436: 2008/05/28(水) 01:13:23 ID:zX4aYgH8
ロレンスの旅の楽しみは、何といっても食べ物だ。
諸国の名産や、季節の食材を味わうのは、
行商人にとって唯一の楽しみと言っても過言ではないだろう。

今回は、北のはずれヨイツまで足を伸ばしたところである。
ここいらは熊料理が有名で、なんと熊の背脂を食わせてくれるらしい。
噂によると、バターの様な風味らしく
ロレンスは教えられた店を、期待に胸を膨らませながら入ると、早速注文した。

ちなみに値段はトレニー銀貨3枚ほど。庶民にはちょっと、
手の届かない高級料理だ。
聞くと、やり手の女将が店を取り仕切っているらしい。
「おまちどうさま」
早速、料理が届く。ん、やけに早いな。
深皿に乗せられた肉はドロドロとして獣臭い。
しかも、ところどころに熊の毛がまざっている。

「・・・・」
ロレンスは、首をひねりながらも一口パクリと食べてみる。
「ぶはっ!!」
気持ちの悪さに、すぐ吐き出してしまった。
「なんだこれは!」
あまりのまずさに怒り心頭だ。割の合わない取引は、料理であれど許せない。
料理人に散々文句をいうが、こうゆう食い物だと埒が明かない。
第1幕 収穫祭と狭くなった御者台
437: 2008/05/28(水) 01:14:23 ID:zX4aYgH8
「ええい!女将をよべ!!」
ロレンスは、顔を真っ赤にして、まくしたてた。
すると、奥から若い女の声が聞こえる。
「営業妨害するお人は誰じゃ?」
容姿端麗な若い娘が、微笑を浮かべながらやって来た。
「わっちはホロ。誇り高き、おかみじゃ。」
「お、おかみ?」
「そう、わっちがここの、おかみじゃが何か?」
まるで看板娘かと思う少女相手では、なかなかやりづらい。

いや、そうゆう手なのだろう・・ロレンスは心を決めてホロを責める。
「この料理はなんだよ?生臭いし、味はついていないし、ボッタクリか?」
女将ホロも黙ってはいない。
「これは、レアと言うて、お肉のおいしさを引き出すんでありんす。」

「ほー、これがうまいのか?行商人をなめるなよ!商会から噂が広まれば
どうなると思う?」

「いかようにも、しやしゃんせ」
ツンと女将ホロはそっぽをむく。だがその表情には焦りがみえた。もう一息か。
「じゃあ、お前も、これを食べてみてくれ。」
女将ホロの額から一滴の汗が落ちる。
「そ、それはじゃな・・・」
オロ、オロする女将を前にロレンスは更に攻撃を加えた。
「女将も食べれないような物を出すのかここは!」
「旅人を騙す料理屋として教会に申告してやる!」

「そ、それだけは堪忍してくりゃれ。」
女将ホロは、ロレンスの袖をつかむと涙を浮かべ懇願する。

「お詫びに、いっ・・今なら、若い狼の肉をお出しできるのじゃが、それではダメかや?」
急にもじもじしながら頬を染めると、女将ホロはロレンスにたずねた。
「はぁ、狼だって?そんなもん食えるか!金かえせ!」
「・・そうじゃな、申し訳ありんせん。」
しゅんと、首をうなだれたまま、女将ホロはロレンスに銀貨を返すのだった。

店を出ると雪が降ってきた。どうりで寒いわけだ。
理由は分からないが、どこかで大きな間違いをした様な気がする・・・
そんな心寂しい気分で宿へ帰るロレンスだったとさ。

442: 2008/05/29(木) 00:30:37 ID:91clNFQ8
「ぬしさま!まってくりゃれ。」
ハアハアと息を切らしながら、おかみが走ってきた。
「お詫びをさせてくりゃれ?」
「実はわっちの店には裏メニューがありんす。」
「こっちが本業というか・・いや、まあなんじゃ・・」
なんとなく話を濁しながら、
おかみホロは、ロレンスの腕を引っ張り店に連れ戻した。

「金は払わないからな。」
「もちろん、お金などいりゃんせん。」
「ささっ、奥へ入って少々お待ちくださりゃれ。」
おかみホロはウインクをすると、そのままそそくさと消えていく。
妖しい雰囲気の漂う奥の部屋で待つこと10分。ようやく料理が届いた。

「これは、クロエ豆のあわび和えじゃ。さあ味わってくりゃれ?」
ホロと共に現れたのは、裸の娘だった。
アズキ色のおさげ髪の娘は、ゆっくり股を開いてロレンスの前に横たわった。
「どうぞ、ロレンス。」
自信たっぷりに手招きする娘に、ロレンスの表情は歪んだ。

「これは、食べられないよ。」
「このあわびは、使いまわしだろう?下座の客あつかいするんだな。」
おかみホロの顔色が一瞬青ざめた。が、すぐに場を取り繕うように微笑む。
「さすが、ぬし様。一流じゃの。もちろん、これは余興じゃ。」
ホロがポンポンと手を叩くと、屈強な男たちがクロエを抱え、素早く去っていった。
あの男を頃して~と叫び声が、遠くでかすかに聞こえる。

443: 2008/05/29(木) 00:31:32 ID:91clNFQ8
「あまり、お出ししたくなかったのじゃが。もう~ぬし様にはかないんせん。」
「鮮度は店一番!仔羊のノーラ風じゃ。」
見ると、ショートの金髪の娘が両手で顔を隠しながら、ガタガタ震えていた。
もちろん、裸でだ。発育しかけの小ぶりの胸が食欲をそそる。
「うむ。」
ロレンスは満足そうに娘に手をつける。しかし、
「・・・・」
「どうしたのじゃ?」
「犬に舐められた味がするんだが・・・」

「なんじゃとっ!この娘は、またしでかしたのじゃな。後でおしおきじゃ!!」
「あぁ~、ごめんなさい。ごめんなさい!」
ホロがポンポンと手を叩くと、ノーラもまた同じように消えていった。

「・・・じゃあ、つ、次は、白鳩のディアナソースがけっ」
「いやぁ、でか胸肉嫌いなんだよね。」

「なら、これはどうじゃ!エーブ貝の巾着蒸し!」
「ちょっと硬すぎだし、痛いし。」

ああ・・・おかみホロは力なく床に手をついてうなだれる。
いや・・まだ、最後の切り札が残っておる・・キラりん。瞳が妖しく光った。
「いや、もう帰るから。」
「待ってくりゃれ!これで最後じゃ・・最後じゃから」
帰ろうとするロレンスの足を両手で押さえ必氏に食らいつくホロ。
「わかーった。じゃあ、早くしてくれ。」
食い下がるホロにロレンスも観念する。
「おほほ、ちょっとおまちくりゃれ」


449: 2008/05/29(木) 23:33:45 ID:91clNFQ8
 ――どうせ、わっちを食べてくりゃれ~。なんて女体盛りがいいとこだな・・
冷めた表情でタバコをふかし待つロレンス。
すると、そこに小さい背丈の少年を連れ、ホロが戻ってきた。
「これで最後じゃ・・コル産、生ソーセージ一本・・」

「はあ?人を馬鹿にしているのか!」
ロレンスが、ホロにつかみかかろうとしたその時。
「ん、まて。この香りは!!」
「十二の時、奉公に出た先で味わった、兄弟子の味やないか!!」
「し、しかも天然物ときとる!ああ、これ以上泣かせんといてほしいわあ。」
ロレンスは故郷のなまり丸出しで、少年にしゃぶりついたのであった。

おわり

450: 2008/05/29(木) 23:38:21 ID:91clNFQ8
すまん。はじめはハーレムな終わり方と思ったんだが。
ロレンスがあまりに不評なので、いじわるしました。

てゆうか、自分のネタの半分以上は、ここの何気ないレスが元で
できていたりして・・

引用: 【狼と香辛料】支倉凍砂作品 2わっち目