1: 2008/02/13(水) 20:42:56.44 ID:4xpzL2W20
才人 「そう、バレンタイン。俺の居たところにはそういう文化があってさ、
     毎年この日に、好きな人にチョコレートを渡すんだけど……やっぱタバサも知らないか」
タバサ「…………」



タバサ (……チョコレートの作り方……チョコレート作り方……ぶつぶつ)
シルフィ(お、お姉さまがすごい勢いで本をめくっているのね! これは一大事なのね……!)

2: 2008/02/13(水) 20:44:23.50 ID:4xpzL2W20
例によってネタがなかった
目標60

>>3

3: 2008/02/13(水) 20:46:55.21 ID:Bh4gGK0b0
長門には勝てん

5: 2008/02/13(水) 20:57:39.94 ID:4xpzL2W20
(……そういえば)

タバサはふと自室の本棚を見た。
そこには、才人が語った物語をタバサが書き写した本がある。
興味深い物語だったので、タバサなりにアレンジを加えて書き留めておいたのだ。

(確かここに……あった)

手に取った本のタイトルは、ハルケギニアの言語で『涼宮ハルヒの憂鬱』と書かれている。
そのシリーズの中のひとつに、才人が語った「バレンタイン」という言葉のエピソードが書かれていた。
今思えば、なぜその本を写した時にこんな面白いイベントが存在することに気がつかなかったのか、とタバサは悔やむ。
才人は当時、バレンタインについて簡単な説明をしてくれていた筈なのだが、そのときはさほど興味はなかった。

しかし、あのときのタバサと現在のタバサは違うのだ。
少しずつだが、内に眠る感情を取り戻してきている。

タバサは本をぱらぱらとめくる。
ふと、とあるキャラクターに目が留まった。
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース、とかいう設定のキャラクター。
寡黙で、感情を表に出さず、しかしそれでも少しずつ変化している。

(わたしに似ている……でも)

以前、才人はこのキャラをやけに熱く語っていた。
『モエ』だの『ナガトハオレノヨメ』だのという言葉が出ていたが、タバサには理解できないし、するつもりもなかった。
しかしその時の才人は、目を爛々と輝かせて鼻息を荒くしながらそのキャラクターをほめていた。すなわち、

(この長門有希に、わたしは勝てない……)

タバサは、才人が好みそうなこのキャラクターを超えられないかを考え、程なくひとつの妙案を頭に浮かばせた。>>6

8: 2008/02/13(水) 21:10:06.94 ID:4xpzL2W20
(そういえば、『キョウト』とか……)

才人は先ほど、こうとも言っていた。

「そうだな、貰うならやっぱ京都だよな! 舞妓さんとか和風の人にバレンタインのチョコを貰えたら
 そのギャップに興奮しちまって――あ、いやいや! 今のナシな! ただの妄言だから!!」

才人には"マイコ"という人と恋仲だったのだろうか。
しかし、そんなことは関係ない……はずだ。
タバサはその瞬間、胸がちくりとした気がしたが、気に留めるだけ無駄だと思い思考を破棄した。

ともあれ、キョウトという地にいけば、才人が思う理想像のヒントがあるはず。
そうすれば長門以上に魅力的になる。しかしそんな地はこのハルケギニアでは聞いたことがない。
東の地に行けばあるいは、とも考えたが、個人の道楽で危険を冒すなど馬鹿馬鹿しい。
となれば、
(……情報が要る)

才人本人に聞くのはなんとなく気まずいと思ったのか、タバサはまずキュルケの部屋へと向かった。


「……え、『バレンタイン』ってお祭りや『キョウト』という地名に心当たりはあるかですって?」
「…………」

当然キュルケが異国の文化や地名を知っているわけがない。
しかしそんなことはタバサとて百も承知である。ヒントとなるようなものがあればよいのだ。
なおもしつこくキュルケに食い下がった。

「些細なことや予想でもいいから」
「うーん、そうねぇ……語感からの想像になっちゃうけど、それは多分>>9」

9: 2008/02/13(水) 21:12:43.25 ID:RvlyCtxw0
マリコルヌに聞けばいいと思うわ、プププ

10: 2008/02/13(水) 21:20:39.26 ID:4xpzL2W20
「マリコルヌに聞けばいいと思うわ、プププ」
「……? そう、わかった」

キュルケがやけにニヤけているが、そんなことを気にしている時ではない。
どうやらキュルケから情報を引き出せそうにないと察したタバサは、キュルケの部屋をあとにした。

タバサが退席し、パタン、と扉が閉まる。
その瞬間、キュルケのニヤケ顔がさらにいやらしいものに変化した。

「へぇ~、あのタバサが恋する乙女になってるなんてね…。お相手は才人かしら?
 察するに多分バレンタインって女の子がメインのお祭りよね。これは面白くなってきたわね…」


程なくして、タバサはマリコルヌの部屋に到着した。
だが、キュルケの部屋のように簡単に開けるわけにはいかない。
マリコルヌ自体は悪い奴ではないのだが、何しろふとっちょであり、しかも女に飢えている。
そういえばこの前、年下のコにフラれていたようだ。傷心である現在、気を抜くとどうなるかわからない。
安価でもなければ永遠に登場しないキャラである。油断するわけにはいかない。
それでも、バレンタインやキョウトを知っている可能性があるならば、聞かねばならない。

(……どうしよう)

タバサは悩んだ末、>>11

12: 2008/02/13(水) 21:25:55.23 ID:RvlyCtxw0
突撃

14: 2008/02/13(水) 21:30:34.49 ID:4xpzL2W20
「 ウィンディ・アイシクル! 」

タバサが叫ぶと無数の氷の矢が現れ、標的に向かって凄まじい勢いで飛んでいった。
標的はもちろんマリコルヌの部屋のドアである。
タバサの魔力で放たれたその魔法は、いとも容易くマリコルヌの部屋のドアを破壊する。

タバサが部屋に入ると、マリコルヌは無数の矢を頭に突き刺して床に転がっていた。

「な……何を…するん…だ、よ……」
「教えて欲しいことがあって来た」
「今の……魔法…は…」
「挨拶」

瀕氏の重傷を負ったマリコルヌからなんとか情報を引き出した。
その情報とは>>14

16: 2008/02/13(水) 21:32:29.88 ID:YmKvGDzMO
ザ・ワールド

18: 2008/02/13(水) 21:42:19.22 ID:4xpzL2W20
(ザ・ワールド……)

どうやらそれが『バレンタイン』『キョウト』のキーワードらしい。
杖を片手に「本当か」とマリコルヌを問い詰めたら、

「本当ですこの前サイトに聞いたんですごめんなさいごめんなさいごめんなさい許して命だけは獲らないでエェェェェェェ!!」

と、涙と鼻水で凄い顔になりつつも弁解したため、先ほどタバサは可哀想な彼を解放してあげた。
部屋にも心にも、癒えぬ深い傷を負ったマリコルヌには同情せざるを得ない。

(……話の元が彼なら、問題はないはず。だけど)

いかんせん、何がなんだかわからない。
となれば、もう一つ情報がいる。タバサは早速情報を求めて次の場所へと向かった。


「ザ・ワールド……? うーん、聞いたことないけど」
「タバサが僕らに質問なんて珍しいと思ったら、変なことを聞くんだね」

中庭でお茶会を開いているモンモランシーとギーシュを捕まえて、情報を聞き出そうと試みる。
しかし案の定、二人にはあまりこの情報に明るくないようだ。

「タバサ。それ、どこから聞いた話?」
「サイトが言っていたとマリコルヌから聞いたけれど」
「サイトが? 待てよ。そういえば、酒の席に居たときにそんなようなことを……」

ギーシュがなにやら思い出したようだ。どうやらマリコルヌの情報は正しかったらしい。
彼には悪いことをした、とタバサは思う。思っただけであるが。

ギーシュの話によると、サイトが語った「ザ・ワールド」とは>>19

19: 2008/02/13(水) 21:42:35.35 ID:2VwtylaC0
うんこ

21: 2008/02/13(水) 21:51:56.11 ID:4xpzL2W20
「貴族の口からは言いづらいんだけど…確か彼は『ザ・ワールド』のことを、
 その、なんだ……排泄物の一種だと言っていたよ」
「なっ!!」
「………」
「い、意味はわからないんだけどね」

冷や汗をかくギーシュ、絶句するモンモランシー、沈黙するタバサ。
お茶会の雰囲気はどこへやら、中庭は重い空気に包まれていた。

「し、信じられない! ギーシュ、貴方ってサイテーな貴族だわ! これならまだ平民の方がマシよ!!」
「ええっ!? ちょ、ちょっと待ってくれよモンモランシー…」
「わたし、これで失礼します。もう話しかけてこないで」
「誤解だ! これはサイトが言ったことなんだよ!! ま、待っておくれ僕のモンモランシー!!」

ギーシュのうんこ発言に腹を立てたモンモランシーは、ズンズンと音を立てるかのような足取りで
寮へと戻っていってしまった。必氏に追いかけて取り繕うギーシュだったが、モンモランシーは無視を決め込む。
タバサはその光景を目で見送る。どことなく生温かい視線であった。

(……酒の席での他愛のない冗談だった)

ザ・ワールドについて、タバサはそう結論付けた。
情報が一つ減ってしまった。もう一度整理しよう、とタバサは思い、部屋に戻ることにした。

22: 2008/02/13(水) 21:59:56.08 ID:4xpzL2W20
再び『涼宮ハルヒの憂鬱』を手に取り、バレンタインの話をもう一度読み直してみた。


SOS団と呼ばれる集団が、宝探しを行う。
山で地面をせっせと掘り返すも、一向に出てこない。
紆余曲折を経て、団長の涼宮ハルヒ、団員の長門有希と朝比奈みくるの三人が作った『チョコレート』という代物を
同じく団員のキョンと副団長の古泉一樹が受け取る。


大まかに掻い摘むと、バレンタインの話はこのような内容である。
読み終えたタバサは考える。

(……宝を探す? 褒美は『チョコレート』…)

やはりこの話の肝は『チョコレート』を渡すことらしい。
最初に探していたものだ。それ以外にも、『宝を探す』というプロセスが必要であるようだ。
情報はここにも転がっていた……タバサは己のミスを悔やむ。
或いは、そのようなことに考えが至らないほど切羽詰まっていたのか――

そこまで考えて、タバサは部屋をノックする音に気づいた。

「――ねえタバサ、いないの?」

聞き覚えのある声であった。ドアを開けると、そこには声の主であるルイズがいた。

「ああよかった、いたのね。ねえタバサ、ちょっと相談があるんだけど……」

23: 2008/02/13(水) 22:08:04.13 ID:4xpzL2W20
――サイトに聞いたんだけどね、バレンタインデーって祭りがあるんだって。
――女の子が、好きな男の子に「ちょこれーと」って食べ物を贈る日なんですって。
――ほ、ほら! わたしはアイツのご主人様だし! そんな気はこれっぽっちもないんだけどね!
――つつつ、使い魔に、日ごろの感謝を込めて、チョ、チョコを贈るのはぎぎぎぎ義務ってもんよね!

わかっていた。サイトは彼女の使い魔なのだ。
バレンタインのことも、わたしよりも多く知っているのは当然だ――。

「でね……って、タバサ? どうしたの?」

タバサは ハッ、とした。意識が現実に引き戻される。
何故わたしは先ほど惚けていたのか。こんなこと、以前はなかったはずだ。
いついかなるときに「指令」が来るかわからないのに、惚けるだなんて……。

「…何でもない」
「そ、そう? じゃあ話を戻すわね。その『チョコレート』の作り方って、…知ってる?」
「……?」

チョコレートの作り方を知らないのだろうか? タバサは疑問に思ったが、次の瞬間理解した。
ルイズの性格からして、期待していた才人を一蹴したのだろう。そして、いつも本を読んでいるタバサに
チョコレートの製法について相談を持ちかけてきたのだ。
だが、もちろんタバサもチョコレートの製法を知らない。

ルイズに対して、タバサは返答した。

「>>24」

24: 2008/02/13(水) 22:09:35.36 ID:2VwtylaC0
そんなことよりサメの話しようぜ

27: 2008/02/13(水) 22:19:50.84 ID:4xpzL2W20
「そんなことよりサメの話を」
「え……ええ!?」
「チョウザメ、というサメがいる。けれど実はこれらは硬骨魚であり、サメの仲間ではない。しかし骨格の殆どが軟骨である。
 これは硬骨魚類の初期に出現した系統では重厚な鱗などの硬い皮骨が発達する一方で脊椎骨や肋骨などの内骨格は主に軟骨で構成され、
 後になって出現した系統ほど皮骨が退化するとともに内骨格の硬骨化が進行する傾向にあることと関係がある。
 また、骨要素によっては祖先は硬骨になっていたものが二次的に軟骨に変化したものもあるのではないかとする学説もある。
 チョウザメ目の属する軟質類は、硬骨魚類の中でも特に古くに出現した系統のひとつであり、内骨格の硬骨化はほとんど進行していない」
「な、なに……? なんなの!?」
「一見サメに似た外形や軟骨の多い内骨格にもかかわらず、系統的にサメとは全く別系統であるため、生理的なシステムが異なる部分が多い。
 例えばサメと異なり浸透圧調節に尿素を使わないので組織中に尿素を蓄積せず、鮮度の落ちた肉が尿素の分解によって生じたアンモニアに
 起因する臭みを生じないため、世界的に高級食材として扱う地域が多い。この仲間の成魚は淡水・海水・汽水域に生息し、繁殖・産卵だけは淡水域、
 特に河川に遡上して行われる。成魚の生息場所は種によって異なる。同種でも、春に河川に遡上するものと、夏から秋にかけて遡上するものがあるが、
 いずれも産卵は春になってからで、後者は遡上した河川で越冬することになる。産卵数は小型のもので数万、大型ものもので100万個以上に達する。
 卵は直径2.7-3.8mmで黒く、小石などに粘着し、約1週間で孵化すると、幼魚は成長しつつ河川を下る」
「た、タバサ!? どうしちゃったの、ねえ!!」

タバサはなぜ唐突にこの話題を語ったか、自分自身ですらわかっていなかった。
わからないのは恥ずべきことなのでお茶を濁そうとしたのか、それともルイズへの対抗心がそうさせたのか。

「つ、つまり、わからないってこと?」
「……(コクリ)」
「な、なんだ、それならそうって早く言ってよ…。わかったわ、ほかを当たってみる。ありがと、タバサ」

明らかに落胆した様子を見せるルイズ。そのまま方向転換し、部屋から退出した。

(……なんで)
なんであのような行動をとったのか。
理由はわからないが、普段表に表れることのないタバサの心は激しく燃え盛っていた。

(負けられない)

30: 2008/02/13(水) 22:28:02.39 ID:4xpzL2W20
本棚から先ほどの本、魔法書、異国文化の本などあらゆるものを集め、机へ向かう。
常人にはありえないスピードで本を漁るが、一向に製法を見つけられる気配がない。
チョコレートとはどのようなものか、せめて形だけでもわかれば……

「きゅいきゅい! お姉さま、誰かを忘れてなーい?」

後ろからなにやら聞こえるが、無視。
チョコレート、という言葉はそもそもハルケギニアではあまり聞かない言葉である。
こうなれば教師達や博識なオールド・オスマンに聞いてみるか、しかしそれはわたしのプライドが――

「ちょっとちょっと! 無視するなんてひどいのね! こっち向きなさいなのね!
 せっかくチョコレートの作り方を教えてあげようと」

――ガシッ!!

タバサは背後にいた、使い魔であるシルフィード(人間形態)の首根っこを掴んだ。
突然のことに対応できなかったシルフィードは、鋭い視線を向けられている。

「……早く教えること」
「お……お姉さま……首、締まってるのね……」

解放されたシルフィードは、けほけほと咳をしながら愚痴を言っていた。

「――まったく、いったい何をするのね!? このシルフィが親切心を出してあげたというのに
 いきなり首根っこを掴むなんて! もうお姉さまには教えてあげない! きゅい! きゅいきゅい!!」
「……一週間ご飯抜き?」
「そ、それはいくらなんでもひどいのね…。わかった、しょうがないから特別に教えてあげるのね」

シルフィードが教えた、チョコレートの製法とは…>>31-35

31: 2008/02/13(水) 22:28:25.41 ID:2VwtylaC0
まずお湯を沸かします

32: 2008/02/13(水) 22:28:37.72 ID:2VwtylaC0
次にお湯を冷まします

33: 2008/02/13(水) 22:29:26.59 ID:2VwtylaC0
ゴリラについて調べます

34: 2008/02/13(水) 22:29:38.39 ID:2VwtylaC0
ゴリラについて忘れます

35: 2008/02/13(水) 22:29:49.82 ID:2VwtylaC0
できあがり

39: 2008/02/13(水) 22:35:48.28 ID:zq30y5iA0
とりあえずぬるま湯ができたな

42: 2008/02/13(水) 22:38:38.68 ID:4xpzL2W20
「じゃあ、今から教えるから準備をするのね!」
「信用できる話?」
「風韻竜をなめちゃダメなのね! それぐらいの知識、おちゃのこさいさいなのね!」

「まず、お湯を沸かすのね」
タバサは言われたとおりにお湯を沸かした。

「次に、お湯を冷ますのね」
「……?」
訝しげに思ったが、言われたとおりにする。

「じゃあお姉さま、ゴリラのことを調べてちょうだいなのね」
生態学の本をパラパラとめくるタバサ。
「……『大猩猩(おおしょうじょう)は、サル目ヒト科ゴリラ属に属する類人猿の総称』」

「よくできました! では、ゴリラのことを忘れるのね!」
「……忘れた」

「はい、チョコレートのできあがりなのね!! やったぁシルフィあったまいーい!のね!
 きゅいきゅいきゅい!」
「……」

ざぱあ

「きゅいーっ!? ひ、ひどいのね! いきなり水をかけないでほしいのね!!」
「……道具は無駄にしない」
「うう、これはちょっとした古代のジョークなのね……」

43: 2008/02/13(水) 22:39:10.49 ID:NQ27J0Na0
タバサ「バレン・・・タイン・・・?」
レックス「チョコくれるの?サンキュー!」

サンチョ「旦那様、貴方のお子さんは健気に育っています」

45: 2008/02/13(水) 22:51:37.88 ID:ARI3sCP8O
「…………」
タバサは無言で、シルフィードの食料を頑丈な宝箱に仕舞い込もうとする。

「ま、待つのねお姉さま! 最初! 最初のお湯を沸かすことだけは正しい話なのね!!
 これ、ホントなのね! 首をかけてもいいのね! だからお願い、食料没収だけは勘弁なのね!!」

足に必死ですがりつく使い魔。現在は大人の女性の姿なので、傍から見ると滑稽な姿である。

「……そのあとは?」
「そ、それは……実は、知らないのね。ごめんなさいお姉さま。きゅい」

シュン、としてしまった使い魔の頭を、タバサは優しく撫でる。
悪気はなかっただろうし、おそらくシルフィードはタバサを元気付けるためによかれと思ってやったのだろう。
やや強引だがそう結論付けることにした。

頭を撫で続けていると、コンコン、と扉を叩く音がした。

「やっほー、遊びに来たわよタバサ!」

次いで扉が開く。付き合いの長い友人であるキュルケがたずねてきた。

「…どうしたの?」
「ふっふーん、ルイズの部屋をちょっと調べてみたら、いいモノを見つけちゃったから持って来たのよ」

そう言ってタバサが取り出したのは一冊のノートだった。
拙い字だったが、これは才人のものである。タバサが教えた字だ。

「……!」

気になって中身を読んでみたタバサは、チョコレートに関するヒントを見つけた。そこにかれていたのは>>47

46: 2008/02/13(水) 22:52:06.56 ID:4xpzL2W20
枯れてどうする

そこに書かれていたのは>>47

47: 2008/02/13(水) 22:52:21.26 ID:RvlyCtxw0
カカオの粒が括り付けられていた

50: 2008/02/13(水) 23:09:33.69 ID:4xpzL2W20
そのページには、袋に入った何かが括り付けられている。
下には「カカオに近い材料」と書かれており、カカオから作るチョコレートの製法が書き記してあった。
更には、絵で完成予想図まで描かれている。

「サイトってば、メイドを呼んで何かを調達してたみたいね。多分その粉じゃないかしら」
「…これが、チョコレートの原材料?」
「そのノートによると、どうやらそうみたいよ。サイトがメモがわりに使ってたか、
 ルイズに見せようとしていたか…。どちらにせよ、ちょっと作ってみたくなったんじゃない?」

これでチョコレートを作れる……多分、主人のルイズよりも早く。
タバサはそう考えたが、ふと気づく。先ほどキュルケは何と言ったか。

――ふっふーん、ルイズの部屋をちょっと調べてみたら、いいモノを見つけちゃったから持って来たのよ。

キュルケの性格からして、おそらく許可など取っているわけがない。
怪しいものに興味津々で、才人がいない隙を見計らってこのノートを取ってきたはずだ。

「……ダメ。このノートは返してくる」
「え!? ど、どうして?」
「勝手に人のものを盗んじゃダメ。そんなので作ったチョコレートを渡しても、彼は喜ばない」
「そんな……タバサ、考え直して。あたしは貴方のためにこのノートを持ってきたんだから」
「!」

勘の鋭いキュルケは、本人すら気づいていないタバサの気持ちを読み取っていた。
どうしても才人にチョコレートを渡したいという気持ち。
友人の変化……恋心を敏感に感じ取ったた微熱のキュルケが、チョコレートを作りたいタバサのために起こした行動。

「サイトには悪いことをしたと思ってるわ。でも、タバサ、あたしは」
「――そう、ありがとう。でも、この本は返してくる」

54: 2008/02/13(水) 23:18:23.15 ID:4xpzL2W20
「どうして? これがあれば、ルイズより先にサイトにチョコレートを渡せるんでしょう?」
「確かに魅力的だと思う。だけど……わたしはそこまでしてチョコレートを渡したくない。
 あくまでも自分の力で作りたい。それが彼と、彼女への誠意だと思う」
「タバサ……」
「でも、これが唯一の情報……だから」

いつもと変わらないような目で、しかし奥には火を灯し、まっすぐにキュルケを見据える。

「みんなで一つのチョコレートを作って、彼にプレゼントしたい」

キュルケは唖然としていたが、やがて堰を切ったように笑い出した。

「……あははははは! 確かにそれだと皆公平よね!
 ホンット、タバサは賢いわね。わかった、ルイズを連れてくるわ」

ひとしきり笑ったあと、笑いで浮かんだ涙を拭いながら、キュルケは扉を開けた。
扉を閉める前にタバサに向かって振り返り、問う。

「ねえタバサ……サイトのこと、どれくらい好きなの?」

タバサはしばらく考えた後に、口を開く。

「>>58」

58: 2008/02/13(水) 23:22:32.52 ID:6GnGr/aIO
嫌い

62: 2008/02/13(水) 23:35:19.56 ID:ARI3sCP8O
「……嫌い」
「え?」
「彼なんて大っ嫌いなんだから」
「……タバサ?」

予想だにしなかった答えにキュルケは面食らう。
それと同時に、「では何故タバサはチョコレートを作るのか」という疑問が浮かんだ。
淡々と言葉を続けるタバサ。

「勘違いしないで、本当なのだから」
「……! あ、もしかして」

ふいにタバサの言葉の真意に気づき、キュルケはニヤニヤ顔になった。

「それ、ルイズの真似でしょ? 正直に言うと、下手よ。もうちょっと勉強しなさいな、シャルロット」

バタン、と扉が閉められた。
いつのまにか強張っていた肩を下ろす。

(慣れないことは、するものじゃない)

「うふふふふふふふ……お姉さま、顔が真っ赤なのね~」

安心した途端に突如、ナゾの声が聞こえた。少しびっくりして部屋の隅を見るタバサ。
そこには、本棚と壁の間に、ぴったりと収まっていたシルフィードの姿が!

「シルフィを空気扱いした報いなのね、もっと恥ずかしがらせてやるのね~」
「…………」

今回に限っては反論や逆襲の余地がない。やられた、とタバサは思った。

63: 2008/02/13(水) 23:38:15.18 ID:4xpzL2W20
暫くして、キュルケがルイズを伴い、部屋に訪れた。
一連の話をキュルケから聞き、ノートを見たルイズは、

「あのバカ犬、こ、こここんな物まで用意してどれだけ発情しているのかしら……」

と憤慨していた。しかしタバサが皆でチョコレートを作るという趣旨を説明すると、
「ま、まあ、皆であげるのも悪くはないわね!」
と顔を真っ赤にして言い放った。無論それを聞いてキュルケがからかったのは言うまでもない。

相談の結果、普通の製法ではなく、それぞれが一品ずつ
無難な食材・調味料などをオリジナル要素として入れることになった。
これはタバサが立案したものである。ルイズもキュルケもその案を快諾した。

さて、一体どんなものが出来上がるのだろうか…?

タバサが入れたもの :>>65
ルイズが入れたもの :>>66
キュルケが入れたもの:>>67

65: 2008/02/13(水) 23:39:41.60 ID:2VwtylaC0
ラOジュース

66: 2008/02/13(水) 23:39:52.17 ID:2VwtylaC0
ラOジュース

67: 2008/02/13(水) 23:40:03.39 ID:2VwtylaC0
ラブOジュース

68: 2008/02/13(水) 23:40:48.02 ID:4xpzL2W20
>>64-67
お、お前という奴は…

76: 2008/02/14(木) 00:02:49.15 ID:3tEMrqTs0
「え、俺にくれるの!?」

三人はチョコレートを作り終え、才人の部屋に居た。
それぞれが、自分の一品入りのチョコレートを才人に差し出す。
その一品が何かというのは本人たちだけの秘密、というのが、タバサが提示した条件であった。

チョコレートを作ったメンバーは全員、お互いが一度ずつトイレへと駆け込むのを目撃している。
一体何をしていたのかは不明だが、三人が三人とも、戻ってきた直後に
どこからか仕入れてきた一品を自分のチョコレートに放り込んでいた。

「……よかったら」
「か、感謝しなさいよ! わざわざ作ってあげたんだから!」
「はい、あたしのも食べてねサイト」

「あ、ありがとう皆…じゃあ、まずはキュルケから。ん? なんかちょっと苦いような……」
「気のせいじゃない?」
(に、苦いのかしら…)
(…………)

顔を顰める才人、知らん振りをするキュルケ、動揺するルイズ、無表情のタバサ。

「じゃあ次はルイズ……うぇ、なんか変な味がする」
「ちょ、ちょっと! そんなハズないわ!」
(…へー、さすがはゼロのルイズ。経験もゼロみたいね)
(…………)

思わず吐き出しそうになるサイト、激昂するルイズ、察してニヤニヤするキュルケ、無表情のタバサ。

「じゃあ次、タバサのだな」
「……(こくり)」

78: 2008/02/14(木) 00:10:33.06 ID:3tEMrqTs0
今までの二つが妙な味だったので、タバサのチョコレートを口に入れるのを躊躇っていた才人であったが
じっと見られるといつまでも硬直しているわけにはいかず、やがてチョコを口に放り込んだ。

「あれ、甘くて美味しい……」
「なっ!!」
「へぇ。やるじゃない、タバサ」

納得いかない顔のルイズと自分のことのように喜ぶキュルケを尻目に
才人はタバサに向かって満面の笑みを浮かべる。

「うん、美味しい! まさかトリステインでチョコレートを食べられるなんて……
 俺、感動したよ! ありがとうな、タバサ!」



その笑みと言葉に、タバサは自分の何かが壊れるような感覚がした。
全身が熱くなり、心臓が激しく鼓動を伝える。
頭の中が真っ白になったような気がして、行動に歯止めがきかない。
考えるより先に体が動いた。

(…………)
「……え?」

次の瞬間、才人の頬にタバサの唇が触れた。

「……………………これは、おまけ」

84: 2008/02/14(木) 00:19:33.77 ID:3tEMrqTs0
「え、タバサ? あれ、今なにを」

「ちょ、ちょちょ、ちょちょちょ、ちょちょちょちょちょっとなななななな何をしてるのよタバサッ!?」
「あら、タバサってば大胆ね」

何が起こったかわからない才人とルイズ、驚いた表情のキュルケを一瞥し、
素早くタバサは部屋から出た。

部屋の中からは才人の断末魔の叫びと、鬼のような金切り声と鞭の音が鳴り響いていた。
少し大胆なことをしただろうか、と思い、部屋への道をたどろうとする。

「タバサ!」

声に振り返ると笑顔のキュルケがいる。
自分のことのように、本当にうれしそうな笑顔だった。

「ひとまずおめでとう。これからもがんばってね」

その言葉にこくりと頷き、タバサは部屋へと戻った。


タバサは自室の机で惚けていた。
先ほど、なぜ自分があのような行為をしてしまったのか、いくら考えてもわからない。
ただタバサは、あの感情は二度と忘れることはないだろう、と思っていた。

ふと、チョコレートの製法が記されたノートが目に付く。タバサはそのノートに、そっと一文を付け足した。

『バレンタインデーは、人を変える魔法の日である』

END

85: 2008/02/14(木) 00:20:58.90 ID:T6HHhmxV0
乙!
文章力の高さがうらやましいぜ。俺にもわけてくれ

86: 2008/02/14(木) 00:21:55.88 ID:b1ge8aMKO
乙!

引用: タバサ「バレン…タイン…?」