その酒井が陸上自衛隊に入隊したのは平成元年3月。
1等陸佐に昇ったのが20年1月であったので、33期組1選抜(1番乗り)となるスピード出世だ。
原隊(初任地)は山形県の神町駐屯地に所在する東北方面隊第6飛行隊であり、同地で初級幹部として、厳しい自衛官生活のスタートを切った。
(画像提供:陸上自衛隊第1ヘリコプター団公式Webサイト)
その後職種部隊では、立川に所在する東部方面ヘリコプター隊を経て、飛行隊長ポストは明野に所在する第10飛行隊長で、航空隊長ポストは高遊原に所在する西部方面航空隊長で上番。
中央(陸上幕僚監部)では、人事部補任課、教育訓練計画課、総務課広報室を経て班長ポストは人事計画課の企画班長を、課長ポストは運用支援・情報部の情報課長で務めた。
また幕僚やスタッフのポジションでは、幹部学校の教官や研究本部研究員、小平学校副校長、航空学校副校長といった要職を歴任。
そして平成30年3月から第1ヘリコプター団長兼ねて木更津駐屯地司令に着任し、航空科にある幹部としてもっとも誇りあるポストの一つで力を尽くしている。
まさに、33期のみならず陸上自衛隊を代表する、最高幹部の一人と言ってよいだろう。
(画像提供:陸上自衛隊明野駐屯地公式Webサイト)
ところでひとつ、ここで素敵な余談をご紹介したい。
酒井が航空学校副校長を務めていた2017年7月、非常に嬉しいニュースが自衛隊内外に広がった。
陸上自衛隊で史上初となる、女性の戦闘ヘリパイロットが誕生したことだ。
それが上記画像の半浴(はんさこ)仁美・3等陸佐である。
AH-1S(通称コブラ)の過程を全て修了し卒業をしたものだが、元々彼女はUH-1Jのパイロットという経歴の持ち主。
2人の子供を育てる母親という側面も持つ、文字通りの肝っ玉母さん(死語)だ。
女性初の戦闘機パイロット・松島美紗(第58期)よりも前のニュースであるにも関わらず、ほとんどニュースにならなかったのがやや不満であり、その分ここで紹介をさせて頂きたい。
平成6年4月、高校卒業後に陸自に入隊。17年以上に渡り空を飛び続け、総フライト時間は2000時間を超える練熟のパイロットだ。
陸自にはこんなに美しく強い、そして日本の平和に貢献する女性幹部がいることもぜひ、心に留めておいて欲しい。
酒井の教え子から歴史的な卒業生が誕生したことになるが、酒井と併せ、半浴3佐の今後の活躍にも注目して貰えれば幸いだ。
では最後に、その酒井と同期である33期組の人事の動向について見てみたい。
33期組は2014年に最初の陸将補が選抜され、2020年に最初の陸将が選抜される予定になっている年次だ。
そして2019年3月現在で、以下の幹部たちが陸将補の任にあたっている。
冨樫勇一(第33期)・陸上幕僚監部人事教育部長(2014年8月)
山根寿一(第33期)・第13旅団長(2014年8月)
牛嶋築(第33期)・東北方面総監部幕僚長兼ねて仙台駐屯地司令(2014年8月)
末吉洋明(第33期)・陸上幕僚監部運用支援・訓練部長(2014年8月)
廣惠次郎(第33期)・陸上幕僚監部指揮通信システム・情報部長(2015年3月)
児玉恭幸(第33期)・陸上幕僚監部監察官(2015年8月)
梅田将(第33期相当)・大阪地方協力本部長(2015年12月)
酒井秀典(第33期)・第1ヘリコプター団長兼ねて木更津駐屯地(2016年3月)
宮本久徳(第33期)・第1高射特科団長(2016年12月)
堀江祐一(第33期相当)・陸上自衛隊高等工科学校長兼ねて武山駐屯地司令(2017年3月)
楠見晋一(第33期)・中央情報隊長兼ねて陸上総隊司令部情報部長(2017年8月)
更谷光二(第33期)・東北方面総監部幕僚副長(2018年3月)
※肩書はいずれも2019年3月現在。( )内は陸将補昇任時期。
※2018年8月以降の将官人事で昇任した陸将補の確認が未了のため、加筆する可能性あり。
以上のような状況になっており、まずは冨樫、山根、牛島、末吉の4名が中心になって、33期組の最高幹部人事は進んでいくことになるだろう。
酒井については、陸自大改革の一丁目一番地である「機動力」を根幹から支える、航空科出身の最高幹部だ。
その意味では今後、上級組織である陸上総隊にも異動し、さらに活躍の場を広げていくこともあるのではないだろうか。
またいずれ、陸上自衛隊航空学校長のポストにも座り、後進の育成にも力を尽くすことになるのは間違いないと思われる。
いずれにせよ、その動向が我が国の平和と安全を直接左右する、極めて重要な存在になることだけは間違いがないだろう。
その活躍には今後も注目し、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:陸上自衛隊第1ヘリコプター団公式Webサイト)
◆酒井秀典(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
元年3月 陸上自衛隊入隊(第33期)
元年9月 東北方面隊第6飛行隊(神町)
7年3月 東部方面航空隊東部方面ヘリコプター隊(立川)
8年3月 中央資料隊第5科(桧町)
9年8月 幹部学校付(目黒)
11年8月 航空学校第1教育部(明野)
12年1月 3等陸佐
12年8月 陸上幕僚監部人事部補任課(市ヶ谷)
15年7月 2等陸佐
16年7月 中央資料隊付・米海兵隊指揮幕僚大学(米国ヴァージニア州)
17年8月 陸上幕僚監部教育訓練計画課(市ヶ谷)
19年8月 第10飛行隊長(明野)
20年1月 1等陸佐
20年8月 陸上幕僚監部監理部総務課広報室(市ヶ谷)
21年8月 幹部学校教官
21年12月 陸上幕僚監部人事計画課企画班長(市ヶ谷)
24年4月 陸上自衛隊研究本部研究員(朝霞)
24年7月 西部方面航空隊長(高遊原)
25年12月 陸上幕僚監部運用支援・情報部情報課長(市ヶ谷)
28年3月 小平学校副校長(小平) 陸将補
28年12月 航空学校副校長(明野)
30年3月 第1ヘリコプター団長兼ねて木更津駐屯地司令(木更津)
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