私は時代小説は滅多に読まない。
人間ドックの検査待ち時間に読む本を用意しようとネットを見ていたら、あるブログで取り上げられていて、ちょっと厚い文庫本になるのが気になったが、読んでみることにした。
黒牢城(米澤穂信著、角川文庫)
帯にあるが、直木賞受賞作にして、4大ミステリーランキングすべてで1位を獲得した作品である。
本の裏表紙にある作品紹介は以下の通り。
本能寺の変より四年前。織田信長に叛旗を翻し有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起こる難事件に翻弄されていた。このままでは城が落ちる。兵や民草の心に巣食う疑念を晴らすため、村重は土牢に捕らえた知将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めるがーー。
事件の裏には何が潜むのか。乱世を生きる果てに救いはあるか。城という巨大な密室で起きた四つの事件に対峙する、村重と官兵衛、二人の探偵の壮絶な推理戦が歴史を動かす。
528ページあり、時代小説なのに読みにくさはなかった。
中途半端に読むのを中断しにくい作品で、章単位で読み進めていった。
主人公は荒木村重で、難事件の解決に奔走するのだが、苦慮する中、黒田官兵衛に状況を伝え、書斎探偵よろしく官兵衛がその謎を解くヒントを村重に話すミステリー仕立てになっている。
私も「4大ミステリーランキングすべてで1位」の本と思って読み始めたのだが、その色に止まらず、「直木賞作品」だなという感想を持った。
直木賞は新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本の中から、最も優秀な作品に贈られる賞で、長編小説や短編集、ミステリーや時代小説が候補になることもあり、受賞作の幅がひろいことが特徴という。直木三十五という作家の代表作の一つが『水戸黄門』の原作と言われるので、時代物が候補になるのもうなずける。
4つの事件は大事な伏線で、主人公二人で時間をかけて解決していったことさえ伏線になっているので、ミステリー要素がストーリー展開で大事ではあるのだが、登場人物が持っている背景などを絡めて表現されていて、それは戦国時代だからこそ取り上げられるもので、まさに時代小説なのである。
時代小説もたまに読むと面白いものだと思った。
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