1: 2008/10/13(月) 19:27:48.99 ID:/IZZA0M80
みつ「えへへ~、すごいでしょ~」

今私達は新築出来立てマンションの前にいる。
ローゼンメイデンのカナと一緒に暮らすようになって、今のマンションじゃちょっと手狭になっちゃったからだ

みつ「今度はカナだけのお部屋もあるんだよ~」

金糸雀「本当かしら!他のドール達は部屋を持ってないけどカナだけ特別かしら~」

カナが大喜びしながらクルクル回ってる~、カワイイ~~~!!

3: 2008/10/13(月) 19:29:00.47 ID:/IZZA0M80
私はくるくる回るカナを抱きしめて力いっぱい頬ずりをした

みつ「カナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナ…」

カナ「ま、まさちゅーせっちゅぅうううううー…みっちゃんほっぺが燃えちゃうかしらぁあー」

うふふ、思い切って家を変えるのは正解だったなー
カナがこんなに喜んでくれるなんて
ちょっと貯金が厳しいけど仕事を増やせば大丈夫だよねー

大喜びするカナにバッグに入ってもらって、私はこのマンションを管理する不動産屋に会いに行った
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

4: 2008/10/13(月) 19:29:39.40 ID:/IZZA0M80
不動産屋「いやぁ~草笛さん、あなたは運がいい。これが最後の空き部屋でしたからねえ
     では来月、敷金礼金合わせて80万円の振込みをお願いしますね」

みつ「は~い。」

さあ頑張ってバリバリ働かなきゃ!
さーて今住んでる所を引き払わなきゃね。今月は忙しくなるわよ!

6: 2008/10/13(月) 19:30:16.14 ID:/IZZA0M80
金糸雀「…という訳でカナは自分のお部屋を持つことになるかしら!」

雛苺「金糸雀いいなの~」

翠星石「ふ、ふん。うらやましくなんかねぇーですよ!」

真紅「あなたのミーディアムは大丈夫なの?そんなに裕福じゃないようだけど」

7: 2008/10/13(月) 19:30:50.54 ID:/IZZA0M80
金糸雀「みっちゃんがいっぱいお仕事するから大丈夫って言ってたかしら」

真紅「…そう、でもちゃんと気を配ってあげなきゃ駄目よ。みつはあなたのマスターなのだから」

金糸雀「わかっているかしら!カナとみっちゃんは真紅達のミーディアム以上に固い絆で結ばれているかしら!」

翠星石「こっちだってチビ人間との…」

8: 2008/10/13(月) 19:31:27.52 ID:/IZZA0M80
ガチャ
真紅達のミーディアムが手に紅茶とお菓子を持って部屋に入ってきた。
翠星石は真っ赤な顔をして口に出した台詞を必氏に誤魔化そうとしてる

ジュン「おい僕がなんだって?」

翠星石「な、な、な、なんでもねーですよ!部屋に入るときはノックくらいしねーですか!」

ジュン「なんで自分の部屋に入るのにノックしなけりゃなら無いんだ。それより今言ってたこと…」

9: 2008/10/13(月) 19:32:01.72 ID:/IZZA0M80
雛苺「あのね、翠星石は金糸雀とみっちゃんより自分とジュンのほうが…」

翠星石「わー!わー!わー!何を言っているですか!チビチビ苺は余計な事を言わなくてもいいです!」

真紅「はぁ、素直じゃないわね…」

10: 2008/10/13(月) 19:32:24.55 ID:/IZZA0M80
真紅はやれやれといった感じでジュンの持ってきた紅茶に口をつけた
その周りで翠星石と雛苺がおっかけっこをしている

翠星石「こらぁ~待てぇ~ですぅ!」

雛苺「やぁ~なの~」

私は妹達の微笑ましい光景を眺めながらジュンが持ってきてくれたお菓子に手をつけた

13: 2008/10/13(月) 19:32:57.84 ID:/IZZA0M80
ジュン「あ~そうそう…」

ジュンは私の方へ顔を向け少し目をそらして言った

ジュン「みつさんが今日も遅くなるからウチでご飯を食べてけって」

金糸雀「そ、そう…」

私は少し伏目がちになりながら返事をした。

14: 2008/10/13(月) 19:33:30.19 ID:/IZZA0M80
ジュン「おい、別に気にすることは無いんだぞ。呪い人形が一体増えたって全然変わらないんだから」

真紅「ジュン、別に金糸雀は遠慮している訳じゃないのよ」

金糸雀「ちょ、ちょっと失礼じゃないかしら!」

真紅「あなたはみつと一緒にいれなくて寂しいのね…」

金糸雀「うっ…」

真紅は勘がいい。今の私の考えなどお見通しといった感じだ…

15: 2008/10/13(月) 19:33:57.22 ID:/IZZA0M80
金糸雀「べ、べつに寂しくなんかないかしら!今日も真紅達が寂しがるからしょうがなく一緒にご飯を食べてあげるかしら!」

私はせいいっぱいの強がりで虚勢をはった

真紅「もう…みんな素直じゃないのね…」

16: 2008/10/13(月) 19:34:45.45 ID:/IZZA0M80
みつ「はぁ…今日も残業で遅くなっちゃう…」

いつもいつもジュンジュン達には迷惑をかけちゃうなあ…
今日カナを迎えに行く時、食費くらい払わなきゃ
最近仕事が多くなってカナの夕食を桜田さん家にお願いすることが増えた。
自分でもオーバーワークだってことは分かってるんだけどカナの喜ぶ顔を考えちゃうと必要以上に頑張っちゃうだよねえ

17: 2008/10/13(月) 19:35:18.33 ID:/IZZA0M80
上司「おい草笛、最近無理しすぎなんじゃないのか?」

上司が私の様子を見かねたのか心配そうに声をかけてきた

みつ「あはははは~、大丈夫ですよ…」

上司「顔が引きつってるぞ…」

18: 2008/10/13(月) 19:35:56.11 ID:/IZZA0M80
顔に出ちゃってるのかなあ…?私は顔に笑みを浮かべて元気いっぱいといった感じでガッツポーズをとった

上司「…今日はもういいから帰れ」

みつ「えぇ~本当に大丈夫ですって…」

上司「疲れた頭じゃ仕事に支障がでるだろ…それに今のお前は明らかに自分のキャパシティを超えてるぞ。少しは仕事量を減らして…」

みつ「わー!わー!分かりました。今日は帰りますんで契約は減らさないでください」

今月はたくさん残業しなきゃ新しいマンションの契約料が払えなくなっちゃう…ここは何としても仕事を持続させなくっちゃ

25: 2008/10/13(月) 20:06:02.35 ID:/IZZA0M80
金糸雀「花丸ハンバーグおいしいかしら~」

のり「まあ、ありがとう金糸雀ちゃん。まだいっぱいあるからたくさん食べてね」

雛苺「雛もたくさん食べるの~」

翠星石「チビ人間もちゃあ~んと食べるですよ。でないとチビチビ達よりもずーっとチビになっちまうですよ。ヒヒヒ」

ジュン「こら!この呪い人形」

真紅「まったく…この子達ときたら」

みっちゃんと食べる食事は楽しいけど真紅達と食べる食事もまた別の楽しさがあった

26: 2008/10/13(月) 20:06:47.40 ID:/IZZA0M80
のり「金糸雀ちゃんは玉子焼きが大好きなんだよね。明日作ってあげるから楽しみにしててね!」

金糸雀「あ、明日はだめかしら~」

のり「え?どうして」

27: 2008/10/13(月) 20:07:25.70 ID:/IZZA0M80
金糸雀「明日はみっちゃんと初めて出会った記念日かしら」

真紅「あら?みつと出会ったのはまだ最近の事でしょ」

金糸雀「みっちゃんは毎月いろんな記念日をつけてるかしら。一緒にお風呂に入った記念日、カナが寝言を言った記念日、TVで泣いた記念日…」

のり「わー、それじゃ毎日が記念日ね。楽しそー」

30: 2008/10/13(月) 20:07:56.73 ID:/IZZA0M80
翠星石「すごい溺愛ぶりですぅ…」

雛苺「雛も記念日を作るのー。今日はジュン登り征服記念日なのー」

真紅「そんなに記念日が多すぎるのはちょっと…だけど出会い記念日なら特別ね」

金糸雀「そうかしら~。だから明日はどんなことがあってもみっちゃんと一緒にお祝いするかしら♪」

31: 2008/10/13(月) 20:08:33.70 ID:/IZZA0M80
みつ「ごめんねーいつも迷惑かけちゃって…」

急いで桜田さん家に来たけどカナ達はもう寝ちゃったみたいだ

のり「そんなことないですよ、大勢いたほうが楽しいですし」

ジュン「人形が一人増えても変わらないしな」

のり「それにしてもみつさんお仕事大変ですね…」

みつ「あはははー、もう慣れちゃった…」

38: 2008/10/13(月) 20:23:24.88 ID:/IZZA0M80
みつ「あ、あとこれ。少ないけど…食費に」

のり「いいんですよー、6人も7人も変わらないですし」

みつ「でも…」

ジュン「いいんだよ。洗濯のりは料理が好きなんだし…それに金糸雀が雛苺達の相手をしてくれるから助かる」

みつ「ありがとう…ジュンジュン…」

41: 2008/10/13(月) 20:28:59.32 ID:/IZZA0M80
私は眠ったカナをおんぶして自宅へ向かった
タクシーを使いたいけどそんな贅沢はできないよね

みつ「はー、ジュンジュンとのりちゃんって本当にいい人だなあ」

食費のことは後ろめたかったけど正直ありがたかった

金糸雀「みっちゃん…みっちゃん…」

47: 2008/10/13(月) 20:38:56.83 ID:/IZZA0M80
みつ「カ、カナ起きちゃったの?」

金糸雀「みっちゃん…大好き…スー…スー…」

みつ「カナ…」

みつ「そうよ!私も大好きなカナのためにもどんどんお金を稼がなくちゃね。さあ明日も頑張るぞー」

カナ(…お金…)

50: 2008/10/13(月) 20:42:18.70 ID:/IZZA0M80
「…ちゃん」

「みっちゃ…」

「みっちゃん!」

金糸雀「みっちゃん起きてかしら~!」

私はカナの声とかわいらしい手で揺さぶられて目を覚ました

みつ「あーーーーーーーーーーーー!? もうこんな時間!」

51: 2008/10/13(月) 20:48:29.14 ID:/IZZA0M80
徒歩で自宅に帰った疲れと毎晩の残業がこの遅刻の原因みたいだ

金糸雀「あのねみっちゃん、今日は…」

みつ「ごめんね、カナ。今日はお弁当作ってあげられないの!ジュンジュンに連絡しておくから今日はジュンジュン家でご馳走になってね」

私は化粧をする間もなくとりあえずの正装で、駆け出すように駅へ向かった

金糸雀「みっちゃん!今日は、今日は…」

53: 2008/10/13(月) 20:52:50.16 ID:/IZZA0M80
真紅「あら、いらっしゃい金糸雀」

金糸雀「…ご機嫌ようかしら」

翠星石「なんだか元気が無いです」

ジュン「みつさんから聞いたよ。まあ昼までは真紅達と遊んでな」

金糸雀「あの…」

54: 2008/10/13(月) 20:57:49.48 ID:/IZZA0M80
雛苺「金糸雀ー!雛ね、昨日はのりにジュン登り征服記念日のうにゅー貰ったの!今日は金糸雀の出会い記念日で嬉しい日なのー!」

金糸雀「…」

雛苺「うゆー…どうしたの金糸雀?」

カ、カナがここで泣いちゃ、頑張ってるみっちゃんに申し訳ないかしら…

金糸雀「今日のご馳走を思い浮かべるだけで、もう嬉しくってしょうがないかしら!」

真紅「…」

55: 2008/10/13(月) 21:03:15.51 ID:/IZZA0M80
真紅「金糸雀…」

金糸雀「なにかしら、真紅」

真紅「あなた私達になにか隠し事があるでしょ」

ぐっ…いつもするどい…でも妹に…弱みは見せられないかしら!

金糸雀「な、なぁ~んにもないかしら~。」

57: 2008/10/13(月) 21:08:25.38 ID:/IZZA0M80
真紅「そう…」

翠星石「真紅はいつも勘ぐりすぎですぅ。それとも今日も夕ご飯に金糸雀おねーちゃんが一緒じゃないと寂しーですか?ヒヒヒ」

真紅「な、な!?ちょっと待ちなさい翠星石」

翠星石「やだよーですぅ」

雛苺「雛も鬼ごっこするのー」

ジュン「おい、静かにしろよ!」

これでいいかしら…真紅達にもみっちゃんにも心配かけずにすむかしら…

70: 2008/10/13(月) 21:58:30.44 ID:/IZZA0M80
楽しい時間はあっという間に過ぎるもの
真紅達と遊ぶのは何時でも楽しいかしら!

のり「ただいま~」

雛苺「あ、のりが帰ってきたの~」

翠星石「おかえりですぅー!」

雛苺と翠星石がのりに飛びつくのを見て自分もうずうずしているのが分かる
そういえば最近みっちゃんとスリスリしてないかしら…

73: 2008/10/13(月) 22:02:41.30 ID:/IZZA0M80
のり「今日はオムライスよ~」

オ、オムライス…とぉ~っても食べたいかしら…喉がゴクリと唸りだす

雛苺「あ~金糸雀よだれがでてるの~」

金糸雀「あ…ジュビィ…」

翠星石「食い意地が張ってるやつですねぇ、今日はみつとご馳走を食べる約束ですのに」

74: 2008/10/13(月) 22:06:33.65 ID:/IZZA0M80
のり「あらぁ~いいのよ金糸雀ちゃん。ジュン君、みつさんから連絡はあった?」

ジュン「いや、でもこの時間に連絡無いってことは今日は早く帰れるのかな?」

のり「そうなの…でもオムライスくらい食べても…」

雛苺「駄目なのー!金糸雀はみっちゃんと一緒にお祝いしなきゃいけないの!」

75: 2008/10/13(月) 22:11:25.79 ID:/IZZA0M80
真紅「いいじゃない。食い意地が張ってる金糸雀ならみつとのご馳走も食べれるのだわ」

金糸雀「ちょっ…酷いかしら…」

雛苺「駄目なの!一人で食べるご馳走はおいしくないの…金糸雀がお腹いっぱいならみっちゃんが悲しむの…」

真紅「雛苺…昔を思い出したのね…」

76: 2008/10/13(月) 22:16:19.58 ID:/IZZA0M80
金糸雀「…ま、まあのりのオムライスもうまそうだけどみっちゃんの玉子焼きには負けるのかしら!」

のり「うふふふ、そうねえ」

翠星石「おのろけはその辺にしとくです。金糸雀もそろそろ帰ってみつをお出迎えしてやるですぅ」

ジュン「まあ、無いと思うけどみつさんが家にいなかったらまたうちに来れば良いさ」

金糸雀「そ、そうかしら!それじゃみんな御機嫌ようかしら」

78: 2008/10/13(月) 22:21:39.89 ID:/IZZA0M80
連絡が無いってことはみっちゃんが家でいろいろカナを驚かせる準備をしてる頃かしら!
胸に抑えきれないワクワクを、必氏に抑えながらカナは家路に着いた





79: 2008/10/13(月) 22:25:34.35 ID:/IZZA0M80
みつ「あ~今日も残業よぉ~…そういえば…あっカナ!?」

ジュ、ジュンジュンに連絡しなきゃ…
私はカナのことをジュンジュンに連絡しようとしたがすでに連絡していた事を思い出しホっと胸を撫で下ろした

みつ「そういえば今日の朝電話してたんだよね~てへっ、私ったら…」

だが、ジュンが承諾していたのは昼食のことであった

80: 2008/10/13(月) 22:29:52.43 ID:/IZZA0M80
真っ暗かしら…
急いで帰ってきた部屋には人の気配は無く、みっちゃんの姿はどこにも無かった

金糸雀「うっ…うっ…今日はみっちゃんとの…出会い記念日…みっちゃん…みっちゃん…カナ、カナ、我慢してきたけど…
    もう泣いちゃうかしら…うわぁぁーーーーーーん」

両目から止め処もなく涙が流れてくる…わかってる、みっちゃんは今大変な時…でも、でも…

84: 2008/10/13(月) 22:35:26.41 ID:/IZZA0M80
グゥー
お腹も泣いた。フフ…お腹は正直かしら
ちょっと元気になったような気がして涙をゴシゴシ拭った

金糸雀「そういえばさっきジュンが…」

※※ジュン「まあ、無いと思うけどみつさんが家にいなかったらまたうちに来れば良いさ」※※

金糸雀「そうかしら!真紅達が寂しがってるからカナがオムライスを一緒に食べにいってあげるかしら!」

真っ暗な夜は怖いけどオムライスのことを考えたら元気が沸いてきたかしら!
カナは夜の大空へ自慢の傘を広げ、真紅達の家に向かって飛び立った

86: 2008/10/13(月) 22:41:07.76 ID:/IZZA0M80
カナはジュンの家の庭に降り立ち、どう真紅達を驚かせてやろうかと思案し始めた
ひとまず様子を見るためにリビングが見える位置でこっそり中を伺うことにした

金糸雀「ただ入るだけじゃ面白くないかしら。どんな方法で驚かせてあげようかしら~ウフフ」



88: 2008/10/13(月) 22:45:10.04 ID:/IZZA0M80
桜田家のリビングでは家族の団欒中であった。

真紅「そういえばジュン、私達との出会いの日はちゃんと覚えているかしら?」

ジュン「あぁ?呪い人形に襲われた日なんて早々忘れられるかよ…」

真紅「まあ、ちゃんと覚えているの。一応下僕としての心構えは出来ているみたいね」

ジュン「だれが下僕だ!誰が!」

のり「うふふ、それじゃ来週は翠星石ちゃんがうちにきてくれた日だから翠星石ちゃんと出会った記念日をやりましょうか」

翠星石「本当ですか!っていうか覚えてくれてたんですぅ?」

のり「忘れるわけ無いじゃない。翠星石ちゃん達は私達の大切な家族なんだから」

雛苺「雛もー雛もなのー!」

のり「わかってるわよ、うふふ。もちろん真紅ちゃんもね。みんな食べたいものを考えておいてね」

ジュン「まったく…」

真紅「あなたはいい家族を持ったわね、ジュン。私は本当に幸せなお人形だわ…」


金糸雀「…」

カナは何も言わずその場を立ち去った。そして誰もいないみつの部屋で就寝についた

162: 2008/10/14(火) 17:12:18.80 ID:bpPsuWq60
みつ「あぁ~やぁーっと終わったあ…今日も遅くなっちゃったなあ…もうカナも寝ちゃった頃かな?」
私は身支度を整えると駆け足で駅に向かった。

みつ「こんばんわ~」
ジュンジュンの家のインターフォンを押しジュンジュン達が出てくるのを待った

のり「あれ? みっちゃんさんどうしたんですか」

みつ「遅くなってごめんね~カナを迎えにきたの」

のり「え? でも金糸雀ちゃんって今日は…」

ジュン「みっちゃんさんと出会い記念日をやるって…」

164: 2008/10/14(火) 17:15:14.31 ID:bpPsuWq60
みつ「え…?」
胸がキュっと締め付けられる思いがした。私ったらこんな大事な事を忘れていたなんて…
疲れ…いやあまりのショックに鞄を落とし立てひざをついていた

のり「み、みっちゃんさん大丈夫ですか!?」

ジュン「とりあえず中に…」

みつ「い、いえ大丈夫…それでカナは、カナは…」

ジュン「…多分みっちゃんさんの自宅じゃないかな」

みつ「そう、ゴメンネ…また後日改めてお礼にくるから」

のり「あっ…」

165: 2008/10/14(火) 17:19:00.51 ID:bpPsuWq60
鞄を放りだしたまま外に飛び出し道路を塞ぐ形でタクシーを捕まえた
早く、早く帰らなきゃ

キキー
タクシー「危ないじゃないか!」

みつ「すいません、乗せてください!住所は※※※※※※※※」

タクシー「たくぅ…今度はちゃんと手を上げて捕まえてくださいね」

カナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナ…頭の中はカナのことでいっぱいになった

166: 2008/10/14(火) 17:21:00.94 ID:bpPsuWq60
みつ「カナァーーーーーーーーーーー!」
私は部屋に飛び込むと急いでカナの鞄を確認した。

居た…鞄の中には小さな天使がスースーと寝息を立てて眠っていた。
その顔には涙の後と鞄のシーツは涙で濡れた跡でいっぱいであった

眠ったカナを静かに抱きかかえて声を頃して泣いた

みつ「ごめんね…ごめんね……カナ…」

168: 2008/10/14(火) 17:23:46.11 ID:bpPsuWq60



みつ「おはようーーーーーーカナー!」

金糸雀「お、おはようかしら、みっちゃん…顔がすごいぐしゃぐしゃかしら…」

みつ「あははーそお? でもカナだって同じよぉ」
どうやら泣き疲れて寝てしまったらしい。今日も仕事だったけど休みを貰って一日カナと過ごすことにした。
上司が気を利かせてくれたらしく給料の口座には二か月分の給料が振り込まれていた。これなら賃貸の振込みも無事行える

みつ「今日は私達の夢の城を見にいこっか! …そして一日遅れだけど私達の出会い記念日をやろうね!」

金糸雀「! み、みっちゃん…」

カナはまた顔をぐしゃぐしゃにして私に飛びついてきた

170: 2008/10/14(火) 17:26:16.33 ID:bpPsuWq60
みつ「ごめんね…カナ」

金糸雀「いいのかしら! いいのかしら! みっちゃんが覚えててくれただけでいいのかしら…」

私達は抱き合ったまま大声で泣きあった

172: 2008/10/14(火) 17:29:38.57 ID:bpPsuWq60
金糸雀「みっちゃーん、早く、早くぅ!」

みつ「はいはーい。よし!これで振込み終了っと」
銀行のATMで80万円の入金を行う。うぅ~こんな大金扱うの久々だから緊張したなあ…
カナはバケットの中から嬉しそうな声をあげてせかしてくる。

みつ「さ、我らが夢の城へ出ー発!」

金糸雀「おー!」

173: 2008/10/14(火) 17:31:29.47 ID:bpPsuWq60
今日は不動産屋に電話してあらかじめマンションの部屋の鍵を開けてもらう約束をしたのだ
時間は不定期って言っておいたから不動産屋を通さなくても私達だけで中を見学できるってこと

みつ「今日はカナも外に出て一緒に部屋を見れるからね!」

金糸雀「カナの部屋楽しみかしらー!」

ガチャガチャ
みつ「あ、あれ? おかしいな」
開いているはずの鍵が開いていない…まだ不動産屋が来てなかったのかなあ?

174: 2008/10/14(火) 17:34:06.55 ID:bpPsuWq60
ガチャガチャ
みつ「あ、あれ? おかしいな」
開いているはずの鍵が開いていない…まだ不動産屋が来てなかったのかなあ?

※※※「ちょっとあんた達何やってるんだ?」

みつ「え? あ…あぁ今度この部屋に越してくる草笛という者です。入居は来月からなんですが部屋の下見をしようと思って…」

※※※「そんな話は聞いてないなあ…」

みつ「は?」

※※※「私はここの管理人なんだが、まだその部屋の入居が決まったなんて話は聞いてないよ」

みつ「え?え?え?」

管理人「ちょっと管理人室まで来てくれないか? あんたを疑ってる訳じゃないんだが、最近ここいらも物騒でね。
    先月もその部屋の鍵が開けられていたんだ…」

みつ「…」

金糸雀「(みっちゃん…)」
管理人に聞こえないようにカナが小声で心配そうに呟いている

みつ「(大丈夫よ、カナ…きっとなにかの間違いだよ)」
私も小声でカナに相槌をかえした。そうよ、きっと大丈夫よ…何かの手違いに違いないわ…

176: 2008/10/14(火) 17:35:22.63 ID:bpPsuWq60
ごめん、重複してる部分がでちゃった…
>>174

ガチャガチャ
みつ「あ、あれ? おかしいな」
開いているはずの鍵が開いていない…まだ不動産屋が来てなかったのかなあ?

は無しで

177: 2008/10/14(火) 17:38:39.86 ID:bpPsuWq60
結果…私は新手の不動産詐欺にひっかかってしまったらしい…
この手の事件でお金が戻ってくる事はほとんど無いらしい…あはは、馬鹿だよねえ…あんなに一生賢明頑張ってきたのに…
警察の事情聴取から解放された私はしばらく状況が分からずカナが呼ぶ声にも気づかなかった

「み…ちゃん」

「みっちゃん!」

みつ「あ…あぁ、何?カナ」

金糸雀「みっちゃんのお金は…」

あ~全部聞かれてしまったんだ…ホント私って馬鹿!馬鹿!馬鹿!
カナにまた余計な心配を…

みつ「大丈夫よ、カナ。み~んな警察の人に任せれば大丈夫なんだから!」
ここでまたカナに迷惑をかけちゃいけない。私は気力を振り絞るように精一杯カナの前で強がって見せた。

181: 2008/10/14(火) 17:41:34.35 ID:bpPsuWq60
みつ「そうだ! これから遊園地にいこっか! 今日はカナとの大事な記念日なんだもんね!」

金糸雀「…カナ、行きたくないかしら…」

みつ「え…?」
カナは全てが理解できなくても今の私の状況を察したらしい…

みつ「じゃ、じゃあレストランでご飯食べましょ…ね、いいでしょ?」
今の私ってとても痛々しいんだろうなあ…カナは渋々承諾してくれたけど顔が引きつっていたもの…

182: 2008/10/14(火) 17:44:43.27 ID:bpPsuWq60


家路に着くまで必氏に気丈を装っていたけど、どうしようこれから…
もうここのマンションも引き払わなきゃいけないし継続しようにもお金が無い…はは…、ホームレスOLかなあ…

金糸雀「…」


185: 2008/10/14(火) 17:47:35.48 ID:bpPsuWq60


金糸雀「…という訳で真紅達にも協力して欲しいかしらー!」
みっちゃんを助けるために策を練らなきゃいけない!だってみっちゃんはカナのマスターだから

翠星石「デカ人間もえらい目にあったですね…」

雛苺「うゆー…みっちゃんかわいそうなの…」

ジュン「でも僕達が何をすればいいんだ?犯人を捕まえるなんて出来そうにないし」

金糸雀「ふっふっふ…そこは抜かりは無いかしら…」

金糸雀「ジャーーーーン!」
カナは懐からかわいいフリフリのついたドレスを取り出して真紅達に見せ付けた

金糸雀「ジュンとカナ達がこの服をいっぱい作ってパソコンのおーくしょんとかいう所で売ればみっちゃんのお金くらいすぐ取り戻せるかしら!」

188: 2008/10/14(火) 17:50:28.57 ID:bpPsuWq60
真紅「金糸雀!それは…」
ジュンが真紅の言葉を遮って言った。

ジュン「それはいい考えだな」

真紅「ジュン…あなたは今学校に戻るための勉強をして大事な時期なのよ!」

ジュン「いや、いいんだ真紅…みっちゃんさんには…僕の…心を救ってもらった事もあるし」

真紅「…でもお金で恩を返すなんて…」

金糸雀「さすがは真紅のマスターかしら!頼りにしてるかしら!」

翠星石「とりあえず新しい家のお金が貯まるまではこの家に住めばいいですよ」

雛苺「わーい!みっちゃんや金糸雀と一緒なのー!」

193: 2008/10/14(火) 17:56:21.13 ID:bpPsuWq60
みつ「はぁ…警察に通うのも疲れるのねぇ…さぁ、ジュンジュン家にカナを迎えに行かなきゃ…」

事件後警察と自宅の往復、それに仕事と私の心は疲れきっていた…
仕事をしばらく休もうかとも思ったんだけど、今までいろいろよくしてもらった手前
休む訳にもいかないしなによりお金を稼がなきゃいけない。
でもカナの笑顔さえあればまだまだ頑張れるよね!

みつ「こんばんわー」

雛苺「みっちゃんが来たのー!」

金糸雀「みっちゃーん!」
カナは飛びつくように私に抱きついてきた

みつ「あははは、カナぁ!」

ジュン「思ったよりも元気そうでよかったな」

真紅「ええ…もっと参っているかと思ったんだけど、あの子の笑顔にみつは救われているみたいね」

194: 2008/10/14(火) 17:59:21.25 ID:bpPsuWq60
金糸雀「みっちゃん!カナがいい事を考えたかしら!」

みつ「ん、なあにぃ?」

金糸雀「かくかくしかじかこれこれ…という訳かしらー!」
カナはジュン達との共同作業と仮住まいさせてもらうことを話した。

みつ「…」


みつ「カナ…悪いけど、それは出来ないわ…」

金糸雀「えーーーー!?どうしてかしら!みっちゃんはカナの考えが気に入らないのかしら…」

みつ「もう…ジュンジュンには十分助けて貰ってるし、それにジュンジュ……ジュン君の将来にとって今はとても大切な時期なのよ…」
私は知っている。ジュンジュンが復学のための勉強を始めている事…そして彼の将来に光明が差し始めたことを

197: 2008/10/14(火) 18:03:03.36 ID:bpPsuWq60
ジュン「みっちゃんさん、僕は別に…」

みつ「ジュンジュンは黙ってて!」

金糸雀「なんで!なんで!なんで!カナは!カナは!みっちゃんのためを思って…!」

雛苺「金糸雀…」

金糸雀「ジュンがいいって言ってるからいいじゃない!このままじゃみっちゃんの将来だって…カナとの生活だって!」

みつ「カナ!」
パン!
咄嗟的に手が出てしまった。頬をぶたれたカナは信じられないといった感じでこちらを見ている…

金糸雀「あっ…あっ…」
そしてカナは踵をかえして二階へ駆け出していった。両目に大粒の涙をためながら

ジュン「僕そんなつもりじゃ…」

真紅「ジュン…時にはやさしさが人を傷つける事だってあるのよ…」

みつ「…ごめんなさい、こんなことになって。…厚かましいけどひとつお願いがあるの…」

198: 2008/10/14(火) 18:06:22.42 ID:bpPsuWq60


金糸雀「うっ…、うっ…みっちゃん酷いかしら…」
二階に駆け上がったカナは階段の傍で、こぼれる涙を袖でごしごし拭っていた

階下から声が聞こえる…みっちゃんはまだジュン達と話をしているようだ

みつ「…でね…しばらく………だから………」

ジュン「…それは………ぜんぜん………」
声が遠くてよく聞こえない…話の内容を知るために聞き耳を立てて様子を伺った


みつ「……もう……カナと…………一緒に暮らせないの……」


金糸雀「!?…そ、そんな…」
話の前後は分からなかったがその部分だけははっきりと聞き取れた…
そして赤く潤んだ瞳からは再び大粒の涙が流れ始めた

199: 2008/10/14(火) 18:07:46.80 ID:bpPsuWq60
ジュン「わかりました。しばらく金糸雀をお預かりすればいいんですね」

みつ「ごめんね…ジュンジュン。友達の所を渡りあるくのにあの子の正体を隠し続けるのは大変そうで…」

翠星石「デカ人間も一緒にくればいいですのに…」

みつ「そこまで甘えるわけにはいかないもの…また元の生活に戻れるようになればうちにも遊びにきてね」

翠星石「いいですよ!妹の蒼星石も一緒につれていってやるですよ!」

みつ「あはは、ありがとう、じゃ…これで…」

真紅「待ちなさい!このままじゃ後味が悪いだろうしちゃんと仲直りしてから行くのだわ」

みつ「そう…ね」

雛苺「雛が金糸雀を呼んでくるのー!」
そういうと雛苺は元気に二階に駆け出していった

200: 2008/10/14(火) 18:08:24.59 ID:bpPsuWq60
みつ「いろいろとありがとう。本当にジュンジュン達にはお世話になるわね。そうだ!よかったら今度勉強でもみてあげるわ」

翠星石「えー!デカ人間が勉強を教えられるですか?」

みつ「言ったなぁー、これでもいいとこの大学は出てるんだから!」

ジュン「へぇ~じゃあ凄い頼りにしてますよ。」

みつ「うっ…、でも結構時間経っちゃったからなあ…思い出すのに時間がかかるかも…あはは」

ジュン「あはははは」

真紅「うふふ」

翠星石「ふふふふ」

みつ達の和やかな談笑は雛苺の一声によって掻き消された

雛苺「ジューーーーーーーーーン!! 金糸雀がどこにもいないの!!」

208: 2008/10/14(火) 18:32:16.44 ID:bpPsuWq60


ここはnのフィールド…廃墟となった町の真ん中で
ウサギの被り物をしているような男と翼の生えた銀髪の少女が対峙していた

水銀燈「その話…本当なのぉ…」

ラプラスの魔「ええ…私が今までに嘘を言った事でも?」

水銀燈「ちっ…」
水銀燈は舌打ちをしラプラスの魔を睨みつけた

水銀燈「アリスゲームは続けるわ…いや続けさせるわ!」

ラプラスの魔「そうですか、でも眠りの時は刻一刻と迫っています。どうかお早いご決断を ククク…」
ラプラスの魔は口元にいやらしい笑みを浮かべて廃墟の中へ溶け込んでいった…

水銀燈「この時代のアリスゲームの凍結なんて許さない!まだ私は眠りにつくわけにはいかないのよ、まだ…」
漆黒の翼を羽ばたかせ水銀燈はnのフィールドから飛び立っていった

209: 2008/10/14(火) 18:35:49.74 ID:bpPsuWq60




みつ「かな…かなかなかな…」

雛苺「みっちゃん…それは枕なの…」

のり「いいのよ…雛苺ちゃん…」

金糸雀が姿を消してから一ヶ月…みつはストレスからか病床に伏してしまい最近では金糸雀の幻影まで見るようになっていた

蒼星石「こんにちは」

のり「あら、蒼星石ちゃん」

翠星石「蒼星石、ちょっと一緒にくるです」
翠星石は蒼星石の手を引いて病室から出て行った

211: 2008/10/14(火) 18:40:28.15 ID:bpPsuWq60
翠星石「どうです…金糸雀の行方の手がかりでも掴めたですか?」

蒼星石「駄目だよ翠星石…どこにも金糸雀の気配を感じる事が出来ない…」

翠星石「そうですか…チビ人間と真紅も毎日のように探しに出てるけどこれっぽっちも情報が掴めねーですよ…」

蒼星石「一体どこへ…うっ…!?」
蒼星石は翠星石の背後に黒い羽根が舞い落ちるのを見て背筋に冷たいものが走った

翠星石「どうしたですか?急に険しい顔をして…?」

蒼星石「…病室に戻っててくれないかな翠星石、僕ちょっと用事を思い出しちゃって」

翠星石「…? 変な蒼星石です。まあいいです。ちゃんと後からみつに会いにくるですよ」

蒼星石「…うん、分かったよ」
翠星石が病室に戻るのを確認すると蒼星石は人工精霊を呼び出し戦闘体勢に入った

212: 2008/10/14(火) 18:44:09.56 ID:bpPsuWq60
蒼星石「こんな所でやるつもりかい……水銀燈」
黒い羽根が廊下の上部から舞い落ちて水銀燈が姿を現した

水銀燈「あらぁ…ここじゃあなた達の方が招かれざる来訪者なのよぉ」
水銀燈は自分のテリトリーを犯されたといわんばかりに威圧的な敵意を発してくる

蒼星石「…? 何を言っているか分からないよ…」
会話で気をそらせつつ蒼星石は自分の射程距離に間合いを詰めていく

水銀燈「まぁいいわぁ…私もあなたに用があった事だし」

蒼星石「用だって?僕は君に用は無いよ」

水銀燈「金糸雀の事といったら…?」

蒼星石「!?」

水銀燈「うふふ…どう?話を聞いてみない」

蒼星石「……分かったよ」

水銀燈「じゃあ交渉の場に向かいましょうか」
そして二人はnのフィールドへ入っていった

216: 2008/10/14(火) 19:09:08.54 ID:bpPsuWq60


蒼星石「で、金糸雀の事って一体なんだい?」
目の前の水銀燈の一挙一動を観察するように蒼星石は緑と赤のオッドアイを細めて言った

水銀燈「時間が無いの、簡単に言うわぁ。金糸雀はこの時代のアリスゲームを放棄し眠りにつこうとしている」

蒼星石「なんだって!?」

水銀燈「私はね、まだこの時代に留まらなきゃいけないの。あの子の気まぐれで眠りにつかされるなんて真っ平だわぁ」
水銀燈は両手で大きく被りを振ってオーバーなアクションをする

水銀燈「だからね…二人であの子のローザミスティカを頂こうじゃないの」

蒼星石「断る!そんなつまらない冗談聞きたくも無い!」

水銀燈「一考の余地も無しなのぉ…?いいからよく聞きなさいこの時代で眠りにつくということは
    翠星石達とそのマスターが永遠に別れるということなのよぉ…」

蒼星石「……その前に僕が金糸雀を説得して眠りを思い留まらせてみるさ」

水銀燈「そう…いいわぁ、だったら付いてきなさい。あの子に会わせてあげるから」
そう言うと水銀燈は手招きをしてnのフィールドの深部へ潜って行った

218: 2008/10/14(火) 19:15:59.32 ID:bpPsuWq60



蒼星石「ここは…?あの建物は…」

廃墟となった日本の町並みが並んでいる。その中央部には他の破壊された建物とは違い綺麗な建築物が建っていた。

水銀燈「そう…あなたの察し通りあの中央の建物…人間が、まんしょんって呼ぶ建物ね、そこにあの子がいるわ」

蒼星石「あそこに金糸雀が…」

二人は金糸雀がいると思われる部屋の前に立った
蒼星石はドアノブに手をかけた…びくともしない

水銀燈「これはあの子の心の扉…私達がいくら開こうとしても無駄な事よ」

蒼星石「君と一緒にしないでくれ……金糸雀! 開けてよ、僕だよ、蒼星石だよ」
だが蒼星石の前の扉は沈黙を保ったままだった。

219: 2008/10/14(火) 19:23:27.11 ID:bpPsuWq60




水銀燈「くっ…」
蒼星石「うっ…」
水銀燈と蒼星石の意識が一瞬途切れた…眠りの周期だ。今はまだ金糸雀が浅い眠りだけど、これが深い眠りになってしまうと
他のドール達は強制的な眠りについてしまう…

水銀燈「ほらぁ! 早くしなさい! もう時間が無いのよ!! あなたのその鋏はただの飾りなのぉ!?」

蒼星石「…だったら君の自慢の翼でも使ったらどうだい!」

水銀燈「今はあなたと言い争ってる時間は無いの! 強制的に心を削ぎ落とせる鋏なら心の扉なんてどうにでもなるでしょ!!」

水銀燈「くあぁああぁっあぁ…」
蒼星石「うっうっぐぅううぅ…」
まずい…もう深い眠りは目の前に…

蒼星石「ごめん…金糸雀…」
大きな鋏を振りかざし扉を縦一文字に切り裂いた

220: 2008/10/14(火) 19:29:47.73 ID:bpPsuWq60


金糸雀「っぅああああああああああああ!!」
まんしょんの最深部で金糸雀は呻いた…誰かが心の扉を破った…

金糸雀「もう…止めて…カナの心に入ってこないで…そっと…このまま…」


223: 2008/10/14(火) 19:35:42.24 ID:bpPsuWq60


水銀燈「まどろっこしい事は止めて強行突破させてもらうわぁ」

蒼星石「何を!水銀燈!?」

水銀燈は大きく翼を羽ばたかせるとそこらじゅうの部屋や壁に向かって羽根を乱射し始めた

水銀燈「あはははははは!心の扉さえ開けばこっちのものよ! 蒼星石! あなたはそこで指をくわえて待ってなさぁい」

蒼星石「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」

224: 2008/10/14(火) 19:41:11.46 ID:bpPsuWq60


金糸雀「あああああああああああああああ!!」
誰?誰?誰が一体カナの心を土足で踏みにじってるの! これは水銀燈と…蒼星石!?


226: 2008/10/14(火) 19:47:17.64 ID:bpPsuWq60



蒼星石「やぁあああ!」
蒼星石は鋏を振るって水銀燈に突っ込んでいった

ガキィイン
水銀燈はとっさにかわし、鋏は背後の壁に突き刺さった

水銀燈「何よ!? 鋏を振るう相手が違うんじゃない! これはあなたの望んだ事でしょう!」

蒼星石「だからって! こんな方法は!」

水銀燈「結果さえよければ方法なんて……どうだっていいのよぉおおおおおお!」

228: 2008/10/14(火) 19:55:17.08 ID:bpPsuWq60


金糸雀「痛っ…これは蒼星石の鋏……ふふ…そうなの…もう姉妹からも必要とされてないかしら…」

だったら…

みんなが大好きな…

ア リ ス ゲ ー ム を 始 め て あ げ る か し ら


232: 2008/10/14(火) 20:01:32.89 ID:bpPsuWq60


突如部屋の中を旋風が舞った

蒼星石「これは…!?」

水銀燈「ふん…ようやく目を覚ましたみたいね…」

瓦礫の山からバイオリンを携えた金糸雀が姿を現した

金糸雀「あなた達に聞かせてあげるかしら……葬送曲を!」


235: 2008/10/14(火) 20:07:07.33 ID:bpPsuWq60


真紅「うっ…」
翠星石「あぅ…」

ジュン「おい、どうした!?」

真紅「これは…」

翠星石「…えぇ、眠りの周期ですね…」

ジュン「なんだ?眠りの周期って」

238: 2008/10/14(火) 20:12:54.04 ID:bpPsuWq60


翠星石「…という訳ですよ」

ジュン「そうか…じゃ、その眠りの周期に入ってるのは金糸雀で間違いないな」

真紅「えぇ…おそらくは」

翠星石「行くですよ…nのフィールドへ、金糸雀の元へ…」

雛苺「ジュン…」

ジュン「必ず金糸雀を連れ戻してくるから雛苺はここでみっちゃんさんを守ってくれ」

雛苺「きっと、きっと戻ってきてね…もう…お別れはいやなの…」

真紅「大丈夫よ雛苺、あなたの姉とジュンを信じなさい」

239: 2008/10/14(火) 20:18:19.79 ID:bpPsuWq60


金糸雀「あはははははは~! 楽しいかしら~!」
金糸雀はバイオリンから次々と衝撃波や雷撃などを蒼星石に向かって繰り出した

スレスレのところでかわす水銀燈と蒼星石は防御に精一杯でとても攻撃に気を回す余裕が無いようだ
水銀燈「ちょっとぉ! 何よこれ! あの子がこんなに強いなんて…!?」

蒼星石「……これは…間違いない…ミーディアムの生命力を…命を危険に晒す力だ!」

金糸雀「ほらほら~! どうしたのかしら! 防戦一方じゃカナのローザミスティカに指一本触れる事は出来ないかしら!」

蒼星石「待って! 僕は戦いに来たんじゃないんだ! 話を…話を聞いて!」
蒼星石の言葉を聞いて金糸雀の動きが止まる

金糸雀「……」

蒼星石「金糸雀…?」

金糸雀「……よく言うかしら…話をする前にカナの心に刃を突き立てておいて……」

蒼星石「あ、あれは違うんだ!」

金糸雀「何が違うのかしら……」
再び蒼星達に向かって衝撃波を浴びせかけた

蒼星石「うわぁああああーーーーーーー」

水銀燈「きゃぁああああーーーーーーー」

242: 2008/10/14(火) 20:25:15.12 ID:bpPsuWq60


みつ「熱ッ……これは…カナの指輪が…」
みつの指にはめられた薔薇の指輪が真っ赤に発光している。
薔薇の光と比例するように急激に体の力が抜けていく…

みつ「っあああああああああああああああああ」

雛苺「みっちゃん!? しっかりするの! もうすぐ金糸雀が戻ってくるの!」

みつ「……カナ? そうね…カナがこっちに来いって言っているのね…」

雛苺「うゆ……何を言っているの…?」

みつ「うふふふ……今行くわね…カナ」
みつはベッドから体を起こすと、ふらついた体のまま屋上への階段を昇った…


243: 2008/10/14(火) 20:30:57.55 ID:bpPsuWq60


水銀燈「……」
蒼星石「……くっ…う…」
水銀灯はもう言葉も発する事が出来ないようだ…

金糸雀「はぁ…もう終わりかしら? 弱すぎてちぃ~っとも楽しめないかしら」

蒼星石「……もう止めるんだ…金糸雀…君のその力は…確実にミーディアムの…みっちゃんさんの命を…削っている…」

金糸雀「みっちゃん……」


244: 2008/10/14(火) 20:36:35.87 ID:bpPsuWq60


みつ「今行くわね……カナ…」
おぼつかない足取りで階段を一段一段昇っていく

雛苺「うゆぅうううー駄目なのー、病人はおとなしく寝てなきゃいけないの~」
雛苺の小柄な体では足止めにもならず、ずるずるとみつに引きずられていく


247: 2008/10/14(火) 20:42:26.39 ID:bpPsuWq60


水銀燈「今よ!」
水銀燈は金糸雀の隙をうかがって息を潜めて待っていたようだ
金糸雀の後ろから覆いかぶさる形でバイオリンを演奏する腕を封じた

金糸雀「くぅ……!」

水銀燈「さあ! 蒼星石! その鋏で金糸雀の首をはねなさい!」

蒼星石「そ、そんな……僕には…でき……ない…」

水銀燈「あなたには…妹の……翠星石の…幸せを…手に掴める位置まで来ているのよ!
    さあ、早く…手を伸ばして翠星石の幸せを掴み取りなさい…本当に翠星石を愛しているなら!」

蒼星石「翠……翠星…石…」
蒼星石はぼろぼろの体に渇をいれ、鋏を杖にして一歩一歩、金糸雀に向かっていく

蒼星石「ごめんね……金糸雀…本当にごめんね……」

大粒の涙を流しながら…謝りながら自分に向かってくる蒼星石を見て金糸雀はみっちゃんの事を思い出していた

※※※みつ「ごめんね…ごめんね……カナ…」※※※

金糸雀は涙を流して呟いた…「みっちゃん……」

蒼星石「金糸雀……?」


248: 2008/10/14(火) 20:47:11.27 ID:bpPsuWq60


みつ「今いくよ……カナ……」
病院の屋上から身を乗り出し今にも飛び降りそうなみつ

雛苺「うゆううううう…駄目なのぉおおおおおおおおおー」
必氏でみつを繋ぎとめるが非力な力では如何ともし難かった…

みつ「この先に……カナがいる……」

そして…みつは病院の屋上から身を投げた…


252: 2008/10/14(火) 20:52:48.98 ID:bpPsuWq60


nのフィールドの上空から二体のドールが舞い降りた

翠星石「ちょぉ~~~っと待つですぅ!」

蒼星石「翠…星…石…?」

真紅「金糸雀を離しなさい!水銀燈!」

水銀燈「真…紅…?」

真紅「早くnのフィールドから出るのよ! みつが危ないのよ!」

金糸雀「…み…つ……みっちゃんが!?」


253: 2008/10/14(火) 20:58:58.98 ID:bpPsuWq60


雛苺「う…うゆぅううううう……」
雛苺は苺わだちでみつの体を絡めとりながら必氏に落下するのを堪えていた

ブチブチブチ
大人の体重を支えるには非力な苺わだちが次々に千切れていく

そして最後の苺わだちが千切れた…



ジュン「雛苺!」
ジュンは間一髪のところでみつと雛苺の手を取った!

雛苺「ジューーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!」


254: 2008/10/14(火) 21:01:50.27 ID:bpPsuWq60
ジュン「指輪でお前達の考えている事はなんとなく分かるしな、途中で引き返してきたんだ」

雛苺「ジューーーーン!! 大好きなのーーーー!!」

ジュン「お、おい暴れるな……でも、このままじゃ……」


みつ「あっ…、あっ…カナが…カナが…」
氏の間際の幻だろうか?私の前にカナがいる…
大きな目に大粒の涙をためながら私の名前を呼んでくれている…

金糸雀「みっちゃぁーーーーーーん!」



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257: 2008/10/14(火) 21:12:41.23 ID:bpPsuWq60
パーン!
翠星石は蒼星石の頬を張った
翠星石「ホント!無茶な妹ですね!なんでおねーちゃんに言わねーですか!」

蒼星石「で、でも金糸雀が眠りについたら僕達もこの時代にいられなくなるんだよ…ジュン君達ともう会えなくなっちゃうんだよ!」

翠星石「誰がそんな事を頼んだですか!」

蒼星石「!?」

真紅「蒼星石…あなたが翠星石のことを思って今回の行動に出た事はよくわかるわ、でも」
   どんなに信頼し合っても言葉をぶつけ合うことは大事なことよ。たとえ姉妹でも双子でも、
   そして薔薇の指輪を通していたって言葉にしなきゃ伝わらない事もあるもの」

蒼星石「……」

翠星石「翠星石もジュンや真紅達とお別れするなんて嫌ですよ…でも金糸雀を犠牲にしてまで自分の幸せを守ろうなんて思わないですよ!
    そんなことジュン達は望まないし、なにより離れ離れになったって一時でも心を通い合わせたあの日を忘れる事はねーです
    ジュンや真紅、チビ苺、金糸雀…そして蒼星石との絆は遠くにいたって時代が違ったって決して切れる事は無いですよ…」

蒼星石「翠星石…君は僕が思っていたよりとても強いんだね……」



そしてドール達はそれぞれの家路についた


259: 2008/10/14(火) 21:16:23.64 ID:bpPsuWq60


蒼星石「あ…雪…」

翠星石「まぁ~だ、こんなところにいたですか」

蒼星石「翠星石…」

翠星石「さ、一緒に寝るですよ」

蒼星石「え…?」

翠星石「今夜は特別に一緒に寝てあげるです。翠星石はまだ蒼星石とたーくさんお話しなきゃならねーですからね」

蒼星石「ふふ…そうだね。僕は君の事を全部分かっていたつもりだけどまだまだ言葉を交わす必要があるんだね」

翠星石「どれだけ話したって全てわかり合うなんて無理です。だってみんな毎日少しずつ変わっていくのですから」
    だからこそたくさんたくさんお話を重ねて分かり合っていく必要があるですよ」

翠星石「ささ…分かったらもっと近くに寄るですよ」

蒼星石「あったかいね翠星石…」

翠星石「あったかいです…蒼星石」


260: 2008/10/14(火) 21:17:07.16 ID:bpPsuWq60
病院の一室で一緒の布団には入る水銀燈とめぐ

めぐ「水銀燈あたたかいわ」

水銀燈「馬鹿じゃないのぉ…まったくぅ」

めぐ「ううん…体じゃなくて心がね。今一人じゃないって実感できるもの…」

水銀燈「なっ…」
水銀燈は赤くなった顔を見せまいとめぐから顔を逸らすように背を向けた

めぐ「ふふ…」

めぐはそのまま背から手を回して水銀燈の胸の前で手を組んだ

めぐ「あったかいね水銀燈」

水銀燈「…」

261: 2008/10/14(火) 21:18:00.92 ID:bpPsuWq60

桜田家に用意された客間で一緒に布団を並べるみつと金糸雀

みつ「ごめんね…カナ 本当はカナだけの部屋を用意してあげられたのに…」

金糸雀「ううん…みっちゃんと同じ部屋でよかったかしら、だってこうやって一緒にいられるから…」

みつ「あったかいね、カナ」

金糸雀「あったかいかしら…みっちゃん」

263: 2008/10/14(火) 21:19:31.95 ID:bpPsuWq60
真紅はもぞもぞとジュンの布団に潜り込んできた

ジュン「他の姉妹がいないから寂しいってお前も子供だな」

真紅「あら?嫌々ながらもちゃんと受け入れてくれるのね」

ジュン「ふんっ…」

真紅「あたたかいわ…ジュン。私本当にあなたのお人形でよかった…今とても幸せよ…」



雛苺「ジュン…のり…トモエー…」

のり「うふふ、おやすみなさい私の大切な家族…」


                              END

266: 2008/10/14(火) 21:23:31.49 ID:uLMs7xP10


キャラの崩れがなくて面白かった

268: 2008/10/14(火) 21:24:00.16 ID:HuCWuSToO
乙カレー(゚Д゚)

引用: 金糸雀「す、すごく大きいかしらー」