1: 2009/05/01(金) 19:40:50.30 ID:ZU9DDsp60
紅「キャンプってあれでしょ……外で食事を作って布張りの小屋で寝て……」

翠「それってただの野宿じゃねーですか」

金「野宿とは違うかしら。ちゃんと雨風をしのげるテントもあるかしら」

紅「大体まだ夜は結構冷えるでしょ?」

金「鞄で眠れば寒さは気にならないかしら」

紅「住む家があるのにわざわざそんなことをするのは理解できないわ」

金「う~~~……」



蒼「そうかな?僕はちょっと面白そうだと思うけどね」

3: 2009/05/01(金) 19:45:32.98 ID:ZU9DDsp60
紅「あら蒼星石、いらっしゃい」

翠「蒼星石は野良乙女にでも興味があるですか?」

蒼「そうじゃないよ。ただ僕たち皆で外泊って今まであまりなかったじゃない?」

蒼「ドールだけで宿泊施設は使えないけどキャンプなら誰に気兼ねすることもないと思うんだ」

翠「そう言われてみればそうですね」

蒼「アウトドアもいいものだよ。道具さえ揃えば下手な施設より快適に過ごせるよ」

金「キャンプ用品ならカナに任せてほしいかしら」

4: 2009/05/01(金) 19:50:55.20 ID:ZU9DDsp60
雛「ヒナはみんなでお泊まりってすごく楽しそうだと思うのよ?」

蒼「どうかな二人とも。道具や知識なら僕もそれなりに協力できると思うけど」

翠「蒼星石がそう言うなら翠星石に異存はねーですよ」

紅「あなたがプランを立ててくれるなら私も付き合ってあげてもいいわ」

金「何でカナのときと反応が全然違うかしら」

5: 2009/05/01(金) 19:58:55.24 ID:ZU9DDsp60
蒼「決まりだね。せっかくだから水銀燈にも声をかけておくよ」

紅「嫌よ、あの子が来るのなら私は行かないわ」

翠「まぁそう言うんじゃねーですよ。野外生活のプロだからきっと役に立つですよ」

雛「ヒナはみんな一緒がいいのー!」

紅「はぁ……仕方ないわね」

8: 2009/05/01(金) 20:02:34.75 ID:ZU9DDsp60
蒼「それじゃ金糸雀。僕も手伝うから計画をお願いできるかな」

金「え、あ……任せるかしら、カナが最高のキャンプにしてあげるかしら!」

紅「この子にやらせるのは何か不安なのよねぇ……」

9: 2009/05/01(金) 20:04:16.14 ID:ZU9DDsp60
銀「やっほー、来たわよぅ♪」

紅「遅刻よ水銀燈、時間厳守だと言ったでしょう?」

銀「ごめんなさぁい、ちょっと道が混んでいたのよぉ」

紅「あなた今空を飛んできたじゃないの!」

金「ちょっと二人ともやめるかしら」

蒼「水銀燈、今日は来てくれてありがとう。君が同行してくれるのは心強いよ」

翠「おめーは毎日がアウトドアだから期待してるですよ」

銀「なっ……何言ってるの!?私は教会に住んでるの!野外生活者じゃないの!」

12: 2009/05/01(金) 20:10:13.41 ID:ZU9DDsp60
翠「おめーえらくその大荷物ですけど一体何を持ってきたですか?」

金「テントに固形燃料、食材、調理器具……その他アウトドア用品一式かしら」

金「キャンプに行くって言ったらみっちやんが用意してくれたかしら」

翠「たかが一泊でそんなに色々いるですかねぇ?」

金「カナとみっちゃんを信じるかしら。絶対必要になるかしら」

13: 2009/05/01(金) 20:12:57.11 ID:ZU9DDsp60
紅「やっぱり鞄で飛ぶと早いわね」

翠「チビカナ、おめーさっきから遅れてるですよ」

金「に……荷物が重いから仕方ないかしら。少しは手伝ってほしいかしら」

14: 2009/05/01(金) 20:16:33.98 ID:ZU9DDsp60
金「ここが今回のキャンプ地かしら」

蒼「正規のキャンプ場ではないけど緑が多くていいところだよ」

紅「そうね。ここなら静かに過ごせそうだわ」

金「この場所はカナが見つけてきたかしら」

翠「おめーにしてはいいチョイスですね」

金「この金糸雀にかかればこれくらいどうということはないかしら♪」

翠「こいつは……ちょっとほめるとすぐ調子に乗るですね」

16: 2009/05/01(金) 20:19:11.42 ID:ZU9DDsp60
蒼「さっそくだけどテントの設営をはじめようか」

翠「え~、めんどくせーですぅ……」

金「文句を言ってないで翠星石も早く手伝うかしら」

17: 2009/05/01(金) 20:22:53.62 ID:ZU9DDsp60
銀「結構しっかりしたテントねぇ」

金「カナの持ってきた道具は全部ここに入れておくから自由に使っていいかしら」

紅「ちょっと鞄を置くスペースがなくなるじゃないの」

翠「おめーはモノが多すぎですぅ。少しは考えて持ってくるです」

金「ぜ、全部必要なものかしら。あとで絶対カナに感謝することになるかしら」

20: 2009/05/01(金) 20:29:40.10 ID:ZU9DDsp60
金「とりあえず夕方までは各自何をしていてもいいかしら」

金「自然と親しみつつ自由に親睦を深めるかしら」

蒼「僕は夕方まで本でも読んでいようかな」

銀「こんなところまで来てもの好きねぇ」

紅「私もそうしようかしら。雛苺、紅茶を淹れて頂戴」

雛「はいなのー!」

銀「私は食べられる野草でも探しに行ってくるわ」ばさばさばさ

翠「おめーら翠星石を一人にするんじゃねーですよ!」

翠「蒼星石、お前は翠星石に付き合うです!」

蒼「仕方ないね……わかったよ翠星石」

金「なんて纏まりのない集団かしら。自由行動というのは判断を誤ったかしら」

23: 2009/05/01(金) 20:35:35.01 ID:ZU9DDsp60
紅「ぬるいわ雛苺。お湯は95℃といつも言っているでしょう?」

雛「うゆー……魔法びんのお湯だから仕方ないの」

翠「見るです蒼星石、こんなところからチョコボールが生えてるです!」

蒼「それはヤツデの実だよ翠星石。チョコボールは自然には生えないよ」

金「(あれ?何かカナだけちょっと浮いてないかしら……?)」

24: 2009/05/01(金) 20:40:36.91 ID:ZU9DDsp60
紅「テントに固形燃料があったでしょう」

雛「お外で火を使うのは怖いのよ」

翠「今度は間違いねーです蒼星石、石の下にチョコボールの群れを発見です!」

蒼「や、やめてよ翠星石、それはダンゴムジじゃないか」

金「(……結局一人になってしまったかしら)」

25: 2009/05/01(金) 20:47:49.14 ID:ZU9DDsp60
金「(皆といてもカナは何故かこうなってしまうことが多いかしら)」

金「(こういうの何て言うんだったかしら。最近パソコンで見たような……)」

金「(そうだ。これは『ぼっち』って言うかしら)」

金「(この状況が進行すると確か……)」

金「(……思い出した。おトイレでご飯を食べないといけなくなるかしら)」

27: 2009/05/01(金) 20:52:09.44 ID:ZU9DDsp60
金「うぅ……おトイレで食べるたまご焼きは美味しいのかしら……」

金「やっぱり嫌かしら。たとえ美味くてもあんなところで食べたくはないかしら」

雛「おトイレがどうかしたの金糸雀?」

金「ひぃっ、雛苺!あなたいつからそこにいたかしら!?」

29: 2009/05/01(金) 20:58:32.16 ID:ZU9DDsp60
雛「おトイレはご飯を食べるところじゃないのよ金糸雀」

金「……やっぱり全部聞かれていたかしら」

雛「ヒナも前に一度騙されそうになったのよ?」

金「いえ、あの……カナはそれくらいわかっているかしら」

30: 2009/05/01(金) 21:02:28.12 ID:ZU9DDsp60
金「そういえばあなた真紅と一緒じゃなかったの?」

雛「読書のじゃまだからあっちにいってなさいって言われたの」

金「そう……じゃああなたも一人なのね雛苺」

雛「うゆ?ヒナはひとりじゃないのよ?」

雛「みんなと一緒だし今は金糸雀といっしょにいるの」

31: 2009/05/01(金) 21:06:08.16 ID:ZU9DDsp60
金「…………」

雛「どうしたの金糸雀?ヒナ何かおかしなこと言った?」

金「いいえ。あなたの言うとおりかしら雛苺」

33: 2009/05/01(金) 21:11:01.77 ID:ZU9DDsp60
金「あなたといるとカナの悩みなんてとても小さなことに思えてくるかしら」

雛「うゆ?ヒナは難しいことはよくわからないの……」

雛「でもね、金糸雀とこうしている時間はとても楽しいと思うのよ?」

37: 2009/05/01(金) 21:20:26.11 ID:ZU9DDsp60
雛「どうしてヒナのことをぎゅってするの金糸雀?」

金「あ、ごめんなさい。嫌だったかしら雛苺」

雛「ううん。ヒナはこうされるのとても好きよ?」

金「……ごめんなさい。もう少しこのままにさせてほしいかしら」

雛「どうして謝るの?悪いことなんて何もないのよ」

39: 2009/05/01(金) 21:27:07.91 ID:ZU9DDsp60
金「…………」

雛「…………」

金「……ありがとう、雛苺」

雛「うゆ?どうしてお礼を言われるかわからないけど」

雛「どういたしましてなの!金糸雀」

42: 2009/05/01(金) 21:38:18.96 ID:ZU9DDsp60
蒼「少し早いけどそろそろ夕食の支度をはじめようか」

雛「今日は何を食べさせてもらえるか楽しみなのー!」

翠「おめーも手伝うですよこのおバカ!……んで、何を作ればいいですか蒼星石?」

金「……それはカナから発表させてもらうかしら!」

44: 2009/05/01(金) 21:44:42.25 ID:ZU9DDsp60
金「夕食は2人ずつ3チームに分かれて一品ずつ作り、その出来を競うかしら!」

金「何を作るかは自由。優勝チームには賞品と最下位には罰ゲームもあるかしら!」

銀「え?それって、もしかして……」

金「桜田家では散々だったけどここで仇を討ってやるかしら!」

48: 2009/05/01(金) 21:51:48.86 ID:ZU9DDsp60
翠「翠星石はそんなのは嫌ですぅ」

金「えっ?」

銀「そうねぇ、私も料理で争うのはこの間のでもう懲りたわ」

紅「やりたければあなた一人でやりなさい」

金「え?でも……カナはこのために食材を山ほど持ってきたかしら」

翠「そんなのはおめーの勝手ですぅ」

49: 2009/05/01(金) 21:56:14.84 ID:ZU9DDsp60
翠「大体何で皆でキャンプに来てるのにいちいち競争しないといけねーですか」

紅「たまにはいいことを言うわ翠星石」

翠「たまには余計ですぅ」

金「でも、あの……カナは」

蒼「…………」

蒼「僕は金糸雀の意見に賛成するよ」

紅「……蒼星石!?」

54: 2009/05/01(金) 22:00:09.47 ID:ZU9DDsp60
翠「蒼星石、おめー何言ってるですか!?」

蒼「……ただし勝負はナシ。二人で協力して美味しいものを作る」

蒼「それを3組で持ち寄れば全員で同じものを作るより豪華な晩餐になると思わない?」

翠「ん、まぁそういうことなら翠星石は構わねーですが……」

紅「そうね。それなら私も異議はないわ」

翠「真紅、おめーは野放しにしとくと危険だから翠星石とやるですよ」

雛「ヒナはお料理苦手だから水銀燈と一緒がいいの」

金「…………」

蒼「それじゃあ僕は君とだね。よろしくお願いするよ金糸雀」

金「わ、わかったかしら蒼星石」

57: 2009/05/01(金) 22:03:23.47 ID:ZU9DDsp60
翠「これ真紅!おめーは一切手を出すなと言ったはずです!」

紅「そんなに露骨に邪魔者扱いしなくてもいいじゃない」

雛「水銀燈、あいとあいとー!」

銀「あなたも少しは手伝いなさいよぉ」

雛「ヒナはここでいっしょうけんめい水銀燈を応援するのー!」

銀「はぁ……やってられないわぁ……」

58: 2009/05/01(金) 22:07:11.73 ID:ZU9DDsp60
金「……蒼星石は大人かしら」

蒼「いきなりどうしたの、金糸雀?」

金「いつも周りに気を配って皆が楽しく過ごせるようにしてくれる……」

金「だからみんな蒼星石の言うことなら素直に聞いてくれるかしら」

62: 2009/05/01(金) 22:11:56.38 ID:ZU9DDsp60
金「カナはいつも子供みたいなことばかり言っているかしら」

金「カナは蒼星石がうらやましいかしら」

蒼「そんなことはないよ金糸雀」

金「でも……」

蒼「僕は逆に君が羨ましい」

金「えっ?」

蒼「いつも言いたいことを言って明るく笑える君をとても羨ましいと思ってるよ」

66: 2009/05/01(金) 22:15:04.32 ID:ZU9DDsp60
金「カ、カナはそんなのじゃないかしら……」

金「いつも考えなしに喋って皆を不快にさせてしまうだけかしら」

蒼「そうかな?少なくとも僕は不快になったことなんてない……」

蒼「君といると楽しいよ、金糸雀」

67: 2009/05/01(金) 22:17:35.36 ID:ZU9DDsp60
金「さっき雛苺も同じことを言っていたかしら」

蒼「みんなそう思ってるさ。真紅たちは少し口が悪いだけ」

金「そんなの……カナは信じられないかしら」

71: 2009/05/01(金) 22:20:06.88 ID:ZU9DDsp60
蒼「元気を出して。言っただろう?君は笑っている方が素敵だよ」

金「ま、真顔でそういうこと言うのはやめてほしいかしら……///」

蒼「それが僕の性格だからね。今更変える気はないよ」

蒼「君も同じだよ金糸雀。無理に変える必要はないんじゃないかな」

75: 2009/05/01(金) 22:30:26.78 ID:ZU9DDsp60
金「あの、蒼星石……」

蒼「なぁに?」

金「……ありがとう、かしら」

蒼「ふふ、じゃあそろそろ調理にかかろうか」

蒼「勝負はしないと言ったけどどうせなら一番美味しいものを作りたいからね」

金「えっ……?」

蒼「僕はね、こう見えて結構負けず嫌いな性格なんだよ?」

金「…………」

金「カナもがんばって手伝うかしら」

77: 2009/05/01(金) 22:36:10.64 ID:ZU9DDsp60
雛「ふゆぅ、どれもおいしかったのー」

紅「そうね。特に蒼星石たちのものは絶品だったわ」

蒼「そうかい?喜んでもらえてよかったよ」

金「それじゃあ分担して後片付けをするかしら」

蒼「あ、竈の片付けも忘れないようにね」

紅「それってどうすればいいのかしら?」

蒼「火を使った跡が外から見えないよう土を被せておくんだよ」

81: 2009/05/01(金) 22:39:20.64 ID:ZU9DDsp60
銀「私はパスね。手が汚れるもの」

紅「あなたは人一倍食べたのだから率先してするべきよ」

銀「人聞きの悪いこと言わないで。あなただって同じくらい食べたでしょう?」

紅「わ、私はそんなに食べてないのだわ!」

翠「おめーらいちいち喧嘩してんじゃねーですよ」

金「あ、あの……ちょっといいかしら」

83: 2009/05/01(金) 22:45:46.56 ID:ZU9DDsp60
紅「何?どうかしたの金糸雀?」

金「スコップを持ってきたからこれを使うといいかしら」

銀「あら、ずいぶん用意がいいのね」

金「キャンプファイアーのあとにも使うものだから……」

銀「そういえばこのあとやるって言ってたわねぇ」

雛「ヒナもすごく楽しみなのよ」

翠「アレは一度翠星石もやってみたいと思ってたです」

翠「おめーらとっとと片付けて早くはじめるですよ!」

85: 2009/05/01(金) 22:51:18.08 ID:ZU9DDsp60
翠「チビカナ、おめーのお陰で手っ取り早く終わったですよ」

金「そ、そうかしら。それはよかったかしら」

翠「??……おめー何かいつもと様子が違わねーですか?」

金「そ、そんなことはないかしら」

紅「それにしてもまだ明るいわ。少し時間が早いんじゃない?」

蒼「大丈夫。実はその前に一つ別の予定を組んでいるんだ」

88: 2009/05/01(金) 22:53:54.30 ID:ZU9DDsp60
紅「なっ!?き、肝だめしですって……!?」

翠「そんなの聞いてねーですよ!?」

蒼「ふふ……こういうのはサプライズだから面白いんじゃないか」

蒼「あ、事前にやる怪談なら大丈夫だよ。僕が面白いのをいくつか仕入れてきたからね」

翠「だ、誰もそんな心配はしてねーです!」

雛「うゆー?きもだめしってなに?そんなに面白いの蒼星石?」

蒼「うん、楽しみにしているといいよ雛苺」

91: 2009/05/01(金) 22:59:38.63 ID:ZU9DDsp60
金「(ガタガタガタガタ……)」

雛「(ブルブルブルブル……)」

蒼「……つまりは遊び半分で山に入ってはいけないということだね」

紅「(ガチガチガチガチ……)」

翠「(デスデスデスデス……)」

蒼「それじゃあ次のお話なんだけど……」

金「や、やめるかしら蒼星石、もう十分怖すぎるかしら……」

紅「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」

翠「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ……」

雛「そ、蒼星石のうそつき……こんなのぜんぜん面白くないのよぅ……」

94: 2009/05/01(金) 23:03:11.69 ID:ZU9DDsp60
蒼「……最後に。この国の山の神様は女性を嫌う」

蒼「さっき話した『山の怖い話』も被害者はほとんど女性なんだ。みんなくれぐれも気をつけてね(ニコッ)」

翠「お、おめーは……笑顔で恐ろしいこと言うんじゃねーですよ!」

紅「この国の山には怪奇がいっぱいなのだわ……」

蒼「(ま、僕たちの存在自体人間から見れば怪奇現象そのものだけどね……)」

96: 2009/05/01(金) 23:04:53.17 ID:ZU9DDsp60
蒼「雛苺は危ないから僕が連れて行ってあげる」

雛「いいけど途中でヒナのことおどかしたりしないでほしいのよ?」

蒼「あはは。大丈夫、約束するよ雛苺」

翠「(腰が抜けちまって立てねーです……)」

紅「(腰が抜けてしまって立てないのだわ……)」

金「水銀燈……カナと一緒に行ってもらってもいいかしら」

銀「ん……私は別に構わないわよぉ?」

98: 2009/05/01(金) 23:07:59.06 ID:ZU9DDsp60
蒼「ルールは簡単。決められたコースを歩き予め用意したおふだを取ってくるだけ」

蒼「僕と金糸雀はコースを知ってるから翠星石たちには地図を渡しておくよ」

蒼「最初は金糸雀と水銀燈にお願いできるかな?」

100: 2009/05/01(金) 23:09:52.14 ID:ZU9DDsp60
金「(ガチガチガチガガチ……)」

バサバサバサバサ……

金「ひぃ!何かしら今の音!?」

銀「大丈夫よ。ただの鳥の羽音じゃない」

スルッ……

金「あふぇっ!今何か顔に触れたかしら!」

銀「ただの蔓草よ。怖がることは何もないわ」

102: 2009/05/01(金) 23:13:42.21 ID:ZU9DDsp60
金「(ガチガチガチガガチ……)」

銀「……そんなに怖いならどうして肝だめしなんて予定に入れたのよ?」

金「キ、キャンプに肝試しは絶対欠かせない必修科目かしら……」

銀「そうなの?私にはよくわからないけど……」

金「それにしても水銀燈は落ち着いているかしら。怖くないのかしら」

銀「こんなので怖がってたら廃教会に一人で住むなんてできないわよ」

銀「それに別におどかし役がいるわけじゃない、ただの夜の散歩でしょ?」

104: 2009/05/01(金) 23:16:59.91 ID:ZU9DDsp60
銀「……でね?結局オカルト的な面から見ても山神と女性を結ぶ明確な根拠はないの」

銀「せいぜい日本神話の石長比売くらいかしら。乱暴な言い方をすればこじ付けね」

金「はー……全然知らなかったかしら」

銀「実質的には危険な場所に足手まといになる女を入れたくないというところでしょうね」

銀「この国では女性は海も山も禁止だもの」

金「あ、それは聞いたことがあるかしら。日本の女性は家から出ないことが美徳かしら」

105: 2009/05/01(金) 23:20:26.41 ID:ZU9DDsp60
銀「まぁ私の話にも特に根拠なんてないけどねぇ……」

銀「オカルトもこういう捉え方をすればそれほど怖いものでもないでしょう?」

金「そういえばいつの間にか震えもおさまっているかしら」

銀「あなた小難しい講釈が好きだものね、こういう話をすれば少しは落ち着くと思ったのよ」

金「……水銀燈はすごいかしら。やっぱりカナのお姉さんかしら」

107: 2009/05/01(金) 23:26:40.48 ID:ZU9DDsp60
銀「わかったら少し離れてくれる?そんなにくっつかれると歩きにくくて仕方ないわ」

金「?あっ……ごめんなさい。全然気が付かなかったかしら」

109: 2009/05/01(金) 23:31:04.40 ID:ZU9DDsp60
金「やっぱり山は星がきれいかしら」

銀「そぉ?私にはいつもと同じに見えるけれど」

金「そ、そんなことないかしら。絶対いつもよりきれいかしら」

110: 2009/05/01(金) 23:32:19.70 ID:ZU9DDsp60
銀「ところでおふだのある場所まではまだ遠いの?」

金「…………」

銀「…………」

金「…………」

銀「…………」



金「……道に迷ってしまったかしら」

111: 2009/05/01(金) 23:35:07.76 ID:ZU9DDsp60
銀「あなたねぇ、自分で決めたコースじゃなかったの?」

金「ごめんなさい……話に夢中で道を間違えたことに気が付かなかったかしら」

銀「しょうがないわねぇ。空からテントの場所を探してくるから一度戻るわよ」

金「待ってほしいかしら!カナを一人にしないでほしいかしら!」

銀「……もう怖くないんじゃなかったのぉ?」

金「そ、それは水銀燈が一緒だったからかしら」

金「こんなところに一人で残されたらカナは泣き出してしまうかしら!」

112: 2009/05/01(金) 23:39:59.31 ID:ZU9DDsp60
銀「メイメイ、あなたが行ってキャンプ場を探してきなさい」

メ「チカ チカ……」

金「うぅ……ご迷惑をおかけして申し訳ないかしら」

113: 2009/05/01(金) 23:41:23.54 ID:ZU9DDsp60
銀「急に星が見えなくなってきたわ。もしかしたらひと雨くるかも」

金「そんな、天気予報はちゃんと確認してきたかしら」

銀「ここは山だから……予報はあまりあてにならないわ」

114: 2009/05/01(金) 23:43:08.78 ID:ZU9DDsp60
金「たまごやき」

銀「きんぴら」

金「ラング・ド・シャ」

銀「鮭の切り身」

金「ミ、ミルフィーユ」

銀「湯漬け」

金「も、もうしりとりはやめるかしら……」

116: 2009/05/01(金) 23:47:14.42 ID:ZU9DDsp60
ポツ ポツ……

銀「とうとう降ってきちゃったわね」

金「このままだと服が濡れてしまうかしら」

銀「そうね……どこか雨宿りできるところでもあるといいけど」

120: 2009/05/01(金) 23:52:22.64 ID:ZU9DDsp60
金「水銀燈、これを使うかしら」

銀「これってあなたの傘じゃないの」

金「日傘だけど少しの雨なら大丈夫かしら」

銀「私が使っちゃっていいわけ?」

金「水銀燈が戻れなかったのはカナのせいだから……これは水銀燈に使ってほしいかしら」

銀「おばかさぁん」

金「えっ……?」

銀「いらっしゃい。ふたりで使えばいいでしょう?」

123: 2009/05/01(金) 23:57:57.22 ID:ZU9DDsp60
銀「あらメイメイ、キャンプ場は見つかった?」

メ「チカ チカ……」

銀「雨が降りそうだから戻ってきた?あなたどこのお嬢様よ?」

メ「チカ、チカ……」

銀「近くに山小屋があるから雨宿りしたい……?」

銀「ナイスよメイメイ。キャンプ場のことは許してあげる」

124: 2009/05/01(金) 23:59:24.53 ID:ZU9DDsp60
ポツ ポツ ポツ……

銀「もう少し傘に入りなさい、服が汚れてしまうわよ」

金「でもそれじゃ水銀燈が濡れてしまうかしら」

銀「はぁ、あなた本当におばかねぇ……」

銀「もっとくっつけばいいだけじゃない」

126: 2009/05/02(土) 00:04:37.54 ID:qvDVw/vx0
ギィ バタン

銀「間一髪ね、本格的に降ってきたわ」

銀「今日はここで一晩過ごすことになるかもね」

金「ごめんなさい。カナのせいで……」

銀「あなたまだ言ってるの?」

金「だって今日は鞄で眠れないかもしれないから……」

銀「一日くらいどうってことないわ」

金「それに夜はまだ冷えるかしら」

銀「そんなの……」

金「……?」

銀「何でもないわ。それよりもういつまでも気にしちゃダメよ?」

127: 2009/05/02(土) 00:08:27.95 ID:qvDVw/vx0
銀「メイメイ、私たちは雨が止んだら戻るって真紅たちに伝えてきて」

メ「チカ チカ……」

銀「あなた別に濡れても平気じゃないの」

メ「チカ チカ……」

銀「しょうがないわねぇ……ヤクルト一週間分で手を打たない?」

メ「チカッ!(キリッ!)」

ピュー……

金「(行っちゃった……精霊も持ち主に似るのかしら?)」

129: 2009/05/02(土) 00:10:18.53 ID:qvDVw/vx0
金「…………」

銀「いい加減落ち込むのやめなさいよぉ」

金「あ、えっと……違うの、そうじゃなくて……」

銀「何よぅ?」

金「あの、少し寒くて……」

銀「…………」

銀「これ力使うからイヤなのよねぇ」

金「……?」

ばさっ!

金「ふぁ……黒い羽根がたくさん……」

130: 2009/05/02(土) 00:13:44.81 ID:qvDVw/vx0
銀「これで少しは暖かいでしょ?」

金「ええ、でも……」

銀「でも、何よ?」

金「何だかとってもちくちくするかしら」

銀「……剥き出しのフェザー100%なんだから仕方ないじゃない」

金「せめてダウンならよかったかしら」

銀「贅沢言ってるんじゃないわよぉ」

133: 2009/05/02(土) 00:17:15.75 ID:qvDVw/vx0
銀「…………」

金「……?」

銀「はぁ……多分こうなると思ってたわ」

金「何の話かしら……?」

銀「何でもない。それよりもっとこっちに来なさいよぉ」

金「えっ?」

銀「『え?』じゃないわよ。一人より二人の方が暖かいに決まってるでしょう?」

136: 2009/05/02(土) 00:20:20.17 ID:qvDVw/vx0
金「えっと……いいのかしら?」

銀「早くしなさい、寒いんでしょ?」

金「それじゃ、あの……失礼するかしら」

きゅー……

銀「抱きつくのはいいけど変なトコ触らないでよぉ?」

金「あ、ご、ごめんなさい」

銀「大丈夫よ。それよりもっと寄りなさい」

金「水銀燈……」

銀「何よ?」

金「……ありがとう」

銀「別に、お互い様よ。こうしていれば私だって暖かいわ」

138: 2009/05/02(土) 00:22:39.70 ID:qvDVw/vx0
銀「……何かあった?」

金「えっ?」

銀「あなた今日はやけにしおらしいじゃない」

金「そ、そんなことはないかしら」

銀「ふぅん、ならいいけど」

金「…………」

金「色々あったけど、カナはもうだいじょうぶかしら」

143: 2009/05/02(土) 00:26:04.90 ID:qvDVw/vx0
金「水銀燈、いい匂いがするかしら」

銀「そ、そういうこと言うのやめなさい……」

金「まさちゅーせっちゅーかしらー」

銀「何よぉ、甘えちゃって」

金「だって水銀燈はカナのたった一人のお姉さんかしら」

金「皆の前ではカナもお姉さんだけど、今はそういうことは気にしなくていいかしら」

146: 2009/05/02(土) 00:27:59.91 ID:qvDVw/vx0
金「あ、でも……」

銀「なに?」

金「水銀燈は一番上のお姉さんだから、常に気にしてないといけないのかしら?」

銀「私は……そんなこと考えたこともないわ」

金「水銀燈、おねえちゃん……」

銀「何よぅ?」

金「もし甘えたくなったらいつでもカナに言うといいかしら」

金「そのときだけカナがお姉さんになってあげてもいいかしら」

銀「…………」

銀「……ばっかじゃないの」

148: 2009/05/02(土) 00:29:54.91 ID:qvDVw/vx0
金「すー、すー……」

銀「やっと落ち着いたと思ったら寝ちゃったわ。本当に子供ねぇ」

金「んん……おねえちゃぁん……すー、すー……」

銀「まったく、手のかかる妹ね……」

銀「そんなにくっつかれたら私ここから動けないじゃない」

149: 2009/05/02(土) 00:34:47.32 ID:qvDVw/vx0
銀「はあ……やっぱりまだちょっと寒いわね」

金「すー、すー……」

銀「この子、体温が高くて気持ちいいわ」

金「すや、すや……」

銀「結構かわいい寝顔してるじゃない……」

金「zzz……」

銀「完全に寝てる……わよね……?」

金「…………」

銀「ん……」

ちゅっ

154: 2009/05/02(土) 00:43:36.83 ID:qvDVw/vx0
バタン!

銀「……え?」

紅「大丈夫?水銀燈、金糸雀。迎えに来たわ」

翠「お?こいつらふたりで抱き合って寝てるです」

雛「なんだかとっても仲良しなのー」

銀「違っ……これはただ鞄がないと寒いから……!」

金「ふぇえ?何かしら、もう朝になったかしら……?」

156: 2009/05/02(土) 00:47:00.89 ID:qvDVw/vx0
蒼「メイメイが報せてはくれたけどやっぱり心配で迎えに来たんだよ」

銀「そ、そう。悪いわね。あなたたち濡れなかった?」

紅「テントの中に傘が何本かあったから使わせてもらったわ」

銀「へぇ?用意がいいじゃないの金糸雀」

金「いえ、あの……結局持って出かなかったから皆に迷惑をかけてしまったかしら」

157: 2009/05/02(土) 00:49:14.51 ID:qvDVw/vx0
金「いつの間にか雨が上がっているかしら」

紅「眠りの時間にはまだ少し間があるわ。今から戻れば間に合うわね」

158: 2009/05/02(土) 00:50:57.30 ID:qvDVw/vx0
金「ごめんなさい。カナのせいで予定が大幅に狂ったかしら」

雛「大丈夫なのよ。こっちはこっちで結構盛り上がってたの」

金「でもみんな楽しみにしてたキャンプファイヤーもできなかったかしら」

翠「何言ってるですか、雨が降ったんだからどの道そんなの無理ですよ」

金「それは、そうだけど……」

蒼「…………」

蒼「……そうだ」

160: 2009/05/02(土) 00:53:38.15 ID:qvDVw/vx0
蒼「おいで、レンピカ」

雛「うゆ?どうしたの蒼星石?」

紅「そういうことね。ホーリエ」

翠「スィドリーム。ほれチビ苺、おめーもですよ」

雛「??ベリーベル……?」

金「え?え……?みんな何をしてるかしら」

銀「ほら、あなたも……」

チカチカチカチカチカ……

金「あ……!」

金「ピチカート」



銀「メイメイ……キャンプファイアーとは違うけど、これはこれでいいかもねぇ」

162: 2009/05/02(土) 00:58:40.43 ID:qvDVw/vx0
紅「そろそろ眠りの時間だわ」

雛「ヒナはもうちょっと起きていたいの」

翠「そうですねぇ、みんな揃っての夜なんて滅多にないですからねぇ」

銀「私はどちらでも構わないわ」

蒼「少しくらいならいいんじゃないかな。金糸雀、君は?」

金「え、あの……カナは……」

銀「言いたいことがあるならはっきり言うですよ」

金「えっと、カナも……もう少しみんなとお喋りしていたいかしら」

紅「はあ……仕方ないわねあなたたち」






紅「夜は眠りの時間だわ。でも……」

紅「今日だけ……少しだけ付き合ってあげるのもいいかしらね」

164: 2009/05/02(土) 01:03:54.94 ID:qvDVw/vx0
蒼「そろそろ出発するよ。忘れ物はない?」

翠「チビカナ、おめーぐずぐずしてんじゃあねーですよ」

金「ごめんなさい。荷物が多くて……」

翠「しょうがねーですね。翠星石が少し持ってやるからさっさとするですよ」

金「え、でも……いいのかしら?」

翠「ま、まぁ今回は何だかんだで思ったよりずっと楽しめたです」

翠「自分たちで遊んだものくらい自分たちで片付けて当然です」




翠「ほれ、おめーたちも楽しんだんだからちっとは手伝ってやるですよ」

169: 2009/05/02(土) 01:08:27.09 ID:qvDVw/vx0
銀「一泊って思ったより短いわねぇ」

翠「そうですね。このまま帰るのがもったいねーくらいです」

雛「ヒナはもう少しいたかったのよ」

蒼「また来ればいいさ」

紅「そうね……またいつでも来れるわね」

170: 2009/05/02(土) 01:12:07.26 ID:qvDVw/vx0
金「それじゃあカナの家はこっちだから……」

紅「待ちなさい、金糸雀」

金「?……何かしら?」

紅「これから私の部屋で皆でお茶でもしようかと思うのだけど」

翠「いいですね、お菓子がまだ結構残ってるからついでにさらえちまうですよ」

雛「ヒナモまだうにゅーいっぱい持ってるのー!」

紅「どうかしら?もちろん疲れているのなら無理にとは言わないけど……」

金「…………」

金「カナもごちそうになるかしら♪」






金糸雀「みんなでキャンプに行くかしら!」  ~fin~

171: 2009/05/02(土) 01:13:35.77 ID:RsEhfGuJ0

172: 2009/05/02(土) 01:13:53.51 ID:+4rR+4kXO

金糸雀好きだからハブられてないこの流れはとてもよかったよ。

180: 2009/05/02(土) 01:18:39.98 ID:qvDVw/vx0

188: 2009/05/02(土) 01:29:09.12 ID:qvDVw/vx0
>>180はうそです。
多分この後は楽しくお茶会をして、
カナを荷物持ちがてら草笛家まで送ってあげて終わりです。

お付き合いありがとうございました。

引用: 金糸雀「みんなでキャンプに行くかしら!」