1: 2008/12/28(日) 00:29:12.27 ID:HWic3waj0
JUM「ただいま……」

蒼 「お帰りジュン君……今日も遅かったね……」

JUM「最近残業が多くてね」

蒼 「そうなんだ……あ、上着掛けておくよ」

JUM「ああ、頼むよ」パサッ

蒼 「あれ……この羽は……?」
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

3: 2008/12/28(日) 00:31:25.84 ID:HWic3waj0
JUM「ん、どうしたんだ蒼星石」

蒼 「! ううん、何でもないよ……」

蒼 「(この羽は……水銀燈のだ…………)」

5: 2008/12/28(日) 00:35:03.55 ID:HWic3waj0
蒼 「……それよりご飯は? 今日はちょっと頑張ってみたんだけど」

JUM「……」

蒼 「食べられない……?」

JUM「うん……」

蒼 「そう……」

JUM「風呂は?」

蒼 「あ……ごめんなさい……今から焚きます」

JUM「……はぁ。もういい寝るよ」

蒼 「ごめんなさい……」

7: 2008/12/28(日) 00:37:37.11 ID:HWic3waj0
蒼 「………………」

蒼 「………………」

蒼 「うぅ…………」

8: 2008/12/28(日) 00:41:46.77 ID:HWic3waj0
-朝-

JUM「じゃあ、いってくるよ」

蒼 「いってらっしゃい……」

蒼 「……あの」

JUM「うん?」

蒼 「今日結婚記念日なんだけど……」

蒼 「それで……今日は早く帰ってこれないかな……?」

9: 2008/12/28(日) 00:45:18.66 ID:HWic3waj0
JUM「……」

蒼 「わがまま言ってごめんね。今忙しい時期だもんね……」

JUM「……いや、なんとかしてみるよ」

蒼「え……本当!?」

JUM「ああ……今日は早く帰ってくるよ」

蒼 「やったぁ! ジュン君大好き! 今日は美味しいものたくさん作って待ってるからね!」

JUM「そんなにくっつくなよ……」

蒼「えへへ/////////」

13: 2008/12/28(日) 00:47:20.28 ID:HWic3waj0
蒼「(さいきんあんまり仲良くできなかったから嬉しいな♪)」

蒼「(お昼過ぎには買い物に行かなくちゃ)」

蒼「(何を作ろうかな~)」

16: 2008/12/28(日) 00:50:04.32 ID:HWic3waj0
-スーパー-

蒼「~~~~♪」

蒼「昔のりに教えてもらった花丸ハンバーグでも作ろうかな」

蒼「雰囲気出すためにワインも欲しいなぁ」

蒼「ふふふ……」

翠「あれ、そこにいるのは蒼星石じゃあねーですか」

18: 2008/12/28(日) 00:52:53.30 ID:HWic3waj0
蒼「あ……ぁ……」

翠「翠星石からジュンを奪った」

翠「かわいいかわいい蒼星石さん」

翠「主婦姿が板についてますですぅ」

翠「ジュンと今晩よろしくやる準備ですか?」

20: 2008/12/28(日) 00:56:34.51 ID:HWic3waj0
蒼「あ……ぅ……」

翠「久しぶりに双子の姉妹が出会ったというのに挨拶もできねーのですか?」

蒼「……こんにちわ……翠星石……それじゃあ、僕は忙しいから」ダッ

翠「ふん……とんでもねージャンクですね……」

翠「翠星石達は、絶対にお前を許さんですよ?」

蒼「――っ! ……」

24: 2008/12/28(日) 01:02:44.01 ID:HWic3waj0
翠「…………」

雛「あれ、翠星石どうしたのー?」

翠「どうもしてねーです……少し嫌なことを思い出したですぅ」

雛「そう……」

翠「……」

雛「……」

翠「……さあ、早く帰るですぅ。今日はせっかく姉妹で集まっての夕食なんですから!」

雛「そうなの! 久しぶりに姉妹みんなにあえるから楽しみなの!」

25: 2008/12/28(日) 01:05:37.54 ID:HWic3waj0
蒼「――――――――」

蒼「……忘れよう。さっきのことは……」

蒼「はやく、ご飯作らなきゃ……」

34: 2008/12/28(日) 01:21:40.73 ID:HWic3waj0
PLLLLLLLLLLガチャ

JUM「あ、水銀燈。ごめん、今日は会えそうにない」

銀「? 何言ってるのぉ? 今日は姉妹集まっての夕食会だから、あなたたちマスターも来るんでしょう?」

JUM「え?」

銀「『え?』じゃないわよ」クスクス

銀「ちゃんときなさいよ。大丈夫、私たちの関係は誰にも感づかせないわ」

銀「それじゃあ、今夜また……」ガチャ

JUM「姉妹全員か……」

36: 2008/12/28(日) 01:24:32.83 ID:HWic3waj0
>>35
アストロノーカ懐かしいw
扇風機と桂馬で集めまくったなぁ

42: 2008/12/28(日) 01:34:33.79 ID:HWic3waj0
JUM「蒼星石のやつ……一体どういうつもりなんだよ」

PLLLLLLLLLL

JUM「ん?」ピッ

紅「あら……ジュン、ごきげんよう」

JUM「ああ……真紅か」

紅「ずいぶんとご無沙汰してたようだけど、今日のことは忘れてないわよね……」

JUM「ああ、そのことなんだが」

紅「いいことジュン? 今回の夕食会は私たち姉妹とマスターの絆を再確認するためのものよ。欠席は誰一人として許されないわ……」

紅「それだけよ」ブチッ

JUM「……」

47: 2008/12/28(日) 01:41:27.73 ID:HWic3waj0
JUM「いちおう蒼星石にも連絡してみるか……」

PLLLLLLLPLLLLLLLL……

JUM「そうか……あいつ外出するときはサイレントモードにしてるんだったな……」

JUM「……実家に顔出して確認とるか……」

48: 2008/12/28(日) 01:45:28.66 ID:HWic3waj0
JUM「ここに来るのも久しぶりだな……」

JUM「ただいまー」

翠「お! やっとで来やがったですかちび人間は!」

紅「久しぶりね、ジュン。姉妹はもう全員そろってるわ」

JUM「(! なんだ、あいつももういるのか)」

翠「さあ、そんなところにいねーでさっさとあがるですぅ!」


56: 2008/12/28(日) 01:53:15.41 ID:HWic3waj0
JUM「蒼星石ももう中にいるのか?」

翠「? おめーは何を言ってるのですか?

JUM「え?」

紅「そんな子は姉妹のなかにはいないわね……」

JUM「なにをいってるんだよ?」

雛「今日のジュンはおかしなこというのー!」

JUM「お前ら……」

ガシッ
紅「もうはなさないわ……」

63: 2008/12/28(日) 02:00:38.80 ID:HWic3waj0
JUM「なっ……! お前ら自分で何言ってるのかわかってるのか?」

JUM「お前達はあんなに仲がよかったじゃないか! それを」

紅「そうね、“よかった”わね……」

JUM「お前達は7人でローゼンメイデンだろ……」

雛「そうよ、水銀燈、金糸雀、翠星石、真紅、ヒナ、雪華綺晶、そして薔薇水晶」クスクス


67: 2008/12/28(日) 02:04:44.26 ID:HWic3waj0
翠「ジュン、私たちはあのジャンクみたいにジュンを一人で独占したいという気持ちはないのですぅ」

翠「ただ、私たち3人とのり、そしてジュンで過ごしていたあの日に時間のゼンマイを戻したいだけ」

雛「そう、それはとても簡単なこと……。ジュンが受け入れてくれるだけで良いの……」

紅「ジュン……お願いよ」

JUM「だめだ……俺には、もう別の幸せがあるんだ……」

71: 2008/12/28(日) 02:08:44.46 ID:HWic3waj0
翠「ジュン……」

雛「ジュン……」

紅「お願い……」

銀「クスクス……あさましいわねぇ」

紅「!」

JUM「水銀燈!」

73: 2008/12/28(日) 02:12:46.31 ID:HWic3waj0
銀「ほら、ジュン! いくわよ!」ダッ

JUM「あ! ああ」ダッ

紅「きゃあっ! 待ちなさい! 翠星石、雛苺! 追いかけて」ドテッ

翠&雛「わかったですぅ」「わかったの」

銀「まったく、あんなところにいたらほんとに氏んじゃうわよ」

JUM「助かったよ……水銀燈」

74: 2008/12/28(日) 02:18:07.62 ID:HWic3waj0
トタタタタタタタ

JUM「はぁはぁ……ここまでくればもう安心だな」

銀「まったく、気をつけてよねぇ。もうあんな亡霊なんかに捕まっちゃダメよ」

JUM「ああ、肝に銘じておくよ……。それにしてもびっくりしたな」ンチュ

銀「! あんっ……んちゅ……もうこんなところで……ぇ……」ンチャ

JUM「今日はもう、帰らないよ。こんなことにもなっちゃたし、帰るには遅い時間だ。ずっと君といるよ」

銀「ん……もぅ……ぁっ」ンチョ


77: 2008/12/28(日) 02:20:41.08 ID:HWic3waj0
トテトテトテトテ……

翠「はぁはぁ、取り逃がしちまったですぅ……」

翠「ぜーはーぜーはー、やっぱり運動不足だとキツイですね」

雛「おかしいの……」

翠「なにがですか?」ゼァゼァ

雛「水銀燈はジュンのことを名前で呼んだことはないの」

翠「!」

雛「でもさっきは……」

翠「……」

80: 2008/12/28(日) 02:21:55.25 ID:HWic3waj0
蒼「……………………」

蒼「…………」

蒼「もう7時か……」

蒼「…………」

82: 2008/12/28(日) 02:23:44.81 ID:HWic3waj0
蒼「ご飯さめちゃったな……」

時計「ボーンボーン」

蒼「あ、9時……」

109: 2008/12/28(日) 07:08:55.90 ID:HWic3waj0
-翌朝-

ガチャ

JUM「ただいま……」

蒼「……朝だよ」

JUM「うん……」

蒼「どうして……」

JUM「ごめん、昨日帰るときに真紅達に捕まっちゃって、それで」

蒼「嘘」

蒼「羽、今日もついてるもん……」

JUM「!」

111: 2008/12/28(日) 07:12:54.22 ID:HWic3waj0
蒼「マーキングって言うの? わざとやってるんだよね、そういうの……」

JUM「……何を言ってるんだ? 昨日たまたまその場に水銀燈も居合わせただけだ」

蒼「いいよ、もう」

蒼「よくよく考えてみると、ジュン君が遅く帰ってきた日には、いつも黒い羽が衣服のどこかに付いていたんだ」

蒼「ずっと水銀燈と会ってたんだね……」

蒼「僕バカだから気がつかなかったよ……」

114: 2008/12/28(日) 07:17:14.14 ID:HWic3waj0
蒼「僕はねジュン君」

蒼「君と一緒にいるために、いろんなものを捨ててきた」

蒼「高潔であらねばならないローゼンメイデンとしての誇りも」

蒼「翠星石や他の姉妹達との……絆も……」

蒼「それらと、ジュン君を独占することを天秤に掛けて……それでも君を愛することを選んだ」

蒼「それで良いと思っていた。それでも幸せになれると思っていた」

117: 2008/12/28(日) 07:21:38.06 ID:HWic3waj0
蒼「僕にはね、もうジュン君しかいないんだ……」

蒼「僕の存在できる場所は、ジュン君のところだけなんだ……」

蒼「でも……ジュン君は違って、どこへだっていってしまう」

蒼「僕を残して……」

JUM「…………蒼星石」

119: 2008/12/28(日) 07:25:18.71 ID:HWic3waj0
蒼「……」

JUM「……」

蒼「どうして」ポロポロ

JUM「あっ……」

蒼「僕のどこがいけなかったかな……」ポロポロ

蒼「ねえ」

蒼「ジュン君」ギュッ

蒼「お願いだからっ……どこにも行かないでっ!」

124: 2008/12/28(日) 07:28:15.91 ID:HWic3waj0
蒼「なんだってするからさっ! ずっとここにいてよ」

蒼「悪いところがあるなら、言ってくれれば直していくから」

蒼「だからここにいてよ」

蒼「僕を見捨てないでよ……」

JUM「……」

蒼「何とか言ってよ」

127: 2008/12/28(日) 07:39:27.58 ID:HWic3waj0
JUM「蒼星石……俺は君を愛している……」

蒼「……水銀燈よりも?」

JUM「それ以上に……彼女には惹かれている……」

蒼「……っ」

JUM「……昔、僕らと水銀燈が敵対していた頃――彼女は恐怖の対象でしかなかった」

JUM「でも、アリスゲームが終わり……彼女と同じ肩の高さになって初めて気づいたんだ」

蒼「……いいよ、そんな話は」

129: 2008/12/28(日) 07:42:48.03 ID:HWic3waj0
JUM「彼女は美しかった……他の薔薇乙女と比べても……誰よりも洗練された姿だった。天使だった」

蒼「やめてよ……」

JUM「アリスゲームが終わって、彼女は姉妹達といがみ合うことさえはしなかったけれど」

JUM「それでも一線を引いて生活していた」

JUM「特に、真紅とは」

132: 2008/12/28(日) 07:46:43.77 ID:HWic3waj0
JUM「当時僕らは一緒に生活していたからね……自然と俺も彼女とは疎遠だった」

JUM「と、みんな思ってただろうと思う……」

JUM「実際は違った……」

蒼「やめて……」

JUM「俺はその頃勉強のためによく一人で図書館に行っていたんだ」

138: 2008/12/28(日) 07:56:34.31 ID:HWic3waj0
JUM「水銀燈と再会したのは、雨の日だった」

JUM「打ち付けるような強い雨を前に、ぽつんと入り口の前に立っていたのが印象的だった」

JUM「今こそは屋根の下にいるが……」

JUM「それまでは急に降り出した雨に濡れ、雨宿り出来る場所を必氏に探していたに違いなかったと思う」

JUM「雨に濡れ、水滴がしたたり落ちるその姿は本当に美しかった」

JUM「いつも気丈に振る舞っていた俺に見せる、彼女の最初の弱い姿だった」

141: 2008/12/28(日) 08:06:54.15 ID:HWic3waj0
JUM「彼女のマスターだった人が……亡くなったらしかった……」

JUM「住み家だった旧礼拝堂が取り壊され、行く当てもない」

JUM「彼女は心身ともにすり減っていた」

JUM「俺は……彼女に真紅達と一緒に暮らさないかと提案した……」

JUM「プライドの固まりみたいな彼女は当然それを拒絶したが」

JUM「俺が図書館に行くと、彼女は必ずそこにいた」

蒼「やめてって……いってるでしょ」

143: 2008/12/28(日) 08:11:11.60 ID:HWic3waj0
JUM「……彼女も依存する誰かが欲しかったのだと思う」

JUM「それに俺がこたえるかのように、いつのまにか週に1,2度会うのが3,4回」

JUM「比例するように時間も2時間、3時間と伸びていった」

JUM「あの時の俺は……愛だとか、恋だとかをまだよくわかっていなかったけれど」

JUM「なんともいえない、やりきれない気持ちを心に抱えていた……」

148: 2008/12/28(日) 08:16:57.94 ID:HWic3waj0
JUM「今思いだしても、やはりあれは恋だったのだと思う」

JUM「だが、それは実らなかった」

JUM「俺たちが密会してたのが真紅にばれたんだよ……」

JUM「真紅は別にとがめたりはしなかったけど、水銀燈は真紅を警戒して」

JUM「週に4,5回あってたのが2,3回と減っていき……ついに完全に俺たちが会うことはなくなってしまった」

150: 2008/12/28(日) 08:23:03.88 ID:HWic3waj0
JUM「俺は……胸のあたりにぽっかりと穴が開いたような気がしていた。きっとあれが初恋だったんだ」

JUM「なにかが足りない。けれどそれが何かはわからなかった」

JUM「苦しくて、苦しくて、何とかしようと思っていろいろ試すけれど」

JUM「それは水銀燈でしか埋まらなかった」

JUM「でも、何とかしなくちゃいけないと思っていたから、水銀燈の代わりをたてた」

JUM「そしてつきあい始めたのが、お前だったんだ」

蒼「…………」

151: 2008/12/28(日) 08:27:12.52 ID:HWic3waj0
JUM「俺は君に水銀燈を投影し続けた……」

JUM「僕に近しいもので……桜田家の三人でもない……そして水銀燈にも近い人物……君しかいなかった」

蒼「……僕ははじめから……ジュン君のためのパーツだったの……?」

蒼「見ていたのは……僕じゃなくて水銀燈で……」

蒼「僕は……ずっと……愛されてると勘違いしてたの……?」

JUM「すまない……」

155: 2008/12/28(日) 08:31:24.97 ID:HWic3waj0
JUM「もう……ここにはいられないな……」

蒼「ねぇ……なんだったの」

蒼「なにもかもを捨てて、君に尽くしてきたこの数年間は」

蒼「ねぇ」

蒼「なんだったの……」

蒼「ねぇ、答えてよ」

JUM「明日、もう一度だけ……荷物を取りに来るよ……それで」

JUM「その時がお別れだ」ガチャ

蒼「ねぇ…………」

156: 2008/12/28(日) 08:32:57.15 ID:HWic3waj0
蒼「…………」

蒼「ねぇ……」

蒼「うぅ……」

161: 2008/12/28(日) 08:43:16.71 ID:HWic3waj0
紅「それで、一晩かかって収穫はなにもなかったというの?」

翠「すまんですぅ……」

雛「ごめんなさいなの」

紅「まったく……使えない下僕達ね」

翠「だれが真紅の下僕ですかだれが!」

雛「大体そういう真紅はどうなの!」

翠「そうですよ! 真紅はただ玄関でずっこけてただけじゃないですか!」


164: 2008/12/28(日) 08:52:03.73 ID:HWic3waj0
紅「そうね……。あの時の私は本当にふがいなかったわ」

紅「だから、今回は私が直々にジュンの元に出向いてつれてかえるわ」

翠「それはつまり……あのジャンクの家に行くと言うことですか」

紅「ええ、そうよ」

翠「またあのジャンクに追い返されるに決まってるですよ……」

紅「そうね……今まではそれで何も言わずにひきさがったけど、今回は違うわ」

紅「昨日、久しぶりにジュンを見て再確認したの。やっぱりジュンは私に必要な存在だって」

紅「今回は、何があってもジュンをひっぱりだすわ」

166: 2008/12/28(日) 09:01:58.41 ID:HWic3waj0
紅「いってくるわ」バタン

翠「いってらっしゃいです……」
雛「なの……」

翠「……」
雛「……」

翠「翠星石達は、このすきに昨日のことを確かめるですぅ」

雛「もし、雛たちの考えていることが正しかったら……」

翠「きっと真紅は怒り狂うでしょうね……」

雛「蒼星石みたいに絶縁だけじゃすまないの……」

翠「その名前は呼ぶな、です」

雛「ごめんなの……」

168: 2008/12/28(日) 09:06:37.65 ID:HWic3waj0
PLLLLLLLPLLLLLLLLPLLLLピッ

JUM「あ、水銀燈。蒼星石に……君との関係がばれたから、もうあそこにいられない」

JUM「とりあえず、今から君の家に向かうよ」

銀「そう、待ってるわぁ」

プツッ

171: 2008/12/28(日) 09:13:07.12 ID:HWic3waj0
翠「水銀燈の家までは、ここからそう遠くなかったはずですぅ」

雛「……」

翠「今日は日曜だし、きっと家にいるはずですよ……」

雛「……」

翠「……まだそうと決まったわけじゃねーですから、悲観するには早いです」

雛「そうね……。水銀燈がジュンの名前を呼んだだけだもの……」

雛「それ自体は何も変なところはないわ」

雛「でも……胸騒ぎがするの……とっても嫌な予感」

翠「縁起でもねーこと言うなです……」

174: 2008/12/28(日) 09:17:48.40 ID:HWic3waj0
ピンポーン ピンポーン

蒼「……」

紅「誰もいないのかしら?」

蒼「……」

紅「勝手に失礼するわ」ガチャ

紅「あら、いるじゃない」

紅「でもあなたはお呼びじゃないの、ジュンはどこ?」

蒼「……」

紅「さすがジャンクね。口もきけないようだわ」

紅「いいわ。勝手に探すから」ドタドタ

蒼「……無駄だよ」

紅「えっ……」

蒼「もう……ジュン君はいないよ」

175: 2008/12/28(日) 09:22:58.53 ID:HWic3waj0
紅「休日出勤かしら? 大変ね。あなたみたいな不出来な嫁を持つと」

蒼「……」

紅「なら、帰ってくるまで待たせてもらおうかしら」

紅「あら、お茶は勝手に煎れさせてもらうから結構よ。あなたじゃ、何を入れるかわかったものじゃないですもの」

蒼「……」

紅「……」

蒼「……ジュン君は……もう帰ってこないよ……」

紅「……どういうことかしら」

176: 2008/12/28(日) 09:25:55.65 ID:HWic3waj0
翠「ここが水銀燈の家ですか……」

雛「家というか……アパートなの」

翠「ずいぶんとぼろっちいところですね。ええと、これがインターホンですか」ピンポーム

銀「はぁい」

銀「あ、あら」

178: 2008/12/28(日) 09:34:59.14 ID:HWic3waj0
銀「なんのようかしらぁ?」

翠「とりあえずなかにいれろですぅ。別に昨日のことを咎めに来たわけじゃねーです」

雛「雛たちは水銀燈に質問をしに来ただけなのよ」

銀「質問だけなら、玄関でも良いんじゃないのぉ?」

翠「まあそういうなです、せっかくかわいい姉妹が寒い中やってきたんですからお茶くらい入れろです」ズカズカ

銀「あ、ちょっと!」

雛「おじゃましますなの!」トコトコ

銀「(これはまずいわね……ジュンに連絡しなくちゃ)」

銀「仕方ないわね、でもその前にちょっとお手洗いに行かせてもらうわぁ」

翠「わかったです……」

ガチャ

JUM「水銀燈! 今着いたよ!」

翠・雛・銀「!!!!!」

JUM「!」

179: 2008/12/28(日) 09:35:26.00 ID:HPRp2ZgUO
俺「休日出勤か? 大変ね。あなたみたいな不出来な嫁を持つと」

母「……」

俺「なら、帰ってくるまで待たせてもらおうか」

俺「あ、お茶は勝手に煎れさせてもらうから結構。あなたじゃ、何を入れるかわかったものじゃない」

母「……」

俺「……」

母「……ジュン君は……もう帰ってこないよ……」

俺「……どういうこと」


180: 2008/12/28(日) 09:43:58.63 ID:HWic3waj0
紅「もう帰ってこないとは……どういうこと?」

蒼「……言葉通りさ」

蒼「あははは」

蒼「あはは……僕ね、捨てられちゃったんだ」

蒼「ジュン君なら今頃、水銀燈のところじゃないかな?」

紅「…………」

紅「何故、そこで水銀燈の名前が出るの……」

紅「詳しく話しなさい……」

182: 2008/12/28(日) 09:51:43.56 ID:HWic3waj0
翠「どうして……ジュンがここにいるのですか?」

JUM「いや……それは」

銀「……」

雛「確定的ね……。ほんの小さなほころびだったけれど、私たちは気づいてしまった」

184: 2008/12/28(日) 09:58:36.66 ID:HWic3waj0
JUM「な、なにをいってるんだよお前ら。俺はただ昨日のお礼を言いにこようと思っただけで」

雛「ジュン、下手な良いわけはもういいのよ」

翠「…………水銀燈。やっぱりおめーもジャンクでしたか」

銀「――っ!」

JUM「翠星石!」

翠「あっちこっちに手を出すおめーもおめーですが……」

JUM「違う、俺は!」

紅「生涯に一人の女性しか愛していない、とでもいうつもり?」

JUM「!」

紅「この子から、話は全て聞いたわ」

蒼「……」

188: 2008/12/28(日) 10:07:33.45 ID:HWic3waj0
JUM「蒼星石……」

蒼「…………水銀燈」

銀「な、なによぉ!」

蒼「僕らは君がうらやましいよ」

蒼「僕らが望んだもの全てを持っている君が」

195: 2008/12/28(日) 10:13:12.13 ID:HWic3waj0
蒼「それは、昨日まで僕が全て所有しているものだとばかり思っていた」

蒼「でも、本当は一滴の愛情すらも僕には注がれず、僕を通して潤い続けていたのは君だった」

蒼「全てが虚だったと知った今、僕が望むのはほんのわずかの確かな愛情」

蒼「これは妥協なのかもしれないけど、真紅と話し合って決めたことだ」

蒼「水銀燈、僕は君を   」

198: 2008/12/28(日) 10:21:21.22 ID:HWic3waj0
翠「真紅……話がみえねーです」

紅「蒼星石は、分け合うことを望んだの」

紅「それは、私たちの望みと同じこと」

翠「ということは」

紅「蒼星石は私たちからジュンを奪っていったことを深く反省し、共有することに決めたの」

紅「つまり、これからは蒼星石も含め桜田家で以前のように生活するということ」

紅「だけど、それには大きな障害がある……水銀燈」

紅「だから、私たちは彼女を排除しなければいけない」

202: 2008/12/28(日) 10:28:23.64 ID:HWic3waj0
銀「蒼星石――その包丁はどういうつもりよぉ……」

蒼「君を。刺し。頃す」

JUM「ヒッ」

蒼「あ、ジュン君には何もしないから安心してね」

銀「……ちょっと――冗談じゃないわよ?」

蒼「当たり前だ! 冗談じゃすまされないんだよ……」

204: 2008/12/28(日) 10:36:29.41 ID:HWic3waj0
蒼「ジュン君……これが終わったら、また僕たち四人で一緒に暮らそう」

蒼「そして、これからは僕たち四人に平等に愛情を分けてくれたらいい」

蒼「僕らの空っぽだった数年間の代償は、そうして少しづつ清算してくれればいいから」

翠「さぁ、水銀燈……観念するです」ガシッ

雛「おとなしくするのー」グシッ

銀「や、やめなさいっ! あっ……あっ……あなたたちっ――自分で何をやっているかわかってるの!」

紅「ふふっ、無様ね水銀燈」

JUM「あわわわわわ」ガクガク

蒼「それじゃあ、いくよ」

グサッ

208: 2008/12/28(日) 10:44:53.71 ID:HWic3waj0
銀「あっ……アっ……」

蒼「もう一度」グサッ

銀「ひぎっ――」

蒼「まだ」グサッ

銀「ァ――」

蒼「水銀燈」グサッ

銀「――」

蒼「君が」グィ…

蒼「レンピカ」

蒼「僕からジュン君を奪った日数分だけ」ジャキッ

蒼「刻んであげるよ」グチィ

銀「      」

JUM「ひぃああああああああ」

213: 2008/12/28(日) 10:49:17.20 ID:HWic3waj0
蒼「あはははは」グチャ

銀「     」

蒼「あはは……」グチ

銀「     」

蒼「…………」グチュ

紅「終わったようね……」

JUM「お、おまえら――」

紅「怖がることはないのよ、ジュン。悪夢はたった今終わったの」

紅「ここから先は、良いことしか起きない世界」

214: 2008/12/28(日) 10:55:26.04 ID:HWic3waj0
紅「いいこと、これからあなたは私たち4人を平等に愛するのよ」

JUM「あ……ぁ……」

紅「さぁ、ジュン早く抱っこしてちょうだい」

雛「あ! 真紅ばっかりずるいのー!」

翠「ここは一番お姉ちゃんの翠星石からするのが筋ってもんです」

紅「もう……あせることなんてないのよ。これからジュンはどこにも行かないんだから」

紅「私たちと永遠に暮らすの」

紅「みんなのジュンとして」

紅「ねぇ、そうでしょ」ニコリ

217: 2008/12/28(日) 11:00:59.48 ID:HWic3waj0
一応、これで終了です。

本来は、>>18まで書いたところでネタ切れだったのですが、最後まで書き切れてよかったです。
その後はいろいろと迷走してどこかで見たオチになってしまったので、次回からはプロットをきちんと決めて取りかかりたいと思います。

219: 2008/12/28(日) 11:02:18.85 ID:WTfuCycDO
おつ

223: 2008/12/28(日) 11:09:53.75 ID:HWic3waj0
支援やレスをくださった方々、本当にありがとうございました。
最後に需要がないかもしれませんが、本編にはさめなかったJUMと水銀燈のエピソードを投下したいと思います。
時系列的には>>1の半年くらい前です。

224: 2008/12/28(日) 11:13:10.20 ID:HWic3waj0
JUM「あれ?」

銀「あら?」

JUM「久しぶり」

銀「久しぶりねぇ」

226: 2008/12/28(日) 11:17:49.95 ID:HWic3waj0
JUM「また君と会えるなんて思ってもみなかったよ」

銀「またあえて嬉しいわぁ」

JUM「君からそんな言葉が聞けるなんてね」

銀「あら、本心を言ったまでよぉ?」

銀「! その指……」

JUM「……ああ。俺、結婚したんだ、蒼星石と」

229: 2008/12/28(日) 11:20:21.35 ID:HWic3waj0
銀「……そ、そうだったの」

銀「どうして姉妹であるこの私を式に呼ばなかったのよぉ」

JUM「それは君が、音信不通だったからだろ……」

銀「……そうだったかしらぁ」

JUM「ずっと会いたかったのに……」

銀「……」

231: 2008/12/28(日) 11:24:06.33 ID:HWic3waj0
銀「それじゃあ、私はもう行くわ」

JUM「あ、待ってくれ水銀燈」

銀「やっとで……名前で呼んでくれたわね」

JUM「…………連絡先を教えてくれないか」

銀「それを知って、どうするつもり?」

233: 2008/12/28(日) 11:29:49.33 ID:HWic3waj0
JUM「……」

銀「本当にお馬鹿さんねぇ」

銀「ケータイ、貸しなさい」ピッピッ

銀「ほら、これでいいわよ」

JUM「水銀燈……ありがとう」

銀「……」

JUM「じゃあ、また」

銀「また……」

235: 2008/12/28(日) 11:32:55.30 ID:HWic3waj0
PLLLLLPLLLLLLピッ

銀「はぁい」

JUM「あ、水銀燈。俺だけど……今晩暇かな?」

銀「暇だったら……どうするの?」

JUM「映画でも、いっしょにどうかな」

銀「それ、本気で言ってるの?」

237: 2008/12/28(日) 11:34:53.14 ID:HWic3waj0
JUM「本気だよ」

銀「……ばっかみたぁい……映画なんて、蒼星石とでも行けばいいじゃない。結婚してるんでしょ?」

JUM「俺は、君とがいいんだ」

銀「嫌よ、映画なんてガキくさい……」

JUM「俺たちが最後に別れたのが中学生の頃だったからさ……」

JUM「もう一度、あの頃の続きから始めたいんだ……」

239: 2008/12/28(日) 11:38:05.10 ID:HWic3waj0
銀「あのねぇ」

銀「いくらあなたが願ったところで、昔は昔、今は今なのよ?」

銀「あの頃にはもう永遠に戻れないの」

銀「今のあなたは……蒼星石を大事にしてあげなさい」

銀「それじゃあ……」プチッ

245: 2008/12/28(日) 11:42:03.44 ID:HWic3waj0
銀「……」

銀「……はぁ」

267: 2008/12/28(日) 12:37:45.64 ID:HWic3waj0
JUM「……はぁ」

蒼「ジュン君どうしたの?」

JUM「……いや」

蒼「そう……」

271: 2008/12/28(日) 12:42:57.23 ID:HWic3waj0
PLLLLPLLLLPLLLL.....

銀「……」

PLLLLPLLLLPLLLL.....

銀「懲りない男ね」ピッ

銀「もしもし」

272: 2008/12/28(日) 12:49:33.25 ID:HWic3waj0
JUM「よかった……繋がって」

銀「今度は何の用?」

JUM「今週末さぁ、一緒に出かけないかい?」

銀「……あなた」

JUM「…………」

銀「……いいわよ」

JUM「!」

276: 2008/12/28(日) 12:55:39.84 ID:HWic3waj0
銀「でも、これで最初で最後よ……それで、過去の蟠りは全て清算……」

銀「終わった後は私たちはお互いを忘れて、新しい道を歩き出すの……」

銀「それが条件……」

JUM「……わかった」

278: 2008/12/28(日) 12:57:27.29 ID:HWic3waj0
JUM「蒼星石……」

蒼「うん……」

JUM「今週の日曜日だけどさ……」

蒼「うん……」

JUM「急な仕事が入ってさ……」

蒼「うん……」

JUM「ごめん……」

蒼「……うん」

280: 2008/12/28(日) 13:03:14.46 ID:HWic3waj0
銀「あら、遅いわよぉ」」

JUM「一応、15分前なんだけどな」

銀「うふふ……そうかしら、一秒でも早くあなたに会いたかったから。あわてて来ちゃったのよ」

銀「今日はどこに連れて行ってくれるの?」

JUM「最初に行く場所は決めてあるんだ」

281: 2008/12/28(日) 13:06:54.90 ID:HWic3waj0
銀「劇場版くんくん探偵-からくり神社殺人事件-……」

銀「結局ここに来るんじゃなぁい」

銀「それにこの映画」

JUM「水銀燈はくんくん好きだからな」

銀「昔の話よ……」

282: 2008/12/28(日) 13:12:13.89 ID:HWic3waj0
銀「……」

JUM「……」

銀「ねぇ……」

銀「手……」

JUM「うん……」ギュ

283: 2008/12/28(日) 13:16:59.04 ID:HWic3waj0
銀「……ふふっ」

JUM「?」

銀「子供の頃は照れくさくて出来なかったくせに」

銀「大人になった今では出来るのね」

銀「ただ手を握るだけのことが、あの頃はどうしようもなく恥ずかしくて」

銀「あなた、こんなに簡単にやってのけたのよ」

285: 2008/12/28(日) 13:21:11.67 ID:HWic3waj0
銀「変わったのね……」

JUM「あの頃は、触れてしまうと君との関係が壊れてしまう気がして」

JUM「とても繊細で脆いものだと思っていたから」

JUM「でも、今はもうこの手から放したくないから握っている」

288: 2008/12/28(日) 13:23:10.56 ID:HWic3waj0
JUM「もうこの手は放さない」

JUM「水銀燈、俺は」

銀「だめよぉ……」

銀「だぁめ……」

295: 2008/12/28(日) 13:32:30.51 ID:HWic3waj0
JUM「君のいなかった数年間。俺はからっぽだった」

JUM「胸にぽっかりと穴が開いたような気がして」

JUM「それを別のもので塞いでいくのは苦痛だった」

JUM「でも――なあ、水銀燈。昔のことはもう良いんだ」

JUM「俺たちの前にはまだまだ多くの開かれた時間があるんだ」

JUM「もう一度、やり直せないかな」

304: 2008/12/28(日) 13:43:10.04 ID:HWic3waj0
JUM「せめて……あの日から今までの失われてしまった俺たちだけの時間だけでも」

JUM「閉じられてしまった時間はもう変えようがないけれど、それらは全て何とか出来ることなんだ」

JUM「俺は水銀燈を離さない……」

JUM「だから後は君が望んでくれるだけで、俺たちは救われるんだっ!」

305: 2008/12/28(日) 13:46:09.22 ID:HWic3waj0
銀「……声」

JUM「あ……」

銀「静かにしなきゃ」

銀「……」

銀「もしそれで私たちは救われたとしても」

306: 2008/12/28(日) 13:49:12.60 ID:HWic3waj0
銀「そうじゃない人もいる」

銀「その指輪……」

JUM「…………」

JUM「今すぐにはどうにかなることじゃないけど、何とかしてみせる」

JUM「上手くやるよ」

309: 2008/12/28(日) 13:51:50.08 ID:HWic3waj0
銀「それは一体どういう意味なの?」

JUM「悲しいことなんて起きない世界を作ってみせる」

JUM「みんなが笑顔でいられるように」

JUM「上手く立ち回ってみせる」

310: 2008/12/28(日) 14:00:33.24 ID:HWic3waj0
銀「…………そう」

JUM「だから、また会おう」

JUM「もう、君のいない世界なんて考えられない」

銀「…………」

銀「ねぇ、あなたの中で私は1番?」

JUM「当然さ」

銀「……2番はいるの?」

JUM「……蒼星石かな」

318: 2008/12/28(日) 14:10:47.80 ID:HWic3waj0
銀「そう……じゃあ、これからも私が一番よ……ずっと」

JUM「うん」

銀「じゃあ、して」

銀「誓いのキスを」

JUM「うん」チュ

銀「…………」

銀「また、会いましょう」

319: 2008/12/28(日) 14:13:12.21 ID:HWic3waj0
gdgdになってきたんでここらで終わります。
考えなしにいきなり書くもんじゃないってことがわかりました。特に番外編は完全に黒歴史ですね……。
それでは、お目汚し失礼しました。

324: 2008/12/28(日) 14:23:16.15 ID:SX7oTgHx0
面白かった、乙

引用: 蒼星石「あれ……この羽は……?」