197: 2008/10/13(月) 17:07:11 ID:i09WqIg1
「うぅ~、やっと終わっタ・・・」

玉ねぎで沁みた眼をゴシゴシとこすりながら、エイラさんは大きく息を吐きました。
気が付けば、窓の外はもう真っ暗。
早くしなきゃナ・・・そう思いながら、手早く下ごしらえした材料を台所に並べます。

甘みが出るように大きめに切られた玉ねぎ。
食べやすいように一口大の大きさに切られたじゃがいもと人参。
しっかりと塩とコショウで下味を付けた豚肉。
隠し味で使うヨーグルトとチョコレート。
そして、わざわざ市場のおじさんに頼んで仕入れてもらった扶桑産のルウ。

これならきっと、とびきり美味しいヤツが作れるに違いない。
ウンウン、と一人で頷きながら、エイラさんはコンロに火を付けました。
しばらくして、お鍋が温まったのを確認してから、材料を入れてゆっくりと炒めていきます。

「ジャガイモ♪ ニンジン♪ タマネギ♪ 豚ニ~ク♪」

少し調子のずれた鼻歌を歌いながら、エイラさんはピアノの練習に出掛けているサーニャさんの事を考えていました。

一緒に暮らしているサーニャさんは駆け出しのピアニスト。
今はクリスマスにガリアで行われる復興記念の演奏会の為に、毎日毎日、厳しい練習をしています。
最近は、思う様にピアノが弾けないみたいで少し落ち込んでいます。

「サーニャが喜んでくれるとイイナ・・・」

これを食べて元気を出して欲しい。
いつもの様に優しい笑顔をみせて欲しい。
そんな気持ちを込めながら、エイラさんはお鍋の中にお湯を入れました。
外では真っ白い雪がチラチラと降り始めていました。

198: 2008/10/13(月) 17:07:59 ID:i09WqIg1
全ての料理を作り終わった頃、玄関のドアが開く音が聞こえました。
急いでエイラさんは玄関へと向かいます。

「おっ、帰ってきたナ♪」
「ただいま・・・」

エイラさんはサーニャさんの小さな身体を抱きしめました。
雪で濡れたサーニャさんの身体はとても冷たく、微かに震えています。
それにやっぱり、あまり元気が無いように見えます。
エイラさんは少し心配になって、冷たくなったサーニャさんの手を包み込みように握りました。

「・・・どっか具合が悪くなってナイカ? 風邪とかひいてナイカ?」
「うん、大丈夫・・・でも、今日も沢山間違えて、先生に怒られちゃった・・・」
「そっか・・・そういう時も有るサ・・・」
「うん・・・」
「それより、お腹空いてるダロ? 今日は私が腕によりを掛けてご飯を作ったんダ。温まるゾ 」

エイラさんは早速、サーニャさんをダイニングに連れて行きました。
室内に漂うおいしそうな匂いを嗅ぐと、曇り顔だったサーニャさんは不思議そうな表情を浮かべました。

「いい匂いがする・・・何を作ったの?」
「フッフッフッ。 今晩のメニューはカレーライスなんだゾ」
「カレーライス?」
「そう、カレーライス。 お客様、暫しお待ち下さいマセ」

ウェイトレスさんの様にかしこまった挨拶をすると、エイラさんはテキパキと夕食の準備に取り掛かります。
レタスと玉ねぎをホワイトドレッシングで和えたサラダ。
キノコの入ったコンソメスープ。
付け合せの茹で卵とらっきょう。
そして、真っ白いご飯の上に掛かった熱々のカレー。
おいしそうな料理が魔法の様に次々と、サーニャさんの前に並べられていきました。

199: 2008/10/13(月) 17:08:51 ID:i09WqIg1
「いただきます」
「熱いから気を付けろヨナ」

エイラさんに言われてサーニャさんはふーふーと少し冷ましてから、カレーを口に運びました。
モグモグモグ。
サーニャさんが食べる様子をエイラさんはじっと見ていました。

「どうダ? 美味いカ? 辛くないカ?」
「・・・うん、美味しい」

一口食べ終わると、サーニャさんに笑顔が広がりました。
まるで野に咲く花の様な可愛らしい笑顔。
エイラさんは頑張って作って本当に良かったと思いました。

「そ、ソウカ! ヨカッタァ~」
「すごく美味しいよ・・・」
「ウィッチーズにいた頃、宮藤がよく作ってたカレーが、サーニャは好きだったダロ? だから、今回は扶桑風のカレーライスにしてみたンダ」

宮藤みたいに上手く作れないけどナ、とエイラさんは照れくさそうにそう言いました。
いつもはお仕事も忙しくて、あまり料理が得意ではないエイラさん。
だけど、演奏会への出演が決まってからは、サーニャさんの為にお仕事を休んでサポートをしてくれています。
読み慣れない料理の本を読んで、こうやってサーニャさんが好きな料理を作ってくれます。
サーニャさんはエイラさんの優しさを改めて感じて、思わず涙がこぼれてしまいそうになりました。

「おかわりも沢山、あるからナ。 いっぱい食べて、練習頑張れヨ」
「うん・・・ありがとう、エイラ」

心からエイラさんへのお礼を言って、サーニャさんはカレーを食べました。
じゃがいもも人参も玉ねぎもとても甘くて。
ピリッと程よくスパイスが効いていて。
エイラさんの気持ちがいっぱい込められていて。
本当に美味しいカレーライスだとサーニャさんは思いました。

「・・・それにしても、今日の玉ねぎは新鮮だナァ。 まだ、目に沁みるヨォ」

サーニャさんの瞳に涙が溜まっているのを見て、エイラさんはそんな冗談を言いました。
そうだね、ツーンとするね、とサーニャさんは笑顔で答えました。

200: 2008/10/13(月) 17:10:49 ID:i09WqIg1
おしまいです。
少し前に出てたけど、スウェーデンの人は料理がイマイチらしいですな。
でも、エイラさんなら愛の力で頑張れると思います。

ちなみに自分はチキンカレーが好きです。

204: 2008/10/13(月) 18:41:10 ID:KYdNMjrE
>>200
面白かったが一つだけ、
エイラはフィンランド人です。

ちなみに自分はカツカレーが好きです。

207: 2008/10/13(月) 19:09:31 ID:fMVOW0LR
>>200
GJ!いい話だ・・・
ストウィチ世界では、スウェーデンとノルウェーがバルトランド
フィンランドがスオムス、となってる模様

ちなみに自分はチーズカレーが好きです。

208: 2008/10/13(月) 19:51:27 ID:OuMdNI5c
指摘サンクス。
スウェーデンじゃなくてフィンランドだったのか・・・。
地理が苦手ですんません・・・。

カレーは何入れても美味いですよね。

引用: ストライクウィッチーズpart7