インタビュー

100人以上の仲間と共に、激動の歴史の中で主人公たちの理想が試される王道JRPG「百英雄伝」インタビュー

「幻想水滸伝」を手掛けた村山吉隆氏、河野純子氏らが本作のウリを語る

【百英雄伝】

2024年4月23日 発売予定

価格:
5,380円(通常版)
8,690円(デジタルデラックスエディション)

 100人以上の英雄が登場し、壮大な群像劇を楽しめるプレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC用RPG「百英雄伝」。505 Gamesが販売、Rabbit & Bear Studiosが開発する本作は「幻想水滸伝」シリーズを手がけたスタッフが制作しているということもあり、海外のクラウドファンディングサイト「Kickstarter」にて400万ドルオーバーの支援を達成したタイトルだ。

 当初は2023年内での発売が予定されていたが、この夏にリリース時期が2024年第2四半期へと変更された。そんな本作について今回はメールインタビューという形で、開発者の村山吉隆氏と河野純子氏、そして村上純一氏の3名にお話を伺うことができた。その内容を、ここで公開していこう。

村山吉隆氏。「幻想水滸伝(コナミ)」、「幻想水滸伝II」などのシナリオを担当。「百英雄伝」では脚本とゲームデザインを手がける
河野純子氏。「幻想水滸伝」のキャラクターデザインを手がけたほか、「幻想水滸伝IV」、「ラプソディア」ではプロデューサーおよびシナリオライターも務めた。「百英雄伝」にてキャラクターデザインを担当。
村上純一さん。代表作には「キャッスルヴァニア ~暁の円舞曲~(コナミ)」やプロデューサーを担当した「OZ(コナミ)」などがある。「百英雄伝」ではプロデューサーとアートディレクションを担う
【『百英雄伝』東京ゲームショウ2022 「特報」トレーラー / TOKYO GAME SHOW 2022 Trailer】

――村山氏と河野氏のお2人が、コンビを組んでゲーム制作に取りかかるのは25年ぶりだそうですが、その思いをお聞かせください。

村山氏:僕らが一緒に仕事をしたのは、このゲーム業界でも駆け出しの頃で、それぞれに手探りの状態で必死に仕事をしていました。それぞれ経験を積んで、新たな境地で一緒に仕事をするのは楽しみでした。

河野氏:以前の開発終了時には何もかも絞り出してクタクタになっていましたが、まあまたいずれ組むこともあるのかなと思っていました。それが今回ということでしょう。そして今回もそろそろクタクタです!(笑)

――今回は、kickstarterにて支援を集めるという形をとりました。こういった従来とは違う形での制作の進め方には、戸惑いや緊張もあったのではないでしょうか。

村山氏:ゲーム開発スタート前から、ユーザーにその内容を公開してクラウドファンディングを行なったため、通常よりもかなり早くユーザーにその内容を知られることになり、多くの意見が寄せられたのは大きな違いでした。そういった部分においては、多くの刺激がありました。

――「幻想水滸伝」シリーズに携わったスタッフが関わっている“精神的続編”ということで、新たな作品を作るよりもチャレンジングな部分があったかと思いますが、その辺の苦労はどうだったでしょうか。

村山氏:「幻想水滸伝」の頃よりも、更にそれぞれのキャラクター達の活躍の場所を増やしたいという思いがありました。そのために、ギルドシステムなどの新たな施設を登場させました。そういった部分で、よりキャラクターを身近に感じて欲しいと思っています。

――そんな本作の“ウリ”となる所を教えてください。

村山氏:それぞれに多くの魅力、そして価値観を持ったキャラクターたちが「百英雄伝」には登場します。それぞれのキャラクターたちが戦争という状況の中で何を考え、どう行動したかを表現しています。その中で、あなた自身が好みのキャラクターを見いだして、活躍させることができるのがウリとなっています。

――すでに発売されている「百英雄伝 Rising」との関係性について、可能な範囲で教えていただけませんか?

村山氏:ストーリー的には、「百英雄伝 Rising」をプレイしていなくても本編は楽しめる形になっています。ただ「百英雄伝 Rising」の主人公たちや、その他のキャラクターが本編でも登場するので、その変化を楽しんだり「百英雄伝 Rising」をプレイしているとニヤリとしちゃう部分は、いくつか仕掛けたりしています。

「百英雄伝 Rising」は2022年5月に発売された。ジャンルがアクションRPGとなっており戦闘はターン制ではなくリアルタイムに時間が経過する

――「百英雄伝 Rising」は、すでに発売されて1年以上が経ちますが、ユーザーのフィードバックなどはいかがでしょうか? また、それを受けて「百英雄伝」に活かしている要素などはあるでしょうか?

村山氏:「百英雄伝 Rising」は「百英雄伝」の世界観の一端を見てもらう、遊びやすいタイトルとして制作されました。その中で主人公となった3人、CJ、イーシャ、ガルーの人気は高いものでした。そういうフィードバックが多く、少し割かれているリソースも多くなっているかもしれません。

――今回は、仲間が100人以上登場するということですが、やはり大勢のキャラクターを生み出すというのは大変な作業だったのでしょうか。

村山氏:非常に大変です(笑)。「百英雄伝」では、人間以外のキャラクター、獣人やその他の種族を多く採用しており、よりバラエティに富んでいます。

河野氏:今回は、最初に文字設定をもらってから描くことが多かったのですが、人間じゃないもの、それまで描いたことのないものについては結構手こずりました。

人間に限らず、様々な種族が登場する本作。そのすべてが、河野氏の手により魅力あふれるキャラクターとして生み出されている(画像は『百英雄伝』東京ゲームショウ2022 「特報」トレーラーより)

――本作のプロローグを見ると、2人のキャラクターがそれぞれの信じる正義に向かって突き進みながら、お互いの運命が絡み合うという印象を受けましたが、この2人を軸に物語は展開していき、そこに仲間たちも絡んでくる物語という感じになるのでしょうか。

村山氏:諸国連合に属するノアと、帝国の士官であるセイ・ケースリングは今回の戦いにおいて敵同士となる陣営に属しており、それぞれの正義のために戦います。その戦いに対して第三の主人公、メリサはガーディアンという異なる立場で絡んでいくという形になります。その他にも、独立領主の女性や傭兵、由緒ある大国の御曹司といった多くの立場のキャラクターたちがそれぞれの価値観、目的で戦争に絡んでいきます。

――昨今のJRPGで比較的よく見られる2.5D表現を取り入れているため、ちょっと昔を思い起こす出すような非常に暖かみのある、初期の「幻想水滸伝」シリーズライクなグラフィックスに感じられます。これは、シリーズファンにとっては非常に嬉しい仕様だと思いますが、これも最初から考えられていたことでしょうか。

村上氏:はい。こういった表現を目指したいというのは、企画当初からありました。コアメンバーが現役世代の頃に得意だった事を、今の環境で作ったらどうなるだろう? という所から始まり、今は時間を掛ければ色々な表現ができるので、突き詰めて行ったらこういう形になりました。

背景は今風のリアリティあるグラフィックスとはまた違った、暖かみある雰囲気を醸し出してくれる

――戦闘シーンは「幻想水滸伝」シリーズなどでお馴染みの、斜め後方から見下ろすアングルで進んでいくようですが、これを見て当時を思い出すユーザーも多いのではないかと思います。やはりこれも“狙って”なのでしょうか。

村上氏:これは最初からというか、2Dドット絵をどういった視点で見せると、3D空間で効果的に見せられるだろうか? と考えた結果、やはりここに落ち着きました。ただ、カメラは過去のドットゲーム以上に動かす事を目標とし、様々な視点で楽しめる様に頑張っているので、そういう意味では見下ろし視点だけを狙った訳ではないです。

戦闘シーンは、プレイヤー側と相手側が奥と手前に配置され、斜めから見下ろしたアングルで展開する。ただし、視点は固定ではなく、迫力ある見せ方をするように動くようだ。

――村山氏と河野氏のお二人が揃うと、気になってしまうのはシステム部分です。「幻想水滸伝」シリーズに登場した、紋章や本拠地、仲間たちとの連携攻撃、一騎打ちや戦争といったシステムを導入するかどうか、といった話などは出たのでしょうか。

村山氏:それぞれのシステムについては、個別に検討がされました。その多くは、登場する多数のキャラクターたちをいかに活躍させる場所を増やせるかという基準で採用しています。

――楽曲に関しては、JRPG界ではお馴染みの、桜庭 統氏となるけみちこ氏を起用しています。PVからも素晴らしい曲が流れてきていて、本編が今から非常に楽しみです。お二人にお願いするのは、早い段階から決まっていたのでしょうか。

村上氏:はい。kickstarterを立ち上げる時から、このお二人にお願いしたいと話をしていました。自分が手掛けるゲームはいつも音楽を大事に考えていますが、今回お二人にお願いして大正解でした。素晴らしい曲しかないので、楽しみにしていてください。

――発売を待ち望んでいるユーザーへ、メッセージをお願いします。

村山氏:多くの楽しみを持ったJRPG「百英雄伝」。その戦いの姿を見る事を楽しみに、これからも応援をよろしくお願いします。

――ありがとうございました。