ポスンッ

提督「なんで膝の上に座るんだ・・・」

ろー「・・・だめですか?」

提督(まだ甘えたい年頃なのかね)

提督(もうしかしたら俺を兄貴か父親のように思ってくれているのかもしれない)

提督(それに・・・こんな怯えるように聞かれたらダメって言えないじゃないか・・・)

提督「分かったよ。良いよ。どの漢字が分からないんだ?」

ろー(本当は・・・分かるんですけどね)

ろー(ごめんなさい提督。ろーちゃんは嘘つきです)

ろー(提督の膝の上・・・暖かい・・・)

ろー(このまま・・・一つに繋がりたい・・・)

提督「ろー? どうした?」

ろー「これと・・・これなんですけど・・・」

提督「ああ、それはな・・・」

ろー(この戦争が終わったら、ちゃんと告白するって・・・決めたけど・・・)

ろー(皆も・・・するんだろうな・・・)

ろー(嫌だな・・・)

――――もしも

ろー(将来、提督の隣にいる娘が・・・)

――――自分じゃなかったら

耐えられるだろうか。

145: 2015/06/11(木) 14:41:30.03 ID:pYjhuj8U0
自分以外の娘と結ばれて、婚約し、2人の間に子供が出来る。

提督が幸せになれるなら祝福すべきだ。

だけど・・・多分それは出来ない。

だって諦めきれないから。諦めたくないから。

初めて会った時、私を家族と言ってくれた。

この国なりの社交辞令だと思っていた。

だけど、何時だって困れば提督は助けてくれたし、

何時も気にかけてくれた。

思い出す。自分が提督のことを好きだと自覚したあの日を・・・

あれは何時だったか・・・まだ着任してすぐの頃・・・

夜中に、ふと目が覚めてしまった。

再び眠りに付こうとしても中々眠れない。

寝ている皆を起こすわけにも行かない。

ユー(そういえば・・・少し喉が渇いた・・・)

水が飲みたくなり、部屋を出て食堂へ向かった。

何時も何気なく歩く廊下も、今は点々と備え付けられた常夜灯の灯りのみ。

暗く、静かで不気味に感じた。

知らない場所を歩いているみたいで少し恐かった。

食堂に着くと調理場の方が少し明るかった。

ユー(誰か居るのかな・・・?)

居たのは提督。彼は調理をしていた。

ユー(こんな時間にどうしたんだろう?)

146: 2015/06/11(木) 14:42:07.43 ID:pYjhuj8U0
視線に気付いた提督がこちらを見た。

提督「あれ? ユーか? どうしたこんな時間に」

ユー「ちょっと喉が渇いて・・・」

提督「そうか。ほら」

提督が水を渡してくれた。

ユー「ありがとう。提督は・・・こんな時間にどうしたの?」

提督「ちょっと仕事が長引いてな・・・小腹が空いた」

そう言うと「皆にナイショな」と笑った。

提督は余りモノで炒飯を作っていたみたいで、出来上がると食事を始めた。

とても美味しそう。

私は提督が座った机の対面側に座った。

眠れないので少し話をしたかった。

提督「ここにはもう慣れたかい?」

ユー「・・・うん」

私は話に相槌を打ちながらも、じっとチャーハンを

見ていたようで提督に笑われた。

提督「何だ? ユーもお腹がすいたのか?」

ユー「・・・美味しそう」

提督「だが、寝る直前に食べると体に悪いって言うしな・・・」

ユー「美味しそう・・・」

提督「う~ん・・・じゃあ、一口だけだぞ?」

ユー「うん!!」

提督がスプーンを差し出して、私はそれを口に含んだ。

タマゴがふわふわでとても美味しい。

147: 2015/06/11(木) 14:42:45.66 ID:pYjhuj8U0
ユー「美味しい・・・なんで寝る前だと食べちゃダメなの?」

提督「胃がびっくりしゃうらしいぞ? あんまり体によくないらしい」

ユー「・・・お婆ちゃんの知恵袋?」

提督「多分違うかな・・・」

知っている日本の知識を出したけど違ったようだ。

それから提督と沢山話をした。

提督は笑いながら相槌をうち、聞いてくれた。

ユー「まだフライパンに炒飯余ってるよ?」

提督「それは夜間警備している子達にお裾分けしようかなって思ってね」

ユー「やかんけいび?」

艦娘達と妖精が当番制で鎮守府付近の海域を警備しているらしい。

提督「敵は何時攻めてくるか分からないからね。レーダーによる監視や、巡回はかかせないんだよ」

鎮守府に着任して数日。まだ知らないことだらけだった。

ユー「・・・提督は何時もこんな遅くまで仕事してるの?」

提督「何時もじゃないけど、先日の作戦の処理で今週いっぱいはこんな感じかな?」

ユー「秘書艦の子はどうしたの?」

提督「今日は遅いから、随分前に返したよ」

ユー「そうなんだ。明日もいる?」

提督「分からないなぁ・・・仕事が長引けばいるかもな」

ユー「・・・そろそろ戻るね。楽しかった」

提督「俺もユーと話せて楽しかったよ。元気が出た。もう少し頑張るかな」

そう言われて嬉しかった。

ユー「おやすみなさい」

提督「ああ、おやすみ」

余談だが、提督が夜食を振舞った結果、艦娘達の間で

夜間哨戒の任務の希望者が続出し、ちょっとした騒動になったが、

その件は提督に届くことは無かった。

148: 2015/06/11(木) 14:43:33.41 ID:pYjhuj8U0
食堂を出て、寮へ戻る途中、ふと気がついた。

ユー(あれ・・・? さっきの・・・って)

ユー(・・・間接キス?)

顔が熱くなる。心臓がドクンドクンいってる。

ユー(間接キスしちゃった・・・)

多分・・・今、鏡を見たら自分の顔は茹蛸みたいに真っ赤になってることだろう。

急に恥ずかしくなり、早歩きで部屋に戻って布団にくるまった。

そして翌日も、その翌日も、ユーは夜中に起きては食堂に行く。

決まって提督が居て、2人で他愛もない話をした。

自分はあまり喋るほうではないと思っていたのに、

提督とはとても話しやすく、自分でも驚くくらい会話が弾んだ。

ユー(・・・楽しい)

気がつけば普段から提督のことを目で追っていたり、

提督のことが気になるようになった。

鎮守府内では提督の盗撮写真が取引されているが、

最初知ったときは正直引いた。ドン引き。

噂に聞いてたヘンタイ文化。日本は未来に生きすぎだと思った。

だけど、何時の間にか自分も買う側になっていた。

ユー「これが日本の文化・・・慣れてきた」

青葉「毎度あり! 苦労したんですよ」

ユー「他に良いアングルはないの?」

青葉「ないですねー」

青葉(あるけど・・・それは自分用ですし)ハイライトオフ

149: 2015/06/11(木) 14:45:14.97 ID:pYjhuj8U0
ちゃんと自分は異国の地で順応してやっていけていると自信にもなった。

同じ国の出身であるレーベちゃんもマックスもビスマルク姉さんも

『別に普通のこと』『おかしくないわ』『常識よ』

と言うので別におかしなことではないハズだ。うん。

そんなある日・・・

とうとう自分のレベルが限界値を迎えた。

艦娘の錬度を数字で可視化できる『レベル』と言うシステム。

ある一定の限界値に到達すると改造することが可能になる。

妖精さんの考案したシステムなので詳しい原理は分からない。

これにより改造し、更なる性能向上を望むことが出来るようになった。

だけど、正直迷いが大きかった

改造するのが恐かったのだ。

今とは別の自分になるような気がして・・・

ユー(・・・提督に相談しようかな)

その日の夜・・・皆が寝静まった時間。

何時ものように、こっそりと部屋を出ようとした。

イムヤ「・・・どこへ行くの?」

突然、聞こえた声に驚き、ゆっくり振り返ると、

イムヤがベッドから上半身を起こして、こちらを見ていた。

伊168。イムヤ。同じ潜水艦の仲間で私の友達。

何時もなら、そんなことは思わないのに、

この時のイムヤは何故か恐ろしかった。

どうしてだろう? 理由は分からない。

150: 2015/06/11(木) 14:46:08.27 ID:pYjhuj8U0
ユー「・・・ちょっとトイレ」

イムヤ「毎日、毎日、同じ時間に起きてトイレ・・・ね」

ユー「・・・うん。じゃあ行くね」

部屋を出ようとする。

イムヤ「・・・また司令官に会いに行くんだ」ハイライトオフ

今まで聴いたことも無いとても冷たい声。

ユー「・・・っ!!」

なんで? なんで知ってるの?

話したことはない。あの場には何時も2人しか居なかった。

ユー「・・・なんのこと?」

イムヤ「毎晩毎晩、司令官と話してるよね。楽しそうに。知ってるんだから」

何時も明るくて、面倒見の良いイムヤからは想像も出来ない冷たい声。

窓から入る月灯りが彼女を照らし、その光は逆光になり、

部屋も暗い為、彼女の表情はよく見えず、窺い知れない。

ただ、2つの瞳がこちらを捉えていることだけは分かった。

じっと見られていると、心臓を鷲づかみされたみたいな感覚になる。

イムヤ「会うのは別にいいけど、あんまり『私の司令官』に色目使わないでね」

その瞬間、さっきまでの恐怖は消えた。

不思議なことに綺麗さっぱり。

今あるのは不快感。

――私の司令官?

ユー「・・・なにそれ」

提督は誰のモノでもない。誰かと付き合ってるという話は聞かない。

なんでイムヤのモノなの? 付き合ってるワケじゃないのに。

ユー「別にイムヤのモノじゃないと思う・・・」

気がつけば反論していた。

151: 2015/06/11(木) 14:46:36.87 ID:pYjhuj8U0
ユー「だから・・・私にもチャンスはあると思う」

イムヤ「・・・貴女も司令官のことが好きなの?」

ユー「・・・・・・わからない」

イムヤ「・・・ふぅん」

好き・・・?

確かに尊敬している。好感を抱いている。

一緒に居ると楽しい・・・

それは上官としてじゃなくて?

一人の男の人として・・・?

―――ワカラナイ。

でも私はイムヤに言った。

『私にもチャンスはある』と。

チャンス?なんの?

多分、心の奥底では既に理解をしていた。

だけど気付かないようにしていたのかもしれない。

私は臆病だ。常に変わることが恐い。

変わることが良いことだけとは限らない。

だから進めない。

そしてそんな臆病な自分が嫌だった。

ユー「もう行くね・・・」

イムヤ「・・・・・・」

部屋を出て食堂へ向かう。イムヤは何も言わなかった。

152: 2015/06/11(木) 14:47:22.04 ID:pYjhuj8U0
提督「お? 今日も来たか。待ってろ、今お茶でも・・・」

ユー「提督。少し相談があって・・・」

提督「相談?」

自らを改造するのに躊躇いがあることを提督に話した。

提督「改造を受けるか、受けないかの最終的な判断は本人に任せているからな・・・」

提督「ユーは改造したくないのか?」

ユー「・・・したい。強くなりたい」

提督「じゃあ、受けてもいいんじゃないか? 何か不安が?」

ユー「ユーがユーじゃなくなる気がして・・・」

提督「改造されても別人になるわけじゃないハズだが・・・」

ユー「もし、ユーがユーじゃなくなったら・・・」

ユー「皆は今まで通りに接してくれるかな・・・?」

ユー(それに・・・)

―――貴方は今までどおり接してくれますか?

ユー「なんかね、そんなことばっかり考えちゃうの・・・」

提督「・・・俺は艦娘じゃないからさ」

提督「改造される時の葛藤なんてものは理解出来ないと思う」

提督「どんなに分かった気になって、何を言った所でさ」

提督「そんな言葉はユーの心には届かないと思うんだ」

ユー「・・・うん」

提督「改造されてもユーはユーだしさ・・・」

提督「何も変わらないと思うぞ?」

ユー「・・・そうかな?」

153: 2015/06/11(木) 14:48:29.43 ID:pYjhuj8U0
提督「迷うってさ・・・興味があって、やりたいから出てくる感情だろ?」

提督「初めから、なんの興味も無ければ迷ったりしないよ」

確かにそうだ。改造したくない、しなくていいと思うなら悩む必要はない。

でも強くなりたいって思ってる。今よりも役に立ちたいと思っている。

だけど・・・だけど・・・今ある世界が壊れてしまう気がして恐かった。

これが通常の改造であればなんとも思わなかっただろう。

だが、今回は違った。

U-511から呂500への改造。

それが自分にどんな影響を及ぼすかが恐かった。

自分が、全く別の自分になってしまうのではないか?と。

提督「他人から掛けられる言葉なんて物事を決める直接の要因にはならないと思うぞ」

提督「だから俺がここで何を言っても・・・最後に決断するのは自分自身だよ」

ユー「自分で・・・決める・・・」

提督「冷たいかもしれないけどさ・・・常に何かを選んで、選択していく」

提督「それが生きていくってことなんだ」

提督「だから、自分で決めなさい。どうしたいか、どうなりたいか、考えるんだ」

提督「そして悩んで、悩んで、悩んで・・・」

提督「その結果に出した答えだったなら、価値があるものになると思うよ」

提督「そうやって皆、自分で答えを探しながら前に進んでいくんだ」

ユー「ユーは・・・」

強くなりたいのも、役に立ちたいのも・・・・

154: 2015/06/11(木) 14:49:14.35 ID:pYjhuj8U0
そうだ。

この人に褒めて欲しいからだ。

喜んで欲しいからだ。

ユー(・・・理由はたったそれだけ)

でも、なんで?

―――好きだから。

それは上官として?

―――違う。

男性として・・・?

ユー(・・・そうか。そうなんだ)

自分自身に問答していく。

ユー「・・・提督」

提督「なんだ?」

ユー「・・・改造を受ける」

提督「え? もっと考えてからでもいいんだぞ?」

提督が好き。

異性として好き。

そう答えが出てしまえば今までの自分の行動も納得がいった。

イムヤに言った言葉も・・・

完全に迷いは消えた。答えが出てしまえば、些細なことで悩んでいたものだと思った。

ユー(取られたくないんだ。他の誰にも・・・提督を)

早く改造を受けないと。

もっと強くならないと・・・

誰よりも・・・

155: 2015/06/11(木) 14:49:52.54 ID:pYjhuj8U0
まずはカッコカリ。そこから・・・

自分の目指す先が見えた気がした。

ユー「ありがとう。答えは出たよ」

提督「そうか。じゃあ手配しておくが・・・本当にいいのか?」

ユー「うん。明日、すぐにでもお願いします」

提督(僅かな時間で自分なりに納得が行く答えを出したか・・・)

ユー「後ね・・・」

提督「うん?」

ユー「勇気をください」チュッ

提督「おい!?」

ユー「じゃあ、おやすみなさい///」

ユーは真っ赤に染まった自分の顔を見られないように早足で寮へ戻っていった。

提督「海外の子は、ませてるって聞くが皆ああなのかな・・・」

何時か、平和な時代が来て、彼女達が普通の少女として生きていける世界になり、

そうなったら皆それぞれの人生を歩むことになるだろう。

その時、彼女達は自分で決めて、選んで、自身の人生を歩んでいかなければならない。

そうなった時の為に、出来る限り力を貸してあげたい。

父親のように。兄のように。

少しでも幸せな人生を歩めるように・・・

そう提督は思っていたが、鎮守府の艦娘達は父親でもなく、兄でもなく、

幼い駆逐艦達ですら異性として提督を見ているとは想像もしてなかったのである。

156: 2015/06/11(木) 14:50:47.69 ID:pYjhuj8U0


イムヤ「あら、戻ったの。お帰り」

ユー「・・・起きてたんだ」

イムヤ「眠れなくてね・・・」

ユー「ねぇイムヤ、私・・・好きだよ」

ユー「提督のこと好き。だから負けないからね」

イムヤ「そうだろうと思った。薄々感じてたけどね」

ユー「イムヤにも、他の娘にも・・・負けない・・・」

ユー「がるるーーー」

イムヤ「ぷっ・・・なにそれ」

ユー「なんか強そうな感じ?」

私は変わる。弱い自分は嫌だ。もっと強い自分に。

イムヤ「まぁ最後に選ぶのは司令官だからね。私も負ける気ないけど」

ユー「ユーも負けない」

イムヤ「じゃあコレをあげるわね」

ユー「なにこれ?・・・本?」

イムヤ「司令官にアプローチする場合に守らなきゃいけないルールブックみたいなものよ」

ユー「・・・分厚い」

イムヤ「一応は目を通しておいたほうがいいわよ」

ユー「・・・沢山ルールがあるんだね」パラパラ

イムヤ「誰かが違反したり、不味い行動を取る度に規約が増えていったからね」

イムヤ「少なくても翔鶴さんだけで120ページは増えたわね」

ユー「・・・このルールを破るとどうなるの?」

イムヤ「下手したら五航戦と言われ続けるでしょうね・・・」ブルッ

ユー「・・・それは困るかな」ゾクッ

イムヤ「だからルールは守ってフェアにやりましょ」

157: 2015/06/11(木) 14:51:25.65 ID:pYjhuj8U0
それから改造を受けて呂500になった。

ろー「ユーちゃん改め、ろーちゃんです!」

改造を受けてからは恋心を自覚したからか自分でも驚くくらい明るくなったと思う。

今まであんまり会話をしなかった艦娘とも喋るようになり、友人も増えた。

ろー(あの時、選んで、決断して良かった)

以前よりも毎日が楽しい。

もっと前へ。もっと先へ。

提督と戦争を勝ち抜いて、生き残って・・・目指す先は・・・

女の子が誰もが憧れる存在に・・・

そして再び現在・・・

提督「・・・ろー? どうしたんだ? ボーっとして」

ろー「およめさんです!!」

提督「・・・はい?」

しまった。脳内で考えていた言葉が出てしまい焦る。

ろー「なんでもないんだって!! 今は忘れてって!!」

提督「うん? 良く分からないけど大丈夫か? 疲れているなら・・・」

ろー「ううん。こうしていれば大丈夫ですって!」

そう言うと、提督に寄りかかる。

提督「おいおい・・・俺は椅子じゃないぞぉ?」

提督は少し困った顔で笑う。

ろー(大好きだよ・・・提督)

ろー(頑張るから・・・)

ろー(ろーちゃんを見ててね)

ろー(ずっと・・・ずっと・・・エイエンニ)ハイライトオフ

158: 2015/06/11(木) 14:52:07.48 ID:pYjhuj8U0
背中に伝わる提督の温もり。

その暖かさと提督の匂いに包まれて何時しか眠ってしまった。

提督(寝ちゃったか・・・起こすのも可愛そうだな)

コンコンッ

提督「どうぞ」

ガチャ

イムヤ「司令官、次の出撃だけど・・・」

イムヤ「・・・何してるの?」ハイライトオフ

提督「なんかろーが寝ちゃってさ。起こすのも可愛そうで・・・」

イムヤ「そもそも、なんで司令官の膝の上に座ってるのかしら」

イムヤ「そんなうらや・・・けしからんこと許せるワケないでしょ」

イムヤ「上官の膝の上に乗り、あまつさえ眠りこけるなんて」

イムヤ「ダメよ。絶対。許されないことよ!」

提督「いや、イムヤだってよく座ってくるじゃないか・・・注意しても」

イムヤ「それは私と司令官の仲だからでしょ!?」

提督(どんな仲なんだろうか・・・)

ろー「・・・もうたべられないって・・・むにゃ」

イムヤ「なんてベタな寝言・・・起きなさいっ!!」

ろー「うん・・・? イムヤ?」

イムヤ「なんで司令官の膝の上に座ってるのかしら?」

ろー「・・・今はろーちゃんの時間だから別にいいんですって」ギュー

イムヤ「・・・降りなさい!!」

ろー「やだって!」

イムヤ「・・・・・・」ニコッ

ろー「・・・・・・」ニコッ

提督(なんか部屋が寒い・・・もう春だってのに・・・)ブルッ


166: 2015/06/13(土) 04:14:21.49 ID:ct7Tl2Kf0
夜、執務室。

提督「どうだ、ここの暮らしは」

南方「まぁ居心地は悪くはないわね」

南方「何度も言うけど、敵である私をこんなに自由にしておいていいの?」

提督「構わん。それと敵ではなく・・・せめて友人には・・・なれないだろうか?」

南方「なってどうするのよ」

提督「少なくても・・・戦わなくて済む」

南方「私個人と戦わずに済んでも戦争は終わらないわよ?」

提督「ああ、分かってるよ」

南方棲鬼の言うとおり、彼女個人と戦わずに済んでも、

それは当然、深海棲艦全体の総意ではないし、戦争は終わらない。

だけど・・・南方棲鬼を鎮守府に迎えて交流するうちに、

深海棲艦とも意思の疎通が出来ることが分かった。

これだけでも大きな進歩だった。

もうしかしたら・・・本当に戦争を終わらせる方法が見つかるかもしれない。

互いに滅ぼしあう戦争は終わりがない。

両者が別の種族であるなら尚更だ。

それは後、何年続くだろう?いや・・・何十年、何百年・・・

何時まで誰かが無慈悲に氏ぬのだろう。

現状は防衛ラインが維持されており、本土が攻撃される可能性は低い。

だが・・・もしも・・・

防衛ラインを抜かれて、海上より艦載機が本土を・・・仮にも首都を強襲したら?

それだけで多数の氏者が出るだろう。

それは夢物語や空想ではなく、現実に起こりえる事態であった。

ここ十数年は本土に直接的な被害はない。

だから国民も、政治家ですら危険は知っていても大丈夫だと

根拠もなく平和ボケしている。

167: 2015/06/13(土) 04:15:32.81 ID:ct7Tl2Kf0
結局は自分自身に直接の被害が出て、当事者にならない限り分からないのだ。

まるで、テレビの中の行った事もない土地の事件でも見ているかのように他人事でしかない。

誰もが心の奥底では分かっているハズなのに。

本土の平穏は仮初であり、常に危険が付きまとっている異常事態だと言うことを・・・

だが自分は忘れない。絶対に。

両親が氏んだ。この戦争で。そしてまだ戦争は続いている。

自分のような人が今後も生まれる現状が許せなかった。

だから、終わらせなくてはならない。それが自分が生きている意味であり、

ロクに覚えていない両親へ出来る唯一の親孝行であるからだ。

南方「・・・変な人ね」

提督「それはお互い様だろう。毎晩執務室に来てはその写真を眺めて・・・」

南方「・・・・・・なんかね・・・懐かしい感じがするのよ」

提督「俺の両親がか?」

提督(・・・両親と面識があったのか?)

艦娘が沈むと深海棲艦になる。そんな話がある。

軍上層部が直接の回答は控えているが、今までの戦闘経験から、

恐らく事実ではないかと自身で結論つけている。

だとすれは・・・もしや両親の元にいた艦娘だったのだろうか。

全ては憶測でしかないし、確固たる証拠もないので判断は出来ない。

だけど、もしそうなら・・・この感情にも納得がいった。

何故か南方棲鬼と話していると懐かしい感覚になるのだ。理由は分からない。

まるで自分は彼女のことを昔から知っているような・・・

記憶には無いが、もうしかしたら子供の頃に会っている可能性もあるわけだ。

提督(・・・考えても仕方ないか)

168: 2015/06/13(土) 04:16:08.09 ID:ct7Tl2Kf0
南方「それに・・・貴方と話しているとね・・・」

提督と同じように、南方棲鬼もまた提督をどこか懐かしく感じていた。

提督と話せば話す程、何故か愛しく感じる。

まるで我が子のように・・・

自分でもこの感情は良く分からない。思い出せそうで思い出せない。

南方「・・・なんでもないわ」

提督「なんだそれ・・・」

南方「早く寝ないと明日に響くわよ」

提督「深海棲艦にそんなこと言われるとは・・・」

提督は面白そうに笑う。

南方「折角忠告してあげたのに酷いわね」

南方棲鬼もくすくすと笑う。

提督「なんか母親みたいだった」

まぁ俺は母親と言うモノが良く分からないんだけどさと付け加えたが、

南方棲鬼の耳には入っていなかった。

南方「・・・母親」

何かが頭の中でフラッシュバックした。

一瞬であったので良く分からない。

だけど、とても大事なものだった気がする。

守りたいものだった。

それを思い出せないのが腹立たしかった。

提督「・・・どうした?」

南方「・・・別になんでもないわ」

コンコンッ

提督「どうぞ」

ガチャ

電「失礼するのです」

169: 2015/06/13(土) 04:16:53.16 ID:ct7Tl2Kf0
提督「どうした。こんな時間に」

電「明日からの作戦ですが・・・」

提督「ああ、何か問題でもあったのか?」

電「いいえ。ただひとつ、気になることがありまして・・・」

電「司令官さんは出撃・・・しないですよね?」

何時もは優しい彼女が強い意志を感じる瞳で見つめてきた。

提督「・・・分かってるよ」

電「ちゃんと言ってくれないと安心できないのです」

提督「絶対出撃しない。ちゃんと司令室で指揮を執るから」

電「じゃあ、約束げんまなのです」

電と指きりをする。

電「嘘付いたら比叡さんのカレー食べさせるのです!」

提督「・・・比叡には悪いがそれは困るな」

電「約束ですよ?」

提督「まだ気にしてるのか? 昔のことじゃないか」

電「忘れないのです。もうあんなことは二度と・・・」

電「司令官さんは前線に出ず、後方で指揮をして欲しいのです」

電「これは、艦隊に所属する艦娘全員の総意だと思って欲しいのです」

提督「分かったって・・・」

電「用件はそれだけなのです」ギュー

提督「なんで抱きつく・・・」

電「こうするとよく眠れるのです。じゃあ、おやすみなさい」

提督「おやすみ。また明日な」

電「はいっ」

電は可愛らしく微笑んでから自室へ戻っていった。

南方「ほんと、貴方は部下に好かれているわね」

提督「そうか? そうだと嬉しいな」

170: 2015/06/13(土) 04:17:31.29 ID:ct7Tl2Kf0
南方「前線に出るなってどういうこと?」

提督「まぁ昔、色々な・・・」

提督の中には自らが護衛艦に乗り込み、艦娘と共に前線に出向き、直接指揮をする者も居る。

以前は直接出向く方が一般的であったらしい。

その方が艦娘の士気も上がるし、何より殆どタイムラグなしで細かな指示が出せる。

深海棲艦に掌握された海域は瘴気が強く、従来の近代化された通信システムが使えない為、

妖精が基本設計をした専用の通信機材で交信する必要があるのだが

本土より遠く離れた上に、海域の瘴気が一定数を超えると通信のタイムラグが大きくなることがある。

その為これを嫌い、大きな作戦では直接前線に赴く者も居るが、姫級等の深海棲艦が居る最前線に

生身の人間が留まるのは危険であり、氏者もそれなりに出ているので

上層部は可能な限り、やらないように呼びかけている。

最も最近は機材の性能も上がっているので以前ほど問題はないのだが・・・

正直、皆を危険な前線に送り出して、自分は安全な後方にいるのは気に入らない。

提督(でも・・・皆にあんな顔されるのは二度と、ごめんだしな)

だから仕方が無い。

今は誰一人失わないように・・・作戦を立て、無事終わらせる。

それだけを考えてればいい。

南方「今の子が鎮守府最強って噂の子?」

提督「最強ね。多分それは戦闘での意味ではないと思うぞ」

電は鎮守府に着任した際に配属された初期艦だった。

彼女と初対面は自分が学生の頃になるので随分長い付き合いになる。

まさか配属されたのが、あの時の電だと思わず互いに驚いたものだ。

初期の鎮守府が小さかった頃から一緒に作戦を考え、苦楽を共にしてきた。

新しく配属される艦娘は、まずは電が面倒を見ていた。

艦娘として、艦の戦闘記憶はあっても、人の姿での戦闘は皆初めてだ。

だから艦種を問わず、電が皆を率いて慣れさせていった。

鎮守府での掃除の当番制や、日常生活の決まりも電が発案したものも多い。

171: 2015/06/13(土) 04:18:06.05 ID:ct7Tl2Kf0
人数が増えて、鎮守府が安定してからは、それぞれの艦種の古株が新人の手ほどきをするが、

初期から所属し、今は高いレベルに居る艦娘に取って電は先輩であり、教育係でもあった。

なので普段は普通に接していても、未だに電に頭が上がらない。

初期組がそうなのだから、彼女達から教えを受けた新人達もまた、電を特別な存在として認識し、

しいては怒られると戦艦でも恐れて頭をさげるという最強駆逐艦電が誕生したのだった。

実際、戦闘力も常識的なレベルを遥かに超越しているワケだが・・・

電本人に言わせれば愛の力らしい。

提督「姉妹愛かね。微笑ましいものだ」

南方「・・・多分違うと思うわよ」

提督「・・・?」

南方「学生時代の話も面白そうね・・・聞かせてくれない?」

提督「その辺は俺だけじゃなくて電に取ってもプライベートだからな。本人に許可も無しに話せないかな」

南方「ちぇっ・・・残念」

提督「さて。今日は休むか」

南方「そうね。私も戻るわ。おやすみなさい」

提督「おやすみ」

提督「明日からの十一号作戦・・・成功させなくては・・・」

172: 2015/06/13(土) 04:18:50.67 ID:ct7Tl2Kf0
翌日。カレー洋。

リ級「敵の進軍が確認されている! 各自、気を引き締めろ!」

イ級「了解」

軽巡棲鬼(なんで私が・・・リ級如きの部下に・・・)

イ級「哨戒に出てた部隊から連絡が途絶えました!!」

リ級「なに!?」

イ級「深海電探に反応アリ! 敵を捕捉、4時方向!」

リ級「見えた・・・この距離では互いに撃てまい。接近して叩くぞ!」

軽巡棲鬼(奴ら艦娘のせいで!! 私は深海エリート街道を外された!!)

軽巡棲鬼(仲間からは五航戦扱い・・・なんて屈辱。ゆるさない・・・絶対に!!)

イ級「敵! 射程外から砲撃を開始しました!!」

リ級「この距離では当たらん。構うな!」

だが予想は裏切られる。

飛んで来た弾は2隻居たイ級の内、1隻を貫いた。

そのまま爆発、轟沈。

艦娘へ向かって進んでいた深海棲艦達の足が止まる。

イ級「この距離で当てた!?」

ロ級「まっ・・・まぐれだっ!」

リ級「バカ!! 止まるな!! 狙われる!!」

夕立(改2)「さぁ!!ステキなパーティしましょっ!!」

水しぶきをあげながら、夕立が恐ろしい速度で迫ってきた。

目は赤く輝き、獰猛な猟犬のようだった。

リ級「敵は駆逐艦が4、軽巡が2か・・・」

リ級は現状の戦力で十分に勝てると踏んだ。

173: 2015/06/13(土) 04:19:29.01 ID:ct7Tl2Kf0
海面を滑る様に移動し、夕立は敵に狙いを定める。

ロ級「うわぁぁぁ!?」

夕立「また私が倒したっぽい!」

ロ級は、ほぼ0距離で頭部を撃たれて爆発した。

夕立「MVPを取れば提督さんは私のモノっぽい!!」

返り血を浴びてニヤリと笑う夕立にリ級は恐怖を感じた。

リ級(コイツは何を言ってるんだ・・・?)

あっという間に2隻が沈んだ。

リ級「くっ! 体制を立て直せ! 固まるな!!」

不知火「沈め・・・」

軽巡棲鬼「痛いっ!? 顔はやめてぇ!!」

不知火は加速を付けて飛ぶ。軽巡棲鬼の顔面に両足でドロップキック。

反動を利用して跳躍し、海面に着水するも勢いを殺さない。

そのまま、残るもう一隻のイ級の右目を抉った。

イ級「ギャァァァァ!?」

睦月(改2)「行くにゃしっ!!」

睦月は動きの止まったイ級の口に魚雷を放り込んで、もう用はないとばかりに

そのまま次の獲物へ向かう。睦月の背後ではイ級が大爆発し、木っ端微塵に消し飛んだ。

不知火「チッ・・・私の獲物を・・・」

睦月「早いもの勝ちでしょ?」

曙「ちょっとあんた達!! 編成がめちゃくちゃじゃない!!」

夕立「早いもの勝ちっぽい!」

由良「もー 少しは作戦通り動いてよ・・・」

艦娘達は戦場に居るのにも関わらず、まるでカフェで雑談でも楽しむかのように喋る。

喋りながらも、攻撃を避けて、敵には正確に砲撃を加えている。

リ級はそれがとても異質なことに感じた。

由良と曙と睦月と不知火が4方向から放った魚雷で軽巡棲鬼も轟沈した。

174: 2015/06/13(土) 04:20:25.48 ID:ct7Tl2Kf0
リ級「馬鹿な・・・なんだこいつ等・・・」

負けを認め、沈むことを覚悟したのだが、攻撃はピタリと止んだ。

リ級「・・・?」

大淀「すいませんが、一度引き上げるので、後6回ほど戦ってもらえますか」

敵がとんでもないことを言ってきた。

リ級「・・・は?」

大淀「まだゲージ割ってないんですよ」

リ級「ゲージ? なんだそれは」

聞けば、こういうことらしい。

出撃希望者が多く、なるべく皆が戦えるように

メンバーを変えて、再度来るので残り6回戦えというのだ。

大淀「6人編成で7回戦えば42人は戦闘できますからね」

由良「その為にゲージって自分ルールを作ったのよ。7回目でクリアなの」

睦月「駆逐艦は数が多いから・・・」

リ級「知るか!! 意味が分からん・・・もういい私の負けだ! 頃してくれ」

不知火「ダメです、次は陽炎の番ですので。姉妹同士はフェアにやるのが陽炎型の鉄の掟なので」

リ級「・・・ホントなんなのお前ら」

その後、しっかり6回ボコられて轟沈させられた。

今まで散々、艦娘や人間の命を奪ってきたので、戦いで氏ぬことに後悔はしないつもりだったが、

これはあまりに理不尽で、意味が分からないと、

絶望と言うより困惑してリ級は沈んでいった。

175: 2015/06/13(土) 04:25:01.51 ID:ct7Tl2Kf0
投下完了しました。
イベント編突入。
書き終わって気に入らないとこ直したり、
書き足したり、誤字チェックしたりするだけなので
割と短期間で投下する予定。

ちゃんと宣言どおり土曜日に投下したでち!!
次は日の夜か月くらいに・・・
仕事行ってきます。

176: 2015/06/13(土) 05:19:42.64 ID:iR3qCNlDO
乙乙

177: 2015/06/13(土) 08:44:25.57 ID:gxhwpdJSo
おつつ
陸海共に浸透しきった『五航戦』がもう、ね…?お前らホントは仲良くできるだろと(ry


引用: 提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」 その2