1: 2010/03/12(金) 20:54:48.97 ID:HyWt/idn0
 キョン「なぁ長門、その本って面白いか?」

 長門「……ユニーク」

 キョン「何やらお前に似合わないような表紙なんだが……」

 長門「そう?」

 キョン「あぁ、何というか……。[ツンデレとは!!]って……」

 長門「ユニーク」

 キョン「そうかい。でも何でそんな本読んでいるんだ?」

 
「涼宮ハルヒの憂鬱 Ⅱ」
3: 2010/03/12(金) 20:56:40.62 ID:HyWt/idn0
 長門「勉強のため」

 キョン「勉強?」
 
 長門「涼宮ハルヒに明日からツンデレになるようにと渡された」

 キョン「あいつ、こんな本持ってたのかよ……。その割にはデレないな」

 長門「あなたは」

 キョン「ん?」

 長門「あなたはツンデレは好き?」

7: 2010/03/12(金) 21:00:26.47 ID:HyWt/idn0

 キョン「考えたことないな。たぶんどちらかといえば好きかもな」

 長門「やっぱり、そう」

 キョン「なんだよやっぱりって」

 長門「少し部屋を出て」

 キョン「なんで?」

 長門「いいから」

 キョン「わかったよ」

 そう言い、仕方なく部屋を出る。
 そういえばほかのやつらはどうしたんだろう。
 ハルヒは来れないって知ってるが。
 
 長門「入って」
 
 その声に促されて俺は部屋へと入る。

9: 2010/03/12(金) 21:04:07.41 ID:HyWt/idn0
>>5 なんかありがとうw >>6 期待させて済まない、あまりというか関係づけるつもりはないです。

  
 そこには腰に手を当てて俺を指さす長門の姿があった。
 
 キョン「いったいどうしたんd……―」

 長門「まったく、入れって言ったらさっさと入りなさいよね!!」

 俺は戸惑う。えっとこれはいったい何だ?
 俺にどうしろって言うんだ長門。おまえはいったい何を求めているんだ。

 キョン「えっと、何というか……簡単に説明してくれないか?」

10: 2010/03/12(金) 21:08:06.02 ID:HyWt/idn0

 長門「しょうがないわね、ホントに…。だから! 明日のためにあんたで練習してやるってことよっ!
     まったくこんなこと言わなきゃ分かんないの?」

 キョン「あ、あぁすまなかった」

 長門「分かればいいのよ分かれば、そういえばあなた喉乾いてない?」

 キョン「どちらかというと乾いてるな」

 長門「もう、男ならはっきりしなさいよ! 何か飲みたいの? 飲みたくないの!?」

 キョン「えっと、飲みたいです」

11: 2010/03/12(金) 21:11:29.48 ID:HyWt/idn0
 長門「最初からそういえばいいのよ、ったくもう……」

 そういってお茶を入れだす長門。何か新鮮だ。
 香ばしいお茶の香りが部屋中を包む。たまには朝比奈さん以外に入れてもらうお茶もいいかもしれないな。
 そして、なぜか顔を赤らめながら俺にお茶を差し出してくる。

 長門「さっさと飲まないと冷めるわよ……、飲んで!」

 キョン「わかってるよ」ゴクゴク

 長門「熱くないの?」

 キョン「大丈夫さ、それにすごくおいしいぞ。ありがとな、長門」

 長門「なっ! 暇だったから入れてあげただけよ! お礼なんて言わないでよね!」

12: 2010/03/12(金) 21:19:10.58 ID:HyWt/idn0
 ガチャ
 古泉「やぁどうも。今日は朝比奈さんが来られないみたいですよ」

 キョン「そうか。おい古泉」

 古泉「なんでしょうか?」

 キョン「長門が……」

 古泉「長門さんが……なにか?」

 キョン「見てわからないのか!?」

 古泉「えぇ、すみません。目は見えてるはずなんですけど僕にはおかしな点が発見できませんね……」

 俺はあわてて長門の方を見る。
 そこにはいつものように窓辺でイスに座り本を読んでいる長門の姿があった。
 
 キョン「長門!」

 長門「なに?」

 

14: 2010/03/12(金) 21:23:49.61 ID:HyWt/idn0
 キョン「……」

 古泉「あぁそうそう、今日はちょっと僕も会議があるのでこれで」

 キョン「そうか、わかった。まぁ頑張ってくれとでも言っておこう」
 
 古泉「ありがとうございます。長門さんもすみませんね」

 長門「……構わない」

 古泉「それでは、失礼します」

15: 2010/03/12(金) 21:26:59.28 ID:HyWt/idn0
 キョン「長門」

 長門「なによ」

 キョン「なによじゃないだろ?」

 長門「何か不満でもあるの? あるならはっきり言いなさいよ」

 キョン「どうして古泉の前だけではいつものおまえだったんだ?」

 長門「そ、それは……」
 
 キョン「………」

 長門「…………」

18: 2010/03/12(金) 21:37:07.88 ID:HyWt/idn0
 キョン「わかったよ、言いたくないなら言わなくてもいいさ」

 長門「…そう。まぁいいわ!でも二人になっちゃったね……。どうする?」

 いつの間にか慣れてしまっているのか?
 普通に返事をする。
 
 キョン「どうしようか。このままいても特にやることなんて……―」

 長門「っ!そ、そうね……、オセロでもしましょう!! いや、するのよ!」

 キョン「俺がお前にオセロで勝てるわけないだろ」

 長門「大丈夫よ、手加減してあ・げ・・る!」

 何かすごく悔しい。

 キョン「それわざと言ってるだろ?」

 長門「さぁ~?刈ったら教えてあげる」

 キョン「よし、その勝負乗った!!」

 そして俺は勝てるはずのない戦へと向かうのであった。

21: 2010/03/12(金) 21:41:02.56 ID:HyWt/idn0

 そしてもちろん俺は負ける。
 それも惜敗なんかじゃなく完敗だった。

 キョン「……」

 長門「なんか……逆にごめんね……」

 キョン「やめてくれ。これなら逆に全部取ってくれた方が良かったぜ……。一枚くらい……」

 長門「優しさよ、優しさ。 それじゃあ罰ゲーム行ってみましょうか!」

23: 2010/03/12(金) 21:47:13.51 ID:HyWt/idn0

 キョン「そんなの聞いてないぞ!!」

 長門「そんなの当たり前でしょ?私だけリスクがあるなんて不公平よ」

 キョン「リスクって……。ば、罰ゲームは何なんだ?」

 長門「そうね~今週末図書館に一緒に行くってのはどう?」

 キョン「へ?」

 長門「……。い、嫌なの!?」

25: 2010/03/12(金) 21:50:33.48 ID:HyWt/idn0
 キョン「嫌ではないが……。罰ゲームというよりむしろ楽しみなんだが……・」

 長門「ふぇ!? な、なによ! そんなこと言っても何も出ないわよ!!お茶まだ飲むの!?」
  
 キョン「……、あぁ頼むよ」

 長門「ったく、自分で入れなさいよね……」

 キョン『自分でいるか聞いたんだろうが……』

27: 2010/03/12(金) 21:54:33.34 ID:HyWt/idn0

 長門「もう暗くなってきたわね……」

 キョン「そうだな。もうそろそろ帰るか」

 長門「少し残念だけど……。」

 キョン「ん? なんか言ったか?」
 
 長門「なんにもよ!! なんにも!! 帰るわよっ、もう!」

 キョン「へいへい」

 そういうと俺たちは部室を出る。
 
 

30: 2010/03/12(金) 22:00:26.91 ID:HyWt/idn0

 キョン「なぁ長門」
 
 長門「どうしたの?」

 キョン「今日はありがとな」

 長門「なんのことよ?」

 キョン「いや、お茶入れてくれたし、オセロも楽しかったぞ。また、やろうな」

 長門「また暇だったらやってあげるわよ。それじゃあ私はここで」

 キョン「あぁ、また明日な」

 そう言って俺は長門と別れる。

 すごく新鮮な一日だった。
 たまにはハルヒもいい提案をするじゃないか。
 そういえばハルヒに似ていたような気がするな。
 まさかモデルはハルヒなのか?それともハルヒがあの本をモデルにしているのか?
 まぁどっちでもいいさ。

 俺は家で今日の長門を思い浮かべながら次の日を迎えた。

32: 2010/03/12(金) 22:05:52.38 ID:HyWt/idn0

 それで次の日!!!……朝からテンションがなぜか高いな。

 しかしなぜか遅刻気味。それはセットしたはずの目覚ましが何者かによって止められていたからだ。
 俺は遅刻するかしないかのギリギリの時間で家を出る。
 家の前にはなぜか長門が待っていた。
 
 長門「お、遅いわよ!!」

 キョン「え?長門……、なんで? なんでここにいるんだ?」

 長門「居ちゃ悪いの!?さぁ行くわよ!」

 俺たちは走って学校へと向かった。

33: 2010/03/12(金) 22:11:31.13 ID:HyWt/idn0

 キョン「どうして、朝、待ってて、くれたんだ?」

 長門「特に理由なんてないわよ。ダメだった?」ウルウル

 キョン「うっ。ダメでは、ないのだが……。待った、だろ?」

 長門「そうね、確かに待った。今現在遅刻しそうだしね」

 キョン「悪かった、な」

 長門「いいわよ別に。さ、スピードあげるわよ」

 しゃべりながら走るのはきつい。だが一緒に走っている女子高生は息一つ切らしていない。
 そしてやっとの思いで校門へ着く。膝に手をつく俺。平然と歩く長門。

 長門「さぁいくわよ~」

 ……俺は若干遅刻をしたのだった。

34: 2010/03/12(金) 22:15:30.35 ID:HyWt/idn0
 ハルヒ「何遅刻してんのよ」
 
 キョン「遅刻って言っても朝のホームルームに本野に三分遅れただけじゃないか」

 ハルヒ「遅刻は遅刻!! まったくSOS団の名が汚れるわ!」

 キョン「そうかい。悪かったな」

 ハルヒ「分かればいいのよ分かれば」

 まったく同じ反応じゃないか。こうなると
 『ハルヒがツンデレ教本を読んでいる』説が有力になってくるな。
 それに長門がすぐにそういう本の内容になりきれるということも。いや、そんなことはわかっていたか。

 

37: 2010/03/12(金) 22:47:12.14 ID:HyWt/idn0

 そして本日の授業内容は勿論頭に入っていない。
 授業の時間はおれの貴重な睡眠時間に当てさせてもらった。
 後ろから何度かつつかれるが気にしない。俺の眠りは何人たりとも揺るがせん!!

 ハルヒ「何かっこつけてんのよ、ばか」

 そして放課後!!なんか疲れたから次から普通のテンションでいくぞ。

 キョン「なんだ、お前だけか。ハルヒ」

 ハルヒ「そうね、古泉君とみくるちゃんは用みたい。私も用があるからあと少し経ったら行くわ」

 キョン「そうだ、ハルヒ。長門に何か渡したか?」

 ハルヒ「ん?なんのこと?」

 

38: 2010/03/12(金) 22:48:57.74 ID:HyWt/idn0
キョン「そうだな例えば変な教本とか」

 ハルヒ「有希なら教本なんてなくてもなんでもできるでしょ」

 キョン「……ってことはツンデレの本は……、お前のじゃないってことか?」

 ハルヒ「私がツンデレの本を持ってる?そんなわけないじゃない!
     第一ツンデレなんて変よ!素直になれないなんて情けないわ!」

 キョン『はい、お前が言うなっ!!』

 キョン「まあいいさ。すまなかったなへんな質問して」

 ハルヒ「別にいいわよ。それじゃあ私行くから」

 そういうとハルヒは部屋を後にした。

39: 2010/03/12(金) 22:57:41.92 ID:HyWt/idn0
 そしてハルヒが出て言って少し経った後。
 何か狙い澄ましたかのように長門が入ってくる。
 とりあえずさっきの事実は伏せておくか。

 長門「なに?あんた一人なの?」

 キョン「あぁ全員帰った」

 長門「また二人かぁ~……。あなた、わざと全員を家に帰したんじゃ……」

 キョン「そんなわけないだろ。なら俺たちも帰るか?」

 長門「何言ってるのよ! ちゃんと活動しないと怒られちゃうじゃない!」

 キョン「いったい誰にだ?」

 長門「涼宮ハルヒ」キリッ

 キョン「そこだけいつもの長門に戻るな!! で、どうする?」

 

40: 2010/03/12(金) 22:59:18.71 ID:HyWt/idn0
 長門「私は別に帰ってもいいんだけど~。あなた、負けっぱなしで悔しくないのかなぁ~?」」

 そういうとオセロや将棋などこの部屋にあるゲームを取り出してきた。
 
 長門「今なら一番得意なやつでやってあげてもいいんだけどなぁ~」

 キョン「ふ、ふん。そんな挑発には……」

 長門「ふぅ~ん。逃げるんだ。まぁ私はそれでも全然っ!!構わないけどね」

 キョン「わかったよ! やればいいんだろやれば!!」

 そして俺は再び負け戦へと向かうのだ。
 だが男は負けるとわかっていても勝負に出なきゃいけない時があるはずだ。なぁ、そうだろ?

45: 2010/03/13(土) 00:01:34.09 ID:twDt9FRm0


 長門「なんか……ごめんね」

 キョン「謝るくらいなら少しは手を抜いてくれよ……」

 散々すぎる結果だった。
 オセロでは一面真っ白。将棋ではすべての駒が俺にとげを向けていた。

 長門「恒例の罰ゲームで~す!!」

 キョン「一個目すら消化してないのにか!?」

 長門「気にしない~気にしない!そうだなぁ~まず、私にお茶を入れて」

 キョン「まずってなんだまずって……」
 
 長門「そりゃ勿論二回負けたんだから罰ゲームも二個でしょ?」

 キョン「わかったよ……ったく」

 長門「なんか文句でもあるのっ!?」

 キョン「イイエアリマセン」

46: 2010/03/13(土) 00:05:43.01 ID:twDt9FRm0
 長門「何よその棒読み!! わかったらさっさと淹れる!」

 俺は渋々お茶を入れる。
 すごくしょぼい反撃なのだが少ししぶめに作ってやろう。

 キョン「んで、二つ目は?」

 長門「そうね……。あなたがお勧めする本、図書館行く日までに見つけて貸して頂戴」

 性格が変わっても長門は長門か。
 図書館で見つけるか?そっちの方が財布にやさしいし。

 長門「もちろん買ったやつよ」

 俺はすかさず財布を見る。……今月は他に何も買えないな。

 

48: 2010/03/13(土) 00:08:37.74 ID:twDt9FRm0
 俺は少し……いやだいぶ渋めになってしまったお茶を出す。
 ちょっと濃すぎたな。色が圧倒的におかしい。

 長門「まぁあなたにしては上出来ね、褒めてあげるわ」

 俺は少し驚く。
 こんなべらぼうに渋そうなお茶で上出来だと?
 よほど俺は過小評価されていたのか?

 キョン「…そりゃどうも」

 その後長門と談笑をした。
 昔の俺は思っただろうか。長門と談笑できる日が来るなんて。
 

49: 2010/03/13(土) 00:10:03.75 ID:twDt9FRm0
 長門「もうそろそろ暗くなってきたわね。帰りましょうか」

 キョン「そうだな」
 
 俺たちは広げっぱなしだったオセロ、将棋をしまい、部屋を出る。

 

52: 2010/03/13(土) 00:12:48.85 ID:twDt9FRm0
 学校を出てしばらく歩く。
 もうそろそろ言ってもいいだろう。
 本当はもう少し先延ばしにする予定だったが。
 俺は歩みを止める。

 キョン「なぁ長門」

 長門「なに? 改まっちゃって」
 
 キョン「どうして、嘘をついたんだ?」

 長門「どうしたの?急に」

 キョン「今日な、ハルヒに聞いたんだ。本のこと」

 長門「…………」

 キョン「そしたらなんて答えたと思う? 知らない、だとよ」

 長門「…………」

54: 2010/03/13(土) 00:15:36.86 ID:twDt9FRm0
 キョン「お前が意味のないことをするとは思えない」
 
 無言の長門をよそ眼に俺は続ける。

 キョン「なぁ、訳をきかせてくれないか?これもお前のいう観察の一環なのか?」

 長門「………ぅよ」

 長門が泣きながら叫ぶ。

 長門「そうよ!!観察よ観察!! 悪いの!?」

 キョン「いや、そういうわけじゃ……」

 長門「じゃあなによ!? そんなに今の私が気に入らないっての!?」

 キョン「お、おい長門……。落ちつけよ」

55: 2010/03/13(土) 00:17:48.35 ID:twDt9FRm0
 長門「もういいわ!! あなたなんて……知らないっ!!」

 駆け出して行ってしまった。
 どうしてだ?いつもの長門なら淡々と答えてくれるはずなのに。
 俺はそのあとを追うか迷ったが追わなかった。いや追えなかった。

 その日は一睡もできなかった。

 

56: 2010/03/13(土) 00:20:39.12 ID:twDt9FRm0
 ……次の日だ。

 ハルヒ「どうしたのよキョン?元気ないじゃない。寝不足?」

 キョン「それもある」

 ハルヒ「なによそれ。あっ!今日はみんなちゃんと集まるからね!」

 キョン「そういえば最近しっかり集まっていなかったな……」

 ハルヒ「やれてなかった分取り返すわよ~!!」

 キョン「ハルヒさん、まだ一時間目も始まってませんよ」

 ハルヒをなだめ、授業(すいみん)時間が始まった。

57: 2010/03/13(土) 00:23:04.26 ID:twDt9FRm0
 昼も無難に終えて、もちろん午後も授業(すいみん)時間である。

 そしてその授業どもも無難に乗り越えて部活に勤しむ。健全な男子高校生の形だな。

 ハルヒ「ずっと寝てただけでしょうが」
 
 俺とハルヒは一緒に部室へと向かう。

 古泉「やぁお二人ともお久しぶりです」

 朝比奈「キョンくん、涼宮さん、おひさしぶりですぅ~」

 長門「………」

 

58: 2010/03/13(土) 00:25:12.27 ID:twDt9FRm0
 ハルヒ「それじゃあ今までの分、取り返すわよ!!」

 というものの結局いつものようにだらだら過ごす。
 古泉、つくづくお前がいてくれてよかったぜ。
 お前がいなかったら俺は負けしか知らない人間になっちまってたぜ。

 古泉「おやおや、いつになく厳しいですね」

 キョン「そうか? これでも等身大の自分のつもりなんだが」
 
 古泉「それならもう少し手加減願いたいものです」

 

59: 2010/03/13(土) 00:29:13.30 ID:twDt9FRm0
 キョン「手加減をしたらお前に申し訳がないだろう」

 古泉「変なところでの優しさはいりませんよ……」

 その日俺はここぞとばかりに古泉を負かし、商社の余韻に浸っていた。
 しかし、今日はやらなければならないことがある。
 俺は長門にこっそり近づき、耳打ちをする。

 キョン「なぁ長門」

 長門「何?」

 やはりいまは普通の長門か。
 それならまだいいな。

 キョン「一回解散した後また会えないか?」

 長門「わかった、では終了後私の家にきて」

 キョン「了解」

60: 2010/03/13(土) 00:32:17.45 ID:twDt9FRm0
 ハルヒ「ちょっとキョン! なに有希に変なことしてんの! 頃すわよっ!」

 キョン「ちょっと話してただけじゃないか、なぁ長門?」

 長門「そう」

 ハルヒ「ならいいけど」

 キョン「それよりももうそろそろ暗くなってきたんじゃないか?」

 ハルヒ「それもそうね。それじゃあみんなお疲れ様!今日は~解散!!」

 特に何もしていないのだが……。
 団員は各々自宅へと向かう。
 俺を除いて。

62: 2010/03/13(土) 00:35:36.37 ID:twDt9FRm0
 そして俺は長門の家に着く。
 相変わらず何もない部屋だ。

 長門「飲む?」

 キョン「あぁいただくよ」

 そういうと長門はお茶を淹れてくれる。
 色、味ともに完ぺきだ。まるで職人が淹れたようだ。
 しかし俺はお茶を味わいに来たのではない。さっそく本題を切り出す。

 キョン「なぁ長門」

 長門「何?」

 キョン「昨日のおまえに戻ってくれないか?」

 長門「どうして?」

 キョン「言いたいこと、いや言わなきゃならないことがあるんだ」

 長門「わかった」

 キョン「助かるよ」

 長門「いったん部屋から出て」

 俺は言われるがまま部屋を出る。

63: 2010/03/13(土) 00:38:24.22 ID:twDt9FRm0
 長門に呼びいれられるまで時間経過がすごく長く感じた。

 長門「入って」

 俺はすぐさま部屋に入る。

 長門「……座れば」

 キョン「あぁ、すまないな」

 長門「今更何よ」

 キョン「まずおまえに昨日のことを謝らなきゃなと思ってな」

 長門「…………」

 キョン「昨日はすまなかったな。事情もろくに聞かずきめつけちまって」

 長門「…………」

 キョン「ほんとに悪かった」

 長門「……もういいわよ、別に」


65: 2010/03/13(土) 00:40:43.81 ID:twDt9FRm0
 キョン「……ありがとな」

 長門「ありがとうなんて言わないでよね……」グスッ

 涙ぐむ長門。
 でも俺はまだ聞かなきゃいけないことがあるんだ。

 キョン「それともうひとつ。理由は何だ。いやでなければ教えてくれ」

 長門「…………」
 
 痛いほどの沈黙が空間を包む。
 いったいどれほどの時間が経過したのだろうか。
耐え切れなくなり俺が口を開こうとしたその時、長門が話し出す。

66: 2010/03/13(土) 00:43:02.43 ID:twDt9FRm0
 長門「あなたが……いつも涼宮ハルヒばかり見てるから……」

 俺は自分の耳を疑った。
 俺がハルヒばかり見ている?どういうことだ。

 長門「私もあなたに振り向いてほしかった。どうすればいいのか悩んだわ」

 キョン「…………」

 長門「そして思いついた。涼宮ハルヒに近づけばいいんじゃないかと」

 長門は続ける。

67: 2010/03/13(土) 00:44:52.38 ID:twDt9FRm0
 長門「だから彼女に近づけるようにこういう形を選んだのよ」

 キョン「それで、か」

 長門「でも実際は違った。傷つくだけだった。こんなことしなきゃよかった!!」

 キョン「そうだな」

 長門「っ!?」

 

68: 2010/03/13(土) 00:47:50.22 ID:twDt9FRm0
 キョン「まず誤解をしているが俺はハルヒばかり見ているなんてことはない!」

 長門「で、でも……」

 キョン「仮に百歩譲ってみていたとしよう。それでも、俺ツンデレが好きでハルヒを見てるんじゃない」

 長門「…………」

 キョン「なぁ長門。俺は自分を偽っている人より、素の自分を出せる人の方が好きだ」

70: 2010/03/13(土) 00:50:30.76 ID:twDt9FRm0
 キョン「今の長門が素の長門だというならおれは受け入れるとも。
       でもな俺は今のおまえは素じゃないと思う」

 長門「…………」グスッ

 キョン「だからさ、自分を作らなくても、いいんだ」

 長門「うわぁぁぁぁぁぁん!!」

 キョン「それじゃあ俺は少し部屋の外で待ってるよ。準備ができたらよんでくれ」

 俺は部屋を出る。
 

71: 2010/03/13(土) 00:54:41.46 ID:twDt9FRm0
>>69 ヒント>>7

 部屋の外にも長門の泣き声は聞こえた。
 それはずっと続くのではないかというくらい長い時間だった。
 すると突然、泣き声が止む。

 長門「入って」

 俺は部屋に入る。
 そこには涙でびしょ濡れになった床をふく長門の姿があった。

 キョン「ちょっと出すぎたことを言ったかな……」

 長門「そんなことない」

 キョン「そう言ってくれると助かるよ」

 長門「…………ありがとう」

 俺は長門宅を後にした。

72: 2010/03/13(土) 00:58:50.83 ID:twDt9FRm0
 時間は飛んで次の日の放課後!

 いつものように部室へ行く。既に全員がそろっている。
 もちろん長門もだ。

 ハルヒ「明日の件だけど…」

 そういえばこの団は休日に不思議探索というばかげた行事を行うんだった!
 何としても日曜だけは確保しなければ!!

 キョン「な、なぁハルヒ?」

 ハルヒ「なによ?」

 キョン「その活動は明日だけだよな?明後日は少し用事があってな」

 ハルヒ「そうなの? それじゃあ明日だけにするわ」

 キョン「やけに素直じゃないか」

 ハルヒ「というよりも全員無理なのよね。もちろん私も。何も聞いてないのは……
       有希だけかしら?」

73: 2010/03/13(土) 01:00:17.39 ID:twDt9FRm0
 キョン「そうか、それは残念だな」
 
 ハルヒ「あんた、ホントにそう思ってる?」

 キョン「もちろんさ。心底残念だ」

 ハルヒ「ばか」

 その日は適当に次の日の予定を組み立てて終わる。

 そして次の日。

75: 2010/03/13(土) 01:05:47.53 ID:twDt9FRm0
 なぜか今日は一日中同じペアと回ることになった。
 しかも残念なことに見事に男女分かれていた。

 古泉「どうしましょうか?」

 キョン「少し本屋に寄りたいんだが……」

 古泉「いいですよ、時間はたっぷりありますしね」

 古泉の言葉に甘えて俺たちは一日中本屋で時間をつぶした。
 もちろん理由は明日のためだ。

 

76: 2010/03/13(土) 01:06:40.94 ID:twDt9FRm0
 古泉「何かいい本は見つかりましたか?」
 
 キョン「あぁ、もちろんだ」

 古泉「二冊も買ったのですか。どんな本を買ったか見せてくださいよ」

 キョン「もちろんノーだ」

 そんなこんなで一日がおわり、不思議を見つけられないかったということで
 団長さまからきついお怒りを受けた(もちろん俺だけ)

 そして家に帰り長門にメールをする。

 『明日10時に図書館集合でいいか?』

 『了解』

 明日のために早く寝なくては。図書館で寝るわけにはいかないしな。
 そして俺は珍しく素晴らしい眠りについた

77: 2010/03/13(土) 01:09:53.56 ID:twDt9FRm0
 朝起きて時計を見る。時刻は……、9時か!!

 俺は朝食を口に詰め込み、家を飛び出す。
 もちろん昨日買った本をもって。

 キョン「……いったい何時から待ってるんだよ」

 俺がついた時間が9時15分。そこには当たり前のように長門の姿があった。

 長門「大丈夫、今来たところ」

 キョン「まるでカップルだな。まぁいいがな」

 長門「……そう」

 俺たちは図書館へ入る。

78: 2010/03/13(土) 01:12:54.28 ID:twDt9FRm0
 キョン「前にあんなことを言っておいてすまないんだが、
        もう一度あの長門になってくれるか?」

 長門「わかった、では後ろを向いていて」

 キョン「わかったよ」
 
 後ろからは何も聞こえない。
 それこそ息を吸う音すらも。

 長門「こっち向いて」

 キョン「よう、もう変わったんだよな」

 長門「そうよ」

 キョン「なぁ長門」

 長門「どうしたのよ、改まっちゃって」

79: 2010/03/13(土) 01:18:23.92 ID:twDt9FRm0
 キョン「お前が好きだ」

 長門「えっ!?」
 
 顔を赤らめ眼には涙がたまっている。

 長門「どうして私なの、それに今の私に伝えなくても……」

 キョン「後で本来の長門にも伝えるよ。でも、まずはと思ってな」

 長門「………」グスッ

 キョン「あの時お前が俺のことを好きっていったときは本当に驚いた。
       でも、なんかすごくストレートでうれしかったんだ」

 

80: 2010/03/13(土) 01:19:31.88 ID:twDt9FRm0
 長門「………」

 キョン「それにあの時はあんなこと言ったが、今の長門も本来の長門も
       全部ひっくるめて、俺は長門が好きなんだ」

 長門「こんなところで言わなくても……」グスッ

 キョン「後これ。約束の本だ。受け取ってくれるか?」

 長門はそのか細い腕でまず俺が差し出した一冊目の本を受け取る。

 長門「これは……」

81: 2010/03/13(土) 01:25:48.16 ID:twDt9FRm0
 キョン「あぁお前が好きそうかなと思ってな」
 
 俺が渡したのはとある有名作家の超長編だ。
 オレノヨキンガコイツノトンデイッタコトハナイショダ・・・・・・。

 長門「本当にいいの?」

 キョン「あぁもちろんだ。あ、そうだ」

 長門「どうしたの?」

 キョン「返事がまだだったな。どっちだ?」

 長門「……よろしくお願いします……」

 キョン「ありがとう!これで晴れて俺たちもカップルだな」

 長門「もうばかっ!!」

 キョン「それじゃあ今日一日はここで楽しむか! といっても静かにな」

 長門「気をつけなきゃいけないのはあなたでしょ!」

 その後二人で本を探したり、一緒の本を読んだりして時は流れた。

82: 2010/03/13(土) 01:29:56.57 ID:twDt9FRm0
 キョン「なぁこの本はどうだ?」

 長門「それ前に読んだけどつまらなかったわよ」

 キョン「それじゃあこっちは?」

 長門「それはおもしろかったけどあなた向きじゃないわ」

 キョン「言ってくれるじゃないか。なら俺向きの本って何だ?」

 長門「あっちにある本かな?」

 

84: 2010/03/13(土) 01:31:08.58 ID:twDt9FRm0

 そう言って指差した方向には
 児童向けの絵本ばかりが並ぶコーナーがあった。

 キョン「…、この~!!」

 長門「ちょっと、ここは図書館よ!暴れない!」

 キョン「うるせ~! どうせ俺はガキですよ!」

 長門「ちょっと!もうっ!」

 職員「こら君たち!少し静かにしなさい」

 キ・長「すみません」

 長門「ほら怒られたじゃない!!」

 キョン「でも楽しかったろ?」

 長門「……うん」

85: 2010/03/13(土) 01:33:01.89 ID:twDt9FRm0
 そしてあっという間に時間は過ぎ、閉館時間となった。

 キョン「今日は楽しかったか?」

 長門「うん、それはもう」

 キョン「そうかよかった」

 長門「もうそろそろ入れ替わった方がいい?」

 キョン「ちょっと待ってくれ!!」

 俺はあわてて制止する。
 そしてもう一冊の本を取り出す。

 長門「どうしたの?」

86: 2010/03/13(土) 01:36:01.30 ID:twDt9FRm0
 キョン「これを受け取ってくれ」

 長門「なにこれ?…ほん?」

 キョン「ああそうだ」

 長門「えっとなになに?[ポニテ幼馴染の魅力とは!!]?」

 キョン「あぁ」

 長門「どうして?」

 キョン「今度はこれになってくれないかなぁ~なんて…」

 長門「もう、バカ!!」

 

 俺たちはクスっと笑い合った。

                          ~ふぃん~

88: 2010/03/13(土) 01:37:30.06 ID:twDt9FRm0
 なんかおちがイマイチになってしまった。。。

 読んでくれた人保守してくれた人ありgsとう&申し訳なかった。

 ぜひとも感想等があれば気軽に書いてくれ。

 ほんとに読んでくれてありがとうでした!!

103: 2010/03/13(土) 09:26:21.97 ID:twDt9FRm0


 エピローグ+α     数日後……。

 ハルヒ「いやぁ~まさか有希とあんたが付き合ってるなんてね~」

 キョン「自分でもびっくりさ」

 ハルヒ「よくよく考えてみればちょっと前から怪しかったわね……」

 キョン「そうか? 決めたのが最近だからそんな予兆があるはずは……」

 ハルヒ「おそらく潜在的に有希のことを好きだったのよ!! それがあるきっかけで固まったと」

 

104: 2010/03/13(土) 09:29:26.08 ID:twDt9FRm0
 それじゃあ今日は解散!!
 というハルヒの叫び声によって部員は散りじりになる。
 但し俺と長門は一緒だ。

 キョン「なぁ長門」

 長門「なに?」

 キョン「さっきハルヒが言ってたことだけど……、本当かもな」

 長門「え?」

 キョン「いや、潜在的に俺が長門を好きだったって話さ」

 長門「……」

 キョン「よく考えなくてもお前は可愛い、それにいつも俺のそばにいてくれる。
        こんな女子がいて好きにならない男子はいないよな」

 長門「……そう。ありがとう」

105: 2010/03/13(土) 09:37:24.29 ID:twDt9FRm0
 長門「そういえば」

 キョン「ん? なんだ?」

 長門「前に渡された本、読んだ」

 キョン「あぁあの長編か、どうだった?」

 長門「面白かった。ただ」

 キョン「何か不満でもあったのか?」

 長門「もう一冊の方が興味深かった」

 キョン「え? 渡しておいて言うのもなんだが……、まじか?」

 長門「マジ」

106: 2010/03/13(土) 09:43:00.10 ID:twDt9FRm0
 長門「できる」

 キョン「なにがだ?」

 長門「あの本の…内容」

 キョン「でもまだ髪が短……すまん、愚問だったな」

 長門「どうする?」

 キョン「えっと……、頼めるか」

 長門「了解した」

107: 2010/03/13(土) 09:45:49.78 ID:twDt9FRm0
 その日は普通の長門のまま別れる。
 しかしずっと手をつなぎながらこんな会話するなんて……。
 ビバ!!高校生活! これこそ健全な男子の在り方だ。


 そして次の日の朝!
 事件は起きる。

109: 2010/03/13(土) 09:56:18.58 ID:twDt9FRm0
 ???「…きて! 起きてよ!!」

 キョン「……妹か?」ボソボソ

 ???「なに寝ぼけたこと言ってんのよ!! 早く起きないと遅刻するよ!」

 俺は恐ろしく重たい瞼を開ける。
 そこには紫色の髪の毛のポニテ美少女がいた。
 ……やりすぎだろうに。

 キョン「どうしてお前がここにいるんだ?」

 ???「当たり前でしょ?だって幼馴染だもん!」

 キョン「もうスタートなんだな。わかった、起きるよ」

110: 2010/03/13(土) 10:00:54.98 ID:twDt9FRm0
 俺は体を起してすぐさま下に向かい顔を洗う。
 目を覚ますためだ。
 うっし!これでとりあえずは大丈夫だ。

 ???「今日はまだ時間あるね。よろしいよろしい!」

 キョン「なぁ長門」

 長門「どうしたの?」

 キョン「いくら幼馴染でもおこしに来ることはないだろう」

 長門「朝一でキョンくんの顔が見たくて……、それとも迷惑だった……?」ウルウル

 キョン「そ、そんなことない! 断じてない! いや普通に申し訳ないなって思ってな……」

 長門「いいのよ、私もキョンくんの顔を見れて幸せだもん」

 長門が顔を赤らめながらいう。 
 断言しよう。長門、かわいすぎるぜ。
 その後なぜかうちの家族とフレンドリーな長門とともに朝食をとり家を出る。

112: 2010/03/13(土) 10:05:27.45 ID:twDt9FRm0
 長門「キョンくん……」

 今更ながら長門にキョンって呼ばれるの、初めてかもしれないな。
 新鮮でいい。かわいくていい。いうことなしだ。

 キョン「ん? どうした?」
 
 長門「その……あの……」

 キョン「はっきり言わないとわからないさ。どうしたんだ?」

 長門「……手、手を……///」

 くそ!これは反則すぎるだろ!
 ほおを赤らめながら手を差し出す長門。
 少し意地悪してやろうか?

 キョン「手を……どうするんだ?」

113: 2010/03/13(土) 10:09:39.19 ID:twDt9FRm0
 長門「もう!イジワルっ!!」

 キョン「あぁ悪かったよ。ほら」

 長門「あ、ありがとぅ……///」

 そう言って俺たちは手をつなぐ。
 一般的にいう恋人つなぎってやつか?
 なんかすごく照れくさいなぁ……。
 そして俺は長門を見る。長門はほおを赤らめて俺を見る。

 キョン「長門」

 長門「な、なに……?」

 キョン「はっきり言おう。かわいすぎだ」

 長門「えっ!? もう……! あ、ありがと……///」

114: 2010/03/13(土) 10:13:57.59 ID:twDt9FRm0
 ようようお二人さん!!
 朝から鬱陶しい声が聞こえてきた。

 谷口「見せつけてくれるじゃねぇか! お前はやっぱり俺を裏切っていくんだな!」

 キョン「うるせー。おまえと手を組んだ覚えはない!」

 谷口「そうかい。それじゃあお邪魔虫は退散いたしましょうかな」

 キョン「さっさと行け!!」
 そういうと走っていく谷口。
 
 長門「こら!キョンくん!
      そんな言い方したらダメでしょ! お友達なんだから!」

 キョン「え!? あ、あぁすまないな」

 まさか注意を受けてしまうとは……。
 気をつけよう。

 キョン「もうそろそろ学校につくな。どうする?」

116: 2010/03/13(土) 10:17:09.49 ID:twDt9FRm0
 この どうする? の意味は生徒が集中する
  校門では照れくさいかなと思っての質問だ。

 長門「い、嫌じゃなかったら……もう少し……」

 キョン「もちろん嫌なはずがないだろう、じゃあクラスに着くまでつないでるか」

 長門「う、うん!!」

 そういって校門をくぐる。
 よくよく考えてみれば長門と一緒のことを恥じらう必要なんて全くなかった。
 だって、こんなにも魅力的なのだから。

118: 2010/03/13(土) 10:22:21.28 ID:twDt9FRm0
 クラスに入る手前まで俺たちは手をつないでいた。
 離してもしばらく長門の手のぬくもりが残っていた。

 ハルヒ「朝から仲がいいのね」

 キョン「あぁ、恋人だから……な」

 ハルヒ「一個言っておくけど有希を泣かせたりしたらただじゃおかないからね!!」

 キョン『もう何回か泣かせたなんて口が裂けても言えないな……』

 キョン「もちろんだとも」

 ハルヒ「わかってればいいのよ。でも授業はしっかり受けなさいよね」

 キョン「あぁ、今日は目覚めが良かったからたぶん大丈夫だ」

119: 2010/03/13(土) 10:27:28.57 ID:twDt9FRm0

 その後の俺は朝の俺を大きく裏切ることになったのは言うまでもない。
 ただし、一歩前進はしたのだ! ノートは何とかとった。
 人間常に成長していかなければならないからな。これでいいんだ。

 ハルヒ「あんた……ばかでしょ?」

 そして昼食だ。

 国木田「キョン、廊下で長門さんが待ってるよ」

 谷口「おぉ~でましたよ! いいですなぁ妻がいる人間はさ」

 キョン「黙れ!! 国木田ありがとう」

 国木田「き、気にしないで///」

 キョン「長門、待たせたか?」

 長門「ううん、大丈夫」

131: 2010/03/13(土) 16:05:46.07 ID:twDt9FRm0

 キョン「じゃあ行くか」

 長門「うん」

 俺たちはとりあえず部室へいく。
 外でもいいんだがやっぱりここがいいらしい。

 長門「んじゃあはいこれ、頑張って……作ったから」

 キョン「ありがとう、だからうちのおふくろが作ってくれなかったんだな」

132: 2010/03/13(土) 16:11:48.55 ID:twDt9FRm0
 俺は長門が作ってくれた弁当箱を開ける。
 ちなみに二段重ね+フルーツらしきものが入った小箱のセットだ。
 見た目がきれいすぎて食べるのがもったいないくらいだ。

 長門「変……かな?」

 キョン「変なわけがあるか! こんなにきれいな弁当見たことないぞ。
          んじゃ食べるか」
 長門「待って! 一緒に……///」

 キョン「一緒になんだ?」

 長門「いただきますを……しなきゃ……さ……///」

 まったく子供みたいだな……。
 だがそれがいい。

 キョン「わかったよ、んじゃ一緒にしようか」

 長門「うん!!」

133: 2010/03/13(土) 16:22:32.22 ID:twDt9FRm0
 キ・長「いただきますっ」

 俺たちは口をそろえてあいさつをする。
 俺は長門が作ってくれた弁当に手をつける。
 なんかこんなに整ったものを崩すのは申し訳ないな……。
 しかし食べないのはもっと申し訳ないので俺はべんとうを食す。

 キョン「……」

 長門「ど、どうかな……?」

 キョン「長門」

 長門「っ!!?」ビクッ

 キョン「料理屋を開くべきだな。うますぎる」

 長門『よ、よかったぁ~……』


135: 2010/03/13(土) 16:34:14.88 ID:twDt9FRm0
 長門「えっと…………」

 長門が食べるのをやめてまたほおを赤らめる。
 なんか赤くしていないときのほうが短い気がするな……。
 
 キョン「どうした? たべないのか?」

 長門「そのっ!……アーンを……し、したいなぁ~なんて……///」

 キョン「!!?」

 さすがに驚くさ。
 いくら俺だってこの提案は……予想していなかったというのはうそになる。
 だがうれしくないはずがない。はっきり言うならうれしい。
 これは男の夢の中の夢だろう。少なくとも俺はそうだ。

 キョン「……わ、わかった。お願いします」

 長門「な、なんで敬語なのよ! もうっ!」

 長門は自分の弁当にあったミートボールを箸でつかみ上にあげる。
 その間完璧に長門は地面を見ている。
 そして俺の口へと近づける。

 長門「はい、あ、あ~ん……///」

 キョン「あ、あぁ…・・・・」

136: 2010/03/13(土) 17:03:34.59 ID:twDt9FRm0
 その後俺たちは至福と表現してもいいくらいの時間を過ごした。
 そしてチャイムの音とともに自組へと戻る。
 すごく名残惜しいがしょうがない。

 クラスに戻るとどこかのバカがひやかしてきたが俺のこぶしで黙る。

 ハルヒ「そういえばキョン」

 キョン「ん?なんだ?」

 ハルヒ「今日はみくるちゃんと新しいコスプレの服かって来るから
      古泉君と有希とで頑張って頂戴」

 キョン「あぁ、わかった」



137: 2010/03/13(土) 17:30:27.31 ID:twDt9FRm0
 そして放課後。
 俺は部室へと急ぐ。とくに用はないのだが。
 なぜかって?そんな野暮なこと聞くなよ……。

 俺は扉をあける。しかしそこにはいてほしい人はいなかった。
 いや、ある意味いてほしかった野郎なのだが。

 古泉「やぁ、どうも」

 キョン「あぁ、お前だけか?」

 古泉「そうですね。長門さんはまだ見えてません。
        てっきりあなたと一緒かと思ってましたよ」

 キョン「いや、俺はこっちにいると思ってな」

 古泉「そうですか、そういえば涼宮さんと朝比奈さんはお休みです」

 キョン「知ってるよ」

138: 2010/03/13(土) 17:32:31.35 ID:twDt9FRm0
 古泉「それはそうでしたね。愚問中の愚問でした」

 キョン「それより古泉」

 古泉「なんですか?」

 キョン「俺に言いたいことはないか?」

 古泉「そうですね……。僕が超能力者だって言うことでしょうか?」

 キョン「ある意味超能力化もな」

 古泉「どういうことです?」

139: 2010/03/13(土) 17:37:14.62 ID:twDt9FRm0
 キョン「まだしらばっくれるつもりか」
 
 そう俺は気が付いている。
 いつ頃からだっただろう。
 怪しいそぶりはあったんだけれど名。

 古泉「すみません、身に覚えが……―」

 キョン「いや、俺は礼を言いたいんだ。古泉」

 古泉「え?」

140: 2010/03/13(土) 17:39:43.65 ID:twDt9FRm0
 キョン「俺と長門をくっつけてくれたんだろう?」

 古泉「………」

 キョン「どうりで都合がよすぎると思ってたんだよ」

 古泉「いつからですか?」

 キョン「そうだな、ところどころ怪しかったが確信を得たのは日曜だな」

 古泉「あれは分かりやすすぎました」

141: 2010/03/13(土) 17:41:42.74 ID:twDt9FRm0
 キョン「それに長門が変わった初日だ」

 古泉「え?」

 キョン「あの時長門は大声でしゃべっていた。
      それなのに扉の向こうのお前が気がつかないはずがない」

 古泉「わかりませんよ? たまたま聞こえなかったのかも」

 キョン「それにだ」

142: 2010/03/13(土) 17:44:52.52 ID:twDt9FRm0
 キョン「いくら聞こえなかったとはいえ、お前が扉を開けた時
      長門は立っていた。それなのにお前は何も変化はないと言っていた」

 古泉「長門さんだって立つことくらいあるでしょう」

 キョン「それはあるだろう。だが、いつもは座っている長門が立っているところを見て
      そして変化はないかと聞かれたなら、立ってますねとでも言うんじゃないか?」

 古泉「いや、わかりませんよ……―」

 キョン「もういいじゃないか。別に悪事をしているわけじゃないんだからよ」

143: 2010/03/13(土) 17:48:11.01 ID:twDt9FRm0
 古泉「そうですね……。
    別にここまで強情になる必要などありませんでした」

 キョン「ははっ!本当だな。本当に馬鹿みたいだな」

 古泉「そうですね」

 俺たちは笑いあう。そして扉が開いた。

 キョン「よう、長門」

 長門「……」

 古泉「どうも」

 長門「……」

 キョン「別にいいじゃないか。古泉ならとっくにきづいているよ」

 長門「で、でも、恥ずかしいじゃない……」ボソボソ

 キョン「わかったよ」

144: 2010/03/13(土) 17:51:31.35 ID:twDt9FRm0
 古泉「では、僕も用事があるので」

 キョン「あ?」

 長門「そう」

 古泉「では、頑張ってください」ボソボソ

 キョン「なにをだよ!」
 ガチャ

 長門「……い、行った?」

 キョン「おいおい、なんか可哀想じゃないか」

 長門「まぁ時期が来たら伝えるわよ」

 キョン「そうかい」

145: 2010/03/13(土) 17:55:55.65 ID:twDt9FRm0
 その後長門と緩やかな時間を過ごす。
 なんか、思う。俺はこの日のために生きてきたんじゃないかと。
 そして暗くなってきたところで俺たちは部屋を出る。

 キョン「長門」

 長門「どうしたの?」

 キョン「今日はありがとな」

 長門「別に何もしてないじゃない! それに私のほうこそ感謝してる」

 キョン「なにをだ?」

 

146: 2010/03/13(土) 18:00:15.01 ID:twDt9FRm0
 長門「前の私は自分の気持ちも素直に言えなかった」

 キョン「………」

 長門「でもあなたがそんな私を変えてくれた。そして私にいろいろなことを教えてくれた」

 キョン「………」

 長門「例えばポニーテールとかさ」

 キョン「やめてくれ」

147: 2010/03/13(土) 18:04:10.40 ID:twDt9FRm0
 長門「そしてあなたは私の気持ちにこたえてくれた」

 キョン「それは俺が思ったままの返事をしたまでだ」

 長門「これからも、私にいろいろなことを教えてくれる?」

 キョン「あぁもちろんだ」

 長門「ありがとう」

 キョン「長門も俺にいろいろなことを教えてくれたさ」

 長門「え?」

 キョン「例えば、人を愛することとかな」

 長門「///」

148: 2010/03/13(土) 18:06:32.96 ID:twDt9FRm0
 キョン「長門も俺にこれからいろいろ教えてくれるか?」

 長門「もちろん!!」

 キョン「ありがとな」

 長門「…………」

 キョン「…………」

 妙な空気が二人の間に流れる。
 俺たちを照らすのは月と道の電灯だけだ。
 二人ともしゃべらないまま時間が過ぎる。

149: 2010/03/13(土) 18:13:13.85 ID:twDt9FRm0
 キョン「長門」

 長門「どうしたの?」
 
 キョン「……」

 俺は黙って長門の頬に手を添える。
 
 長門「ふぇ!?」

 キョン「……いいか?」

 長門「う、うん……」

 長門は瞳を閉じる。
 
 その後俺たちはキスをした。

150: 2010/03/13(土) 18:17:05.63 ID:twDt9FRm0
 長門「ん……。あぁ」

 キョン「長門、一ついいか?」

 長門「な、なに?」

 キョン「ほかの二人にも会わせてほしい」

 長門「わかったわ」

 キョン「んじゃ俺後ろ向くからさ……」

 長門「そのままでいい。見てて。って言っても面白くもなんともないけどね」

 俺はそのまま長門を見続ける。
 長門が目を閉じ、胸の前で手を組む。
 すると淡い光が長門を、いや長門から放たれている。
 今にも消えそうなくらい淡い光を。
 そして長門は瞳をあける。

 長門「はい、変わってあげたわ! で、何の用?」

 

151: 2010/03/13(土) 18:19:44.77 ID:twDt9FRm0
 キョン「俺はお前が好きだ」

 長門「え?えぇ!?」

 キョン「全部の長門に言いたいと思ってな」

 長門「ばっばか!! そんなこと……」

 長門「そんなこと私も同じよ!!」

 そういうと俺に飛びついてきた。
 上目づかいで俺を見る。
 そして再びキスをする。
 
 いや、初めてのキスか。
 

152: 2010/03/13(土) 18:24:54.26 ID:twDt9FRm0
 長門「…………///」

 キョン「長門あの……」

 長門「わかってるわよ」

 そういうと再び手を組む。
 そしてさっきよりも淡い光が放たれる。
 
 長門「完了した」

 キョン「そうか。長門」

 長門「なに?」

 キョン「すきていう感情。どう思う?」

 長門「昔の私なら概念を説明できたかもしれない」

 キョン「ほう」

 長門「でも今の私には説明できない」

 キョン「なぜだ?」

 長門「あなたのせい」

 キョン「言ってくれるな」

 長門「でも、感謝してる」

153: 2010/03/13(土) 18:32:34.72 ID:twDt9FRm0
 長門「これからもあなたに教えてほしい……。すきということについて」

 キョン「あぁもちろんだ」

 長門「……ありがとう」

 長門「キス、して」

 キョン「わかった」

 そう言って俺はキスをする。
 いつからこんなにプレイボーイになっちまったんだ。
 でも全部一緒で全部初めてだ。

 

154: 2010/03/13(土) 18:33:47.50 ID:twDt9FRm0
 そして俺たちは歩きだした。
 これからもこの関係が続けばいいな。
 いや、一緒に歩んでいきたい、長門とこの人生(みち)を。
 
 時が経って、俺が横を見たとき。そこにお前はいてくれるか?
 なぁ長門。
 その時はどうやって反応してくれるんだ。
 
 長門「どうしたの?」

 キョン「いや、なんでもないさ」

 俺たちは暗い道を歩く。互いに絶対に離れないくらい強く握った手で。

 キョン「なぁ長門」

 長門「なに?」

 キョン「すきだ」

 長門「そう。………、ありがとう」
                       ~fin~

156: 2010/03/13(土) 18:38:41.28 ID:aWhazU8f0

引用: キョン「なぁ長門」 長門「どうしたの?」