5: 2011/01/28(金) 18:39:03.37 ID:PTswOFkE0

6: 2011/01/28(金) 18:41:05.23 ID:PTswOFkE0
( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)シリーズ

鬱蒼とした背の高い草をかき分け、時には斧で刈り捌いてゆく。

草で肌を切らぬよう、気をつけながら。


いきなり草の根の氏角から、魔物や動物が飛び出してくるかもしれない。

それにも注意を払う。



( ^ω^)



ブーンは今、マイラの村から西へ離れた、とある場所を目指している。


通称、「 雨の祠(ほこら) 」へ。

ドラゴンクエスト25thアニバーサリー 冒険の歴史書 (デジタル版SE-MOOK)
8: 2011/01/28(金) 18:44:27.44 ID:PTswOFkE0


マイラの村人に聞けば、ロトの勇者はそこに立ち寄ったらしい。


村人『なんでも、そこには変わり種の老人が住んでてね』

村人『ロトの勇者の一族の者を待ってる・・・いや、待ってたっていうやつなんだ』

村人『勇者さん、そこにも向かったみたいだよ』



( ^ω^)


ブーンは森の中を、雑然とした草の根をかき分け歩く。
草木の青々とした空気が匂い立つ。


この長い長い森を抜けると、その祠に着くはずだ。


10: 2011/01/28(金) 18:48:04.02 ID:PTswOFkE0


歩きながら、野草をとっては食み、しゃぶる。


草自体に味や栄養は求めない。
葉にたっぷりと取り付いた朝露が、ブーンの喉を潤すのだ。


道中で、水をきらしてしまった。喉が渇く。


この森のどこかに、川でもある事を希望する。
もしくは、蛇でもいれば、捕まえてその血を飲めるのだが。


11: 2011/01/28(金) 18:50:48.47 ID:PTswOFkE0


願い叶わず、森には水場は無かった。

だが、その森を抜けると――――――



( ^ω^)「・・・あれかお」


遠くに、見えた。

意匠の施された、社のような洞窟のようなもの。

あれがおそらく、雨の祠であろう。


ブーンの歩調が、足早になる。
早く、辿り着きたい。


そして、着いたら、開口一番にこう言おう。


12: 2011/01/28(金) 18:52:25.98 ID:PTswOFkE0



( ;^ω^)「 お水をいっぱい頂けますかお!! 」



13: 2011/01/28(金) 18:54:55.42 ID:PTswOFkE0



爪゚ー゚)「・・・・・・」

( ;^ω^)「・・・・・・」


爪゚ー゚)「・・・どうぞ」チャプ・・コト

( ;^ω^)「はっ!いただきますお!」


ブーンは、杯の水を、ごきゅごきゅと喉を鳴らして飲み干した。


15: 2011/01/28(金) 18:57:53.98 ID:PTswOFkE0


( ; ω )「・・・ぶはぁっっ!」

( ;^ω^)「・・・・・・お水をいっぱい頂けますかお!!」

爪゚ー゚)(ああ・・・いっぱいって一杯じゃなくて“いっぱい”なんだ・・・)

爪゚ー゚)「ほれ」チャプン


老人は再び、壁際の瓶から柄杓で水をすくいとり、
ブーンの前の杯に注ぐ。

それを汲み終わるや否や、すぐさま杯を掴み、齧りつくようにありつく。


冷たい水が、喉の渇きを癒す。

その水の冷たさに、少し喉がキリリとするが、それも心地よい。


老人に再三、水を要求し、それを飲み干す事で、
ようやくブーンは一息ついた。


19: 2011/01/28(金) 19:00:20.40 ID:PTswOFkE0


( ^ω^)「助かりましたお。旅の途中で水を切らしてしまって・・・」

( ^ω^)「水が欲しくて仕方なかったんですお」

爪゚ー゚)「そうかい。それはよかった」

爪゚ー゚)「・・・で、ここに何の用だ?」

爪゚ー゚)「わざわざこんな人里離れた僻地に、危険を冒してまでも
     来るからには、何か用事があるのだろう?」

爪゚ー゚)「大体の理由は察しがつくがな」

( ^ω^)「そうですお。それは・・・」


( ^ω^)「ロトの勇者について・・・聞きたい事がありますお」

爪゚ー゚)「ふむ」


23: 2011/01/28(金) 19:03:35.70 ID:PTswOFkE0


( ^ω^)「実は、彼・・・ロトの勇者の後を追っていますお」

( ^ω^)「ここに立ち寄られたという話を耳にしまして・・・」

( ^ω^)「ぜひ、その時のお話を伺いたく、やってきましたお」

( ^ω^)「どうか、お話を聞かせてもらえませんでしょうか?」


爪゚ー゚)「・・・ロトの勇者の情報か」

爪゚ー゚)「すると君も、竜王討伐の遠征に出ているという訳か?」

( ^ω^)「そうですお」

爪゚ー゚)「そうか・・・」



見た目、年の割に端正で中世的な顔立ちの、
男か女かわからない老人は、話し始める。


25: 2011/01/28(金) 19:06:47.29 ID:PTswOFkE0


爪゚ー゚)「それには、まずわしが何者か、明かさねばなるまい」

爪゚ー゚)「わしの名前は、じぃ。まぁ名前など、どうでもよい」


爪゚ー゚)「時はさかのぼり、かの伝説のロトが、この世界に降り世界を救ったとき」

爪゚ー゚)「彼は、三人の賢者に、あるもの・・・あるいは知識を託した」

( ^ω^)(!)

爪゚ー゚)「その賢者達は、子孫代々に、それを受け継がせていった」

爪゚ー゚)「ロトの血脈の者がそれを取りにくるまで、な」

爪゚ー゚)「そして、わしはその賢者達の末裔の一人・・・という訳じゃ」

( ^ω^)「・・・なるほど」


27: 2011/01/28(金) 19:10:17.76 ID:PTswOFkE0


( ^ω^)(以前、勇者ロトが祀られているという洞窟にいったとき)

( ^ω^)(賢者達の事が、石盤に書かれていたお)

( ^ω^)(その賢者の内のひとりが、この人かお)


ブーンは納得し、頷いて話を聞く。

杯の水を、チビチビと少しずつ飲みながら。

水が少なくなると、老人が足してくれた。

礼を言う。


28: 2011/01/28(金) 19:12:27.89 ID:PTswOFkE0


爪゚ー゚)「・・・数年前、ロトの勇者を名乗る男が現れた」

爪゚ー゚)「その男の出生を聞くなり、彼はロトの一族しか知リ得ぬ情報を持っていた」

爪゚ー゚)「だが彼は、ロトの血脈の証である、“ロトのしるし”を持ってはいなかった」

爪゚ー゚)「そして、わしは試した。彼が本当に勇者かどうか」

爪゚ー゚)「この世界に、“銀の竪琴”と呼ばれるものがある」

爪゚ー゚)「真の勇者なら、見事それを見つけて、わしのもとに持って来れるはずだとな」

( ^ω^)「おお」

( ^ω^)「・・・それで勇者は・・・」

爪゚ー゚)「もちろん持って来た。彼は、わしの難題を見事完遂した」

爪゚ー゚)「・・・これが、その証じゃ」


30: 2011/01/28(金) 19:15:28.44 ID:PTswOFkE0


じぃは、ものものしく後ろに置いてある、それから、布をはぎ取った。

それは、見事な竪琴であった。


( ^ω^)「これが・・・銀の竪琴ですかお」


ブーンは、竪琴に触れようとする。


爪゚ー゚)「まちなさい!それにさわってはいかん」


じぃが、ブーンの動きを制止する。


33: 2011/01/28(金) 19:18:32.88 ID:PTswOFkE0


( ;^ω^)「お?」


爪゚ー゚)「その竪琴は一見きらびやかで、実に素晴らしい音色を奏でるが・・・
     その実、深い魔力を帯びた魔具なのだ」

爪゚ー゚)「その音色は、魔力を放ち、魔物を呼び寄せる」

爪゚ー゚)「これは伝説の、さすらいの吟遊詩人ガライが所有していたものだ」

爪゚ー゚)「彼もまた、魔力を操るものの一人であったために、
     その魔香が竪琴に染み付いたのだ」

爪゚ー゚)「うかつに触れると、魔物を引き寄せるぞ」

( ;^ω^)「そ、そうですかお・・・」


34: 2011/01/28(金) 19:21:12.87 ID:PTswOFkE0


ブーンはまじまじと竪琴を見つめる。


( ^ω^)

( ^ω^)「・・・それはつまり、呪いのようなものですかお?」

爪゚ー゚)「呪いとは、また少し質の違うものだ。まぁ似たようなものだがな」

( ^ω^)(・・・・・・)


36: 2011/01/28(金) 19:22:42.29 ID:PTswOFkE0


爪゚ー゚)「・・・話を続けるぞ。そして、わしはその者をロトの勇者と認めた」

爪゚ー゚)「そして、先祖代々受け継いで来たもの――――――」

爪゚ー゚)「 “雨雲の杖”を、ロトの勇者に託したのだ」

( ^ω^)「雨雲の杖・・・」

爪゚ー゚)「・・・肩の荷が降りたようだったよ」

爪゚ー゚)「“三人の賢者達の重責”から、解放されたようだった」

爪゚ー゚)「これでもう、なにも思い残さず逝けるとな」


爪゚ー゚)「――――――しかし・・・」


38: 2011/01/28(金) 19:25:58.63 ID:PTswOFkE0


爪゚ー゚)「よく考えれば、それは終わりではなかったのだな」

爪゚ー゚)「ロトの勇者が竜王を倒してはじめて、その意味を成すものだ」

爪゚ー゚)「わしがそれに気づいたとき、ロトの勇者は既に――――――」

爪゚ー゚)「あの忌まわしき魔王に捕われてしまっておった」

爪゚ー゚)「・・・もはや、この世に救いは無いものか」



じぃは、自分の杯にも水を汲み、飲む。

悲しげに、杯を見つめる。

水面に映るその眼には、いくばくの光も無い。

これまで何度も見て来た、絶望に囚われた者の眼だ。


40: 2011/01/28(金) 19:28:16.51 ID:PTswOFkE0


( ^ω^)「・・・・・・」


爪゚ー゚)「じゃが、ときどきこうして、お主のような酔狂者が、
     この老人を訪ねてくる。それと話をするのが・・・」

爪゚ー゚)「今のわしの唯一の楽しみかもしれん」


( ^ω^)「・・・酔狂・・・もしかして」

( ^ω^)「ブーン以外にも、同じ目的でここで訪ねる人が・・・?」

爪゚ー゚)「ああ。お主で、7人目になるかの」


やはり、自分と同じ事を考える人間がいた。

竜王のもとへ辿りつくために、ロトの勇者の、その後塵を掴もうとするのだ。


41: 2011/01/28(金) 19:30:27.69 ID:PTswOFkE0


爪゚ー゚)「だが・・・無駄だ」


爪゚ー゚)「ロトの勇者は・・・それはまさに、勇者といっていい剛の者であった」

爪゚ー゚)「あれで竜王の力に届かぬというなら・・・もはや」

爪゚ー゚)「人類に残された道は・・・服従し、蹂躙されるのみよ」

爪゚ー゚)「そしてお主も――――――」


じぃの口調が、どこか諭すようで、そして憐憫をも含んだ様なものになる。


43: 2011/01/28(金) 19:34:04.63 ID:PTswOFkE0


爪゚ー゚)「・・・」

( ^ω^)「・・・ご老人」


( ^ω^)「厳しい旅ですお。辛く長い道のりですお」

( ^ω^)「確かに、ブーンは氏ぬかもしれませんお」

( ^ω^)「しかし自分は・・・」

( ^ω^)「氏ぬ為に旅をするのではないのです」

( ^ω^)「この世界に平和を取り戻すために」

( ^ω^)「ブーン以外の人間も・・・そう」


――――――――――――――――――


       ( ゚∀゚)   ('A`)


――――――――――――――――――


44: 2011/01/28(金) 19:37:23.59 ID:PTswOFkE0


( ^ω^)「例え今の自分の力が、ロトの勇者に及ばないとしても・・・
      竜王に及ばないとしても・・・」

( ^ω^)「いつかきっと、それを超えてみせますお」


爪゚ー゚)「・・・・・・」

爪゚ー゚)「君は、いい眼をしておるな」

爪゚ー゚)「モナーと同じ、確固たる決意を秘めておる」


( ^ω^)


46: 2011/01/28(金) 19:39:08.83 ID:PTswOFkE0


爪゚ー゚)「・・・わしが、彼に渡したあれは」

爪゚ー゚)「あの竜王の島へ渡る方法を紡ぐ為のものだ」

爪゚ー゚)「彼は、その全てを集め、あの島へ辿り着いたのだろう」

爪゚ー゚)「それが具体的にどのような方法なのかは、わしも知らん」

爪゚ー゚)「ただ言える事は、その三人の賢者のうちの一人ならば、
     その方法を知る者がいるであろう」

爪゚ー゚)「訪ねなさい。他の賢者のもとを」


( ^ω^)「わかりましたお」


47: 2011/01/28(金) 19:42:23.62 ID:PTswOFkE0


( ^ω^)「・・・そういえば、ロトの勇者は、どこでその竪琴を見つけたのですかお?」


爪゚ー゚)「うむ。あれは、ガライの村にあったものだ」

爪゚ー゚)「その創立者、ガライの墓――――――その地下は、一つの迷宮になっておる」

爪゚ー゚)「おそろしい魔物・・・悪鬼ひしめく迷宮の最奥に置いてあり・・・」

爪゚ー゚)「それを見事、獲得してきたのだ」


( ^ω^)「・・・なるほど!そういう事かお!」


50: 2011/01/28(金) 19:44:42.34 ID:PTswOFkE0


以前、ガライの村へいたとき――――――村のはずれにある、その墓を見に行った。

大きな墓の下に通ずる道・・・

そこを降りると、扉がある。

それは、なにか微細な青白い光を放っていた。



( ^ω^)『お。これが・・・封印かお』

从 ゚∀从『そうさ。勇者さんが、封印していったんだ』

( ^ω^)『そうですかお・・・』

从 ゚∀从『なんでも、魔力によって封じてあるんだってさ。
      ・・・魔力が何なのかってのは、あたしゃあ、よく知らないけど』

从 ゚∀从『ここは危険だから、人が立ち寄れないようにした方がいいって』

( ^ω^)『へぇ・・・』


51: 2011/01/28(金) 19:46:52.66 ID:PTswOFkE0


ロトの勇者は、あそこで竪琴を見つけた。

そして、もう用はなくなり危険だけが残るその場所を、封印したのだ。


だとすれば、もうガライに行く必要はないと言える。

勇者が宝具を回収した後なのだから。


53: 2011/01/28(金) 19:50:10.70 ID:PTswOFkE0


( ^ω^)「なるほど。いろいろ繋がりましたお」

( ^ω^)「ありがとうございますお!」

爪゚ー゚)「なに、礼はいらん」

爪゚ー゚)「わしこそ、世界の為に命をかけるお主に、礼を言わねばならんようだ」

爪゚ー゚)「頼むぞ、ブーン」

( ^ω^)「はいですお!」


爪゚ー゚)「・・・それと、これを持ってゆきなさい」


じぃは、十字の形をした、ロザリオの様なものをブーンに渡す。

十字の中心に、蒼く輝く小さな水晶がはめ込まれている。


54: 2011/01/28(金) 19:52:43.80 ID:PTswOFkE0


( ^ω^)「・・・これは?」

爪゚ー゚)「魔法の鍵だ」

爪゚ー゚)「その水晶に、魔力が込められている」

爪゚ー゚)「これがあれば、ロトの勇者がガライの墓を封じたときのような、
     魔力の結界を解く事ができる」

爪゚ー゚)「また、どこぞで彼が封印をした地もあるかもしれんしな」

爪゚ー゚)「これがあれば、困らんだろう。使い捨てのものだがね」

( ^ω^)「ありがとうございますお!」

爪゚ー゚)「うむ。そして・・・」


56: 2011/01/28(金) 19:55:13.34 ID:PTswOFkE0


爪゚ー゚)「次にモナーが向かったのは・・・東南の町」


爪゚ー゚)「 リムルダールじゃ 」




( ^ω^)「リムルダール・・・」



58: 2011/01/28(金) 19:58:12.79 ID:PTswOFkE0


ブーンは、支度を整え、発つ準備をする。



( ^ω^)「ありがとうございました。次の指針が見えましたお」

爪゚ー゚)「気をつけてな、くれぐれも」

爪゚ー゚)「・・・頑張りたまえ。じゃが・・・」

爪゚ー゚)「危険な旅になる。それを止めるという事も・・・
     一つの選択肢としてある事を覚えておきなさい。いいね?」


( ^ω^)


59: 2011/01/28(金) 20:00:55.46 ID:PTswOFkE0


( ^ω^)「ご老人」


( ^ω^)「お水、美味しかったですお」

爪゚ー゚)

爪゚ー゚)「・・・はは」

爪゚ー゚)「そうだろう。井戸で冷たい、魔に汚染されない綺麗な水を引いているんだ」

爪゚ー゚)「・・・また、飲みに来なさい」

( ^ω^)「はい。必ず」



水筒に、水をたっぷりと貰う。
帰りは、節約して飲む事にしよう。

礼をいい、ブーンは祠を後にした。


60: 2011/01/28(金) 20:03:24.42 ID:PTswOFkE0


草の根をかき分けながら、ブーンは思う。


あの老人の心の渇きを癒す事ができるだろうか。


自分に激励を言葉をかけつつも、絶望に打ちひしがれたあの眼に。

希望の涙で潤いを与える事はできるだろうか。



( ^ω^)「・・・リムルダールかお」



61: 2011/01/28(金) 20:06:05.58 ID:PTswOFkE0


次の目的地は、リムルダール。


そこに辿り着くまでに、ブーンは長い道のりを経る事になる。


そしてその中で、おそろしい困難が待ち受けている事を、未だブーンは知らない。



( ^ω^)


64: 2011/01/28(金) 20:09:45.68 ID:PTswOFkE0


いや・・・仮に知っていたとしても。


彼は、その歩みを止める訳にはいかないのだ。


そうとも。 止めてはならない。 止まってはいけない。


ただ前を見据え、その茨の道を一歩ずつ歩き続ける。


人々の願いと悲しみの欠片を拾い集めながら。



( ^ω^)



ブーンはただ・・・歩みゆく。 誓い果たす為に。



to be continue...!!



65: 2011/01/28(金) 20:11:31.11 ID:PTswOFkE0


( ^ω^)ブーンの今のステータス

LV14

てつのおの
はがねのよろい
てつのたて


今回登場した敵:なし


68: 2011/01/28(金) 20:19:04.98 ID:PTswOFkE0
以上で本日分の投下終了。今回は一話で。

次の(確定)投下日は来週の金曜になります。2話投下します。
定期更新は、金曜日になりますので、よろしくお願いします。

8: 2011/02/04(金) 21:48:39.15 ID:kdb28XDD0


第12話


9: 2011/02/04(金) 21:49:50.05 ID:kdb28XDD0


雨の祠から、南南東に進路をとる。


霜の降りた大地を、ざくさくと踏みしめる。

凍るような冷気の中で、吐く息が白い。


( ^ω^)



次に目指すは、美しき湖の町――――リムルダール。

11: 2011/02/04(金) 21:51:33.95 ID:kdb28XDD0


竜王の支配が訪れる前は、世界の観光名大地としても名を馳せた美しい湖があり、
また今は、その湖を水堀として軍事的に利用する事で、魔物の侵攻対策としてもいる町だ。


その観光の名所としても名高い町に、期待を膨らませる。

しかし、期待ばかりではない。


( ^ω^)


リムルダールに不安がある訳ではない。

不安の種は、その行く過程の道中にある。


そこへ辿り着くには、2つの難関を越えねばならない。


13: 2011/02/04(金) 21:54:26.85 ID:kdb28XDD0


まず一つ目は、“毒の沼地”。

この先を進めば、そこに突き当たる。


竜王の魔力によって、この世界のいくつかの水場、湖沼は毒を帯びた。
その沼地の泥は、生きる者の体力を奪う呪いを持つという。


沼ばかりではない。
この世界の、あらゆる自然が、悪しき力によって陵辱されている。

今は、以前の美しきアレフガルドの面影も無い。


その毒の沼が大きく広がるのが、毒の沼地。
幾人もの旅人が、ここに沈んだという。


16: 2011/02/04(金) 21:56:52.60 ID:kdb28XDD0


そして、その毒の沼地を超えたとしても、次の難所。

“沼地の洞窟”である。


こちらの地方からリムルダール地方は、海によって隔絶されている。
その地つなぎ、海中をくぐるようにして存在するのが、その洞窟である。


悪鬼ひしめく海底の洞窟。幾人もの旅武芸者が、ここで命を絶っている。


かといって、洞窟を通らず船をつかって渡ろうとすれば、
海上の空を飛び交う魔物の軍勢に襲われる。

逃げ場のない船上なら、絶命は必至。

それならば、洞窟を通り抜けた方がまだましだ。


18: 2011/02/04(金) 21:59:48.50 ID:kdb28XDD0


今のアレフガルドには、こうした危険な場所がいくつも点在するため、
地方から地方への移動が非常に困難で、各国の交流や連携が上手く取れないでいる。

情報の伝達や国交の無き故に、文化の発展等が遅れていた。


これも、竜王の支配によるものだ。



( ^ω^)「・・・・・・お」

( ^ω^)「森が見えたお」


凍り付く平原を踏みしめゆくと、森を見つける。

聞いた話では、この森の奥が、毒の沼地となっているはずだ。


19: 2011/02/04(金) 22:02:34.10 ID:kdb28XDD0


しばらく行くと、川があった。
清流である。

どうやら、ここはまだ毒に汚染されていない綺麗な水が流れている様だ。


( ^ω^)<グゥウウゥウゥ...

( ^ω^)「・・・お。疲れたし、お腹も空いたお」

( ^ω^)「そろそろ飯にするかお」


もう辺りは暗くなってきた。
ここらで、夕飯を取る事に決める。


21: 2011/02/04(金) 22:04:49.62 ID:kdb28XDD0


荷物の中を、ガサガサとあさった。

食料袋から、豆と糒(ほしい)を取り出す。
それに、ハインにもらったホタテの貝柱も。


( ^ω^)「ハインさんに貰った貝柱も、ずいぶん少なくなったお」

( ^ω^)「大事に大事に、少しずつ食べてきたんだけど・・・」

( ^ω^)「もうこれで最後だお・・・名残惜しいお」


川から水を汲み、鍋にとる。

焚き火を起こし、鍋に火をかけ、材料を入れた。


( ^ω^)「うーん・・・これだけじゃ足りん気がするお」

( ^ω^)「・・・そうだお!」


24: 2011/02/04(金) 22:07:38.56 ID:kdb28XDD0


ブーンは、バシャバシャと川に入る。
そして、流れる川底に、目を凝らした。


(*^ω^)「・・・いたお!川エビだお!」


いた。川海老だ。
あまりその身は大きくないが、何匹もいるようだった。


( ^ω^)つ「よっ・・・とと」チャプチャプ


ブーンは、水筒を利用して、ひょいひょいと上手く川エビを捕まえる。

捕まえる時のコツは、後ろからすくい上げる事。

エビは、身の危険を感じたとき、後方にジャンプして逃げる性質を持つ。
なので、こうして後ろからすくい取るようにすると、勝手に入れ物に飛び込んでくるのだ。


26: 2011/02/04(金) 22:09:30.81 ID:kdb28XDD0


ラダトームにいた頃は、野山自然を相手に遊び、生活してきたブーンである。
日頃からそういった知恵を蓄えていたのだ。

ブーンがこうした自然に対する知識を豊富に持ち合わせていた事が、
これまでの彼の過酷な旅を無事に続けてこれた、大きな理由の一つなのかもしれない。


( ^ω^)「ふぅ、いっぱい取れたお」


ピチピチと跳ねる川エビを、鍋に入れた。
熱によって、すぐにエビの皮が真っ赤に染まる。

貴重な調味料だが、塩、香草も加える。


少し贅沢な気もするが、明日の事を考えれば、良いだろう。

おそらく、毒の沼地に入る事になるはずだ。

ならばここで、しっかりと英気を養っておいた方がいい。


30: 2011/02/04(金) 22:12:25.05 ID:kdb28XDD0


( ^ω^)「はやく煮えろおぉ・・・」


ここで怖いのは、魔物の襲撃である。


以前、食事中にスライムに襲われたときの事を思い出し、苦笑した。
おかげで、その食事が台無しになってしまったのだ。

鬱憤を晴らす為に、そのスライムを煮て食ってやったが、
酷い味のうえ、腹痛を起こし、嘔吐した。


今でこそ笑える話だが、当時は洒落にならなかった。
旅の中での食事というものは、まさに命に関わる事なのだ。

自戒し、軽率な行動を避ける事も学んでいく。


35: 2011/02/04(金) 22:15:41.55 ID:kdb28XDD0


( ^ω^)「もう、そろそろいいかお?」


鍋が煮え、良い香りがふうわりと立ちのぼる。
湯気がほうほうと上がり、それが焚き火の炎の明かりで、美しくすら見える。

椀にとり、すすり込んだ。


( ^ω^)「はふぅ・・・ズズ・・・」

(*^ω^)「・・・美味いお!」テーレッテレー!


十分に煮え、柔らかくなった米と豆をを食べれば、
今日一日の疲れが癒された。


鍋の熱気と、美味によってブーンの顔が少し紅潮する。


数欠けしか入れていない貝柱からも、良いダシが出ている。
川エビの風味と相まって、なんともいえない。


37: 2011/02/04(金) 22:19:32.56 ID:kdb28XDD0


( ^ω^)「・・・この、川エビの頭のミソが美味しいんだお!」ジュルジュル

(*^ω^)「はぁ・・・」


このアレフガルドの中でも殊さら寒冷な地方で、
暖かい料理は本当に身にしみる。

胃が温まり、吐く息が更に大きく白くなった。
その息で、かじかんだ手を温める。


明日は、いよいよ毒の沼地に挑む事になるだろう。
幾人もの旅人が命を落とした、危険な場所。


( ^ω^)(・・・・・・)


かすかな緊張が、胸の中に生じる。


42: 2011/02/04(金) 22:23:15.66 ID:kdb28XDD0


( ^ω^)「・・・・・・」ズズ

( ^ω^)「・・・ふぅ、はふ。モグモグ・・・」ズズー・・・


考えてもしょうがない。行くよりほかは無い。


冷たく大きな風が吹く。森の木々がざわざわと悲鳴のように揺れた。

どこか遠くから、獣の遠吠えが聞こえる。

焚き火がパチパチと音を鳴らし、煌々とブーンの顔を照らす。



そして夜は更けていく。 ブーンは、一人。




44: 2011/02/04(金) 22:26:29.64 ID:kdb28XDD0




( ^ω^)


翌朝、ブーンは森を歩く。


段々と周りの草の背の丈が短くなってきた。
葉も、どこか黒ずんで見える。

毒の沼地が近い事を示す。



( ^ω^)「・・・何か嫌な臭いがするお」

( ^ω^)「毒の沼地の臭いかお」


据えた様な、苦々しいような臭気が鼻についてきた。

そろそろか。


45: 2011/02/04(金) 22:28:11.19 ID:kdb28XDD0


( ^ω^)「!」

( ;^ω^)「・・・これが・・・毒の沼地かお」


そこには、大きな沼地が広がっていた。


毒々しい色合い。

それは意思があるかのように、ド口リとうねる。

これほどの寒さでも固まらないのは、竜王の魔力によるものか。

まるで、生き物を飲み込もうと大きな口を開けているかのように。


( ;^ω^)「・・・」

( ;^ω^)「・・・ここを通るのかお」

( ;^ω^)「・・・」

( ;^ω^)「いや、ここで止まってても仕方ないお」

( ;^ω^)「やるんだお、いくしかないお、ブーン!」


48: 2011/02/04(金) 22:31:42.05 ID:kdb28XDD0


自分自身に喝を入れる。


荷を下ろし、整頓を始める。
少しでも余分な重さになる様な物は捨てる。

沼地の中、自重で沈みかねない。


( ^ω^)「・・・よし」

( ^ω^)「いくかお」


沼地に、足を踏み入れる。

ズブズブと足が沼に埋まった。


50: 2011/02/04(金) 22:33:56.99 ID:kdb28XDD0


( ;^ω^)「・・・」


もう一歩。もう一歩。ズブリ、ズブリ。


( ;^ω^)「・・・」

( ;^ω^)「何か、肌が焼け付くようだお・・・」

( ;^ω^)「これが竜王の呪い・・・生命を奪う魔性の沼かお・・・」


生気を吸い取られるかのようだ。
そのまま、どんどん進んでいく。進むしか無い。


(( ;^ω^)ズブズブ

(( ;^ω^)ズブズブ


51: 2011/02/04(金) 22:36:43.90 ID:kdb28XDD0


しばらく経つと、水面が腰辺りまでくる。
上手く足を動かせない。


( ;^ω^)(足がキツいお・・・)


水面はどんどん上がる。胸の辺りまでくる。


( ;^ω^)(・・・・・・)


じわじわと恐怖が、泥のように頭の中を浸食する。


( ;^ω^)


泥沼が首もとまで。
恐怖が加速し、ド口リと身を包む。


56: 2011/02/04(金) 22:40:44.76 ID:kdb28XDD0

自分は、正規のルートを辿っているのか。
方角は間違ってはいないか。


  (( ; ω )


いや、大丈夫。何人もここを通り抜けた者はいるのだ。
自分の身長は低くない。大丈夫だ。


    (( ; ω )


しかし、少しでも地盤が沈下していたら?
流動性のある沼地だ。十分にあり得る。


      (( ; ω )


通り抜けた者は何人もいる。
通り抜けられなかった者も何人もいる。


        (( ; ω )

59: 2011/02/04(金) 22:42:07.68 ID:kdb28XDD0


とうとう、水面が顎までついた。
このままでは。


         ( ;^ω^)(!)


見えた。
前方に、陸と大きな穴。あれが、沼地の洞窟だ。


( ^ω^)みつけたお!


思わずそう声が出そうになったが、水面はもう口元まで達している。

後少し、後少し。だが。


62: 2011/02/04(金) 22:45:17.79 ID:kdb28XDD0


( ;^ω^)(・・・これは)

( ;^ω^)(・・・・・・)

( ;^ω^)(沈むお)


もう、すぐそこまで見えている。
しかし、このままのペースでは、この身は確実に泥沼に埋まるだろう。


しかし、大きく身を唸らせて泳げば、この粘性のある泥にとらわれ沈む気がする。
いや、沈むだろう。

かといって引き返す事もできない。止まる事もできない。
止まっても、その身の重さで沈んでいくだろう。


そして、水面は鼻先をくすぐる。

鼻が埋まれば、息ができなくなる。


63: 2011/02/04(金) 22:48:19.01 ID:kdb28XDD0


( ;^ω^)(・・・)

( ;^ω^)(・・・覚悟を、決めるお)


ブーンは、呼吸を止めた。


そのまま進む。ズブズブと、頭ごと泥中に飲み込まれる。

大丈夫、洞窟は近かった。

少しだけ、呼吸を止めろ。


方向が解らない。しかし、この濁水では見えないだろうし、
仮に目を開ければ、その毒で失明するだろう。


このまま、まっすぐ。
まっすぐ、進めているか?解らない。


67: 2011/02/04(金) 22:51:39.29 ID:kdb28XDD0


苦しくなって来た。

大丈夫。いける。


まだか。

苦しい。

足に何か触れた。


まだなのか。


呼吸がしたい。


68: 2011/02/04(金) 22:53:12.97 ID:kdb28XDD0


いや、考えるな。思考を捨てろ。雑念を消せ。

苦しいという事も考えるな。

考えるな。何も考えるな。ただ、進むのみ。歩くのみだ。

ギコ。

苦しい。違う。考えるな

くるしくない もうすぐだ

カーチャン

だめだ

考えるなということすらかんがえるな

そうおもうことさえも

なにも なにも


なにも


71: 2011/02/04(金) 22:54:26.17 ID:kdb28XDD0














73: 2011/02/04(金) 22:57:26.42 ID:kdb28XDD0




足に、固い感触が走る。

少しずつ、体が浮上していく感覚。

頭に、冷たい空気が触れる。

目、鼻、そして口。



( ; ω )「  ・・・・・・ッッぶっはぁっっ!!  」



大きく、息を吸い込み、吐き出す。

そして、すぐに目の周りの毒を拭う。

目を見開いた。


77: 2011/02/04(金) 23:00:36.25 ID:kdb28XDD0





がいこつ 「    ガガガギャカカカカァァァァッッッッ!!!!    」





(♯^ω^) 「   ッッはあアアアアアアああああおッッ!!!!   」





78: 2011/02/04(金) 23:02:08.08 ID:kdb28XDD0


ブーンの離さず握りしめていた斧が泥の弧を描き一閃する。


突如目の前に現れた、魔物の頭を瞬時に砕き飛ばした。


魔物の体は、ガシャリと崩れ、倒れる。


吹き飛ばした魔物の破片が、沼地にボチャボチャと音をたてて落ちていく。


84: 2011/02/04(金) 23:05:38.67 ID:kdb28XDD0



( ;^ω^)「・・・っはあっ!・・・ぶはぁっ!・・・はぁっ・・・」

( ;^ω^)「はっ!はぁっ・・・!ぐっ、ハァ・・・ はぁ」

( ^ω^)「はぁ・・・ はぁ・・・ ここが」


( ^ω^)「ここが・・・沼地の洞窟かお」



目の前には、巨大な穴が広がっている。

その暗闇からは、湿り気と共に、生き物の蠢く邪悪な気配を感じ取れる。


( ^ω^)「・・・・・・」


87: 2011/02/04(金) 23:08:20.76 ID:kdb28XDD0


先ず、火を起こした。

それから装備を外し、来ている服も脱ぐ。
しかし、武器の斧だけは、すぐに手の届く範囲に置く。


水筒の水を頭に振りかけ、顔の泥を洗い落とす。
口の中も濯ぎ、吐き出した。

飲み水を失うのは痛いが、少しでも毒を落とす為にはしょうがない。

服を火にあて、乾かし始める。


服が乾けば、それを着て装備しなおす。


89: 2011/02/04(金) 23:11:05.58 ID:kdb28XDD0


ブーンは軽く屈伸運動をし、体をほぐす。
あの毒の沼で、大分体力を消耗したようだ。

薬草があればよいのだが、毒水によってダメになっていた。


( ^ω^)「・・・よし」


焚き火の炎を、たいまつに宿らせる。

そして、目の前の暗闇をねめつけるように。


( ^ω^)「・・・・・・いくかお」



91: 2011/02/04(金) 23:13:21.41 ID:kdb28XDD0


これから先は、さらに泥にまみれた戦いになるだろう。


どう足掻く。


しかしその苦境、乗り越えてみせよう。


そしてその困難の中で、竜王を倒す牙を磨くのだ。


身を投じるは、恐ろしき化け物の待ち構える、氏の洞窟。


この先、未踏の地を踏めるか。はたまた、氏人となりうるか。


93: 2011/02/04(金) 23:17:06.99 ID:kdb28XDD0


焚き火の炎を蹴り飛ばし、消した。


後ろから、ぎゃあぎゃあと鳥の声が聞こえる。




( ^ω^)




ブーンは洞窟の暗い暗い、闇の中へ・・・飲み込まれていく。


――――――過酷な運命に、誘(いざな)われるように。




to be continue...!!



95: 2011/02/04(金) 23:18:09.51 ID:kdb28XDD0


( ^ω^)ブーンの今のステータス

LV15

てつのおの
はがねのよろい
てつのたて


今回登場した敵:なし
次回:( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)【Lv.7】



引用: ( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)