物語の終わりと始まり 5冊目

2024年06月08日

足の傷のことがあり、後先になってしまった。本当は、この記事が先。

5月の終わり頃、また一冊打ち込みが終わった。
僕の場合は、L型がなければPC作業といった感じで優先的に入れてもらえている。だから作業時間を多く確保することができて、必然的に仕事が捗った。
ものすごく、ありがたい。

今回仕上げたのは、鏑木蓮さんの「見習医ワトソンの追究」。
212000文字超で、360ページ。前回の仕上げが2月だから、3ヶ月くらいで打ち込んだことになる。
今回は章ごとに独立したオムニバスではなく、全体で一つの事件を扱う形だった。主人公は若い男性の医者と女性刑事の二人で、両者の視点が切り替わりながら物語が進む。
犯罪捜査と医療ドラマのハイブリッドと言っていいだろう。
大阪市内で、有名な美容研究家の女性が何者かに腹を刺されて緊急搬送され、搬送先の病院で息を引き取る。一見単純そうな事件だが捜査は一筋縄でいかず、迷走することに。
亡くなった美容研究家を殺したのは、彼女につきまとっていたストーカーか、敵対する人物の仕業か、はたまた医療ミスか。どんな可能性もあるだけに、謎解きはハラハラとした。
最後に特定される真犯人は思いも寄らないところにいて、驚かされる。そこには医療知識が不可欠で、凡人にその発想は浮かばない。
この物語のキーパーソンは何といっても、舞台となる病院の病院長、三品だ。彼は、序盤からジョーカー的な立ち位置で主人公の二人を惑わせつつ、最終的にはホームズとして事件を解決に導く。それは真犯人の特定だけでなく、事件の着地点をも決めてしまうところに感動した。
ハチャメチャではあっても、医者としての立場や矜持があるからこその着地点。それでいて、自らの満足も同時に手にするところが彼らしくて面白い。根っからの善人ではなくてダークヒーロー的なのが、物語の味わいをより深めてくれる。
今回の本は、医療用語が多くて難解な部分はありつつ、ストーリーの面白さはこれまでで一番だった。だから、打ち込みのスピードも早かったのかもしれない。

「見習医ワトソンの追究」を閉じたその日に、次の本が来た。今度はワトソンではなく、彼と縁のあるあの人の物語だ。
奇遇というか、何というか…
とにかく、打ち込み作業はこれからも続く。次はどんな物語が紡がれるか、今から楽しみだ。
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