1: 2008/03/10(月) 21:20:09.85 ID:XnADEFPaO
落ちてしまった…


無理を承知で最近の過去レスから投下していきますね


らき☆すたでかまいたちの夜なようです


らき☆すた(1) 【前編】 らき☆すた 【分割版】 (カドカワデジタルコミックス)

87: 2008/03/11(火) 02:28:47.03 ID:HBdKZpoeO
「グズグスするなよ、お嬢ちゃん…このまま喉をかっ切ってもいいんだぞ。」


男は後ろからゆたかの喉元にナイフをそえた。


ゆたかは苦しげに咳き込みながらも、言う通りによつんばいになった。


「よし…いい子だ…」


97: 2008/03/11(火) 03:03:35.95 ID:HBdKZpoeO
その刹那、みゆきが口から血を垂らしながら立ち上がるとゆたかを犯さんとする男に思い切り体当たりをした。


みゆきと男は共に床に投げ出され、倒れ込んだ。



「畜生!…小娘が!」


男はみゆきよりも早く立ち上がると、まだ床に倒れていたみゆきの腹に何度も蹴りを入れた。


そして、みゆきの髪の毛を掴むと喉元を露にした。

100: 2008/03/11(火) 03:11:38.66 ID:HBdKZpoeO
「我に逆らえばどうなるか…その目でよく見てろ!」


男はそういうと、ぐったりとするみゆきの喉にナイフを添えた。


「…止めて…止めて…」


苦しげに咳き込むみなみが懇願するように繰り返し呟いた。


だが無駄だった。

102: 2008/03/11(火) 03:20:30.19 ID:HBdKZpoeO
男はそのままナイフを横に引いた。


みゆきの喉は文字通り真一文字に切り裂かれ、血がほとばしった。


男はみゆきの髪を横に払って床に打ち捨てると、今度はゆたかの髪を掴み、同じように喉元を露にさせた。



「もういい……頃してから種付けしてくれる…。」


そういうと男は再びゆたかの喉元にナイフをそえた。


「もう…止めて…いや…」

108: 2008/03/11(火) 03:31:35.17 ID:HBdKZpoeO
みなみは涙を流し、そして目を瞑った。

ゆたかも、涙を流し、半ば諦めたかのように静かに目を閉じた。

せっかく…せっかく…みなみちゃんと理解しあえると思ったのに…氏んじゃうのか…何かやだなぁ…


いままさに氏に直面しているゆたかには、そんな事しか考えられなかった。

112: 2008/03/11(火) 03:39:32.29 ID:HBdKZpoeO
そして男は腕に力を込めて、ゆたかの喉に刃を押し当て、引き裂かんとした。










唐突に破裂音がした…ゆたかにはそれが幻聴にしか思えなかった。


「ゆーちゃん!」


遥か彼方にこなたの声が聞こえた。
そんな筈はない…私は氏ぬのだから…。

116: 2008/03/11(火) 03:48:17.50 ID:HBdKZpoeO
若干の疑問を残しながら、ゆたかはゆっくりと目を開いた。


目の前には、こなたの姿があった。


「え…?お姉ちゃん…どうして…。」


ゆたかは至極驚いた様子でこなたにたずねた。


「助けに来たんだよ…それに武器も手に入ったし…。」


そういうとこなたはかがみの方をあごてしゃくった。

119: 2008/03/11(火) 03:57:19.43 ID:HBdKZpoeO
そこでは猟銃を構えたかがみが、腹を押さえて苦しむ男に猟銃をつきつけていた。


つかさは血を流して苦しむみなみとみゆきを介抱していた。


ゆたかは思わずこなたに抱きついて泣き出した。


「お姉ちゃん…よかった…ありがとう…。」


「…遅くなってごめんね…。」


こなたはゆたかに謝りながら、頭を撫でた。



「アンタ…一体どういうつもりよ!みんなを頃して…許さない!絶対に許さない!」


猟銃を油断なく構えながらかがみが怒鳴った。


男は腹を押さえて、口から血を吐きながら、クツクツと笑った。

123: 2008/03/11(火) 04:07:00.43 ID:HBdKZpoeO
「我を殺そうとしても無駄じゃ…あきらめい…。」


時折咳き込みながら男が言った。


男が不敵に笑うと、吐き捨てるように言った。


「これで…贄がよっつ……あといつつで…完成じゃ…。」



男が言えたのはここまでだった。かがみは素早く引き金を引くと、男の頭を吹き飛ばした。

128: 2008/03/11(火) 04:16:21.71 ID:HBdKZpoeO
「ゆきちゃん…しっかりして…。」


つかさがみゆきの喉の傷を押さえて止血を試みた。
だが、血があとからあとから出てきて止まらない…。


誰の目から見てもみゆきが助からないのは目に見えていた。


みゆきは無言のまま震える手で、つかさの手を持つと、もう片方の握っていた手をつかさの手の上に乗せた。


そして何かを手渡した。

131: 2008/03/11(火) 04:20:30.43 ID:HBdKZpoeO
それは黄色いタグが付いたキーだった。
タグにはクルーザーとマジックでかかれている。


恐らく体当たりした際に、立木からくすねとったのだろう…。


「ゆきちゃん、すごい!…これで一緒に逃げよう…。」


だがみゆきは優しく微笑むと、首を横に振った。

161: 2008/03/11(火) 05:30:12.38 ID:HBdKZpoeO
そして静かに目を閉じると、そのまま息を引き取った。


「…ゆきちゃん…」


つかさが悲しげに呟いた。


「みなみん…立てる…?」


こなたが手負いのみなみを何とか起こしてやると、椅子に座らせた。

166: 2008/03/11(火) 05:39:59.89 ID:HBdKZpoeO
みなみは苦しげに咳き込んだ。


「大丈夫…。」


みなみはそこまで言うと黙り込んでしまった。


無理もない…姉のように慕っていたみゆきが今しがたしんでしまったのだ。


かがみはため息をつくと椅子にドスンと座った。

252: 2008/03/11(火) 19:17:13.40 ID:HBdKZpoeO
みなみは苦しげに咳き込んだ。


「大丈夫…。」


みなみはそこまで言うと黙り込んでしまった。


無理もない…姉のように慕っていたみゆきが今しがたしんでしまったのだ。


かがみはため息をつくと椅子にドスンと座った。


「つかさ…一本いい…?」


「…ふえ…?」

突然の事につかさはおののいた。

254: 2008/03/11(火) 19:22:40.75 ID:HBdKZpoeO
「私はアンタの双子の姉よ…知ってるんだから…オーバーオールの右ポケット…マルボロのメンソール…」


つかさが右ポケットに手を入れると案の定、マルボロのメンソールが出てきた。

つかさはかがみに素直にそれを手渡すと、火を付けてやった。


かがみは煙草をうまそうにふかすと、咳き込んだ。


「アンタもどう?」


かがみがこなたの方を向いて言った。


こなたはいらないという風に首を振った。

258: 2008/03/11(火) 19:30:50.01 ID:HBdKZpoeO
つかさはクルーザーのキーをポケットにしまった。


これでこの島から脱出が出来る。


だか五人には問題があった。


まずは嵐。これが止まない事には、船つき場だろうがどこだろうが、行けた物ではない…そして件のクルーザーは本当にあるのだろうか…もしかしたらないのかもしれない…。


そして、立木が最後に言い放ったあの言葉…あやのの先例が余計に説得力と現実味を感じさせたあの言葉…

260: 2008/03/11(火) 19:42:37.20 ID:HBdKZpoeO
もしあの言葉の通りなら、岸猿はまだ生きており、再び狂った殺人劇を繰り広げる事だろう…。


「とりあえず…ゆきちゃん…このままじゃかわいそうだから…談話室まで運んでくるね…」


つかさはそう言うと、みゆきの亡骸を苦労して持ち上げ、食堂から出ていった。


「あたしも…手伝ってくる…お姉ちゃんはみなみちゃんを診てて…。」


ゆたかがそう言うと、つかさの後に続き、食堂から出ていった。

264: 2008/03/11(火) 19:53:40.93 ID:HBdKZpoeO
かがみは吸い終えたマルボロを足元に落とすと、それを踏み消した。


辺りに重い沈黙が流れた。



外は依然として嵐がゴウゴウと音を立てて辺り一帯の物を全てなぎはらわんと暴れまわっている。



「ねぇ…こなた…さっきの事なんだけど…。」


傷のせいで気を失って寝込んでいるみなみをソファーに寝かせているこなたに、かがみは言った。

266: 2008/03/11(火) 20:02:30.27 ID:HBdKZpoeO
「かがみ…どうしたの?」


「いや…さっきのキスって…あれ本気じゃないわよね…。」


頭を人差し指で掻きながら照れ臭そうに、かがみが言った。


「まあ、確かにアンタとは一度…ああなっちゃった事もあったけどね…。」


かがみは、つい一月前の出来事を思い出し、赤面した。

270: 2008/03/11(火) 20:08:12.66 ID:HBdKZpoeO
その時とは、学園祭の打ち上げの時だった…。

まさか打ち上げで酒が入るとは思わなかったかがみは相当酔いが回り、学校の屋上で一人酔いを醒ましていたときだった。


突然こなたがやって来て、かがみにキスをしたのだ…。


そして、こなたは無理矢理かがみを押し倒すと…。





こんな時にこんな事を考えてしまう自分に嫌気をさしながらも、かがみはその事が頭からこびりついて離れなかった。

273: 2008/03/11(火) 20:11:17.85 ID:HBdKZpoeO
「いや…あれは…場の成り行きというか…。」


こなたも赤面し、うつ向いた。


「…アンタ…責任…とりなさいよね…。」


かがみがプイとソッポを向いて言った。


「分かってる…必ず生きて帰ろ…そんで、続き…しようよ…。」

276: 2008/03/11(火) 20:14:23.56 ID:HBdKZpoeO
「……………うん…。」


二人は互いにソッポを向きながら言い合った。





「ゆきちゃん…こんな事しかしてあげられなくてごめんね…」


ゆたかと二人でみゆきの亡骸を持ちながら、つかさが呟いた。

279: 2008/03/11(火) 20:19:52.31 ID:HBdKZpoeO
「後で必ず弔ってあげますから…。」


二人は談話室の扉を開けると、あやのの亡骸が目に飛び込んで来た。


カーペットが捲られ、ズボンとパンツが一緒くたにずり下げられて、足首で引っかかっていた。


太ももの辺りには、白濁した粘液がポタポタと付着している。

281: 2008/03/11(火) 20:37:27.12 ID:HBdKZpoeO
氏後何者かに氏姦されたのは明らかだった。




「…酷い…」


ゆたかが思わず呟いた。


つかさはみゆきの亡骸を床に下ろすと、太ももの粘液を拭ってやり、ズボンとパンツをはかせてやった。

既に氏後硬直が始まっている氏体にズボンをはかせるのは難儀だったし、いくら友達だったとしても気味が悪かった。

282: 2008/03/11(火) 20:40:44.77 ID:HBdKZpoeO
そして再びカーペットをかけてやった。


そして、みゆきをあやのの隣に寝かせてあげた。


「ゆきちゃん…またね…」


みゆきにもカーペットを被せると、つかさは立ち上がり、ゆたかとともに談話室を後にしようとした。

283: 2008/03/11(火) 20:47:47.10 ID:HBdKZpoeO
その時、背後からゴソリと音がした。

「全ては岸猿家のために…」

背後から物音とともにくぐもった老婆のしわがれ声がした。

二人は背筋を凍らせ、そして振り返った。


カーペットが盛り上がり、佇んでいる…。

288: 2008/03/11(火) 20:57:14.72 ID:HBdKZpoeO
どちらかの氏体が半身を起こし、カーペットを盛り上げている…。


あり得ない…あやのは頚骨が完全に折れ、首から飛び出しているし、みゆきは骨の一部が露出するほど喉を切り裂かれているのだ…どちらも今更息を吹き返すなどあり得ない事だ。


「…うそ……」


恐慌をきたし、呆然と佇むゆたかが思わず漏らした。

290: 2008/03/11(火) 21:00:50.31 ID:HBdKZpoeO
不意にカーペットがずり下がり、半身が露になる…。


みゆきが半身を起こし、こうべを垂れていた。


「…ゆきちゃん……?」


つかさか怪訝そうな面持ちでたずねた。


みゆきはこうべを垂れたまま、腕をあげでつかさとゆたかを指差した。

294: 2008/03/11(火) 21:09:34.83 ID:HBdKZpoeO
「贄が……いつつ…むっつ…うまそうな贄じゃ…特に紫色の髪をした贄…股から血を垂らしておる…ここまで臭ってくるわ…」


みゆきがしわがれた声でゆっくりと言った。


つかさが子宮の辺りをギュッと押さえた。


「…いや…ゆきちゃん…」


つかさが足を震わせて後退る。


296: 2008/03/11(火) 21:19:24.25 ID:HBdKZpoeO
みゆきは床に手を付くと、よつんばいのまま、つかさ達の方へゆっくりと近づいて来た。


「隠れても無駄じゃ…血が臭ってくるわ…。」


唐突に、こうべを垂れていたみゆきが頭を上げた。


舌が、紫色に変色した舌が、爬虫類か何かのように口から飛び出し、シュルシュルと獲物を探すようにうごめいていた。

299: 2008/03/11(火) 21:28:03.17 ID:HBdKZpoeO
目には正気が感じられず、虚ろな眼窩に妖しい光だけが恍々と輝いている。


もはやその動きに生前のみゆきの面影は無かった…いや…人間だった面影すら感じられない…。


あの時…あやのと接吻をしたあの時から既に、みゆきの体内で何かが起きていたとしか思えなかった…。


二人はただただ、突然の脅威から後退り、逃げる他なかった…。

301: 2008/03/11(火) 21:35:48.85 ID:HBdKZpoeO
ゆたかとつかさは必氏で廊下を駆け、二階へと登った。


後ろからドタドタとそうぞうしい足音を響かせながら、みゆきが追いかけてきている。



「いやだ!ゆきちゃん!ついて来ないで!」


つかさが悲鳴のような声を上げた。


二人は階段を登りきると、廊下を夢中で走った…。

307: 2008/03/11(火) 21:46:59.02 ID:HBdKZpoeO
20もの客室のドアが並ぶ廊下を通り過ぎ、書斎の戸を開けると、そこに飛び込んで、スライド式の鍵を締めた。


二人が飛び込み、鍵を掛けた瞬間、ドアに何かがぶちあたり、大きな音をたてて揺れた。


「開けろ!逃げられんぞ!諦めろ!」


ドアの向こうから、しわがれた怒鳴り声が聞こえて来た。


そしてドアをひっきりなしに叩いていた。


「止めて!ゆきちゃん!来ないで!

311: 2008/03/11(火) 21:54:14.23 ID:HBdKZpoeO
つかさはドアが破られないように必氏で押さえながら、言った。


後ろではゆたかが大層ショックを受けたように、顔を押さえてしゃがみこみ、泣いていた。


暫く、ドアを叩く音と、しわがれた怒鳴り声が辺りをこだました。


そして、唐突にドアを叩く音が止んだ。

312: 2008/03/11(火) 22:00:16.85 ID:HBdKZpoeO
つかさはキョトンとして、ドアに聞耳を立てた。


ドアの向こうから、足音が聞こえ、それが徐々に遠ざかって行った。



諦めてくれたのだろうか…


つかさは肩を撫でおろすと、その場にしゃがみ込んだ。


「ゆたかちゃん…行ったみたい…もう大丈夫だよ…」

320: 2008/03/11(火) 22:12:02.28 ID:HBdKZpoeO
そう言うと、つかさはゆたかの頭を撫でてあげた。


「みゆき先輩…あんなになって……」

ゆたかが顔を押さえながら、呟いた。

かりにかがみ達の所に行ったとしても向こうには物置から調達した銃がある…。


つかさは再びドアに耳を当て、近くに潜んでいないかどうかを確かめた。
何の物音もしない…。

323: 2008/03/11(火) 22:18:03.40 ID:HBdKZpoeO
試しに、鍵を開け、ドアの隙間から廊下を覗こうとゆっくりとノブを回し、ドアを開けた。


そしてドアの僅かな隙間から廊下を見てみる…。


ドアが並んだ薄暗い廊下には物陰一つ無かった。


「ゆたかちゃん…行こ…」


つかさはそう言いながら、部屋の奥に立つゆたかの方を向いた。

325: 2008/03/11(火) 22:27:02.29 ID:HBdKZpoeO
ゆたかの背後の窓に、何かが張り付いていた。

つかさは恐怖で見開いた目で、窓を凝視した。


窓にはみゆきの青白い顔がベタリと張り付き、こちらの様子を伺うかのように目をギョ口リと向けている…。


「え…つかさ先輩…どうしたんですか…。」


ゆたかがそれに気づいて居ないのだろうか、怪訝そうな面持ちでつかさの顔をのぞきこんでいる。

330: 2008/03/11(火) 22:36:40.46 ID:HBdKZpoeO
つかさが悲鳴をあげようとしたその刹那、窓を砕いて侵入してきたみゆきにゆたかは押し倒された。

「…贄じゃ…贄じゃ…」


みゆきはそう呟くと、ゆたかの服を掴み、引き裂いた。


途端にゆたかが半裸に近い格好になった。


ゆたかの口から引き絞るような悲鳴が上がるが、大きく開いた口に、みゆきは自分の口を重ねた。

332: 2008/03/11(火) 22:42:18.30 ID:HBdKZpoeO
そして、自らがされたようにゆたかの舌を噛み千切らんと歯を立てた。


ゆたかの悲鳴はコボコボと血を吐く音に変化した。


つかさは腰が抜けたように座り込み、ゆたかが生きたままなぶり殺される様子を見ているしかなかった。


340: 2008/03/11(火) 22:50:27.67 ID:HBdKZpoeO
そして、腹を切り開くと、内臓をグチャグチャ音をたてながら、むさぼり始めた。


ゆたかの谷底に落ちて行くような長く細い悲鳴が途切れる事は無かった。


内臓を食い荒らされたからなのか、はたまた、精一杯の悲鳴を上げているからなのか、ゆたかは今まで聞いたことがないような大きな音でおならをした。


それを聞いたみゆきは、ゆたかの内臓から口を離すと、ケタケタと笑い始めた。


つかさはそれを青ざめた顔で震えながら見つめているしかなかった。

348: 2008/03/11(火) 23:04:57.22 ID:HBdKZpoeO
「ンッ…ンフッ…チュク…」


かがみとこなたは椅子にすわり、互いの唇をむさぼりあっていた。
互いに抱き合い、そして互いの舌を絡ませ、味わう…。

命の危機にさらされ、子孫を残すために欲が増強したのか、まだ色情の呪術の効果が残っているのか、はたまたこの狂った状況のせいで互いの理性のたがが外れたのかもしれない…。

354: 2008/03/11(火) 23:14:04.36 ID:HBdKZpoeO
だが二人にはそんな事はどうでも良かった…。


もしかしたら…次は自分が氏体になるかもしれない…


二人はこの時間を永遠の物にしたかった…。


かがみが椅子に座り、こなたがそれに跨るようにして、対面し、そして熱い吐息を吐き出しながら接吻を繰り返す。


もしかしたら、互いに出会った時には既に惹かれ合い、このような状況になる事は必然だったのかもしれない。

360: 2008/03/11(火) 23:27:34.24 ID:HBdKZpoeO
そう言うと、こなたから体を離し、食堂から出ていった…。


こなたは寂しげにかがみの背中を見送ると、ソファーで気を失っているみなみを見つめた。


顔を赤くし、額に玉のような汗を滲ませ、そして肩で息をしているみなみも、そう長くはもたないだろう事は、こなたでも一目で分かった。

366: 2008/03/11(火) 23:37:47.68 ID:HBdKZpoeO
こなたに在らぬ加虐心が芽生える…。


肩で息をし、熱を出し、今にも劇症の発作をおこしそうな、緑色の髪と綺麗で純粋な紺碧の瞳をした少女を前にこなたは妄想の世界へと旅立つ。


簡単な事だ。手間は要らない。


この弱った少女の胸に膝を載せ、動けなくしてから、ゆっくりと口と鼻に手を添えて呼吸を止める。


空気を求めてあえぐ少女の瞳はジッとこなたの水色の瞳を見つめる。

372: 2008/03/11(火) 23:44:07.52 ID:HBdKZpoeO
そこには善悪の区別などという生易しいものは介在しない。


ただただ加虐と苦痛のみが支配している…。


この少女を前に…。


「…泉先輩…?」


不意に声をかけられ、こなたはギョッとした。


みなみが苦しげに呼吸をしながらこちらを怪訝そうに眺めていた。

373: 2008/03/11(火) 23:45:59.71 ID:HBdKZpoeO
「んにゃ?…どうしたの…みなみん…。」


平静を装い、こなたがたずねた。


「…ゆたかは…?」


「みゆきさんを談話室まで運びに行ったんだよ…多分すぐ戻ってくるよ。」


こなたはしゃがみこむと、みなみの頭を撫でた。

377: 2008/03/11(火) 23:51:22.86 ID:HBdKZpoeO
「さっき…悲鳴がきこえた…ゆたかの…」


みなみは途切れ途切れにそう言うと、苦しげに咳き込んだ。


「ゆたかが…氏んだら……私…どうしたら…」


みなみは目に涙を溜めてそういうと、クズグズと鼻をすすり、泣き始めた。


「心配ないよ……さっきかがみんが様子をみにいったから…きっと無事だよ…」


こなたは優しくそう言うと、みなみの額に口付けをした。

381: 2008/03/11(火) 23:58:48.93 ID:HBdKZpoeO
かがみは油断なく、猟銃を構えながら、一階の薄暗い廊下を進んで行った。

依然として、小さな悲鳴が二階から聞こえて来ている。


早くいかなければ…。


かがみは歩を早めると、談話室の前に差し掛かった。
そして異変に気付いた。

本来ならば二つの亡骸が、カーペットを被って横臥しているはずだった…しかし、談話室にあるのはペタリとしたカーペットが一枚と見えない刷毛で描かれた四本の赤い線…。

387: 2008/03/12(水) 00:10:14.31 ID:obGbfp3mO
二人の氏体が忽然と姿を消したのだ。


つかさとゆたかちゃんが氏体を動かしたにしても二人合わせて80キロ近くはあるであろう亡骸を、こんな短時間で理由もなく、動かすのはいささか不自然であり得なかった。


と、すると、考えられる事は一つ…


二人の氏体がゾンビのように勝手に動き出し、何処かをさまよっているのか…あるいは二階でつかさとゆたかちゃんに危機を及ぼしているのか…。

389: 2008/03/12(水) 00:17:18.53 ID:obGbfp3mO
「フフフ…」


背後から突如として、嘲笑のような笑い声がして、かがみは慌てて振り返った。


そこにはあやのが、ノッソリと佇んでいた。


不自然な方向に首がヘニャリとぶらさがり、そこから白い骨が突きだしている…首の皮一枚で繋がっているとはまさにそのことだろう…。
こんな状態で普通の人間ならば生きている筈はない…そう…普通の人間ならば…。

391: 2008/03/12(水) 00:25:13.34 ID:obGbfp3mO
「ああっ…うあっ!」


かがみはビクリと体を反応させると、震える手で猟銃を構えて、あやのに狙いをつけた。


「あらあら…友達を撃つ気なの…?」


口から血の飛沫を飛ばしながら、他人事のように淡々とあやのが言った。


「あなたはいつもそう…そうやって心に障壁を築いている…。」

395: 2008/03/12(水) 00:30:27.71 ID:obGbfp3mO
そう言いながら、フラフラとした足取りであやのがかがみに近づいていく…その度に首が危なげにブラブラと揺れ、今にも千切れそうになる…。


「アンタ…あやのの体を一体どうするのよ…」


かがみが油断なく猟銃を向けながらたずねた。


「私の体って…私は私よ…?」


そうゆっくりと呟きながらフラフラとこちらに歩み寄って来る。

398: 2008/03/12(水) 00:35:36.84 ID:obGbfp3mO
かがみは背中に冷たい汗をかきながら、後退った。


あやのは危うい足取りで廊下を歩いて来ると、花瓶を置いたテーブルに足をひっかけて、盛大に転んだ。


ブラブラした首がグシャリと打ちっぱなしのコンクリートの床にぶち当たり、そこから脳が露出した。
さながらゾンビ映画を思わせる光景だ…

452: 2008/03/12(水) 03:04:44.11 ID:obGbfp3mO
もう耐えきれなかった。


転んでなお、小さく笑いながらこちらにはいずってくるあやのを後にし、かがみは二階へと階段を登っていった。


二階へと階段をかけ登り、そして悲鳴が聞こえる一番端の書斎へと駆けた。


入り口のドアが少しだけ開き、中からくぐもったうめきと、泥が詰まったバケツを手でこねくりまわすような不快な音が響いて来ている。

455: 2008/03/12(水) 03:10:27.11 ID:obGbfp3mO
かがみは警戒しながら、書斎のドアへと近付き、少し開いた隙間から、中をチラリと覗き込んだ…。


途端に血生臭いにおいが鼻をつき、グロテスクな光景が広がっていた。


口から血の泡を吐いたゆたかが、粉々に砕け、風雨が吹き込む窓の近くで、先程身を呈して自分を助けてくれたみゆきに、内臓をむさぼられ、小さいうめきと悲鳴をあげていたのだ…。

459: 2008/03/12(水) 03:17:05.57 ID:obGbfp3mO
そしてドアの近くにはしゃがみ込み、失禁で床を濡らしているつかさが腰が抜けたように、ただただその光景をながめていた。


「…ゆたかちゃん……」


かがみは思わず呟いた。



「…お姉ちゃん…ゆたかちゃんを助けてあげて…」


つかさはかがみに気付くと懇願するように言った。

465: 2008/03/12(水) 03:29:05.51 ID:obGbfp3mO
しかし半分肉塊と成り果てた少女は既に手遅れだった…。


「行くわよ…ここから逃げるの…」


かがみはそう言うと、つかさの手を掴み、床から立ち上がらせた。

ポタポタと、股間から失禁の尿を滴らせるつかさの手を引くと、地獄の光景と呼んでも差し支えない書斎を後にした。

471: 2008/03/12(水) 03:39:38.51 ID:obGbfp3mO
「し…氏なせて…」


書斎を後にし、廊下を進むかがみ達の後ろから非難がましい、ひきしぼるような声が飛んで来た。


ゆたかが苦しみ、氏を懇願していたのだ…。


やめて…聞きたくない…


かがみは耳を塞ぐように、つかさをつれて二階の廊下を走り去っていった。

475: 2008/03/12(水) 03:49:32.87 ID:obGbfp3mO
「どうやら助けはなかったようじゃな…」


内臓を食われて、虫の息の少女にみゆきはいやらしい声で言った。
そして、大きくえぐれた傷口に手を突き込む。


「…あああ…」


ゆたかが小さく苦痛のあえぎを漏らした。

そして、みゆきは何かを大事そうに取り出すと、それを紫色の舌で舐め回した。

477: 2008/03/12(水) 03:58:16.50 ID:obGbfp3mO
それは子宮と卵巣だった。


子宮の脇にぶら下がっている卵巣を、さくらんぼでも頬張るかのように口に入れ、それを口の中で転がす。


そして歯を立てると、子宮と繋がっている卵管をひきちぎり、卵巣を噛み締めた。

ゆたかは体をビクンとひきつらせると、そのまま動かなくなった。

485: 2008/03/12(水) 04:26:19.56 ID:obGbfp3mO
「ゆたかちゃんが…ゆたかちゃんが…」


失禁で股間を濡らしたつかさがうわ言のように繰り返す。

かがみは構わず、つかさの手を取り、階段を駆け降りた。


階段脇の廊下には案の定、あやのがズルズルと半分潰れた顔をこちらに向けながらはいずっていた。


かがみは思わずたじろぎ、つかさは悲鳴をあげて尻餅をついた。

588: 2008/03/12(水) 19:10:19.17 ID:obGbfp3mO
「ゆたかちゃんが…ゆたかちゃんが…」


失禁で股間を濡らしたつかさがうわ言のように繰り返す。

かがみは構わず、つかさの手を取り、階段を駆け降りた。


階段脇の廊下には案の定、あやのがズルズルと半分潰れた顔をこちらに向けながらはいずっていた。


かがみは思わずたじろぎ、つかさは悲鳴をあげて尻餅をついた。

もう元のあやのじゃない!


かがみは猟銃をあやのに向けると躊躇いもなく、引き金を引いた。

589: 2008/03/12(水) 19:15:55.72 ID:obGbfp3mO
散弾が、あやのの背中に命中し、肉が弾け飛んだ。


猛獣のうなりのような声をあげると、あやのは動かなくなった…。


「早く立って…行くよ…!」


かがみはつかさに駆け寄ると再び抱き起こした。


その刹那、二人の正面にある玄関の鉄扉がバンと音を立てて揺れた。

590: 2008/03/12(水) 19:20:12.37 ID:obGbfp3mO
誰かが叩いているようだ。


「柊……」


外から、痰が絡んだような声が聞こえて来た。みさおだ。


そして、再び扉が大きな音を立てて揺れた。


「…なんで…助けてくれなかったんだよ…柊…」

591: 2008/03/12(水) 19:26:12.84 ID:obGbfp3mO
みさおの痰が絡んだような悲しげな声が扉越しにくぐもって響いて来る。


「痛いよ…寒いよ…柊…中に入れてくれよ…柊…頼むよ…」


そして、扉を繰り返し、叩いている。


かがみはそれを無視し、未だにヒクヒクとうごくあやのの脇を通り過ぎ、食堂を目指した。

593: 2008/03/12(水) 19:33:14.25 ID:obGbfp3mO
食堂へと辿り着くと、ソファーで寝ているみなみを前に、こなたが呆然と佇んでいた。


「…こなた?」


今しがた走って来て、息をあらげているかがみが、こなたのその様子を見て、不審に思い、思わず呼び掛けた。


こなたはゼエゼエと肩で息をし、顔には汗が滲んでいた…。

595: 2008/03/12(水) 19:40:09.13 ID:obGbfp3mO
「…みなみん…しんじゃった…」


淡々と、こなたはそう言った。


「…え…うそ…」


かがみは猟銃を携え、ソファーで寝ているみなみの元へ駆け寄った。


紺碧の美しい目がドロンと天井を仰ぎ、充血して、涙が溜っている。

598: 2008/03/12(水) 19:50:21.12 ID:obGbfp3mO
口は空気を求めているかのように大きく開かれ、口の周りが赤くなっていた。

何かで押さえつけられでもしたのだろうか…。
口から涎が流れ出て、筋を作っている…。




そして、服装は不自然に乱れ、手は苦痛を紛らすかのようにソファのふちをがっしりとつかんでいた。


自然に氏んだとしても、これはあまりに不自然だった。

600: 2008/03/12(水) 19:57:16.71 ID:obGbfp3mO
「急に…苦しみだしたと思ったら…突然動かなくなって…」


後ろから、こなたの弁解がましい声が聞こえて来た。


つかさは食堂の入り口で、口を押さえて立っているばかりだ…。



「アンタ…頃したの…?」


かがみはそのままの体勢で、こなたにたずねた。

607: 2008/03/12(水) 20:05:16.30 ID:obGbfp3mO
「いやぁ~まさか…。」


こなたがおどけた様子で言った。



かがみはこなたの方を振り向くと、猟銃を向けた。


「本当は…アンタにこんな事したくない…」

そしてかがみは目頭から涙を流して、呟いた。


「だけど…おかしな事ばかり…頭が変になりそうよ…」


「…お姉ちゃん…」



つかさが呆然と佇みながら、かがみを見つめて独り言のように呟く。

610: 2008/03/12(水) 20:10:16.14 ID:obGbfp3mO
「こんな事…もうたくさんよ…」


「かがみん…落ち着いて…」


こなたが手の平をこちらに向けて、後退りながら言った。

かがみは引き金をゆっくり引き絞った。

616: 2008/03/12(水) 20:17:36.93 ID:obGbfp3mO
引き金が撃鉄を解放し、撃鉄が銃弾を叩く。


尻を叩かれた銃弾はあらくれ馬のように、銃口を飛び出し、そして拡散する。


拡散された散弾がこなたの肩口から胸にかけてめり込み、こなたの小柄な体は後ろに吹き飛ばされた。


辺りは静かになった…。


窓の外では相変わらず風が強く吹き荒れていたが、雨は止み、漆黒の空は仄かな紺色へと移り変わっていた。夜明けが近い…。

623: 2008/03/12(水) 20:26:25.17 ID:obGbfp3mO
かがみは猟銃を放り投げると、その場に座り込み、号泣した…。


それはこなたや皆の為に流れた涙なのか…はたまた自分の悲運を呪った涙なのか…誰も分からなかった。



「…どうして…こなちゃん…お姉ちゃん…どうして…こうなっちゃったの…?」


つかさが寂しげに、呟いた…。


かがみに撃たれたこなたはヒクヒクと口を動かすと、うわ言のように繰り返しくちずさんだ。

628: 2008/03/12(水) 20:33:51.59 ID:obGbfp3mO
「……す…べては…岸猿…家の…ため…に…すべ…ては………。」


つかさはかがみに歩み寄ると、ポケットから鍵を取り出して言った…。


「逃げよう…私たちだけで…どこか遠くへ……。」


かがみは涙を拭うと、側に立つつかさを仰いだ。


「つかさ…。」

636: 2008/03/12(水) 20:43:46.26 ID:obGbfp3mO
その時だった…つかさの背後からノソリノソリと人影が忍び寄り、何かを振り上げた…。


「つかさ!」


かがみは目を見開き、叫んだが、言えたのはそれだけだった。



人影はつかさの脳天に何かを振り下ろした。


ゴキンと鈍い音がして、つかさの目が見開かれた。

639: 2008/03/12(水) 20:50:12.65 ID:obGbfp3mO
そして、額から血が垂れ、つかさの顔はすぐに血まみれになった…。


「…えっ…?」


つかさはその人影が誰なのか、自分の身に何が起こったのかさえ分からずに…顔を血で真っ赤に染めて、その場に崩れ落ちた。


「すべては岸猿家のために…。」


つかさが倒れたのを見やると、その人影はケタケタと笑い声を上げた。

644: 2008/03/12(水) 20:59:37.12 ID:obGbfp3mO
その人影は田村ひよりだった。


大きくえぐれた傷口から、腸を引きずらせ、毒の効用で紫色に変色した顔に不気味な笑みを浮かべて、鉄パイプを構えている…。




「どうして…助けてくれなかったの…どうして…頃してくれなかったの…すごく…すごく痛かった…苦しかったのに…」


食堂の入り口から声がした。

650: 2008/03/12(水) 21:07:13.32 ID:obGbfp3mO
そしてのっそりとした様子で、変わり果てた小早川ゆたかがフラフラと現れた。


口からボタボタと血を溢し、大きく開かれた下腹部から、内臓がこぼれ落ちない様に手で押さえながら、鈍重な足取りでこちらに歩み寄る。


「そうだ…柊…どうして助けてくれなかったんだよ…。」

658: 2008/03/12(水) 21:14:06.68 ID:obGbfp3mO
背後から声がして、かがみはギョッとして振り返った。


背後にある窓の外からレインコートをはおり、喉からナイフを生やした日下部みさおが非難がましい目でこちらをジッと睨んでいた。


「柊ちゃん…どうして私を撃ったの…?友達でしょ…?」


ズルリ、ズルリと何かが床をはいずる音がして、入口から唐突に、峰岸あやのが首を引きずらせ、はいずったまま入ってきた。

663: 2008/03/12(水) 21:22:08.47 ID:obGbfp3mO
背中にはかがみから受けた銃創が生々しく刻まれていた。


そして、みゆきがあやのと並ぶようによつんばいの姿勢で現れた。喉から骨が露出し、口に肉片を付着させている…。


生ける屍達は、かがみを囲むようにのっそりと近づいて来た。

かがみは恐怖におののき、顔を真っ青にしながら猟銃を手にとると生ける屍達に向けて引き金を引いた。

670: 2008/03/12(水) 21:28:49.82 ID:obGbfp3mO
だが撃鉄がカチリと宙を切る…弾が切れたのだ…。


かがみはわめき声をあげながら狼狽し、再び猟銃を投げ捨てた。


「全部…全部かがみんが悪いんだよ…」


今しがた撃ち頃した泉こなたがムックリと起き上がると、千切れかけた腕をかばいながら立ち上がった。

673: 2008/03/12(水) 21:36:10.54 ID:obGbfp3mO
「ひとつ…ふたつ…みっつ…よっつ…いつつ…むっつ…ななつ…やっつ…ここのつ…」


数を数えながら、岩崎みなみがソファーから起き上がり、青白い顔を携えて、こちらに歩み寄って来る…。


「…止めて…来ないで…来ないでえええええ!」


かがみは叫び声を上げると食堂の隅まで後退った…そこに逃げ場はない…。

679: 2008/03/12(水) 21:42:59.41 ID:obGbfp3mO
「どうしてよ…どうして…」


「…お姉ちゃん……」


いつの間にか、後頭部がひしゃげ、顔から血を流したつかさが、かがみの脇に立ち、そして耳元で囁いていた。


「お姉ちゃん…よく聞いて…」


生ける屍はかがみを中心に輪のようにかがみを囲み、そして幅を狭めていく…。

682: 2008/03/12(水) 21:50:18.61 ID:obGbfp3mO
「…つかさ…助けて…」


かがみはおえつを堪えて涙を流しながらつかさに助けを求めた。


しかし、つかさも生ける屍だと言うことは明らかだった…だが、混乱し、恐慌の最中にいるかがみには、それが理解出来なかった。


つかさが耳元で再び囁く。


「私の目は開いている…お姉ちゃんは…?」



そこまでだった…かがみは混乱と恐怖のあまり、気が遠くなり、とうとう気を失ってしまった…。

686: 2008/03/12(水) 21:55:31.78 ID:obGbfp3mO
かがみにあるのは暗く、寒い闇だけだった…。









「かがみ、そろそろ起きなさいよ!」


聞きなれた声がして、かがみは目を醒ました。


そこはいつもの自分の部屋だった…絶海の孤島にそびえる不気味な舘でもなんでも無かった…。


かがみはベッドから起き上がると、ドアに見慣れた人物が立っていた。


「それにしてもつかさじゃなくてかがみが寝坊なんて珍しいわね…。」


かがみの母親であるみきは怪訝な面持ちでそう言った。

697: 2008/03/12(水) 22:00:23.27 ID:obGbfp3mO
「とりあえず、学校に遅刻するわよ!下に下りて、ご飯食べなさい!」


あの恐ろしい出来事は夢だったのだろうか…。それにしては妙にリアルで現実味があった…。


「はあい…。」

かがみは母親に素直に従うとベッドから立ち上がった。

705: 2008/03/12(水) 22:04:26.39 ID:obGbfp3mO
下に降りると、つかさが寝癖を付けながら、トーストを食べていた。


「お姉ちゃん、おはよう。」


つかさがいつもの笑顔でそう言った。


「おはよう…。」


かがみはそうつかさに返すと、つかさの向かいに腰掛け、コーヒーを飲んだ。

708: 2008/03/12(水) 22:06:41.35 ID:obGbfp3mO
そしてトーストを食べる。何らか変わった様子はない。

いつもの日常風景だ。


「お姉ちゃん…ボーッとして何か変だよ?どうしたの?」


つかさがやはり怪訝そうな面持ちでこちらを眺めている。


「ううん。なんでもない…」


かがみは無難にそう答えると、トーストをかじりため息をついた。

713: 2008/03/12(水) 22:09:15.22 ID:obGbfp3mO
「おはよう、つかさ、他一名」


駅でつかさと電車を待っているといつもの調子でこなたがやって来た。


「勝手に略すな!」


そしていつもの調子でツッコミを入れた。


「こなちゃん、おはよう」


つかさがニコニコしてこなたに挨拶を返す。


「んにゃ…?どったの、かがみん…何か元気ないねぇ…」

716: 2008/03/12(水) 22:13:13.47 ID:obGbfp3mO
「お姉ちゃん…今朝から様子が変なんだよ…。」


「べっ…別に何でもないわよ…。」


かがみはプイッとソッポを向いた。



こなたはいつもの調子でかがみにしたり顔を近付けると断言するように言った。


「ん~…恋じゃな、かがみん…」


「ち…違うわよ!人がちょっと考え事してるだけで勝手な想像するな…」


かがみが顔を赤らめてそう言い返す。


いつもの通りだ。何ら変わった様子はない。

722: 2008/03/12(水) 22:21:01.19 ID:obGbfp3mO
ただ少し変なのは時折つかさとこなたがこちらを見ながらコソコソと何かを耳打ちしあってるという事だ。


何か感じが悪い…。


電車に乗ってからも、それは続き、今度はクスクスと笑い声をあげていた。


何かおかしい…






学校につき、かがみはこなた達と別れて、自分のクラスに入り、そして席についた。

723: 2008/03/12(水) 22:24:17.34 ID:obGbfp3mO
するとかがみが席につくやいなや周りのクラスメイト達が、どよめきたち、かがみを指差し、こなたやつかさがしたようにコソコソと何かを耳打ちし合った…。

一体なんなのだろうか…居心地が悪い…この世界の居心地が悪い…。


「オーッス、柊~」


「柊ちゃん、おはよう」


みさおとあやのがかがみに近付き、挨拶をした。


「…おはよう」


かがみも一応挨拶を返す…。

731: 2008/03/12(水) 22:31:59.83 ID:obGbfp3mO
みさおとあやのはかがみの机を囲んで立っているが、それ以上は何も話しかけて来ず、ただただニコニコとかがみを見つめていた。


「ちょっと…何なのよ…」


少し不機嫌そうにかがみが二人にたずねた。



「いんや~別に…何で柊がここにいるのかなぁ…と思っただけだってヴぁ」


「特に何もないわよねぇ…柊ちゃんはここにいるのよねぇ…」


そう答えたきり、再びおし黙り、不気味にニコニコとかがみを見つめるばかりだった…。

742: 2008/03/12(水) 22:38:31.33 ID:obGbfp3mO
何なのよ…一体…。


いたたまれなくなったかがみは、席を立つと教室からでていった。


一体何なの…?


かがみは学校の廊下を駆け、ひたすら何かから逃げようとした…人々の視線…嘲笑…ささやき声…。


何なの…?一体何なのよ!


訳が分からず、かがみは女子トイレに駆け込んだ。


息を切らせたかがみは、洗面台に向かい、蛇口を捻ると水を出した。

753: 2008/03/12(水) 22:45:30.40 ID:obGbfp3mO
それを両手ですくうと、顔を洗った。


「何なのよ…一体何なのよ…」


そう呟きながら顔を上げた。


洗面台には鏡がついてると相場が決まっている。


かがみは、鏡を覗き込んだ。

そこには隈が浮いて、疲弊しきった自分の顔と後ろで互いに接吻し合うゆたかとみなみの姿があった…。


かがみは慌てて後ろを振り返る…。

754: 2008/03/12(水) 22:51:54.25 ID:obGbfp3mO
ゆたかとみなみが接吻を中断し、こちらを軽蔑するような眼差しで、ただただ見ていた。


「…何?」


かがみが話しかけるが、二人は軽蔑した眼差しを返すだけだった。


再び居心地が悪くなったかがみは、女子トイレから出ると、廊下を駆けた。


永遠とも思える長さの廊下を暫く走っていると、脇の教室から急に誰かが飛び出して来た。


避けきれなかったかがみは、その誰かと衝突し、その場に尻餅をついた。

763: 2008/03/12(水) 22:57:17.47 ID:obGbfp3mO
「いたたたた…。」



その誰かが頭を撫でながら、呟いた。


それはひよりだった。


ひよりが胸に抱えていた書類が辺りに散乱している。


「ひよりちゃん…ごめんなさい…私が前を見てなかったから…」


かがみが慌てて散らばった書類を拾い始めた。


「あ……あう…あ…」

764: 2008/03/12(水) 22:59:01.24 ID:obGbfp3mO
ひよりはかがみを見るやいなや言葉を失い、そして恐怖を感じて顔を青ざめさせた。


「ちょっと…どうしたのよ…」


かがみがひよりに近付くと拾い集めた書類を差し出した。


ひよりは、ビクンと体を引きつらせ、失禁をすると、大声で泣き始めた。


「え…え…ちょ…ちょっと…」


かがみはうろたえた。まるで保育園の保母さんにでもなった気分だった…。

769: 2008/03/12(水) 23:02:25.88 ID:obGbfp3mO
かがみはひよりが胸に抱えていた書類をチラリと見た。


それはクレヨンで描かれた、幼稚で拙い風景画だった。


「あらあら…また田村さんを泣かしちゃったんですか…」


唐突に後ろから声がした。

みゆきだ。


白衣を着たみゆきが、後ろから小走りで近付いて来ると、ひよりの側にしゃがみ込み、そして頭を撫でた。

773: 2008/03/12(水) 23:06:47.98 ID:obGbfp3mO
「大丈夫だからね…大丈夫…。」


そう言うとみゆきは地面に散らばっていたひよりの絵の一枚を取ると、言い聞かせるかのように呟いた。


「よく描けてますね…これは病院の前の花壇かしら…田村さんは絵が上手いですね…」


かがみは混乱した…周りの風景がグニャグニャと変形し、元の形を保っていられない…異常な世界だった。

776: 2008/03/12(水) 23:11:07.58 ID:obGbfp3mO
「ちょっと…みゆき…その格好は一体何なのよ…それに病院って…」


かがみは混乱して、みゆきに言った。


みゆきは一瞬真剣そうな面持ちでこちらを見つめると、すぐにニッコリと微笑みかけた。


「大丈夫ですよ…柊さん…さ、病室に戻りましょ…お薬の時間ですよ…。」

778: 2008/03/12(水) 23:13:45.43 ID:obGbfp3mO
そういうとみゆきはかがみの手を取り、引っ張っていった…。


病室…お薬…?


かがみには訳が分からなかった…。


「ちょっとみゆき!ふざけるのもいい加減にしてよね!」


かがみが強い口調でそう言うと、手を引っ張って歩くみゆきの歩調のピッチが少し早くなった。



グニャグニャと躍動する風景は形を成し、そして病院の、まさに病室のようになる。

787: 2008/03/12(水) 23:22:14.49 ID:obGbfp3mO
そこにはベッドが二つあり、奥のベッドで誰かが寝ていた。


うわ言をブツブツと言いながら、落ち窪んだ眼窩を天井にむけて、横臥しているのはパティだった…。


みゆきは手前のベッドにかがみを座らせると、脇にあった小物入れから何かを取り出した。


それは赤い薬液が充填された注射器だった…。


「止めて!止めて!」


かがみは必氏で暴れた。


訳が分からない…何故自分が注射などされなければいけないのか…。

836: 2008/03/13(木) 01:30:38.55 ID:kDHDwzvbO
しかしみゆきは手慣れた様子で、かがみを押さえると、素早く首筋に注射を突き刺し、薬液を注入した。


途端にかがみの筋肉が弛緩し、どこも動かせなくなった。


「大丈夫ですから…。」


みゆきが息を切らせながらかがみにそう言うと、ニッコリと微笑んだ。

842: 2008/03/13(木) 01:33:43.22 ID:kDHDwzvbO
「そういえば…」


筋肉が弛緩し、顔の表情さえも変えられないかがみに、みゆきは思い出したかのようにたずねた。


「あなたの目は開いていますか…?」


途端に世界が明滅し、全てが形を成さなくなった…。


871: 2008/03/13(木) 02:48:30.62 ID:kDHDwzvbO
「いやあああああ!」

自分自身の悲鳴が聞こえ、唐突に目が覚めて、かがみは起き上がった。



そこは、誰も居ないガランとした、館のサロンだった…。


かがみはここで気を失っていたのだろうか…?


窓の外から心地よい日の光が差し込んできている。風も全くない…。

877: 2008/03/13(木) 02:58:06.31 ID:kDHDwzvbO
日が昇り、かまいたちの夜が過ぎさったのだろうか…。

かがみはとっさに上体を起こすと、身構えた。


意識を失う直前のあの光景が目に焼き付いて離れなかった。



生ける屍は今はどこにも居なかった…最低でもかがみの目の前には…。



かがみは呆然と立ち尽くすと、辺りを再び見渡した…。

だだっ広いだけで、タンゴを踊る舞者も居なければ、テーブル一つ無いサロンはどこか滑稽で寂しげだった。

912: 2008/03/13(木) 04:42:42.96 ID:kDHDwzvbO
今までの事は全部悪い夢だったのだろうか…。


かがみはフウとため息をつくと、サロンを後にした。









長い長い一階の廊下を歩いていくと談話室に辿り着いた…。


談話室のドアが心なしか、少し開いている…。


かがみは気になり、ドアに飛び付くと、少しずつ開いていった。


中は窓がないせいか、薄暗く、濃厚な血の臭いが漂っていた。



916: 2008/03/13(木) 04:49:06.36 ID:kDHDwzvbO
すまねぇ…恐らく今日完結です…。

1000: 2008/03/13(木) 09:52:37.45 ID:pGs0u9Q10
最後の最後で猿さんwwww

次スレ らき☆すたでかまいたちの夜なようです~第三幕~

引用: らき☆すたでかまいたちの夜なようです~第ニ幕~