1: 2024/09/01(日) 15:02:52 ID:???00
さやか「ワン、ツー、スリー、フォー、ワン、ツー、スリー、フォー……」

さやか「はい、そこまでです。小鈴さん、そろそろ休憩にしましょう」ニコッ

小鈴「は、はい!」スタッ

さやか「小鈴さん。このダンスの振り付け……先日教えたばかりなのにもう完璧に仕上がっていて、流石ですね」

小鈴「! そ、そんなことはありません! 徒町なんか、まだまだ全然です!」

綴理「んー……でも、今日のすずは昨日のすずとは違ってる気がするよ? すごくがんばった、っていう色が見える」

さやか「ええ、わたしもそう思います。小鈴さん、実は隠れて練習をしていたりしますか?」

小鈴「あー…………い、いえ! 徒町はただ、もうこの動きには慣れてしまったというか……」

さやか「そうなんですか? 小鈴さんはすごいですね。わたしも、小鈴さんを見習わなければなりません」フフッ

小鈴「あはは……さやか先輩にそう言っていただけるほど、徒町、大したことはしていないですよ!」

小鈴(──だって)

小鈴(徒町はこの練習を、もう“何十回も経験している”のですから)

3: 2024/09/01(日) 15:03:44 ID:???00
────

小鈴(徒町が最初に、“今日”を過ごしたときも……そうでした)



さやか「ワン、ツー、スリー、フォー、ワン、ツー、スリー、フォー……」

さやか「はい、そこまでです。小鈴さん、そろそろ休憩にしましょう」ニコッ

小鈴「は、はい! ……うぅー、慣れない動きが多くて、徒町、もう動けません……」グデー

綴理「おー、すずが伸びてる。ヒラメみたい……いや、カレイかな?」

さやか「そこに違い、ありますかね?」クスッ

4: 2024/09/01(日) 15:04:17 ID:???00
小鈴「うぅ……やはり今の徒町にできることは、数をこなすことだけですね……! もっと頑張らねば……!」グッ

さやか「確かにそうですが、オーバーワークは禁物ですよ、小鈴さん。ひとまず休憩ですので、朝ごはんをいただきましょうか」ニコッ

小鈴「! 朝ごはん……!」ガバッ

綴理「わーい、さやの美味しいごはんだー。いつもありがとー、
さや」

さやか「いえいえ、わたしが好きでやっていることですから」クスッ

小鈴「さやか先輩の作ってくださる料理は、どれも本当に美味しくて! 昨日のアジフライも絶品でした!」

さやか「ふふっ、それはよかったです。今日はノドグロの煮付けを用意しましたよ」

綴理「のどぐろ、のどしろ……美味しそうだ」

5: 2024/09/01(日) 15:05:02 ID:???00
さやか「さぁ、小鈴さん、綴理先輩、どうぞ」サッ

小鈴「ありがとうございます、さやか先輩! それでは……」パクッ

小鈴「! これ、とっても美味しいです!」

さやか「お口にあったようで何よりです。たくさんありますので、遠慮しないで食べてくださいね」

綴理「やったー、いっぱい食べよー」モグモグ

小鈴「こんなに美味しい料理が食べられるなんて……これで明日の朝練だって、徒町、何倍も何十倍も頑張れてしまいそうです!」

さやか「ふふっ、小鈴さん。明日は二学期の始業日ですから、朝練はありませんよ」

小鈴「……は! そ、そうでした! もう明日から、二学期が始まるんですね!」

綴理「あ、そっか。それじゃあ、今日で夏休みも終わりなんだ」

6: 2024/09/01(日) 15:06:01 ID:???00
小鈴「夏休みが終わり……徒町、この夏はなんだか早かった気がします!」

さやか「ええ、そうですね。この夏は、本当に色々ありましたから……あっという間でしたね」クスッ

綴理「ん。いい夏だったね。みんなとも、楽しいことがいっぱいできた」

さやか「楽しいこと……」

小鈴「それに、夏休みの間のDOLLCHESTRAの練習も、未熟な徒町といたしましては実に有意義でした!」

さやか「そう、ですね。合宿が終わってから、ほぼ毎日やっていましたから……実力はついたのではないでしょうか」

7: 2024/09/01(日) 15:07:01 ID:???00
さやか「……小鈴さんは夏休み、楽しめましたか?」

小鈴「はいっ! 徒町、特訓がない僅かな日も姫芽ちゃん、吟子ちゃんと一緒に街に行ったりして、とっても楽しめました!」

さやか「ふふっ、それはよかったです。ちゃんと宿題も終わらせましたか?」

小鈴「それもバッチリです! 徒町、この夏に思い残すことはありません!」

8: 2024/09/01(日) 15:08:01 ID:???00
────

小鈴(それから……その日は一日中、DOLLCHESTRAの練習に取り組んで)

小鈴「ふわぁ……そろそろ寝なきゃ、だよね……」

小鈴(気づけば、もう遅い時間。後はただ眠るだけ……)

小鈴「寝て起きたら、明日からは二学期が始まるんだ……!」

9: 2024/09/01(日) 15:09:01 ID:???00
小鈴(──ワクワクして、その夜はいつもより、なんだか寝つきづらい気がしました)

小鈴(それでも、やっぱり徒町は、それまでの夏休みの日々同様、いつの間にかぐっすりと眠りについていたのです)

10: 2024/09/01(日) 15:10:01 ID:???00
────

チュンチュン

小鈴「んん……もう朝……?」ゴシゴシ

小鈴「…………はっ! ということは、今日から新学期……!」ガバッ

小鈴「やはり徒町といたしましては、せっかくの新学期、ここは心機一転! 今までの徒町以上にいろんなことにチャレンジして──」

ピコン!

小鈴「? メッセージ…………さやか先輩から?」スッスッ

『今日の朝練は、ダンス練習を行いますので、レッスンルーム集合でお願いします。』

小鈴「……? 朝練……」

11: 2024/09/01(日) 15:11:01 ID:???00
小鈴「…………朝練!?!?!?」ガタッ

小鈴(届いたメッセージを何度読み返しても、“朝練”という2文字が消えることはなく、徒町の目を引きつけて離しません)

小鈴「…………も、もしかして……徒町、勘違いを!?」

小鈴(昨日言っていた、新学期だから朝練はない、というのは……もしや徒町の聞き違いで、本当はいつも通り実施されるのだとしたら……)

小鈴「……た、大変だ!」アタフタ

小鈴(このままでは、新学期そうそう遅刻……! そんな悪行、この徒町に許されていいはずがありません!)

小鈴「あわわ、い、急がなきゃ……!!」ダッ

12: 2024/09/01(日) 15:12:02 ID:???00
────

タッタッタッ

小鈴「お、おはようございます!! さやか先輩!」バンッ

さやか「小鈴さん、おはようございます。……どうしたんですか、そんなに急いで……?」

小鈴「はぁ、はぁ……徒町、今日は朝練が無いと勘違いしていまして……猛ダッシュで馳せ参じた次第です……! ……はぁ、はぁ……」ゼーハー

さやか「お、落ち着いてください、小鈴さん。まだ遅刻になる時刻ではありませんでしたから、大丈夫ですよ」

13: 2024/09/01(日) 15:13:01 ID:???00
小鈴「よ、良かったぁ……」ホッ

小鈴(新学期だというのに、徒町、初日から失敗するところでした……)

さやか「そうだ、小鈴さん。今日の朝練では、先日教えたダンスの振りを確認しますので、そのつもりでお願いしますね」

小鈴「なるほど、分かりました、さやか先輩!」

小鈴(昨日も、このダンスの練習でしたし……いわゆる強化週間、というものでしょうか……!)

小鈴(何回でもチャレンジして、このダンスを物にできるよう、徒町、頑張らねば!)ムンッ

14: 2024/09/01(日) 15:14:01 ID:???00
────

さやか「ワン、ツー、スリー、フォー、ワン、ツー、スリー、フォー……」

さやか「はい、そこまでです。小鈴さん、そろそろ休憩にしましょう」ニコッ

小鈴「は、はいっ! ……うぅ、少しは流石に、この動きにも慣れてきましたが……やっぱり疲れて動けません……」グデー

綴理「おー、すずが伸びてる。ヒラメみたい……いや、カレイかな?」

さやか「そこに違い、ありますかね?」クスッ

小鈴「……? その会話……」

さやか「小鈴さん? どうかしましたか?」

小鈴「い、いえ、なんでもないです!」

小鈴(確か昨日も、こんな感じのやりとりを、徒町は聞いた気がするのですが……)ウーム

小鈴(……徒町の記憶違い、でしょうか?)

15: 2024/09/01(日) 15:15:01 ID:???00
さやか「さて、ひとまず休憩ですので、朝ごはんをいただきましょうか」ニコッ

綴理「わーい、さやの美味しいごはんだー。いつもありがとー、
さや」

さやか「いえいえ、わたしが好きでやっていることですから……今日はノドグロの煮付けを用意しましたよ」

小鈴「うわぁ、昨日と同じメニューですね! 徒町、さやか先輩の作るノドグロの煮付け、美味しくて大好きです!」

さやか「? 昨日はアジフライでしたよ?」

小鈴「……あれ? そ、そうでしたっけ……?」

小鈴(思い返してみてもやはり、昨日食べたのもノドグロの煮付けだったような……?)

綴理「のどぐろ、のどしろ……美味しそうだ」

16: 2024/09/01(日) 15:16:01 ID:???00
さやか「さぁ、小鈴さん、綴理先輩、どうぞ」サッ

小鈴「い、いただきます……」パクッ

小鈴「……やっぱり、とっても美味しいです!」

さやか「お口にあったようで何よりです。たくさんありますので、遠慮しないで食べてくださいね」

綴理「やったー、いっぱい食べよー」モグモグ

小鈴「……」

17: 2024/09/01(日) 15:17:01 ID:???00
小鈴(……おかしい、と流石の徒町でも分かりました)

小鈴(昨日も聞いた会話が、こうも何回も繰り返されている不可解な状況……いくら徒町といえど、違和感を覚えずにはいられません)

小鈴(これは、もしかして……)

小鈴「さ、さやか先輩っ!」

さやか「小鈴さん? どうしたんですか?」

小鈴「あの……つかぬことをお聞きしますが、今日は何の日、でしたっけ……?」

さやか「? おかしなことを聞きますね、小鈴さんは」フフッ

さやか「──今日は夏休み最後の日、ですよ」

18: 2024/09/01(日) 15:18:01 ID:???00
────

──

小鈴(──それからというもの、徒町が幾度となく練習を終え、眠りについても、やはり目覚めると同じ朝で……)

小鈴(かくして徒町は、夏休み最後の一日を、なぜだか何度も繰り返すようになったのです)

19: 2024/09/01(日) 15:19:01 ID:???00
小鈴「…………さすがに、何とかしなくては……!」

小鈴(繰り返し始めてから、数十回……徒町、ようやく危機感というものを抱きました)

小鈴(いくら徒町といえど、この状況を解決しようと、いろいろ手を尽くしはしましたが……どれもこれも上手くいかず)

小鈴(現状、ただ教わったダンスの振りが上手くなっただけ、という……もちろん、それはそれで良いことなのですが)

20: 2024/09/01(日) 15:20:01 ID:???00
小鈴「……でも」

小鈴(このまま永遠に新学期が訪れない、なんてことがあれば……徒町は、新しくチャレンジをすることが、金輪際できなくなってしまいます)

小鈴(徒町には、この蓮ノ空で成し遂げたいことがあります! ……だから、諦め、という選択肢は初めから存在しません)

小鈴「…………とはいえ、もう徒町だけの頭では、すっかり行き詰まってしまい……」ウーム

小鈴(こうなったら、誰かの知恵を借りる、というのも一つの手かもしれません)

小鈴(一日を何度も繰り返すなんて、ゲームみたいな不思議な状況……これを、相談するなら……)

21: 2024/09/01(日) 15:21:01 ID:???00
────

コンコンコン

小鈴「か、徒町小鈴です!」

「小鈴ちゃん? 今、鍵開けるね~」

ガチャ

姫芽「──どうしたの、小鈴ちゃん? アタシに何か用事~?」

22: 2024/09/01(日) 15:22:01 ID:???00
小鈴「姫芽ちゃん! ……用事というか、その、相談したいことがあって……」

小鈴(姫芽ちゃんは、徒町の知らないことをたくさん知っているから、もしかしたら……と、徒町は一縷の望みをかけることにしました)

小鈴「……あ、でも!  徒町ごときが姫芽ちゃんの時間を奪ってしまうのは、申し訳なく……迷惑だったら全然!」ブンブン

姫芽「ふふっ、小鈴ちゃんのことを、アタシが迷惑に思うわけないって~」

23: 2024/09/01(日) 15:23:02 ID:???00
姫芽「というか、むしろドンドン頼ってくれた方が、アタシは嬉しいかな~」ニコッ

小鈴「姫芽ちゃん……!」パァァ

小鈴(徒町は、なんて幸せ者なのでしょうか……! こんなに頼もしい友人が、徒町にはついているなんて)

小鈴(……これはやはり、絶対に解決しなくては……!)

姫芽「それで、どんな相談なの、小鈴ちゃん~?」

小鈴「あ、え、えっとね──」

24: 2024/09/01(日) 15:24:02 ID:???00
────

姫芽「──同じ日を、繰り返してる?」

小鈴「うん……そうなんだ」

小鈴(徒町の拙い説明を、姫芽ちゃんはただ、じっと聞いてくれて)

姫芽「そっか~……大変だったんだね、小鈴ちゃん」ナデナデ

小鈴「姫芽ちゃん……」

小鈴(少しも疑わずに、徒町のことを、優しく受け入れてくれました)

25: 2024/09/01(日) 15:25:03 ID:???00
小鈴「その、徒町、この現象が何なのか、全然分からなくて……姫芽ちゃんだったら何か知ってたりするかな、って」

姫芽「なるほどね~、ん~……そうだな~」ウーン

姫芽「話を聞いて思ったんだけど……もしかしたら、それ──タイムリープ、じゃないかな~?」

小鈴「たいむ、りーぷ?」

26: 2024/09/01(日) 15:26:01 ID:???00
姫芽「ゲームでいうコンティニュー、みたいな感じかな~? 何度も何度も時間を戻して、目的達成のために挑戦する……」

姫芽「そういう、同じ時間を繰り返すのをタイムリープって言うんだけど……話を聞く限り、小鈴ちゃんのもそれじゃないかなって」

小鈴「タイムリープ…………」

小鈴(徒町の話を聞いただけで、すぐにそういう言葉を教えてくれて……やっぱり、姫芽ちゃんに相談してよかった、と徒町、改めて思います)

27: 2024/09/01(日) 15:27:01 ID:???00
小鈴「姫芽ちゃん。もし、そのタイムリープだとしたら……原因? きっかけ? って……?」

姫芽「ん~、ありがちなのは、その日に心残りがある、とかかな~?」

小鈴「心残り?」

姫芽「そうそう、心残りがあるから、それを解決しようと何回もやり直す~……みたいな~」

小鈴「なるほど……? でも、そうだとしたら……徒町、今日に何か心残りというものが……?」ウーン

28: 2024/09/01(日) 15:28:01 ID:???00
姫芽「そうだなぁ、例えば、今日は夏休み最後の日だし……夏休みが終わってほしくない、とか?」

小鈴「夏休みが終わってほしくない、かぁ……」ウーン

姫芽「アタシだったら、結構そういうの考えちゃうかもな~」

小鈴「そうなの?」

姫芽「うんうん。というのも、実はアタシ、夏休みの間に、るりちゃんせんぱいと二人でお出かけしてね~」

姫芽「もしも夏休みがもう少し続けば、もっともっとせんぱいと仲良くなれるのにな~、ってアタシ思っちゃったもん」クスッ

小鈴「そっかぁ…………この夏休みに対しての、心残り……」ウーン

29: 2024/09/01(日) 15:29:01 ID:???00
姫芽「小鈴ちゃん、思い当たる節は無い感じ~?」

小鈴「うん。徒町、この夏はスクールアイドルクラブのみんなのおかげで、やりたいことは全部できたし……」

小鈴「徒町自身、特に思い残すこともなくて……むしろ、早く二学期になって、スクールアイドルとして活動がしたいんだ!」

姫芽「……意外と、それだったりするんじゃないかな?」

小鈴「? それって?」

姫芽「もし心残りがあるなら、今、小鈴ちゃんが言ったとおり、それはスクールアイドルに関することなんじゃないかな~、って」

30: 2024/09/01(日) 15:30:01 ID:???00
姫芽「例えば、小鈴ちゃんがスクールアイドルとして、歌ったり踊ったりする機会が夏休みの間になかったから……」

姫芽「ライブがしたい、っていうのが心残り……とか~?」

小鈴「ライブ…………うーん、そうなのかなぁ……?」

小鈴(二学期になったら、ラブライブ!があるし……別に徒町、この夏休み中にやり残したってほどでもない気が……)ウーン

31: 2024/09/01(日) 15:31:02 ID:???00
姫芽「違うかぁ~……後は、何だろうなぁ……」

小鈴「……いや、案外それなのかも! せっかくの姫芽ちゃんのアドバイスだし、徒町、試してみるよ!」

姫芽「え、いいの?」

小鈴「うん、その心残りに、徒町の自覚がないだけかもしれないし……」

小鈴(みんなに、スクールアイドルとしての徒町を見てもらいたい……そう無意識に、徒町がこの夏に思い残してたのかも……)

32: 2024/09/01(日) 15:32:01 ID:???00
姫芽「そっかぁ…………なんだかごめんね、小鈴ちゃん」シュン

小鈴「? 何が?」

姫芽「だって~……アタシは、小鈴ちゃんが大変なことになってても、それを一緒に受けてはあげられないから……」

姫芽「もっとアタシが、完璧なアドバイスとかで、小鈴ちゃんの力になってあげられたらよかったんだけどな~……」ショボン

33: 2024/09/01(日) 15:33:01 ID:???00
小鈴「そんな、徒町、姫芽ちゃんが一緒に解決策を考えてくれて、本当に助かったんだよ!」

小鈴(実際、姫芽ちゃんに相談していなければ……徒町はきっと、何も解決策もなしに同じことを繰り返していた自信があります)ウンウン

小鈴「徒町が今頑張れるのは、姫芽ちゃんのおかげだから……姫芽ちゃんは、そんな徒町のこと見ててほしい!」

姫芽「小鈴ちゃん…………うん、アタシはアタシにできることを……今は、応援しかできないけど」

姫芽「──頑張ってね、小鈴ちゃん。アタシは、“明日”で待ってるから~」ニコッ

小鈴「姫芽ちゃん……! うん、徒町、やってみる!」グッ

34: 2024/09/01(日) 15:34:01 ID:???00
────

小鈴「──おはようございます、さやか先輩! いきなりですが、ライブをしましょう!!」バンッ

さやか「おはようございます、小鈴さん。…………え? 今なんと……?」

小鈴「ライブです!! DOLLCHESTRAで、ライブをしましょう! 今から!」グッ

35: 2024/09/01(日) 15:35:01 ID:???00
綴理「おー。すず、やる気だね」

小鈴「はい! 徒町、やる気です!」

さやか「ちょ……待って待って、待ってください……!?」

さやか「ど、どうしたんですか、小鈴さん? 随分と唐突に、それもライブだなんて……!?」

小鈴「……徒町、思ったんです! 今の徒町は……もしかしたら、練習した成果をたくさんの人に見てもらいたいのかも、って!」

36: 2024/09/01(日) 15:36:02 ID:???00
小鈴(徒町が、もしも、この夏休みに心残りがあるとすれば……それはきっとスクールアイドルのこと……)

小鈴(姫芽ちゃんにもらったアドバイス……これで、今回こそ!)

小鈴「だから、徒町は……ライブがしたいんです! スクールアイドルとして、今の徒町の精一杯で!」

小鈴「急なお願いなのは、重々承知なのですが……どうか、お願いします!」ペコリ

37: 2024/09/01(日) 15:37:01 ID:???00
さやか「……いきなりライブを、だなんて。いつかの花帆さんを思い出すような無茶苦茶ですね……」クスッ

綴理「でも、すごく楽しそうだ。さや、ボク達も」

さやか「ふふっ。ええ、そうですね」ニコッ

さやか「……こほん。さて、小鈴さん」

小鈴「あ、えっと……やはり、いきなりは無謀、でしょうか……?」

38: 2024/09/01(日) 15:38:01 ID:???00
さやか「──これから、忙しくなりますよ。まずは会場の確保、それからゲリラライブの告知をしましょう!」

小鈴「……え? い、いいんですか!?」

さやか「はい。わたしは小鈴さんの先輩として、できる限りあなたの願いを叶えてあげたい。これくらい、わけもないことです」クスッ

綴理「スクールアイドルはいつだって、熱を持って作り上げるものだ。すずがその気なら、ボクも、一緒に踊りたい」ニコッ

小鈴「さやか先輩、綴理先輩……!」

さやか「小鈴さん。やるからには絶対、成功させましょうね」ニコッ

小鈴「……! はい、もちろんです! 徒町、頑張ります!」グッ

40: 2024/09/01(日) 15:39:01 ID:???00
────

さやか「まもなく、DOLLCHESTRAのゲリラライブが始まります。よろしければ、ぜひご覧ください……!」ペコリ

ガヤガヤガヤ

小鈴「あわわ……急な告知だったのに、もうこんなに人が……」

綴理「いっぱいだー。みんなの前で歌うの、楽しみだね」ニコッ

41: 2024/09/01(日) 15:40:01 ID:???00
小鈴「…………徒町、上手くやれるのかなぁ……」ボソッ

小鈴(失敗しても、次があるとはいえ……れっきとしたライブですから、徒町、少し不安になって来ました……)

さやか「……小鈴さん。緊張、しているんですか?」フフッ

小鈴「さやか先輩! え、えっと……」アワアワ

さやか「ふふっ、少しお話でもしましょうか、小鈴さん」クスッ

42: 2024/09/01(日) 15:41:01 ID:???00
小鈴「お、お話……?」

さやか「はい、緊張をほぐすためにもなりますから」

さやか「そうですね……小鈴さんは、ゲリラライブには、どんな人達が来てくれていると思いますか?」

小鈴「え? どんな人が……ですか?」

さやか「はい。小鈴さんは、どうお考えですか?」

小鈴「え、えーっと……? それはもちろん、蓮ノ空とかDOLLCHESTRAのファンのみなさん……でしょうか?」

さやか「小鈴さん、半分当たりですが……半分は、違います」

43: 2024/09/01(日) 15:42:01 ID:???00
さやか「こういった突発的なライブは、必ずしもわたし達のことを知ってくださっている人が来る、とは限らないんです」

小鈴「そう……なんですか?」

さやか「ええ。予告していないライブですから、昨日まで全くわたし達のことを知らなかった人だったり……」

さやか「もしかしたら、スクールアイドル自体に一切触れたことがない、なんて人もいるかもしれません」

小鈴「なるほど……さやか先輩、お詳しいですね!」

さやか「あぁ、いわゆる体験談……というもので……」

さやか「わたしも前に……綴理先輩と、スクールアイドルのライブ会場ではなく、氷上で、いきなり踊ったことがありますから」クスッ

44: 2024/09/01(日) 15:43:02 ID:???00
さやか「今日来てくださったみなさんは、もし明日だったら来てくれなかったかもしれない。そういう偶然が重なって、今があるんです」

さやか「だから、そうですね……ほかでもない今、来てくださったみなさんを意識するのが大事、ということです」

小鈴「! そっか……!」

小鈴(綴理先輩が、さやか先輩が、徒町のために無理をおして、このライブを作ってくださっている)

小鈴(来てくれた人だって、みんな、今このステージを楽しみにしてくれてる)

小鈴(それなら……!)

さやか「緊張はほぐれましたか? ──さぁ、まもなくライブが始まりますよ!」

小鈴「は、はい!」

45: 2024/09/01(日) 15:44:01 ID:???00
キャーキャー ワーワー

綴理「みんなー、来てくれてありがとー」

さやか「蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ、DOLLCHESTRAです!」

小鈴「……」スゥ

小鈴(……絶対、絶対! 今回で、終わりにするんだ!)

小鈴「──徒町達の歌を、聴いてください!」

46: 2024/09/01(日) 15:45:01 ID:???00
────

パチパチパチ

さやか「以上で、ゲリラライブを終わりとさせていただきます。お越しいただき、ありがとうございました!」ペコリ

綴理「ありがとー、みんな、また会おうねー」

小鈴「ありがとうございました! DOLLCHESTRAを今後とも、よろしくお願いします!」

47: 2024/09/01(日) 15:46:01 ID:???00
さやか「──ふぅ。無事に、ゲリラライブを終えることができましたね」

綴理「楽しかったー。こういう、いきなりのライブ、いいね。もっとやりたいなー」

さやか「そうですね。こういったライブは、あまり多くやりすぎても、それはそれで大変なのですが……」

小鈴「徒町、今回のライブ、大満足です! 無理を言ってライブを開かせていただき、ありがとうございました!」

さやか「いえいえ。小鈴さんが満足できているなら、何よりです」クスッ

小鈴「さやか先輩……! 本当に、ありがとうございます!」ペコリ

小鈴(ライブもやったことだし、これで心残りは無くなったはず……!)

48: 2024/09/01(日) 15:47:01 ID:???00
────

チュンチュン

小鈴「んん……もう、朝……? ふわぁ……」

小鈴「……朝!? も、もしかして……!」ガバッ

小鈴(今回こそ、今回こそは、自信があります……!)

小鈴(無理を言ってライブを開かせていただき、みんなの前で歌うことができた。徒町に、もう心残りは無いはずです!)

小鈴(だから、今日からは待ちに待った新学期──)

ピコン!

49: 2024/09/01(日) 15:48:01 ID:???00
小鈴「……!?」

小鈴(メッセージの、着信音……)

小鈴「……さやか先輩から、って」

小鈴(…………まさか)

小鈴(いやいや、そんなはずは……だって徒町は、ちゃんと……)スッスッ

小鈴「……っ!」


『今日の朝練は、ダンス練習を行いますので、レッスンルーム集合でお願いします。』

50: 2024/09/01(日) 15:49:01 ID:???00
────

ガチャ

さやか「あ、小鈴さん。おはようございます」ニコッ

小鈴「……さやか先輩、おはようございます。……あの、昨日のライブ……」

さやか「? ライブ、とは? 一体何の話ですか、昨日もDOLLCHESTRAで練習をしていたはずですけど……」

小鈴「っ……そう、でしたよね」

さやか「そうだ、小鈴さん。今日の朝練では、先日教えたダンスの振りを確認しますので、そのつもりでお願いしますね」

小鈴「……」

さやか「……小鈴さん?」

小鈴(あぁ…………また、ダメだったんだ)

51: 2024/09/01(日) 15:50:01 ID:???00
小鈴(徒町はきっと、徒町だけなら、きっとへこたれず何度でも繰り返すことを受け入れていました)

小鈴(……でも、そう、徒町は気づいてしまったんです)

小鈴(徒町と一緒にライブをしてくれた、徒町にとっての“昨日”のさやか先輩はもう、いなくて)

小鈴(これから徒町が失敗するたびに、その日のさやか先輩は、二度と会えなくなって……全部、無かったことになってしまう)

52: 2024/09/01(日) 15:51:01 ID:???00
小鈴(そんなのもう…………徒町には……)

小鈴「……」

さやか「小鈴さん? ぼーっとしているようですが……体調でも、悪いんですか?」

小鈴「っ…………ごめんなさい、さやか先輩!」ダッ

さやか「!? こ、小鈴さん!? 一体、どこへ行くんですか!?」

53: 2024/09/01(日) 15:52:01 ID:???00
タッタッタッ

小鈴「はぁ、はぁ、はぁ……!」

小鈴(徒町は、徒町は……諦めないことだけが取り柄だったのに……)

小鈴(諦めずに進めば進むほど、このままじゃ……余計に……!)

54: 2024/09/01(日) 15:53:02 ID:???00
バタン!

小鈴「はぁはぁ……ここまで来れば、誰にも、見つからないはず……」ハァハァ

小鈴「……」

小鈴(失敗して、すぐ次に行こうにも……これまでやってきたことは、その度に無くなっちゃう、なんて)

小鈴「……昨日、こんな徒町なんかのために、綴理先輩も、さやか先輩も、協力してくれて、見に来てくれた人だっていたのに」

小鈴「姫芽ちゃんだって、アドバイスをくれて、頑張れって言って、くれてたのに……」

小鈴「それもこれも全部、全部、徒町が進むたびに終わっちゃう……!」

55: 2024/09/01(日) 15:54:02 ID:???00
小鈴「これじゃ……徒町は、どうしようも……」ジワッ

コンコンコン

小鈴「……!」

「──小鈴さん、いるんですよね?」

小鈴「…………さやか先輩……」

56: 2024/09/01(日) 15:55:01 ID:???00
さやか「ようやく、見つけました……もう、心配しましたよ、いきなり飛び出して……」

小鈴「そ、それは……ごめんなさい……」シュン

さやか「……小鈴さん」

さやか「わたしは、小鈴さんの先輩です。小鈴さんが悩んでいるのなら、わたしは力になりたい」

さやか「……ドアを、開けてはもらえませんか?」

57: 2024/09/01(日) 15:56:01 ID:???00
小鈴「……」

さやか「お願いします、小鈴さん。わたしは、小鈴さんの顔を見て、あなたと話がしたい」

小鈴「…………さやか先輩は」

さやか「……小鈴さん?」

小鈴「……さやか先輩は、すごいんです」

小鈴「こんな不出来な徒町に対しても……さやか先輩は、徒町ができるようになるまで、何度も何度も教えてくれて」

小鈴「徒町は……さやか先輩にいつも、頼ってばかりで……」

さやか「……」

58: 2024/09/01(日) 15:57:01 ID:???00
小鈴「でも、だから……! 徒町は、これ以上さやか先輩に迷惑をかけたくないんです!」

小鈴「徒町の尊敬する、さやか先輩にこんな……徒町は、何も報いることができない、何も、返せない、から……」

さやか「……小鈴さん。それは誤解です」

小鈴「……」

さやか「小鈴さんの、頑張っているきらめきは、いつだってわたしの行く末を照らしてくれています」

さやか「迷惑だなんて、全然。むしろ、わたしは先輩なのに助けられてばかりですよ」クスッ

59: 2024/09/01(日) 15:58:01 ID:???00
さやか「この間の合宿だってそうです。小鈴さんの諦めない思いのおかげで、わたしは救われましたから」

小鈴「……!」

さやか「だから……お願いします、小鈴さん。話を、聞かせてください」

ガチャ

さやか「!」

小鈴「さやか、先輩……!」グスッ

60: 2024/09/01(日) 15:59:01 ID:???00
────

さやか「……落ち着きましたか?」

小鈴「はい……ごめんなさい、徒町、お見苦しいところを……」

さやか「いえ。泣いてしまうほど、今の小鈴さんが苦しんでいるのなら……やはり、来て正解でした」

さやか「小鈴さん。……あなたが抱えている悩みを、わたしは、どうしても知りたい」

さやか「……どうか、教えてはくれませんか?」

61: 2024/09/01(日) 16:00:01 ID:???00
小鈴(さやか先輩にここまで言われては……もう、徒町には隠し通すことなんて、できません)

小鈴「…………分かり、ました」

小鈴「でも本当、全部徒町のせいで、さやか先輩は、あくまで徒町が巻き込んじゃってるだけなんです……」

さやか「巻き込んでいる、というのは?」

小鈴「それは……だって、徒町がタイムリープを起こしちゃっているから、さやか先輩が……!」

さやか「? タイムリープ……? それはどういう意味ですか、小鈴さん?」

小鈴「……えっと、実は──」

62: 2024/09/01(日) 16:01:02 ID:???00
────

小鈴「──というわけで……徒町はずっと、夏休み最後の日……今日を、何度も繰り返しています」

小鈴「きっと、徒町が何か……この夏に、徒町自身も気づいていない心残りがあるせいで……」

さやか「心残り……」ハッ

さやか「……」

小鈴「……? さやか先輩……?」


さやか「…………すみません、小鈴さん。そのタイムリープの原因……わたし、かもしれません……」

小鈴「…………え?」

63: 2024/09/01(日) 16:02:01 ID:???00
さやか「あぁ、いえ、絶対にそうです…………ごめんなさい、小鈴さん……失望しましたよね……」ズーン

小鈴「え、え!? ど、どういうことですか? だって、徒町がこの夏に何か心残りがあったから、タイムリープが起きたんじゃ……」

さやか「……いいえ。そもそも、前提が間違っていたんです」

さやか「心残りがあったのは……わたしの方です。わたしが、タイムリープを引き起こしていたんです。小鈴さんでは、ありません」

64: 2024/09/01(日) 16:03:01 ID:???00
小鈴「さ、さやか、先輩が……?」

さやか「……神様は意地悪ですね。わたしのせいで起こったのに、小鈴さんだけが、そのループを認識できていたなんて……」ハァ

小鈴「え、えっと……つまり、徒町ではなく、さやか先輩がループの原因……」

小鈴「え、それじゃ……その、さやか先輩の心残りって……?」

65: 2024/09/01(日) 16:04:01 ID:???00
さやか「……そうですよね。小鈴さんには、伝えなくてはいけません」

さやか「…………ですが、これを聞いたら、小鈴さんを幻滅させてしまうかもしれませんね。わたし個人の……勝手な願いなので」

小鈴「……? それでも徒町は、さやか先輩のことだったら、何でも知りたいですよ!」

小鈴(さやか先輩が、この夏に抱いていた心残りなんて、全然想像がつきませんが、それは一体……?)

さやか「……………………です」

小鈴「?」




さやか「…………夏休みの間に、小鈴さんと、二人きりで過ごしてみたかったんです……」

66: 2024/09/01(日) 16:05:01 ID:???00
小鈴「……へ?」

小鈴「え、さやか先輩、今なんと……?」

小鈴(さやか先輩が、徒町と……“二人きりで過ごしてみたかった”?)

さやか「っ~!!// こうなると分かっていたので、この思いを胸に秘めて隠していたというのに……あぁ……」

小鈴「え、え? さやか先輩が、どうしてこんな徒町なんかと……」

67: 2024/09/01(日) 16:06:02 ID:???00
さやか「……夏休みに行った合宿が、きっかけなんです」

小鈴「合宿が、ですか?」

さやか「はい。あの合宿で、瑠璃乃さんや花帆さんも、みんな後輩と交流していて、クラブのみなさんも、より関係を深め合っていて……」

さやか「……あのとき、わたしは熱を出して終盤の撮影には参加できていませんでしたよね」

68: 2024/09/01(日) 16:07:01 ID:???00
さやか「映画の方は無事、“終わらないエンディング”を迎えることができました。わたしも、小鈴さんのおかげで自分を責めることなく、悲しくならずに済んだと思います」

さやか「……ですが、あのとき熱を出して寝込んでいた分、失った時間は戻りません」

さやか「それがずっと、心残りでした。だから、密かに願っていたんです。小鈴さんと、二人きりで親交を深めたい、と」

69: 2024/09/01(日) 16:08:01 ID:???00
さやか「きっとそれが、この“終わらない夏休み”を引き起こしたのでしょう。……ごめんなさい、小鈴さん。こんな無意味な時間を過ごさせてしまって……」

小鈴「さやか先輩……」

小鈴(…………徒町はただ、さやか先輩の心残りに巻き込まれただけで、徒町が今まで何十回も繰り返していたタイムリープは、無意味な時間だった……)

小鈴(………………本当に、そうでしょうか?)

70: 2024/09/01(日) 16:09:01 ID:???00
小鈴「…………違う」ボソッ

小鈴(それを決めるのは、きっと……!)

小鈴「──さやか先輩!!」ガタッ

さやか「!? こ、小鈴さん!?」


小鈴「今からでも遅くありません! お出かけ、しましょう!」

71: 2024/09/01(日) 16:10:01 ID:???00
さやか「…………え!?」

小鈴「さぁ、さやか先輩! 徒町と一緒に、街に繰り出しましょう!」グイグイ

さやか「え、あの!? い、今から外に出るんですか!? 外出届も出していないのに……」

小鈴「大丈夫です! 外出届の偽造なら、徒町におまかせを!」ドンッ

さやか「そ、そういう話では……! あの、せめて屋内で! 勝手に外に出ては、寮母さんにも怒られてしまいますから」

小鈴「そ、それは確かに……! んー……だったら……」

小鈴「! さやか先輩、徒町、いいことを思いつきました!」バッ

さやか「い、いいこと?」

小鈴「はい! さやか先輩の……お部屋に、行きましょう!」

72: 2024/09/01(日) 16:11:01 ID:???00
────

ガチャ

小鈴「──徒町小鈴、失礼します!」

さやか「はい、どうぞ……? あの、小鈴さん、わたしの部屋で一体何を……?」

小鈴「それはもちろん、決まってます! さやか先輩の“心残り”解消チャレンジ、です!」

73: 2024/09/01(日) 16:12:01 ID:???00
小鈴(徒町、たった今、さやか先輩に伝えたいことができました)

小鈴(タイムリープの原因を解決するためにも、さやか先輩に、徒町の思いを伝えるためにも……徒町は……)

小鈴「さやか先輩! 徒町と一緒に、同じベッドで寝てくれませんか!」

さやか「は、はい!?」

75: 2024/09/01(日) 16:13:01 ID:???00
────

さやか「──小鈴さん、あの……」

小鈴「はい! あ、ベッドが少し狭いなら、徒町もう少し右に……」

さやか「い、いえ、そうではなく……」

さやか「……改めてですが、本当に申し訳ありません。わたしのせいで、小鈴さんを巻き込んでしまい……」

小鈴「そのことなら……! 徒町、さやか先輩に伝えたいことがあるんです」

さやか「……伝えたいこと、ですか?」

76: 2024/09/01(日) 16:14:02 ID:???00
小鈴「はい! さやか先輩に……“このタイムリープは無意味なんかじゃなかった”、って伝えたくて!」

さやか「! 無意味じゃないなんて、そんなこと……だって小鈴さんは、泣くほど苦しんで……」

小鈴「それは全部、勘違いだったんです! 徒町、さやか先輩のおかげで、気づきました!」

さやか「か、勘違い……?」

77: 2024/09/01(日) 16:15:01 ID:???00
小鈴「徒町はずっと、徒町が進むたびにあの時間は消えて、全部無くなってしまうって……全部終わっちゃうって思ってました」

小鈴「……でも、そうやって苦しくて悩んだとき、さやか先輩は徒町を追いかけて、来てくれて」

小鈴「思い返せば、どんなときだって、さやか先輩はいつもそうなんです。徒町が不安になってたら、そっと隣に寄り添ってくれます」

小鈴(あのゲリラライブのときも……そうでした)

小鈴「──だから、徒町は気づいたんです! きっと、思いは何も変わらない、消えてしまうことはないって!」

78: 2024/09/01(日) 16:16:02 ID:???00
さやか「小鈴さん……」

小鈴「タイムリープ中に、さやか先輩に教えていただきました。“偶然が重なって、今がある”、と」

小鈴「きっと……今回のも、そうだと思うんです」

小鈴「徒町が今、さやか先輩と一緒にいられるのも、偶然が重なったからで……だからこそ、徒町は、今目の前にいるさやか先輩に、伝えたい!」


小鈴「──さやか先輩! 徒町にとって、さやか先輩は、とっても尊敬できる大好きな先輩です!」

小鈴「ずっとこれからも、隣にいさせてください!」

さやか「っ……小鈴、さん…………」

79: 2024/09/01(日) 16:17:01 ID:???00
さやか「……いいんでしょうか。小鈴さんにわたしは、多大なるご迷惑をおかけしてしまったのに……」

小鈴「そんなの全然、徒町は気にしてません! むしろ、さやか先輩の気持ちが聞けたので、徒町、嬉しかったです!」

さやか「小鈴さん……」

さやか「……ありがとうございます。小鈴さんと、より親しくなれた気がします」ニコッ

小鈴「! 徒町、その言葉が聞けて、嬉しいです!」ニコッ

80: 2024/09/01(日) 16:18:01 ID:???00
さやか「本当に、小鈴さんはすごいですね……わたしは、いつも助けられてばかりになってしまいます」

さやか「……小鈴さんの目標であり続けるために、わたしもより一層、精進しなくてはなりませんね」クスッ

さやか「…………小鈴さん?」チラッ

小鈴「んん……zzz」スヤァ

さやか「眠ってしまいましたか……ふふっ、気づけばもう、遅い時間ですもんね」クスッ

さやか「…………本当に、ありがとうございます、小鈴さん」ニコッ

81: 2024/09/01(日) 16:19:02 ID:???00
────

チュンチュン

小鈴「むにゃ…………zzz」

「──小鈴さん、小鈴さん、朝ですよ」ユサユサ

小鈴「ふわぁ……? んー……」ゴシゴシ

さやか「ふふっ、おはようございます、小鈴さん」ニコッ

小鈴「!? さ、さやか先輩!? どうして、ここに……」

さやか「覚えていませんか? 昨日、小鈴さん、わたしの部屋でそのまま眠ってしまったんです」

小鈴「そ、そうでした……あわわ、か、徒町、さやか先輩にご迷惑を……」

さやか「ふふっ、いいえ。迷惑なんて、全然」クスッ

82: 2024/09/01(日) 16:20:01 ID:???00
さやか「小鈴さんのおかげで、わたしも……前を向くことができましたから」フフッ

小鈴「さやか先輩……!」

さやか「……わたしは今、小鈴さんの先輩として、こうして一緒にいられるのがとても嬉しいんです。それに、小鈴さん……」


さやか「今日から──新学期、ですよ」

83: 2024/09/01(日) 16:21:01 ID:???00
小鈴「! 新学期……!」

さやか「はい。夏休みは終わり、新学期です」クスッ

小鈴「やっと……やっと! 新学期が来たんですね!」

小鈴(ついに徒町、終わらない夏休みを越え、タイムリープを脱出することができました……!)

さやか「新学期はラブライブ!もいよいよ始まる季節、より一層気合を入れて、頑張らなくてはなりません」フフッ

さやか「──小鈴さん、これからも何卒、よろしくお願いしますね」ニコッ

小鈴「! はい、さやか先輩! 頑張るぞー、ちぇすとー!」オー


おしまい

引用: 【SS】小鈴「終わらない夏休み」