1: 2013/07/19(金) 08:48:27 ID:TXOzHkRs
ライナー「は?」

ベルトルト「押してみてくれ」

ライナー「いや、押したらお前が消えるんだろ?」

ベルトルト「そうだよ」

ライナー「なんで押さなきゃいけないんだ」

ベルトルト「いいじゃない一回だけ」

ライナー「いや、ほんとに消えたら困るだろ」

ベルトルト「消えないかもしれないだろ」

ライナー「お前言ってることめちゃくちゃだぞ」
進撃の巨人(34) (週刊少年マガジンコミックス)
2: 2013/07/19(金) 08:51:57 ID:TXOzHkRs
ベルトルト「いいから押してよ」

ライナー「…」

ベルトルト「押して」

ライナー「…はあ…わかったよ…」ポチ

ライナー「…」シーン

ベルトルト「…」シーン

ライナー「何も起きないな」

ベルトルト「そうだね」

ライナー「返す」

ベルトルト「いや、持っておいて」

ライナー「何でだよ」

ベルトルト「後々役に立つかもしれないだろ」

ライナー「これが役に立つ場面が想像できないんだが」

3: 2013/07/19(金) 09:01:41 ID:TXOzHkRs
ベルトルト「さて、君は今僕の存在を消すボタンを押しました」

ライナー「ん?ああ」

ベルトルト「じゃあ僕は消えます」ガチャ

ライナー「は?」

ベルトルト「さよならライナー」バタン

ライナー「え?」

ライナー「おい」ガチャ

ライナー「…」キョロキョロ

ライナー「…いねえ」

ライナー「まあちょっとしたら飽きて戻ってくんだろ」

5: 2013/07/19(金) 12:01:38 ID:OvEhW5So
ライナー「…」

ライナー「…」

ライナー「…」

ライナー「…」

ライナー「…」

ライナー「…」

ライナー「…暇だし探しに行くか」

6: 2013/07/19(金) 12:02:25 ID:OvEhW5So
ライナー「よおエレン、ベルトルト見なかったか?」

エレン「…は?誰だよ」

ライナー「ん?ベルトルトだよ、俺の後ろにいつもくっついてたでかいやつ」

エレン「そんなやついたか?」

アルミン「え…僕はちょっとわかんないや」

ミカサ「私も知らない」

エレン「ほら」

ライナー「はあ?」

7: 2013/07/19(金) 12:03:00 ID:OvEhW5So
ライナー「確かにあんまり自己主張とかしないやつだったけど、さすがにそれは無いだろ」

エレン「いや、知らねえもんは知らねえし」

アルミン「え、エレン」

ミカサ「…」

ライナー「…そうか、邪魔したな」

11: 2013/07/19(金) 12:32:33 ID:OvEhW5So
ライナー「エレンのやつ…ん、おいジャン」

ジャン「うお、なんだよ」

ライナー「ベルトルトのやつ見なかったか」

ジャン「…ん」

マルコ「えーっと…ベルトルト?」

ライナー「ん?ああ」

マルコ「その…誰?」

ライナー「え、おいマルコ、お前までそんな」

ジャン「知らねえな、つうか聞いたこともねえし」

12: 2013/07/19(金) 12:34:36 ID:OvEhW5So
ライナー「いただろ。俺と同じ村の出身で、背のでかい」

ジャン「いや…お前よりでかいのか?」

ライナー「そうだな、俺より…このくらいか?」

ジャン「ぶっ!そんな奴訓練兵の中にいるわけねえだろ!つうかでか!」

マルコ「笑うのは失礼だろ…ごめん、僕達はそんなに大きい人は見たことないや…」

ライナー「そうか…すまん」

ライナー「なんで誰もあいつのことを覚えていないんだ」

ライナー「うーん?」

ライナー「ベルトルトの存在を消すボタン…」

ライナー「まさか、なあ」

13: 2013/07/19(金) 13:10:04 ID:OvEhW5So
ライナー「そうだ、アニなら嫌でも覚えてるだろ」

ライナー「サシャ、ベルトルトか、アニを見なかったか?」

サシャ「ほへ?!」

ライナー「あ?」

サシャ「ええーっと、もう一回お願いします」

ライナー「ベルトルトかアニだよ、見てないか?」

サシャ「ベル…?そうですね、ちょっと私は…」

ライナー「ん?それは見てないって意味か?」

サシャ「えーというか、その、聞き覚えがないというか…」

14: 2013/07/19(金) 13:11:26 ID:OvEhW5So
ライナー「…アニは」

サシャ「ああ、アニはこないだ開拓地に行きましたよ」

ライナー「は?!」

サシャ「びっくりしますよね」

ライナー「こないだって何時だよ」

サシャ「ええっと、3日前くらい…?でも申請してたのはもっと、一月は前のはずですね」

ライナー「俺は何も聞いてねえぞ…」

サシャ「私たちも知ったのはアニが出てった後でしたから…」

ライナー「…そうか、すまない」

サシャ「ああ、はい」

15: 2013/07/19(金) 13:15:24 ID:OvEhW5So
ライナー「ベルトルトだけじゃなくアニまで…」

ライナー「いや、でもアニはちゃんと覚えられていた」

ライナー「問題はベルトルトだ…どうして」

ライナー「あ、おいコニー!」

コニー「ん?なんだよ」

ライナー「いや、ベルトルト、覚えてるか?」

コニー「は?!い、いや?覚えてねえ」

ライナー「…今お前嘘ついたろ」

コニー「え」

ライナー「顔に出てるぞ」

コニー「は?え、うそ」

17: 2013/07/19(金) 14:30:40 ID:y3ugAoj6
ライナー「…図星かよ、ホントは知ってんだな?」ガシ

コニー「知らねえって!つうかお前顔怖えよ!」

ライナー「ベルトルトを知らない?!んなわけ無いだろ!あいつは確かにいたんだ!」

コニー「だ、だからぁ!そのべ、ベルトルト?とか言うのは知らないって!」

ライナー「いい加減に」

ジャン「おいライナー!何やってんだ!」

コニー「ジャン、ちょ、助けろ!」

19: 2013/07/19(金) 14:44:16 ID:y3ugAoj6

ライナー「な、お前だってな!」

マルコ「ライナー落ち着いてよ、ど、どうしたの」

ライナー「お前ら…何で…」

ジャン「…行くぞ」

コニー「え、ほっといていいのかよ」

ジャン「今はそっとしといてやれ」

マルコ「…そうだね」

ライナー「何で…」

20: 2013/07/19(金) 14:45:04 ID:y3ugAoj6
ライナー(おかしい、あいつは確かに、確かにここにいた)

ライナー(…そうだ、荷物)

ライナー(荷物があればあいつがここにいることを証明できる)

ライナー(そうだ、今朝までは確かにあそこで寝てたんだ、荷物は残ってるはず)

ライナー(…よし、部屋に戻ろう)

ライナー(つってもあいつ、私物とかほとんどなかったなぁ)ガチャ

ライナー(衣服とペンと本くらいか?)

ライナー(ダンベルでも持たせとけばよかった)

21: 2013/07/19(金) 14:51:17 ID:y3ugAoj6
ライナー「よし、着い…あれ」

ライナー「…」

ライナー「何もねえ…」

アルミン「やっぱりどうかと思うよ、僕は」ガチャ

エレン「でもあんだけ頼まれたらなぁ」

ライナー「!お、おい、エレン!」

エレン「うお、おう、何だ」

ライナー「俺の右に寝てたやつって誰だった!」

エレン「は」

ライナー「いたろ!少なくとも俺は一番端じゃない!」

22: 2013/07/19(金) 15:00:11 ID:y3ugAoj6

アルミン「あの、ライナー」

エレン「いなかったよ」

ライナー「んなわけ」

エレン「たしか、そう、来たばっかん時はいたな、でもすぐ根をあげて開拓地に送られてさ」

アルミン「…エレン」

エレン「それ以降は誰もいねえよ」

ライナー「…」

アルミン「…あ、の…さ」

23: 2013/07/19(金) 15:01:11 ID:y3ugAoj6
ライナー「ははははは」

アルミン「え」

ライナー「そうか、いなかった」

ライナー「いなかったか」

エレン「ああ、いなかったよ」

ライナー「…すまん、ちょっと出る」

エレン「おう」

ライナー「…」バタン

アルミン「…エレン」

25: 2013/07/19(金) 15:57:30 ID:Rs9Vp6ko
エレン「色々あるんだろ、あいつらにも」

アルミン「でもさ、あまりにも、可哀想だろ」

エレン「…」

アルミン「君は僕が黙って開拓地に行っちゃって、皆僕のことを覚えてないふりしてたら、嫌だろ」

エレン「…でも、ベルトルトが泣いて土下座までしたんだぞ」

アルミン「このまま知らないふりを通すのは、優しさとは違うと思う」

エレン「…わかんねえよ、そんな」

アルミン「エレン」

エレン「ただここで首を突っ込む気にはなれない」

アルミン「…そう…」

26: 2013/07/19(金) 15:59:01 ID:Rs9Vp6ko
ライナー「…何で」

ライナー「何なんだ、何なんだよこれ」

ライナー「…存在を消すスイッチだ?」

ライナー「くそ、こんなもんあるから…!」ガシャン

ライナー「…ん」

ライナー「…スイッチの中になんか…紙…?」カサカサ

28: 2013/07/19(金) 16:00:35 ID:Rs9Vp6ko
.
.
.
.
.
『おめでとう、君は兵士だ』
.
.
.
.
.

29: 2013/07/19(金) 16:01:49 ID:Rs9Vp6ko
ライナー「は」

ライナー「何だこれ」

ライナー「…」

ライナー「まあいいか」

アルミン「ライナー!」タッタッタッ

ライナー「ん?」

アルミン「あ、…あの、さ!…その」ゼーハーゼーハー

ライナー「おい大丈夫か?」

アルミン「…う、うん大丈夫…」ゼーハー

ライナー「お、おう」

32: 2013/07/19(金) 16:59:33 ID:Ytsh8ugg

アルミン「そ、それで、あの、べる、ベルト、ルト、の、ことなんだけど」

ライナー「は?何?」

アルミン「え、だから、ベルトルト」

ライナー「…ん?」

アルミン「ベルトルトだって、その、僕たちさ」

ライナー「え、ちょ、ちょっと待て、誰だそれ」

アルミン「え?さっきまで探しまわってただろ」

ライナー「…すまん、もう一回頼む」

34: 2013/07/19(金) 17:02:09 ID:Ytsh8ugg
アルミン「だから、ベルトルトだよ!君と同郷の!背の高い!」

ライナー「すまん、アルミン…だが…ベルトルト?だっけか」

アルミン「…」

ライナー「ええー俺の故郷の人間は俺以外皆氏んだはずだ」

アルミン「…え?ライナー」

ライナー「その、故郷を無くした俺を慰めてくれるのは嬉しいんだが、」

アルミン「何、言ってるの」

ライナー「は?」

35: 2013/07/19(金) 17:03:19 ID:Ytsh8ugg
アルミン「忘れちゃったの」

ライナー「いや…?じゃあ周りに聞いてみるか?」

アルミン「…いや、でも」

ライナー「多分、他の奴らも知らないと思うが…」

アルミン「…あ」

アルミン「…ははは、ごめん、僕の勘違いだったみたいだ!」

ライナー「だろ?」

アルミン「…ああ…」

ライナー「アルミン、顔色悪いぞ?医務室まで連れて行こうか?」

アルミン「いや、大丈夫」

ライナー「そうか」

36: 2013/07/19(金) 17:05:15 ID:Ytsh8ugg
アルミン「ごめん」

ライナー「気にすんな、訓練がキツくて本調子じゃないのは皆同じだ」

アルミン「…ちが…う、ううん、そう、そうだよね」

ライナー「よし、じゃあ戻って昼寝でもするか!」

アルミン「ああ」

アルミン「…ごめんねライナー…」

ライナー「ははは、気にすんなよ」

アルミン「…それでも…ごめん…」

39: 2013/07/19(金) 17:09:25 ID:Ytsh8ugg

アルミン「その後、ライナーは皆の頼りになる素晴らしい兵士として卒業した」

アルミン「トロスト区奪還作戦でも訓練兵を励ましたり、先導して大きな活躍をしたらしいよ」

アルミン「女型の巨人に遭遇した時も、僕を守ってくれた」

ベルトルト「あれは、そうだね、アニが、やっぱりできなかったって」

ベルトルト「彼女は優しいから」

アルミン「…そしてつい先日、ウルガルド城でクリスタユミルコニーを守って」

アルミン「ライナーは氏んだ」

ベルトルト「…そう、よかった」

40: 2013/07/19(金) 17:10:20 ID:Ytsh8ugg

アルミン「…ライナーは巨人だったんだろ?」

ベルトルト「いいや」

アルミン「同郷のアニとベルトルトが巨人で、ライナーだけがそれを知らないなんて、普通に考えたら」

ベルトルト「違うよ、ライナーは兵士だったんだ…最後まで」

アルミン「…じゃあ最後に一つ聞いていいかな」

ベルトルト「ああ」

アルミン「なんで、自分の存在を消すようなことしたんだ」

ベルトルト「…そんなの決まってるだろ」

41: 2013/07/19(金) 17:11:22 ID:Ytsh8ugg

ベルトルト「幸せになって欲しかったからだよ」

42: 2013/07/19(金) 17:12:32 ID:Ytsh8ugg
おわり

ライナーから逃げたベルトルトの話を書きたかった
読んでくれた人ありがとう

43: 2013/07/19(金) 17:20:05 ID:MFxqn4aA
完全に兵士になってしまったが故に同郷の存在を忘れ、自身が巨人であることを忘れてしまったのか
とにかく乙

44: 2013/07/19(金) 17:35:37 ID:srQEAHHs
おう・・・乙

引用: ベルトルト「できたよライナー!僕の存在を消すスイッチだ!」