ボケてもきっと忘れないよ!Vol.3(恐怖の洗礼AZ-1)
脳裏に焼き付いたクルマの思い出をだらだら書くだけの「ボケてもきっと忘れないよ!」もVol.3です。
思い出して書くだけなので楽ですね。
その思い出ですが、今回紹介するクルマは幾多の恐怖体験をもたらしてくれたバブルが生み出した伝説のクルマ、当時走る棺桶なんて言われた「マツダAZ-1」です。
走る棺桶というかナンバー付きおもちゃ
これは僕が昔勤めていた会社の取引先の担当が乗っていたクルマで、当時プライベートでも良くしてもらっていたのでちょくちょく遊んでいました。
そんなある日遠出をすることになりお客さんのAZ-1に乗せて貰うことになります。
今回は自分では運転せず助手席の話なのですが、実は一番脳裏に焼き付いてるクルマです。
ざっと地獄車もといAZ-1を説明すると、バブルで我を忘れたマツダが調子に乗ってオートザムというブランドを立ち上げて作った軽スポーツカーです。
全長3mちょっと重量720kgのボディに64馬力の直列3気筒のターボエンジンをミッドシップにマウントしており、もちろん2シータでドアはまさかのガルウィングと、本気なのか冗談で作ったのかよくわからない、考えようによってはスーパーカーと言えなくないか?と脳がバグるようなスポーツカーでした。
初対面からカマしてくれました。
まぁ現役当時でもあんま売れてなかったので見ることも少なかったのですが、まさか乗ってる人が居るとは思わなかったので「どこか遠出する時はAZ-1で行きましょう!」と頼んだのが悲劇の始まりでした。
当日現れたそのクルマは結構走り込まれており、そのボロさ加減は風格さえ漂うほどでした。
では早速と中途半端に重いガルウィングを持ち上げて乗り込もうとすると背中に衝撃が!助手席のドアのダンパーがヘタっていたので、重力のパワーをまとったドアが僕の背中を襲ってきました。
地味に痛いよこれ。
「そうそう、ダンパーへたってんですよぉ」と笑いながらドアの根本にソケットレンチを噛ませドアが落ちないようにしてましたが、これはこれで不安感を煽ります。
ドアの先端が断頭台のように刃が付いてたらザムっと僕の体真っ二つですよ、そんな事ありえませんが有り得そうなオーラを放つマシンAZ-1。初っ端から嫌な予感全開です。
正直遅いわりにゃ怖い。
早速走り出すんですがたった660ccのエンジンのくせに真後ろから唸り声を上げうるさいです。そしてなんだか熱いです。
あれほど狭いと感じたCR-Xがサルーンだったのでは?と思えるほど息苦しく狭いコクピット。挙げ句エアコンも故障で効かないので窓を開けようと思うんですがこの窓も小さい、酔って吐きそうになっても頭も出せないほどの小窓です。もし走行中に酔ってしまったらガルウィングドアを開けてのエクストリームゲロしか手段は無いです。
灼熱と騒音で悶絶する僕をよそにひたすらスロットルを開けるドライバー、メキメキミシミシとエンジンの唸りとともにボディも唸ります。怖いぜ!
正直ターボとは言え660ccの64馬力なので速くはないです。しかしアホほど低いので割りと、いやかなり速度感はあります。RX-7も大概アイポジションが低いんですがこれは台車に座ってる感覚なので更に怖い、というかこれ本当に台車にエンジン付いてるような感覚ですね。サスも仕事してるのかどうか怪しい。
とは言えしばらく乗ってると慣れてきたのか横乗りでも面白くなってきます。こりゃどこかのタイミングで運転させてもらおうかなぁとか思ったり。
やっぱ乗らない(いや乗れない)
目的地は割と遠いので高速道路に上がるんですが、ここで更にワンクラス上の地獄を味わいます。
速度が上がるに連れ予想通り会話ができないほどにうるさく熱い、とにかく背後が熱い、カチカチ山ですよ。たぬきに親近感湧きましたよ。
あと他人の運転ってやっぱ自分とリズムが違うので怖いんですが、そこで飛ばされると更に怖いです。
悪い事にこの人がそのよく飛ばす人で、バシバシアクセル踏んでガンガンハンドル切っていくんですよ、まぁ運転は上手いほうなので死なないだろうなと思ってた時でした。
走行車線から追い越し車線へしなくてもいいのにスパッと車線変更をして、猛烈に挙動が乱れたわけですよ。スパッとと言ってもまぁ素早い車線変更レベルだったんですが、僕は見逃しませんでした。奴は確実にカウンターを当ててましたね。
なんで車線変更でカウンター当ててんだと脳内の叫びを飲み込み「いやいや、そう言う運転もういいですよwww」と牽制したつもりだったんですが、当の本人も結構焦っていて「いやぁスピンしかけましたねww」と苦笑い、わざとじゃなかったなんてやっぱこのクルマ怖い。その瞬間運転させてくれって言う気はなくなりました。
助手席に座ってるだけでこれだけメンタル削ってくるクルマも珍しいです。
走る棺桶伝説
ミドシップは限界は高いのですがスピンすると手がつけらない特性が有るんですが、AZ-1はステアリングギアレシオ2.2のクイックなハンドリングに、2.2m程度のショートホイールベースが相まって、限界の敷居が低いナチュラルに冷や汗がかけるハンドリングのようですね。
実際このクルマがどれほど大事故を起こしていたのかわかりませんが、横に乗ってるだけでもその類まれなる際どい実力は実感できます。
走る棺桶のうわさは伊達じゃないね。家路についた時生きて帰れて良かったと心底思いました。
無事生還した後、自分のRX-7(FC3S)を運転すると、圧倒的な信頼感としっかり仕事をする(様な気がする)カヤバのサス、なめらかに回るロータリーエンジン、素晴らしい!
日頃僕のRX-7を狭いとか煩いとか文句を言ってる会社の先輩や同僚に一度AZ-1を味わってほしいものです。これに比べたらどんなクルマも極上ですね。
家族に狭いとか乗り心地が悪いとか言われてるスポーツカー乗りの皆さん、一度家族をAZ-1に乗せてあげましょう!
バブルが生み出した熱狂のスポーツカーと言えなくもないAZ-1、あの時代の空気に乗って勢いだけで作ったようなAZ-1、確かにあのカートの様な乗り味はハマると病みつきになるんでしょうね。
画像出典Wikipedia