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Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
https://potofu.me/hortensia

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Liar! -前編-

やっと巡って来た牧野と会える週末。
珍しく牧野から待ち合わせの時間と場所を指定された。
呼び出されたのはとあるカフェ。
先に来ていた牧野は店の一番端っこの、窓側の席に座ってた。
ざわざわして、落ち着かない店の雰囲気。
牧野から発せられる妙な気配に、俺の心もざわざわする。

「もう西門さんの事好きじゃない。
愛してないの。
別れて下さい。」

なんだ、その安っぽいドラマみたいな台詞は?
全然俺の方見ないし。
言わされてる感満載。
何があったんだよ?

そうは思っても、好きな女にこんな事言われたら、胸にはずきんと痛みが走るし、心臓もギュッと縮み上がる訳で。
必死に冷静を装って、目の前のコーヒーカップに手を伸ばす。

「ふーん。
つくしちゃんは、俺と別れたいと。」
「そう。」

俺の前には牧野の横顔。
車と人が行き交う道路しかない景色の何を見ているのかは定かじゃないけど、ずっと視線は外に向けられてる牧野をじっと見詰める。

「理由は?」
「さっき言った通り。
もう好きじゃないの。」

嘘だ。絶対に嘘だ。
俺がそう信じたいだけか?
いや、そんな筈はないだろ!

「へえ・・・ いやに急な心変わりじゃん。」
「急じゃない。ずっと考えてた。」

それこそ嘘だろ。
お前、この前まで俺の腕の中で笑ってた。
あの時の笑顔は本物だった。
それくらいはこんな事態を招いてしまった俺にだって分かってる。

牧野は頑なに俺を見ない。
そんなに外ばっか見てたら、首痛くなるんじゃねえの?と思う程に、顔を外側に向けている。
怒ってるような、泣かない為に気合を入れているような、硬い表情で。
こんな横顔でも綺麗だな・・・と思ってしまう程に俺はこの女に惚れてる。

「で? 誰に何を言われた?」
「っ・・・!」

一瞬だけ、チラっと俺を盗み見て、また顔を背けた。
どうやら図星らしい。

「お前ね、演技下手過ぎだから。
俺にそんなの見抜けないとでも思ってんのか?」
「・・・・・・・演技じゃない。」
「じゃあ、本気だってのか?
本気で俺のこと嫌いになったのなら、俺の目を見て言ってみろよ。」

出来ないだろ?
目を合わせたら、お前の本当の気持ちが伝わってしまうから。
お前は俺と目を合わせて上手に嘘なんかつける女じゃない。

口を真一文字に引き締めて、大きな目を見開いて。
やっと俺と向かい合った。
でも牧野は口を開かない。
いや、きっと開けない。
俺は怒ってないんだと知らせる為に、表情を和らげて、そっと笑い掛けて見せる。

「なあ、俺ってそんな頼り無いのか?
誰に何を言われたのかは知らないけど。
独りで解決しようとしないで、俺と2人で道を模索しようって、そうは思えないのか?」

そう言ったら、見開いた目から、ぽろりぽろりと涙が零れ落ち始める。

「あー、もー、だからやだったのに・・・」

また顔を背けて、手の甲でぐいぐい顔を拭ってる。
どんだけ化粧が剥げるのか見物だ・・・と思って笑いたくなる自分と。
ほら、やっぱり嘘だったろ・・・とホッとする自分がいた。
牧野は今度は盛大に鼻をすすってる。
だからポケットからハンカチを取り出して、手元にぐいっと押し付けた。

いつかお前が俺にプレゼントしてくれたハンカチ。
ちゃんと大切に使ってる。
これ見たら、お前だってそれに気付くだろ?

「ごめ・・・」

俯きながらそのハンカチを目元や鼻に押し当てて、水分を吸わせてる。
牧野が落ち着くまで、俺はそれを見守ってた。
ウェイトレスを呼んで、冷めきってしまった飲み物の代わりに、温かなミルクティーとコーヒーをもう一杯ずつオーダーする。
それを飲ませると、やっと牧野が話し出した。

「西門さんが今度お見合いするっていう・・・
旧華族の本郷なんちゃらとかいう人の・・・」

あー、そっちか!
西門の方はもう説得済みなのに。
そんな外野から横槍が入るとは。

「見合いはしない!
あっちから勝手に言って来たことで、とっくに断り入れてる!」
「だってあたしはそんなの知らないし!」
「いちいちお前に、どこからの見合いを断った・・・なんて話さないだろ?
お前だって聞きたくないだろうが!」
「聞きたくないけど、知らないと対処のしようもないでしょ!
兎に角、その本郷なんちゃらさんのお家の人ってのがあたしの所に来たのよ。
で、色々捲し立てて帰って行ったの!」
「その時点で俺に言えよ!」
「だって、もう結婚が決まってるような話だったし!」
「だったら余計に俺に話せよ!
俺の事と、その見ず知らずの人間と、どっちを信じるんだよ?
そんなの考えなくたって、分かる事だろ?」
「分かんなくなっちゃったから、こんな事になってるんじゃない・・・」

勢いが途端にダウンし、また泣きそうな風情の牧野。
俺ははあ・・・と溜息を吐く。

「悪かったよ。」
「・・・・・・」
「お前を守り切れなくて悪かった。」
「・・・・・・」

本郷家は政界・財界にも繋がりの多い旧家だ。
あちらから持ち込まれた話を、早々に断ったのも良くなかったのかも知れないし。
俺の事もしっかり身辺調査をして、牧野という存在があると知った上での申し入れは、勝算があっての事だった筈で。
あちらの親の看板なのか、お嬢様のプライドなのかは分からないが、何かに傷が付いたのだろう。
牧野は牧野で、コンプレックスの塊だ。
一般庶民では駄目なのだと、散々道明寺楓にトラウマを植え付けられ、司と別れさせられた過去がある。
そのせいで、西門のように歴史と伝統を重んじる家に嫁ぐ・・・だなんて、道明寺に嫁入りするより無理・・・と思い込んでる。
それを時間掛けて口説いてるところだったのに!
本郷の誰だか知らないが、今すぐ殴り飛ばしてやりたい気分だ。
色々思うところはあるけれど・・・
今日のところは傷付いた牧野のケアをする方が優先だな。

「つーくしちゃん。」
「つくしちゃん言うな。」

こんな時でもそう突っかかって来る牧野にくすりと笑ってしまう。

「ちゃんと話したいから。
ここじゃないところ、行かねえ?
俺達大分好奇の目に晒されてるし。」
「ふえ?」

外を見たり、泣いてばかりいた牧野は気付かなかったらしいが、店の端っことはいえ、女が泣いたり、口喧嘩したりしてるこのテーブルは、ちょーっと注目されている。
騒がしくしてすいませんね・・・の意を込めて、様子を窺ってる2~3人のウェイトレスのお姉ちゃんにちらっと微笑みかけたら、キャーと小さな叫び声が上がった。
オタオタしている牧野を引っ張って店を出て、車に押し込む。
そのままいつも2人で時間を過ごすホテルの部屋に連れ込んだ。
部屋に入ってすることと言えば、話よりも先にキス。
キスの次は、ベッドの上での愛の確かめ合い・・・となるのが自然の摂理で。
夜中に我に返った牧野から、雷が落とされるまで、熱くて幸せな時間を過ごしたんだ。


________________



バレンタインSSなのに、あんまり甘くないなー(苦笑)
最後には甘々な2人になれるように頑張ります!
泣いちゃったつくしにエールを送ってやって下さいね。
続きは明日15日0時に更新予定です。

大きな地震がありましたね。
東北の方は余震も続いているみたいで、不安な夜を過ごされていらっしゃるかと思います。
冬なので停電で暖が取れなくなってしまうのも心配ですね。
これ以上被害が大きくならず、落ち着く事を願っています。


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Liar! -中編-

いつの間にか寝てしまっていたらしい。
気が付いたら枕の上に頬杖を突いた西門さんが、ニヤニヤしながらあたしを見下ろしていた。

「やっと起きたか、眠り姫。」

そう言われて、唇にむちゅっとキスされた。
寝惚けていて、何が何だかよく分からない。

んー、何だっけ・・・?
どういう状況、これ?

「お前、もしかしてよく寝れてなかったんか?
くーくーいびき掻いてたぜ。」
「う、嘘っ!?」
「じゃ、まあ、可愛い寝息が聞こえてたってことにしといてやるよ。」

そうは言いつつも抑えた笑い声が響いてくるって事は、本当にいびきを掻いていたのかも・・・?
いやいや、それよりも!
ここはどう考えてもホテルのベッドの中で。
隣に裸の西門さん!
ヤバい。離れないと、何かされちゃう!
いや、朧げな記憶を辿れば、何かもう散々されちゃったような・・・

慌てて身体をずらして、西門さんから少し離れてみる。

「どうした?」
「え? いや、あの・・・」
「あ、分かった。
お前、腹減ったんだろ。
まあなー、もう真夜中だし。
レストランもクローズしてるから、ルームサービスでいいだろ?」
「へ? あ、うん・・・」

そう言われてみれば、お腹は減っているみたい。
喉もカラカラだ。
ふうん、もう真夜中なんだ・・・
って、何でこんな事になってるの?

「シャワー浴びてくる。お前も一緒に入る?」
「いやいやいやいや、ダイジョブ・・・ 遠慮します。お一人でどうぞ。」
「そうか? 2人で入っちまう方が手っ取り早くね?」

そう言って、また濃厚なチューを落とされ、ぷはあと息を吐き出した。
それを見て西門さんはぷっと吹き出してる。
「ったく、俺の眠り姫は色気がねえなあ。」なんて言い残して、ベッドを降りていく。
うっかりそれを目で追おうとして、慌てて顔を背けた。
だって、絶対全裸じゃん、あのヒト!
自分のボディに絶対的な自信をお持ちの様で、こういう時裸でいる事に全く頓着が無い。
あたしからすると、ちょっとくらい恥じらいってもんを持ったらいいんじゃない?って感じなんだけど・・・
それに2人でシャワーだなんて!
すんなり出て来れないでヘロヘロになる予感しかないもの。
お断りに決まってる!
ドアがぱたんと音を立てて閉じて、広々としたベッドの上で1人になった。
柔らかで軽いドゥヴェに包まれながら、目を瞑って、記憶を逆再生する。

今は真夜中で、ここはホテルのベッドの上。
その前は、何か色々恥ずかしい事をされてたような・・・
で、更にその前は、車でホテルまで連れて来られて・・・
車に乗る前は何処にいたかって言うと・・・、カフェだ。
カフェで待ち合わせして、あたしは散々泣いて、文句言って・・・
って、そーよ!
西門さんのお見合い&結婚問題だよ!
あたしはもうてっきり決まった話なんだと思ったから、お別れしなくちゃ・・・と決意して。
「もう西門さんの事好きじゃない。
愛してないの。
別れて下さい。」
って、嘘の台詞を口にしたんだ。
なのに、西門さんは「とっくに断り入れてる!」って言ってたよね。
「ちゃんと話したいから。」ってこの部屋に連れて来られたのに、あたし達、話なんか全然してなーい!
西門さんにこのベッドの上で色々されながら、何度も「つくしちゃんはもう俺の事好きじゃないんだもんな。」「愛してないんだろ?」なんて責められて。
求められるままに「あれは嘘だったの・・・」「好き・・・」「愛してる・・・」「ホントは西門さんの事愛してる・・・」とか言わされた!
うーーーーーわーーーーー!!!!!
思い出すだけで恥ずかしいっ!
大体さ、誰が悪いのよ、これ?
あたし、悪くないんじゃない?
そりゃ嘘吐いたわよ。
だって、そうしないとお別れ出来ないでしょ。
西門さんがいいところのお嬢様と結婚が決まったなら、すっぱりお別れして、送り出さなくちゃって思ったんだもん。
んー、でも、西門さんもちゃんとお断りしてたんなら、悪くないのか・・・?
悪者は、大分話を膨らませて嘘吐いてあたしに聞かせた、お見合いする筈だった相手の家の人???
あー、もー、何なのよーーーーー?

ベッドの上でジタバタしていたら、バスローブを纏った西門さんがドアの枠に寄りかかりながら、ニタニタ笑ってた。

「つくしちゃん、泳ぐならプールにしたらどうだ?
いやー、でも明日はちょっと無理か。
お前、プールに入れるカラダじゃねえわ、今。」

そう言われて慌ててドゥヴェの中を自分を見下ろすと・・・
そこら中に紅い跡!

「ちょっとお! 何よ、これー?」
「いやあ、いつになくつくしちゃんが情熱的だったから。
俺もちょっと燃えちゃって。」
「ふーざけんな、エロ門ー!!!!!」
「まあまあ。愛の証ってことで。」
「もおっ! バカー!!!!!」
「ハイハイ、悪かったって。
さっさとシャワー浴びてこないと、もうすぐメシ、来ちまうぞ。
そのまま食べたいってなら、俺はかまわないけど、俺達結構・・・」

みなまで言わせてたまるかっ!

「うーーーーー! ドア閉めなさいよーーーーー!」

枕を一つ力任せに投げ付けたら、笑い声と共に西門さんは消えてった。
もう溜息しか出てこない!
ずーんと重たい身体をベッドから引き摺り下ろして、シャワーを浴びた。
あちこちに跡があり過ぎて、もう絶対健康でいないと!と固く決意する。
だって、具合悪くなっても、病院にも掛かれない、こんな身体じゃ!

深夜にご飯を食べながら、一頻り西門さんに怒ってみたけど。
馬耳東風というか、柳に風って感じで。
全く堪えてないみたい。
逆に、本郷なんちゃらさんのお家の人とやらに1人で会った事とか、その人の話を聞いて信じ切っちゃったあたしは警戒心が無さすぎるって怒られて。
もっと俺を信用したっていいのに・・・とブツブツ文句言われるし。
つくしちゃんが俺に嘘吐くなんて、ショックだ・・・とか打ちひしがれた振りなんかしてくる始末。
この人、サラっとクールを装ってるけど、ホントは結構ネチネチしてんのよね。

「もうそれは散々嘘だったって言ったじゃない!」
「好きじゃない、愛してない、別れてくれ・・・の三段攻撃。
あー、俺のハート、チョー傷付いた!」
「何であたしばっかり責められなきゃなんないのよ?
そもそもよ、茶道西門流なんてお家に生まれてる西門さんが、庶民であるあたしと付き合ってるのが問題なんじゃないの?
あたしを選んだ自分に文句を言いなよ!
お付き合いする相手なんか選り取り見取りのくせに!
そうやって縁談だって幾つも持ち込まれてるんでしょ!?
庶民のあたしといる責任を自分で負いなさいよ!」
「ふーん、そうか。
俺を振っといて逆ギレか。」
「振ってないし、キレてもないもん!」
「振ったじゃねえか。別れてくれってその口が言ったろ?」
「だーかーらー、あれは!
西門さんの結婚が決まったんだと思ったから!」
「つくしちゃんの俺への気持ちはその程度なのな。」
「そんな事言ってない!
好きだって!
愛してるって!
言ってるでしょーーーーー!!!!!」

ニタァっと笑った西門さんを認めて、あ、しまった・・・と思ったけど後の祭りだ。

「へえ・・・ つくしちゃんは俺が好き。」

1人でうんうん頷いてるこの男、何なのよ?

「俺の事、そーんなに愛しちゃってるんだ?」

とーっても満足そうに、口角をくいっと上げて感じの悪い笑い顔を浮かべてる。
悪魔ってこんな風に笑うのかしら?

「ふーーーん。」
「・・・何よ?」
「いや、俺って幸せ者だなって思って。」
「それはようござんした!」
「お前、いつの時代に生きてんだよ? ホンット面白いな。」
「うっさい、エロ門!」
「今、何にもエロい事言ってねえ。」
「さっきあたしに散々したでしょ!」
「つくしちゃんだって俺の事、あーんなに求めちゃったくせに。」
「憶えてませんっ!」
「憶えてないっていうなら・・・」

強力な流し目攻撃と同時にドバッと妖しいフェロモンが放出される。
マズイ。ロックオンされてる!

「もう一度同じことしてみるまでだよな?」
「イヤイヤ、もう要らないし。
夜も遅いし。
あたし、疲れてるし・・・」

色々言ってみても、この人の手にかかったらあたしなんかひとたまりもない訳で。
そこからの事は思い起こすのも恥ずかしいので、記憶の底に封印することにする!!!


________________



あー、楽しそうだな、総二郎・・・
今夜もまだバレンタインのバの字も無いですね(苦笑)
申し訳ないです。
その場面は明日16日0時更新予定の後編にて!


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Liar! -後編-

見合いを断った本郷家からの嫌がらせのせいで、一悶着あった俺と牧野。
でもまあ結果、牧野の俺への想いを再確認できて一層愛が深まったというか。
こっちの顔がにやけちまうような熱烈な告白を聞かせてもらえて俺得だったんだけど。
ただ、俺の婚姻問題でこういう風に牧野を悲しませるようなことは、もう二度としたくねえし、されたくもねえ!
こいつは絶対嫌がるだろうけど、牧野が俺と将来を見据えた真剣交際中って、内外に広めちまえばいいんじゃねえの?
西門の方は、実はもう話が付いてるんだ。

牧野としか結婚しない。
他の女と結婚しろっていうなら、家を出て、全てを捨てて、牧野と駆け落ちする。
後はご自由に。
三男坊で、全く自分にお鉢が回って来るなんて思ってなかったのんびり屋の修三郎に家元を継がせるのか、分家から誰か引っ張って来るのかは知らないけれど、それはそっちで考えてくれ。
でも牧野を受け入れてくれるのなら、俺は一意専心、今迄以上に茶道にこの身を捧げて、西門流を背負っていく覚悟がある。
牧野とならそれが出来るから。
いや、牧野以外とは成し得ないから。
・・・的な事を、もうちょっと丁寧に、かつ凄味を効かせた台詞で宣言した。
一般家庭の、何の後ろ盾もない娘など・・・というありがちな批判も、花沢、美作、大河原が付いているという事でクリアだし。
何より、親父とお袋が拍子抜けする程すんなりと俺の言い分を受け入れたんだ。

「総二郎。茶を点てる上で一番大切なことが何なのか分かるか?
それは心だ。
どんなに流れるような美しい手前で茶を点てたとしても、心が伴わなければ何の意味もない。」
「分かっています。
その心を満たす為に、俺には牧野が必要なんです。」

何を甘い事を・・・と、鼻であしらわれるかと思っていたのに。
目の前では親父とお袋が目線で会話している。

何だ、この西門家に似つかわしくない雰囲気。
あんたら冷え切った仮面夫婦なんだろ?
互いの義務を遂行するために『家元』と『家元夫人』をやってるんだろ?
そんな親父に『心が伴った茶』を説かれるのも腹立たしいんだけど。
あんたの茶は、欺瞞の上に成り立ってるじゃねえか。

「宜しいんじゃないですか、あなた。」
「・・・・・・。」
「色んな女の方と浮名を流す若宗匠・・・よりも、ひとりの方への気持ちを貫き通す息子の方が私は嬉しいですわ。」
「・・・皮肉か?」

苦虫を噛み潰したような顔した親父の隣で、お袋がうふふ・・・と笑っている。気持ちわりい。

「お家元が仰ってる『心』も、このところ落ち着いているようですし?
それは牧野さんという存在があっての事なんでしょう、総二郎さん?」
「そうです。」
「それで?」
「は?」
「牧野さんご本人のお気持ちはどうなんですの?
こんな面倒な家に来て下さるのかしら? 」
「・・・それはまだ、色よい返事はもらえていないですが。
これから時間を掛けて、ちゃんと理解してもらって・・・」
「何だ、まだなのか。」
「ですから!
牧野にしたらここはとても気軽には嫁げないような家なんですよ。
そこに入るとなったら、色々覚悟も時間も必要なんです。」
「案外、及び腰なんだな、総二郎。
お前はもっと傍若無人な性質なのかと思っていた。」
「相手のある事ですから。」

ったく、自分の息子を何だと思ってるんだ?
俺は己の気持ちだけでオンナを引き摺って突っ走ってく、暴君だとでも思われてんのか?

「そう言う事ですから。
今後見合いは一切しません。
どんな相手からのものも受けずに断って下さい。
見合いの話が来たと知るだけで、心穏やかでいられなくなるような女なんです。」
「あら・・・、総二郎さん、ちゃんと牧野さんに想われているのね。」

あったり前だろ?
そうじゃなきゃこんな事言い出さねえよ!

「あなた、宜しいんでしょう?」
「・・・ちゃんと色々整った時にまた話をしに来なさい。」
「それは牧野との事をお許し頂けたということですか?」
「暫く時間をやると言ってるんだ。」

というようなやり取りがあって。
一応家の方には話は通ってる。
あとの問題は牧野の気持ちだけって事だ。
そこに要らぬ波風を立てて来たのが本郷だったというワケ。
でもこのままだといつ第2の波風、第3の波風がやってきてもおかしくない。

俺なー、イイ男だから、断っても断っても狙われちまうんだよ、つくしちゃん。
その為にはやっぱりちょっと手を打たないと、な?


今年のバレンタインデーは折よく日曜日だった。
俺は土曜の夜から牧野といつものホテルの、お気に入りのスイートルームにいて、日付が変わった瞬間に牧野の手作りチョコ、その後牧野自身を美味しくいただく・・・という、最高に甘ーい一夜を過ごしてた。
朝になり、牧野の妙な叫び声が部屋に響いてくるので目が覚める。

あ、バレたらしいぞ。

1人ベッドの中で笑いを堪えた。

「に、に、に、西門さんっ!
ちょっと! 大変っ!」
「んー、どした?
どこかに隕石でも落っこったか?」
「こ、こ、こ・・・」
「ニワトリの物真似?」
「これーーーーー!」

目の前に突き出された牧野のスマホ。
その画面にはネットニュースの記事が表示されている。
タイトルは・・・
『熱愛スクープ!
F4 西門総二郎のお泊まりデートを本誌記者が目撃!
茶道界のプリンスと一流商事美人秘書との真剣交際!』
写真の牧野は一応顔にはぼんやりスモークが掛かってるような加工がされてる。
でも俺が満面の笑みで牧野を見下ろしてて、それをうっとり見上げてるってのが誰にも一目で分かるショットだ。

「お、美人秘書だって。
良かったなぁ、つくしちゃん。
でも顔出てねえから、美人が伝わんねーなこれ。」
「何なのこれっ?」
「パパラッチされちゃったみたいだなー。
俺ってそういうののターゲットになっちまうんだよ。
司だってこないだ何かに載ってたろ?
F4ってそういう立場なの。」
「なんで全然驚かないの? 知ってたのっ?」

目を丸く見開いて慌てまくってる牧野は、とても『美人秘書』には見えない。
何だっけ? こういう生き物いるよな。
あ、ミーアキャットだ。

「まあな。そういうのってさ、当事者には掲載前に一応知らせが来るんだわ。
まあ、もう雑誌刷っちゃって、発売止められませーんみたいなタイミングなんだけど。
ネットニュースは早いなー。
因みに雑誌は明日の月曜発売な。」
「あたしには何の知らせも来てませんけどっ!」
「俺は顔も名前出てるけど、お前は出てないから、出版社も特に連絡しなかったんじゃね?」
「あ!ん!た!が!あたしに言うべきでしょうがーーーーー!」

あー、お怒りだ、お怒りだ。
でもそれを見てても俺は笑ってしまう。
悪いな、牧野。
俺、お前に嘘吐いてても、全然胸痛まねえんだよ。
それがお前を手に入れる為ならば!

「何で怒ってんだよ?
ホントの事なんだから別にいーじゃん。」
「全然良くないっ!
あたしは西門さんと違って一般庶民なのよ!
こーいうので騒がれるのはぜんっぜん嬉しくないの!」
「俺だって別に喜んではないぜ?」

いや、それも嘘か。
ほくそ笑んでるが一番正しいところ。
この記事、俺の仕業だし。
出版社に話持ちかけて、俺に都合のいい形の記事にしてもらってる。
勿論西門にも、牧野が勤めている事で対応が必要になってしまうであろう美作商事サイドにも、きっちり事前に話は通してある。
あきらには「程々にしといてやれよ・・・」とお兄ちゃま目線で小言を言われたが。

「じゃあ何でニタニタしてんのよー!?」
「晴れて公認の仲になれたから?」
「はあっ?」
「親父とお袋がさー、お前に一度挨拶したいって言ってんだけど。」
「そ、そんな心の準備がっ!」
「別にとって食ったりしねえって。
不肖の息子がいつもお世話になってます的な?
そんなもんじゃねえの?」
「西門流のお家元と、家元夫人にご挨拶って、そんなもんの訳ないでしょうがーーーーー!」

うん、まあな。
嫁入りの第一歩になっちまうんだけど。
いきなり結納の日取りを・・・なんて事は言わない筈。

ギャーギャー騒いでる牧野を捕まえて、ぎゅうっと抱き締める。

「もうジタバタしてもしょうがねえんだから堪忍しろ。腹括れ。
雑草のつくしはどんな事にも負けねえんだろ?」
「あー、もー、あたし、どうなっちゃうの?」

急に弱気な台詞が溜息と共に出て来る。

「そんなん決まってるだろ?
俺と2人で幸せになるんだよ!」

勝利に酔いしれる俺は、とびきり幸せな気分で牧野にキスを落とす。

グズグス迷ってるお前の外堀、俺が埋めてやったよ。
これでもう逃げらんないだろ?
バレンタインの朝に最大の収穫。
“Be my valentine.” って言う前に叶ったな。
これでお前は俺のもの!
もう2度とお前を離さない!


________________



バレンタインらしからぬバレンタインSSとなりました(苦笑)
タイトルも悩みに悩んで二転三転。
タイトル決めるの苦手やねん・・・
「Call my name」とは違う雰囲気のお話を書きたくて、ちょっとドタバタにしてみましたが、楽しんで頂けましたでしょうか?
誰が一番嘘吐き!(Liar!)なのかは、お読み頂いた通りです(笑)

そろそろバレンタインのチョコ売り場のエンドレスで掛かってるBGM、『バレンタイン・キッス』以外になりませんかねー?
1986年発売の歌ですよ。
35年も使われ続けてんの!
そら飽きるよ(苦笑)
来年は売り場に違う歌が流れますように!


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