夏のなごり1

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 冷凍庫を開けた有夏がアイスを取り出した。

 顔がニヤけている。

「鍋のあとはやっぱコレだな」

 コンビニの「まるでマンゴーを冷凍したような食感のアイスバー」をペロリと舐める。

「うまーーーっ!」

 この時期、鍋とは大概に季節外れなメニューである。

 だが有夏が喜んで食べることと、何より調理が楽なことから、幾ヶ瀬家ではここ数日またもや鍋料理続きであった。

 塩ちゃんこに始まり、うどんすき、カレー鍋……。

 最初の2日は食後に「アイスがない!」と嘆いていた有夏だが、3日目にして自ら買っておいたようだった。

「俺の分は?」

 食器を片しながら、幾ヶ瀬。

「あっ……」

 有夏がしまったと顔をしかめた。

 ないんだぁ、と恨みがましい口調で幾ヶ瀬がアイスを眺める。

 自分の分しか買っていないのは意地悪ではなく、有夏が天然なだけだと分かっているから、目元は勿論笑っている。

「んじゃ、一口食べ」

 差し出そうとするのを手を振って止める。

「いいよ、いいよ。じゃあさ、有夏。罰としてそのアイスをいやらしく舐めてみようか」

「その発想、お前はホントに気持ち悪いな……って喜んでんじゃねぇよ」

「ふふ……有夏にそう言われたらゾクッとクル」








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