658: 2018/10/21(日) 01:25:15 ID:AR9F6gVQ
ぼくたちは勉強ができない 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)


【ぼく勉】文乃 「成幸くん、最近紗和子ちゃんと仲良いよね」

659: 2018/10/21(日) 01:26:07 ID:AR9F6gVQ
………………放課後 一ノ瀬学園 図書室

成幸 「緒方、いいか? 少し考えてみろ」

理珠 「はい」

成幸 「李徴は虎になってしまった。お前は虎になってしまったらどういう気持ちだ?」

理珠 「………………」

理珠 「……虎になったことがないので分からないです」

理珠 「というか、どういう理屈で人間が虎に姿を変えるのですか?」

成幸 「そういうことじゃないんだよ……」

文乃 「あはは……。りっちゃんは特に、そういうローファンタジー要素が出てきてしまうと思考が止まっちゃうんだよね」

成幸 「ぐぬぬ……。じゃあ、もう少し身近なところに話を移そう」

成幸 「緒方、お前うどん好きだよな?」

理珠 「はい! 大好きです!」 キラキラ

成幸 「うどんという言葉が出てきただけで目を輝かせやがって……。まぁいい」

成幸 「虎になってしまったら、うどんも食べられないぞ?」

理珠 「!?」

660: 2018/10/21(日) 01:26:57 ID:AR9F6gVQ
理珠 「た、たしかに……! 虎はネコ科……つまり猫舌! 熱いうどんは食べられませんね!」

理珠 「でもざるうどんなら食べられます!」

成幸 「確かにその通りだな」

成幸 「――って違う!」

うるか (成幸楽しそうだなぁ……)

成幸 「虎になったお前を、親父さんは家に入れてうどんを食わせてくれると思うか?」

理珠 「………………」

理珠 「……はい。あの父であれば、私が虎になっても可愛がって育ててくれると思います」

成幸 「確かにあの親父さんならそうしそうだなぁ」

成幸 「――ってだから違う!」

文乃 (楽しそうだなぁ成幸くん……)

成幸 「じゃあこれならどうだ、緒方。俺はお前が虎になったら怖いぞ。たぶん近づかないぞ?」

理珠 「えっ……」

661: 2018/10/21(日) 01:28:26 ID:AR9F6gVQ
理珠 「わ、私がもし虎になってしまったら……成幸さんは、怖い、ですか?」

成幸 「へ……? そりゃそうだろ。虎は怖いよ」

理珠 「………………」

理珠 「い、いやです。私は虎になりたくありません」

成幸 「だろう? 李徴だってきっと嫌だっただろ――」

理珠 「――いやです……」 グスッ

成幸 「……!?」

文乃 「………………」 ジロッ 「……成幸くん、りっちゃん泣かしてどうするの?」

成幸 「ち、違う! 俺はそんなつもりじゃ……」

理珠 「いやです……――」

成幸 「――と思ったけど違うな! お前が虎になっても怖くもなんともないわ!」

成幸 「お前が変身しただけの虎なら、きっとかわいいだろうな。飼ってやりたいくらいだ!」

うるか (成幸、言ってることメチャクチャだよ……)

理珠 「飼っ……///」 プイッ 「な、なら、虎になってもいいかもしれません……」

662: 2018/10/21(日) 01:29:21 ID:AR9F6gVQ
成幸 「おお、そうだな。虎も悪くないかもしれないな!」


  「唯我成幸、甘やかしてどうするのよ。それじゃ李徴の気持ちが全然わからないでしょ」


成幸 「ん……? ああ、関城」

文乃 「紗和子ちゃんも勉強?」

紗和子 「ええ。けど、まさかこんな気の抜ける会話を聞かされるとは思わなかったわ」

紗和子 「あなたたち、よくこんな会話を聞きながら勉強できるわね」

うるか 「まぁ、慣れちゃったというか……」

文乃 「お互いに気の抜けること言うから、気にならないというか……」

紗和子 「……まぁ、あなたたちはそうよね」

理珠 「せっかくですし、関城さんも一緒に勉強していきませんか?」

紗和子 「ん、とても嬉しい提案だけれど……」 チラッ

成幸 「?」

紗和子 「やめておくわ。お邪魔になってもいけないしね」

理珠 「お邪魔……?」

663: 2018/10/21(日) 01:30:13 ID:AR9F6gVQ
紗和子 「じゃ、私向こうで勉強するから」

成幸 「ん……あ、関城。ちょっと待ってくれ」

紗和子 「なにかしら?」

成幸 「この前はありがとな。助かったよ」

紗和子 「この前……? ああ、あのこと? あれくらい大したことじゃないわ」

成幸 「いや、でも俺にはできないからさ。本当に助かったんだ。ありがとう」

紗和子 「また必要になったら言いなさい。いつでもやってあげるわ」

成幸 「本当か!? 実はまた、新しいのがな……」

成幸 「……もしお前の都合が良ければ、今日の夕方とか空いてないか?」

紗和子 「べつにいいわよ? 息抜きにもなるし」

紗和子 「勉強が終わったら言いなさい。付き合ってあげる」

成幸 「本当か!? 助かるよ。ありがとな、関城」

紗和子 「どういたしまして。じゃあ、またね」

成幸 「おう」

664: 2018/10/21(日) 01:31:03 ID:AR9F6gVQ
理珠 「………………」

うるか 「………………」

文乃 「………………」

理珠&うるか&文乃 (((今の会話は何ーーー!?)) ですかーーー!?)

文乃 (というか、たぶんわたしだけじゃなくて、りっちゃんとうるかちゃんも思ってることだろうけど……)

文乃 「……ねぇ、成幸くん」

成幸 「ん? なんだ?」

文乃 「ひとつ聞きたいことがあるんだけどさ、」



文乃 「成幸くん、最近紗和子ちゃんと仲良いよね」



理珠&うるか 「「………………」」 ピクッ

成幸 「ん、そうか? 元々あんなもんだと思うけど……」

文乃 「っていうか、教えてほしいんだけど、さっきの会話は何?」

665: 2018/10/21(日) 01:31:57 ID:AR9F6gVQ
成幸 「さっきの会話……?」

文乃 「きみが紗和子ちゃんと楽しそうに話してたことだよ」

文乃 「傍から聞いてるだけじゃ、内容がわからなかったから、教えてほしいなー、って」

成幸 「………………」

成幸 「あー、えっと……その……」

文乃 (あからさまに焦った顔して目を泳がせてる……)

キリキリキリ……

文乃 (お願いだからあんまりわたしの胃をいじめないでほしいなぁ……)

成幸 「た、大したことじゃねぇよ。ちょっと関城にお願いしてることがあるんだ」

文乃 (そうやって誤魔化されてしまうと、さすがにこれ以上突っ込んで聞くわけにもいかないよね)

文乃 (でも……)

理珠 (成幸さんと関城さん、最近本当に仲良しですよね……) ジトーッ

うるか (どういう関係なんだろう……。さわちん結構可愛いし、ひょっとして、成幸……) ジーッ

文乃 (胃が痛い)

666: 2018/10/21(日) 01:34:27 ID:AR9F6gVQ
………………夕方

成幸 「……ん、時間的にそろそろリミットかな」

成幸 「どうしたんだ、お前ら? 今日は進みが遅かったぞ?」

文乃 「う、うん。どうも勉強が捗らなくてさ……」

文乃 (こっちの気もしらないでこの野郎)

うるか 「……ごめん。今日、帰ってからがんばるから」 ズーン

理珠 「……はい。私も、夜がんばります」 ズズーン

文乃 (想像で勝手に落ち込んでるー!)

成幸 「? まぁいいか。じゃあ、俺ちょっと用事があるから行くな」

トトトト……

成幸 「関城! 悪い、待たせた。行こうぜ」

紗和子 「あら、もう終わりなのね。じゃあ行きましょう」

紗和子 「緒方理珠……と他二名、またね。さようなら」

667: 2018/10/21(日) 01:35:03 ID:AR9F6gVQ
………………帰路

成幸 「今日は急に頼んで悪かったな」

成幸 「今日から始まるらしくてさ。早く行かないとなくなっちまうし……」

紗和子 「べつにいいわよ。予定があるわけでもないし」

成幸 「ありがとう、関城」

紗和子 「どういたしまして」


………………物陰

理珠 「ふ、文乃。本当にこんなことをしていいのでしょうか……」

うるか 「な、なんか、すごく悪いことしてる気分……」

文乃 「しょうがないよ。だってふたりとも気になるんでしょ? そのままじゃ勉強も手につかないでしょ?」

理珠&うるか 「「………………」」 コクッ

文乃 (成幸くんと紗和子ちゃんには悪いけど、少し尾行させてもらうよ!)

文乃 (ふたりの集中とわたしの胃の健康のために!)

668: 2018/10/21(日) 01:38:20 ID:AR9F6gVQ
………………歓楽街

文乃 「………………」

文乃 (なんかフツーにデートっぽい場所に来たよ!?)

成幸 「……」

紗和子 「……」

文乃 (ああ、しかも全然聞き取れないけど、ふたりともめちゃくちゃ楽しそうに会話をしてるね?)

理珠 「………………」 ズズーン 「……なんか、楽しそうです」

うるか 「………………」 ズズズーン 「さわちん、うらやましいよぅ……」

文乃 「ほ、ほらほら、ふたりが行っちゃうよ。ふたりとも、がんばって!」

文乃 (胃が痛いなぁ!)

文乃 「ん……? ふたりが建物に入った……」

文乃 (……ゲームセンター?)

669: 2018/10/21(日) 01:39:11 ID:AR9F6gVQ
………………ゲームセンター内

文乃 「……うーむ」

文乃 (あまり近づくわけにもいかないし、遠くから見ていての感想だけど……)

文乃 (普通にゲームセンターで遊んでいるだけのように見える……)

文乃 (というか、見ようによってはそのまんまカップルだ)

文乃 (そろそろ私の胃も限界だし、何より、)

理珠 「……やはり、成幸さんは……」

うるか 「さわちんと、付き合ってるのかな……」

ガクッ

文乃 (このふたりの精神状態が限界だ)

文乃 「ほらほら、元気出して、ふたりとも」

文乃 「考えてごらんよ。もし万が一成幸くんが紗和子ちゃんと付き合っていたとして、」

文乃 「それをわざわざわたしたちに隠すような不義理なことをすると思うかな?」

670: 2018/10/21(日) 01:39:48 ID:AR9F6gVQ
理珠 「………………」

理珠 「……これは大変遺憾なことなのですが」

理珠 「『恥ずかしくってなかなか言い出せなかったんだ。ごめんな』 とか言う成幸さんが容易に想像できます」

うるか 「リズりんそれめっちゃわかる」

文乃 (……わたしもなんとなく想像できるな、それ)

文乃 (いやいや、でも、そんなまさか。成幸くんが紗和子ちゃんと付き合ってたりなんて……)

文乃 「………………」

シュッ!!!!!

文乃 (……もし、本当にそうだったとしたら、)

文乃 (ちょっと一発くらい、手刀入れてもいいかな?)

文乃 (なんにせよ、もう少し近づいて、会話を聞かないと分からないかな……)

671: 2018/10/21(日) 01:40:38 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 「ひっ……!?」

紗和子 「? どうかしたの、唯我成幸。顔真っ青よ?」

成幸 「いや、ちょっと寒気がしてな……」

成幸 「それより、今日もありがとな。欲しがってたのは全部コンプリートできたよ」

成幸 「お前がいてくれると助かるな……」

紗和子 「いいわよ。私もただで遊べて得してるわけだし」

紗和子 「それじゃ、そろそろ帰りましょうか」

成幸 「ん……あ、そうだ。今からうちに来ないか?」

紗和子 「へ……? あなたのおうちに? どうして?」

成幸 「いやな、お前を紹介したくてさ。お前のことを話したら、ぜひ会いたいって言うんだよ」

紗和子 「ああ……そういうこと。お邪魔して迷惑でないなら、行ってもいいけれど」

成幸 「本当か? ぜひ来てくれよ。あいつらも喜ぶと思うんだ」

672: 2018/10/21(日) 01:41:31 ID:AR9F6gVQ
………………物陰

理珠 (ふ、文乃……) コソッ (ち、近づきすぎじゃないですか? バレませんか?)

文乃 (虎穴に入らずんば虎児を得ず、だよ、りっちゃん) コソッ


「ん……あ、そうだ。今からうちに来ないか?」


文乃 「!?」 (成幸くんの声だ! 紗和子ちゃんを家に誘ってるの……!?)


「へ……? あなたのおうちに? どうして?」

「いやな、お前を紹介したくてさ。お前のことを話したら、ぜひ会いたいって言うんだよ」


うるか 「!?」 (家族に紹介!? 家族が会いたいって言ってる!?)

理珠 (おふたりの関係はもうそんなところまでいっているのですか!?)

ズーン……

文乃 「………………」

シュッ

文乃 (……覚えてろよ、だよ。成幸くん……。ふふふ……)

673: 2018/10/21(日) 01:42:16 ID:AR9F6gVQ
………………唯我家外

文乃 (結局、成幸くんと紗和子ちゃんは仲睦まじく連れ添って当たり前のように家の中に入っていった)

文乃 (後ろから気づかれないようにつけ回していただけのわたしたちをあざ笑うかのように……)

理珠 「………………」 チーン

うるか 「………………」 チーン

文乃 (りっちゃんとうるかちゃんはもう限界だし、家の外にいても、何が覗けるわけでもないし……)

文乃 (ふたりが家から出てくるのを待っているのも不毛だ)

文乃 (……もし万が一、紗和子ちゃんが一晩中家から出てこなかったりしたら、それこそコトだし)

文乃 (そろそろ帰ろうかと提案するべきかな……――)


「――あら? ふみちゃんにりっちゃんにうるかちゃんじゃない」


文乃 「!? な、成幸くんのお母さん! と水希ちゃん!」

水希 「……人の家の前で何をやってるんですか、あなたたちは」

ハッ

水希 「ま、まさか、兄のストーカーですか!?」

674: 2018/10/21(日) 01:43:32 ID:AR9F6gVQ
文乃 「うっ……」 (あ、あながち間違いでもないところが辛い……!)

文乃 「いや、実は、ちょっと成幸くんに用事があったんだけど……」

水希 (“成幸くん” ……?)

文乃 「お、お取り込み中だから、今日はいいかなー……なんて……」

花枝 「? せっかく来てくれたんだし、上がっていったらいいわよ」

花枝 「ほらほら、どうせだから晩ご飯も食べて行きなさい。どうぞどうぞ」

文乃 「えっ、あ、いや、その……」

ズルズルズル……

花枝 「成幸ー、ふみちゃんたちが来てるわよー! ……って、あら?」

紗和子 「あっ……」 スッ 「は、初めまして。唯我成幸……くんの、お友達の、関城紗和子といいます」

花枝 「あら……あらあらあらあら……」 ニンマリ 「はじめまして。成幸の母です」

水希 (また新しい女!?)

花枝 「こんな大人っぽい女の子まで連れ込んで……うちの息子も隅に置けないわねぇ……」

成幸 「母さん、帰って早々変なこと言うなよ……って、古橋!? 緒方にうるかも!? なんで!?」

675: 2018/10/21(日) 01:44:37 ID:AR9F6gVQ
………………

成幸 「……なるほど。そういうわけで、俺と関城をつけ回していた、と」

文乃 「ごめんなさい! 悪いのはわたしなんだよ! わたしが提案したんだよ!」

理珠 「いえ、私もなんだかんだ、積極的に参加していたので同罪です。ごめんなさい」

うるか 「あたしもだよ……。気になって仕方なかったんだ。ごめんね、成幸。さわちん」

紗和子 「私はべつに気にしてないけど……」

紗和子 (というかうかつだったわね。唯我成幸のことが好きな緒方理珠が気にするのは当たり前だもの)

紗和子 (悪いことしちゃったわね……)

成幸 「にしても、俺と関城が付き合ってるなんて、よくそんなこと思いつくな……」

文乃 「いやいや、きみたちがニブイだけで、男女が一緒に歩いてたらそれってもうデートだからね?」

成幸 「今日俺たちデートしてたらしいぞ、関城」

紗和子 「びっくりね、唯我成幸。気づかなかったわ」

文乃 (この……! 人のことは気遣うくせに自分のことは無自覚コンビめ!!)

676: 2018/10/21(日) 01:45:13 ID:AR9F6gVQ
うるか 「でもでも、ふたりがそういう関係じゃないなら、今日は一体どうしてふたりでゲームセンター行ったの?」

理珠 「それを隠したのはなぜですか? やましいことでもあったのですか?」

文乃 「あと、どうして紗和子ちゃんを家に招待したのかも気になるかな?」

成幸 「質問が矢継ぎ早すぎるだろ……。仕方ない、ひとつひとつ答えてくぞ」

成幸 「ゲームセンターに行ったのは、これを取るためだよ」

うるか 「……! それ、フルピュアのぬいぐるみだ!」

成幸 「ああ。ゲームセンターのUFOキャッチャーのプライズだよ」

成幸 「出来は悪くないし、何より最安で100円で取れるからな。グッズを買うより安上がりなんだよ」

成幸 「俺はUFOキャッチャーが得意じゃないから、関城に頼んでたんだ」

理珠 「あっ……」


―――― 『うぎゃーっ 緒方理珠!! 何故ここに!?』


理珠 「そういえば、ペンケースを買いに行ったとき、UFOキャッチャーでぬいぐるみをたくさん取ってましたね」

677: 2018/10/21(日) 01:46:23 ID:AR9F6gVQ
紗和子 「まぁ、UFOキャッチャーは嫌いじゃないからね。それなりに上手と自負しているわよ」

紗和子 「唯我成幸にときどき頼まれるから、取ってあげてるの。今までも何回かやってあげたわ」

紗和子 「でも、それをあなたたちに隠していることは、私も初耳なのだけど……」

成幸 「うっ……いや、だって……なんか……」

成幸 「『教育係』 のくせにゲームセンターで遊んでるのか、って思われたくなくてさ……」

成幸 「……すまん。俺のくだらない見栄だ。そのせいでお前たちに心配をかけたんだな」

文乃 「うっ……謝られるとこっちが申し訳ないから、謝らなくていいよ……」

文乃 「……で? どうして紗和子ちゃんをおうちにご招待したの?」

成幸 「それは……――」


「――キャー!! 新しいフルピュアのぬいぐるみよー!!」


文乃 「あっ……葉月ちゃん」

葉月 「わっ……お、お姉ちゃんたちが勢揃いしてるわ」

和樹 「ほんとだ。この狭い家によくこんなに人が入るもんだよな」

678: 2018/10/21(日) 01:47:13 ID:AR9F6gVQ
成幸 「ちょうどよかった。葉月、和樹。この人がぬいぐるみを取ってくれるお姉さんだぞ」

紗和子 「あっ……え、えっと……お兄ちゃんの友達の、関城紗和子よ。よろしく」

葉月 「! お姉ちゃんがぬいぐるみのお姉ちゃんなのねー!」

ギュッ

紗和子 「あっ……」

葉月 「ありがとー、お姉ちゃん!」

葉月 「あんまりぬいぐるみとか買えないから、お姉ちゃんが取ってくれたぬいぐるみ、とっても嬉しかったの!」

葉月 「大事にするね! 紗和子お姉ちゃん!」

紗和子 「さ、紗和子お姉ちゃん……」 テレッ 「わ、悪くないわね……でへへ……」

成幸 「うん。人の妹でその表情されるとちょっと気持ち悪いな」

紗和子 「う、うるさいわね!」

成幸 「……ま、早い話がさ。葉月と和樹が会いたがったんだよ」

成幸 「ぬいぐるみを安く取ってくれる紗和子お姉ちゃんに、さ」

文乃 「そっか……」

679: 2018/10/21(日) 01:48:00 ID:AR9F6gVQ
文乃 (……下衆な想像をしていた自分が恥ずかしい)

文乃 (紗和子ちゃんは成幸くんに頼まれて、ゲームセンターでぬいぐるみを取っていただけだったんだ)

文乃 (そして、今日家に招いたのは、紗和子ちゃんにお礼を言いたいという葉月ちゃんのため)

文乃 (はぁ……本当に、自分が恥ずかしい……)



水希 「……お、お兄ちゃん! ちょっと晩ご飯作るの手伝って!」



成幸 「わっ……み、水希? どうしたんだ、急に」

水希 「なんでもいいから、ほら! 早く台所に来て」 (こんな女が多いところにいさせられないし!)

成幸 「ひ、引っ張るなよ……。じゃあ、みんな、ちょっとゆっくりしててくれ」

成幸 「葉月と和樹の相手だけ頼むー……」 グイグイグイ……

紗和子 「? なんか、ちょっと怖い感じの妹さんね」

葉月 「あー、まぁ、水希姉ちゃんはちょっと……アレだから……」

和樹 「うん。ちょっとアレだから。気にしないでいいよ」

紗和子 (アレ……?)

680: 2018/10/21(日) 01:48:32 ID:AR9F6gVQ
理珠 「………………」

ホッ

理珠 (……なぜ、私はこんなにも安堵しているのでしょうか)

理珠 (なぜこんなに、よかった、と思っているのでしょうか)

理珠 (成幸さんと関城さんがそういう関係でないと知って、どうして私は……)

理珠 (こんなに、笑みが止まらないのでしょう……)

理珠 (不可解です……)

うるか 「………………」

ホッ

うるか (よ、よよよ、良かったよぅ~)

うるか (ぶっちゃけ、さわちんって大人っぽいし、色気もあるし、)

うるか (成幸と付き合いだしたりしたら、もう勝ち目ないと思ってたんだよ~!)

うるか (本当に良かった。神様ありがとー!)

文乃 「………………」 ホッ (良かった。これでわたしの胃に平穏が戻る……)

681: 2018/10/21(日) 01:49:23 ID:AR9F6gVQ
理珠 「……あ、あの、関城さん」

紗和子 「? 何かしら、緒方理珠」

理珠 「一応、その、関城さんのほうにも確認を取っておく必要があるかと思い、お聞きしたいのですが、」

理珠 「関城さんは、本当に、成幸さんとなんともない……のですよね?」

紗和子 「はぁ? さっき唯我成幸も言っていたじゃない。何もないわよ」

紗和子 (っていうか、大親友の好きな人を好きになるわけないじゃない……)

紗和子 (なんて、言うわけにもいかないのだけど)

理珠 「……よかったです」 ホッ

紗和子 「まったく。心配性ね。大丈夫よ。唯我成幸を取ったりしないわ」


成幸 「ん? 俺がなんだって?」


和樹 「あ、兄ちゃん戻ってきたー」

うるか 「お手伝いもう終わったの?」

成幸 「いや、まったく意味がわからないんだ。台所に行ったら、母さんには早く戻れって言われてさ」

成幸 「……なんだったんだ?」

682: 2018/10/21(日) 01:50:51 ID:AR9F6gVQ
葉月 「まぁ水希姉ちゃんはアレだからねー……」  和樹 「アレだしな……」

紗和子 (アレって本当になんなのかしら……?)

成幸 「……で? 俺の話してたんだろ? なんだよ、気になるから教えてくれよ」

紗和子 「はぁ?」 (そんなの、言えるわけないじゃない……)

紗和子 (ん……待って。これは……緒方理珠に気持ちを自覚させるチャンス!)

理珠 「?」

紗和子 「……ねえ、唯我成幸。この子たちには私たち、付き合ってるように見えたらしいわよ?」

成幸 「は、はぁ? いや、それさっきも聞いたよ。何でまた言うんだよ……」

紗和子 「それってつまり、お似合いに見えたってことでしょう? じゃあ、いっそ付き合っちゃう?」

成幸 「は……?」

理珠 「は!?」  うるか 「へぇ!?」  文乃 (胃に激痛が走る!)

成幸 「い、いきなり……何を……関城……///」

成幸 「そ、そういうのは……その、もう少し、お互いを知ってから、というか……///」

紗和子 「何本気で照れてるのよ。冗談に決まってるでしょ」

成幸 「!? は、はぁ!? お前……言っていい冗談と悪い冗談があるだろ!?」

683: 2018/10/21(日) 01:51:28 ID:AR9F6gVQ
紗和子 「はいはい。ごめんなさい。悪かったわ」

紗和子 (……ねえ、緒方理珠) コソッ

理珠 (な、なんですか、関城さん……)

紗和子 (ボーッとしてると、私以外の誰かに、先越されちゃうかもしれないわね?)

理珠 (な、何の話ですか……)

紗和子 (自分の気持ち、もう少しよく考えてみなさい。今日、どうして一喜一憂したのかとか)

理珠 (自分の気持ち……)

紗和子 (ええ。がんばってね。私は、あなたを応援しているから)

文乃 「……えーっと、紗和子ちゃん?」

紗和子 「? 何かしら?」

文乃 (……ねえ、気づいてる?) コソッ

紗和子 (……何よ?)

文乃 (紗和子ちゃん、成幸くんに “付き合っちゃう?” って言ってからずっと、)

文乃 (顔、まっかだよ?)

紗和子 「……!?」

684: 2018/10/21(日) 01:53:01 ID:AR9F6gVQ
紗和子 (う、うそ……!? あ、でも……)

カァアア……

紗和子 (た、たしかに、顔が熱いわ……)

成幸 「? なんだ、関城。変な顔して」

紗和子 「な、なんでもないわよ!」

紗和子 (うそよ、こんなの。だって……そんなの、ありえてはいけないもの……)

紗和子 (きっと、緒方理珠が近くにいるから嬉しくてこうなってるのよ。そうよ。そうに決まってるわ)

紗和子 (そうに、決まってるわ……だって、そうでないと……)

紗和子 「………………」

紗和子 (……大丈夫。絶対ない)

紗和子 (絶対好きになんてなるはずがない)

紗和子 (大親友が好きな人のこと)


おわり

685: 2018/10/21(日) 01:53:35 ID:AR9F6gVQ
………………幕間 「晩ご飯」

ワイワイガヤガヤ……

花枝 「………………」

花枝 (こうして、見回してみると……)

理珠 「本当に美味しいです、水希さん。ありがとうございます」

水希 「べつに、わたしが好きで作ったわけじゃありません。お母さんが言うから、仕方なく作っただけです」

文乃 「この煮物とか絶品だよ~。どうやって作るの?」

うるか 「おだしの取り方も上手だよ。こんなに香りを出すのは難しいんだよ」

紗和子 「……本当に美味しいわね。この晩ご飯」

紗和子 「毎日こんなお料理が食べられるなら、毎日ぬいぐるみ持って家に行くわよ」

成幸 「おいおい、葉月と和樹が本気にするからやめろよ」

紗和子 (私も結構本気なんだけど……)

花枝 (……うーん。嬉しい反面、息子の将来が心配だわ)

花枝 (刺されたりしないでよー、成幸ー?)


おわり

686: 2018/10/21(日) 01:55:08 ID:AR9F6gVQ
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

これでちょうど20個目でした。
また投下します。

引用: 【ぼく勉】小美浪先輩「この前は本当に悪かった」成幸「はい?」