339: 2008/12/24(水) 17:51:15.44 ID:YdZ/m9ji0
㌧、では
真紅「ジュンって絶対私の事好きなのだわ」の続きから



真紅「……あれがどうしたっていうの。蒼星石とジュンが親しい事ぐらい知ってるわ……」

水銀燈「くすくす…声が震えてるわよぉ、真紅ぅ」

真紅「……」

水銀燈「あなたのマスターは一人になるって言って出ていったのよねえ…くすくす」

真紅「……何が言いたいの?」

水銀燈「わざわざ別の理由を付けて会うんだもの。まるで逢引ねえ…くすくす」

翠星石「な、何を言うですか! 蒼星石は翠星石に隠し事するような妹じゃねぇーです!! きっと…チビ人間から何か話があるんですよ……」

水銀燈「あらぁ~、誘い出したのは蒼星石だと言ったら?」

真紅&翠星石「!?」
ローゼンメイデン0―ゼロ― 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
343: 2008/12/24(水) 18:21:09.31 ID:YdZ/m9ji0
翠星石「な、な、な、何を言うですか! そんなのデタラメに決まってるです!!」

水銀燈「嘘かどうかは後で問いただしてみればいいじゃない。それに…私が嘘をいうメリットがあると思うのぉ? こんなすぐにバレそうな嘘を…くすくす」

翠星石「ききききっと、蒼星石の方から相談があるんですよ!」

水銀燈「それにしては随分親しげだこと。抱っこと頭を撫でて貰いながらの相談ねえ…くすくす」

翠星石「……」

水銀燈「あらあら…綺麗なお目々が潤んできたわよぉ…人間でいうなら男を盗られたってとこかしら? くすくす」


真紅「……不愉快だわ!」

344: 2008/12/24(水) 18:34:19.42 ID:YdZ/m9ji0
水銀燈「くすくす…とうとう本音が出たわねぇ」

真紅「……私が不愉快だと言ったのはあなたのことよ、水銀燈!」

水銀燈「なぁに? 八つ当たりならやめて頂戴」

真紅「こんな根も葉もない話をぺらぺらと……」

水銀燈「あぁっはっはっは…」

真紅「……何がおかしいの?」

水銀燈「くくっ…何がって……目の前の情事を見て根も葉もないとか……おっかしくってぇ…くすくす」

真紅「……」

水銀燈「くくっ…あなたのその顔、最高だわぁ…くくく…」


真紅「……帰るわよ、翠星石」

345: 2008/12/24(水) 18:36:47.79 ID:YdZ/m9ji0
翠星石「……」

真紅「翠星石?」

翠星石「翠星石はまだここにいるですぅ……」

真紅「……勝手にしなさい!」



翠星石(ジュン……蒼星石……)

346: 2008/12/24(水) 18:45:45.40 ID:YdZ/m9ji0
水銀燈「ふふふ…真紅は帰っちゃったわよ」

翠星石「……」

水銀燈「妹と自分のマスター…さぞかし複雑な気分でしょおねえ?」

翠星石「……」

水銀燈「あなたはこう考えているのかしら? 何故自分でなくて妹の蒼星石なのか…」

翠星石「っ……」

水銀燈「くすくす…かわいいわぁ……」

翠星石「……れです……」

水銀燈「……なぁに? 声が震えて聞こえないわよぉ」


翠星石「帰れです!」

347: 2008/12/24(水) 18:53:16.72 ID:YdZ/m9ji0
水銀燈「もぉ…真紅といい……八つ当たりはやめて頂戴」

翠星石「うるさい、うるさいです! とっととどっか行っちまえです!」

水銀燈「かわいい妹が悲しんでいるんだもの…ほっとけないわぁ……くすくす」

翠星石「心にも無いことを……」

水銀燈「本当に心配してるのよぉ?……くすくす」

翠星石「……」

水銀燈「かわいい妹の為だものぉ…お姉さんが一肌脱いであげなくっちゃあ?」

翠星石「……何がですか……?」

水銀燈「うふふ……蒼星石があんなに親密になれた理由を知りたくなぁい?」

翠星石「!?」

348: 2008/12/24(水) 19:06:47.81 ID:YdZ/m9ji0
水銀燈「ここはnのフィールド…あなたのマスターの夢もどこかにあるのよねえ?」

翠星石「……」

水銀燈「マスターの心の樹はどんな形をしているかしらぁ?」

翠星石「……!」

水銀燈「そういえば心の樹を…」

翠星石「嘘です!」

水銀燈「……」

翠星石「蒼星石は……そんな事の為に……心の樹を斬ったりしねえです!!」

水銀燈「あらぁ?」

翠星石「嘘です! 嘘です! 水銀燈の言うことなんか嘘っぱちです!」



水銀燈「落ち着きなさぁい。私…”蒼星石が心の樹を斬った”なんて一言もいってないわよぉ? くすくす」

351: 2008/12/24(水) 19:18:09.05 ID:YdZ/m9ji0
翠星石「!?」

水銀燈「双子の姉にあらぬ疑いをかけられるなんて……かわいそうな蒼星石……くすくす」

翠星石「べ、別に翠星石は蒼星石を疑ってなんか…」

水銀燈「あらぁ? さっきあなたの口から出た言葉は何かしらぁ」

翠星石「……」

水銀燈「くすくす…そんな言葉が出るって事は、そう考えてるって思われてもしょうがないわねぇ」

翠星石「す、水銀燈が嘘を言うから…」

水銀燈「嘘?」


翠星石「……そうです! みんな水銀燈の嘘に決まってるです!!」

352: 2008/12/24(水) 19:24:54.19 ID:YdZ/m9ji0
水銀燈「いい加減にしなさい!」

翠星石「!?」

水銀燈「あなた……自分の言葉を私に擦り付けるつもりぃ?」

翠星石「……」

水銀燈「あなたが蒼星石を疑ってるって事は顔を見れば分かるのよぉ」

翠星石「……そんなこと…」

水銀燈「黙りなさい!!」

翠星石「!?」


水銀燈「泣き言なんてウンザリよ……もぉ帰るわぁ。後はあなたの好きにしなさぁい」

363: 2008/12/24(水) 21:00:50.01 ID:6kP6Atb50
そうか…では続きを



翠星石(蒼星石が心の樹を斬るなんてありえないです……)

翠星石(でも……)

翠星石(……)

翠星石(……蒼星石の潔白を証明するためにも……)

翠星石(ジュンの夢の中に入って……)



翠星石(確かめてみるです!)

364: 2008/12/24(水) 21:01:51.14 ID:6kP6Atb50
―――――――――――JUMの夢の中―――――――――――

翠星石「相変わらず辛気臭い所ですね……確かジュンの心の樹はあっちの方に……」



翠星石「あった……です」

ジュンの心の樹は以前と変わらぬ姿を…いや少しばかり成長した姿で翠星石を出迎えた



翠星石「……これは」

366: 2008/12/24(水) 21:08:26.82 ID:6kP6Atb50
翠星石「どこにも斬った後なんか無いです。やっぱり嘘つきは水銀燈のほうです!」



水銀燈「…くすくす…」



翠星石「水銀燈!?」

水銀燈「あらぁ……あなた、蒼星石はそんなことしないって言っても、やっぱり疑ってたのねえ…くすくす」

翠星石「こ、これは……違うです!」

水銀燈「何が違うって言うの? 現に今あなたはマスターの心の樹へ来ているじゃない」

翠星石「……翠星石は蒼星石の潔白を証明しようと……」

水銀燈「潔白? だれに証明しようって言うの。疑ってるのはあなただけじゃない?」

翠星石「!?……違うです!!」

368: 2008/12/24(水) 21:18:02.46 ID:6kP6Atb50
翠星石「違うです! 違うです! 違うです! 翠星石は蒼星石を疑ったりなんかしねぇーです!!!」

水銀燈「…くすくす…」 チャキッ

水銀燈はゆっくりとした動作で細身の剣を背中の翼から抜きとった

翠星石「なっ!?」

水銀燈「くすくす…本当におめでたいわねぇ……こんな時まで心の保身だなんてぇ……もっと他に守るものがあるでしょうに?」

翠星石「一体何のつもりですか!」ズザザッ

水銀燈から距離をとるように後ずさる翠星石

水銀燈「何の? ……ローゼンメイデンが出会ってする事といえばひとつでしょ? くすくす……」



翠星石「……アリス……ゲーム……」

369: 2008/12/24(水) 21:27:09.64 ID:6kP6Atb50
水銀燈「さぁ…覚悟はいいかしら?」

翠星石「……最初から……このつもりで……」

水銀燈「あらぁ? ここに来たのはあなたの意思でしょ。 さっきの場所なら愛しいマスターと最愛の蒼星石が助けに来てくれたのにねぇ…くすくす」


翠星石「……スィドリー…」

ガスッ!

人工精霊を呼び出すよりも早く水銀燈の剣は翠星石の胸を貫いていた

翠星石「くぁ……」


水銀燈「くすくす……本当にお馬鹿さぁん。群れから離れた小鳥は狩られるだけなのにぃ……くすくす」

372: 2008/12/24(水) 21:39:21.77 ID:6kP6Atb50
――――――――――――――――――――――


JUM(あれ? 指輪が小さくなったような……)

蒼星石「どうしたの? ジュン君」

JUM「いや…何でもないよ。……ありがとう蒼星石、久しぶりに静かな時間を過ごせたよ」

蒼星石「え? そんな……。僕がいて邪魔じゃなかった?」

JUM「邪魔だなんて…お前は他の姉妹と違っておとなしいからな。また今度一緒に来てもいいか?」

蒼星石「ほ、本当!? いいの? 僕が一緒でも…」

JUM「あぁ…お前が嫌じゃなければ」

蒼星石「嫌だなんて……ジュン君と一緒なら毎日だって……」

JUM「ん?」


蒼星石「な、何でもないよ!」

373: 2008/12/24(水) 21:45:58.95 ID:6kP6Atb50
――――――――――――――――――――――


蒼星石(あ~夢みたいだなあ……ジュン君とあんなに親密になれるなんて……)



水銀燈「くすくす……その様子だとうまくいったみたいねぇ」



蒼星石「あっ、水銀燈!」

水銀燈「よかったわねぇ、あなたが喜んでくれて私も嬉しいわぁ」

蒼星石「ありがとう! 君にはどれだけ感謝していいのか……」

水銀燈「くすくす……感謝したいのは私よぉ…」

蒼星石「え?」


水銀燈「何でもないわぁ……くすくす」

377: 2008/12/24(水) 21:53:24.87 ID:6kP6Atb50



蒼星石「……それでね、ジュン君は僕を抱っこして頭を撫でてくれたんだ」

水銀燈「ふふっ、うらやましいわぁ~」

蒼星石「あはは…これもみんな水銀燈のおかげだよ」

水銀燈「あら?」

蒼星石「どうしたの?」

水銀燈「服のフリルが曲がってるわぁ」

蒼星石「あっ…たぶん抱っこしてもらった時に」

水銀燈「ほら、後ろを向いて。世話の焼ける妹ねぇ……くすくす」

蒼星石「……ありがとう……お姉さん……」



水銀燈はこっそりと蒼星石の服に翠星石のヘッドドレスと人工精霊を忍ばせた

378: 2008/12/24(水) 22:01:33.97 ID:6kP6Atb50
―――――――――――翌日―――――――――――

蒼星石「こんにちは~」



JUM「あぁ」

雛苺「蒼星石なの~」

真紅「……」

379: 2008/12/24(水) 22:07:35.62 ID:6kP6Atb50
雛苺「蒼星石、一緒に遊ぶの~!」

蒼星石「うん、今日は何をしようか?」

真紅「雛苺!」

雛苺「うゆ…?」

真紅「蒼星石とお話がしたいの……遊びは後にして貰えないかしら?」

蒼星石「話?」

真紅「えぇ、ここではちょっと……着いてきてくれるわね?」

蒼星石「? ……うん」



雛苺「う、うゆ……」

JUM「ほら、真紅達は話があるってさ。こっちでくんくんでも見てろよ」

雛苺「……ういー」

380: 2008/12/24(水) 22:13:57.81 ID:6kP6Atb50
―――――――――――物置―――――――――――


蒼星石「話って何だい? 真紅」

真紅「……」

蒼星石「黙ってちゃ分からないよ……」

真紅「あなた……」

蒼星石「?」

真紅「昨日はどこに居たのかしら?」

蒼星石「え!? ど、どこにって……おおおおじいさんの家に居たよ……」

真紅「……」


蒼星石(も、もしかして疑われてる……?)

382: 2008/12/24(水) 22:21:00.79 ID:6kP6Atb50
真紅「……」

蒼星石「……(気まずいよ~~)」

真紅「……昨日からね…」

蒼星石「き、昨日?」

真紅「翠星石の姿が見えないの……」

蒼星石「す、翠星石が!? (そういえばリビングには居なかった)」

真紅「……あなたなら知っているんじゃないかと思って」

蒼星石「ごめん……僕も翠星石がどこに居るのか知らないんだ」

真紅「そう……あなたのマスターの家に行っているのかと…… き の う か ら ね 」



蒼星石「……」

383: 2008/12/24(水) 22:28:06.55 ID:6kP6Atb50
真紅「蒼星石……あなた、私に隠し事をしてないかしら?」

蒼星石「か、隠し事だなんて、そんな……」

真紅「……」

――――――――――――――――――――――

「くすくす……そろそろ頃合かしらぁ? ……スィドリーム……」

――――――――――――――――――――――

蒼星石の服の中に潜んでいたスィドリームは翠星石のヘッドドレスと共に真紅の目の前に飛び出してきた



真紅&蒼星石「!?」

385: 2008/12/24(水) 22:34:40.68 ID:6kP6Atb50
蒼星石「これは……翠星石の!?」

真紅「……これはどういうことかしら……説明して頂戴」

蒼星石「説明っていっても……僕にも何が起こっているのか……」

真紅「説明して頂戴! 昨日はどこに居たの?」

蒼星石「だ、だからマスターの家に…」



真紅「い い 加 減 に し て !!」

387: 2008/12/24(水) 22:52:27.49 ID:6kP6Atb50
蒼星石「!?」

真紅「あなたが隠れてジュンに会っていたのは知っているわ!」

蒼星石「! み、見てたのかい。酷いや…覗くなんて……」

真紅「今はそんな事どうだっていいの! あなた…翠星石を一体どうしたの!! 」 

蒼星石「……え?」

真紅「翠星石はね……あなた達の密会を見た後から姿を消したの!」 

蒼星石「す、翠星石も……」

真紅「それに…あなたの服から出てきたスィドリームとヘッドドレス……どう説明するつもりかしら?」 

蒼星石「……」

真紅「説明して頂戴!」


蒼星石「真紅は……僕が翠星石をどうにかすると思ってるの……」

389: 2008/12/24(水) 22:58:01.99 ID:6kP6Atb50
真紅「あなたの感想は聞いていない! ヘッドドレスの説明をして欲しいのだわ!!」

蒼星石「僕だって何故服に紛れ込んでいたのか分からないんだ……」

真紅「……」

蒼星石「ねえ、信じて真紅……僕にも何が起こっているのか分からないんだ……」

真紅「……いいわ」

蒼星石「真紅!」



真紅「もうあなたには何も聞かない……スィドリーム……翠星石に何があったのか教えて頂戴」

391: 2008/12/24(水) 23:05:46.01 ID:6kP6Atb50
スィドリーム「……」チカチカ

真紅「……」

蒼星石「!? な、何を言っているんだ……スィドリーム……」

真紅「……これはどういうことかしら……?」

蒼星石「嘘だ! スィドリームは嘘を言っている!!」

スィドリーム「……」チカチカ

真紅「……かわいそうに……今助けにいくわね……」

蒼星石「ち、違う……僕は…僕は……」

真紅「いい加減にしなさい!! これは遊びの範疇を超えているわ!」



蒼星石「違う! 僕は……翠星石を閉じ込めたりなんかしてない!!」

393: 2008/12/24(水) 23:23:57.22 ID:6kP6Atb50
真紅「ジュンを独り占めしたいからって、翠星石を閉じ込めるなんて……」

蒼星石「違う! 違う! 嘘だと言ってくれ! スィドリーム!!」

真紅「この期に及んでまだ白を切るつもり……?」

蒼星石「僕を信じて! 真紅……」

スィドリーム「……」チカチカ

真紅「あなたは……ジュンとの密会を私に知られるのを恐れて翠星石を閉じ込めたって……」

蒼星石「!? 違う…違うんだ……」

真紅「……本当はジュンに助けを求めようとしたのね。こんな時にも私に気をつかって……」

蒼星石「お願い……信じて……」



真紅「黙りなさい!! ジュンは私のマスターよ!! あなたになんて……」

395: 2008/12/24(水) 23:30:38.07 ID:6kP6Atb50
――――――――――――――――――――――

「くすくす……恋は盲目って本当ねぇ。あの聡明な真紅がぁ……くすくす」

――――――――――――――――――――――


真紅「私はね……あなたなんかよりもずーっとジュンと一緒だったの……それを横から盗ろうなんて……」

蒼星石「し、真紅……?」


――――――――――――――――――――――

「あはは、翠星石じゃなくて本音が出ちゃってるわよぉ~真紅ぅ」

――――――――――――――――――――――


真紅「ジュンと私の絆はね……あなたなんかに壊せるようなものじゃないの!!」

蒼星石「落ち着いて……真紅……」

396: 2008/12/24(水) 23:35:41.38 ID:6kP6Atb50
真紅「例えあなたが私達の間に立ち塞がろうとも……ジュンが一番好きなのは……」

蒼星石「話を聞いて……真紅」



真紅「ジュンって絶対私の事好きなのだわ」



――――――――――――――――――――――

「あ~~はっはっ、傑作だわぁ! 真紅の口からこんな台詞を聞けるなんてぇ」

――――――――――――――――――――――

402: 2008/12/24(水) 23:48:12.10 ID:6kP6Atb50
真紅「はぁ…はぁ……」

蒼星石「……」


――――――――――――――――――――――

「くくくっ…って、あらぁ…もうおしまい?」

――――――――――――――――――――――


真紅「……いいこと……ジュンは誰にも渡さないわ……」

蒼星石「……」

真紅「何か言ったらどう?……あなたは分身ともいえる翠星石を閉じ込めてまでジュンを奪おうとしたんでしょ?」

蒼星石「だからそれは違…」

真紅「まだ白を切るつもりなの! ……いいのよ、昔みたいにアリスゲームを始めてあげたって……」

蒼星石「し、真紅……」

403: 2008/12/24(水) 23:55:25.58 ID:6kP6Atb50
――――――――――――――――――――――

「くすくす…面白くなってきたわね……」

――――――――――――――――――――――


真紅「ホーリエ……」

蒼星石「やめて……真紅」

真紅「ローズ…」

蒼星石「お願い……」

真紅「……」ピタッ

蒼星石(分かってくれた!?)



真紅「ここじゃ部屋を汚してしまうわ。行きましょう……nのフィールドへ」

蒼星石「っ……!?」

408: 2008/12/25(木) 00:35:19.30 ID:vqcH3eMB0
―――――――――――nのフィールド―――――――――――


ズガガガガガガ!!

真紅から放たれた薔薇の花弁はnのフィールドを削りながら蒼星石を追尾していた

真紅「ほらっ、早く翠星石の場所へ案内しなさい!!」

蒼星石「やめて! 本当に…本当に僕は何も知らないんだ……」

真紅「……さっきもそうやって嘘をついたわね……あなたってホント……油断ならない子」

蒼星石「……」


――――――――――――――――――――――

「あ~あ~、あの子ったら逃げ回ってばかりじゃない。つまんなぁい……そろそろ出番かしらね?」

――――――――――――――――――――――

410: 2008/12/25(木) 00:47:15.89 ID:vqcH3eMB0
蒼星石「てやっ!」シュッ

帽子を花弁にぶつけて相頃した瞬間、帽子と花弁はピンクの爆風を上げ、辺り一体を煙で包んだ

真紅「くっ……視界が…」

ガシッ

真紅「な!?」

背後から忍び寄った蒼星石は真紅を羽交い絞めにし、体の自由を奪った

蒼星石「もう止めてよ、真紅! 本当に何も知らないんだ……信じて…僕を」

真紅「……こんな体勢で信じろというの?」

蒼星石「……僕は話し合いたいんだ…だからこの手を離すよ…真紅に、信じてもらいたいから」

真紅「……」



水銀燈「駄目よ! まだ手を離しちゃあ」

412: 2008/12/25(木) 01:01:15.44 ID:vqcH3eMB0
真紅&蒼星石「水銀燈!?」

水銀燈「その子はまだ頭に血が上ってるわぁ。ひとまず頭を冷やしてもらわなきゃあ」

蒼星石「あ…うん」

真紅(何故、水銀燈がここに……それに蒼星石の従順っぷりは一体……?)

水銀燈「私がその子を眠らせてあげるから、そのまま捕まえてなさぁい」

蒼星石「え……あ…はい」

真紅「(偶然にしてもタイミング良すぎる……これはまずいわ!)……離しなさい、蒼星石! 私はもう正気よ!」ジタバタ

蒼星石「ごめん真紅……でも水銀燈に任せれば何もかも……」

真紅「離しなさい! 離しなさい! これは水銀燈の罠よ!!」バタバタ



水銀燈「うふふ…いい子ね。蒼星石」バサッ

水銀燈は翼を広げ、真紅達に向かって一直線に飛び立った

413: 2008/12/25(木) 01:15:38.66 ID:vqcH3eMB0
蒼星石「大丈夫だよ、真紅……次に目を覚ました時には、きっと何もかも解決出来るはずさ……水銀燈がいれば」

真紅「頭を冷やすのはあなたの方よ、蒼星石! こんな都合よくnのフィールドで遭遇する訳ないじゃない!」

蒼星石「大丈夫……大丈夫だから」



水銀燈「そうね、大丈夫よぉ。眠りから覚めれば……永遠に覚めない眠りにつくけどねぇ!」シャキン

翼から剣を取り出すと、真紅と蒼星石に向けて加速した。その鋭い剣先を二体のドールに狙いを定めて…



蒼星石「え……?」

真紅(間に合わない!?)



グサッ!

415: 2008/12/25(木) 01:26:52.11 ID:vqcH3eMB0
蒼星石「あっ…あっ……?」

水銀燈「ちっ!」

真紅「う……」

剣は真紅の胸を貫通し、蒼星石は肩を射抜かれていた。

蒼星石「な、なんで……? 真紅…真紅!」

真紅「っ……本当に世話の焼ける……姉だこと……」

剣先で貫かれる瞬間、真紅はツインテールの髪を振り回し、蒼星石は胸が貫かれるのを免れていた

418: 2008/12/25(木) 01:34:08.09 ID:vqcH3eMB0
真紅「……だから言ったでしょ……罠だって……」

蒼星石「真紅! 真紅ぅ!」

真紅「……今は…私より……水銀燈を……」

蒼星石「はっ! レンピカ!!」ガキィン

真紅と蒼星石を背後から斬ろうとした水銀燈は、大きな鋏によってその刃を防がれていた

水銀燈「くっ!」



蒼星石「何で……」

419: 2008/12/25(木) 01:43:37.24 ID:vqcH3eMB0
蒼星石「何で…何で……こんな事を!?」

水銀燈「……」 チャキ

無言で剣を構えなおすと、蒼星石に向かってその刃を振り下ろした

ガキィィイン!

蒼星石「くっ!……止めてよ! 何でこんな事を!!」

そのまま無言で斬りかかる水銀燈に、蒼星石は鋏を盾に防戦一方であった
刃と刃がぶつかり合い、nのフィールドに金属音と火花を撒き散らした

水銀燈「……」シャッシャッ

蒼星石「やめて……君は、僕にあんなによくしてくれたのに……」キィンキィン



真紅「……目を覚ましなさい……蒼星…石……すべては…水銀t…の罠……」

421: 2008/12/25(木) 01:54:54.62 ID:vqcH3eMB0
真紅「っあ……」パシュ!

蒼星石「真紅!?」

水銀燈「……!」

真紅からローザミスティカが飛び出した瞬間
その場で立ち尽くす蒼星石に向かって水銀燈は体当たりを繰り出した

ズザァ!

蒼星石「あう!」

真紅「……」

蒼星石と真紅は押し出される形で地面に投げ出された



水銀燈は真紅のローザミスティカを手に取ると吐き捨てるようにこう言った

水銀燈「これは……私のものよぉ!」

424: 2008/12/25(木) 02:08:00.23 ID:vqcH3eMB0
蒼星石「真紅! 真紅!」

真紅「…今は…目の前の……水銀燈に…………ごめんなさい…私……あなたに…酷いことを……」ポロポロ

蒼星石「やだよ! こんなの!!」ポロポロ



水銀燈「真紅の忠告を聞いても、まだそのジャンクにかかりっきりだなんてぇ……ホント、お馬鹿さぁん」

蒼星石「…!」キッ!

水銀燈「あらぁ…? 何かしらその目は……」

蒼星石「……よくも…よくも……」

水銀燈「はぁ……?」



蒼星石「よくも、僕を……騙してくれたなぁあああああああ!!!」

427: 2008/12/25(木) 02:20:56.89 ID:vqcH3eMB0
水銀燈「騙したなんて人聞きが悪いわねぇ……」

蒼星石「最初から……ローザミスティカが目的で僕に近づいたのかい……」

水銀燈「アリスになるのが目的の私達に、それ以外の用でもあるっていうのぉ? くすくす」

蒼星石「……」ジャキ

水銀燈「くすくす……どうやらやる気になったみたいねえ。あのジャンクの忠告も無駄じゃ無かったってことかしらぁ?」

蒼星石「……」シャキン!シャキン!

水銀燈「あっ……私いいこと思いついちゃったぁ」

蒼星石「……その考えはあの世に持っていくんだね…今バラバラにしてあげるよ!」シャキン!シャキン!シャキン!



水銀燈「いいのぉ?…………翠星石の居場所が分からないままでも」

428: 2008/12/25(木) 02:27:27.11 ID:vqcH3eMB0
蒼星石「……」ピタッ

水銀燈「くすくす……いい子ねぇ」

蒼星石「……嘘だ」

水銀燈「え?」

蒼星石「きっと……翠星石のローザミスティカも君が持っているんだろう……」

水銀燈「……」

蒼星石「スィドリームが操られてるんだ……そう考えるのが……当然!」

水銀燈「ちっ……」



蒼星石「だから……君をバラバラにして返して貰う……ローザミスティカを!」

429: 2008/12/25(木) 02:35:40.13 ID:vqcH3eMB0
水銀燈「ローザミスティカが戻ってもねぇ~」

蒼星石「今更命乞いをしても遅いよ」

水銀燈「あなたねぇ…もっとよく考えなさぁい」

蒼星石「何を……?」

水銀燈「ローザミスティカが戻っても器が無きゃどうしようもないってことよぉ」

蒼星石「!! ……どこに隠した」

水銀燈「くすくす…それが人に物を頼む態度かしらぁ?」

蒼星石「……」

水銀燈「まあ…態度くらいじゃ教えられないけどねぇ…くすくす」

蒼星石「力づくでも……」ジャキ



水銀燈「待ちなさぁいって、ここは交換条件でいこうじゃないのぉ?」

432: 2008/12/25(木) 02:44:24.78 ID:vqcH3eMB0
蒼星石「……そんな話、僕が呑むとでも?」

水銀燈「いいえ、あなたは呑まざるをえない筈よ。今頃、翠星石は大好きなマスターと一緒にお寝んねしてる頃かしらぁ?」

蒼星石「!? ジュン君まで……」

水銀燈「くすくす…いい表情だわぁ~虐めたくなっちゃう」

蒼星石「……それで…」

水銀燈「くすくす…」

蒼星石「交換条件って何だい!!」

水銀燈「せっかちねぇ……くすくす」

蒼星石「……」

水銀燈「もっと虐めたいところだけど、まあいいわ…私ね、欲しいものがあるのぉ。それを蒼星石に持ってきて貰いたくて」

蒼星石「……何を?」



水銀燈「くすくす…それはね…………金糸雀のローザミスティカ」

458: 2008/12/25(木) 16:31:00.25 ID:PF+FeuOM0
―――――――――――草笛家―――――――――――


金糸雀「お腹空いたかしら~。みっちゃん早く帰ってこないかなあ?」

ガラガラッ

金糸雀「窓の音? 姉妹の誰かかしら……まさか水銀燈じゃあ……」ブルブル



トテトテトテ

金糸雀「……だ、誰かしら~、返事をするかしら……」ソ口リソ口リ

ガチャン!

金糸雀「ひ、ひぃいいいいいいいいいいいい!?」

カタ…カタ…カタ…

金糸雀「ロロロ、ローゼンメイデン一のさささ、策士…金糸雀がががお相手するかしら……」ガクガクブルブル

「……」スッ



金糸雀「あ、あなたは…………蒼星石」

462: 2008/12/25(木) 16:42:20.47 ID:PF+FeuOM0
蒼星石「……」

金糸雀「どうしたのかしら? あなたが一人で来るなんて珍しいわね」

蒼星石「……」

金糸雀「何かあったの……? とても神妙な顔をしているけれど……」

蒼星石「……」

金糸雀「……黙ってちゃ分からないかしら……悩み事ならこのお姉さんの金糸雀に話してみるかしら?」

蒼星石「…姉……さん…」ピクッ

金糸雀「! 蒼星石にお姉さんって呼ばれるなんて……姉さんはとっても聞き上手かしら~。さあ何でも言ってみるかしら!」

蒼星石「………ね…」

金糸雀「ん? 何かしら」



蒼星石「…ごめんね…」

463: 2008/12/25(木) 16:55:09.27 ID:PF+FeuOM0
金糸雀「……へ?」

蒼星石「ほんとに…本当にごめんね……」

金糸雀「な、何で謝るのかしら?」

蒼星石「すべては…僕が悪いんだ……」

金糸雀「……話がよく掴めないかしら?」

蒼星石「いいんだ……金糸雀は何も知らなくて……全ての罪は僕が」チャキ…

金糸雀「!? な、なんで庭師の鋏を構えるのかしら……」

蒼星石「後で僕も逝くよ……」シャキン!

金糸雀「ピピピピピピピピチカーーーート!……」



ガシャァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

465: 2008/12/25(木) 17:10:56.01 ID:PF+FeuOM0
―――――――――――nのフィールド―――――――――――


水銀燈「あら…早かったわね?」

蒼星石「……」

水銀燈「どう? 姉妹を手にかけた感想は……くすくす」

蒼星石「……」

水銀燈「ちょっとぉ…何か言ったらどお? ……まさか手ぶらで戻ってきたんじゃ……」

蒼星石「……」ポイッ

蒼星石は背後に持っていたバイオリンを水銀燈の足元へ放り投げた

弦は千切れ表面には無数の切り傷と剥き出しの木面が
バイオリンの主の状態を連想させた



水銀燈「あらぁ~蒼星石はやれば出来る子って信じてたわぁ…くすくす」

466: 2008/12/25(木) 17:19:59.66 ID:PF+FeuOM0
蒼星石「……」

水銀燈「ふふふ…いい表情になってきたわね。それでこそローゼンメイデンよぉ」

蒼星石「……約束は守ったんだ。ジュン君と翠星石の体を返して」

水銀燈「くすくす…それは私の手にローザミスティカが収まった時にお答えするわぁ」

蒼星石「そんな!?」

水銀燈「安心しなさぁい、約束は守るわぁ(聞ける耳があればの話だけどねぇ……くすくす)」

蒼星石「……」

水銀燈「ほらぁ…人工精霊にローザミスティカを持たせてこっちによこしなさぁい」



蒼星石「……ピチカート…」ピカッ

467: 2008/12/25(木) 17:26:47.25 ID:PF+FeuOM0
水銀燈「ふふふ…金糸雀の人工精霊…あれも私のものに」

蒼星石「……」

水銀燈「早く…早くぅ…」

蒼星石「……」

水銀燈「何をもたもたしてるの……?」

蒼星石「……」

水銀燈「ちょっとぉ……いい加減にしなさぁい…」

蒼星石「……」

水銀燈「早くしなさいっていってるでしょお!!」

蒼星石「……」チラッ



水銀燈「!? (何…この悪寒……何かがおかしい?)」ゾク…

470: 2008/12/25(木) 17:38:29.15 ID:PF+FeuOM0
水銀燈(何がおかしい? 何が……)

水銀燈(あれは偽物じゃない…金糸雀の人工精霊は本物……)

水銀燈(金糸雀の人工精霊……)

水銀燈(人工精霊……)

水銀燈(!?)



水銀燈(何 故 バ イ オ リ ン が 出 た ま ま に な っ て い る)



水銀燈「上ね!」

蒼星石「気づかれた!? 射て! 金糸雀!!」



金糸雀「いただきかしら!」

471: 2008/12/25(木) 17:42:54.71 ID:PF+FeuOM0
ごめん出かける時間になった。
夜もどったら続き書きます

489: 2008/12/25(木) 23:09:27.93 ID:vqcH3eMB0
保守ありがとうです。眠いですけどぎりぎりまで頑張ります。

490: 2008/12/25(木) 23:09:54.55 ID:vqcH3eMB0
水銀燈「くっ…」

金糸雀「もう遅いかしら!」ビュッ!

金糸雀から放たれた矢は、一直線に水銀燈の胸に向かっていった。

ビスッ!

金糸雀「やったかしら! 手応えあり!!」



蒼星石「……な、なんだあれは?」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

矢が刺さる刹那、水銀燈と摩り替わるように黒い蛹の様な物体がその場に現れていた

493: 2008/12/25(木) 23:20:55.46 ID:vqcH3eMB0
金糸雀「な、何……あれは?」

蒼星石「あそこには水銀燈が立っていたはずなのに……」



黒い物体「……よくも……よくも……」



金糸雀「!? あ、あの黒いものは水銀燈……かしら?」

蒼星石「……これは翼か!! しかも二枚じゃない……六枚の翼が水銀燈を覆い隠している……」



水銀燈「……よくも私を謀ってくれたわねぇ……」



六枚の翼を四方に展開し、水銀燈が怒りの形相で姿を現した

496: 2008/12/25(木) 23:35:38.91 ID:vqcH3eMB0
蒼星石「あの姿は……真紅と翠星石のローザミスティカか!?」

水銀燈「愚かな蒼星石……素直にローザミスティカを渡していれば綺麗な姿のまま逝かせてあげたのにぃ……」

蒼星石「……やはりジュン君と翠星石の場所を教えるつもりは無かったようだね」

金糸雀「やっぱりカナの言うとおりだったかしら!」

水銀燈「ふんっ…大方あの愚妹に何か吹き込まれたのかしらぁ?」

蒼星石「金糸雀は素晴らしい姉だよ……君と違ってね!!」

水銀燈「……その素晴らしい姉のおかげで、この後凄惨な末路を辿るのだけどねぇ……くすくす」

蒼星石「それはどうかな? いくよ…金糸雀!」

金糸雀「ええ…蒼星石!」



水銀燈「きなさぁい……アリスになるべきドールと、ジャンク紛いのドールの違いを教えてあげるわぁ!!」

499: 2008/12/25(木) 23:48:05.09 ID:vqcH3eMB0
蒼星石「レンピカ!」

金糸雀「注意するかしら! 蒼星石」

蒼星石が水銀燈に接近し、金糸雀が距離をとって矢をつがえる

水銀燈「お馬鹿さぁん! 何の策も講じずに闇雲に突っ込んでくるなんて」

金糸雀「お馬鹿はそっちの方かしら! ローゼンメイデン一の策士が策を講じないと思って?」

金糸雀「ピチカート!」

金糸雀が人工精霊の名を口に出すと、水銀燈の足元のバイオリンが爆ぜて破片が飛び交った

水銀燈「なっ!?」



蒼星石「隙あり!」

501: 2008/12/25(木) 23:58:58.59 ID:vqcH3eMB0
蒼星石「やぁあああああ!!」

ズバッ!!

破片にひるんだ隙を狙って、庭師の鋏で翼の一枚を叩き斬った

水銀燈「うぁあ……!」



金糸雀「やったかしら!?」

蒼星石「……いや、浅い……」

水銀燈「よくも…よくも……高貴な私の翼を……」


蒼星石を睨みつけると翼をはためかせ羽根を飛ばそうとする


金糸雀「いけない!」ビュ!ビュ!ビュ!

つがえた矢を水銀等に向かって次々と解き放った


水銀燈「くっ……」

キィン!キィン!キィン!

羽根を飛ばそうとするが矢を防ぐために、やむを得なく翼を折りたたんでしまった

503: 2008/12/26(金) 00:09:18.03 ID:Hgyn4pjG0
水銀燈「うざったいわねぇ!!」


蒼星石「何とでも言ってよ。これが君と対等に戦うために編み出した策さ」

金糸雀「そう…カナが遠距離で牽制しつつ隙を作る」

蒼星石「そして僕が隙を狙って……断つ!」


水銀燈「……そんな小細工がいつまでも通用すると思って?」


蒼星石「通用するまでやるだけさ」

金糸雀「これはカナ達と水銀燈の根気比べかしら?」


水銀燈「……」


金糸雀「まだまだカナの策はこんなものじゃないかしら! いくわよ、蒼星石!!」

蒼星石「うん!」

505: 2008/12/26(金) 00:21:42.56 ID:Hgyn4pjG0
金糸雀「それ! それ! それ! それ!」 ビュ!ビュ!ビュ! ビュ!

次々と矢を水銀燈へ向かって放つ


水銀燈「ちぃ!」

キィン!キィン!キィン!キィン!


蒼星石「ほら、足元がお留守だよ!」シャキン!


ブーツを大きな鋏が掠めていく

水銀燈「あっ!?」グラ…

バタン!


バランスを崩して倒れる水銀燈。その隙を逃さず蒼星石は水銀燈の喉元へ刃を突きつけた

510: 2008/12/26(金) 00:31:39.95 ID:Hgyn4pjG0
蒼星石「チェックメイトだ……水銀燈」

水銀燈「……」

金糸雀「案外あっけなかったかしら~?」

蒼星石「ジュン君と翠星石をおとなしく渡すなら…君の命だけは助けよう」

水銀燈「……」

金糸雀「ほらっ、早く観念するかしら!」

水銀燈「……くすくす」

蒼星石「……何がおかしいんだい?」

水銀燈「だってぇ……まだ勝負は決まってないのに勝ち名乗りなんてぇ……くすくす」

金糸雀「負け惜しみはやめるかしら! この状況をひっくり返すなんて不可能かしら!」

水銀燈「不可能?……くすくす」

金糸雀「な、なにがおかしいのかしら……」

水銀燈「策士が不可能って言っちゃうなんて、とんだ三流策士ねぇ…くすくす」

514: 2008/12/26(金) 00:45:51.97 ID:Hgyn4pjG0
金糸雀「な、なんですってぇ!」

水銀燈「くすくす……」

蒼星石「強がりはやめなよ……金糸雀の言うとおり、君にこの状況を打開する策があるっていうの?」

水銀燈「策? そんなもの必要ないわぁ……」

金糸雀「は?」

水銀燈「……言ったでしょお…アリスになるべきドールと、ジャンク紛いの格の違いを教えてあげるって!」

ヒラ…ヒラ…ヒラ…

矢によって散らされた羽根が蒼星石達の周りを舞い始めた

蒼星石「これは……」



水銀燈「……燃えなさぁい」

518: 2008/12/26(金) 00:55:57.57 ID:Hgyn4pjG0
ボンッ!

水銀燈の一声が合図となり、宙を漂う羽根が一斉に火を噴き始めた

蒼星石「うああああああああ!」

金糸雀「蒼星石!」


水銀燈「あなたが高みの見物なんて、98745682時間早いわぁ……落ちなさい!蚊トンボ」

ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!

金糸雀に向かって流星のように羽根を繰り出した


ズガガガガガガガガガガ!

金糸雀「ひゃ、ひゃぁああああああああああ!?」

519: 2008/12/26(金) 01:07:48.68 ID:Hgyn4pjG0
水銀燈「今度はこっちぃ!」

翼から剣を取り出すと、炎に怯む蒼星石へ斬りかかった

キィン!

蒼星石「くっ…」

辛うじて斬撃は防いだが立て膝をつき、、水銀燈と鍔迫り合いの形になった


水銀燈「ほら、ほぉら。さっきの威勢の良さはどうしちゃったのぉ?」

ギリギリ…

蒼星石「っ…」


水銀燈「まだまだ私を楽しませてくれなくっちゃぁ……」

水銀燈が大きく翼を震わせると、翼の中から無数の刃が蒼星石に向かって降り注いだ


蒼星石「うぁあああああああああああああああああ!!」

522: 2008/12/26(金) 01:21:04.58 ID:Hgyn4pjG0
蒼星石「目が…目がぁーーーー!」

咄嗟に飛びのき致命傷は免れたものの、無数の刃は蒼星石の視界を奪っていった


水銀燈「くすくす…いい格好ねえ。」


金糸雀「そ、蒼星石ーーーーー! ぐっ…」

水銀燈から放たれた羽根は金糸雀の足を貫いていた

金糸雀「これじゃ、弓で援護が……」


水銀燈「圧倒的ねえ……これじゃ本気を出した甲斐がないじゃなぁい…くすくす」

525: 2008/12/26(金) 01:34:01.86 ID:Hgyn4pjG0
蒼星石「くっ…う……どこだ…水銀燈! たぁー! やぁ!」

闇雲に鋏を振り回すがデタラメな斬撃では水銀燈に掠りもしない


水銀燈「くすくす…ほらほらぁ~、あんよは上手、手の鳴るほうへ~」

からかう様に手を叩きながら蒼星石の周りを踊るように移動する水銀燈


金糸雀「そ、蒼星石……」

金糸雀「まだ、諦めるわけにはいかないかしら……ピチカート!」

金色に輝く光球が一際強い光を放つと、光の中からバイオリンが現れた



バイオリンを携えると演奏の構えに入る金糸雀

金糸雀「まってて……蒼星石……」

527: 2008/12/26(金) 01:52:04.52 ID:Hgyn4pjG0
蒼星石「はぁ…はぁ……」

♪~♪~♪~

蒼星石(これは……!?)

水銀燈「あの子ったら何のつもりかしらぁ? あなたの鎮魂曲だったりしてねぇ……あはは~」



金糸雀(聞いてるかしら……蒼星石)

金糸雀(カナにはこれぐらいしかしてあげられないけど……最後まで戦うかしら!)



蒼星石「……そこぉ!」ジャキ!

水銀燈「な!?」

蒼星石の鋏は水銀燈の体を掠め服の袖を分断した


水銀燈「な…何故?」

529: 2008/12/26(金) 01:59:41.66 ID:Hgyn4pjG0
蒼星石(ありがとう金糸雀……最後まで一緒に戦ってくれるんだね……)

蒼星石「まだ終わりじゃない! ここからが勝負だよ!!」

水銀燈「まさか……見えているとでもいうの?」


金糸雀の演奏は音の波紋となって蒼星石の鋏に届き
蒼星石は鋏を対象物にかざす事によって潜水艦のソナーのように
水銀燈の動きを知りえることが出来た


金糸雀(頑張って……蒼星石)



蒼星石「やぁあああああ!!」

532: 2008/12/26(金) 02:15:59.37 ID:Hgyn4pjG0
ザシュ!

水銀燈「うぁああああああ!?」

蒼星石「やった!?」

蒼星石の鋏は水銀燈の翼を捕らえ、2枚目の翼を分断することに成功した



金糸雀(今の水銀燈は目の見えない蒼星石の攻撃に困惑している……早期に決着をつければ勝機も……)



水銀燈「何故…何故…? あの子の目は見えていない筈……なのに何故ここまで正確な攻撃を……」

蒼星石「ふふふ……」

水銀燈「……?」

蒼星石「今の僕には君の動きが手に取るように分かるよ……いや、むしろ見えていたときよりも君の姿をはっきりと捉えることができる!」

水銀燈「何を……」シュ!シュ!シュ!

距離をとり、羽根を飛ばす水銀燈


キィン!キィン!キィン!

蒼星石「無駄だよ!」

534: 2008/12/26(金) 02:29:04.76 ID:Hgyn4pjG0
水銀燈(くっ…この演奏があの子の目の代わりをしているとでもいうの……)

蒼星石「ほら、考え事でもしてるのかい! 動きが鈍いよ!!」シャキン!

キィン!

水銀燈「くっ…」

水銀燈(金糸雀を潰そうにもこんなに纏わりつかれちゃあ、動くに動けないわ……)

蒼星石「ほら、そこぉ!」

ザシュ!

水銀燈「うぐっ!?」



金糸雀(その調子よ……蒼星石。私達……三人の誓いを守るために……)

575: 2008/12/26(金) 20:17:06.44 ID:Hgyn4pjG0
うお!まだ残ってた。保守㌧
即興で作ってるんでグダグダになるかもしれんですが続きいきます

576: 2008/12/26(金) 20:18:20.26 ID:Hgyn4pjG0
金糸雀「誓い……そう、カナ達はここで負ける訳にはいかないかしら。ねぇ…蒼星石…雛苺」


※※※※※※※※※※※※※回想※※※※※※※※※※※※※


金糸雀「ピピピピピピピピチカーーーート!……」


ガシャァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン


鞄が窓を突き破ってきた。この見覚えのある装飾はドールの鞄だ

金糸雀「こ、今度は何かしら!?」

蒼星石「……雛苺!?」



雛苺「あいたたた……あ、蒼星石!」

雛苺「大変なの! ジュンが…ジュンが水銀燈に連れてかれちゃったの!!」

577: 2008/12/26(金) 20:25:10.33 ID:Hgyn4pjG0
金糸雀「真紅達のマスターが?」

雛苺「それでね…真紅達に知らせようと思って。でもどこにも居ないの……」

蒼星石「……」

金糸雀「それでカナの家に来たって訳かしら」

雛苺「うぃー……でも何で蒼星石は庭師の鋏を出してるの?」

金糸雀「……わ、忘れてたかしらー!? 雛苺! 蒼星石から離れなさい!!」

579: 2008/12/26(金) 20:30:39.62 ID:Hgyn4pjG0
蒼星石「雛苺……」

雛苺「……どうして? 何で? 蒼星石」

蒼星石「ここでローザミスティカを取られたく無ければ逃げるんだね……。僕や水銀燈の手が届かない所へ」

雛苺「う、うゆ……」

金糸雀「まさか……」

蒼星石「そうさ……真紅は僕が倒した。次は君だ…金糸雀」

581: 2008/12/26(金) 20:36:35.47 ID:Hgyn4pjG0
雛苺「嘘なの!」

蒼星石「っ…!?」

雛苺「雛は信じないの! 蒼星石はそんなことしないの!!」

蒼星石「……僕達はアリスになるために生み出されたんだよ? アリスゲームはドールの宿命なんだよ……」

雛苺「なら……何でそんな悲しそうな顔をするの?」

蒼星石「……」

金糸雀「ひょっとして……水銀燈に弱みでも握られてるかしら?」

蒼星石「!……」



金糸雀「もう一度言うかしら。……悩み事ならこのお姉さんの金糸雀に話してみるかしら?」

582: 2008/12/26(金) 20:43:31.02 ID:Hgyn4pjG0
蒼星石「……何も…何でもないさ! 僕はローゼンメイデン! 戦うために生み出された存在なんだよ!!」

雛苺「蒼星石!?」

蒼星石「お喋りはここまでだ。頂くよ……君のローザミスティカを」

金糸雀「……」

蒼星石「どうした? 構えろよ! そのまま、ただやられるのを待つだけかい!!」

金糸雀「……いいかしら」

蒼星石「え……?」



金糸雀「カナのローザミスティカを持っていけばいいかしら……」

583: 2008/12/26(金) 20:49:31.30 ID:Hgyn4pjG0
蒼星石「何で…」

雛苺「金糸雀……」

金糸雀「……」

蒼星石「どうして…どうして……」

金糸雀「雛苺だけじゃないかしら……」

雛苺「ふえ?」

金糸雀「蒼星石の事を信じてるのは……だってカナ達は姉妹…家族なんだから」



蒼星石「!? うっ……うぁあああーーーーーーーーーん」

584: 2008/12/26(金) 20:55:48.13 ID:Hgyn4pjG0
金糸雀「よっぽど辛いことがあったのね……思う存分泣くがいいかしら……」

蒼星石「うっ…う……」

金糸雀は蒼星石を抱きしめて、やさしく頭を撫でてやった



金糸雀「話してくれるわね。何があったのか……」

蒼星石「……うん」

586: 2008/12/26(金) 21:02:20.75 ID:Hgyn4pjG0



蒼星石は今までの出来事の顛末を詳細に説明した

蒼星石「……という訳なんだ…」

金糸雀「ゆ、許せないかしら! 水銀燈!!」

雛苺「うっ…えぐ……真紅ぅ…翠星石ぃ……」

蒼星石「全ては僕が原因……まいた種は自分で刈り取るよ……」

588: 2008/12/26(金) 21:06:13.91 ID:Hgyn4pjG0
金糸雀「何を言ってるかしら! 蒼星石!!」

蒼星石「え……」

金糸雀「カナは蒼星石の何かしら!」

蒼星石「か、金糸雀は……策士?」

金糸雀「ちがぁーーーーーーーーーーーーーーーう!」

蒼星石「ひっ…」

金糸雀「カナは蒼星石の お 姉 さ ん かしら!!」

589: 2008/12/26(金) 21:11:34.74 ID:Hgyn4pjG0
蒼星石「金糸雀……」

金糸雀「ふぅ……大声を出したら喉が渇いたかしら。雛苺、お茶を入れて欲しいかしら?」

雛苺「うっ…えぐ……うゆ?」


――――――――――――――――――――――


雛苺「はーーい。おまちどお様なのー」

金糸雀「おおおお…お馬鹿! 湯のみからお茶が溢れてお盆が水浸しじゃないかしら!!」

蒼星石「……くすっ」

591: 2008/12/26(金) 21:16:27.68 ID:Hgyn4pjG0
金糸雀「まったく……」

雛苺「……文句言うなら自分で淹れればいいの……」ボソッ

金糸雀「……何かいったかしら?」

雛苺「なんでも無いのー」

蒼星石「ふふふ……」



金糸雀「やっと笑ったかしら? 蒼星石には笑顔が似合うかしら」

592: 2008/12/26(金) 21:21:51.44 ID:Hgyn4pjG0
支援感謝



蒼星石「うふふ……ありがとう金糸雀…雛苺」

雛苺「うゆ?」

金糸雀「まだ何もしてないかしら?」

蒼星石「ううん…正直今までの出来事で心が押し潰されそうになってたんだ……金糸雀達を見てたら元気になったよ」

蒼星石「必ず、真紅と翠星石のローザミスティカは僕が取り戻してみせるよ!」

金糸雀「はぁ~まだ分かってないかしら……」

蒼星石「え……?」

593: 2008/12/26(金) 21:34:33.60 ID:Hgyn4pjG0
金糸雀「カナはお姉さんかしら。困ってる妹を助けるのは当然の事!」

雛苺「ヒナもお姉ちゃんを助けるの!」

蒼星石「で、でも…水銀燈は危険すぎる。無傷で渡り合おうなんて出来っこない……」

金糸雀「妹の為に傷つくなら……いえ、この命差し出しても構わないかしら!」

蒼星石「金糸雀……」

金糸雀「見なさい、雛苺が汲んできたこのお茶を…」

蒼星石「え?」

金糸雀「お茶が溢れかえってこぼれてしまっているかしら……」

金糸雀「複数の器があればお茶は溢れかえらない…一つ一つの器は小さいけれど力を併せるのが大事じゃないのかしら?」

雛苺「ヒナもヒナもー!」

金糸雀「ええ……蒼星石、あなたの溢れる悩みをカナ達がすくい取ってあげるかしら」

595: 2008/12/26(金) 21:41:03.90 ID:Hgyn4pjG0
蒼星石「金糸雀…雛苺……」

金糸雀「さあ…ここで誓うかしら! 力を併せて真紅と翠星石、そしてマスターを助け出すと!」

雛苺「ういー!」

蒼星石「……ありがとう。こんなに思ってくれる家族が居て僕は幸せだよ……うっ…」

金糸雀「ほらっ泣いてる暇なんか無いかしら!」

蒼星石「うん…」ゴシゴシ

雛苺「さあ、手を併せるの!」



金糸雀&蒼星石&雛苺「必ず家族を助け出す!!」



※※※※※※※※※※※※※回想終わり※※※※※※※※※※※※※

597: 2008/12/26(金) 21:53:17.18 ID:Hgyn4pjG0
金糸雀(カナと蒼星石は水銀燈と戦い……雛苺は指輪の軌跡を辿ってマスターを探し出す……)

金糸雀(ここまでは上手くいってるかしら……)

金糸雀(頑張るかしら……蒼星石…雛苺……)



蒼星石「やぁ!」シャキッ!

ザシュッ!

水銀燈「うぐ……」

蒼星石「自慢の翼も、三枚だけだね。いい加減に降参したらどうだい…?」



水銀燈「調子に……調子に乗るんじゃ無いわよぉおおおーーーーーーーーーーーーーー!!」

625: 2008/12/27(土) 08:27:00.39 ID:oLXGsm+s0


水銀燈「……」バサッバサッ

ザクッザクッ

水銀燈が翼を震わせると多数の剣が地面に落ちて刺さっていく

蒼星石(何のつもりだ……?)

水銀燈「……」バサッバサッ

ザクッザクッ

蒼星石「いくら目が見えないからって、僕がこんな罠に掛かると思ってるの?」



水銀燈「くすくす……あなたはもう私の術中にあるのよぉ」

626: 2008/12/27(土) 08:29:11.55 ID:oLXGsm+s0
蒼星石「苦し紛れに何をするのかと思えば……只のこけおどしかい?」

水銀燈「くすくす……言ってなさぁい。その、すまし顔がすぐに苦痛に歪む事になるわぁ」



金糸雀(!? いけない! あれは……)



水銀燈「くすくす……」

蒼星石「降参しないなら……遠慮はしないよ!」シャキ!

ブォン!

蒼星石「!?」

まったく手応えの無い反応に困惑する蒼星石

水銀燈「くすくす……」

627: 2008/12/27(土) 08:29:45.69 ID:oLXGsm+s0
蒼星石(おかしい……真芯に捉えていたはずなのに……)

水銀燈「くすくす……」

蒼星石「何だ! 何をした!?」

水銀燈「何って……私は何もしてないわぁ……あなたの滑稽な踊りを眺めてるだけぇ……くすくす」



金糸雀「駄目! そこから離れて、早く……」



蒼星石「たぁああああ!!」シャキ!

ブン!

蒼星石(また!?)

水銀燈「くすくす……」



金糸雀「駄目…駄目……。そこでは周りの剣の…金属片で、音の波紋が拡散してしまう!!」

628: 2008/12/27(土) 08:30:22.14 ID:oLXGsm+s0
蒼星石「うわぁああああああああああ!!」シャキ!

ブォン! ブァオン!

水銀燈「くすくす……あなたはそこでしばらく踊ってなさぁい。」バサッ

蒼星石を背後に漆黒の翼を広げ、金糸雀の元へ向かって飛び立った



金糸雀「もっと、声が届く位置へ…蒼星石の元へ……」ズッ…ズッ…


動かない足を引きずって蒼星石の近くへ向かう金糸雀

その目には蒼星石しか写っておらず頭上から迫る悪意には無防備であった


金糸雀「もっと…もっと近くへ……」ズッ…ズッ…

バサッ

水銀燈「くすくす……ご機嫌よお……」

金糸雀「す、水銀燈……」

629: 2008/12/27(土) 08:30:46.22 ID:oLXGsm+s0
水銀燈「大変そうおねぇ…お手伝いしようかしらぁ……くすくす」

金糸雀「……”攻撃の…」


スパァッ!  ……ポトッ……


金糸雀「……い、いやぁあああああああああああああ…」

スティックを持った手は、水銀燈の剣閃によって肘から先が分断され地に落ちてしまった。

水銀燈「くすくす……いい声で鳴くのねえあなた……」

金糸雀「カナの…カナの手が……」



水銀燈「もっと…もぉっと、鳴き声を聞かせてくれないかしらぁ? かわいい小鳥さぁん!」

金糸雀「あっ…あ……」

640: 2008/12/27(土) 13:55:24.63 ID:oLXGsm+s0



蒼星石(! 演奏が……止まった?)

蒼星石(どうしたの…金糸雀……僕に目を与えておくれよ…)

蒼星石(……何も分からない……今、襲い掛かられたら……)

蒼星石「うっ…うぁああああああああああああああああ…」



バサッ

水銀燈「くすくす…」

蒼星石「!? う、うぁ……」

水銀燈「さっきまでの威勢はどうしたのかしらぁ? くすくす…」

蒼星石「…来るな…来るなぁあ……」ジャキッ!

641: 2008/12/27(土) 13:56:00.99 ID:oLXGsm+s0
水銀燈「やぁん…そんな物を振り回して…」 

蒼星石「…来るな…来るな!……」チャキン!

ブォン! ブァオン!

水銀燈「くすくす……ちゃんとしっかり見て斬らないとぉ…」

蒼星石「…うぁあ……来るなぁ……来ないでぇ…」

ブォン! ブォン!



水銀燈「……大事な物を壊してしまうかもよぉ……くすくす…」

642: 2008/12/27(土) 13:56:38.74 ID:oLXGsm+s0
水銀燈「ほぉら…いくわよぉ!」ブンッ!

ヒュゥウウーーーーーーーーーーーーーーー!!

蒼星石(何か投げた!?)

蒼星石「うぁああああああああああああああああ!!」ジャキィ!


ズガァッッッ!!


蒼星石「あ…(何だ…この手応え……?)」

643: 2008/12/27(土) 13:57:04.12 ID:oLXGsm+s0
水銀燈「くすくす…」

蒼星石「何だ……」

水銀燈「くすくす…」

蒼星石「何を投げた……」

水銀燈「くすくす…」

蒼星石「何を…何を投げたんだよぉおおーーーーー!!」



「う…あ……ぅ……」

庭師の鋏によって防がれた”モノ”は蒼星石の足元で苦しげな呻き声をあげた

蒼星石「!?」



水銀燈「くすくす……飛ぶ事も、鳴く事も出来なくなった哀れな小鳥よぉ」

645: 2008/12/27(土) 14:45:49.45 ID:oLXGsm+s0
蒼星石「うぁああああああああああああああああ!!」ガチャンッ

蒼星石は庭師の鋏を放りだし、足元を両手で探り始めた

金糸雀「…っ…あ…ぁ……」

蒼星石「金糸雀! 金糸雀ぁー! あっ…」

ギュッ…

金糸雀を探り当てると、強くその体を抱きしめた



金糸雀「……蒼…星……石…」

蒼星石「金糸雀……ごめん…。僕…僕……」

646: 2008/12/27(土) 14:46:28.40 ID:oLXGsm+s0
金糸雀「……今は…カナ…よりも……」

蒼星石「…うっ…うぐ……ごめん…ごめんなさい……」ポロポロ

金糸雀「…聞いて……蒼星石……」

蒼星石「…うっ…ひっく……」ポロポロ

金糸雀「……真紅も…翠星石も……戦っていた…かしら……」

蒼星石「……?」



金糸雀「聞いて……蒼星石…これが…カナの……最後の……策…かしら……」

647: 2008/12/27(土) 14:47:09.90 ID:oLXGsm+s0
蒼星石「!? やだよ! 最後だなんて!! 僕は…僕は……」

金糸雀「……お願い…もう…時間が…無いかしら……」

蒼星石「そんな……」

金糸雀「…思い出して……誓い合ったあの日の……器の話を……」

蒼星石「器……?」

金糸雀「器はひとつ…思いは二つ……そして…思いは…ここにも一……いえ二つ…」

蒼星石「……それは……」

金糸雀「……カナの…カナ達の……溢れるこの思い……と…めない…」



ガスッ!

金糸雀「っあ…」

蒼星石「ぐっ…」

水銀燈の剣が金糸雀の体を貫き、その先端は蒼星石の胸に深々と突き刺さった

650: 2008/12/27(土) 15:35:08.33 ID:oLXGsm+s0
水銀燈「くすくす…お馬鹿さぁん。戦いの最中に武器を放り出して呆けるなんてぇ…」

蒼星石「あっ…ぐっ……」

金糸雀「……」ポ…フォン……

金糸雀の体からローザミスティカが飛び出し、蒼星石の目の前でふわふわと漂っていた

蒼星石「あっ…あっ…」



水銀燈「…いいのよぉ……金糸雀のローザミスティカをあなたが手に入れたって…くすくす」

水銀燈「でもぉ……半分ローザミスティカが出かかってるあなたが手にしても、どうしようも無いでしょおねぇ…くすくす」

651: 2008/12/27(土) 15:36:34.63 ID:oLXGsm+s0
蒼星石「……」

水銀燈「ふふ……もぉ、観念しちゃったのかしらぁ?」

蒼星石「……」

水銀燈「ああ…そう。こういう状況になってからこそ勝ち名乗りを上げるものよぉ…」

水銀燈「……チェックメイト……ってね。くすくす…」



蒼星石「……まだ終わってないよ…」

水銀燈「はぁ……?」

蒼星石「……まだ勝ち名乗りは早いと言っているんだ…」

水銀燈「何を言い出すのぉ? 庭師の鋏を放り出したあなたに、何の武器があるっていうの」



蒼星石「武器ならあるさ……金糸雀の……ローザミスティカ!!」

652: 2008/12/27(土) 15:38:16.42 ID:oLXGsm+s0
蒼星石は目の前のローザミスティカに手を伸ばし、その勢いで水銀燈の胸に叩き込んだ

ガスッ! 

水銀燈「くぁ……」

……パシュン!……

手の中のローザミスティカはそのまま水銀燈の胸の中へ溶け込んだ


蒼星石「……金糸雀は言った。真紅や翠星石が戦っていると……」

水銀燈「な、何を……」

蒼星石「金糸雀は見抜いていたんだ……君が…真紅達のローザミスティカを制御できていないと……」

水銀燈「……利いた口を」

蒼星石「翠星石も戦っているんだ! 必氏に拒んで…戦って……だから君はギリギリまでローザミスティカの力を使おうとしなかった!」

水銀燈「……っ!」



蒼星石「君の器で…真紅…翠星石…そして……金糸雀の、溢れる思いを受け止めることができるかい!!」

655: 2008/12/27(土) 16:12:05.86 ID:oLXGsm+s0
ズズズズズズズズズズズッ……

水銀燈「う…うぁあああああああああああ……」

水銀燈の欠けた翼は再生し、その背には新たな翼が生えつつあった

蒼星石「…どうしたんだい? 随分必氏じゃないか……待望のローザミスティカが手に入ったっていうのに…」

水銀燈「よくも…よくもぉおおお……」

蒼星石「まだだよ……」

水銀燈「な…に……」



蒼星石「まだ……僕の…ローザミスティカが残っている……」

656: 2008/12/27(土) 16:12:53.82 ID:oLXGsm+s0
水銀燈「……え?」

ギュゥウウウウ

蒼星石は剣が刺さった状態で、強く水銀燈を抱きしめた。

胸の傷口は広がり体内のローザミスティカは今にも飛び出さんばかりに光を発し始めている

水銀燈「な…何を……」

蒼星石は両手で水銀燈の頬を掴み、血の気が引いたような薄紫の唇に自身の唇を重ね合わせた

そして体内のローザミスティカを水銀燈の中へ流し込んでいった

ズズズズズズズズズズズッ……

水銀燈「う…うぁあああああああああああああああああ……」



蒼星石「……これが……最後の……僕の”思い”だよ……後は…お願い……雛苺……」

657: 2008/12/27(土) 16:15:49.55 ID:oLXGsm+s0
すいません。またちょっと時間空けます。
まだスレが残ってるようなら続き書きます
戻るのは夜あたりになりそうです

674: 2008/12/27(土) 20:35:30.86 ID:oLXGsm+s0
蒼星石の体は壊れた玩具のように、その場に崩れ落ちた


ズズズズズズズズズズズッ……

水銀燈「うっ…うぁああ…ぐぅぅ…あっあっあっ……」

小刻みに体を震わせ頭を抱える姿は、さっきまでの姿と別人のようだ

水銀燈「いやっ…いやっ……もう力はいいのぉ……やめて…やめて……」


【※※※家族とは心と心を通い合わせるものです※※※】

【※※※心で繋ぐ思いは何者にも断ち切れはしない※※※】

【※※※これが姉妹の……みんなの思いかしら※※※】

【※※※思いとは……絆だ!※※※】


水銀燈「お願い…やめて……このまま力を使い続けたら……」

背中の翼が際限なく肥大し、nのフィールドを覆わんばかりに異形化した

水銀燈「これじゃ…このままじゃ……」



水銀燈「……めぐが氏んじゃう……」

675: 2008/12/27(土) 20:36:28.51 ID:oLXGsm+s0
今や水銀燈の翼は本人の意思とは無関係に肥大化していった

水銀燈「やめて…やめて……」



スタッ

「う、うゆ…?」

ピンクの衣装に身を包んだ幼い少女が水銀燈の前に降り立った

水銀燈「ひ、雛苺……」

676: 2008/12/27(土) 20:37:01.81 ID:oLXGsm+s0
雛苺「……水銀燈」

水銀燈「うっ…うっ……」

雛苺「もう…蒼星石と金糸雀は……ここにはいないのね……」

抱き合うように重なったドールを見て悲しげに呟いた

水銀燈「……がい…」

雛苺「……」

水銀燈「……おねがい…」

雛苺「え……?」



水銀燈「……お願い……私を…壊して……」

677: 2008/12/27(土) 20:38:14.37 ID:oLXGsm+s0
雛苺「!?」

水銀燈「お願い! 雛苺…私を壊して。でないと…めぐが…めぐがぁ……」

雛苺「め…ぐ…?」

水銀燈「あそこの剣で……私を……」

水銀燈は地面に刺さった剣に向かって指を差した

雛苺「でも……」

水銀燈「お願い……もう時間がないのぉ……」



雛苺「……」チャキッ

雛苺はゆっくり剣を引き抜くと、その足を水銀燈へ向かって一歩ずつ進め始めた

678: 2008/12/27(土) 20:39:07.55 ID:oLXGsm+s0
雛苺「……」トテトテトテ

水銀燈「あああ…ありがとう……雛苺」

雛苺「……」ピタッ

雛苺は水銀燈の前に立つと、その剣を大きく頭上に振りかぶった



水銀燈(めぐが…めぐが氏んじゃうくらいならアリスなんて……)

そして……水銀燈は静かに瞳を閉じた

679: 2008/12/27(土) 20:41:29.86 ID:oLXGsm+s0
ガチャン!


水銀燈「……え?」

雛苺「……」

剣は水銀燈の体に触れることなく、雛苺の手から滑り落ちていた

水銀燈「な、何故……?」

雛苺「……」

水銀燈「何をしてるの!? 早く私を…」

雛苺「……」

水銀燈「まさか……希望を持たせておいて……」

雛苺「……」

水銀燈「何か言いなさいよ!…………」

雛苺「……」



水銀燈「……くっくくく……姉妹なんか……信じた私が…馬鹿だったわぁ…………壊す!…壊す!…ジャンクにしてあげるわぁ!!」

その瞳から血の涙を流し、凄まじい形相で雛苺を睨みつけた

682: 2008/12/27(土) 20:42:39.37 ID:oLXGsm+s0
水銀燈「壊す! 壊す! 壊す! 壊す! 壊す! 壊す! 壊す! 壊す! 壊す! 壊す!」

壊れた玩具のように同じ台詞を連呼し続ける水銀燈

これが人間なら……いや人間と同じ思考を持つ彼女は狂ってしまったのかもしれない



雛苺「……」

ギュッ

水銀燈「え……?」

呪いの言葉を吐き続ける水銀燈を、雛苺はそっとやさしく包み込んでやった



雛苺「みんな……聞いて……雛の声を……」

683: 2008/12/27(土) 20:44:07.75 ID:oLXGsm+s0
雛苺「真紅…翠星石…蒼星石…金糸雀…」

水銀燈「……?」

雛苺「お願い……水銀燈の大事な人が……家族が…」

水銀燈「ひ…な…苺……」

雛苺「聞いて……みんな……」

水銀燈「うっ……うぅ……」ポロポロ

雛苺「守って……お願い……」



水銀燈「ひ…雛苺……」ポロポロ

頬を伝う涙と呼応するかのように背中の翼は収縮し、水銀燈の中で渦巻いていた巨大な力は小さくなっていった

689: 2008/12/27(土) 21:21:47.35 ID:oLXGsm+s0
水銀燈「力が……」

雛苺「よかったね、水銀燈」ニコッ

無邪気な顔で微笑を水銀燈へ向ける雛苺

そして地面に落ちた剣を拾って、そっと水銀燈の前へ差し出した

水銀燈「え……」

雛苺「雛ね…考えたの。アリスゲームじゃ水銀燈に適わないから……」

雛苺「雛のローザミスティカをあげるの。だから……ジュンには手を出さないで欲しいの」

水銀燈「……」

雛苺「それに……水銀燈の中には真紅達がいるって分かったし……案外寂しくないかもしれないの……」ポロポロ

気丈に振舞うがこれからの成り行きを想像し、瞳を潤ませる

水銀燈「……」

690: 2008/12/27(土) 21:22:37.62 ID:oLXGsm+s0
雛苺「あ、あれ? おかしいな……」ゴシゴシ

水銀燈「……」

雛苺「……真紅達に会えるのに……うっ…」ポロポロ

水銀燈「……」チャキ…

雛苺の差し出した剣を無言で受け取る水銀燈

雛苺「……うっ…えぐっ……ジュンに…ジュンに手をだじちゃ……だめなの……」ポロポロ

水銀燈「……」グッ…

剣を握る手に力を込める

ザシュ!



……………………………………
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………

694: 2008/12/27(土) 21:52:46.57 ID:oLXGsm+s0
~エピローグ~

―――――――――――めぐの病院―――――――――――

めぐ「えへ…この間は氏に損なっちゃった」

水銀燈「……あなたは私のマスターなのよぉ…そんなに簡単に氏んでもらっては困るわぁ」

めぐ「なんで~? 水銀燈は私の命を吸ってくれるんじゃないの……」

水銀燈「やぁよ……だってあなたは私の大事な…」ボソッ

めぐ「何! いま何ていったの?」

水銀燈「な、何でもないわぁ……」



水銀燈(……家族か……)

病院の窓から空を眺め、あの日の事を思い出す水銀燈

695: 2008/12/27(土) 21:53:12.66 ID:oLXGsm+s0
※※※※※※※※※※※※※回想※※※※※※※※※※※※※



水銀燈「……」グッ…

剣を握る手に力を込める

ザシュ!



雛苺「……」

雛苺「……」

雛苺「……(あれ…何とも無いの……?)」



ゆっくり瞳を開けると、自分の胸を剣で袈裟斬りにした水銀燈の姿があった

697: 2008/12/27(土) 21:54:33.75 ID:oLXGsm+s0
雛苺「!? な、何してるの!」

水銀燈「ぐっ…うるさいわねぇ……」

自身の胸を裂き、中から姉妹のローザミスティカを取り出していく

水銀燈「うっ…あっ……」

雛苺「どうして……」

水銀燈「……あなたみたいなチビの力でアリスになるなんて真っ平なのよぉ……」

雛苺「……」

水銀燈「いつかきっと…姉妹のローザミスティカを自分の力で抑え込んで見せるわぁ……」

水銀燈「……だから…私が強くなるまで…………あなたに返しておくわ……」

雛苺「す、水銀燈ー!」


※※※※※※※※※※※※※回想終わり※※※※※※※※※※※※※


水銀燈「……らしくないことしちゃったかしらぁ」


めぐ「ほら、さっき何て言ったのか教えてよ」

水銀燈「あーもぅ…ほんと…………おばかさぁん……くすっ」

701: 2008/12/27(土) 22:11:53.88 ID:oLXGsm+s0
―――――――――――桜田家―――――――――――


真紅「ほら、ジュン…紅茶を淹れて頂戴」

翠星石「チビ人間! 真紅ばかりじゃなくてこっちにも茶ぁ持ってくるです!」

金糸雀「カナは病人かしら~病人はちゃんと労わるべきかしら!」

雛苺「金糸雀は病人じゃなくて怪我人なの……それにもう人工精霊5連結パゥワーで直ったはずなの」

ジュン「あぁ~もう…直ったと思えばこれだよ……少し壊れてたほうがいいんじゃないか?」

蒼星石「ジュン君、お菓子はここでいいかい?」

ジュン「あぁ、手伝ってくれてありがと。お礼に一番先に茶を淹れてやるからな」

蒼星石「本当!?」

703: 2008/12/27(土) 22:14:09.63 ID:oLXGsm+s0
翠星石「きぃーーー蒼星石ばかりひいきにするなです!」

真紅「ジュン、早く紅茶を持ってきなさい!」

金糸雀「カナは卵焼きが食べたいかしら~~~」

雛苺「もう! 仮病のお姉ちゃんなんて嬉しくないの!」


ジュン「まったくしょうがない奴らだなあ……ほら、一番茶だ。」

チョロチョロ…

蒼星石「ありがとう」

ゴクゴク…



蒼星石「……うん! すごくおいしいよジュン君」ニコッ


                             おわり

707: 2008/12/27(土) 22:18:06.70 ID:hAnlMH4i0
おつー

709: 2008/12/27(土) 22:18:53.62 ID:oLXGsm+s0
読んでくれた人ありがとー
こんな見苦しい駄文で申し訳ない
乗っ取りでダラダラやってごめんなさい。
今度から自重します
それではおやすみなさーい

712: 2008/12/27(土) 22:21:19.18 ID:rYmdv0tkO

引用: 真紅「ジュンって絶対私の事好きなのだわ」