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選手会長を引き継いだ中島卓也

 同期入団の中島は公私ともに仲が良く、家族ぐるみで食事へ行く間柄。大野奨が中日へ移籍した18年からは、その意志を継いで選手会長に就任した。厳しくも、温かな助言をくれる先輩を、心から慕っていた。

「寂しいですね。同期には谷元さんもいて、少しでも長く一緒に(現役を)やりたかった。時間があれば、引退試合に行きたいです。大野さんはしっかりしているけど、天然ぶりもすごくて、そのギャップが激しくて面白いんですよ。自主トレは一緒に宮古島へ行ってましたし、札幌に家もあったので、よくご飯に行ってかわいがってもらいました。いろいろなことを見られる人。コーチにも向いていると思いますし(いつかは指導者として)良いキャッチャーを育ててくれるはずです。15年間、お疲れ様でした」

宮古島でともに合同自主トレ行った山本拓実投手

 山本拓は中日に在籍していた2022年から、大野奨や谷元を慕って宮古島での合同自主トレに参加している。南の島で過ごす時間の中で、厳しい世界を生き抜くヒントを授かったという。

「(引退の)報道を見て連絡をしたら『思い切って、頑張れよ』と言葉を掛けられました。日本一を経験されている方で、中日の時から勉強させてもらいました。僕も大野さんも同じチームを経験して、何かの縁があるのかなと思っています。引退しても、見守っていただけたらうれしいです。宮古島の自主トレでは『もっとピッチングに遊び心を持とう』と教わりました。自分で言うのも変ですが、僕は性格が真面目な方で、頭が固かった。うまくいったから正解ではなく、常識を疑って、視野を広く持つことで考え方が変わりました。大野さんはファームにいても腐らずに野球に取り組んでいたし、その姿は僕も含めて若手のお手本でした。いつかは僕にも終わりが来る。その姿勢を見習って、後悔なく過ごします」

プロ初登板からバッテリー組み3連勝飾った上沢直之投手

 上沢の1軍初登板はプロ3年目の2014年4月2日・ソフトバンク戦。大野奨の好リードに導かれて初勝利を挙げると、その後もコンビを組み、破竹の3連勝を達成した。鮮烈なデビューを飾った若き日の記憶を、今でも鮮明に覚えている。

「1軍で投げ始めたときから、たくさんマスクを被ってもらって、試合中にテンパったときは、いつも落ち着かせてくれました。僕は本当に、奨太さんにお世話になりました。言うことは言うタイプだけど、あまり怒られたことはないかな。ただ(1軍デビューした)3年目に掛けられた言葉は、よく覚えています。『どんなに成績を残しても、今と変わらない性格のままでやっていけ。今の気持ちと、姿勢を忘れるな』って。球場で、ふとしたタイミングで言われました。奨太さんは野球ではリーダーという感じだけど、私生活は意外とかわいいところがありますね。抜けてるところもあって、人間味があって面白い感じです。僕も年を取ってきて、ベテランの立場で話せる人は少なくなった。(引退は)寂しいです」

同じ捕手として尊敬の念を抱く元中日の郡司裕也捕手

 中日時代。同じポジションの郡司は、ファームで多くの時間を共有した。鋭い洞察力と、洗練された配球を間近で学び、ベテランの経験と思考を吸収した。15年間捕手一筋で生き抜いてきた男に、強いリスペクトの念を抱く。

「人として、捕手として、めちゃくちゃ尊敬しています。試合に出ないときは、いつもベンチで話をしてくれました。『次、俺ならこう行く。郡司はどう?』って。そんな話をしながら野球を見ていました。シートバッティングや紅白戦で対戦すると、奨太さんがキャッチャーの時にはだいたい裏をかかれて、さすがだなって思わされました。移籍する直前には『ファイターズのことは何でも聞いてくれ』って言われて心強かったです。奨太さんは『もういいよ、俺は』とか言うけど、絶対に今後も野球界に関わってほしいです。セレモニーありますよね? 大好きな先輩なので、でっかい花を贈ります!」

若手時代から苦楽を共にし、日本一も共に味わった宮西尚生投手

 1学年違いの宮西と大野奨は、若手時代から苦楽を共にした盟友だ。勝負が決するゲーム終盤。あうんの呼吸で、数え切れないほどのピンチを乗り越えてきた。全幅の信頼を寄せ合うバッテリーは、強い日本ハムの象徴でもあった。

「何試合組んだか分からんね。俺みたいな投手は捕手が重要になるお任せタイプやから、助けられたよ。膨大な知識を頭に入れてサインを出しているから、基本的に首は振らない。安心できる捕手やったね。09年の優勝の時は先輩に付いていくだけで、自分のことだけで必死な2人やった。それが16年は自分らが主力で優勝できた。思い出はすごいあるよね。あいつキャプテンやってたんちゃうかな? 守備の要であり、チームの主力。優勝には欠かせない一人やったね。プライベートからロッカーまで真面目なタイプやから、後輩をイジっているように見せていて、イジられていることに気付かない(笑)。そういう性格って、今の時代の若い子らに合うんじゃないかな。今後どういう道を歩むかは知らんけど、どこに行っても活躍すると思うよ。最後の数年は苦労したやろうけど、ずっと耐えてしっかりやってきた。踏ん切り付けて辞めたんやろうし、そこに対してはホンマに言うことない。ほんと、お疲れさん」