121: 2008/11/27(木) 22:32:59 ID:2lvOsBba
ネウロイの襲来。前回の出現から実に九日ぶりだ。
久々の警報が基地中に鳴り響き、すぐさまブリーフィングが開始される。緊張の面持ちで望む隊員達。
「敵、グリッド東09地域に侵入。監視所からの報告によると、今回は高度が相当低いわ」
「奴等もようやく出てきたか……しかし、相変わらず奴等の出撃サイクルにはブレが多いな」
「ええ。そこで今回はフォーメーションを変更します。少佐」
「バルクホルンはペリーヌと、ミーナはリーネとペアを組め。宮藤は私の直衛だ」
「了解」
「残りの人は基地で待機です。油断せず、いつでも出撃できる様準備を」
「了解!」
「よし、すぐに出撃だ! 急げ!」
慌ただしく準備を済ませるとストライカーのアイドリングもそこそこに、第一陣が空へと躍り出た。
会敵ポイントへと急ぎながら、美緒はミーナと会話した。
「先日のネウロイの出現ラッシュは幾らか収まった様だが……ミーナ、今回のネウロイ、どう思う?」
「ネウロイについては分からない事がまだまだ多いわ。今回の敵もどんな事をしてくるか……」
「私もそこが気になる。しかし、何が出て来ても、やるしかないな」
「ええ。いつでも覚悟は出来ているわ」
「頼もしいな。それでこそ我々ウィッチーズの隊長だ」
小さく微笑みを美緒にだけ向けると、すぐに前方に注意を向けた。
美緒も眼帯をめくり、魔眼でネウロイの位置を探す。
見つけた。
距離およそ2500、楕円形のネウロイだ。
ゆっくりと海面すれすれを飛んでいる。余りの低さに、一同は驚いた。
「以前のネウロイにも飛来する高度が低いのは居たが……ここまでとは」
首を傾げる美緒。
「全機、海面との接触や海没に十分注意して。バルクホルン隊、突入開始」
「了解。行くぞペリーヌ」
二人はロールしながら降下し、ネウロイに迫った。
「少佐はコアの探索を。宮藤さんは少佐の援護を」
「了解。守りは任せたぞ宮藤」
扶桑ウィッチペアはミーナ達から少し離れた場所でコアの探索を開始する。
美緒の魔眼が輝きを増す。ネウロイの散発的なビームを、宮藤が強力なシールドで弾く。
ミーナとリーネは上空から状況把握と援護を行う。必要とあればすぐに動けるポジションだ。
トゥルーデは海面との位置に注意しながら、ネウロイの上面を慎重に攻撃した。
先行ペアはそれぞれ手持ちの銃を連射し、反応を見た。
表面装甲……特に上面がいつになく強固だ。いつもなら数発の銃撃で割と簡単に本体に裂孔が開くのに、
今回は銃弾が簡単に弾かれる。ネウロイから撃たれたビームを回避しながら、上昇に転じる。
「中佐、敵の装甲はいつになく強固だ。指示を」
「側面をピンポイントで狙えるかしら? それと、着弾点を一点に集中させて」
「了解。ペリーヌ、私が撃った場所に銃撃を集中させろ。奴に高度を合わせる、行くぞ」
「了解ですわ、大尉」
二人は再度降下し、海面スレスレを飛びながら身体をひねり、側面を銃撃した。
トゥルーデはいとも簡単に連射しながら銃の反動を制御し、銃撃を一点に集中させていく。
ペリーヌもトゥルーデの後を追い狙いを定め、小刻みに撃射を繰り返す。
一定の効果は認められた。側面部分が幾らか砕け、内部が露わになる。
「中佐、銃弾を収束させるとかなり効果が出る」
「何とかいけそうね。少佐、コアの位置は?」
「もう少し待ってくれ……よし、コア発見! ネウロイの中央部だ」
「バルクホルン隊、そのまま中央部を狙ってコアを露出させて。少佐と宮藤さんは援護を」
「よし、ついてこい宮藤」
「はい!」
「リーネさん、中央部を狙って」
「はい!」
ゆっくり降下し、構えて狙う。ネウロイはゆっくりした速度で移動する。特別極端な機動ではなかった為
照準は楽だった。緩い偏差射撃を繰り出し、中央部に見事着弾させる。
トゥルーデとペリーヌはすかさず中央部を狙い撃った。かなり長い銃撃を加え、ようやくコアを掘り当てる。
「全機、ネウロイのコアを破壊」
「了解!」
全員が一丸となり、コアの破壊を目指す。コアさえ砕けば……。

122: 2008/11/27(木) 22:34:03 ID:2lvOsBba
しかし様子がおかしい。幾ら銃撃を加えても、コアはヒビが入る気配も見せない。
「どう言う事だ? コアが硬過ぎる」
装甲表面よりも強固なコアを目の当たりにし戸惑うトゥルーデ。ビームが一斉に放たれる。回避上昇し、ひとまず距離を取る。
「中佐、あのコアは本物か? あんなに硬いコアは今まで見た事がない」
「少佐、コアの位置は合ってる?」
確認を求められた美緒は再度魔眼でネウロイをじっくり眺めるが……確かにコアはひとつ、
現在露出しているものしかなかった。
「間違いない。今露出してるのがコアだ」
「と言う事は……今回のネウロイは、コアが異常に硬いと言う事か」
「そんな馬鹿な。どうやって倒せば」
「先程同様、全員の射撃をコアの一点に集中させます。リーネさんのボーイズも有るわ、何とかなるはず」
「なるほど。またも一点集中か」
「バルクホルン隊、少佐と宮藤さんは接近してコアを狙って。突入開始」
「了解」
「リーネさんは遠距離から。いけるわね?」
「は、はい!」
「リーネのボーイズで、コアにとどめをさしてやれ。行くぞ宮藤!」
「はい!」
四人は可能な限り接近してコアに銃撃を加えた。海面近くぎりぎりまで降下しての銃撃は危険が伴う。
トゥルーデは怪力で銃の反動を吸収するので、連射しっぱなしでも照準がブレない。
“カールスラントの電動のこぎり”の面目躍如。
ペリーヌはしっかり狙いつつ、短い連射をひたすら続ける。
美緒と芳佳も接近して、コアの着弾点を探りつつ慎重に銃撃する。
しかし、コアはびくともしなかった。まるで金剛石の如く、傷ひとつつかない。
リーネはそんな状況の中、射撃に集中し、着弾点を見極めた。
一発銃弾を放つ。
見事命中。コアに大きなひびが入る。
「おお! さすがボーイズ、威力の差か。いいぞリーネ、続けろ」
トゥルーデが驚嘆する。
だが、突如としてネウロイの動きが変わった。
ゆるゆると動いていたのはウィッチ達の動きを見極める為だったのか、
接近していたウィッチ達に不規則な動きで急接近し、ビームを乱射した。
「なんだ、急に速度が!」
「回避しながら押してくるなんて」
防御シールドに守られながらもじりじりと押され、後退する。
そして膨大なビームは一点に収束しネウロイの直上で球形になり……
その塊がレーザー宜しく一発で貫くかたちでひとりのウィッチに向けられた。
視界の目の前が赤く染まるリーネ。慌てて回避するも直撃を受け、防御シールドは瞬く間に破壊された。
左のストライカーが激しく損傷する。
リーネは短く悲鳴をあげたが、それっきりだった。
余りの突然な攻撃に、リーネを援護する筈のミーナは隙をつかれた格好になった。
「リーネさん!」
体勢を崩し、そのまま海面に落下するリーネ。
ネウロイはリーネを“標的”に選んだ様だった。落下したリーネ目掛けて、幾筋ものビームが放たれる。
「リーネちゃん!」
激しく動揺した芳佳は猛スピードでリーネのもとへ向かい、落水したリーネを海上に引っ張り上げた。
「リーネちゃん、大丈夫? しっかりして、リーネちゃん!」
リーネは気を失っていた。
容赦なく禍々しいビームが集中する。芳佳はリーネを抱きながら、防御シールドを最大に展開する。
それでも一点集中の攻撃は強烈で、シールドをすり抜けた一筋のビームが芳佳の腕をかすめた。顔を歪める芳佳。
「宮藤! 大丈夫か!」
「宮藤さん、リーネさんを連れて後退して。残りは宮藤さん達をカバーしつつネウロイを攻撃」
ネウロイはウィッチの隊列が一瞬乱れたのを良いことに、今度はビーム攻撃で攪乱しながら退却を始めた。
「どうするミーナ」
「貴重な狙撃手を失う訳にはいかないわ。私達も牽制しつつ一時転進します」
「各機、隊列を崩すな。宮藤とリーネを援護しろ。あのビームの塊には十分注意しろ!」
「了解……っ」
思わぬチームの痛手に悔しさを隠せないトゥルーデ。
やがてネウロイとウィッチ達の距離は開き、双方が撤退するかたちになった。ネウロイは元来た方角へ逃げ延び、
ウィッチ達も基地へと帰還した。

123: 2008/11/27(木) 22:35:04 ID:2lvOsBba
ミーナからの連絡で、基地の救護班は既に滑走路上で待機していた。
気を失ったままのリーネからストライカーを外すと、彼女をストレッチャーに乗せてすぐさま医務室へ直行した。
芳佳も基地でストライカーを整備員に預けるなり、自分の怪我も顧みず医務室へ駆け出した。

残った者は、基地待機組を合わせて全員デブリーフィングに参加した。
「コアが硬いのかよ!」
シャーリーが驚きの声を上げた。
「我々の銃では何ともならん。やるとしたら、我々がネウロイの障壁を全て取り払った上で
リーネのボーイズを当てるしかない。なにせ唯一、効果が見られたのがリーネのボーイズだからな」
美緒は戦いを振り返りながら呟いた。
「でも、銃撃を集中させても砕けないコアなんて……それってホントに本物のコアだったの?」
エーリカが疑問を口にする。
「あのコアは間違いなく本物だ。私が確認している」
「少佐が言うなら間違いないだろうけど……」
そう言うと、エーリカはテーブルに肘をついた。
「しかも攻撃は側面からでないと駄目だ。上面は装甲が硬過ぎて話にならない」
トゥルーデは自分の体験を皆に聞かせる。
「それを考えての事か、ネウロイは海面スレスレを飛ぶ」
言葉を続けるトゥルーデ。黒板に簡単な図を書いて示す。
「と言う事は、攻撃するとしてもかなり機動が制約されるって事カ……」
エイラは呟くと、眠そうな目をするサーニャの肩を抱いた。
「今回は、明らかに私のミスよ。リーネさんに、みんなに何と言ったら良いのか……」
ミーナは二番機のリーネを負傷させてしまった事を悔いていた。
「ミーナ、あれは仕方ない……。今回のネウロイのビームの撃ち方は変則的で、今までにほんの数例しか無い。
誰が狙われるかなんて、あの場では咄嗟になんて絶対分からないぞ」
美緒が慰めるも、その声は完全には届いていない様だ。
「中佐、既に起きてしまった事は仕方ない。少佐が言う様に、あれは事故に近いものだった。幸いリーネも命に別状はない」
トゥルーデも彼女なりの言葉で気を遣う。
「でも、私の不注意で起きたのは事実だわ」
「ミーナ……」
思い詰めたミーナを心配したのか、肩にそっと手を置く美緒。ふっと自嘲気味に笑みをこぼすミーナ。
「中佐が悪い訳ではありませんわ。自分で自分の身も守れない様なリーネさんの方こそ、ウィッチとして不適格ですわ」
ミーナのフォローなのかリーネの批判なのか微妙なペリーヌの言葉。だが後半だけ厳しい口調を聞く限りでは
リーネを狙ってなじっているのは明らかだ。隊員達はあえてペリーヌの発言を無視した。
「それで、リーネのストライカーはどうなんだ? かなり酷く損傷していたが」
トゥルーデの問いに、ミーナは更に顔を曇らせた。
「左のストライカーは大破、修理は不可能だそうよ。至急ブリタニア空軍から補充を受ける様手配したけど、数日は掛かるかと」
「それまでの間にまた例のネウロイが来たら、まずいかも」
腕を頭の後ろで組んで、うーんと困り顔を作るシャーリー。
「仕損じたネウロイが連続して現れる確率は極めて高い……」
トゥルーデが指摘する。
「そうね。それまでに何とか対策を考えないと」
ミーナはうつむいたまま両手を机の上で組み、呟いた。
「今回のネウロイは我々をある程度識別出来る様だ。リーネを執拗に狙ったのも恐らくは相当な脅威に感じたからだろう」
美緒が推測を加える。
「しかし、どうしましょう。このままでは」
「ルッキーニ、お前も狙撃は得意な方だろ? リーネのピンチヒッターって言うのはどうよ?」
シャーリーが横で丸くなってごろごろしているルッキーニをつついて問う。
「あたしの銃はリーネのやつほど威力無いよ。それに、リーネのは使い慣れてないからあんま自信ないし」
「そっか……残念」
「サーニャのフリーガーハマーはどうダ?」
「試す価値は有るとは思うが……ネウロイの攻撃パターンを見た限りでは、かなり危険だな」
エイラの提案に美緒が答える。
「そ、それは私がフォローするから大丈夫ダ。サーニャ、いけるカ?」
エイラの問いにこくりと頷くサーニャ。
「ともかく、全員気を抜かないで」
ミーナは椅子から立ち上がると、全員にそう伝えた。まるで自分に言い聞かせるかの様に。

124: 2008/11/27(木) 22:36:02 ID:2lvOsBba
医務室では、負傷したリーネを芳佳が治癒魔法を用いて回復を試みていた。
「慌てない。落ち着いて。……リーネちゃん、目を開けて。お願いだから」
自分に言い聞かせ、リーネに呼び掛ける芳佳。
両手から、柔らかく暖かな光がこぼれ、リーネの身体を覆う。
芳佳の想いが届いたのか、やがてリーネはゆっくりと目を開け、周囲を見た。
「……芳佳ちゃん」
「リーネちゃん! 大丈夫?」
ゆっくり上体を起こすと、芳佳に向かって小さく微笑んだ。
「うん。もう平気。芳佳ちゃんの治癒魔法のお陰だね」
「リーネちゃんの為だもの」
「ありがとう。本当にありがとう」
リーネは芳佳に抱きつき感謝するが、やがて顔色に曇りがさす。芳佳から離れ、うつむく。
「どうしたの? 具合よくないの?」
「私……また皆に迷惑掛けちゃった」
ぽつりと呟くリーネ。
突然のリーネの気落ちに、咄嗟にかける言葉が出てこない芳佳。
「私、何なんだろ。ウィッチ失格だよ」
リーネは自分を責めた。
「そ、そんな事ないよ! リーネちゃんは頑張ったよ。今回はたまたま、運が悪かっただけで……」
「芳佳ちゃんも、怪我してる」
「私は……、大した事無いよ。かすっただけだから、気にしないで」
「ごめんね、芳佳ちゃん……私」
涙が溢れるリーネ。芳佳は涙を拭いてあげると、リーネを優しく抱きしめた。
「大丈夫。リーネちゃんだもん。今まで私を助けてくれたじゃない。今度は私が助ける番だよ」
「そんな……」
「大丈夫、私達、大切な仲間……でしょ?」
芳佳は笑顔を作った。正確には“仲間”と言う間柄ではなかったが、それは言葉のあやだ。
「リーネちゃんは部屋でゆっくりしてて。その間に、私達であのネウロイを何とかするから」
「でも」
「大丈夫。私達、絶対負けないよ。それに、離れていても私達、いつも一緒だよ?」
見て思わず安心する、力強く、優しい芳佳の笑顔。
リーネは芳佳の言葉を聞いているうち、はっと気付いた。
「もしかしたら……」
「どうしたの? リーネちゃん」
「芳佳ちゃん。お願いが有るんだけど」
「私に出来る事なら何でもするよ?」
「芳佳ちゃんにしか、出来ない事なんだけど……」
リーネは上半身を起こすと、ベッドから降りた。驚異の回復は、芳佳の魔法によるところが大きい。
「その前に、中佐の所へ行ってくるから……芳佳ちゃん、あとで私の部屋に来て?」
「うん、分かった」
リーネは先に医務室を出た。
芳佳は治癒魔法を使い続けた疲労で少し足元がふらついたが、よろけつつリーネの部屋の前に辿り着き、
座り込み、彼女を待った。

125: 2008/11/27(木) 22:37:04 ID:2lvOsBba
小一時間程して、リーネは戻ってきた。外は日も沈み、すっかり暗くなっていた。
「お待たせ、芳佳ちゃん」
「もう用事は良いの?」
「うん。さ、どうぞ」
笑顔で芳佳を招き入れるリーネ。
「お邪魔しま~す」
リーネの部屋に入る。こざっぱりしているが、所々に飾られた置物やら家族の写真やらぬいぐるみを見ると、
彼女も年頃の女の子なんだと思える。
リーネは後ろ手に部屋の鍵を掛けた。そして不思議な事に、部屋の明かりを付けない。
暗闇の中、彼女の行動を少し疑問に思った芳佳は言った。
「それでリーネちゃん、私にしか出来ない事って、なに?」
「芳佳ちゃん」
リーネは名前こそ呼ぶが、その先を言わない。
「どうしたの?」
恥ずかしそうにもじもじすると、リーネは意を決したかの様に、手を取り、言った。
「私ね。魔法で弾丸に魔力を込める事が出来るんだけど」
「うん、知ってるよ?」
「魔力をもっと高めたいの。芳佳ちゃん、魔力を分けて? 一緒に……」
「うん、いいよ。……って、どうやって?」
「いつも、してることでいいから」
「え」
言葉に詰まる芳佳を、リーネは抱きしめた。そのままぐいと寄り切って、自分のベッドに押し倒した。
「リーネちゃん、もしかして……」
「芳佳ちゃん、お願い」
顔が異常に接近する。二人の吐息が混じり合う。
緊張しているのか、息が少し荒くなる。
リーネは芳佳の唇を塞いだ。目を閉じる。芳佳も同じく目を閉じ、唇を合わせ、リーネを抱きしめた。
長い長い、キス。
やがてリーネは唇を離した。息はまだ少し荒い。身体が熱くなる。
「私にしか出来ない事……、ってこの事だったんだ」
「ごめんね、芳佳ちゃん」
「私は、いつでもいいよ? リーネちゃんが良いなら」
「ありがとう、芳佳ちゃん」
もう一度の口吻。もっと濃ゆいキスを交わす。お互いの舌が絡み合い、貪る様に行為に耽る。
静かな暗闇が覆う部屋の中、二人はベッドの上で交わった。
荒い息をついて、顔を少し離す。
上気してとろんとした目をする芳佳。
リーネも呼吸のリズムから、相当に興奮し、また芳佳と同じく恍惚の表情をしているのが分かる。
「リーネちゃん」
「芳佳ちゃん……好き」
「私も……リーネちゃんの事が、好き」
「嬉しい」
二人はそのまま、朝まで抱き合い、お互いをより深く知った。

126: 2008/11/27(木) 22:37:58 ID:2lvOsBba
翌日、早くも現れたネウロイとのリベンジ戦が行われた。
ネウロイは昨日破壊された部分を早くも修復させていたが、ウィッチーズも隊員を総動員して対抗した。
近距離からの一点集中攻撃でコアを露出させ、遠距離からの一撃で仕留める戦法は変わらない。
敵もそれを心得ているのか、鉄壁の守り、鋼の如き硬さを見せながらウィッチ達に襲い掛かる。
やがて彼女達の奮闘でコアがむき出しになった。しかし隊員の銃ではコアが硬過ぎてやはり破壊には至らない。
ネウロイはそれを承知で、あざ笑うかの様にビームを乱射し、隊員達のフォーメーションを攪乱させた上で
ボーイズを構えるウィッチをひたすらに攻撃した。
昨日と同じく、ビームが収束され、ひとりの魔女を執拗に狙う。
迫り来る、膨大で強力過ぎる攻撃。

だが、ネウロイのビームは全てかわされた。
おさげの髪を振り解き、ネウロイの正面に回った。
ボーイズ(の予備分)を担いだウィッチは、にやりと笑ってみせた。
そう、彼女はリーネではない。無傷のエース、エイラ・ユーティライネン。
「この服、私には少し小さいナ。胸はすかすかダケド」
リーネから借りた服の端をつまんで、おどけてみせた。
ネウロイが攻撃相手を迷い、僅かに動きがぴたりと止まったその瞬間、コアが撃ち抜かれた。

一発の弾丸は、何処から来たのか。
それはネウロイの周囲に展開するウィッチ達の横をすり抜け、やや後方に位置したペリーヌの髪をなびかせ、
大空を超え、海面の際を飛び、滑空するトビウオの群の中を行き、飛び立つカモメの群を紙一重でかわし、
木々の隙間を抜け、はらりと落ちる一枚の木の葉をかすめて、“彼女”の部屋の窓際から発射されたものだった。

リーネは“魔弾の射手”。弾丸に絶大な魔力を込め、自在に操る唯一無二のウィッチ。
この一撃で、ウィッチとしての信頼を取り戻し、芳佳との愛を、更に深く強くする。
それは彼女と芳佳が共同で込めた強い魔力と、絆のちから。
ボーイズを構えたリーネは、照準から目を外し、身体にみなぎる魔力を少し和らげた。
そして息を大きく吸い、吐いた。
頬を合わせ、銃とリーネにぴったりと寄り添い魔力を込めていた芳佳に微笑み掛ける。
「芳佳ちゃん、やったよ」
芳佳にははるか遠くの海上でネウロイが爆発し塵と化している事など見える筈もなかった。
でも、リーネの嬉しそうな顔を見て、確信し、笑顔に変わる。
「リーネちゃん」
「芳佳ちゃんのお陰だよ」
そのままボーイズを下ろし、どちらからともなく、唇を重ねた。

end

127: 2008/11/27(木) 22:42:23 ID:2lvOsBba
以上です。
今回はリーネの「魔弾の射手」ネタを書きたかったので突貫工事で。
今日は2本も投下してしまい調子こいてすいませんですorz

前回のSSの感想頂いた方々、誠に有り難う御座いました。
皆様のお気に障るのでは……と、正直ハラハラしてました。


引用: ストライクウィッチーズpart11