1: 2010/08/12(木) 09:42:27.22 ID:KuSIY/1g0
唯「私、力士になる」
2: 2010/08/12(木) 09:43:55.56 ID:KuSIY/1g0
三年生になってもう三度目の進路調査。
方向性が全く決まらない唯にイライラきたさわちゃんは、けいおん部部長の私を唯と一緒に呼び出した。
さわ子「唯ちゃんが進路をさっさと決めなきゃ活動は停止よ」
ってことらしいのだが、唯は一向にその気を見せない。
それどころか一度も口を開かないまま、ぼーっとしてちゃんと話を聞かない。
これじゃあいよいよマジで部活がヤバイと思ったので、私はさわちゃんにことわって唯を職員室の外に連れ出した。
唯「なぁに、りっちゃん。いま私、それどころじゃ……」
律「はぁ? ていうか話聞いてたか? 進路決めないとけいおん部がっ」
というか、唯自身にとってもマズイのだが。
3: 2010/08/12(木) 09:46:57.25 ID:KuSIY/1g0
唯「進路って、なにになりたいか、だよね」
この場合、なにというより、どこに行きたいかのほうが正しい気もする。
選択肢なんて、大学か短大か各種学校か、ってなもんだし。
律「まあそういうことだな」
唯「私、力士になるよ」
律「は?」
律「いきなり何言ってんだよ、笑えないぞ、今は」
唯「笑う? 笑ったら怒るよ」
律「ていかなんだよ力士って……あ」
そういえばさっき職員室で唯がぼーっとしていた理由。
その視線の先にあったもの。
律「テレビ?」
唯「そう、さっきやってたの、相撲。だからまだ見てたかったのにりっちゃんが無理矢理……」
4: 2010/08/12(木) 09:48:19.49 ID:KuSIY/1g0
律「はぁ、そんなことかよ」
唯「そんなことじゃないよ。私は本気だよ」
まーたふざけてバカなこと言ってる、と思って唯の顔を見た。
そして驚いた。
唯「なる!」
そう言った唯の瞳は恐ろしいくらいに爛々と輝いて、身体全体から得体の知れないエネルギーのようなものがあふれ出していた。
自信に満ちた表情から紡ぎ出される言葉は、絶対の権力を持って私をひれ伏せさせた。
唯「いっしょになろう、りっちゃん!」
つまり、この場では私は「うん」と言う以外の全ての動作を許されていなかったのだ。
5: 2010/08/12(木) 09:49:30.19 ID:KuSIY/1g0
翌日...
澪「唯、あのな……もうみんな志望大も決めてるし、受験勉強で忙しいんだ。そういう時期なんだ」
澪「ふざけてる場合じゃない」
唯「ふざけてないよ」
澪「大体、律まで……どうしたんだよ、受験ノイローゼか?」
律「いや、唯は本気なんだ。少なくとも、なんとなく大学へ行く連中なんかよりもずっと」
澪「! ムギっ」
紬「わたし力士の友達を持つのが夢だったの~」
澪「の、和ぁ……」
和「唯は言い出したら聞かないのよ」
澪「だからって、こんな大事な進路のことを」
和「でも、そのぶん決めたらとことんやり遂げる子なの。それだけは、絶対よ」
澪「……」
澪「もういいよ!」ダッ
澪「唯、あのな……もうみんな志望大も決めてるし、受験勉強で忙しいんだ。そういう時期なんだ」
澪「ふざけてる場合じゃない」
唯「ふざけてないよ」
澪「大体、律まで……どうしたんだよ、受験ノイローゼか?」
律「いや、唯は本気なんだ。少なくとも、なんとなく大学へ行く連中なんかよりもずっと」
澪「! ムギっ」
紬「わたし力士の友達を持つのが夢だったの~」
澪「の、和ぁ……」
和「唯は言い出したら聞かないのよ」
澪「だからって、こんな大事な進路のことを」
和「でも、そのぶん決めたらとことんやり遂げる子なの。それだけは、絶対よ」
澪「……」
澪「もういいよ!」ダッ
6: 2010/08/12(木) 09:50:56.97 ID:KuSIY/1g0
唯「澪ちゃん……」
唯「私、澪ちゃんに嫌われちゃった、かな」
律「仕方ないよ。澪は国立受けるって寝る間もなく勉強してるから疲れてるんだ」
律「それに、別々の大学行ってもみんなでバンドやりたいって言ってたし、寂しいんだと思う」
澪「なんだよ、みんな……」
澪「放課後ティータイムはどうなるんだよ」グス
澪「それに、相撲なんて、リンチとか賭博とか暴力団とか危ないのに」
澪「唯がそんなのに巻き込まれたら……っ」
・
・
・
結局、それからずっと澪とはきまずいままだった。
8: 2010/08/12(木) 09:52:38.13 ID:KuSIY/1g0
卒業式...
紬「唯ちゃんのデビュー戦、絶対に見に行くわ!」
律「序の口って身内しか観戦者いなそうだよな」
唯「でも頑張るよー! 全勝優勝するもんっ」
唯は既に新弟子検査を受け、部屋に入門していた。
そして、もうすぐやってくる3月場所が力士としてのデビューになる。
唯「けいこもバリバリだよ! 見てよ、このおなか!」フンス! ポンポコ!
律「そりゃ、ただのちゃんこの食い過ぎだろ」
唯「でもでも親方も兄弟子さんも、食べるのも稽古だって言ってたよ!」
10: 2010/08/12(木) 09:57:58.84 ID:KuSIY/1g0
【序の口】っていうのは、相撲における最初のステージ
実績がない新弟子はみんなここから始まるよ!
そこからいくつものステージを経てテレビで放送されるような【幕内】に
なれるんだ! 道は険しいよぉ~
ちなみに、新弟子検査は場所ごとに随時やってるみたいだね!
入った次の場所から【序の口】で戦うみたい
新弟子になってすぐ本戦……大変だね~
12: 2010/08/12(木) 10:02:26.04 ID:KuSIY/1g0
紬「ところで、その……格好はどうするの?」
唯「え?」
紬「その、おすもうさんって、はだk」
唯「ああっ! そのことかぁ~」
唯「それについてはいろいろ話し合ったよねっ、りっちゃん!」
律「ああ、大変だったな~」
唯「私は正直何も考えてなかったんだけど、上はサラシを巻くことになったんだよ!」
紬「え、じゃあ下は……」カァァ
唯「まわしです! 当然!」フンス!
まわし=ふんどし
13: 2010/08/12(木) 10:03:57.46 ID:KuSIY/1g0
女で未経験者で小柄な唯がなぜ入門できたのか。
詳しいことはわからない。
人気の低迷やスキャンダルにまみれて混乱した相撲協会が、さらに混乱しちゃって、もーどうでもよくなっちゃったから。
……なんてのは言い過ぎかもしれないが。
ただ、それに近いものはあったのだろう。
突然現れた天の才を感じさせる美少女に、賭けてみようという気持ちだったのかもしれない。
だが、その賭けはとりあえず正解であったと言ってもいいと思う。
梓「先輩、卒業おめでとうございます! って、すごいですね、報道陣」
唯「えへへ~、私、まだなんにもしてないのにね」
紬「唯ちゃんはかわいいから仕方ないわ。こんないかわいいお相撲さん、見たことないもの」
紬「でも、かわいいだけじゃなく、唯ちゃんはやる子よ!」
なーんて様子が、くだらんワイドショーだけでなくNHKでも流されたりするのだ。
14: 2010/08/12(木) 10:05:57.60 ID:KuSIY/1g0
やくみつる「ふざけてますよね、しかも未経験者でしょ。それだけで騒ぐなんて品格が問われますよ。まあ確かにかわいいですけど」
内舘「女が土俵に上がるなって、私のときは言われたのにキィーッ!」
デーモン閣下「我が輩は応援する」
当然保守派のファンや業界人からは批判の声も大きいけれど、注目度は抜群だ。
若い男性をはじめ、同じ年代の女の子なども相撲に興味を示す人が増えたという。
アナウンサー「あ、田井中律ちゃんですよね、呼出の!」
アナウンサー「お話いいですか!? 唯ちゃんのことも含めて」
律「あ、はい……」
唯「あはは、りっちゃんも人気だ~」
和「唯の衝撃が大きすぎるけど、呼出だって本来は女性なんてあり得ないのよ」
16: 2010/08/12(木) 10:11:10.90 ID:KuSIY/1g0
【呼出】っていうのは、そのまんま。力士を呼び出す人のことだぜ!
スレタイの「東○○~西○○~」ってのをやるのが【呼出】!
でも、それ以外にも、下っ端だと掃除とかタオル渡しとか、色々仕事があるんだ
でも正直テレビでは実況にかぶって呼出の声はあんまり聞こえないんだぜ……
17: 2010/08/12(木) 10:12:53.49 ID:KuSIY/1g0
私は唯のオマケで同じ部屋に入った。力士ではなく、呼出としてだ。
それも唯が「りっちゃんも入れてください!」と親方に頼み込んだからなのだが。
唯「りっちゃんも一緒に力士になるって約束したのにぃ」
律「いや、無理だろ。これでもすごい頑張ったほうだろ」
そんなこんなで慌ただしい卒業式が終わった。
それから私と唯は場所に向けて凄まじい毎日を送ることになる。
澪「……」
ちなみに、ムギと和は第一志望の大学に見事合格した。
澪は、なぜか最初の国立はやめて、有名私立大に入学したらしい。
サークル活動や、大学以外にもなんかのスクールに通って頑張っているらしい……というのをムギから聞いた。
19: 2010/08/12(木) 10:17:15.12 ID:KuSIY/1g0
相撲部屋にて...
唯「ごわす! ごわす!」ドスドスッ
親方「平沢、頑張ってるな!」
唯「ハイ! だって今がチャンスですから!」フンス!
親方「?」
唯「兄弟子さんが、賭博で謹慎してた人のぶん番付があがるからチャンスって言ってました! フンッフンッ」ドスドス
親方「いや、お前は一番下からスタートだから関係ないけど……」
親方「そういや、律」
律「はいっ」
親方「お前、次の場所で幕内の力士の世話やれ」
律「ええっ!?」
親方「まあ中盤だけだが……しっかりやれよ」
律「……」
律「頑張ります!」
20: 2010/08/12(木) 10:21:17.60 ID:KuSIY/1g0
【幕内】はさっきのとおりテレビで放映されるようなスゴイ力士のステージだ
その世話っていうのは、タオル渡したりとか、塩を調整したりとか?
まあ本来これをするのは下っ端呼出の仕事。
でも入り立てで幕内の世話って……
22: 2010/08/12(木) 10:28:03.48 ID:KuSIY/1g0
唯「りっちゃんすごぉーい!」
唯「力士の世話する人って、テレビにめちゃくちゃ映るよねっ」
唯「しかも何人もの世話でしょ!? テレビ映りっぱなしだよぉ」
律「は、は、は……」
おそらく話題性とかそういうことで選ばれたんだろうと思う。
本来の呼出としての練習もまだまだだというのに、こっちの練習のほうが大変そうだ。
なんせ、全国放送でヘマはできないし、幕内力士の機嫌を損ねるなんてあってはならない。
律「ふー……録画でも見て練習するかな」
呼出見習い1「誰でも通る道だ、がんばれよ!」
呼出見習い2「まあ、律の場合、早すぎるけどな」
先輩が優しいのがせめてもの救いだ。
正直、リンチとかかわいがりとか心配だったけど、なにごともない。
23: 2010/08/12(木) 10:36:38.57 ID:KuSIY/1g0
唯「兄弟子1さん、たのもー!」
兄弟子1「お、こいつ序の口のくせに俺に挑むとは、生意気な!」
兄弟子2「二段目の力見せてやってください、アニキ!」
唯も……
まあ連日マスコミが来ているのでリンチなんかできないというのもあるけれど、
それに、取材によって入ってくるお金やらなにやらで部屋が潤っているというのもあるけれど、
でもなにより、唯のキャラクターのおかげで、みんなが和んだり一生懸命になったりしているというのが大きいんだと思う。
親方「ところで平沢、四股名は『平沢』でいいのか?」
唯「うーん……もっとかわいいのがいいなあ」
親方「」ムシ
親方「まあ、まだ苗字のままでもいいと思うが、お前は本名が売れてるからな。早く四股名を定着させたほうがいいかもな」
親方「うちの部屋は基本『山』がつくんだが…」
唯「じゃあスイーツ山とか!?」
親方「」ムシ
親方「律、お前なにかいいのないか?」
24: 2010/08/12(木) 10:41:54.46 ID:KuSIY/1g0
26: 2010/08/12(木) 10:45:04.08 ID:KuSIY/1g0
いまさらですが、見てくれてる人いるみたい?なので
ただの相撲好きなので間違っていること(唯が入門できたとかは論外として)が
多数あるかもしれない すみません
あと意味わかんない相撲用語とかあるかも すみません
ただの相撲好きなので間違っていること(唯が入門できたとかは論外として)が
多数あるかもしれない すみません
あと意味わかんない相撲用語とかあるかも すみません
30: 2010/08/12(木) 10:53:23.26 ID:KuSIY/1g0
律「唯の山……とかどうでしょう」
唯「いいね! かわいい!」
律「そうかぁ……?」
親方「かわいいかどうかはおいといて、覚えやすいし『山』ついてるし、いいんじゃないか?」
親方「じゃあ協会には申請出しとくな」
唯「ふぉぉ、じゃあ今日から私は唯の山ってみんなに呼ばれるんだね!」
律「まあ、この部屋の力士は『~の山』ばっかだから、みんな唯って呼ぶけどな」
唯「がぜんやる気出てきたよりっちゃん!」ドスコーイ!!
そんなこんなで3月場所、唯のデビュー戦が始まった。
34: 2010/08/12(木) 11:00:28.21 ID:KuSIY/1g0
呼出「ひがーしー唯の山ぁー……」
紬「きゃー唯の山ー!!」
和「唯がんばってー」
観客「唯の山ー!!」
兄弟子1「すごいな、唯……序の口であんな応援初めて見たぞ。特にあの金髪の子」
律「あー、あれは友達なんで」
兄弟子1「懸賞金をめちゃくちゃ出そうとして相撲協会に止められたとかいう噂も」
律「ムギ……」
しかし、唯が太っても可愛かったのは幸いだった。
デブカワの頂点は柳原か、唯の山か、なんて論争もどこかで巻き起こってるらしい。
35: 2010/08/12(木) 11:07:12.14 ID:KuSIY/1g0
初土俵、唯は見事勝利を飾った。
相手は唯と同じ新入りで、まだひょろひょろした奴だったが、新聞やテレビでは大々的に
『やはり天才か、唯の山!圧倒的勝利』などと報道された。
まあ、男女の差を考えれば、確かにものすごいことではある。
唯「今日は勝ったけど……やっぱり真剣勝負はすごいね。次も頑張らなきゃ」ドスドスッ
唯は初勝利後これでもかというほど稽古をした。
私はなんだかあのときの――唯が力士になると言ったときの、恐ろしさを感じた。
36: 2010/08/12(木) 11:14:14.33 ID:KuSIY/1g0
りっちゃんの相撲教室!
【懸賞金】というのは、勝った力士がもらえるお金のことだ!
企業等が自主的に出すもので、どの勝負にいくらってかんじで出すらしい
たとえば高見盛の取組時に永谷園が出したりとかな!(CMに出演しているから)
あと【序の口】は朝から始まるのでお客は普段マジ少ないぞ……
応援は家族とか友達しかいないってかんじだ
37: 2010/08/12(木) 11:20:04.09 ID:KuSIY/1g0
唯「ところで、りっちゃんはどうだった?」
律「え、ああ……なんかすごかったぞ、色々」
唯「カメラ、りっちゃんばっか追ってたよね」プスス
律「まあ、それも困ったけど」
律「幕内って、すごいな」
唯「うん」
唯「うちの部屋では一番すごい人でも十両の下のほうだもんね」
律「だから私たちが入れたってのもあるのかもしれないけどな」
律「そんだけ大変なんだよな、あそこに上がるのは」
唯「【十両】は【幕内】の次に強いステージだよ」
唯「【十両】の上位はテレビで放映されることもあるよ」
38: 2010/08/12(木) 11:26:17.23 ID:KuSIY/1g0
唯「でも、私はやるよ! 次の場所では横綱になる!」
律「いや、なれないだろっ」バシッ
紬「私も応援してるわ~」
律「どっから沸いた!?」
梓「一緒に見学に来たです」ヒョコ
律「おお、ひさしぶりだな~梓。受験勉強はどうだ」
梓「ぼちぼちです。……でも、夢があるので」
律「そっか……」
しかし、その言葉も嘘じゃないってくらい唯はどんどん成長していった。
唯はあれよあれよという間に勝ち星を重ね、ついには幕下の地位を手に入れた。
律「いや、なれないだろっ」バシッ
紬「私も応援してるわ~」
律「どっから沸いた!?」
梓「一緒に見学に来たです」ヒョコ
律「おお、ひさしぶりだな~梓。受験勉強はどうだ」
梓「ぼちぼちです。……でも、夢があるので」
律「そっか……」
しかし、その言葉も嘘じゃないってくらい唯はどんどん成長していった。
唯はあれよあれよという間に勝ち星を重ね、ついには幕下の地位を手に入れた。
39: 2010/08/12(木) 11:33:02.91 ID:KuSIY/1g0
力士は勝った数によって
【序の口】→【二段目】→【三段目】→【幕下】→【十両】→【幕内】
と昇進していくわ。ダメな人はずっと序の口から上がれないの~
飛び級なんかはないし、陥落することもあるから、毎回気を抜けないわね!
あと相撲部屋はわりと一般人も見学できるみたいなの
kwskは各部屋のHPへ!
41: 2010/08/12(木) 11:39:23.04 ID:KuSIY/1g0
梓「じゃあまた……頑張ってくださいです」
紬「また国技館行くからね!」
律「ムギ、ありがたいけど大学サボりすぎんなよ……」
紬「唯ちゃんのためだもの!」
唯「久々にみんなに会ったねー」
律「懐かしいな、あの頃が……」
ムギは毎回来て良い席を取って応援してくれている。和もだ。
梓は卒業してから初めて会った。
それまでも、応援席に来てくれていたこともあったみたいだが。
でも、澪とはあれっきりだ。
テレビ『~~……~~…』
唯「ん? これ……」
律「どうした唯」
紬「また国技館行くからね!」
律「ムギ、ありがたいけど大学サボりすぎんなよ……」
紬「唯ちゃんのためだもの!」
唯「久々にみんなに会ったねー」
律「懐かしいな、あの頃が……」
ムギは毎回来て良い席を取って応援してくれている。和もだ。
梓は卒業してから初めて会った。
それまでも、応援席に来てくれていたこともあったみたいだが。
でも、澪とはあれっきりだ。
テレビ『~~……~~…』
唯「ん? これ……」
律「どうした唯」
43: 2010/08/12(木) 11:44:31.74 ID:KuSIY/1g0
「じゃあ、お天気のミオちゃーん」
ミオ「はい! 今日のお天気は曇りのち晴れです」
ミオ「午後はさわやか~な天気になるでしょう!」
「ありがとうミオちゃん。さすがK大のミスキャンパス、かわいいね~」
ミオ「そんな……」テレテレ
律「み、お……?」
唯「ミスK大だって! すごいすごいすごい~!」
唯「そういえば、澪ちゃん大学のほかにアナウンサーの学校行ってるって和ちゃん言ってた!」
唯「美人女子アナだね!」
律「そ、そうだな……」
44: 2010/08/12(木) 11:49:27.29 ID:KuSIY/1g0
私は正直複雑だった。
澪の見た目は、それほど変わっていなかった。
髪も黒いままだし、化粧もうっすら。
服は番組に用意されたのか可愛らしいものだったけれど。
それでも、そんな目立つことをする奴じゃなかった。
アナウンサーになりたいなんて聞いたこともなかったし、むしろそういうのは敬遠していると思っていた。
律「ミスキャンパス、か……澪が?」
唯「澪ちゃんかわいいから、みんなに出ろって言われたんじゃない?」
それでも以前の澪なら絶対に拒否したはずだ。
知っていると思っていた澪の、突然の変化。
唯についてって勝手に相撲界に飛び込んだ私の言えることじゃないけど……。
45: 2010/08/12(木) 11:57:12.91 ID:KuSIY/1g0
それからも時々テレビで澪を見かけた。
唯「大学もあるしアナウンサーの学校もあるのに、大変だよねー」
律「お前もなかなか大変だけどな」
最初はただのイロモノ的存在だった唯だが、確かな実力で旧来のファンからも認められつつあった。
ワイドショーの取材は前より減ったけれど、逆に真面目なインタビューなどが増えた。
幕下で挑戦中...
唯「ふむむ~」
律「どうした?」
唯「なんかね、勝てないんだよねー……」フニャー
唯「もうみっつも星落としちゃったよ」
唯「なんでかな、お稽古が足りないのかな」
46: 2010/08/12(木) 12:01:07.96 ID:KuSIY/1g0
律「いや、お前の稽古量はけっこうギリギリだぞ」
律「みんな驚いてるくらいだ」
唯「だってそうしないと男の人には勝てないもん……」
唯「とにかく、もっとお稽古するしかないよね!」フンスッ!!
律「でも唯、最近やせてきてるぞ」
唯「うん、じゃあちゃんこももりもり食べないとね!」フンスフンス!!
律「唯……」
でも、その場所、唯は初めて負け越してしまった。
49: 2010/08/12(木) 12:27:06.95 ID:KuSIY/1g0
50: 2010/08/12(木) 12:33:29.24 ID:KuSIY/1g0
唯「どすこーい、どすこーい!」ドスドスッ
兄弟子1「もう休めよ……俺たちも相手しきれないぞ」
兄弟子2「ハァハァ…こっちがかわいがりを受けてるみたいだぜ」
唯「じゃあ他の部屋に遠征して来まーす!」
唯「たーのーもー!」
兄弟子1「あ、おい……」
親方「……」
律「唯、初めて負け越したのがショックだったのかな」
呼出見習い1「それにしても、あんなに無茶して……ガリガリじゃないか」
律「普通にみればポッチャリですけどね」
呼出見習い2「相撲界にいると心配なほどガリガリに見えるふしぎ」
51: 2010/08/12(木) 12:40:03.75 ID:KuSIY/1g0
呼出見習い1「でも、身長も伸びたよな」
呼出見習い2「見下されるもんな」
律「ちゃんこと稽古のおかげですかね」
唯はもはや普通の女の子ではない、見た目も立派な力士だ。
身長は170を超えたし、体重も……今は痩せてしまったが前は80㎏あった。
私も毎日練習をしていたら、前よりも甲高い声じゃなくなった気がする。
まだ幕下でさえ本来の呼出はさせてもらえていないけれど。
でも、力士の世話のときにテレビでたびたび映るので、今では私のほうがイロモノ的存在だ。
まあ「美少女呼出」なんて言われるのは悪い気分じゃない。
52: 2010/08/12(木) 12:51:40.70 ID:KuSIY/1g0
唯「勝てない……」ショボー
次の場所、なんとか勝ち越しはしたものの、唯は十両に昇進はできなかった。
唯「ううう……なんでなんだろ」
律「気になる夜、君への」
唯「この想い便せんにね~」
律「書いてみるよ~」
唯「て、そうじゃなくて」バン
律「唯が突っ込んだ!」ビク
唯「なんかね……やっぱみんな大きいし、筋肉もしっかりしてるんだよね」
律「幕内経験者もいるからな、幕下は」
唯「ふうう~」
53: 2010/08/12(木) 12:57:02.09 ID:KuSIY/1g0
和「勝てないのは体格や経験の差だと思っていない!?」バン!
唯「!? 和ちゃん!?」
律「いらっしゃい。大学はいいのか?」
和「ええ、この時間は授業ないから。それより唯」
唯「ふぇえ?」
和「対戦相手のデータを取ってシュミレーションしたことはある?」
唯「ないよー」
和「なんですって!? じゃあ今まで全て力と勘だけで勝ち上がってきたというの!?」
和「恐ろしい子……」
和「でもそれじゃこれからは勝てないのよ!」
唯「ええ~」
律「私もいるんだけど……」
54: 2010/08/12(木) 13:03:02.88 ID:KuSIY/1g0
和「どんなに強い力士でも、ノーデータの相手と戦うのは難しいらしい」
和「だからみんなビデオとかを見て、対戦相手のことを研究しているの!」
唯「な、なんだってー!?」
唯「じゃあ私のことも研究されていたのかな!?」
和「当然よ!」
唯「……」ゾクゾク
律「おーい」
唯「今までも、ビデオで昔の名取組とか見てたけど……」
唯「実際に戦う相手のを見なきゃだめなんだね!」
和「そうよ」
57: 2010/08/12(木) 13:07:31.25 ID:KuSIY/1g0
律「しかし和も相撲のこと色々勉強してんだな」
和「テレビ放送時の解説とかでそういうの色々言ってるじゃない」
唯「ごちゃごちゃうるさいから聞いてないよ。観戦に集中できないし」
律「私はつい呼出の声に集中しちゃって……」
和「やれやれ」
和「唯の活躍をみて、最近女の子の力士が何人か入ったらしいじゃない」
律「ああ、そんなこといってたな」
和「その子たちを引っ張る意味でも頑張りなさいよ、唯」
唯「うん、ありがとう和ちゃん!」
58: 2010/08/12(木) 13:17:09.06 ID:KuSIY/1g0
和のアドバイスもあってか、唯は次の次の場所でなんとか十両に昇進した。
途中、膝を故障したりもしたが、逆にそれがプロ意識を芽生えさせたみたいだ。
親方「おめでとう唯の山!」
兄弟子1「完全に抜かれたぜ……」
兄弟子2「俺は2場所目くらいには抜かれてたぜ」
唯「みんなありがとー!」
親方「十両以上は『関取』といって、一人前の力士になったとみなされるんだ」
唯「おおお~」
?「あのー」
59: 2010/08/12(木) 13:26:03.74 ID:KuSIY/1g0
そんなある日だった、その人が唯を尋ねてきたのは。
唯「え? 女子大相撲!?」
「そうなんですよ。最近唯の山さんのおかげで女性にも相撲人気が高まってて」
「新弟子も何人か入ったでしょう?」
唯「ああ~私はまだ対戦してないけど……」
「そりゃ、幕下や十両になれるのは唯の山さんくらいの才能がないと無理ですよ」
唯「才能なんてないですよ~」
「でもまあとにかく、入ったはいいけどついていけない人が多いらしいんです」
「男の人の中じゃ、やっぱなかなか勝てないですからね」
唯「うーん」
「そこで、女子だけの大相撲を作ろうと」
「もう協会のほうにも話はしてあるんです」
「で、唯の山さんには、女子大相撲界の横綱として引っ張っていってほしいんです!」
唯「いきなり横綱!?」
「最初はトーナメントとかにしてもいいですけど、どっちにしろ女子ではあなたが最強に決まってますから」
唯「え? 女子大相撲!?」
「そうなんですよ。最近唯の山さんのおかげで女性にも相撲人気が高まってて」
「新弟子も何人か入ったでしょう?」
唯「ああ~私はまだ対戦してないけど……」
「そりゃ、幕下や十両になれるのは唯の山さんくらいの才能がないと無理ですよ」
唯「才能なんてないですよ~」
「でもまあとにかく、入ったはいいけどついていけない人が多いらしいんです」
「男の人の中じゃ、やっぱなかなか勝てないですからね」
唯「うーん」
「そこで、女子だけの大相撲を作ろうと」
「もう協会のほうにも話はしてあるんです」
「で、唯の山さんには、女子大相撲界の横綱として引っ張っていってほしいんです!」
唯「いきなり横綱!?」
「最初はトーナメントとかにしてもいいですけど、どっちにしろ女子ではあなたが最強に決まってますから」
63: 2010/08/12(木) 13:32:38.88 ID:KuSIY/1g0
唯「……」
唯「ごめんなさい、私はできません」
「で、でも……横綱ですよ?」
「それにこれからは十両、幕内と、いくら唯の山さんでも今までのようにはいかないでしょうし……」
唯「そうです、確かに幕下で挫折を味わいました」
唯「別に女だからってわけじゃなかったけど」
唯「でも、楽しかったんです」
唯「私が目指した横綱は、他のどこでもない」
唯「いま、白鵬がいる、あの場所を奪う!!」
律「いや、奪わなくてもいいだろ別に……」
64: 2010/08/12(木) 13:38:16.76 ID:KuSIY/1g0
唯「え? 横綱をずたずたにして引きずり下ろして自分がなるんじゃないの?」
律「ていうかむしろ今横綱一人しかいなくて困ってるくらいだから……」
唯「ま、まあとにかく、私が憧れたのは、この先にある世界なんです」
「この先って……」
「先どころかずっと十両、ヘタしたらそこにもいられない可能性だって」
唯「それは女子だけでも同じだよ」
唯「女子の世界をバカにしているんじゃない、私はここで戦いたいだけ」
唯「親方や兄弟子さんやりっちゃんと……」
律「唯……」
66: 2010/08/12(木) 13:44:55.44 ID:KuSIY/1g0
結局、女子大相撲はなかったことになったみたいだ。
唯に憧れて入った女の子たちも、大半はやめてしまったようだが、それは男でも同じこと。
唯「でもね、なんかすごい強い女の子が二段目あたりにいるって噂聞いたんだー」
律「へー。まあ十両まで来るのは大変だろうけど、いつか対戦するかもな」
唯「うん、楽しみ!」
律「そういや次の休み、唯はどうすんの?」
唯「部屋に残るよ~お稽古だよ~」
律「たまには家帰れば? もう何ヶ月帰ってないんだよ……」
唯「だってここ居心地いいんだもん~ちゃんこめいっぱい食べられるし」
律「憂ちゃんだって寂しいだろ?」
唯「うーん……」
68: 2010/08/12(木) 13:50:49.28 ID:KuSIY/1g0
律「そういや、憂ちゃんってどこの大学行ってんの?」
唯「え? 多分憂のことだから東大とかじゃないかなあ」
律「知らないのかよ!」
そう、もう私たちが入門してからかれこれ数年経っていたのだ。
梓は大学へ通いつつギタリストとしていろんなレコード会社に売り込んでいる。
和とムギは大学院への進学を考えているとか。
澪は相変わらずテレビでお天気お姉さんをやっているから、
そのままタレントか女子アナにでもなるのだろうか。
69: 2010/08/12(木) 13:56:24.71 ID:KuSIY/1g0
律「ところで、私も三段目の呼出に昇進したんだぞ」
唯「おめでと、りっちゃん!」
律「来場所、お互い頑張ろうぜ」
唯「おうともさー!」フンス
唯の十両での滑り出しはなかなか順調だった。
もちろん経験の差や体格の差はあったけれど、いまやすっかり相撲マニアになった和や
ムギのつてで手に入れた知識等を駆使して、唯は健闘した。
一方、私は、自分の担当する三段目で、信じられないものを見た……。
70: 2010/08/12(木) 14:03:21.99 ID:KuSIY/1g0
律「にぃ~しぃい~、ういぃの~さぁとぉ~、ういの……」
律「えっ!?」
憂の里。
もちろん、実際に呼出をする前にちゃんと目を通すので、そういう名の力士がいるのはわかっていた。
でもまさか、それが、
律「憂ちゃん……」
呼出見習い1「なにやってんだ、下がれ律!」
律「は、はいっ」
あの顔は確実に憂ちゃんだった。
前に唯の言っていた二段目の強い女の子、今は三段目だが、
きっとそれは憂ちゃんのことだったんだ。
72: 2010/08/12(木) 14:08:46.67 ID:KuSIY/1g0
唯「ふい~……今日初めて幕内の人と当たっちったよ~」
唯「強いね、やっぱ! 次は倒すぞぉ」フンスフンス!
律「あのな唯……」
唯「む?」
律「実は憂ちゃんを見たんだ」
唯「へ? どこで? 応援来てた?」
律「いや……」
律「土俵で」
唯「? まさか乱入したの!?」
律「そうじゃなくて、憂の里って四股名で、三段目で戦ってた」
律「しかも今、全勝」
唯「憂SUGEEEEEEEEEEEE」
74: 2010/08/12(木) 14:14:27.65 ID:KuSIY/1g0
唯「じゃなくて! 私そんなこと全然聞いてないよ!?」
唯「私に相談もなしに~~~~!!!」
律「うん、東大じゃなかったみたいだな」
律「いや憂ちゃんのことだから東大行きながらとかあるかもしらんけど」
律「とにかくお前がほっといてるうちに色々すごくなってたってことだな」
唯「くっそー」
律「しかし、めっぽう強かったよ。無駄のない動きでささっと投げて」
唯「うう~」
律「あと体型そんな変わらんかった」
唯「憂許さん」
75: 2010/08/12(木) 14:18:55.69 ID:KuSIY/1g0
唯「で、でも! 十両まで来るのは当分先だねっ」
唯「関取になれるのは限られた人間だけなんだからっ」フンス
律「それ親方の受け売りだろ」
律「ていうか兄弟子さんたちディスってんのか。あの人ら憂ちゃんに負けたぞ」
律「それに、あのかんじだと姉妹対決もそう遠くないかもな……」
唯「楽しみ……と言いたいところだけど、そうもいかないね」
唯「私は先に行くよ。次は幕内へ上がる」
律「次、は厳しくないか?」
唯「えへへへへ~」
76: 2010/08/12(木) 14:27:56.38 ID:KuSIY/1g0
しかし、話題の力士である唯の山の妹で、しかもめちゃくちゃ強いなんて、
よく今までマスコミが注目しなかったものだ。
憂ちゃんの部屋は、うちの弱小部屋と違って、大関も抱える大きい部屋だが、それもなにか関係するのだろうか。
唯「今度憂の部屋に遊びに行ってみようかなぁ」
律「でもあそことは一門も違うし、あんまり交流ないよな」
唯「確かに、お稽古にも行ったことないや」
律「『山』と『里』だから対立してんのかな」ハハハ
それは冗談として。
唯が憂ちゃんの部屋に遠征に行ったのだが、憂ちゃんは出てこなかったらしい。
唯「姉ですって言ったんだけどね~」
律「まあ、うちん部屋でも、明らかに唯ってか女目的な奴は断るからな」
唯「りっちゃんに会いにくる力士いるよね」
律「でも唯の場合そういうんじゃないのにな」
律「なんか憂ちゃんを隠しとく理由でもあんのかな」
77: 2010/08/12(木) 14:39:28.95 ID:KuSIY/1g0
憂ちゃんのことは気になりつつも、唯は幕内へとステージを上げた。
もはや彼女をバカにする者などいないに等しかった。
舞の海「いやー女の子が入門したって聞いたときはどうなるんだろうと思ったんですけど」
舞の海「その子の取組を、こうやって自分が解説することになるなんてね」
舞の海「昨日は興奮して眠れませんでしたよ」
藤井アナ「私もです」
78: 2010/08/12(木) 14:44:13.63 ID:KuSIY/1g0
藤井アナ「さて初入幕の唯の山に注目が集まるわけですけど、向こう正面の芝田山さん」
芝田山「はい」
藤井「どういったところに注目しますか?」
芝田山「彼女の場合は、まあセンスがすごいですね」
芝田山「うちの部屋に稽古に来たときもすごかったです」
藤井「ははあ、センスですか」
芝田山「ええ、かなり肥えてますねアレは」
舞の海「そうですか? 僕にはまだまだ細いように見えますけど」
芝田山「あれはかなり上質なスイーツを食べ続けてきた目と舌です」
芝田山「今度一緒にスイーツ本出したいですね」
藤井「そういうことは舞台裏でお願いします」
80: 2010/08/12(木) 14:48:08.53 ID:KuSIY/1g0
81: 2010/08/12(木) 14:53:31.29 ID:KuSIY/1g0
ワーワー唯の山ー
律「ふいー、満員御礼か」
律「そういや、これからは土俵際で唯と会えるんだな」
律「まあ私はしがないタオル係だけどさ……」
唯「がんばるぞ!」
唯「今日の相手は土佐豊……」
唯「なんだか昔おばあちゃんちの裏山でみたイノシシみたいな顔だね」
唯「幕内の熱気はすごいね、緊張しちゃう」
唯「和ちゃんデータを参考に、慎重にいこう……」
律「ふいー、満員御礼か」
律「そういや、これからは土俵際で唯と会えるんだな」
律「まあ私はしがないタオル係だけどさ……」
唯「がんばるぞ!」
唯「今日の相手は土佐豊……」
唯「なんだか昔おばあちゃんちの裏山でみたイノシシみたいな顔だね」
唯「幕内の熱気はすごいね、緊張しちゃう」
唯「和ちゃんデータを参考に、慎重にいこう……」
83: 2010/08/12(木) 14:59:48.26 ID:KuSIY/1g0
唯「ふんすふんすふんすどすこぉーい!!」バーン!
『押し出しー押し出しで、唯の山ー』
舞の海「勝ちましたね、唯の山」
藤井「ちょっと強引でしたが……」
芝田山「プリンでたとえるとカラメルのような粘りだね」
藤井「どうでもいい」
紬「唯ちゃん、すごいわ!」
和「やったじゃない!」
唯「うへへ~」
唯「和ちゃんのおかげだよぉ」
唯「それにムギちゃんも、懸賞金たくさんありがとう。私お金持ちだよ~」
84: 2010/08/12(木) 15:05:21.79 ID:KuSIY/1g0
紬「気にしないで。毎日懸け続けるからね! 唯ちゃんの晴れ舞台だもの!」
和「唯との勝負はボーナスステージね……」
和「それより唯、憂のこと」
唯「あ、うん、知ってたんだ?」
紬「私が後援会の人から聞いたの。取材とかには一切応じないらしいけど」
唯「そうなんだ……」
和「どうやら実力と関係ないところで騒がれるのがイヤみたいね。部屋全体で匿ってるらしいわ」
紬「実力的にも騒がれて然るべきだと思うけど」
和「憂は唯のようにホンモノならば、いずれ出てくるでしょう」
唯「うん……」
85: 2010/08/12(木) 15:14:50.00 ID:KuSIY/1g0
唯はなかなか順調に幕内を戦っていった。
そして、ついにその対決の日がやってきた……。
唯「なんだが今日はみんなぴりぴりしていね」
律「まあ、大事な一戦だからな」
唯「そ、そうなのかな」
律「そうだよ……多分」
キャーキャーワー
岩佐アナ「今日はそっくりと言われている二人の対決ですね」
音羽山「館内の熱気もすごいですね、まだかまだかと。前の取組がかわいそうなくらいです」
86: 2010/08/12(木) 15:19:24.59 ID:KuSIY/1g0
唯「うわ、入ってきたよ」
唯「なんで私があの人とそっくりなんだろう……」
岩佐「高見盛の入場に館内が沸きますね」
岩佐「奇抜なリアクションと懸賞金が多いことでキャラがかぶっていると言われていた二人ですが」
岩佐「この勝負、どうなりますか?」
音羽山「唯の山も調子いいですからね、どうなるかわかりませんね」
岩佐「どちらが真の相撲界のアイドルか、さあ時間いっぱいです」
87: 2010/08/12(木) 15:24:03.21 ID:KuSIY/1g0
唯「ふおおおおぉぉ」バシンバシン
唯「ふんすふんす」シコフミ
高見盛「フッ……」顔バンバンバン
岩佐「同時にやられるとどっちを見ていいのか迷いますね」
音羽山「贅沢な悩みです」
行司「の……のこったのこった!」
唯「おおうぉぉ」ダッ
高見盛「ヌヌヌヌウヌヌヌヌヌヌヌ」グイグイグイグイ
岩佐「押し合いです」
唯「ふんすーーーー!!!!」バシュン!
音羽山「唯の山、寄り切ったね」
89: 2010/08/12(木) 15:28:32.87 ID:KuSIY/1g0
次の日...
律「高見盛、引退だってさ!」
唯「えっ」
唯「ななななんで? 昨日別に怪我とかしてなかったよ?」オロオロ
律「いや、やっぱ同じキャラの唯に負けたのが効いたんだろう」
唯「オナジジャナイヨ」
唯「なんか私のせいで引退したみたいで気が重いよ……」
律「まあ、これで相撲界のアイドルの座は不動になったな!」
唯「ま、まあそれならいっか!」
90: 2010/08/12(木) 15:39:37.60 ID:KuSIY/1g0
その場所、唯は敢闘賞を獲った。
そして着々と番付を上げていった……。
「6時のニュースです」
唯「!」
唯「りっちゃん、りっちゃん!」
律「なんだよ」
唯「澪ちゃんが!」
澪「NHKニュースを終わります。ごきげんよう」
唯「NHKのアナウンサーなんだね~すごいね!」
律「……」
女子アナになるんだろうとは思っていたが、まさかNHKとは思わなかった。
これからもしかしたら唯が澪にインタビューを受ける、なんてこともあるかもしれない。
91: 2010/08/12(木) 15:44:38.77 ID:KuSIY/1g0
唯「あずにゃんもギタリストだもんね、すごいよね、けいおん部!」
律「ああ」
梓は女性ロックバンドでギターを弾いている。近々テレビにも出る予定だとか。
律「みんな成長してんだな」
唯「私もまだまだ止まらないよ!」
幕内中位から...
唯「ふむ、今日の相手は旭天鵬……」
唯「和ちゃんデータでみたところ、たまに変化するみたい。要注意だね」
93: 2010/08/12(木) 15:49:29.68 ID:KuSIY/1g0
行司「はっけよーい!」
旭天鵬「……」ズイズイ
唯「!?」
唯(あ、あれれ? この人……昨日やった時天空だよ?)
唯(でも同じ人と当たるなんてありえない……よね?)
唯(顔がそっくりの別人かな。あ、)
唯「データも間違えたかも!?」
旭天鵬「!?」ビクッ
律「取組中になに言ってんだあいつ……」
唯「ふうう、なんとか勝ったよ……」
唯「顔がそっくりなんて卑怯だよぅ」
95: 2010/08/12(木) 15:59:59.68 ID:KuSIY/1g0
親方「ここまで5勝か……そろそろ当たるかもしれないぞ」
唯「何がですか? 野球賭博ですか?」
親方「」ムシ
親方「このまま勝てば大関と当たるかもしれないからな、心しておけよ」
唯「はい!」
翌日...
唯「ひまふじってひとと当たることになりました!」
律「ハルマフジだ馬鹿」
唯「読み辛いなーアマでよかったのに」
律「いつまでも安い馬じゃかわいそうだろ。ほっといてやれよ」
唯「とにかく大関にかてばとってもすごいんだよね!」
律「勝てば、な」
97: 2010/08/12(木) 16:04:25.49 ID:KuSIY/1g0
そして日馬富士戦...
唯「変化されて負けました」
唯「大関のくせに平幕に変化なんてひどすぎるよ! プライドはどこへ行ったの!?」
律「うんまあ、うん……」
唯「真っ向勝負! ってブログで言ってるのに嘘じゃないかぁ!」
律「うん、まあ……日本語よくわかんないのかもしれないし」
律「でも変化されたってことは、それだけ警戒されたってことだろ」
律「大関に、まともにいったらヤバイ相手って思われたんだ。すごいぞ」
唯「うーん……」
唯「でも悔しいよ! また敢闘賞欲しかったよー!」
99: 2010/08/12(木) 16:10:50.79 ID:KuSIY/1g0
【変化】は、そのまま、立ちあいで方向を変化させて
相手の意表を突くことだよ。やられたほうはビクッてなっちゃうよ
基本、弱い力士が敵わない相手に仕掛けるものだけど……
ひまふじのブログ「真っ向勝負!」、日本語超うめぇ
102: 2010/08/12(木) 16:16:11.15 ID:KuSIY/1g0
その後、色々あって...
唯「敢闘賞もらえたよ!」
律「結局もらえたんじゃん」
唯「そういや、憂が十両に上がったって……」
律「よどみなく出世していってるな」
唯「私より早いよー」
律「唯は次は上位だから当たらないだろうけど、幕内に来るのも時間の問題だな」
唯「我が妹ながらおそろしい」
律「でも、次は三役ねらえるぞ!」
唯「三役! 【小結】と【関脇】と」
律「AAェ…」
104: 2010/08/12(木) 16:26:12.31 ID:KuSIY/1g0
【三役】は【小結】【関脇】【大関】の地位にある人のことです。右から順に強いのです。
【大関】の次が【横綱】だから、三役にれるのはかなり選ばれし者ってことですね!
【小結】【関脇】は上位で良い成績をあげた人がなるです。
【小結】と【関脇】在位中に一定の条件を満たせば、その上の【大関】になれますが、
強い人ばっかりと当たることになるので難しいです…
>>101
野球賭博で日本人がかなり謹慎になったので、外国人とっても多いです
大相撲のサイトに載ってるです
105: 2010/08/12(木) 16:32:13.63 ID:KuSIY/1g0
そして...
唯「こんにつわ、小結の唯の山です、どうもどうも」
律「うわウゼー」
唯「まあ、やったわけだよ!」
律「日馬富士にもリベンジ果たしたしな」
唯「今度は変化させなかったよ!」フフン
律「まあ二度もやんないと思うけどな」
唯「琴欧洲にも勝ったし、もう最強に日も近いかも!」
律「白鵬に惨敗したけどなー」
唯「」
律「バルトにも力負けしたし」
唯「」
律「あと八百長に乗ろうとしなかったか?」
唯「それはしてねぇよ!」
106: 2010/08/12(木) 16:38:03.16 ID:KuSIY/1g0
唯「いやあでも魁皇に勝つのはつらかったね」
律「え? それはごj」
唯「めったなこと言わないで! 魁皇好きだよ魁皇」
唯「だって、おじいちゃんおばあちゃんにすごい人気じゃん?」
唯「近所のとみおばあちゃんも魁皇好きだし」
律「あの人気は異常だよな」
唯「年を取ってもがんばれるって、高齢者に希望を与えているんだね」
律「本人まだ40前だけどな」
唯「ある意味アイドル対決だからさ……高見盛みたいなことになったら、って」
律「うーん、まあでもそれはないだろう。魁皇だし」
唯「魁皇だもんね」
107: 2010/08/12(木) 16:45:44.55 ID:KuSIY/1g0
唯「ところで、いま小結だけど、どうやったら大関になれるの?」
律「知らんのかい」
律「まあいろいろ言われてるけど……小結か関脇で33勝とか、優勝とか」
唯「余裕だね」フンス
律「あながち否定できないのが悔しいな……私はまだ三段目の呼出なのに」
律「でも優勝は難しいぞー」
唯「だめだあいつ、白鵬をどうにかしないと……」
律「ころすみたいに言うな」
ジャンジャカジャーン!
梓「こんにちは!」
律「うお、どうした梓」
唯「むったんも一緒だー」
梓「実は、千秋楽のエンデキングテーマを生演奏することになったです」
律「ああ、あのかっこいい音楽か」
唯「あれかっこいいよね」
梓「『相撲 かっこいい音楽』『THE千秋楽』などで検索すると出るです!」
111: 2010/08/12(木) 16:53:05.43 ID:KuSIY/1g0
唯「小結、そして関脇になり。そして、今場所もまた関脇だよ」
律「ふむ、大関になる条件は今のところ順調に満たしているな」
律「今場所12勝以上勝てばだけど」
唯「でも、まだ勝てていないのは白鵬だけ……」
律「横綱に勝てないのは唯だけじゃなくみんなだけどな」
唯「でも、そこを誰かが壊さないと!」
唯「そして、そうなるのは、今の角界には私しかいない!」
律「そうかー?」
律「こないだアミニシキに開始3秒で負けたじゃん」
唯「だって変化されたんだもんー」ブー
112: 2010/08/12(木) 16:58:04.99 ID:KuSIY/1g0
口では軽口を叩きつつも、唯はいつも通り、いやいつも以上に稽古に打ち込んだ。
力士になってもう何年、一日たりとも稽古を欠かしたことはない。
唯「ここまで全勝だよ……」
唯「明日、いよいよ横綱戦だね」
行司「はっけよーい!」
ザワザワザワザワ
「送り投げで唯の山、唯の山~」
ワァァァァァァァ
ザブトンポーイ
唯「ふぅ……」
113: 2010/08/12(木) 17:01:42.64 ID:KuSIY/1g0
唯は全勝のまま横綱に初勝利した。
それは相撲界を超えて新聞やニュースでも大いに話題になった。
しかし、それ以上に話題になったのが……
律「憂ちゃんも全勝……?」
唯「まあ幕内に入り立てだけどね」
唯「だから当たることはないと思ってたのに」
律「じゃあ、明日の千秋楽は姉妹対決ってことか」
唯「うん」
唯「でも負けないよ。全勝優勝で大関に昇進するんだから」
114: 2010/08/12(木) 17:04:43.03 ID:KuSIY/1g0
呼出「にーしー唯のぉやーまぁ、ひがーしー憂の里ぉぉぉ」
唯「まけないよ!」
憂「……」
行司「はっけよい!」
憂「……」ダッ
唯「う、」
唯(信じられない力だっ、こんない細いのに!)
唯(体制も低い……ああっ)
唯「ぎゃふん」
律「あああ……」
115: 2010/08/12(木) 17:08:20.94 ID:KuSIY/1g0
憂、優勝インタビュー後...
唯「憂、待ってよ、憂」
憂「お姉ちゃん久しぶり」
唯「……」
唯「私、憂が力士になったなんて全然知らなかったよ」
唯「と、東大には行ってないよね?」
憂「高校卒業してすぐ入門したから」
唯「そ、そっか」
唯「やっぱ力士になったのて私の……」
憂「ねえ、お姉ちゃん」
憂「私はお姉ちゃんのこと、なんでも知ってたよね」
唯「う、うん……」
123: 2010/08/12(木) 18:16:01.28 ID:Acipq0SB0
憂「お姉ちゃん、高校のときお姉ちゃんが部活に行ってる間、私が何したか知ってる?」
唯「え、ごはんとか」
憂「それもそうだけどね。でもそれだけで何時間もはかからないんだよ」
唯「じゃあ、一体なにを……」
憂「大相撲中継を見ていたんだよ、三年間ずっと」
唯「!」
憂「だから驚いたよ、お姉ちゃんから力士になるってきかされて」
憂「私が相撲好きなの知っててかな、なんて思ったりして。違ったけど」
唯「うい……」
憂「勘違いしないでね。別にお姉ちゃんのこと怒ってるとかないよ」
憂「力士になってみてわかったよ、人のことかまってる時間なんかない。妹でもね」
憂「だから最近になって私のこと知ったとかも、仕方ないよ」
唯「ご、ごめんて」
憂「ううん、むしろ女子力士の門を開いてくれたことには感謝してるの」
憂「でも、」
唯「え、ごはんとか」
憂「それもそうだけどね。でもそれだけで何時間もはかからないんだよ」
唯「じゃあ、一体なにを……」
憂「大相撲中継を見ていたんだよ、三年間ずっと」
唯「!」
憂「だから驚いたよ、お姉ちゃんから力士になるってきかされて」
憂「私が相撲好きなの知っててかな、なんて思ったりして。違ったけど」
唯「うい……」
憂「勘違いしないでね。別にお姉ちゃんのこと怒ってるとかないよ」
憂「力士になってみてわかったよ、人のことかまってる時間なんかない。妹でもね」
憂「だから最近になって私のこと知ったとかも、仕方ないよ」
唯「ご、ごめんて」
憂「ううん、むしろ女子力士の門を開いてくれたことには感謝してるの」
憂「でも、」
124: 2010/08/12(木) 18:16:39.91 ID:Acipq0SB0
憂「多分、お姉ちゃんは来場所、大関になるよね」
唯「でも優勝できなかったからわかんないよ」
唯「憂に負けた……から」プク
憂「まあ、なると思うよ」
唯「優勝してからなりたかったのに」ウウ
憂「大関になるのはお姉ちゃんが先だったけど、横綱は私がなるから」
唯「!」
憂「じゃあ……」タタタッ
125: 2010/08/12(木) 18:17:34.74 ID:Acipq0SB0
唯「くやしいよ!」
律「うん、負けた上にそれだもんな」
唯「そうなんだよ、負けてるから言い返せないんだよ~」ウエーン
律「しかし憂ちゃん……」
律「最近は取材とかも結構受けてるみたいだけど」
唯「うん、私にも憂のこととか訊いてくる人いるね」
唯「わかんないって言ったら『不仲か!?』とか週刊誌に書かれちゃった」
律「それはともかく、大関おめでとう!」
唯「なんだか微妙だなぁ……」
律「いや、すごいだろ! 大関だぞ!?」
唯「そうだけど……もはや私にはそれだけでは物足りないんだよ」
そう、審議の結果、満場一致で唯は大関に昇進した。
和「唯、大関昇進おめでとう!!」
紬「大役だから、これからは懸賞金を倍にするわねっ」
梓「やりすぎです」
126: 2010/08/12(木) 18:18:31.04 ID:Acipq0SB0
唯「みんなぁ~ありがと~」ウルウル
和「しかし憂には驚かされたわね。平幕でいきなり全勝優勝なんて」
和「本当だったらもっと早くに幕内で活躍しててもおかしくなかったのに……まさか」
律「……」
まさか唯の全勝優勝→大関昇進を阻止したかった、なんてことはないと思う。
思いたい。
梓「唯先輩にささげるギターのはずが、憂の優勝を祝うことになっちゃいましたです」テヒッ
律「空気嫁」
127: 2010/08/12(木) 18:19:12.59 ID:Acipq0SB0
親方「次は大関での初場所だ」
親方「最近では大関になった途端に微妙に弱くなる力士も多い」
律「コラコラコラ」
親方「もちろん、うちの唯の山はそんなことない、そうだろう」
唯「もっちろんです! 互助会なんて振り切ります!」フンス
律「だからコラコラコラコラ」
唯「全勝優勝して横綱になります!」
律「気が早すぎるだろ。大関を楽しめよ」
135: 2010/08/12(木) 20:20:51.10 ID:Acipq0SB0
唯「あんなこと言われたら、一場所でも早く横綱になって憂を見返したいって思うよ!」
唯「そうしないと憂が横綱になっちゃうよ!」
律「いや、憂ちゃんまだ平幕だからさ。最低でも一年は猶予あるだろ」
唯「ううん、憂ならわかんないよ」
唯「いや、もうあれは憂じゃない」
唯「大相撲力士の、憂の里なんだよ」
律「……」フム
律「まあ、じゃあとりあえず憂ちゃんと当たるまで全勝でいないとな」
唯「当然! さ、お稽古しよっと!」フンスッ
世間では「センスと才能の姉・唯の山」VS「努力と頭脳の妹・憂の里」などと言われて、
真面目で寡黙な妹とおちゃらけた姉のイメージをマスコミが作っていたが、そうじゃないことは相撲界にいればみんな知っている。
確かに憂ちゃんの稽古量や研究はすごいらしい。
だが、唯だって、恐ろしいほどの稽古をこなして、なお自分に足りないものはなにかと考え続けているのだ。
部屋の力士相手だけではなく、連日別の部屋に遠征しては、まか帰って稽古して。
律「唯……お前のあのときの目は、やっぱり本物だったよ」
136: 2010/08/12(木) 20:21:53.31 ID:Acipq0SB0
「大関で迎える今場所の意気込みをどうぞ!」
唯「もちろん全勝優勝します」
「妹の憂の里関に前回敗れていますよね?」
唯「二度と負けるつもりはありません」
唯「憂の里だけではなく、誰にも負けません」
「先場所に続き全勝優勝してほしいというファンの期待もありますが」
憂「頑張ります」
「お姉さんの大関昇進はどう思いますか?」
憂「嬉しいです」
憂「私も早く大関になれるよう、努力します」
137: 2010/08/12(木) 20:23:29.93 ID:Acipq0SB0
そして、唯・憂、共に全勝同士で迎えた千秋楽...
バタン!
紬「ねえ、唯ちゃん、りっちゃん……!」
律「おいおいムギ、いくら後援会長だからって支度部屋に入って来ちゃ」
紬「それどころじゃないのよ」
唯「どうしたの?」キガエキガエ
紬「あのね、今日の実況のアナウンサーが……」
澪「今日の取組の中で注目するべきはやはり全勝同士の対決でしょうか」
北の富士勝昭「そうだね。昔では考えられなかったね、こういうのは」
澪「若貴時代には兄弟対決というのもありましたが」
勝昭「いやー、それとは場合が違うでしょう。なんせ兄弟じゃなくて姉妹ですから」
律「澪……」
138: 2010/08/12(木) 20:25:28.98 ID:Acipq0SB0
その瞬間、私はわかってしまった。
紬「あのね、本当はいきなり千秋楽に、それも経験のないアナウンサーがやるのは前例がないんだけどね」
紬「澪ちゃんがどうしてもって言ったって、NHKの偉い人が……」
澪が国立大でなく、有名私立に行った理由。
紬「澪ちゃん、人気アナウンサーだから、看板みたいなものでしょ。だから上も迷ったんだけど」
ミスキャンパスになったり、アナウンサー学校へ行った理由。
紬「そしたら、なんでも、その場で相撲の知識を披露したらしいの。すごく細かいことまで」
らしくない、慣れないことをしていたのは。
律「バカだな、それって民放の女子アナになるルートじゃんか……」
律「頭いいのに、どっか抜けてるんだよな……みおぉ……」
みんなみんな、私たちを応援するためだったんだ。
けいおん部でいたあの頃のように、またみんなで何かをするためだったんだ。
139: 2010/08/12(木) 20:26:29.32 ID:Acipq0SB0
梓「こんにちは~」
梓「澪先輩、すごいですね! 大抜擢です!」
律「あ、梓。今日も?」グスス
梓「ええ、私、またTHE千秋楽を生演奏するんです」
梓「もちろん憂は友達だし頑張ってほしいですけど、今回は唯先輩の優勝祝いたいな」
梓「次回からはチャラで、どっちも応援しますけどね!」
律「梓……」
みんなが注目する中、世紀の姉妹対決は行われた……。
141: 2010/08/12(木) 20:28:52.76 ID:Acipq0SB0
...
.....
.......
とある相撲ファンの家...
「ふーやれやれ、今日も仕事疲れた」
「テレビでも見るかね」ポチ
澪「7時のニュースです」
「このアナウンサー美人だよな~。秋山さん、だっけ」
澪「今日は大相撲で歴史に残る名取組がありました」
「最強姉妹対決か。仕事がなけりゃ見たかったのに」
「で、どっちが勝ったんだ?」
142: 2010/08/12(木) 20:30:38.46 ID:Acipq0SB0
スタジオ...
澪「~~~で、唯の山が全勝で優勝いたしました」
プロデューサ「あれ、トップニュースってこれだったっけ?」
AD「違いますよ。原稿も違うはず……」
AD「あ、秋山さん……」
プロデューサ「と、止めろ!」
澪「繰り返します。大関唯の山が、全勝優勝いたしました。もう一度繰り返します……」
おわり
143: 2010/08/12(木) 20:31:55.35 ID:Ef4PAOx10
終わったwwww
144: 2010/08/12(木) 20:33:57.23 ID:Acipq0SB0
呼出の律です。
その後の話をします。
唯はあの勝負から間もなく横綱になったけど、若くして引退しました。
長年の無茶な稽古もたたって、身体を壊したこともあったのかもしれません。
憂ちゃんも、もちろん横綱になりました。
あれからの二人の勝敗は、五分五分といったところでしょうか。
憂ちゃんは、唯がいなくなってからは連勝記録を作り続け、引退した後は親方になりました。
憂の里部屋は、多くの関取を輩出している名門部屋です。
私はといえば、今ではなんと立呼出です。
それくらい、おばあさんになりました。
そうそう、唯は親方になれる資格は十分にありましたが、それはせず、今は自分で教室を開いて子供たちに相撲を教えています。
毎日、楽しいそうです。
本当におわり
146: 2010/08/12(木) 20:39:15.03 ID:f0WHBTvQP
面白かった
引用: 律「ひがぁし~唯のやぁ~まぁ~」
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