1: 2011/07/16(土) 19:06:03 ID:DX3Cc/eI0

3: 2011/07/16(土) 19:10:59 ID:DX3Cc/eI0


第21話


.

4: 2011/07/16(土) 19:12:51 ID:DX3Cc/eI0



結局のところ、人生は自分一人のものだ。


自分さえよければ、他の者の人生なんて知ったこっちゃない。


皆、いつも己の事だけを考えて生きている。


いくら信じようが尽くそうが、それは建前で、他人は所詮他人。


血の繋がりのある者でも。 どんなに愛を囁きあった者同士だとしても。



( ・∀・)

ζ(゚ー゚*ζ


.
ドラゴンクエスト25thアニバーサリー 冒険の歴史書 (デジタル版SE-MOOK)
5: 2011/07/16(土) 19:14:41 ID:DX3Cc/eI0


以前は神を信仰する者がこの世界に多くいた。


そうした時代の教会や、それを信奉する聖職者達には奇跡の力が宿り、
それを使役して生命の復活なども行える者すらもいたという伝記もあるらしい。


しかし今は、とても祈りを捧げて安寧を得られる事などできない。
民衆の多くは信仰を捨てた。

こんな時代だからこそと、敢えて神に祈る人々もいるにはいるが。


それでも霊堂の中へ入ると、神聖味な空気に、身が引き締まる気がする。
神父が一人、十字架に礼拝を捧げていた。


.

6: 2011/07/16(土) 19:15:51 ID:DX3Cc/eI0


(-_-)「・・・・・・この世に、神の加護あらんことを・・・・・・」



ζ(゚ー゚*ζ「神父さま。わたしも、一緒にお祈りさせて頂いてもいいかしら?」

(-_-)「や。これは。ええ、もちろんですとも」

(-_-)「人が来るのは久しぶりなので、気づきませんでした。
     ましてや、祈りを捧げに来る者など・・・」

(-_-)「ささ、こちらで礼拝を捧げるのです」

ζ(゚ー゚*ζ「はい」



( ・∀・)(やれやれ)


.

7: 2011/07/16(土) 19:17:05 ID:DX3Cc/eI0


モララーは椅子に腰掛け、祈るでも無く二人の様子をぼんやりと見つめた。


( ・∀・)(教会に来たいなんて言い出すから何かと思ったが)

( ・∀・)(単に礼拝するだけか。馬鹿馬鹿しい)


見上げれば、天井から薄暗い光が差し込む。
精霊ルビスを象ったステンドグラスも色褪せて見える。


( ・∀・)(まったく、神に祈る奴の気が知れないな)


.

8: 2011/07/16(土) 19:18:26 ID:DX3Cc/eI0


そうだ。神などいない。


少なくとも自分の人生の苦境には顕現しなかったし、
この世界にもし救いの神がいるのだとすれば、なんと怠惰な神な事だ。


結局のところ神頼みってのは、独力で何かを成し遂げようとしない、
他人任せな連中の徒労行為にしか過ぎないんだ。



ζ(゚ー゚*ζ「モララー様、お待たせしました。モララー様は、お祈りはしないのですか?」

( ・∀・)「いや、俺は結構。それより、気は済んだかい?」

ζ(゚ー゚*ζ「ええ、モララー様にも、神の加護があるよう祈りを捧げました!」


やれやれ。そんな事に熱中するくらいなら、
腰の振り方でも勉強してもらいたいものだ。


.

9: 2011/07/16(土) 19:19:55 ID:DX3Cc/eI0


ζ(゚ー゚*ζ「わたし・・・最近思うんです。神の存在を感じるんです」

ζ(゚ー゚*ζ「モララー様に拾われるまで・・・私は孤独でした」

ζ(゚ー゚*ζ「孤児の私は女の店に拾われてから、ずっと彼処に縛られた・・・」

ζ(゚ー゚*ζ「誰も私を本当の部分を見ようとしない・・・
       ただそこにあるだけの商品」

ζ(゚ー゚*ζ「そんな私の前に現れたモララー様は、救いの神に見えました。
       わたしは、貴方のおかげで解き放たれたんです」


別に救ったつもりは無いけれどね。

自分も、そして君も・・・互いを利用しあってるだけだ。


.

10: 2011/07/16(土) 19:21:18 ID:DX3Cc/eI0


ζ(゚ー゚*ζ「モララー様と一緒に旅をしてみて、いろいろな事を知ったんです」

ζ(゚ー゚*ζ「世界がこんなに広い事。人生がこんなにも自由な事を」

ζ(゚ー゚*ζ「目に映る全ての景色が美しく見え始めたとき・・・
       神の存在を意識するようになったんです」



この荒廃した世界が、美しいだって?

冗談でも笑えるものと、そうでないものがある。


.

11: 2011/07/16(土) 19:22:45 ID:DX3Cc/eI0


ζ(゚ー゚*ζ「モララー様、これを」

( ・∀・)「・・・・・・? なんだい?」


それは、銀細工の指輪だった。
宝石等の装飾はなく、シンプルなもの。

いびつにも見えるが、無骨な味わいがまたそれなりの雰囲気を醸している。


ζ(゚ー゚*ζ「モララー様が剣のお稽古をしている最中に、町で作ったんです」

ζ(゚ー゚*ζ「職人さんに習って、私が作ったんです。
       ちょっと出来はよくないかもしれませんが・・・」

ζ(゚ー゚*ζ「モララー様の、旅のご無事を祈願してつくりました」

( ・∀・)「・・・・・・」


.

12: 2011/07/16(土) 19:24:00 ID:DX3Cc/eI0


試しにはめてみた。指にぴったりだった。


ζ(゚ー゚*ζ「お似合いですわ、モララー様!」

( ・∀・)「・・・これを作るにも金がいるだろう。
      確かに君にいくらかの金は渡してはいるが・・・」

ζ(゚ー゚*;ζ「す、すいません。でも・・・」

ζ(゚ー゚*ζ「モララー様に、喜んで頂きたくて」

( ・∀・)「・・・・・・」


.

13: 2011/07/16(土) 19:25:30 ID:DX3Cc/eI0


ζ(゚ー゚*ζ「モララー様は・・・ときどき、どこか寂しそうな顔をなされますね」

( ・∀・)「寂しい・・・?」

ζ(゚ー゚*ζ「ええ。どこか遠いところを見つめるように」

( ・∀・)「・・・・・・」


( ・∀・)「君はさっき、自分は孤独だったといったが」

( ・∀・)「俺もそうさ。孤独だった」

( ・∀・)「でも、それは普通な事さ。人間だれしも孤独なんだ」

( ・∀・)「俺は小さい頃に・・・母親に捨てられた」

ζ(゚ー゚*ζ「・・・・・・」


.

14: 2011/07/16(土) 19:26:55 ID:DX3Cc/eI0


( ・∀・)「駆け落ちだった。父親以外の人間とね。俺や家族を置いて逃げたんだ」

( ・∀・)「貴族だった俺達の家系に傷がついたことで、
      父親は酒に溺れ、俺にあたる。殴る、蹴る」

( ・∀・)「それがまたさらに良くない噂になって、周囲から俺は疎外されたよ」

( ・∀・)「まぁ、昔から何でも一通りのことは出来たからね。やっかみ もあるのかもしれないが」

( ・∀・)「そんな環境がとうとう嫌になって、家を飛び出したんだ。
      名家の何もかもを捨ててね」


.

15: 2011/07/16(土) 19:28:24 ID:DX3Cc/eI0


( ・∀・)「跡継ぎのいなくなった俺の家系が没落しようと知った事じゃない」

( ・∀・)「そうさ、俺もあの最低の母親と同じ・・・結局は独りなんだ」

( ・∀・)「頼れる者なんて、自分の身以外に何一つありはしない」

( ・∀・)「俺も君も・・・何も繋がっちゃあいないんだ」

( ・∀・)「人なんてそんな生き物さ」


( ・∀・)「母さんも・・・・・・自由気まま勝手に、生きてるのだろうさ」


ζ(゚ー゚*ζ「・・・・・・」


.

16: 2011/07/16(土) 19:29:19 ID:DX3Cc/eI0


ζ(゚ー゚*ζ「モララー様は・・・・・・お母様を愛してらっしゃるんですね」

( ・∀・)「・・・・・・何だと?」

ζ(゚ー゚*ζ「そう感じました」

( ・∀・)「・・・馬鹿な。自分を捨てた母親だ。愛情なんてある訳が無い。
      そりゃ何も知らない幼少の頃は、そんな下らない感情もあったかもしれないが」      

( ・∀・)「今はそれどろこか・・・憎んですらいるよ。あの最低の」

ζ(゚ー゚*ζ「いいえ。きっと貴方は、今でもお母様を愛してらっしゃるはずですわ」



やめろ。そんな事はない。そんな筈は無い。


.

17: 2011/07/16(土) 19:30:36 ID:DX3Cc/eI0


ζ(゚ー゚*ζ「わたしも孤独でしたけど・・・でも本当の愛の在処は解ります」

ζ(゚ー゚*ζ「私でよければ、代わりになれれば幸いです」


代わりだと。 お前が、俺の母親に?


ζ(゚ー゚*ζ「女でも、付き人でも。妻でも、母親でも」

ζ(゚ー゚*ζ「貴方が私を望むままに・・・」

ζ(゚ー゚*ζ「お慕いしております、モララーさ



ふざけるな。


( ・∀・)「ふざけるな」


.

18: 2011/07/16(土) 19:31:37 ID:DX3Cc/eI0


(♯・∀・)「お前の様な女に、何が解る。俺の何を知っている」

(♯・∀・)「アカの他人を理解した風な口を・・・きくな!」



モララーは、指輪を投げ捨てた。

指輪が壁に当たり転がる音が、広い霊堂の中で反響する。
神父が、オロオロと様子を見ている。


.

19: 2011/07/16(土) 19:32:24 ID:DX3Cc/eI0



ζ(゚ー゚*;ζ「モララー様!」


   ( ・∀・)



モララーは教会から出て行った。

悲しげな表情の女性と、それに慰めの声をかける神父だけが残された。



.

20: 2011/07/16(土) 19:34:55 ID:DX3Cc/eI0




( ^ω^)「・・・・・・最近、ずいぶん鳥が多い気がするお」


空を見上げて、ブーンは言う。


ξ゚⊿゚)ξ「そうね・・・そういえば、確かにそうだわ」


寄り添うツンが応じる。
ブーンとツンの二人は、リムルダールの市場を散策していた。


.

21: 2011/07/16(土) 19:35:58 ID:DX3Cc/eI0


今後の旅のテーマは、“ラダトームへの帰還”となる。


まずは、姫であるツンをラダトーム城へ無事に帰す事。

それに、暴王住まいし魔の島へ渡る為の方法の一つ・・・
“太陽の石”の情報・・・あわよくば、現物を入手するため。



( ^ω^)(・・・・・・)


ブーンは考えていた。
ツンをどうするか、である。


.

22: 2011/07/16(土) 19:38:31 ID:DX3Cc/eI0


このまま一緒にラダトームへ進むか。

それともツンをリムルダールへ預け、ラダトームからの迎兵を待たせるか。


もし二人共にあの道を引き返すならば、相当の覚悟がいる。
暗闇の洞窟ありき、さらには毒の沼も待ち構える。


二人でいけば、ブーンは自分の身を守る事で精一杯かもしれない。

だが、結局の所、ラダトームから姫の迎えを出兵させたとしても、
それ達はブーンと同じ道程をたぐる事になる。

屈強な兵士でも、あのコースを巡れば、それなりに命を落とす者もいるはずだ。


それならば、自分一人でツンを送り届けた方が良いか。


.

23: 2011/07/16(土) 19:40:37 ID:DX3Cc/eI0


それに。


ξ゚⊿゚)ξ「嫌!ブーンと離れるなんて、嫌よ!」

( ^ω^)「ツン」


何より、本人がブーンと共にある事を選んだ。
こういう状態のツンは頑固だった。


数日ほど前にリムルダールにツンを一人で残し、
づーのいる聖なる祠に足を運んだ時も
帰って来たらツンはもうブルブルと震え、怯えていたのだ。

今は一人が、怖いのだろう。


.

24: 2011/07/16(土) 19:44:13 ID:DX3Cc/eI0


ならば、共に行こう。

あの洞窟からの旅中で、命を助け合った二人だ。
ここまできたら一蓮托生でも構わない。

この薄幸の姫君を、必ずや守り通してみせよう。




( ^ω^)「ラダトームか・・・懐かしいお」

ξ゚⊿゚)ξ「お父様・・・きっと心配しているわ・・・」


ラダトームに向けての旅支度を始める。

市場でいろいろと見て回ろう。

今日はいつにも増して、市場に活気がある気がした。


.

25: 2011/07/16(土) 19:46:15 ID:DX3Cc/eI0



( ^ω^)「・・・ん?」


( ・∀・)「・・・お」


あの戦士だ。市場の裏の、目立たぬところに
樽に腰をかけて休んでいた。

しかし、よくよく顔をあわせるものだ。
それなりに広いこのリムルダールで。

何かの腐れ縁なのだろうか。


.

26: 2011/07/16(土) 19:46:59 ID:DX3Cc/eI0


( ^ω^)「また会ったかお」

( ・∀・)「ん・・・あ、ああ。」

( ^ω^)「お?何だか元気ないおね。いつもの憎まれ口はどうしたお?」

( ^ω^)「それに、いつも一緒にいるデレさんは今日はいないのかお。
      アンタにはもったない――――――

( ・∀・)「うるさい」


( ;^ω^)「・・・おっ?」


.

27: 2011/07/16(土) 19:48:49 ID:DX3Cc/eI0


何か、今日は機嫌が悪いようだ。
いつもなら、気取った台詞まわしで返答してくるものだが・・・。

どことなく真剣味を帯びたその口調に、一瞬ブーンは調を外した。


( ^ω^)「・・・何かあったのかお?」

( ・∀・)「・・・・・・お前には関係ない事さ。口を出すなよ」

( ^ω^)「あっそうかお。確かに関係ないお」

( ^ω^)「でも、そう仏頂面じゃあ、せっかくのイケメン()が台無し・・・」

( ・∀・)「・・・・・・」

( ;^ω^)「まあ、いいお。じゃあ――――――」



.

28: 2011/07/16(土) 19:49:41 ID:DX3Cc/eI0



   「た、大変だ!!魔物の襲撃がくるぞ!!」
       
              「きゃあああああああああああああああ!!」
  
        「女子供は、屋外に隠れろ!!」


( ^ω^)「!?」

( ・∀・)「!」

ξ;゚⊿゚)ξ「っ、ブーン!?」

( ;^ω^)「市場の中央の方だお。何があったお・・・!?」


三人は、声のする方へ移動する。
数名の中心に円状に人だかりが出来ていた。


.

29: 2011/07/16(土) 19:51:37 ID:DX3Cc/eI0


( ^ω^)「もしもし、いったい何があったんですお?」

村人「あ、ああ!実は、水堀の外壁の見回りをしている憲兵から連絡が・・・」

村人「大勢の魔物が、空からこちらの街へ移動してきているとの事だ!」


( ;^ω^)「!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「そんな・・・」

( ・∀・)「・・・・・・」


.

30: 2011/07/16(土) 19:52:26 ID:DX3Cc/eI0


村人「最近、よく空に見えた鳥達・・・あれは鳥でなく、魔物だったんだ・・・!」

村人「大変だ・・・憲兵によると、もう半刻以内には街へ侵入してきそうだと・・・」

村人「くそっ!いくらスゴい水堀が会っても、空から攻められたんじゃ・・・」

村人「とにかく、兵士は今にも街の至所に配置されるし、
    戦える男共は武器をもって備えてくれとの事だ」

村人「ぐ・・・無茶だ!兵隊でもない俺達が戦うなんて・・・!」


周囲のざわつきは増し、悲鳴も漏れた。

明らかに混乱している。 自警団らしき者達が、住民を何とか統制しようとしている。


.

31: 2011/07/16(土) 19:54:25 ID:DX3Cc/eI0


( ;^ω^)「・・・大変な事になったお・・・!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン・・・私たちも隠れて・・・」

( ^ω^)「・・・・・・」


( ^ω^)「・・・ツン。聞いてくれお。ブーンは、街の人と一緒に戦うお」

ξ;゚⊿゚)ξ「ブ、ブーン」

( ・∀・)「・・・・・・」

( ^ω^)「こんな事態をほっとけないお。それに――――――」



そうだ。彼なら――――――ロトの勇者、モナーなら。

きっとこの場でも、剣をとったに違いない。



.

32: 2011/07/16(土) 19:55:23 ID:DX3Cc/eI0


( ^ω^)「大丈夫だお。どうしても危なくなったら、
      ブーンも戦況をみて離脱するお。元々一人でどうにかできる相手じゃないお」

ξ;゚⊿゚)ξ「・・・・・・」

( ^ω^)「とにかく、自分のできる所まで・・・」


( ・∀・)「いやあ、カッコいいねえ。正義の戦士さんは!」

( ^ω^)「!!・・・・・・」

( ・∀・)「アカの他人の為、自分の命すら危険に晒すなんて!
      さっすが竜王を倒すなんて吹聴してるだけの事はあるねえ」


.

33: 2011/07/16(土) 19:56:52 ID:DX3Cc/eI0


( ^ω^)「・・・アンタは、戦わないのかお?」

( ・∀・)「フン、馬鹿馬鹿しい。なんで俺が戦わなくちゃならないんだ?」

( ・∀・)「正義の為に・・・なんて、自己陶酔も大概にしたらどうだい?」


( ・∀・)(そうさ・・・人なんて、みんな自分の為に生きる事で精一杯さ――――――)


.

34: 2011/07/16(土) 19:58:07 ID:DX3Cc/eI0


( ^ω^)「・・・別にアンタが戦わない事に、口を出すつもりは無いお」

( ・∀・)「・・・・・・」

( ^ω^)「だけど、ひとつ頼みがあるお」

( ・∀・)「何だ・・・?」


( ^ω^)「ブーンが離れる間・・・ツンを守ってやって欲しいお」

( ・∀・)

( ^ω^)「なんだかんだいって、アンタそれなり腕が立つお。だから」

( ^ω^)「ツンを・・・よろしく頼みたいんだお」

( ・∀・)「・・・はっ」


.

35: 2011/07/16(土) 20:00:09 ID:DX3Cc/eI0


( ・∀・)「もし俺がいなかったら・・・どうしてたんだ?」

( ・∀・)「ツンさんをおいて残していくんて、そんな非情な真似でもしてたというのか」

( ^ω^)「・・・・・・」

( ・∀・)「ツンさんも何かいってやりなよ・・・ほら。
      コイツはわざわざ命を・・・」

ξ ⊿ )ξ「・・・ブーン」



ξ ⊿ )ξ「 氏なないで。 」


( ^ω^)「だお」

( ・∀・)「!」


.

36: 2011/07/16(土) 20:02:15 ID:DX3Cc/eI0


( ・∀・)「ツンさん・・・それでいいのかい?もしかしたら二度と会えなくなってしまうかも」

ξ ⊿ )ξ「いいの・・・」

ξ ⊿ )ξ「わたしが生きてるのも・・・今のわたしがあるのも・・・ブーンのおかげ」

ξ ⊿ )ξ「ブーンの心の、毅然とした“正義”のおかげなの」

( ^ω^)「・・・」


ξ ⊿ )ξ「だから、わたしはブーンを止めない。止められない」

ξ ⊿ )ξ「それでこそ・・・ ブーンなのよ」

(;・∀・)「・・・・・・」


.

37: 2011/07/16(土) 20:03:22 ID:DX3Cc/eI0



ξ ⊿ )ξ「だから・・・ブーン・・・・・・」



ξ;⊿;)ξ「絶対・・・帰ってきて。」




( ^ω^)


( ・∀・)


.

39: 2011/07/16(土) 20:04:29 ID:DX3Cc/eI0



ツンは、涙を流した。

ブーンがいなくなってしまうのかとの、不安からくる涙ではない。


誰かを守る為に、けれん身なく、その命を賭す事ができる――――――

それがブーンの心の強さであり、またその美しさに対して・・・


ツンは、涙で讃えたのだ。


それが今、戦場に立ち向かう戦士に対し、唯一ツンに出来る事だから。


彼女にできる、背一杯の祝福だったから。



.

40: 2011/07/16(土) 20:05:53 ID:DX3Cc/eI0


( ^ω^)「大丈夫だお。ツンを決して一人にはしないお」

ξ;⊿;)ξ「・・・グスン」コクリ

( ^ω^)「って事だお。ツンを頼むお」

( ・∀・)「・・・・・・」


( ^ω^)「アンタに預ければ安心だお。じゃあ・・・」

( ・∀・)「待てよ。それはできない」


.

41: 2011/07/16(土) 20:06:28 ID:DX3Cc/eI0


( ^ω^)「・・・」

( ・∀・)「俺もいく。俺も戦うよ」

( ^ω^)「!!」


( ・∀・)「別に、深い意味は無いけどね・・・」

( ・∀・)「何だか、これじゃあ俺がカッコ悪いみたいじゃないか」

( ・∀・)「それは俺の美学的に・・・」

( ・∀・)+「許せないね」キラリ

( ;^ω^)「あ、そう・・・」


.

42: 2011/07/16(土) 20:07:59 ID:DX3Cc/eI0


( ・∀・)「お前ばっかりに良い格好はさせないぜ」

( ^ω^)「・・・おっおっ!まあいいお」

( ^ω^)「一緒に、やってやるかお!」

( ・∀・)「危なくなったら、速攻逃げるけどな」

( ^ω^)「好きにしろお」

( ・∀・)「水堀の方から攻めてくると言ったな・・・じゃあ、そっちにいくか」



ξ;⊿;)ξ「ブーン・・・」

( ^ω^)「ツン。ショボン先生の病院に、隠れやすい地下室があったお。
      そこにかくまってもらうといいお。あそこなら比較的安全な筈だお」


.

43: 2011/07/16(土) 20:10:22 ID:DX3Cc/eI0


( ^ω^)(・・・ツン。ありがとうだお)

( ^ω^)(貴方の想いに報いる為にも・・・必ず生還して戻って来るお)



( ・∀・)(・・・・・・)

( ・∀・)(デレは・・・今何処にいるんだ・・・?)

( ・∀・)(・・・・・・・・・)

( ・∀・)(デレ)


.

44: 2011/07/16(土) 20:11:46 ID:DX3Cc/eI0



それぞれの思いを秘めつつ、戦士達は邪悪の強襲に挑む。


相容れぬ戦士達が、手を組むときだ。


( ^ω^)


( ・∀・)




風は、二つの小さな勇気を吹き飛ばそうとするかのように。


空は、この世界の運命を握る戦士達を、事も無げに見下ろしていた。




to be continued...!!


.

46: 2011/07/16(土) 20:13:01 ID:DX3Cc/eI0

( ^ω^)ブーンの今のステータス

LV20

はがねのつるぎ
はがねのよろい
てつのたて


( ・∀・)モララーの今のステータス

LV22

はがねのつるぎ
まほうのよろい
みかがみのたて


今回登場した敵:なし

.

60: 2011/07/19(火) 18:21:50 ID:cKMXLK5I0
今日の夜あたり、投下したいと思います。
何時になるかまだわかりませんが、21時以降かと思いますので
お暇があれば御付き合い。

64: 2011/07/19(火) 21:33:26 ID:cKMXLK5I0


第22話


.

65: 2011/07/19(火) 21:37:27 ID:cKMXLK5I0



美しい湖を水堀が守る、リムルダール。

その上空を、魔の軍勢が取り囲むように飛び交う。



( ・∀・)「おいおい・・・・・・なんだいアレ」

( ^ω^)「・・・・・・すごい数だお」

( ・∀・)「・・・・・・」

( ^ω^)「・・・・・・」

( ・∀・)「ま、やるしかないね」

( ^ω^)「だお」


( ・∀・)「君ね・・・・・・頼むから、俺の足を引っ張らないでくれたまえよ」

( ^ω^)「こっちのセリフだお」


.

67: 2011/07/19(火) 21:39:00 ID:cKMXLK5I0


ブーンとモララーは、街の外壁から見上げる。

二人だけではない。

周囲には、リムルダール軍の兵士達が、ざんと武装し居並ぶ。

彼らは、緊張と不安入り交じる表情で、空を見上げていた。
士気を鼓舞する太鼓が、まるで祭りの様にドンドンと鳴らされている。


.

68: 2011/07/19(火) 21:40:56 ID:cKMXLK5I0


( ^ω^)「しかし・・・」


依然、敵軍は滞空したままこちらの様子を伺っているようだった。


( ^ω^)「なぜ、すぐに攻めて来ないんだお?」

( ・∀・)「・・・・・・」

( ・∀・)「さあね」


( ^ω^)「奴らの目的は、急襲にあったんじゃないのかお?」

( ^ω^)「リムルダール軍は、敵に対する戦力的不安はともかくとして、
      もう既に態勢を整えてしまったお」

( ^ω^)「こうなる前に、こちらの間隙をついて襲いかかって来るものとばかり思っていたお」

( ・∀・)「・・・・・・」


.

69: 2011/07/19(火) 21:42:54 ID:cKMXLK5I0


( ^ω^)「いったい、どういうつもりなんだお・・・何故、姿を見せたのか・・・」

( ^ω^)「それに、こんな真昼間から攻めてくるなんて・・・」

( ・∀・)「フン、魔物の考える事なんて考えたって解るもんか」

( ・∀・)「俺達に出来る事は、攻めてきたあいつらを迎え撃つ事だけ。
      それしかないんだからな」

( ^ω^)「・・・・・・」


兵士「ああ、神様・・・どうか、お助け・・・」


隣で、兵士が震えながら祈りを捧げている。


( ・∀・)「ふん。どいつもこいつも・・・」

( ・∀・)「この世界に神なんて・・・いやしないってのに」

( ^ω^)「・・・・・・」


.

70: 2011/07/19(火) 21:44:37 ID:cKMXLK5I0


モララーは、腰もとの瓶の栓を開け、グビリと飲む。


( ・∀・)「ふっ・・・く・・・っと」

( ^ω^)「おい。酒は、ほどほどに止めとけお」

( ・∀・)「わかってるさ。酔いで剣がふらつく、なんて事はない」


一口だけ飲むと残りは剣にかけた。

濡れた剣先が、ギラリと光る。


( ・∀・)「俺の方が優れた戦士だってこと、証明してやっちゃうからな」

( ^ω^)「フヒヒ、冗談よせお。坊ちゃん剣士」


二人は、横目でちらと相手を一瞥し、
目が合うと、ばつが悪そうにふいっと空に視線をやった。


.

71: 2011/07/19(火) 21:50:37 ID:cKMXLK5I0




  ∧
(III::.T.I) 「・・・・・・」コー・・コー・・



甲冑の騎士が、鳥の魔物の背にのり、下界を見下ろしている。



.

72: 2011/07/19(火) 21:53:47 ID:cKMXLK5I0


  ∧
(III::.T.I)

  ∧
(III::.T.I)

  /∧
((III::.T.I)) 「!」 ザワッ



甲冑の騎士の脳内に、直接語りかける声がある。


川 ゚ -゚)【どうした、我が同胞よ】ザッ----・・・


.

73: 2011/07/19(火) 21:56:53 ID:cKMXLK5I0

  ∧
(III::.T.I) 「ウグ・・・グー・・・」

川 ゚ -゚)【なぜ攻めぬ。目標の人間の巣は目前ではないか】

  ∧
(III::.T.I) 「グ・・・ニン・・・ゲン・・・」

川 ゚ -゚)【そうだ。我らが宿敵、人間を滅ぼすのだ】

  ∧
(III::.T.I) 「グが・・・オオ・・・・・・」

  ∧
(III::.T.I) 「ニンゲン・・・敵・・・」


川 ゚ -゚)【そう、目の前の脆弱な生き物は敵。だから潰せ】

  ∧
(III::.T.I) 「・・・オゴオ・・・」


.

74: 2011/07/19(火) 21:58:27 ID:cKMXLK5I0


川 ゚ -゚)【貴様の活躍を竜王様も望んでおられるのだぞ】

川 ゚ -゚)【我らが“四天王”の名に恥じぬ功績を・・・】

川 ゚ -゚)【頼むぞ・・・“氏神”よ――――――】ザザッ----・・・



  ∧
(III::.T.I) 「・・・・・・」コー・・コー・・

  ∧
(III::.T.I) 「敵・・・潰ス・・・ニンゲン・・・ころす・・・」

  ∧
(III::.T.I) 「全軍・・・襲撃・・・用意・・・」


( ゚∋゚)「!」ピクッ


.

75: 2011/07/19(火) 21:59:50 ID:cKMXLK5I0


騎士を乗せた巨大な魔鳥獣(キメラ)が、
その声を聞くなり、甲高い声で鳴いた。

周囲の鳥の魔獣が、戦列を成してゆく。


  ∧
(III::.T.I)


  ∧
(III::.T.I) 「イけ・・・・・・」


( ゚∋゚)「~~~~~~ッッ!!」


一斉に、魔物が急降下してゆく。



.

76: 2011/07/19(火) 22:02:26 ID:cKMXLK5I0





( ^ω^)「!!」

( ・∀・)「ついに、きたか」


上空の魔物が動き出した。

群れは、幾つかの塊に分かれ、飛んで来る


キメラ「ガアアアアアアッッ!!」


( ・∀・)「キメラか」


体は蛇の様で、それに翼と嘴(くちばし)。
異形の魔物が、次々に襲い来る。


.

77: 2011/07/19(火) 22:03:32 ID:cKMXLK5I0


( ・∀・)《・・・ギラッ!》ドウッ


キメラ「グギャアッ・・・!?」ボンッ


火球を食らい、魔物がメラメラと炎を帯びて暴れ落ちていく。



( ^ω^)「おおっ。呪文かお!」

( ・∀・)「ほう。呪文の存在を知ってるとはね。見直したよ」


剣を振るいながら、二人は会話する。


.

78: 2011/07/19(火) 22:05:39 ID:cKMXLK5I0


( ^ω^)「まあ、これでも伊達に各地をまわって旅してる訳じゃないからね」


キメラ「ギャアアアアアッッ」

村人「うわああああああああ!!?」


( ^ω^)「・・・ハァッ!」バヒュザシュッ!

キメラ「グゲッ・・・!」ゴトッ

村人「あ・・・ああ・・・ありがとうございます!」

( ^ω^)「戦えない人間は、早く安全なところへ急ぐお」


( ・∀・)(へえ・・・なかなかの剣捌きじゃないか)

( ・∀・)(俺と闘り合った時は、本調子じゃなかった・・・か)


.

79: 2011/07/19(火) 22:07:39 ID:cKMXLK5I0


((♯^ω^)「はっ!ふっ!」シュバッ!ガキッ!


((♯・∀・)「しっ!せいっ!」ジャクッ!バウッ!



兵士1「お、おい、あいつら見ろよ。すげえ勢いで魔物を倒してるぜ!?
     特にガタイの良い方は、ほとんど一撃だぞ・・・」

兵士2「ほ、本当だ・・・ 細身の方も、何かすごい術で応戦している・・・!?
     あ、あいつらの側にいた方がいいかな・・・」


猛撃を振るうブーンとモララー。

調練を受けたリムルダールの兵士は、
他国と比べても高水準の戦闘力を持つと言われる。

その精鋭達と比較しても、戦場においてこの二人は、ひと際の異彩を放っていた。


.

80: 2011/07/19(火) 22:10:02 ID:cKMXLK5I0


( ^ω^)


ブーンは、凄まじい剣撃を繰り出し、魔物を圧倒する。


( ・∀・)


モララーは、剣と呪文の双方を上手く使いこなし適切に敵を鎮圧する。


敵味方の屍骸が積もりゆくさなか――――――
いつしか、二人は背中を合わせるように、周りからの攻撃をいなしてゆく。


だが・・・


.

81: 2011/07/19(火) 22:15:18 ID:cKMXLK5I0


( ;^ω^)「・・・・・・ハァッハァッ!」ドシュッ!

(;・∀・)「・・・ちっ!」ドウッ!ボシュッ

( ;^ω^)(数が――――――    )

(;・∀・)(    ――――――多い!!)



敵の猛攻は衰えない。

いくら切捨てても、次々に空から舞い降りてくるのだ。

無尽蔵に思える敵兵に対し、こちらの兵士は、どんどん傷つき倒れいく。
目に見えて少なくなっていくのが解る。


このままでは・・・


.

82: 2011/07/19(火) 22:21:59 ID:cKMXLK5I0


(メ;^ω^)「ハァッ、ハァッ!」

(メ;・∀・)「ち・・・《ホイミ》・・・!」





兵士「戦闘できない民間人の方!
    速やかに屋内、望ましくは地下などに避難してください!」

兵士「戦える男は、武器を常に携帯するように・・・」


村人「きゃあああああ!!」

村人「うわあああああああ!!」


ζ(゚ー゚*ζ「・・・・・・」


.

84: 2011/07/19(火) 22:24:01 ID:cKMXLK5I0


ζ(゚ー゚*;ζ(・・・・・・)

ζ(゚ー゚*;ζ「モララー様!モララー様ぁー!」

自警団員「おい君!危険だから屋内へ・・・」

ζ(゚ー゚*;ζ(・・・・・・)


ζ(゚ー゚*;ζ(モララー様・・・いったい何処に・・・)

ζ(゚ー゚*;ζ


.

85: 2011/07/19(火) 22:25:27 ID:cKMXLK5I0


ζ(゚ー゚*;ζ「あっ、あの」

自警団員「君、隠れろと・・・」

ζ(゚ー゚*;ζ「す、すいません。人を探してるんです。
        細身で、緋色(ひいろ)の鎧を着ていて・・・」


自警団員「鎧・・・?戦闘に参加の者か?それならば、自警団兵士でない者は、
      北門広場方面に配置されているはずだが・・・」

ζ(゚ー゚*;ζ「ありがとうございます!!」タッ


自警団員「あっ、おい君!?」


.

86: 2011/07/19(火) 22:27:14 ID:cKMXLK5I0




(メ; ω )「グ・・・ふぅ・・・」

(メ; ∀ )「・・・・・・」


限界に達しようとしていた。


幾十匹の魔物を切り裂いたのか。
いや、十の桁ではきかぬかもしれぬ。

剣と体は、返り血と己の血で赤黒く染まる。


表情は虚ろで、呼気吸気は荒ぶるほかなし。
それでも剣を振るわねば、降り掛かる火の粉を払えはしない。

いや、火勢は増していき、じりじりと我が身を焦がしつつある。


.

87: 2011/07/19(火) 22:29:01 ID:cKMXLK5I0


(メ;・∀・)「ああ・・・もうね。正直おいとましたいわ」ハァ

(メ;^ω^)「そうだおね・・・でも、ブーン達は敵側に完璧に目つけられてるおね」ハァ

(メ;・∀・)「そのようだな・・・」ハァ、ゼェ

(メ;^ω^)「少々・・・派手に暴れ過ぎたかお」ハァ、ハァ


(メ;・∀・)「ち・・・これだから・・・やめときゃ良かったかな」

(メ;^ω^)「おっおっ。骨は拾ってやるから、安心してぶっ倒れるといいお」

(メ;・∀・)「へへ――――――


.

88: 2011/07/19(火) 22:31:31 ID:cKMXLK5I0


メイジキメラ「ギャアアアアアアアアアア」


(メ;・∀・)《――――――ぬかせよ》ドウンッ!


メイジキメラ「ハギャッ!!」バシュウッ


(メ;・∀・)(くそ・・・もう魔力も体力も限界に近い)

(メ;・∀・)(どう切り抜ける・・・)


(メ;^ω^)「・・・オオオオッッ!!」ビギュッ

(メ;^ω^)(・・・・・・血を流し過ぎたお・・・)

(メ;^ω^)(剣を握る力も・・・もう僅かか・・・)


.

89: 2011/07/19(火) 22:32:50 ID:cKMXLK5I0


  ー・・・様

     ・・・ラー・・・ 様!


(メ;・∀・)(ぐ・・・デレの声が聞こえる・・・幻聴か)

(メ;・∀・)(これは・・・いよいよマジでヤバいかな・・・)


「 ・・・ララー様!モララー様ぁー!!」


(メ;・∀・)「・・・えっ?」


ζ(゚ー゚*ζ「 モララー様!! 」


.

90: 2011/07/19(火) 22:36:30 ID:cKMXLK5I0


(メ;・∀・)「で、デレ?!何故こんな所に・・・避難してなかったのか・・・!?」

ζ(゚ー゚*ζ「離れたモララー様の事がご心配で・・・いても立ってもいられませんでした」


ζ(゚ー゚*ζ「やはりモララー様は・・・民衆の為に剣をとっておられたのですね!!」

ζ(゚ー゚*ζ「す・・・素晴らしいです、モララー様!!」

(メ;・∀・)「おい、ここは危ない。すぐに避難するんだ!」


キメラ「カガアアアアアッッ」


(メ;^ω^)「・・・はっ・・・!!」ビシッ!


.

91: 2011/07/19(火) 22:37:42 ID:cKMXLK5I0


(メ;^ω^)「モララーの言う通りだお。デレさん、ここは危険だお。
       ブーン達から離れた方がい


   !?


:((メii・∀・)): ゾッ

:((メ;゜ω゜)): ザワッ



瞬間、戦慄が走る。

いい知れぬ悪寒を感じた二人は、素早くその場から跳んだ。

そして、すぐさま背中と背中を向け合う。


.

92: 2011/07/19(火) 22:40:10 ID:cKMXLK5I0


この強烈な気配は。 全身の毛が逆立つ様な感覚――――――
一瞬で口内は渇き、動悸が激しくなる。


一匹の魔物が上空からもの凄い速度で接近する。

それは轟音を立てて着陸。
石畳の地面を砕き、凄まじい砂埃が宙を舞う。


((メ;゜ω゜))

((メ;・∀・))


――――――圧倒的な存在感。




        ( ゚∋゚)



.

93: 2011/07/19(火) 22:41:45 ID:cKMXLK5I0


(メ;・∀・)(なんだ・・・コイツ・・・ッ!?)

(メ;゜ω゜)(ッ・・・!)


ブーンとモララーは、瞬時に戦力差を感じ取る。



(メ;・∀・)(なんて巨大(デカ)さだ・・・ちくしょう、化け物め・・・!)


(メ;゜ω゜)(こ・・・ この鳥の魔物・・・強い・・・!
       “あの時”のドラゴン・・・いや、それ以上・・・!?)


( ゚∋゚)


.

94: 2011/07/19(火) 22:42:45 ID:cKMXLK5I0


仮にこちらの状態が負傷なく全快だったならば・・・
この二人が共闘すれば、おそらくは善戦するであろう。


(メ;・∀・)

(メ;^ω^)


しかし、二人手負いのこの状況に、戦士達の焦燥は動悸とともに募っていく。


目の前のキメラは、他のキメラの数倍大きい。

その巨躯で翼を羽ばたかせると、それだけでものすごい風圧が生じる。


.

95: 2011/07/19(火) 22:44:26 ID:cKMXLK5I0


兵士「く、くそっ。う、うわああああああ!!」


(メ;・∀・)(!)


( ゚∋゚)「・・・・・・」ゴヒュッ!

兵士「しゃあ・・・ぱっ!?」パンッ


(メ;゜ω゜)「!!ッッ」


勇んで切り掛かった兵士に、一瞥もくれずに魔物の尾の攻撃が一閃する。

果実を壁に思い切り叩き付けたように、
兵士の頭蓋が軽い音と血しぶきを飛散し砕かれた。


.

96: 2011/07/19(火) 22:46:14 ID:cKMXLK5I0


(メ;・∀・)「な・・・・・・」

(メ;^ω^)(み、みえなかったお・・・!)


( ゚∋゚)


鳥は、ギ口リと二人をねめつけた。
そして、その姿が消えたかと思うと――――――


((メ;・∀-)「かっ・・・はがッ・・・!!」


ζ(゚ー゚*;ζ「モララー様ぁーーーー!!」


モララーに体当たりした。 数メートル吹っ飛び、
民家の建物に激突・・・そのまま壁ごと突き抜けた。


.

98: 2011/07/19(火) 22:50:16 ID:cKMXLK5I0


((メ;゜ω゜)「モラ


ブーンの骨盤付近に、一撃。
単純な体当たりというには、あまりに強烈な威力をもつ。

衝撃に流され、叩き転がされた。
失血で感覚が麻痺しかけていた身体に、激痛が走る。


((メ; ω )「ヴッ・・・!」


吐血する。マズい。
血の味が、危険な状態の血の味な事を、感覚で理解する。

気がつけば兵士達は、ほとんど躯(むくろ)と化していた。
もはや目に見える周囲の生存している戦士は、ブーンとモララーの二人のみ。



頼れるものは、己の身一つしか無かった。



.

99: 2011/07/19(火) 22:51:27 ID:cKMXLK5I0


((メ;-∀・)「ぐ  やろ・・・ぉ」

(メ;・∀・)《――――――ギラッ!!》


火球がキメラに放出される。
しかし、


(( ゚∋゚)「・・・・・・」バウッ!


鳥獣の羽ばたきで、かき消された。


((メ;・∀・)「・・・・・・」


.

100: 2011/07/19(火) 22:52:55 ID:cKMXLK5I0


キメラは、飛んだ。上空に浮かび、加速していく。

困憊(こんぱい)状態のブーンとモララーには、それを目で追うので精一杯だ。
絶体絶命か――――――


(メ; ω )「ゼハッ、ゼハッ! ・・・く・・・」


((メ; ∀ )「・・・か・・・・さ・・・・」


モララーが集中を切り、よろけた。


ζ(゚ー゚*;ζ「ああっ!」


( ゚∋゚)+


.

101: 2011/07/19(火) 22:53:48 ID:cKMXLK5I0



              ドシュッ



((メ;-∀-)

((メ;-∀・)

((メ;・∀・)



モララーの体に、痛みが走る。


.

102: 2011/07/19(火) 22:55:59 ID:cKMXLK5I0



(メ;・∀・ζ( ー *ζ∈゚ )


   「・・・・・・え?」



自分に、まるで我が子を守るように覆いかぶさるデレ。

その柔らかな体を貫通し、魔物の大きな嘴はモララーの腹部まで到達していた。


(メ;・∀・)「デレ」

ζ( ー *ζ「・・・ララー様・・・」


(メ;゜ω゜)「・・・・・・!」


.

103: 2011/07/19(火) 22:58:52 ID:cKMXLK5I0


( ゚∋゚)「・・・・・・」バサバサッ


嘴が引き抜かれる。そのまま魔物は、また宙へ飛ぶ。

デレの胴体から、噴水のように血液が溢れ出た。
内蔵がちぎられ、それが貫通した穴から垣間見える。


.

105: 2011/07/19(火) 22:59:59 ID:cKMXLK5I0


(メ;・∀・)「デ・・・レ・・・」

(メ;・∀・)「デレェッ・・・!?」

(メ;・∀・)「何故だ・・・どうして!!・・・ガハッ!」


ζ( ー *ζ「モララー・・・様・・・お役・・・に・・・」

ζ( ー *ζ


(メ・∀・)


(メ; ω )


.

106: 2011/07/19(火) 23:01:05 ID:cKMXLK5I0


そのとき、甲高い魔物の鳴き声が、一斉に響いた。


( ゚∋゚)「!?」

( ゚∋゚)「・・・・・・(チッ)」

(( ゚∋゚) バサッ


上空を旋回している魔物達が、一斉に引き上げていく。
あの巨体のキメラも、その流れに倣い、バサバサと飛び去っていった。


(メ;^ω^)(な・・・なんだお?魔物達が撤退していく・・・)

(メ;^ω^)(よく解らないけど・・・助かったのかお・・・?!)

(メ ^ω^)(ハッ・・・!)


.

107: 2011/07/19(火) 23:02:03 ID:cKMXLK5I0



      (メ ・∀・)ζ( ー *ζ

                       (^ω^メ)



.

109: 2011/07/19(火) 23:03:12 ID:cKMXLK5I0





病院の戸が、勢いよく開かれる。

院内は、大量の怪我をおった患者であふれていた。


(メ;^ω^)「ショボン先生!!」

(´・ω・`)「! ブーンさん。生きていたか。
      無事・・・とは言えないみたいだが、どうやら命はあったようだね」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン!!」


患者の介護を手伝っていたツンが、ブーンに駆け寄る。


.

110: 2011/07/19(火) 23:04:04 ID:cKMXLK5I0


ξ;⊿;)ξ「生きてたのね! よかった・・・よかった!!」

(メ;^ω^)「おっ!ツンも無事でよかったお!
       ・・・それより先生、急患だお!重傷の患者がいるんだお」

(メ;・∀・)( ー *ζ「こいつだ・・・先生。頼む、急いで手当を・・・」


ζ( ー *ζハ・・・ハ・・・


(´・ω・`)(・・・・・・)

(´・ω・`)(これは危険だ)

(´・ω・`)(・・・かなり厳しい状態・・・というよりは・・・)


.

111: 2011/07/19(火) 23:05:12 ID:cKMXLK5I0


(メ;・∀・)「先生・・・お願いします。どうか」

(´・ω・`)「腹部の損傷がひどいね。血も相当失っている」

(´・ω・`)「出来る限りの事はするが・・・彼女以外にも重傷の患者は山ほどいる」

(´・ω・`)「最悪の事態を、覚悟しておいてください」

(メ;・∀・)「・・・彼女を優先して診てくれ。
       金なら出す。さもなくば・・・斬る・・・」


モララーは、剣の柄に震える手をかける。
周囲にどよめきが沸き起こった。


.

112: 2011/07/19(火) 23:05:59 ID:cKMXLK5I0


(メ;゜ω゜)「モララー!止めるお!」

(´・ω・`)「・・・僕を斬って彼女が助かると思えるのならば、そうしたらいい。
      それは僕には、確実に彼女を頃す方法にしか思えないがね」

(メ;・∀・)「く・・・・・・!!」

(´・ω・`)「生憎、暴力の脅しは通用しないよ。
      そして・・・君自身もブーンさんも、ひどく傷ついているだろう」

(´・ω・`)「そこらで休んでいたまえ。その重傷の女性には、
      医者としてできる範囲の最大限の努力を尽くす事は約束する」

(メ;・∀・)「・・・・・・」


.

113: 2011/07/19(火) 23:07:32 ID:cKMXLK5I0


ζ( ー *ζ「モララー様・・・」

(メ;・∀・)「デレ。大丈夫だ。しばらくの辛抱だ」

(メ;・∀・)「・・・どうして・・・!どうしてあんなことを!」

ζ( ー *ζ「差し出・・・ましい真似を・・・して・・・ ・・・いません・・・」

(メ;・∀・)「いい、いい。しゃべるんじゃない」



(メ; ∀ )(神よ・・・いるなら答えてみろよ・・・)

(メ; ∀ )(デレはアンタに祈りを捧げたはずだ・・・  ならば、アンタもデレを祝福しろ・・・ッ)



ζ( ー *ζ「モララー様・・・これを・・・」


.

114: 2011/07/19(火) 23:08:50 ID:cKMXLK5I0


デレは、細く白い手を差し出す。
その親指には・・・指輪がしてあった。

あのときの、指輪だ。


(メ;・∀・)「・・・・・・」

ζ( ー *ζ「わたし・・・いつ・・・でも・・・お側に・・・」

ζ( ー *ζ「お慕い・・・申し・・・て・・・おり・・・ます・・・」



ζ( ー *ζ「モララー・・・様・・・」



(メ ・∀・)


.

115: 2011/07/19(火) 23:09:51 ID:cKMXLK5I0








.

117: 2011/07/19(火) 23:11:22 ID:cKMXLK5I0



翌日、リムルダールの丘で、大規模な葬儀が執り行われた。


リムルダールにおいての葬礼は、火葬。
亡がらは灰になったあと、湖に散灰され、浄化される。

民が参列し、その遺体を清めた後、順々に焼べてゆく。


多くの者が、追悼の涙を流した。

今回の事件では、およそ千をゆうに超える命が奪われたのだ。


結果的に国として壊滅には至らなかったものの、
失ったものがあまりにも多過ぎた。大き過ぎた。


.

118: 2011/07/19(火) 23:13:26 ID:cKMXLK5I0


また、これまで難攻不落の軍事防衛要素であった水堀を、
魔王軍に攻略されてしまった事件は、民の心に大きな影を落とす。


またいつか攻められたなら、その時こそは本当に――――――。

あまりの絶望に嘆き悲しみ、氏んだ者の後を追う者までいたらしかった。




葬儀が進む中、その場所から遠く離れた場所にたたずむ教会に、
ひとりの剣士がいる。

傍らに神父が、棺桶の前に立ち、神への祈りの言葉を捧げていた。



(-_-)「神よ――――――祈り尽くせし魂が、貴方の側に参らん事を――――――」


.

119: 2011/07/19(火) 23:14:55 ID:cKMXLK5I0


( ・∀・)


( ^ω^)「モララー・・・」


( ・∀・)「・・・・・きたのか。傷がまだ癒えてないだろう。
      あまりウロウロしたら傷が開くぞ」

( ^ω^)「それはアンタも同じだお」

( ・∀・)


( ・∀・)「信徒は、葬式の前に氏した体と魂で神に祈りを捧げるらしいな」

( ^ω^)「・・・デレさんは、信仰者だったのかお」

( ^ω^)「それで教会に――――――」


.

120: 2011/07/19(火) 23:17:10 ID:cKMXLK5I0


教会の窓から、遠くに火葬の煙が舞い上がるのが見えた。



( ^ω^)「モララー・・・この世界に」

( ^ω^)「神はいたのかお?」


目を合わさず、ブーンが問う。


( ・∀・)「・・・いるさ。こんなにも身近にもね」


モララーは、棺桶の中の少女を見つめた。


( ・∀・)「この世界には、無慈悲な氏神と――――――」


.

121: 2011/07/19(火) 23:18:31 ID:cKMXLK5I0



( ・∀・)「こんなにも美しい、女神がいるじゃないか」



モララーは、優しげで色のない瞳を、棺桶の中の少女に向けて言う。


ブーンはそれを、いつものように気取った言い回しだと冷やかしはしない。


確かに、棺の中の彼女の顔は・・・・・・


女神のように清純で――――――神聖なあどけなさを称えて。



.

122: 2011/07/19(火) 23:19:52 ID:cKMXLK5I0


( ・∀・)


( ^ω^)


ζ(-ー-*ζ



ステンドグラスから、僅かな光が差し込んで、


そこにいる人間の顔に、切なげに陰影をつくる。


静寂が、世界をモノクロにしてゆく。



教会に、神父の祈りの言葉だけが――――――残響する。




to be continued...!!


.

123: 2011/07/19(火) 23:21:37 ID:cKMXLK5I0

( ^ω^)ブーンの今のステータス

LV21

はがねのつるぎ
はがねのよろい
てつのたて


( ・∀・)モララーの今のステータス

LV23

はがねのつるぎ
まほうのよろい
みかがみのたて
せんしのゆびわ

.

124: 2011/07/19(火) 23:22:09 ID:KPvR3Ncc0
乙!

125: 2011/07/19(火) 23:22:15 ID:Py6TLmIk0
乙……
助からなかったか……

130: 2011/07/19(火) 23:34:21 ID:cKMXLK5I0

今回登場した敵


キメラ:鳥の魔物。体は蛇、それに翼と嘴(くちばし)を持つ。
     空を移動するので非常に捉えにくい。
   
メイジキメラ:キメラの上位種。魔力を操る術をもっていて
        敵を眠らせる魔法や、回復魔法なども使用する。

( ゚∋゚) (スターキメラ?):他の魔獣とは一線を画す巨体の魔物。
               ブーンの直観では、洞穴のドラゴンよりも格上かもしれない。
               魔軍の空撃隊のボス格だったようだ。

.

132: 2011/07/19(火) 23:39:18 ID:cKMXLK5I0
22話終了。
ご支援ありがとうございます、感激です!
実はVIPで投下も考えたのですが、直前でまきこみ規制に・・・('A`)プララ・・・


次回:( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)【Lv.12】


引用: ( ^ω^)ドラゴンクエストのようです('A`)