「バイオの対戦ものにあたりなし」のジンクスは破れず 『バイオハザード RE:バース』プレイ感想

小一時間で飽きる対戦ゲーム

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「バイオハザード」シリーズの対戦ものに当たりなし、とは言われるが、それでも『バイオハザード RE:バース』に関しては期待しないわけにはいかなかった。なんせ本作は、シリーズの25周年記念タイトルだったのだから。

本来であれば、本作は『バイオハザード ヴィレッジ』発売同時にサービス開始予定であった。しかしそれから1年も延期を行い、ようやくアーリーアクセスが開始となったわけである(正式リリースは2022年10月28日)。

かなり暗雲が立ち込めているタイトルではあるものの、やはり遊ばないわけにはいかない。なぜなら私は(そういう部分を含めて)「バイオハザード」のファンなのだから。

歴代人気キャラがクリーチャー化する尖ったシステム

『バイオハザード RE:バース』は、「バイオハザード」シリーズに登場するクリス、レオン、クレア、エイダなどの人気キャラクターを操作して対戦するゲームである。開発は『バイオハザードレジスタンス』を手掛けたNeoBards Entertainmentが担当している。

なお本作は、『バイオハザード ヴィレッジ』もしくは『バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション』を購入すれば無料で手に入る。ただし、バトルパスの課金要素が用意されている(詳しくは後述)。

ルールの基本は6人によるデスマッチ。各キャラがやられると「クリーチャーリベンジ」が発生し、今度はスーパータイラントやジャック・ベイカーなどのクリーチャーとなって戦うわけだ。

歴代の人気キャラクターたちが戦う時点でかなり賛否が分かれるのに、そのうえクリーチャーになるのはなかなかどうかしている設定だ。とはいえ、おもしろければこの程度の問題には目をつむれるだろう。

実は本作、2021年時点でβ版が配信されていた。そのときはクリスが異常に強く、エイダが弱すぎるといったバランスの崩れ具合も問題だったが、30分も遊んだら飽きるような底の浅さに驚かざるを得なかったのである。

1年の延期を経て「RE:バース」はどう変わった?

とはいえ、さすがに1年も延期しただけあって『バイオハザード RE:バース』も進歩している。

まず、ゲーム内ポイントを使ってキャラの強化が可能になっている。REコインと呼ばれるアイテムをアンロックして装備すると、最大HP・スキル・攻撃力などが強化される。何を装備するかによってキャラ性能の方向性が変わるというわけだ。

また、ポイントでは衣装、勝利ポーズ、武器スキンなどもアンロックできる。このあたりは定番だが、対戦ゲームのモチベーションとなるので重要だろう。

そして、バトルパスが追加されている。バトルパスは無料・有料の2種類が存在し、前者はキャラ強化に関わるものが中心、後者はスキンやチャームなどが用意されている。

今後はアップデートも予定されており、ハウンドウルフ隊やライカンといったキャラ・クリーチャーも追加予定とのこと。このように、本作は対戦ゲームとしてはかなりまともになったように見える。表面だけ見れば。

対戦ゲームに必要なものがほとんど存在しない

実際に『バイオハザード RE:バース』をプレイした私は絶句した。確かに昨今のサービス運営型タイトルらしい体裁は整えているものの、肝心の内容はほぼ進化していないのである。

エフェクトや効果音の地味さはかなり問題で、敵を倒しても爽快感がまったくないし、やられてもなんとなく死ぬので悔しくもなんともない。おまけに対戦TPSなのに歩き撃ちもできないのである。

ゲームバランスもマシにはなっていると思われるが、クリスかエイダ以外を選択する必要が感じられない。クリスは相変わらず無敵になるスキルが飛び抜けて強いし、エイダはヘッドショットで敵を一撃で倒せるのでどうかしている。

また、トドメを刺したプレイヤーだけにポイントが入るので、漁夫の利を狙うのが最も有効な戦略となる。ゆえに正面から敵と撃ち合うのは不毛だし、やられたあと雑魚クリーチャーであるモールデッドになってしまった場合、さっさと自爆したほうがマシ(あらがってもたいてい時間の無駄)なのもつらい。

つまり、『バイオハザード RE:バース』はひたすら気の抜けた撃ち合いをしてなんとなく殺してなんとなく死ぬだけで、見るからにバランスも悪いので真面目にプレイする必要は皆無なのである。褒める部分があるとすれば、クリスのデフォルトグラフィックが『バイオハザード7 レジデント イービル』のものではなく、『バイオハザード ヴィレッジ』の姿になったくらいだ。

試合終了後、キャラクターが棒立ちしているのも作品の格を落とす。勝利ポーズを獲得すればこれを変えられるが、デフォルトでもそれなりに見られるようなものにすべきだ。

確かにβ版よりはマシになっているが、小一時間で飽きる程度の進歩である。予定されているアップデートが完遂するまでプレイヤーが残るとはとても思えない。11月には大半のプレイヤーがいなくなっているのではないかと懸念している。

ましてや昨今は『スプラトゥーン3』や『オーバーウォッチ2』といった注目の対戦シューターが出たばかりなわけで、あまりにも差がつきすぎていて悲しくなってくる。

2022年において“おまけの対戦ゲーム”はある意味で貴重

正直、リリースされる前から『バイオハザード RE:バース』がおもしろくならないのは予想できていた。そもそもいまの時代、何かの作品のおまけとして対戦ゲームを用意しても、それでユーザーが満足するわけがないからだ。

逆に考えれば、本作はある意味で稀有な存在である。かつてのXbox 360・PS3の世代であれば、ひとり用キャンペーンを重視したような作品でもたいてい対戦要素がついていた。そしてそれはたいていおまけ程度の内容であり、『バイオハザード RE:バース』はそれを彷彿とさせるような懐かしい味わいがあるのだ。

『バイオハザード RE:バース』は、いわば田舎の珍味だ。小一時間味わうくらいならば、いい思い出になるだろう。


渡邉卓也(@SSSSSDM)はフリーランスのゲームライター。『バイオハザード5』の対戦モードは一方的に相手をボコボコにできるのでけっこう好きだった。

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