【レビュー】『LOST EPIC(ロストエピック)』はクソゲーではないが個性にも乏しい微妙ゲーだった
「アースウォーズ」開発陣の新作に切り込む。
『LOST EPIC』とは?
元は定価2000円だった代表作「アースウォーズ」をSwitchでなんとワンコイン価格(500円)販売するという思い切った商品展開、そしてその価格にそぐわないクオリティとボリュームで話題になった、株式会社ワンオアエイトが送り出す、新たな横スクロールアクションRPG。
前置き
筆者はSwitch版を購入し、約15時間掛けて一周目をクリアした段階。
以下からは早速、ストーリーに関するネタバレ無しで本作に対する正直な評価を書いていきたい。
システム
良くも悪くも量産型のソウルライク。
「デモンズソウル」「ダークソウル」などを筆頭に、フロムソフトウェアが開拓してきた難易度設計や成長システム、世界設定やテキストのクセ等を模倣した所謂ソウルライクゲーだ。それプラス2Dアクションゲームということで、地下や上空など立体的に繋がるマップを移動し、隠されたアイテムを集めたり、新スキルによってこれまでは通れなかった道を拓いたり、プチダンジョンを攻略するといったメトロイドヴァニア色も付け足されている。
操作感については一つ前の作品「アースウォーズ」に限りなく近く、経験者であれば開始5分も経たない内に馴染める筈。世界観を西洋ファンタジー風に刷新した「アースウォーズ アナザーバージョン」と言っても過言ではないくらい、操作感についてはそのままアースウォーズだ。
ソウルライクらしく主人公の行動はスタミナ性であり、敵は雑魚まで一体一体のステータスが高く、パリィや回避を駆使した丁寧な戦闘が必須となる。ボス戦に関しても難易度は現代の平均的なゲームよりもやや高めであり、本家フロムゲー程ではないものの初見で勝つことは難しく、何度が挑んで倒せるくらいの設計に。
簡潔に表すと、敵をザクザク斬りながら蜘蛛の巣状のマップを隅々まで探索するゲーム。
難易度
・標準
・標準-1
・標準-2
初期状態ではこの3つの中から選択可能。
ちなみにゲーム開始後であっても専用のオブジェクトにアクセスすることで自由に変更できる。
この三択の中では難易度を上げるメリットが存在しておらず、ただ敵のステータスや消費スタミナが上がって戦闘が長引くというデメリットしかないのは残念な仕様だった。後半からは雑魚でもノックバックせずに強打を連発してくるようになるので、特別な理由でも無い限り初めから「標準-2」固定で良いと思われる。
筆者も初めの頃は「標準」で遊んでいたが、経験値をほぼ貰えない雑魚敵相手にでも戦闘時間が掛かることがただただ面倒になり、後半に入ってからは「標準-2」に変更した。ひたすらマップ移動を繰り返さないといけないメトロイドヴァニア的な設計もあり、難易度を上げたところで道中の戦闘が長引くだけでゲームとして面白くなるようには感じられなかった。
また、ゲームの進行によって難易度を「+1」ずつ重ねることが出来るようになるが、この場合は取得経験値(アニマ)に変動は無く、「属性付き素材アイテムのドロップ率が5%ずつ上がる」という地味なメリットにのみ留まっている。
段階的な難易度の上昇システムはフロムソフトウェアの模倣だと思われるのが、その割には実質イージーモード(標準-2)という選択肢が用意されており、ソウルライクとしての高難易度や手間を乗り切って欲しいのか、サクサクプレイして欲しいのか意図が掴み難かった。正直、「標準-2」が実装された状態で、何のメリットも無い「標準」をクリアしようという気にはならない。
仮にフロムソフトウェアのゲームに全て「イージーモード」が搭載されていた場合、今のように世界的に支持されていたのか? 開発には今一度よく考えて欲しいところ。マネするなら徹底的にフロムソフトウェアを真似して欲しいし、マネしないなら全てにおいて独自性を貫いて欲しいものだ。
軽快さがウリの2Dアクションというジャンルにおいて、行動の「スタミナ制」は邪魔でしかないというのに…。
成長要素
成長要素に関しては、敵を倒すと吸収できる「アニマ」という物質を休憩地点で消費してレベルアップし、それによって得られたスキルポイントを体力、筋力、信仰など各ステータスに自由に割り振るというもの。この点はフロムソフトウェアの丸パクリと言って差し支えないだろう。
加えて武器の強化やアクセサリーの作成、種類は少ないもののアバターのカスタマイズアイテムなど、一本のゲームとして普通に遊び応えがあるものが揃っている。
個人的には「経験値蓄積→拠点でステータスを買う」という風なシステムはその場でレベルアップする古典的な育成よりも手間を食う割に、どこか経済主義っぽい味気なさを感じて好きでないし、背景に厚い世界観の作り込みがあるフロムソフトウェアだからこそ様になっているだけで、他ゲーがパクれば単にゲームがつまらなくなるだけの仕様だと思っている。
ただ主観を差し置いて一般的に見た場合「本作の成長要素は全体的に極めて平凡、可もなく不可もなし」と言ったところか。
ミニゲーム
本作には一応、「釣り」や「料理」「栽培」といったミニゲームらしい要素もあるが、どれも充実感の演出の為に取って付けたようなもので、練り込まれてはいない。「タイミングに合わせてボタンを押す」という単調なものがほとんどであり、ミニゲーム全般1、2回触わるだけで飽きてしまった。
グラフィック
過去作「アースウォーズ」からの進化が見られる。
もはや見飽きるほど使いまわされた西洋ファンタジーの画風は個人的には嫌いな部類だが、グラフィックの緻密さやバリエーションの多さ、アニメーションの細かさなど、本作のグラフィックは過去作アースウォーズから全体的に進化を遂げていると言える。
特にアースウォーズの経験者であるほど、戦闘関連のアニメーションが細かくなったことに感心できるのではないか(価格設定の問題もあるとは言え)。
キレ良く動くアニメーションや、ちょうどよく派手なエフェクトによって、アースウォーズ時代からの「ザクザク斬る爽快感」には一層磨きが掛かったと思う。
他の有名2Dゲームにはアニメーション面でまだ一歩届いていない部分があったり、NPCが喋る際の口の動きが不自然だったりと細かく見れば粗は見付かるものの、十分今後の作品にも期待できると思わされる出来だった。
ストーリー
本作のストーリーからは開発陣の迷走が感じられた。
フロムソフトウェアのゲームを数本遊んできた身としては、明らかにそれらを意識した二番煎じなストーリーは底が浅いししょうもない。キャラクターの台詞やアイテムの説明文まで含め、特に言及するほどのものも見当たらなかった。
ちなみに、「人を喰らう神々と戦う」という軸となる構想自体は決して悪くない。ただ、本作はそこに説得力や深みを出すだけのテキストや描写力に欠いており、そのせいで無理に背伸びをして格好つけたような安っぽさが全体に漂っているように思う。
「アースウォーズ」のストーリーからはこうしたある種の稚拙さは感じられなかったし、雰囲気も良く、展開も面白かった。
サウンド
可もなく不可もなく。
本家フロムソフトウェアのゲームや、同じく2Dソウルライクである「エンダーリリーズ」ほどの重厚感、悲壮感は出せていないように感じたものの、いずれのBGMにしても当たり障りなく絵面を補強してくれていた。
特に感動したり名曲だと思うものは見当たらなかったが、そもそもゲーム自体の個性が非常に薄い作品なので、ある意味ではこれ以上なく適切な選曲だったのかも知れない。
パフォーマンス
パフォーマンスに関しては極めて良好。
Switch版であっても常時60fpsという安定したフレームレートを誇り、ロード時間についても全体的に早く、待たされるということが無い。そして、約15時間プレイした限りで処理落ちやエラーを起こすことは一度たりとも無かった。
ゲーム的には残念な部分が目に付いた本作だが、パフォーマンス面では間違いなく素晴らしいものになっている。ファーストタイトル(任天堂のソフト)と比べても遜色ない程、かなり丁寧に最適化されている作品だと言える。
▼ 海外有志によるフレームレート解析動画。
ボリューム
2000円のゲームにしては多め。
筆者の場合、約15時間で一周目をクリア。
スタッフロール後の表記によると、初めに到達できたのは「Cエンド」だったとのこと。
クリア後はデータを引き継いだままエンディング前の時間軸に戻り、そのまま遊び続けられるという親切設計だ。
そして「心力」というストーリー進行に関わるステータスを上げて再びエンディングを迎えようとしたところ、前回は無かった新たなボス戦に発展。どうも真エンディングルートに突入したようだった。しかし、「更にストーリーを進めるには、一度行ったあらゆるエリアを再訪してアイテムを収集しなければならない」という露骨な作業要素が始まった為、もともとそこまでハマれていなかったことも災いし、モチベーションが尽きてしまい断念。(もともとのエリア数がかなり多いというのも作業感の原因に)
エンディングは複数存在しており、やり込んで全種類のエンディングを見る場合は30時間以上遊べる模様。
筆者としては一週目の中盤辺りで既にお腹一杯になってしまった為、一周クリアするのがせいぜいだったが、プレイ時間で考えた場合、定価約2000円の2DアクションRPGとしては十分なボリュームを持っていると思う。
総評
ポイント
・敵をザクザク斬りながらマップを探索するソウルライク+メトロイドヴァニア。・アニメーションやグラフィックなど細かな部分は、過去作品「EARTH WARS」から順当に進化。
・世界観やストーリーは他ゲームからパクったような、しかも稚拙な内容で、魅力を感じられなかった。
・Switchへの最適化が丁寧に行われており、パフォーマンス面では申し分ない。
・全体的に、プレイしていて「面白さ」よりも「作業感」の方が勝る感覚があった。
そういうわけで、本作『LOST EPIC(ロストエピック)』の個人的なおすすめ度は…
50点/100点満点中
決してクソゲーという程ではなく、細かに見みれば光る要素もあるものの、プレイしていて率直に「つまらない」と感じる瞬間が多かった個人的に残念なゲーム。
下手にソウルライク化させて複雑にしようとした弊害か、移動や戦闘、ギミックに逐一ストレス要素が挟まるようになり、そのせいで全体にそこはかとない作業感が漂っている。
ただ、「世界観やストーリーに魅力が無くても良いので、何となく敵をザクザク斬って走り回る横スクロールゲーがやりたい!」という気分の時は楽しめると思うので、期待せずに購入するという選択肢は十分にアリ。
正直、買う前から世界観やゲームシステムにあまり魅力を感じていなかったが、以前プレイした「アースウォーズ」が面白かったこともあり、今回はほとんど応援の気持ちで購入した。
かなり辛めのレビューになってしまったが、製作元であるワンオアエイトの「面白いゲームを作りたい」という熱意はロストエピックからも確かに伝わってきたので、今後も暖かく見守っていきたい。
今回はやけにSS(スクリーンショット)が少なくなかったか?
Switch本体のTwitter(現X)連携機能が削除されたせいで、最近のSSを持ってこれなかったんだよ。
不甲斐ないな…。
同じくワンオアエイトが手掛けた「アースウォーズ」のレビューはこちら。
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