1: 2024/06/12(水) 19:00:01 ID:???00
姫芽「うーむ……」

姫芽(アタシ、安養寺姫芽は悩んでいた……なんて、ゲームのモノローグみたいなことを考える)

姫芽「はぁ……」トボトボ

姫芽(悩みの種はただ一つ──アタシが、みらぱの二人に対し、どうしようもない焦りを感じていること)

姫芽(めぐちゃんせんぱいも、るりちゃんせんぱいも、スクールアイドルとしての踊りや歌は、アタシに言わせれば神レベルで)

姫芽(アタシも、みらぱの一員として頑張ってはいるけれど……どうしても追いつけない)

姫芽(ゲームだったら、やればやるほど上達して周りを追い越せるのになぁ……何が違うんだろう)

姫芽「うぅ、トレモが欲しい~……もしくはグリッチでも無いかなぁ」ウーン

2: 2024/06/12(水) 19:02:03 ID:???00
「ちぇすとーーーー!!!」

姫芽「!? この謎の声は……」チラッ

小鈴「──あと、ちょっと! ちぇすとーーー!!!」フンッ

姫芽「やっぱり、小鈴ちゃんだぁ~……って」

小鈴「ちぇすとーー!!」プラプラ

姫芽「こ、小鈴ちゃんが両手で木にぶら下がってる!?」

3: 2024/06/12(水) 19:04:03 ID:???00
小鈴「あと少し……って、あ」ズルッ

姫芽「!? 小鈴ちゃん……!」

ドタッ

小鈴「いたた……うぅ、また失敗しちゃった……」

小鈴「でも、まだ徒町は諦めないよ! ちぇす──」

猫「フニャァ♪」タッ

小鈴「あ……うわぁ!?」

姫芽「ちょ、ちょっと、小鈴ちゃん! 大丈夫……って」ダッ

姫芽(そのときアタシが見たのは……木から落ちた小鈴ちゃんの頭に、上から猫が落ちてくるという、なんとも奇怪な光景だった)

小鈴「うぅ……」ピヨピヨ

猫「ニャァ?」

姫芽「……どういう状況?」

4: 2024/06/12(水) 19:06:03 ID:???00
────

姫芽「はい、ちょっと染みるからね~」シュッ

小鈴「……っ! うぅ、ありがとう、姫芽ちゃん」

姫芽「このくらいの手当、お安い御用だよ~。それはそうと……小鈴ちゃん、何してたのか聞いてもいい?」

姫芽(ゲームにおいて情報調達は基本。だからこそ、ゲーマーとしては聞いておかなきゃね~)

小鈴「あ、えっとね、この子が……」

猫「フニャァ♪」

姫芽「この子猫?」チラッ

5: 2024/06/12(水) 19:08:04 ID:???00
姫芽(小さな子猫が小鈴ちゃんのそばで、安心しているように寝転がっている)

小鈴「……実はこの子、さっきチャレンジをしてたんだ」

姫芽「子猫が……チャレンジ?」

小鈴「そうなの、徒町も見てびっくりしちゃった! この子、木に登ろうと挑戦してて」

小鈴「それも一回じゃなくて、何回も、何回も、繰り返し頑張ってたんだ」

6: 2024/06/12(水) 19:10:02 ID:???00
猫「ニャァー」

小鈴「やっと成功した! と思ったら木の上で動かなくなってたから、降りられないのかと不安になっちゃって、つい」ハハ

姫芽「あぁ、そういうことだったんだ~」

姫芽(それじゃあ小鈴ちゃんは、困っている子猫を助けようとしたわけかぁ)

小鈴「でも、徒町を踏み台に降りられたなら、良かったよー」ナデナデ

猫「フニャァ」ゴロゴロ

7: 2024/06/12(水) 19:12:04 ID:???00
姫芽(小鈴ちゃんに頭をなでなでされて、気持ちよさそうな子猫。これは良いイベントスチル……って、そうじゃなくて)

姫芽「多分、その子猫って迷い猫だよね~?」

姫芽(野良だとしたら、あまりにも野生を捨てすぎている……!)

小鈴「あ、徒町もそう思う! 毛並みも綺麗で、人慣れしてるみたいだし」

猫「ニャニャ!」

小鈴「それもあって……この子、ほっとけないなぁって、徒町、思うんだ」

8: 2024/06/12(水) 19:14:04 ID:???00
小鈴「……なんだか、徒町に似てる気がしちゃって」

姫芽「小鈴ちゃんに似てる……?」チラッ

猫「ニャーオ♪」

姫芽(この猫ちゃんと、小鈴ちゃんの共通点って……)

姫芽「……それって、可愛いところが?」

小鈴「!?!?///」

9: 2024/06/12(水) 19:16:06 ID:???00
小鈴「ち、違うよ!? 徒町、そんなそんな、子猫さんと肩を並べられるほどの可愛さじゃないって!」

姫芽「いやいや~、小鈴ちゃんは可愛いよ~」

姫芽(急に褒められて、赤くなってる小鈴ちゃんまで可愛いんだよね~)

小鈴「え、えー……!? それをいうなら、姫芽ちゃんだって可愛いよ!」ワタワタ

姫芽「そうかなぁ。えへへ、ありがとう、小鈴ちゃん~」

10: 2024/06/12(水) 19:18:08 ID:???00
小鈴「え、えっと、話を戻すと……」ワタワタ

小鈴「チャレンジ心で飛び出して、自分だけじゃどうしようもなくなって、周りに助けてもらうこともあって」

小鈴「でも、何回でも挑戦し続ける心を持ってる……この子は、徒町と一緒だなぁ、って」

猫「フニャァ」ゴロゴロ

11: 2024/06/12(水) 19:20:03 ID:???00
姫芽(何回も挑戦し続ける……確かに小鈴ちゃんらしいや)

小鈴「まぁ……徒町の理想でもあるんだけどね。……たとえば、姫芽ちゃんみたいな人に、徒町もなれたらいいんだけど」ボソッ

姫芽(んん? 今何か、聞き捨てならない言葉を、小鈴ちゃんが口にしたような……?)

姫芽「小鈴ちゃん、それって──」

小鈴「あ! そう、それで徒町、一つチャレンジを思いついたんだ!」パンッ

12: 2024/06/12(水) 19:22:05 ID:???00
小鈴「迷子のこの子を、無事に飼い主さんのところまで連れて行ってあげるチャレンジ!」

小鈴「題して、徒町チャレンジ『猫の飼い主さんを見つける』、だよ!」

姫芽「おぉ、クエスト発生だね~。アタシも協力するよ~」

姫芽(小鈴ちゃんの勢いで、さっきの発言のこと聞きそびれちゃった……)

姫芽(アタシみたいな人になれたら、ってどういうことだろう)フム

13: 2024/06/12(水) 19:24:04 ID:???00
小鈴「よぉーし! それじゃあ、徒町チャレンジ達成のために、頑張るぞー! ちぇすとーー!!」

姫芽「おー♪」

姫芽(とりあえず今は、小鈴ちゃんのサポートに徹しよう。アタシはアタシで、みらぱに対する焦りで悩みすぎてMPギリギリだったし……)

姫芽「それで……その猫、それまでどうやって匿うの? 学校って、多分動物は放し飼い的なのダメなんじゃない?」

小鈴「あー……そうだよね……。えと、そ、それなら……!」

14: 2024/06/12(水) 19:26:02 ID:???00
────

猫「ニャア♪」

小鈴「あ、ダメだよ。しー、静かにしてね」

姫芽「結局、無断で寮内に動物を連れ込むことにするとは……寮母さんに見つかったら、怒られちゃいそうだね~」

姫芽(今のアタシ達は隠密クエストの最中~。子猫をなんとか小鈴ちゃんの部屋まで送り届けられたら、クエストクリア)

小鈴「大丈夫だよ! 徒町、グレーゾーンを攻めるのは慣れてるから!」ドヤッ

姫芽「これは限りなく黒に近いと思うけどね」アハハ…

姫芽(外出届の偽造といい、小鈴ちゃんって、意外と大胆に行動するタイプなんだよね~)

15: 2024/06/12(水) 19:28:09 ID:???00
小鈴「それに、多分誰かに見られても、ぬいぐるみです、って言えば大丈夫! 徒町、部屋にたくさんあるし怪しまれないと思う!」

猫「ニャァ♪」

姫芽「喋って動いて、しかも温かいぬいぐるみが実在すればだけどね~」

姫芽(子猫をぬいぐるみだ、って言われて信じるような純粋な人が蓮ノ空にいるのかな……?)

吟子「──あれ、小鈴さん? それに姫芽さんも」

小鈴「!? 吟子ちゃん!」

16: 2024/06/12(水) 19:30:05 ID:???00
吟子「……あれ、その猫は」チラッ

小鈴「え!? えっと……この子は、ぬいぐるみだよ!」

猫「ニャー!」

吟子「いや鳴いてるし、さすがに本物の猫でしょ……」

小鈴「あー……徒町の部屋にいる『コアラまねお』みたいに、喋る機能があるんだ!」

猫「ニャフッ」ペロペロ

吟子「動いてるけど……」

小鈴「あぅ……」

17: 2024/06/12(水) 19:32:04 ID:???00
姫芽(そりゃそうなるよね~……よし、ここはアタシが、小鈴ちゃんの援護にまわるとしよう……!)

姫芽「吟子ちゃん、吟子ちゃん」チョンチョン

吟子「姫芽さん。あの、小鈴さんの連れている猫は一体……?」

姫芽「あれ~、吟子ちゃん。あれは本当にぬいぐるみだよ?」

吟子「えっ、姫芽さんまで……」

小鈴「そう、この子はぬいぐるみ! 徒町、ぬいぐるみいっぱい持ってるから!」ナデナデ

猫「フニャ……」ゴロゴロゴロ

吟子「でも、ぬいぐるみは動かないと思うけど……」

姫芽「ふっふっふ~……何を隠そう、これは最先端の技術が組み込まれた、とってもハイテクなぬいぐるみなのだ~!」ドヤッ

18: 2024/06/12(水) 19:34:05 ID:???00
吟子「ハイテク……? ぬいぐるみが?」

姫芽「最近のぬいぐるみはすごいんだよ~? 現代日本のコンピュータ技術を総動員して作られててね」フフン

姫芽「これだって、子猫の動きから鳴き声まで最大限に再現したスペシャルなぬいぐるみなんだ~」

吟子「……」

姫芽(さ、さすがに無理があるかな……?)

19: 2024/06/12(水) 19:36:05 ID:???00
吟子「梢先輩も、最近の機械さんはすごいって言ってたし、そういうのもあるのかな……」フム

姫芽(……あれ?)

吟子「……小鈴さん。その……ぬいぐるみ? 触ってみてもいい?」

小鈴「あ、えと……うん」

吟子「……」ナデナデ

猫「フニャァ♪」

吟子「温かい……! 最近のぬいぐるみが、こんなに進化してるなんて……」

姫芽(信じるんだ……!)

20: 2024/06/12(水) 19:38:02 ID:???00
────

姫芽(その後、危なげなく切り抜けて……アタシ達は、ついに小鈴ちゃんの部屋にたどり着いた)

ガチャ バタン

小鈴「ふぅー……な、なんとかなった、かな?」

猫「ニャフ!」ピョン

姫芽「お~、子猫も元気だね。ひとまずこれで、第一ミッションは達成かな?」

21: 2024/06/12(水) 19:40:04 ID:???00
小鈴「うん! この子を無事に徒町のお部屋まで連れてくることができたし! ……あ、そうだ、姫芽ちゃん」

姫芽「ん~? どうしたの、小鈴ちゃん」

小鈴「あの、さっきは、ありがとうね! 徒町、昔から誤魔化すのが下手みたいで……」

姫芽「あぁ、いいのいいの~」

姫芽(あれは信じてくれる吟子ちゃんが純粋すぎた、ってのもあるし)

22: 2024/06/12(水) 19:42:03 ID:???00
猫「ニャニャ!」シャッ

小鈴「あっ、ダメだよ、ゴンザレス師匠を引っ掻いちゃ」

猫「ニャァァ♪」

姫芽「本当、好奇心旺盛な子だね~」

姫芽(この部屋には、それこそ師匠さんのようなぬいぐるみとか、小鈴ちゃんの宝物である旅行バッジとかがたくさんあって)

姫芽(子猫は、そんな見たことのないものに興味津々な様子だった)

23: 2024/06/12(水) 19:44:06 ID:???00
猫「ニャ、ニャ!」シャッ

姫芽「……この様子だと、小鈴ちゃんの部屋よりアタシの部屋の方が良かったかも?」

小鈴「? どうして?」

姫芽「だって、小鈴ちゃんの大切なもの、子猫に傷をつけられちゃわない?」

姫芽(アタシの勝手な気持ちだけど……小鈴ちゃんが悲しんでいる姿は、見たくないから)

24: 2024/06/12(水) 19:46:06 ID:???00
小鈴「うーん……確かに、傷がついちゃうのは嫌だけど、徒町にできることは、これくらいしかないし……」

小鈴「それに、徒町は、姫芽ちゃんのお部屋の方が大変だと思うよ?」

姫芽「アタシの部屋?」

小鈴「うん。だって、姫芽ちゃんのお部屋には、大切なトロフィーがいっぱい飾ってあるよね!」

姫芽「あぁ、そっか」

姫芽(確かにあのトロフィー達は、アタシにとっては大好きなゲームにかけた思いを示す証でもある……大切なもの)

25: 2024/06/12(水) 19:48:04 ID:???00
小鈴「あのトロフィーは、姫芽ちゃんが頑張った成果だもん! 徒町、とっても尊敬してるんだ! 姫芽ちゃん、すごい!」キラキラ

姫芽「いや~、小鈴ちゃん。そんなに褒めてくれてもアタシからは何も出ないよ~」テレテレ

姫芽(アタシを見つめる小鈴ちゃんの目は、さっきの吟子ちゃんに負けず劣らず純粋で……アタシもつい照れてしまう)

小鈴「それにそれに! 姫芽ちゃんって、そのゲームの中で一番なんだよね?」

姫芽「それは、まぁ、一応学生チャンピオンですから~」フフン

26: 2024/06/12(水) 19:50:04 ID:???00
小鈴「うわぁ……! やっぱり姫芽ちゃんはすごいなぁ。徒町、本当、姫芽ちゃんに憧れちゃうよ!」

姫芽「……!」

姫芽(確か小鈴ちゃん、さっきもアタシみたいになりたい、って…)

姫芽「……具体的には、アタシのどういうところに、小鈴ちゃんは憧れてるの~?」

姫芽(今のアタシは……みらぱの二人に追いつけない、というダメダメ思考のデバフがかかってるから、自分では、分からない)

小鈴「あ、えっとね、徒町は──」

コンコンッ

「徒町さん? 先ほど動物の鳴き声がする、と他生徒から報告があったのですが、何かありましたか?」

小鈴「!? りょ、寮母さん!?」

27: 2024/06/12(水) 19:52:04 ID:???00
ガチャ

小鈴「こ、こんばんは、寮母さん!」

寮母さん「ええ、こんばんは、徒町さん。……あら、安養寺さんもいらっしゃるのですか」

姫芽「は、はい。少し遊びに来てて……」

姫芽(さっきからずっとタイミングが悪いなぁ~……ゲームでいうと、乱数下振れしてる感じだ~……)ウムム

寮母さん「……外まで、何か動物の鳴き声のようなものが聞こえていたようですが、一体何をしていたんですか?」

小鈴「え、えっと……」ワタワタ

姫芽(あ、小鈴ちゃん、さっき誤魔化すのが下手だ、って……)チラッ

小鈴「……か、徒町が猫になりきって、姫芽ちゃんと遊んでました!」

寮母さん「!?」

28: 2024/06/12(水) 19:54:03 ID:???00
小鈴「徒町が猫で、姫芽ちゃんに甘えてたんです!」

姫芽(そ、その言い方だと……)チラッ

寮母さん「そ、そうですか……徒町さんがネコ……」

寮母さん「……風紀が乱れないように、ほどほどにお願いしますね//」コホン

小鈴「? はい!」ニコッ

29: 2024/06/12(水) 19:56:04 ID:???00
寮母さん「……安養寺さんも、しっかり消灯時間前には自分の部屋に戻ること。いいですね?」

姫芽「は、はぁい」

寮母さん「それでは」ガチャッ

バタン

小鈴「……ふぅ。だ、大丈夫だったかな!?」

姫芽「うん。大丈夫だったとは思うよ~」

姫芽(寮母さんに、すごい勘違いをされてそうだけど)

30: 2024/06/12(水) 19:58:05 ID:???00
猫「ニャァー……」

姫芽「あ、咄嗟に隠れてもらって、ごめんね~」

小鈴「姫芽ちゃんが隠してくれたんだ。ありがとね、姫芽ちゃん!」

姫芽「これくらいは別にいいよ~。……それよりも、さっきのお話の続きが聞きたいかな」

小鈴「あ、そうだよね。……徒町が、姫芽ちゃんに憧れてるところの話、だったっけ?」

姫芽「そうそう。小鈴ちゃんは、チャレンジをたくさんしてる頑張り屋さんだし、別にアタシなんかに憧れる部分なんて、ないと思うけどな~」

姫芽(小鈴ちゃんはひたむきに頑張り続けられる努力家だ、ってアタシはずっと感じてる)

31: 2024/06/12(水) 20:00:02 ID:???00
小鈴「頑張り屋さんって言ってくれるのは嬉しいけど……徒町は努力するしか能がないから、色々チャレンジしてるだけなんだ」

小鈴「それに徒町は、たとえ頑張っても、周りの人のほうが上手で、追いつけなくて、ある程度までいったら諦めちゃうことだって、結構多かったから」ハハ

姫芽「! それって……」

姫芽(頑張っても、周りの人に追いつけない、って)

姫芽(みらぱの二人に追いつけない、今のアタシの状況と、一緒……?)

32: 2024/06/12(水) 20:02:10 ID:???00
小鈴「だから、姫芽ちゃんみたいに、何か一つのことを極めて、実績を残してるのが、徒町にとっては憧れなんだ」

姫芽「……そう、なんだ」

小鈴「うん! ……って、あ! もう、こんな時間だよ! 姫芽ちゃん、そろそろ戻らなきゃ消灯時間に……」

姫芽「……」ギュッ

小鈴「……姫芽ちゃん?」

姫芽(小鈴ちゃんと一緒にいれば、アタシの抱える悩みの解決につながるヒントが、分かる気がして)

姫芽(無意識のうちに、アタシは小鈴ちゃんの手を握っていた)

姫芽「……確かに寮母さんは、消灯時間前に戻りなさい、って言ってたけどさ~」

姫芽「アタシ、今夜は小鈴ちゃんと一緒に眠りたいかも」

姫芽(もっと小鈴ちゃんのことが、知りたい)

33: 2024/06/12(水) 20:04:01 ID:???00
小鈴「それって……お泊まり会!?」ガバッ

姫芽「う、うん……あれ、なんだか、小鈴ちゃん、嬉しそう?」

小鈴「あ……実はね」

小鈴「徒町、実家だと家族と一緒にみんなで寝てたから、寮生活が始まって、少し寂しくて……」ハハ

姫芽「そっかそっか~。それなら今日は、アタシが小鈴ちゃんの寂しさを吹き飛ばしてあげるよ~」

小鈴「わーい! ありがとう、姫芽ちゃん!」

34: 2024/06/12(水) 20:06:06 ID:???00
────

小鈴「よっ、と……ベッド、狭かったりしない? 大丈夫、姫芽ちゃん?」

姫芽「うん。ちょうどいい感じだよ~」

猫「フニャ……zzz」

小鈴「あ、この子も寝たみたいだね」フフッ

姫芽(小鈴ちゃんと二人、一つのベッドを共有して眠る)

姫芽(この状況、なんだか、小さい頃お姉ちゃんと一緒に寝たことを思い出しちゃうな~)

35: 2024/06/12(水) 20:08:04 ID:???00
姫芽(……って、そうじゃなくて)

姫芽「小鈴ちゃん、小鈴ちゃん。せっかくのお泊まり会なんだから、ここでしかできないお話とかしよ~よ~」

小鈴「こ、ここでしかできないお話……! 徒町にそんな大層なお話あるかなぁ……?」

姫芽「あるよ~。アタシ達は同期なんだし、スクールアイドルの話とかさ~」

小鈴「スクールアイドル……」

姫芽「うんうん。……小鈴ちゃんはさ、スクールアイドルをどうして頑張れてるの?」

姫芽(努力しても追いつけない、と諦める気持ちが小鈴ちゃんにもあったのなら、どうして今は頑張れるのか、アタシは知りたい)

36: 2024/06/12(水) 20:10:05 ID:???00
小鈴「徒町がスクールアイドルを頑張る理由、かぁ……」

小鈴「……さっきも言ったけど、徒町は努力するしか能がなくて、他には何もないんだ」

小鈴「何かを頑張ろうとしても、もっと上手い人の顔が思い浮かんじゃって、徒町だけの何かは、ずっと手に入らなくて」

姫芽「それは……」

姫芽(今のアタシも、似た気持ちを抱いている)

37: 2024/06/12(水) 20:12:03 ID:???00
小鈴「でも、そんな徒町に道を示してくれて、頑張りを認めてくれた人がいて」

小鈴「徒町はスクールアイドルを通して……何かになりたい、何かを手に入れたい。そういう目標があるんだ」

小鈴「だから、徒町は頑張れる。チャレンジして、たとえ失敗しちゃっても、無駄にならない。決めるのは、徒町だから」

姫芽「そっか、小鈴ちゃんは……すごいねぇ」

姫芽(小鈴ちゃんらしい、頑張れる理由。今のアタシとは全然……)

小鈴「──でも、姫芽ちゃんも、徒町と同じじゃない?」

姫芽「……え?」

38: 2024/06/12(水) 20:14:03 ID:???00
姫芽「アタシが、小鈴ちゃんと……?」

小鈴「ああいや、徒町ごときが姫芽ちゃんと並び立つ自信があるみたいな、愚かしいことじゃなくてね!?」

姫芽「そこまで言わなくても大丈夫だよ~。……その、同じってどういう……?」

小鈴「えっと……まず徒町、姫芽ちゃんは努力の天才だと思ってます!!」

姫芽「!? そ、それは小鈴ちゃんのほうじゃ……?」

小鈴「ううん、違うよ! 確か姫芽ちゃん、あのゲームに何千時間もかけた、って前に言ってたよね?」

姫芽「それは……まぁ、あのゲームが好きだとそのくらい秒で溶けちゃうし……」

39: 2024/06/12(水) 20:16:02 ID:???00
小鈴「姫芽ちゃんは、そういう努力の結果、あのトロフィーを手に入れてて……徒町が欲しくてやまない、“何か”を姫芽ちゃんはもう持ってる」

小鈴「きっと徒町なんかの想像力ではカバーしきれないほどの努力を、姫芽ちゃんは諦めずに繰り返してきたんだなぁ、って、分かるから」

小鈴「姫芽ちゃんがスクールアイドルを頑張る理由だって、叶えたい目標があるから、じゃないかな?」

姫芽「……!」

40: 2024/06/12(水) 20:18:03 ID:???00
小鈴「徒町、目標のために、ひたむきに努力するそんな姫芽ちゃんに、親近感? というか、同じなんだなぁ、ってずっと思ってて」

小鈴「だから徒町、ずっと頑張って結果も出してる姫芽ちゃんみたいになりたいんだ! 同じ学年だし、徒町の目標!」エヘヘ

姫芽(そっか……なんとなく、分かったかも)

姫芽(アタシから見た小鈴ちゃんは努力の天才だけど、小鈴ちゃんから見たアタシも、そうで)

姫芽(アタシ達は、お互いに憧れ合っていて……アタシは、小鈴ちゃんと根本的なところで似ているんだ)

41: 2024/06/12(水) 20:20:02 ID:???00
姫芽(アタシが今、頑張る理由は……みらぱの二人に追いつきたいから)

姫芽(努力しても届かない、じゃなくて、それで何かを手に入れるのが大切で)

姫芽(……だから、悩んでいる今のアタシがやるべきことはただ一つ。小鈴ちゃんみたいに、ただひたむきに頑張ればいい……!)

姫芽「……ふふっ」

姫芽(小鈴ちゃんのおかげで、頭のモヤモヤが晴れた気がする)

姫芽「──それなら、アタシも、小鈴ちゃんみたいになりたいなぁ~」

42: 2024/06/12(水) 20:22:04 ID:???00
小鈴「えぇ!? こんな未熟な徒町ごとき、姫芽ちゃんにとっ
て代われるような存在じゃないよ!?」

姫芽「んーん、それでもアタシは、小鈴ちゃんがいいな~」

小鈴「えー!? な、なんでか聞いても……?」

姫芽「うーん……」

姫芽(お互いに憧れ合う、この関係をアタシはもっと続けていたいから……今はまだ)

姫芽「……内緒~♪」

43: 2024/06/12(水) 20:24:03 ID:???00
────

姫芽(それから数日後……)

小鈴「──姫芽ちゃん、姫芽ちゃん!」

姫芽「小鈴ちゃん、今日も元気だね~」

小鈴「うん、元気が取り柄の徒町だから! えっと、姫芽ちゃんにいいお知らせがあって」

小鈴「あの子の飼い主さん、見つかったんだ!」

姫芽「!」

44: 2024/06/12(水) 20:26:02 ID:???00
小鈴「さっき会って、引き渡してきたんだ! だからこれで徒町チャレンジ成功!」

姫芽「おぉ、よかったね~、小鈴ちゃん♪」

姫芽(小鈴ちゃんの頑張りをずっと見てきたから、アタシも、自分のことのように嬉しく思っちゃう)

小鈴「これも、姫芽ちゃんが徒町を助けてくれたおかげだから、お礼を言いたくて!」

小鈴「──ありがとう、姫芽ちゃん!」ニコッ

姫芽「……!」ドキッ

45: 2024/06/12(水) 20:28:03 ID:???00
姫芽(やっぱりすごいなぁ、小鈴ちゃんは)

小鈴「……姫芽ちゃん?」

姫芽「ううん。こちらこそ、どういたしまして~」

姫芽(あれから、小鈴ちゃんの笑顔を見ると、アタシの心臓のCPUが限界を迎えそうになる)

姫芽(もしかしたらアタシは小鈴ちゃんに、憧れ以上の感情を抱いているのかもしれない……なんてね)

46: 2024/06/12(水) 20:30:06 ID:???00
姫芽(いつかこの気持ち、小鈴ちゃんに話せたらいいな)

姫芽「今日も部活、楽しもうね~」ニコッ

小鈴「うん! やるぞー、ちぇすとー!!」グッ

姫芽「ちぇすと~」

姫芽(小鈴ちゃんと一緒に、スクールアイドル、頑張ろ~♪)


おしまい

47: 2024/06/12(水) 21:00:26 ID:gvKBbiwI00
おつです!

引用: 【SS】ひめすずが猫を拾うお話