覗いたときは事後でした1


 有夏が呻いた。

 呼吸はまだ荒い。

 ベッドに横たわったまま、相手の体重を感じるのが心地良いのか、声が甘い。

 そんな彼の整った顔を至近距離で見つめながら、幾ヶ瀬がいつものように髪を撫でる

「抜いてるよ」

「んぁ?」

 訝し気な表情。

 折り重なって互いの息遣いを感じながら、蜜のような時間を過ごす──これは明らかに事後の光景だ。

「ホントに?」

 顔を赤らめ、尚も念を押す有夏。

 成程。ふたりの身体はぴたりとくっ付いてはいるが、幾ヶ瀬のソレは有夏の腿にやわらかく触れている。

 どうやら満足した様子で、挿入時の硬さは失われていた。

「なんかまだナカに入ってるみたい。感覚が……」

 感触を確認するように目をとじる。

 唇を舐めると、有夏は微笑した。

「どうしたの、有夏」

「や、何でも……」

 微笑はニヤニヤに変わっている。

「有夏? 顔、赤いよ?」

「う……いや、だからさ……初めての時は……フフッ」

 照れ笑いがこぼれる。
 耳だけでなく、有夏は目元まで赤く染めていた。

「……初めてシタとき。あの時は3日くらい腹ん中火事で。ずっと何か入ってる感触が残ってて……」

「有夏……」

 ニヤニヤが幾ヶ瀬にも移る。

「あの時は可愛かったな、有夏。感じるのに声出すの我慢して、目うるうるさせて。可愛かったぁ……」

「過去形かよ」





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